エルシニアSPP.ポリペプチド及び使用方法
本発明は、エルシニアspp.から単離可能な単離ポリペプチドを提供する。1以上のポリペプチドを含む組成物、並びに当該ポリペプチドを作成する方法及び当該ポリペプチド使用する方法も本発明により提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は83kDa、70kDa、66kDa又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、並びに40kDa、38kDa、又は37kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを含む組成物を提供する。ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定される。
【0002】
本出願は、2005年1月21日に出願された米国仮出願第60/646,106号の利益を主張する。当該出願は本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
ヒトに対して病原性である3種のエルシニア種:Y.ペスチス(Y. pestis)、Y.シュードツベルクロシス(Y. pseudotuberculosis)、及びY.エンテロコリチカ(Y. enterocolitica)が存在する。Y.ペスチスは、ペストの病原である一方、Y.シュードツベルクロシス及びY.エンテロコリチカの特異的病原性血清型(specific pathogenic serovars)は、胃腸管の病気を引き起こす。エルシニアの他の種は、Y.ローデイ(Y. rohdei)、Y.アルドバエ(Y. aldovae)、Y.ベルコビエリ(Y. bercovieri)、Y.フレデリクセニー(Y. frederiksenii)、Y.インターメディア(Y. intermedia)、Y.クリステンセニー(Y. kristensenii)、及びY.ムーラレッティー(Y. moolaretti)を含み、感染しやすい個体に下痢性疾患を引き起こす能力を有するエンテロコリチカ様日和見病原体と考えられている(Agbonlahor, J Clin Microbiol, 23, 891-6, (1986), Cafferkeyら、J Hosp Infect, 24, 109-15, (1993), Loftusら、Dig Dis Sci, 47, 2805-10, (2002))。エルシニアはまた、他の動物種に感染でき、様々な病気を引き起こす。哺乳動物の多くの野生種及び家畜種は、腸管病原体Y.エンテロコリチカ及びY.シュードツベルクロシスに感染しやすいが、これらの感染の多くは無症状であり、そしてこのような動物は通常、ヒトに伝染するための病原体の無症状性キャリアとしてのみ働く(Fantasiaら、J Clin Microbiol, 22, 314-5, (1985), Fantasia,ら、Vet Rec, 132, 532-4, (1993), Fukushimaら、J Clin Microbiol, 18, 981-2, (1983), Kageyamaら、J Med Primatol, 31, 129-35, (2002), Katoら、Appl Environ Microbiol, 49, 198-200, (1985), Poelmaら、Acta Zool Pathol Antverp, 3-9, (1977), Shayeganiら、Appl Environ Microbiol, 52, 420-4, (1986), Yanagawaら、Microbiol Immunol, 22, 643-6, (1978).)。しかしながら、腸管病原性エルシニアが、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、イヌ、トリ、及び家畜化シカなどの家畜において下痢性疾患及び全身倦怠感に関わるということが報告された(Jerrett, I. V.ら、Aust Vet J, 67, 212-4, (1990), Slee, K. J.ら、Aust Vet J, 65, 271-5, (1988), Slee, K. J. and C. Button, Aust Vet J, 67, 396-8, (1990), Slee, K. J. and C. Button, Aust Vet J, 67, 320-2, (1990), Zheng, X. B., J Appl Bacteriol, 62, 521-5, (1987))。Y.ペスチスは、様々なげっ歯類、並びに非ヒト霊長類に疾患を引き起こすことができる(Davis, K. J.