説明

エマルション樹脂系塗料

【課題】
常温乾燥の条件でも塗装後の初期段階から塗膜硬度を有し、耐汚染性に優れた塗膜を形成するのに適するエマルション樹脂系塗料を提供する。
【解決手段】
樹脂エマルション成分(A)及び脂肪酸アルキルエステル成分(B)を含み、塗料中の樹脂固形分中における樹脂エマルション成分(A)の固形分割合が80質量%以上であるエマルション樹脂系塗料であって、脂肪酸アルキルエステル成分(B)が、カプリン酸アルキルエステル、ラウリン酸アルキルエステル、ミリスチン酸アルキルエステル及びパルミチン酸アルキルエステルのいずれか1種以上の脂肪酸アルキルエステル(B1)を含んでなる成分であり、樹脂エマルション成分(A)固形分100質量部に対して脂肪酸アルキル成分(B)の量が0.1〜35質量部の範囲内にあるエマルション樹脂系塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に建築用塗料として有用なエマルション樹脂系塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染や人体への影響等が考慮されるようになり、溶剤系塗料にかわり水系塗料が使われるケースがかなり増えてきている。
【0003】
例えば、建築塗料の分野における水系塗料には、バインダー成分としてエマルション樹脂を使用したエマルション樹脂系塗料が多く使用されている。エマルション樹脂系塗料の造膜はエマルション樹脂粒子の融着によって行われていることから、当該分野では造膜助剤や可塑剤を塗料の目的に応じて使い分けたり、又は併用したりすることがよく行われている。
【0004】
造膜助剤と可塑剤は、両者とも添加することでポリマーTgを下げ、使用温度範囲でポリマーに柔軟性を付与し、目的の性能を得ることができる添加剤である。両者は厳密に区別されるものではないが、塗料分野で造膜助剤は塗膜の造膜性向上を目的として添加されるものであり、一般には造膜後膜から放散されることが望ましいとされている。一方、可塑剤は伸びや柔軟性などの塗膜物性向上を目的として添加されるものであり、造膜後膜に保留することが望ましいとされている。
【0005】
一般にエマルション樹脂系塗料に配合される造膜助剤としては、2,2,4トリメチルペンタンモノイソブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール等の化合物が使用されてきた。しかしながら、これら化合物は揮発性有機化合物(VOC)に該当するという問題があり、低減もしくは代替が望まれているのが現状である。
【0006】
こうした状況に対して例えば特許文献1〜2にはアルキレンオキシドのモノエーテルや特定の構造をもつトリカルボン酸エステルが造膜助剤として提案されている。これら造膜助剤によれば造膜性に優れ、形成される塗膜物性も優れているものの、耐汚染性に関しては不十分な面がある。
【0007】
一方、例えばフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等の可塑剤として知られる材料をエマルション樹脂系塗料に添加すると、形成される塗膜に粘着感が出たり、塗膜硬度の発現を阻害し、耐汚染性が低下するという欠点がある。また、こうした可塑剤を用いた設計ではエマルション樹脂系塗料が造膜するために可塑剤添加量を多くする必要がある問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−80904号公報
【特許文献2】特開2003−277688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、常温乾燥の条件でも塗装後の初期段階から塗膜硬度を有し、耐汚染性に優れた塗膜を形成するのに適するエマルション樹脂系塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記した課題に対して鋭意検討した結果、樹脂エマルション成分に対して特定の種類の脂肪酸アルキルエステルが適していることを見出し、このものを特定量含ませることで、上記した課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、
1. 樹脂エマルション成分(A)及び脂肪酸アルキルエステル成分(B)を含み、塗料中の樹脂固形分中における樹脂エマルション成分(A)の固形分割合が80質量%以上であるエマルション樹脂系塗料であって、脂肪酸アルキルエステル成分(B)が、カプリン酸アルキルエステル、ラウリン酸アルキルエステル、ミリスチン酸アルキルエステル及びパルミチン酸アルキルエステルのいずれか1種以上の脂肪酸アルキルエステル(B1)を含んでなる成分であり、樹脂エマルション成分(A)固形分100質量部に対して脂肪酸アルキルエステル成分(B)の量が0.1〜35質量部の範囲内にあるエマルション樹脂系塗料、
2. 樹脂エマルション成分(A)がアクリル樹脂を主成分として含んでなり、アクリル樹脂エマルションを構成する樹脂の溶解性パラメータが8.0〜9.5の範囲内にあり、ガラス転移温度が0〜50℃の範囲内にある1項に記載のエマルション樹脂系塗料、
