説明

エポキシ樹脂重合用促進剤

本発明の具体化例においてはエポキシ樹脂の硬化に有用な少なくとも1種のアミンとグリセリンとを有する促進剤組成物が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
なし。
【米国連邦政府の援助による研究または開発に対する記述】
【0002】
なし。
【技術分野】
【0003】
本発明は一般にエポキシ樹脂に関し、特にエポキシ樹脂を硬化させる際に用いられる促進剤組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
N−アミノエチルピペラジン(「AEP」)は、ポリエーテルアミン、例えばJEFFAMINE(R)D−230アミンおよびJEFFAMINE(R)T−403アミンと組み合わせ、このような硬化剤で硬化させるエポキシ樹脂の重合速度を増加させるために広く用いられている(JEFFAMINEは米国テキサス州のHuntsman Corporation of The Woodlandsの登録商標である)。エポキシ樹脂を硬化させるのに用いた場合、AEPは或る程度の最高発熱温度を生じることが観測されている。高い発熱温度が生じることは硬化の増加を促進する上で有利ではあるが、注意しないと重合体を劣化させる可能性がある。従ってこのような反応におけるAEPの使用量は注意深く監視する必要がある。典型的にはAEPの当量はエポキシ樹脂の硬化に使用される他のエポキシ硬化剤(例えばアミンをベースにした硬化剤)の当量とは異なっているから、異なった量の促進剤(反応性アミンを含む促進剤)を使用するたびに毎回計算を行い、エポキシ組成物の反応性を調節しなければならない。このことは多くの使用者にとっては面倒であり、間違いを起す原因となる。
【0005】
アミンで硬化させるエポキシ配合物に対し他の促進剤も存在しているが、これらは各々特定の欠点をもち、そのため或る種の用途には不適当である可能性をもっている。例えばフェノール性促進剤はしばしば固体であり、最終的な組成物に望ましくない色を与え、また紫外線に対する敏感性を賦与する。広く使用されている液体の促進剤、例えばノニルフェノール、モノ−ノニルフェノール(MNP)、ジノニルフェノール等は可塑剤としても作用するが、重合を著しく促進するのに十分な高い程度まで、それらが混入された樹脂系のガラス転位温度(Tg)を著しく且つしばしば望ましくない程度に低下させる。これに加えて、MNPの使用濃度が増加するにつれて、反応基の濃度(アミンおよびエポキシド)は減少するから、促進効果は減少する。
【0006】
ヒドロキシル基を高度に含んでいるエタノールアミン誘導体のような第3級アミン、例えばトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等は促進剤として効果的に使用されてきたが、これらは小さい分子のままの状態で残り、反応して重合体の網状構造の中に組み込まれることはないから、これらの分子もTgを著しく低下させることが知られている。これに加えてこのようないくつかのエタノールアミン誘導体は、化学兵器の前駆体として潜在的な用途をもっているために現在は政府機関の規制下におかれている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の具体化例には少なくとも1種のアミンおよびグリセリンを有する促進剤組成物が記載されている。
【0008】
他の具体化例においては、促進剤組成物を製造する方法が記載されている。この方法は少なくとも1種のアミンとグリセリンとの2種の材料を接触させる方法を含んで成っている。
【0009】
他の具体化例においては、本発明はエポキシ樹脂を製造する方法に関する。この方法では少なくとも1種のアミン、グリセリン、エポキシ硬化剤、およびポリエポキシを使用する。この方法においては、少なくとも1種のアミンおよびグリセリンを含んで成る促進剤組成物の存在下において、エポキシ硬化剤とポリエポキシとを接触させてエポキシ樹脂をつくる。
【0010】
上記の説明においては、以下に述べる本発明の詳細な説明を良く理解できるように本発明の特徴および技術的利点をやや広く定義して概説した。また下記においては本発明の特許請求の範囲の主題を構成する本発明のさらに他の特徴および利点も説明されるであろう。当業界の専門家は、本発明と同じ目的を実施するための他の組成物および方法を修正または設計する根拠として、本明細書に記載された本発明の概念および特定の具体化例を容易に使用することができることを理解すべきである。また当業界の専門家は、このような同等な組成物および方法が添付特許請求の範囲に記載された本発明の精神および範囲を逸脱するものではないことを理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Tgに対する促進剤組成物の濃度の効果を示す図。
【図2】JEFFAMINE(R)D−230アミンおよびDGEBA樹脂(化学量論的な割合1:1)と共にACCELERATORTM60を用いた場合の促進剤組成物の種々の濃度における時間に対する粘度を示す図。