ら、Arch Pathol Lab Med, 120, 156-63, (1996), Meyer, K. F.ら、J Infect Dis, 129, Suppl:S85-12, (1974))。Y.ペスチスは、イエネコにおける潜在的に重篤な感染にも関わり(Gasper, P. W.ら、J Med Entomol, 30, 20-6, (1993))、そしてイヌでのY.ペスチス感染が少数ながら報告された(Orloski, K. A. and M. Eidson, J Am Vet Med Assoc, 207, 316-8, (1995))。さらに、エルシニア・ルッケリ(Yersinia ruckeri)は、魚の病原体であり、サケ科においてレッドマウス病を引き起こす(Furones, M. D.ら、Ann. Rev. Fish Dis., 3, 105-125, (1993))。
【0004】
ペストは、疑う余地なく人類の有史において最も被害を与えた急性感染性疾患の一つであり、全世界で1億〜2億人を殺したと推定されている(Perry, R. D.及びJ. D. Fetherston, Clin Microbiol Rev, 10, 35-66, (1997))。近年では、ペストの発生は、米国及びその他先進工業国では比較的稀なものとなったが、風土病地域は、オーストラリアを除く全ての大陸に存在する。世界的な調査により、毎年2000〜5000ケースのペストがここ数年で報告されたということが示されたが、伝染病学者は、多くのヒトペストのケースが報告されていないと疑っている。Y.シュードツベルクロシスの発生はかなり稀であり、そして主に、フィンランド、日本、及び以前のソビエト連邦において主に起こった(Inoue, M.ら、Zentralbl Bakteriol Mikrobiol Hyg [B], 186, 504-511, (1988), Nuorti, J. P.ら、J Infect Dis, 189, 166-11 A, (2004), Rodina, L. V.ら、Zh Mikrobiol Epidemiol Immunobiol, 116-118, (1998), Toyokawa, Y.ら、Kansenshogaku Zasshi, 67, 36- 44, (1993))。多くのY.シュードツベルクロシス感染は、糞口経路により感染すると想定されるが;しかしながら、感染媒体は、多くの場合同定されていなかった。米国では、Y.エンテロコリチカによる感染が、Y.シュードツベルクロシスによる感染よりも一般的で有り、そして一般的に汚染ブタ製品の消費に関連する(Ray, S. M.ら、Clin Infect Dis, 38 Suppl 3, S181-189, (2004))。Y.エンテロコリチカにより引き起こされるヒトの疾患の発生は、特定するのが難しい。なぜなら、この生物に関する感染は、典型的に自己限定性であり、そして不十分な検出技術により、原因物質を正確に診断する能力が限られるからである。しかしながら、1996〜1999年のFoodNetサーベイランスにより、米国において100,000当たりおよそ1回のY.エンテロコリチカ感染が見積もられた(Ray, S. M.ら、Clin Infect Dis, 38 Suppl 3, S181-189, (2004))。
【0005】
ペストは、流行性及び風土病性の両方の伝染性を有する動物及びヒトの感染性疾患である。最も一般的な伝染手段は、感染げっ歯類の病原体保有動物からノミへの伝染であり、ノミはヒトへの伝染の通常の媒介生物として働く。しかしながら、ヒト-ヒト間の伝染は、汚染液滴の直接的な接触又は呼気吸入によっても生じる(肺炎型)。それにも関わらず、通常の感染では、Y.ペスチスは、一般的に皮下経路から血流に侵入し、ここでY.ペスチスはリンパ節へと移動し、そして増殖し始める。ペストの臨床症状は、横痃と呼ばれるリンパ節付近の大きな腫大を含む。場合により、Y.ペスチスは血流中で急速に増殖し、熱、頭痛、寒気、及びときおり胃腸障害を含む。これらの症状は、早期には誤診されることが多く、その結果抗生物質治療が、有効な介入には遅すぎる段階になって投与されることもある。Y.ペスチスによる敗血症感染は、50%の致死率を有し(Perry, R. D.及びJ. D. Fetherston, Clin Microbiol Rev, 10, 35-66, (1997))、そして肺炎感染を導きうる。ペストの肺炎形態は、エアロゾル経路により過度に伝染性が強く、そして疾患の急激な開始及び100%に近い死亡率により特徴付けされる。その結果、投与が早ければ抗生物質治療を利用でき、そして効果的ではあるが、肺炎ペストの急速な開始及び敗血症ペストの誤診は、この疾患の治療における主要な障害となっている。