3. 脂肪酸アルキルエステル(B1)におけるアルキル基が、炭素数1から6のアルキル基である1項又は2項に記載のエマルション樹脂系塗料、
4. 脂肪酸アルキルエステル(B1)におけるアルキル基がメチル基である1項ないし3項のいずれか1項に記載のエマルション樹脂系塗料、
5. 脂肪酸アルキル成分(B)に含まれる脂肪酸アルキルエステル(B1)が、ラウリン酸アルキルエステル、ミリスチン酸アルキルエステル及びパルミチン酸アルキルエステルを全て含むものであり、これら合計質量を基準として
ラウリン酸アルキルエステルを55〜84.95質量%、
ミリスチン酸アルキルエステルを15〜44.95質量%、
及びパルミチン酸アルキルエステルを0.05〜30質量%含んでなる組成物である1項ないし4項のいずれか1項に記載のエマルション樹脂系塗料、
6. 被塗物に、1項ないし5項のいずれか1項に記載のエマルション樹脂系塗料を塗装する塗装方法、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエマルション樹脂系塗料によれば、VOCが少なく、優れた造膜性を有し、塗膜硬度及び耐汚染性に優れた塗膜を常温乾燥の条件でも形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
樹脂エマルション成分(A):
本発明において、樹脂エマルション成分(A)としては、従来から水性塗料のバインダー成分として使用されているそれ自体既知の樹脂エマルションを使用することができる。該樹脂エマルション成分(A)の樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を併用したものであってもよい。
【0013】
樹脂エマルション成分(A)は、形成される塗膜の仕上がり性の観点から、エステル結合を有する樹脂であることが好ましい。エステル結合を有する樹脂としては、例えばアクリル樹脂、アルキド樹脂等が挙げられるが、エステル結合を有する重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を重合することにより得られるアクリル樹脂を好適に使用することができる。樹脂エマルション成分(A)がエステル結合を有する樹脂を含むことによって、樹脂エマルション成分(A)と後述の脂肪酸アルキルエステル成分(B)と親和性が良好となって、本発明のエマルション系樹脂塗料が常温乾燥の条件でも塗装後の初期段階から塗膜硬度を有する塗膜を形成することができる。
【0014】
本発明においては、常温乾燥の条件でも塗装後の初期段階から硬度を有する塗膜を形成できる観点から、樹脂エマルション成分(A)が、アクリル樹脂エマルションを主成分として含んでなることが望ましい。
【0015】
上記アクリル樹脂エマルションの含有割合としては、樹脂エマルション成分(A)固形分質量100質量部を基準にして、アクリル樹脂エマルションの固形分質量が50質量部以上、好ましくは75質量部以上であることができる。
【0016】
アクリル樹脂エマルションは、一般に、比較的疎水性のアクリル樹脂を水性媒体中に分散することにより得られるため、耐水性に優れた塗膜が形成される。
【0017】
また、後述の脂肪酸アルキル成分(B)は疎水性基を有するため、上記のような比較的疎水性のアクリル樹脂エマルションと親和性を有するため、常温乾燥における本発明塗料の造膜性が良好であり、仕上がり性に優れた外観を有する塗膜を形成することができる。
【0018】
上記アクリル樹脂エマルションは、得られる塗料の貯蔵安定性の観点から、界面活性剤によって水分散性が付与されたアクリル樹脂エマルションであることが好ましい。本発明に使用される脂肪酸アルキル成分(B)は、界面活性剤を含有するエマルション樹脂系塗料中においても、アクリル樹脂エマルションを含む樹脂エマルション成分(A)との親和性が良好であるので、脂肪酸アルキル成分(B)と界面活性剤によって水分散性が付与されたアクリル樹脂エマルションとを含有するエマルション樹脂系塗料は、貯蔵安定性と塗装作業性に優れ、かつ常温乾燥の条件でも造膜性が良好で、硬度を有しかつ優れた耐汚染性を有する塗膜を形成することができる。
【0019】
上記界面活性剤によって水分散性が付与されたアクリル樹脂エマルションとしては、例えば、界面活性剤を用いた乳化重合法によって得られるものであることが好適である。
【0020】
上記アクリル樹脂エマルションを製造するための重合性不飽和モノマーの具体例を下記に列挙する。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート: 例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー: 例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) 水酸基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;アリルアルコール等。