【図3】JEFFAMINE(R)T−403アミンおよびDGEBA樹脂(化学量論的な割合1:1)と共にACCELERATORTM81を用いた場合の促進剤組成物の種々の濃度における時間に対する粘度を示す図。(ACCELERATORは米国テキサス州、Huntsman Corporation of The Woodlandsによって使用されている商標である)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の具体化例においては、少なくとも1種のアミンおよび1種のグリセリンを有する促進剤組成物が記載されている。該少なくとも1種のアミンはAEPを含んで成っている。AEPは、第1級、第2級および第3級アミンを含むという点でいくぶん異常なアミンである。しかし、本発明の促進剤組成物には広範囲の他のアミンを使用することができる。2種またはそれ以上のアミンの組み合わせも使用することができる。他の適当なアミンには各分子の中において活性水素が結合したアミン基が少なくとも2個存在する第1級、第2級、および第3級アミンの任意の組み合わせを有するアミン、並びにこのようなアミンの組合わせが含まれる。適当なアミンには第1級アミン基を有するアミン;第2級アミン基を有するアミン;第3級アミン基を有するアミン;第1級アミン基および第2級アミン基を有するアミン;第1級アミン基および第3級アミン基を有するアミン;第2級アミン基および第3級アミン基を有するアミン;第1級アミン基、第2級アミン基および第3級アミン基を有するアミンが含まれる。活性水素原子を唯1個しか含まないアミン化合物は重合体の連鎖伸長剤として作用し、これにより典型的にはTgを低下させ、硬化した樹脂のTg以下における温度での機械的性質が劣化するので、このようなアミンは典型的には避けるべきではあるが、少量存在しても問題を起すことはない。活性水素基を全くもたないアミン化合物、即ち第3級アミン基だけしかもたないアミンは若干の促進作用を与えるが十分に反応して重合体の網状構造の中に入って行くことはなく、従って可塑剤として作用し、硬化したエポキシ樹脂のTgを低下させる。この理由のために、第3級アミンしか含まない化合物は、硬化を促進するが最終的な重合体の性能を劣化させない濃度においてのみ許容されるであろう。
【0013】
一具体化例においては、少なくとも1種のアミンにはピペラジン、例えばN−アミノブチルピペラジン、1,4−ビス−(3−アミノプロピル)ピペラジン、およびこれらの組合わせが含まれる。他の具体化例においては、少なくとも1種のアミンにはジアミン、例えばイソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミン、m−キシレンジアミン、メンタンジアミン、エチレンジアミン、およびこれらの組合わせが含まれる。他の具体化例においては、該少なくとも1種のアミンはビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン(ARADUR(R)2954アミンまたはLAROMIN(R)C−260アミンとして市販されている(ARADURは米国テキサス州のHuntsman Corporation of The Woodlandsの登録商標であり、LAROMINはドイツ、LudwigshafenのBASF Aktiengesellschaft Corporationの登録商標である))、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキシルアミン、およびこれらの組合わせである。他の具体化例においては、該少なくとも1種のアミンはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アミノプロピルモルフィリン、アミノエチルエタノールアミン、およびこれらの組合わせである。一具体化例においては、該少なくとも1種のアミンはエチレンアミン、エタノールアミン、およびこれらの組合わせである。一般に促進剤組成物のアミン分子は典型的には1〜50個の炭素を有している。上記の説明により当業界の専門家は本発明の具体化例に使用される適当なアミンについて認識できるであろう。
【0014】
促進剤組成物にはグリセリンが含まれている。グリセリンは化学式HOCHCH(OH)CHOHをもつ毒性の低い材料である。本発明の具体化例においては種々の等級または純度のグリセリンを使用することができる。グリセリンは室温で液体であり、典型的には容易にアミンと混合でき、促進剤組成物を容易に製造することができるという利点をもっている。上記の説明により、当業界の専門家は本発明の具体化例において使用すべき適切なグリセリンを理解できるであろう。
【0015】
少なくとも1種のアミン(例えばAEP)とグリセリンとの組合わせは高度の反応性をもったアミン官能性および第3級アミン基(AEP中において)およびかなりの数のヒドロキシル基(グリセリン中において)の両方をもち、これらはそれぞれアミン硬化剤を用いるエポキシ樹脂の重合を促進する作用をする。
【0016】