【0006】
多くのヒト感染が糞口経路により伝染され、そして腸管に限られるので、Y.エンテロコリチカ及びY.シュードツベルクロシスは、腸病原体として考えられている。通常の宿主では、Y.エンテロコリチカは下痢性疾患を引き起こし、当該疾患は、熱及び虫垂炎に似た下腹部痛を伴うこともある。Y.シュードツベルクロシスは、通常、下痢性疾患を引き起こすことはなく、そして虫垂炎として誤診されうる腸管膜リンパ節炎を引き起こすようである。摂取後に、両生物体は腸管リンパ組織に付着し、そして粘膜層を横断し、ここで両生物体は、腸管膜リンパ節において増幅することができ、そして脾臓及び肝臓に移動することができる(Lian, C. J.ら、J Med Microbiol, 24, 219-226, (1987), Une, T., Microbiol Immunol, 21, 505-516, (1977))。Y.シュードツベルクロシス及びY.エンテロコリチカの特定の血清型は脈管系に広がり、そして敗血症の致死例を引き起こしうる(Bottone, E. J., Clin. Microbiol. Rev., 10, 257-276, (1997), Lenz, T.ら、J Infect Dis, 150, 963, (1984))が、両生物体のさらに侵襲的な疾患は、通常、易感染性の個体に限定される。Y.エンテロコリチカは、輸血後の敗血症に関わり;これらの場合では、供給血液が、冷蔵温度で生存し、そして生育することができる当該生物体で汚染される (Natkin, J. B., KG, Clin Lab Med, 19, 523-536, (1999))。さらに、腸管エルシニア感染は、反応性関節炎及び甲状腺炎などの遅延型続発症を誘導しうる(Bottone, E. J., Clin. Microbiol. Rev., 10, 257-276, (1997), Gaston, J. S.ら、Arthritis Rheum., 42, 2239-2242, (1999), Taccetti, G.ら、Clin Exp Rheumatol, 12, 681-684, (1994))。抗生物質による治療は、これらの二つの病原体により引き起こされる胃腸管疾患の重篤度又は期間を低減することを示さなかった(Hoogkamp-Korstanje, J., J Antimicrob Chemother, 20, 123, (1987), Pai, C. H.ら、J Pediatr, 104, 308-11, (1984))。しかしながら、易感染性の宿主は、通常、疾患のより重篤な臨床症状を予防するために典型的に抗生物質で治療される。これらの腸管病原体のいずれかにより引き起こされる敗血症も、一般的に抗生物質で治療され、そしてこのような治療はY.エンテロコリチカに対しては成功することが多い(Gayraud, M.ら、Clin Infect Dis, 17, 405-10, (1993))。対照的に、敗血症がY.シュードツベルクロシスにより引き起こされている患者において、抗生物質治療は伝統的にあまり効果的ではなく、そしてY.シュードツベルクロシスに関する致死率はおよそ75%である(Natkin, J. B., KG, Clin Lab Med, 19, 523-536, (1999))。
【0007】
米国では、Y.ペスチスによる自然感染は稀であるが、当該生物体が生物テロ薬剤となるという恐れが存在する。Y.ペスチス生物体は、幾つかの特徴のため意図的な大量感染のツールとして第一候補となる。第一に、当該生物体は、大量散布に都合のよい方法であるエアロゾルにより撒かれた際に感染性が高いためである。第二に、治療されなかった場合、Y.ペスチスに付随する死亡率は高く、そして肺炎型のペストは、症状の急速な開始により区別され、当該急速な開始は、効果的な介入には遅すぎると認められるからである。最後に、Y.ペスチスは明確な遺伝システムを有し、そうして抗生物質耐性株が比較的簡単に作成されるためである。
【0008】