(vii) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(viii) スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(ix) リン酸基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等。
(x) 酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
(xi) カルボニル基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
(xii) 含窒素重合性不飽和モノマー: 例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等。
(xiii) 不飽和脂肪酸変性重合性不飽和モノマー: 例えば、乾性油脂肪酸又は半乾性油脂肪酸とグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマーとの付加物、乾性油脂肪酸又は半乾性油脂肪酸とヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー等との付加物。
(xiv) 重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー:例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等。
(xv) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xvi) 光安定性重合性不飽和モノマー: 例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
【0021】
本発明において、上記重合性不飽和モノマーの一成分として水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用すると、該アクリル樹脂エマルションの水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有することが可能である。
【0022】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いるのが好ましい。
【0023】
また、上記重合性不飽和モノマーの一成分として、シクロアルキル基含有(メタ)アクリレートを使用すると、常温乾燥の条件でも塗装後初期から硬度を有し、耐候性のある塗膜を形成することができ、好ましい。
【0024】
該モノマーとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
また、上記重合性不飽和モノマーの一成分としてカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用すると、得られるアクリル樹脂エマルションの機械安定性を向上せしめる機能を有することが可能である。
【0026】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしてはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。
【0027】
本発明において上記アクリル樹脂エマルションを構成する樹脂の溶解性パラメータは、8.0〜9.5、好ましくは8.2〜9.3の範囲内にあり、樹脂のガラス転移温度が0〜50℃、好ましくは2〜45℃の範囲内にあることが適している。
【0028】
本明細書においてアクリル樹脂エマルションを構成する樹脂の溶解性パラメータは、下記式により計算して求めることができる。
SP値=SP×fw+SP×fw+…+SP×fw
(上記式中、SP、SP、…SPは、各モノマーのホモポリマーのSP値を表し、fw、fw、…fwは、各モノマーのモノマー総量に対する質量分率を表す。)
尚、各モノマーのホモポリマーのSP値は、J. Paint Technology, vol.42[541]76〜102(1970)等に記載がされている。
【0029】
また、アクリル樹脂エマルションを構成する樹脂のガラス転移温度は、下記式により計算して求めることができる。
1/Tg(゜K)=(W/T)+(W/T)+…+(W/T
Tg(℃)=Tg(゜K)−273
(上記式中、T、T、…Tは、各モノマーのホモポリマーのTg(゜K)を表し、W、W、…Wは、各モノマーのモノマー総量に対する質量%を表す。)
尚、各モノマーのホモポリマーのTg値は、Polymer Hand Book(Second Edition,J.Brandup・E.H.Immergut 編)III-61〜91頁等に記載がされている。また、モノマーのホモポリマーのTgが明確でない場合のガラス転移温度(℃)は、静的ガラス転移温度とし、例えば示差走査熱量計「DSC−220U」(セイコーインスツルメント社製)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−20℃〜+200℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を静的ガラス転移温度とした。