本発明の具体化例においては、グリセリンとアミン(アミン配合物を含む)を組にして用いると、使用者はエポキシ樹脂の最終的なTgに対してコントロールを行うことができる。一具体化例においては、本発明の促進剤組成物はエポキシ硬化剤だけを用いてポリエポキシを反応させた場合に得られるよりも高いTg温度を与える。他の促進剤と組み合わせた場合、本発明の促進剤組成物は、他の促進剤を使用した場合に典型的には見られるようなTgの損失を最低限度に抑制するために使用することができる。これによってエポキシ樹脂の最終的なTgについて妥協を行うことなく、促進剤組成物の使用量を増加させることができるという利点がさらに得られる。またさらに低いガラス転移温度を示すグリセリンとアミンとの組み合わせは、エポキシ樹脂の可撓性を増加させる(Tgをさらに低くする)のに望ましいという利点をもっている。これらの説明により当業界の専門家は、所望のTgを保つかまたは所望のTgが得られるようにエポキシを変性させながら、エポキシの重合を促進するために使用される適切なグリセリンとアミンとの組合わせを理解することができるであろう。
【0017】
本発明の一具体化例においては、促進剤組成物はエポキシ硬化剤と同様なアミン水素当量(AHEW)をもっている。或る分子のAHEWは該分子中のアミノ窒素原子に結合し
た水素原子の数で該分子の分子量を割ることにより計算することができる。一例としてAEPに対してはAEPの分子量(129.2)を3で割って43.07のAHEWを得ることができる。2種以上の成分の配合物のAHEWは、アミンのAHEWで割った各アミンの重量分率の和の逆数をとることにより計算される。また重量分率を用いる代わりに、アミンのAHEWで割った各アミンの重量%の値の和により100を割った値もまた配合物のAHEWである。グリセリンのような非反応性の成分に対してはAHEWは無限大と考えられるので、非反応性の成分に対する%の項は0になり、含ませる必要はない。例えば重量分率を用いるとアミンA(AHEW=40)が1/3、アミンB(AHEW=60)が1/3、およびアミン性水素基をもたない非反応性のヒドロキシル含有化合物が1/3の配合物のAHEWは1を((1/3)/40+(1/3)/60+0)で割った72に等しい。エポキシ硬化剤がポリアミド硬化剤の場合には、アミド基の窒素原子に結合した水素原子は含まれない。これらの水素原子は一般にエポキシ基とは反応しないからである。
【0018】
本発明の具体化例に使用されるアミンはAHEWが広い範囲で変化していることができる。何故なら、本発明の性能に対して重要なのは最終的な促進剤組成物のAHEWだからである。例えばエチレンジアミンはAHEWの計算値が約15であるが、アミノプロピルモルフォリンは約72のAHEWをもっている。AHEWが72より大きい促進剤組成物をつくりたいとすれば、いずれかのアミンにグリセリンを加えることもできるが、AHEWの低いアミンではグリセリンの割合を大きくする必要がある。AHEWが60の促進剤組成物が望ましい場合には、AHEWが60以下である限りアミンまたはアミンの配合物を使用し、所望のAHEWになるまでグリセリンを加えてAHEWを調節し、主要なエポキシ硬化剤に合わせることができよう。この第2の場合においては、アミノプロピルモルフォリン(AHEWは72)自身は適当でない。何故ならそのAHEWは促進剤組成物の目標とするAHEWより高いからである。
【0019】
本発明の具体化例においては、促進剤組成物のAHEWがエポキシ樹脂をつくるのに用いられるエポキシ硬化剤のAHEWに合致するように促進剤組成物のAHEWを選ぶことができる。このようにすれば、最終的なユーザーによる計算は不必要であり、使用濃度が低い場合にはエポキシ樹脂をつくるのに使用されるエポキシ硬化剤の重量に関する重量基準で促進剤を簡単に取り換えることができる。これによって促進剤組成物の使用が著しく簡単になる。何故なら反応性を調節するための新しい促進剤の濃度が必要になるたびに計算を行う必要がないからである。
【0020】
本発明の具体化例においては、促進剤組成物は約10〜約300の範囲のAHEWをもっている。若干の具体化例においては、促進剤組成物は約55〜約65;または約75〜約90;または約140〜約160の範囲のAHEWをもっている。若干の具体化例においては、促進剤組成物は約60または約81のAHEWをもっている。当業界の専門家は上記の説明により本発明に使用される適切なAHEWを認識できるであろう。
【0021】
本発明の具体化例においては、少なくとも1種のアミンおよびグリセリンを使用し;該少なくとも1種のアミンおよびグリセリンを接触させる段階を含んで成る促進剤組成物を製造する方法が記載されている。該少なくとも1種のアミンは最終的な促進剤組成物の所要のAHEWに依存して選択することができる。
【0022】