様々なレベルの有効性及び安全性を有する幾つかのペストワクチンが研究されてきた。最も初期のワクチンは、Y.ペスチスの死菌全細胞(KWC)からなり、このタイプのワクチンは、1890年代後半に使用され、腺ペストの形態に対して保護を与える。しかしながら、KWC免役化が、肺炎型ペストに対してほとんど保護を与えないという証拠が存在し(Cohen, R. J. and J. L. Stockard, JAMA, 202, 365-366, (1967), Meyer, K. R, Bull World Health Organ, 42, 653-666, (1970))、そしてこれらのワクチンに対するさらなる欠点は、数ヶ月にわたる複数回の注射が予防免役に必要であるという点である。Y.ペスチスの弱毒化株であるEV76株は、ペストの生ワクチンとして研究されてきた。マウスの研究では、当該ワクチンは、皮下及び吸入暴露に対する保護を与えることが示され、そして予防にわずか1回の投与しか必要としない(Russell, P.ら、Vaccine, 13, 1551-1556, (1995))。しかしながら、EV76株は完全に無発症性ではなく、ワクチン接種されたマウスのおよそ1%が死亡する(Russell, P.ら、Vaccine, 13, 1551-1556, (1995))。興味深いことに、生ワクチンとして使用するのに適したY.ペスチスの無発症性の株を作成する幾つかの成功していない試みが存在する(Titball, R. W. and E. D. Williamson, Vaccine, 19, 4175-4184, (2001))。
【0009】
サブユニットワクチンは、安全かつ効果的なペストの予防用のワクチンの最も有望なタイプであると考えられている。その第一の理由は、ヒト宿主の副作用についての恐れがないからである。エルシニア病原体に付随する幾つかの表面タンパク質がその免役原性について試験された;これらのタンパク質の全てが抗体応答を誘導したが、F1カプセル及び分泌性V抗原が暴露に対して良好な保護を誘発した(Titball, R. W.及びE. D. Williamson, Vaccine, 19, 4175-4184, (2001))。F1及びV抗原の両方ともが、動物モデルにおいて個々の抗原として保護を提供するが、2個の抗原の組み合わせは優れた保護を提供する。多くの最近の研究により、F1及びV抗原に対する最良のデリバリーシステムを発見する試みにおいて、選択されたアジュバントと剤形されたF1/Vワクチンが試験されてきた(Alpar, H. O.ら、Adv. Drug Deliv. Rev., 51, 173-201, (2001), Eyles, J. E.ら、J Control Release, 63, 191-200, (2000), Jones, S. M.ら、Vaccine, 19, 358-366, (2001), Reddin, K. M.ら、Vaccine, 16, 761-767, (1998), Williamson, E. D.ら、Vaccine, 19, 566-571, (2000), Williamson, E. D.ら、Vaccine, 14, 1613-9, (1996))。
【0010】
他の革新的戦略は、弱毒化サルモネラ株をY.ペスチス抗原のワクチン担体として使用した。F1/V融合タンパク質を発現するサルモネラaroA突然変異体をワクチン株として使用する場合、86%のマウスが、その後の致死量のY.ペスチスの暴露を生き抜いた(Leary, S. E.ら、Microb Pathog, 23, 167-179, (1997))。同様に、切り詰めF1カプセルをコードする遺伝子を有するDNAプラスミドからなるワクチンは、異なるマウス種において80〜100%の保護を提供した(Grosfeld, H.ら、Infect Immun, 71, 374-383, (2003))。さらに、あるグループの研究者は、F1抗原のB及びT細胞エピトープをマッピングし、そしてワクチン製剤中に免疫反応性ペプチドを利用した(Sabhnani, L.ら、FEMS Immunol Med Microbiol, 38, 215-29, (2003))。この結果により、エピトープペプチドの混合物がY.ペスチスの致死量に対して、83%のマウスを保護したということが示された。
【0011】
保護用ペストワクチンについての多くの研究とは対照的に、腸内病原体エルシニア種による感染を予防することについて、ほとんど研究努力が払われていなかった。しかしながら、いくらかの研究が有望な結果を示していた。例えば、マウスに経口投与された弱毒化エンテロコリチカ株は、防御効果を示し、経口暴露後の脾臓及び肝臓における細菌量を低減させた(Igwe, E. Lら、Infect Immun, 67, 5500-5507, (1999))。しかしながら、これらの株は、生経口ワクチン担体として主に作成され、そしてエルシニア症の予防についてこれらの株の更なる試験は報告されなかった。2個のサブユニットのワクチンが、感染の動物モデルにおいて有効なものとして示された。第一のサブユニットワクチンは、Y.エンテロコリチカ由来の細胞抽出物からなり、そしてマウスに鼻腔内投与された。