【0030】
アクリル樹脂エマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、界面活性剤の存在下で、重合開始剤を使用して重合性不飽和モノマー混合物を乳化重合することにより行うことができる。
【0031】
上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好適である。該アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などのナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
【0032】
また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性界面活性剤;1分子中にアニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性界面活性剤を使用することもできる。
【0033】
上記反応性アニオン性界面活性剤としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、該スルホン酸化合物のアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0034】
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4´−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤は、一種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
また、上記アクリル樹脂エマルションの粒子の機械的安定性を向上させるために、該アクリル樹脂エマルションがカルボキシル基等の酸基を有する場合は、該酸基を中和剤により中和してもよい。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水などが挙げられる。
【0036】
本発明において、上記樹脂エマルション成分(A)は、上記アクリル樹脂エマルションに加えて必要に応じてアクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルションから選ばれる少なくとも1種の樹脂エマルションをさらに含むものであってもよい。
【0037】
上記樹脂エマルション成分(A)が、アクリル樹脂エマルションに加えて上記樹脂エマルションを併用する場合、その場合の使用量としては一般に、樹脂エマルション成分(A)固形分質量100質量部を基準にして、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルションから選ばれる少なくとも1種の樹脂エマルションの固形分質量が0.1質量部以上50質量部未満、特に0.5質量部以上25質量部未満となるような割合に調整することが塗料の塗装作業性と塗膜の耐候性の点から適している。
【0038】
脂肪酸アルキルエステル成分(B):
本発明において脂肪酸アルキルエステル成分(B)は、本発明の塗料の造膜性向上に寄与するものであり、また、塗料の貯蔵安定性と製造安定性及び形成塗膜の硬度、耐汚染性の観点から、カプリン酸アルキルエステル、ラウリン酸アルキルエステル、ミリスチン酸アルキルエステル及びパルミチン酸アルキルエステルのいずれか1種以上の脂肪酸アルキルエステル(B1)を含んでなることを特徴とする。
【0039】
上記脂肪酸アルキルエステル(B1)は脂肪酸アルキルエステル成分(B)の主成分であり、その含有量としては脂肪酸アルキルエステル成分(B)中80質量%以上、好ましくは90質量%であることができる。
【0040】
本発明において、上記脂肪酸アルキルエステル(B1)における脂肪酸は、炭素数が10の脂肪酸であるカプリン酸、炭素数が12の脂肪酸であるラウリン酸、炭素数が14の脂肪酸であるミリスチン酸、炭素数が16の脂肪酸であるパルミチン酸を挙げることができ、一方、脂肪酸アルキルエステル(B1)におけるアルキル基としては炭素数1から6のアルキル基を挙げることができる。
【0041】
上記炭素数1から6のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらは同一であっても2種以上異なるものであってもよい。
【0042】
本発明においては形成塗膜の造膜性、塗装後初期の塗膜硬度並びに塗膜の耐汚染性などの観点から、上記アルキル基が炭素数1から2のアルキル基、特にメチル基であることが適している。
【0043】
本発明において上記脂肪酸アルキルエステル(B1)は、カプリン酸アルキルエステル、ラウリン酸アルキルエステル、ミリスチン酸アルキルエステル及びパルミチン酸アルキルエステルを単独でも又はこれらのうちの2種以上を組み合わせた組成物であってもよいが、2種以上を組み合わせた組成物である場合、これら複数の脂肪酸アルキルエステルにおけるアルキル基は同一であることが望ましく、特に該アルキル基が同一で且つ炭素数1から2のアルキル基であることが適しており、さらには該アルキル基が全てメチル基であることが望ましい。