また本発明の具体化例においてはエポキシ樹脂を製造する方法が記載されている。この方法では少なくとも1種のアミン、グリセリン、エポキシ硬化剤、およびポリエポキシを使用する。エポキシ硬化剤はアミン硬化剤、例えばジアミンのようなポリアミンまたはポリアミンの配合物であることができる。本発明のエポキシ硬化剤は10〜約300の範囲のAHEWをもっていることができる。特定の具体化例においてはエポキシ硬化剤は約55〜約65;または約75〜約90;または約140〜約160のAHEWをもっている。若干の具体化例においては、エポキシ硬化剤は約60または約81のAHEWをもっている。エポキシ硬化剤の2種の市販品の例はJEFFAMINE(R)D−230アミン(AHEW=60)およびJEFFAMINE(R)T−403アミン(AHEW=81)である。JEFFAMINE(R)D−230アミンは分子量が約230のジ第1級ポリエーテルアミンである。JEFFAMINE(R)T−403アミンは分子量が約403のトリ第1級ポリエーテルアミンである。両方のアミンは米国テキサス州のHuntsman Corporation of The Woodlandsから市販されている。本発明の具体化例においては、エポキシ硬化剤のAHEWは硬化剤組成物のAHEWに合致するように選ぶことができる。当業界の専門家は本発明に使用する他の適切なエポキシ硬化剤を理解することができるであろう。
【0023】
また本発明方法によればポリエポキシが使用される。下記の構造をもつ本発明に用いられるポリエポキシは当業界においては公知である。この説明によって当業界の専門家は本発明に使用される適切なポリエポキシを理解し得るであろう。
【0024】
本発明においては、少なくとも1種のアミンおよびグリセリンを含んで成る促進剤組成物の存在下においてポリアミンおよびポリエポキシを接触させてエポキシ樹脂をつくる。
【0025】
エポキシ硬化剤を用いてポリエポキシを硬化(重合)させる方法は当業界に公知である。その結果生じる交叉結合した重合体の網状構造は例えば下記式
【0026】
【化1】

【0027】
但し式中nは0〜10である、
のようなポリエポキシと、エポキシ硬化剤、例えばポリアミンまたはポリアミンの配合物との間の反応から得られる。ここでポリアミンは式
N−R−NH
のジアミンまたはこのようなアミンと他のアミンとの配合物であることができ、Rは炭素数1〜50の炭化水素基であるか炭素数1〜50のポリエーテル基であり、特に式
【0028】
【化2】

【0029】
のような構造部分をもつ交叉結合した重合体を生じるようなポリアミンである。
【0030】
これらは当業界においては公知であり、種々のポリエポキシ含有化合物および種々のポリアミンおよびそれらの組合わせから生じるポリアミンの反応生成物である。本発明の促進剤組成物は同時に配合物(例えばポリエーテルポリアミンおよびエチレンアミン誘導体)を含むエポキシ硬化剤およびポリエポキシドの重合反応に使用される。本発明方法は広い温度範囲、例えば凝固温度から150℃より高い温度に至る範囲で行うことができる。
【0031】
本明細書に記載された方法に使用される促進剤組成物はエポキシ硬化剤のAHEWに合致するように選ぶことができる。これらの具体化例においては、促進剤組成物およびエポキシ硬化剤のそれぞれ独立なAHEW値はほぼ同等である。例えばAHEW=60の促進剤組成物はJEFFAMINE(R)D−230アミン(AHEW=60)を使用する時にエポキシ硬化剤として使用することができる。このような具体化例においては、エポキシ樹脂をつくる反応に対しては促進剤組成物を同じ重量基準でJEFFAMINE(R)D−230アミンの代りに用いることができる。本発明の若干の具体化例においては、促進剤組成物のAHEWとエポキシ硬化剤のAHEWとは約10〜約300の範囲でほぼ同じであることができる。他の具体化例においては、促進剤組成物のAHEWとエポキシ硬化剤のAHEWとは約55〜約65の範囲;または約75〜約90の範囲;または約140〜約160の範囲にある。一具体化例においては促進剤組成物のAHEWとエポキシ硬化剤のAHEWは約60である。一具体化例においては促進剤組成物のAHEWとエポキシ硬化剤のAHEWは約81である。当業界の専門家は本発明に使用される各促進剤組成物およびエポキシ硬化剤の他の適切なAHEW値を理解できるであろう。
【0032】
本明細書に記述された方法に使用される促進剤組成物およびエポキシ硬化剤は所望のTgをもつエポキシ樹脂が得られるように選ぶことができる。例えば系の可撓性を増加させるためにより低いTgが望まれる場合には、エポキシを硬化させるために使用される際低いTgを与えるアミンまたはアミン配合物を使用することができる。高いTgが望まれる場合には、高いTgをもつアミン、例えばAEPを使用することができる。グリセリンは典型的にはTgのレベルを低下させ、従ってエポキシ樹脂の最終的なTgを調節するために適切な量を使用することができる。また促進剤組成物をTgに影響を与えるような(エポキシ硬化剤と同等な)使用量で用いることもできる。上記説明により当業界の専門家は所望のTgをもつエポキシ樹脂を生じる促進剤組成物およびエポキシ硬化剤の適切な量およびタイプを理解できるであろう。
【0033】
下記実施例は例示的なものであり、本発明の範囲または特許請求の範囲を限定するものではない。
【0034】
[実施例]
【実施例1】
【0035】
71.78gのN−アミノエチルピペラジンおよび28.22gのグリセリンを混合してAHEW=60の促進剤組成物をつくった。
【実施例2】
【0036】
44.93gのアミノエチルエタノールアミン、26.85gのアミノプロピルモルフォリンおよび28.22gのグリセリンを混合してAHEW=60の促進剤組成物をつくった。