免疫化されたマウスは、鼻腔内暴露されたY.エンテロコリチカの肺からの排除を高めた(Di Genaro, M. S.ら、Microbiol. Immunol., 42, 781-788, (1998))。第二サブユニットワクチンは、Y.エンテロコリチカ由来の熱ショックタンパク質HSP60を用いて剤形され、インターロイキン12でアジュバント化された(Noll, A. and Autenriethlb, Infect Immun, 64, 2955-2961, (1996))。当該ワクチンを用いた免疫化は、暴露後のマウス脾臓内の細菌を有意に低下させ、保護効果を示した。追加研究は、Y.エンテロコリチカHSP60をコードするDNAからなるワクチンを、マウスの筋肉内免疫化において利用した(Noll, A.ら、Eur J Immunol, 29, 986-996, (1999))。当該研究により、hsp60mRNAが、免疫化の後に様々な宿主組織中に存在したが、Y.エンテロコリチカ暴露に対する保護が脾臓に限定され、そして小腸粘膜において保護が観察されなかったということが示された。
【0012】
病原性エルシニア種により引き起こされる疾患間の類似性及び相違点は、過去10年において多くの研究の中心であった。これは、一部には、病原性エルシニアが有用な病原進化モデルを提供するということを示唆する幾つかの知見のためである。第一に、DNAハイブリダイゼーション研究及び完全に配列決定されたY.ペスチス及びY.シュードツベルクロシス株の近年のゲノム比較により、これらの二種の病原体が高度に関連することが示唆され(Chain, P. S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 101, 13826-13831, (2004)、Ibrahim, A.ら、FEMS Microbiol Lett, 114, 173-177, (1993))、そしてY.ペスチスがY.シュードツベルクロシスから1500〜20000年ほど前に進化したことが推定された(Achtman, M.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 96, 14043- 14048, (1999))。しかしながら、これらの進化上の近い関係にもかかわらず、Y.シュードツベルクロシスとY.ペスチスはかなり異なる疾患をヒトに引き起こす。さらに、部分的な配列決定及び16sRNAハイブリダイゼーション研究により、Y.エンテロコリチカがその属の他の病原体種の遠縁であることが示唆された(Ibrahim, A.ら、FEMS Microbiol Lett, 114, 173-177, (1993), Moore, R. L. and R. R. Brubaker, Int J Syst Bacteriol, 25, 336-339, (1975))が、Y.エンテロコリチカは、Y.シュードツベルクロシスで観察された感染症と類似する胃腸管感染症を引き起こす。近年の研究は、疾患を引き起こすのに利用する異なるメカニズムを明らかにする試みにおいて、当該3種の病原性エルシニア種の病原性遺伝子について焦点をあてた。マウスモデルは、エルシニア発病機序を研究するのに特に役に立った。なぜなら、静脈内注射されるとマウスにおいて同様の疾患を引き起こし、そしてより自然な感染が、経口及び肺暴露経路を通して効果的に模倣することができるからである。
【0013】
少数の病原性因子はY.ペスチスに固有である。これらは、Y.ペスチスプラスミドpPCP及びpMT上にコードされるタンパク質を含み、これらのプラスミドはY.エンテロコリチカ又はY.シュードツベルクロシスにおいは見られない。pPCPプラスミドは、プラスミノーゲンアクチベーター、つまり皮下注入の後に哺乳動物宿主組織中へ細菌の急速な広がりに関するタンパク質、をコードする (Sodeinde, O. A.ら、Science, 258, 1004-1007, (1992))。pMTプラスミドは、非ヒト宿主への感染を手助けする少なくとも2個の遺伝子を有する。pMTにコードされるcaf1遺伝子は、F1カプセル、つまりマウス宿主内での貪食を阻害するが霊長類における病原性には必要とされない因子、の集合に必要とされる(Friedlander, A. M.ら、Clin. Infect. Dis., 21 Suppl 2, S178-181, (1995))。マウストキシンは、pMTプラスミド上にコードされており、そしてノミにおける生存を促進すると信じられているが、マウス宿主において必要とされるウイルス因子ではない(Hinnebusch, B. J.ら、Science, 296, 733-735, (2002), Hinnebusch, J.