【0044】
本発明において、脂肪酸アルキルエステル成分(B)に含まれる脂肪酸アルキルエステル(B1)が、ラウリン酸アルキルエステル、ミリスチン酸アルキルエステル及びパルミチン酸アルキルエステルを全て含むものであり、これら合計質量を基準として
ラウリン酸アルキルエステルを55〜84.95質量%、好ましくは60.9〜75質量%、
ミリスチン酸アルキルエステルを15〜44.95質量%、好ましくは24.9〜39質量%、
及びパルミチン酸アルキルエステルを0.05〜30質量%、好ましくは0.1〜14.2質量%含んでなる組成物であることが塗料の造膜性と塗装後初期の硬度、形成塗膜の耐汚染性の点から適している。
【0045】
また、上記脂肪酸アルキルエステル成分(B)は、上記脂肪酸アルキルエステル(B1)に加えて該脂肪酸アルキルエステル(B1)以外のその他の脂肪酸アルキルエステル(B2)を含んでいても良い。
【0046】
上記その他の脂肪酸アルキルエステル(B2)としては特に制限されるものではないが、例えば炭素数が4〜18の脂肪酸をアルキルエステル化してなる化合物を挙げることができる。
【0047】
その具体例としては、例えば酪酸アルキル、吉草酸アルキル、カプロン酸アルキル、エナント酸アルキル、カプリル酸アルキル、ペラルゴン酸アルキル、ペンタデシル酸アルキル、パルミトレイン酸アルキル、マルガリン酸アルキル、ステアリン酸アルキル、オレイン酸アルキル、バクセン酸アルキル、リノール酸アルキル、(9,12,15)−リノレン酸アルキル,(6,9,12)−リノレン酸アルキル、エレオステアリン酸アルキルを挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0048】
上記その他の脂肪酸アルキルエステル(B2)におけるアルキル基としては、上記脂肪酸アルキルエステル(B1)におけるアルキル基の項で説明したものと同様であることができる。
【0049】
本発明において脂肪酸アルキルエステル成分(B)が上記その他の脂肪酸アルキルエステル(B2)を含む場合、その場合の含有量としては、脂肪酸アルキルエステル成分(B)中に20質量%未満、好ましくは10質量%未満であることが適している。
【0050】
上記その他の脂肪酸アルキルエステル(B2)のうち炭素数10未満の脂肪酸のアルキルエステル(例えば酪酸アルキル、吉草酸アルキル、カプロン酸アルキル、エナント酸アルキル、カプリル酸アルキル、ペラルゴン酸アルキル等)の含有量が増えすぎると貯蔵中加水分解により塗料pHが低下し易くなることがあり、また、その他の脂肪酸アルキルエステル(B2)のうち、炭素数が16を越えた脂肪酸のアルキルエステル(例えば、パルミトレイン酸アルキル、マルガリン酸アルキル、ステアリン酸アルキル、オレイン酸アルキル、バクセン酸アルキル、リノール酸アルキル、(9,12,15)−リノレン酸アルキル,(6,9,12)−リノレン酸アルキル、エレオステアリン酸アルキル)の含有量が増えすぎると塗料へ脂肪酸アルキルエステル成分(B)の混合性が低下して製造でブツを生じ易くなることがある。
【0051】
エマルション樹脂系塗料:
本発明のエマルション樹脂系塗料は、例えば、上記樹脂エマルション成分(A)及び脂肪酸アルキルエステル成分(B)を、公知の方法により、水性媒体中に混合せしめることによって調整することができる。
【0052】
なお、エマルション樹脂系塗料とは、一般にはJIS K−5663に規定される合成樹脂エマルションと顔料を主成分として含む液状塗料を意味するものであり、本明細書においては塗料中に含まれる全樹脂固形分中、樹脂エマルション成分(A)の固形分割合が80質量%以上のものであり、90質量%以上のものであってもよい。尚エマルションとは樹脂が水に分散されている状態をいい、樹脂が水に溶解されている状態をとり得る水溶性樹脂とは別異のものである。
【0053】
本発明のエマルション樹脂系塗料において、上記脂肪酸アルキルエステル成分(B)の含有量は、上記樹脂エマルション成分(A)固形分100質量部に対して脂肪酸アルキルエステル成分(B)の量が0.1〜35質量部、好ましくは1〜33質量部の範囲内にあることが適している。
【0054】
本発明において樹脂エマルション成分(A)100質量部に対する脂肪酸アルキルエステル成分(B)の含有量が35質量部を超えると、形成塗膜の硬度の発現が遅くなるなどの不具合を起こすので好ましくない。
【0055】
本発明のエマルション樹脂系塗料は、単層仕上げでも仕上がり性が良好であり、また、性能の優れた塗膜を形成するので単層上塗り塗料として使用することができるが、複層仕上げのための上塗り塗料として又は下地調整等の下塗り用塗料としても使用することができる。
【0056】