【実施例3】
【0037】
53.17gのN−アミノエチルピペラジンおよび46.83gのグリセリンを混合し
てAHEW=81の促進剤組成物をつくった。
【実施例4】
【0038】
33.28gのアミノエチルエタノールアミン、19.89gのアミノプロピルモルフォリンおよび46.83gのグリセリンを混合してAHEW=81の促進剤組成物をつくった。
【実施例5】
【0039】
50.00gのN−アミノエチルピペラジンを50.00gのグリセリンと混合してAHEW=86の促進剤組成物をつくることができる。
【実施例6】
【0040】
30.00gのN−アミノエチルピペラジンを70.00gのグリセリンと混合してAHEW=144の促進剤組成物をつくることができる。
【実施例7】
【0041】
28.22gのN−アミノエチルピペラジンを71.78gのグリセリンと混合してAHEW=153の促進剤組成物をつくることができる。
【実施例8】
【0042】
エポキシ硬化剤のAHEW値とほぼ同等なAHEW値をもった促進剤組成物を用いエポキシ樹脂をつくった。JEFFAMINE(R)T−403アミン(AHEW=81)を用いる硬化:1:1のエポキシドとアミン水素基との化学量論的割合を得るためには、25.00gのARALDITE(R)GY 6010エポキシ樹脂(エポキシド当量即ちEEW=184、米国テキサス州、Huntsman Corporation of The Woodlandsから市販)をll.01gのJEFFAMINE(R)T−403アミン(AHEW=81)と硬化させるべきである。重合は所望の時間よりも長くかかったので、1.25gのJEFFAMINE(R)T−403アミンの代わりにN−アミノエチルピペラジン(53.17重量%)およびグリセリン(46.83重量%)の配合物1.25gを用い、はるかに短い時間で透明な重合した樹脂を得た。この促進剤組成物はAHEW=81の値を有し、従って1:1の化学量論的な割合を維持するのにこの系に対して再計算をする必要はなかった。同様に、1.25gの促進剤組成物を含む組成物よりも長い作業時間を得るためには、計算をすることなく、重量基準でJEFFAMINE(R)T−403アミンの一部を置き換えて使用する量を少なくすることができよう。
【0043】
図1は同じAHEWをもつアミン(JEFFAMINE(R)D−230アミンまたはJEFFAMINE(R)T−403アミン)の濃度を2、5および8phr(エポキシ樹脂100部当たりの重量部)と増加させながら実施例1の促進剤組成物(ACCELERATORTM60と呼ばれる)および実施例3の促進剤組成物(ACCELERATORTM81と呼ばれる)を増加させて使用した場合のTgの効果を示す。
【0044】
実施例2の促進剤組成物を同じエポキシ樹脂およびJEFFAMINE(R)D−230アミンと共に8phrの濃度で使用し、80℃で3時間および125℃で2時間焙焼した場合、得られたTgは82.7℃であった。同じエポキシ樹脂およびJEFFAMINE(R)T−403アミンと共に実施例4の促進剤組成物を8phrの濃度で用い、80℃で3時間および125℃で2時間焙焼した場合、得られたTgは80.1℃であった。
【0045】
図2および3はAHEW(60または81)を一致させてエポキシ硬化剤と共に用いた場合、実施例1(ACCELERATORTM60)または実施例3(ACCELERATORTM81)に記載された促進剤組成物の濃度を増加させた際の室温における時間の経過に対する粘度の効果を示す。促進剤組成物のAHEWをエポキシ硬化剤のAHEWと一致させなかった場合、エポキシ基に対するアミン水素の化学量論的割合を所望の1:1に保つためには、各組成物に対して計算を行うことが必要である。促進剤組成物およびエポキシ硬化剤のAHEWを一致させた場合、エポキシ硬化剤に対して促進剤の重量を置き換える簡単な操作を行うことができ、従ってエポキシ樹脂を製造する工程において迅速な調節を行うことができるので、間違いを起すことが少なくなる。
【0046】
以上、本発明並びにその利点に関して詳細に説明を行ったが、添付特許請求の範囲の精神および範囲を逸脱することなく種々の変更、置換、および代替を行い得ることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1種のアミン;および
b.グリセリン
を含んで成ることを特徴とするエポキシ樹脂の硬化に有用な促進剤組成物。
【請求項2】
該促進剤組成物は約10〜約300の範囲のAHEWを有することを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項3】
該促進剤組成物は約55〜約65の範囲のAHEWを有することを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項4】
該促進剤組成物は約75〜約90の範囲のAHEWを有することを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項5】