ら、Int J Med Microbiol, 290, 483-487, (2000))。これらの種間の他の相違は、エルシニアにより産生されるリポ多糖(LPS)の構造である。Y.エンテロコリチカ及びY.シュードツベルクロシスの両者は、胃腸管における生存を高めると理論化されている様々なO-抗原側鎖を発現し(Reeves, P., Trends Microbiol., 3, 381-386, (1995))、そして侵襲的疾患の間、補体介在性溶解を阻害するであろう(Karlyshev, A. V.ら、Infect Immun, 69, 7810-7819, (2001))。対照的に、Y.ペスチスは、幾つかのO-抗原生合成遺伝子の突然変異のためO-特異的側鎖を伴わない粗いLPS表現形を有する(Prior, J. G.ら、Microb. Pathog., 30, 48-57, (2001), Skurnik, M. P., A; Ervela, E, MoI Microbiol, 37, 316- 330, (2000))。
【0014】
興味深いことに、ゲノム配列決定プロジェクトにより、3種全ての病原性エルシニア種に存在する幾つかの病原性遺伝子が、Y.ペスチスにおいて、当該遺伝子を機能的でないものとする突然変異を獲得したことが明らかになった(Chain, P. S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 101, 13826-13831, (2004), Parkhill, J.ら、Nature, 413, 523-527, (2001))。これらの幾つかは、腸管病原性Y.エンテロコリチカ及びY.シュードツベルクロシス種の腸侵襲の間に機能するインバシン(invasin)タンパク質をコードし、その結果、Y.ペスチスは、宿主微小環境(niche)にコロニー形成しない(Simonet, M.ら、Infect Immun, 64, 375-379, (1996))。Y.ペスチスにおいて失われた機能を有する他の遺伝子は、中間代謝に関与する遺伝子を含み、そしてこれらの機能上の欠失が、Y.ペスチスを宿主の外で生存できない偏性寄生生物種にした進化の一部であると理論化される(Parkhill, J.ら、Nature, 413, 523-527, (2001))。エルシニアの発症機序についての研究は、エルシニアの全ての病原体種においてみられる70kbのウイルスプラスミドについて広く注目した。Y.シュードツベルクロシス及び病原性Y.エンテロコリチカにおいてpYV、並びにY.ペスチスにおいてpCD1と呼ばれる当該プラスミドの配列は、Y.シュードツベルクロシスとY.ペスチスとの間で著しく保存されている(Chain, P. S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 101, 13826-13831, (2004))。従って、より遠縁のY.エンテロコリチカ種は、より相違しているpYVプラスミドを有しているが、当該病原性遺伝子の配列は3種全ての間で高度に保存されている(Hu, P.ら、J Bacteriol, 180, 5192-5202, (1998)、Snellings, N. J., ら、 Infect Immun, 69, 4627-38, (2001))。当該プラスミドへの着目は、実験によりpYVプラスミドがエルシニアの病原性に絶対必要であるが、当該プラスミドのみでは特定の非病原性株の病原性を修復できないということを見つけ出し、非pVY遺伝子もまた発症機序に関与することが示唆された際に始まった(Heesemann, J.ら、Infect Immun, 46, 105-110, (1984), Heesemann, J. and R. Laufs, J Bacteriol, 155, 761-767, (1983))。当該プラスミド上の大きい遺伝子座は、Ysc-Yopシステム、III型分泌システム、及びその関連するエフェクタータンパク質をコードする。当該システムは、III型分泌装置(Type III secretion apparatus)の最初の例で有り、現在では、多くの動物及び植物微生物病原体において同定されている(参考として、Cornells, G. R., Nat. Rev. MoI. Cell. Biol, 3, 742-752, (2002)を参照のこと)。エルシニアYop-Ysc分泌システムは、「インジェクチソーム(injectisome)」タンパク質、トランスロケーターエフェクタータンパク質、及びYopエフェクタータンパク質を含む。