本発明のエマルション樹脂系塗料は、必要に応じて、さらに、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、有機溶媒、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料分散剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤等を含有することができる。
【0057】
このうち着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。これらの着色顔料は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0058】
前記体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0059】
本発明のエマルション樹脂系塗料が、顔料を含有する場合、該顔料の配合量は顔料の種類やエマルション樹脂系塗料の用途に応じて適宜調整できる。
【0060】
本発明のエマルション樹脂系塗料の固形分は、通常、5〜90質量%程度であるのが好ましく、15〜80質量%程度であるのがより好ましく、40〜70質量%程度であるのが更に好ましい。
【0061】
本発明のエマルション樹脂系塗料は、種々の被塗物に塗装することにより、優れた外観の塗膜を形成することができる。
【0062】
被塗物:
本発明のエマルション樹脂系塗料を適用する被塗物は特に制限されるものではないが、例えば建築物等を挙げることができる。
【0063】
上記被塗物としての建築物の具体例としては、建築物内外壁面、天井、屋根、建築物内部の柱、パイプ、扉等を挙げることができる。
【0064】
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、石膏ボード、コンクリート壁、モルタル壁、スレート板、PC板、ALC板、セメント珪酸カルシウム板、木材、石材、プラスチック成形物、金属加工材等の基材の表面、これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系等の塗膜面、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、紙、布等の材質からなる壁紙面等を挙げることができる。
【0065】
塗装方法:
本発明のエマルション樹脂系塗料の塗装は、種々の塗装手段を用いて行うことができる。例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーターなど基材の用途等に応じて適宜選択することができる。形成塗膜の乾燥は、常温乾燥の条件で行うことができるが必要に応じて、加熱乾燥、強制乾燥を行うこともできる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0067】
エマルション樹脂系塗料の製造
実施例1
攪拌混合容器に下記組成物を配合し、均一になるまで攪拌混合しエマルション樹脂系塗料を製造した。
上水 14.4部
防腐剤 0.1部
ヒドロキシエチルセルロース系増粘剤 0.1部
ポリカルボン酸系顔料分散剤 0.3部
シリコーン系消泡剤 0.6部
チタン白 20.0部
エマルション(1)(注1) 60.0部
カプリン酸メチル 4.5部
(注1)エマルション(1):スチレン/メチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合アクリル乳化重合体、ガラス転移温度24℃、溶解性パラメータ8.9、固形分50%。
【0068】
実施例2〜35及び比較例1〜6
上記実施例1において、配合組成を下記表1とする以外は上記実施例1と同様にしてエマルション樹脂系塗料を製造した。次いで実施例1〜35及び比較例1〜6で得られた各エマルション樹脂系塗料を下記性能評価に供した。結果を表1に合わせて示す。
【0069】
尚、表1中記載の各エマルション及び各助剤の説明は下記の通りである。
・エマルション(2):スチレン/メチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合アクリル乳化重合体、ガラス転移温度5℃、溶解性パラメータ9.1、固形分50%、
・エマルション(3):メチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/シクロヘキシルアクリレート/ダイアセトンアクリルアミド共重合アクリル乳化重合体、ガラス転移温度5℃、溶解性パラメータ9.1、固形分50%、
・助剤(C10−1):カプリン酸メチル、
・助剤(C12−1):ラウリン酸メチル、
・助剤(C12−4):ラウリン酸n−ブチル、
・助剤(C12−5):ラウリン酸イソペンチル、
・助剤(C14−1):ミリスチン酸メチル、
・助剤(C14−2):ミリスチン酸エチル、
・助剤(C14−3):ミリスチン酸イソプロピル、
・助剤(C16−1):パルミチン酸メチル、
・助剤(C18−1):ステアリン酸メチル、
・助剤(C18*−1):オレイン酸メチル、
・助剤(C18*−2):オレイン酸エチル、
・助剤A:助剤C12−1/C14−1/C16−1=65/30/5(質量比)ブレンド物、