該促進剤組成物は約140〜約160の範囲のAHEWを有することを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項6】
該促進剤組成物は約60のAHEWを有することを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項7】
該促進剤組成物は約81のAHEWを有することを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項8】
該少なくとも1種のアミンはN−アミノエチルピペラジンを含んで成ることを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項9】
該少なくとも1種のアミンはピペラジンを含んで成ることを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項10】
該少なくとも1種のアミンはN−アミノブチルピペラジン、1,4−ビス−(3−アミノプロピル)ピペラジン、およびそれらの組合わせから成る群から選ばれるピペラジンを含んで成ることを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項11】
該少なくとも1種のアミンはイソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミン、m−キシレンジアミン、メンタンジアミン、エチレンジアミン、およびそれらの組合わせから成る群から選ばれるジアミンを含んで成ることを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項12】
該少なくとも1種のアミンはビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキシルアミン、およびそれらの組合わせから成る群から選ばれるアミンを含んで成ることを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項13】
該少なくとも1種のアミンはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アミノプロピルモルフォリン、アミノエチルエタノールアミン、およびそれらの組合わせから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項14】
該少なくとも1種のアミンはエチレンアミン、エタノールアミン、およびそれらの組合わせから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項15】
該少なくとも1種のアミンは第1級アミン基を有するアミン、第2級アミン基を有するアミン、第3級アミン基を有するアミン、第1級アミン基および第2級アミン基を有するアミン、第1級アミン基および第3級アミン基を有するアミン、第2級アミン基および第3級アミン基を有するアミン、第1級アミン基、第2級アミン基および第3級アミン基を有するアミン、およびそれらの組合わせから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の促進剤組成物。
【請求項16】
a.少なくとも1種のアミンおよびグリセリンを用意し、
b.該少なくとも1種のアミンとグリセリンとを接触させる
段階を含んで成ることを特徴とする促進剤組成物の製造法。
【請求項17】
該促進剤組成物は約60または約81のAHEWをもっていることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
a.少なくとも1種のアミン、グリセリン、エポキシ硬化剤およびポリエポキシを用意
し、
b.該少なくとも1種のアミンとグリセリンとを含んで成る促進剤組成物の存在下にお
いてエポキシ硬化剤およびポリエポキシを接触させる
段階を含んで成ることを特徴とするエポキシ樹脂の製造法。
【請求項19】
促進剤組成物は約10〜約300の範囲のAHEWを有し、エポキシ硬化剤は約10〜約300の範囲のAHEWを有することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
促進剤組成物は約60または約81のAHEWを有し、エポキシ硬化剤は約60または約81のAHEWを有することを特徴とする請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−534250(P2010−534250A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551023(P2009−551023)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/054646
【国際公開番号】WO2008/103868
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(505318547)ハンツマン ペトロケミカル コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】