・助剤B:助剤C12−1/C14−1=70/30(質量比)ブレンド物、
・助剤C:助剤C12−1/C14−1=50/50(質量比)ブレンド物、
・助剤D:助剤C12−2/C14−2=70/30(質量比)ブレンド物、
・助剤E:助剤C12−2/C12−2=50/50(質量比)ブレンド物、
・テキサノール:商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−トリメチルペンタンモノイソブチレート、
・DOP:フタル酸ジ−2エチルヘキシル、
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
(*)造膜性
各塗料を乾燥膜厚が100μmになるようにブリキ板にアプリケーターで塗装してから温度勾配熱板形最低造膜温度測定器で−5℃〜20℃の温度勾配をかけて2時間放置した後、塗面状態を下記基準にて評価した。
◎:非常に良好(テキサノール,DOPに比べて造膜性が良い)、
○:良好(テキサノール,DOPと同等)、
△:やや不良、
×:不良。
(*)塗膜硬度
各塗料を乾燥膜厚が50μmになるようにアプリケーターで塗装してから23℃30日間放置した後、BYK Gardner社製の振子式硬度計 Pendulum Hardness Testerにて測定した。値が大きいほど硬度が高く良好である。
(*)屋外汚染性
スレート板(300×100×4mm)上に、「1液水性ザウルス」(関西ペイント社製、水系アクリルエマルション系シーラー)を塗布量が140g/mになるようにスプレー塗装し乾燥させた後、上記実施例及び比較例で得られた各塗料を塗布量が120g/mになるように刷毛塗装し,これを2回塗装した。その後、気温23℃、相対湿度60%の条件下で7日間乾燥して得られた各試験塗板を東京都大田区の建物屋上南側に30°の角度をつけて固定し、その状態のまま3ヶ月放置した後、塗膜の汚れ具合を目視により以下の基準で評価した。
◎:放置前と比較して汚れがわからない、
○:放置前と比較して少々汚れているが、水洗により汚れが目立たなくなる、
△:放置前と比較して汚れが目立ち、水洗しても若干汚れが認められる、
×:放置前と比較して汚れが目立ち、水洗しても汚れが認められる。
(*)VOC評価
◎:塗料中に沸点250℃未満の助剤を含まない、
○:塗料中に沸点250℃未満の助剤を含む。
(*)貯蔵性評価
各塗料を40℃1ヶ月貯蔵し、貯蔵前と後のpHを測定した。
○:貯蔵前後でpHの値の低下が1以下、
×:貯蔵前後でpHの値の低下が1を超える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂エマルション成分(A)及び脂肪酸アルキルエステル成分(B)を含み、塗料中の樹脂固形分中における樹脂エマルション成分(A)の固形分割合が80質量%以上であるエマルション樹脂系塗料であって、脂肪酸アルキルエステル成分(B)が、カプリン酸アルキルエステル、ラウリン酸アルキルエステル、ミリスチン酸アルキルエステル及びパルミチン酸アルキルエステルのいずれか1種以上の脂肪酸アルキル化合物(B1)を含んでなる成分であり、樹脂エマルション成分(A)固形分100質量部に対して脂肪酸アルキルエステル成分(B)の量が0.1〜35質量部の範囲内にあるエマルション樹脂系塗料。
【請求項2】
樹脂エマルション成分(A)がアクリル樹脂エマルションを主成分として含んでなり、アクリル樹脂エマルションを構成する樹脂の溶解性パラメータが8.0〜9.5の範囲内にあり、ガラス転移温度が0〜50℃の範囲内にある請求項1に記載のエマルション樹脂系塗料。
【請求項3】
脂肪酸アルキルエステル(B1)におけるアルキル基が、炭素数1から6のアルキル基である請求項1又は2に記載のエマルション樹脂系塗料。
【請求項4】
脂肪酸アルキルエステル(B1)におけるアルキル基がメチル基である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエマルション樹脂系塗料。
【請求項5】
脂肪酸アルキルエステル成分(B)に含まれる脂肪酸アルキルエステル(B1)が、ラウリン酸アルキル、ミリスチン酸アルキル及びパルミチン酸アルキルを全て含むものであり、これら合計質量を基準として
ラウリン酸アルキルを55〜84.95質量%、
ミリスチン酸アルキルを15〜44.95質量%、
及びパルミチン酸アルキルを0.05〜30質量%含んでなる組成物である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエマルション樹脂系塗料。
【請求項6】
被塗物に、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のエマルション樹脂系塗料を塗装する塗装方法。

【公開番号】特開2011−162676(P2011−162676A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27506(P2010−27506)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】