様々なIII型分泌システムについての電子顕微鏡研究及び標識研究により、インジェクチソームタンパク質が細菌の細胞質及び外側膜に伸びている孔を形成し、そして細胞表面から針様構造を突出させることが明らかになった(Blocker, A., et al, MoI. Microbiol., 39, 652-663, (2001), Kimbrough, T. G. and S. I. Miller, Proc Natl Acad Sci U S A, 97, 11008-11013, (2000), Kubori, T.ら、Science, 280, 602-605, (1998), Sukhan, A.ら、J Bacteriol, 183, 1159-1167, (2001))。トランスロケータータンパク質は、宿主マクロファージ及び多形核好中球(PMN)と相互作用して、宿主細胞膜中に孔様構造を形成するようである。(Neyt, C. and G. R. Cornells, MoI Microbiol, 33, 971-981, (1999))。次に、集合された分泌装置により、エフェクターYopsの細菌細胞膜を介した移動を可能にし、そして宿主細胞に注入され、ここでこれらは様々な免役応答経路に干渉することにより機能する(Bleves, S. and G. R. Cornells, Microbes Infect., 2, 1451-1460, (2000), Cornells, G. R., Nat. Rev. MoI. Cell. Biol., 3, 742-752, (2002))。yadA遺伝子はまた、真核細胞に結合しそして付着する能力を有するYadAアドへシンをコードするpYVプラスミド上に存在する(Eitel, J. and P. Dersch, Infect Immun, 70, 4880-91, (2002), Skurnik, M.ら、Infect Immun, 62, 1252-61, (1994))。当該タンパク質は、腸管病原体エルシニアにおいてのみ機能するようである。なぜなら、Y.ペスチスにおけるフレームシフト変異がyadA遺伝子を機能的でないものとするからである(Hu, P.ら、J Bacteriol, 180, 5192-5202, (1998))。
【0015】
エルシニア感染において鉄が関与することが長らく立証されてきた。鉄過剰患者、例えばβサラセミアを患う患者などは、エルシニア感染の感受性が高い(Farmakis, D.ら、Med. Sci. Monit., 9, RA 19-22, (2003))。さらに、病原性は、ヘム又はヘム含有化合物を加えることにより特定の無発病性Y.ペスチスにおいて病原性を修復することができる (Burrows, T. W. and S. Jackson, Br. J. Exp. Pathol., 37, 577-583, (1956))。エルシニア及び他の細菌に関するこれらの初期の観察は、研究者に微生物の鉄とり込みメカニズムのいくつかについて研究を行わせた。哺乳動物宿主において、利用可能な鉄は、かなり限られており;細胞内の鉄は貯蔵タンパク質と複合体形成し、そして細胞外の鉄は宿主タンパク質トランスフェリン及びラクトフェリンにより結合されている。これらの制御された鉄条件は、侵入した微生物の増殖を制限し、そうして感染に対する防御バリアとして作用する。多くの病原体は、これらの鉄欠乏条件下で鉄を捕集する能力を進化させてきており、トランスフェリン又はヘム含有化合物から鉄を効果的に「盗む」。細菌により利用される最も一般的なメカニズムのうちの一つは、親鉄剤(siderophore)、つまり鉄に対して高親和性を有する小分子、の合成及び分泌である(Andrews, S. Cら、FEMS Microbiol. Rev., 27, 215-237,(2003))。鉄-親鉄剤複合体は、細菌細胞表面上の外膜受容体により結合され、そして外膜、ペリプラスム、及びABCトランスポータータンパク質の協調作用を通して、鉄は細胞内に輸送される。他の外膜受容体は、ヘム及びヘム含有化合物を直接結合し、これらの分子から鉄を捕集する。幾つかのエルシニア鉄取り込みシステムの役割は解明されてきている一方、多くの推定システムが同定されてきたが、特性は明らかにされていない。
【0016】
エルシニアは、鉄を取得するために他の細菌及び真菌により産生される様々な親鉄剤を使用できるが、エルシニアバクチンは、エルシニアが産生する親鉄剤であって検出された唯一のものである(Baumler, A.ら、Zentralbl. Bakteriol., 278, 416-424,(1993), Rabsch, W. and G. Winkelmann, Biol Met, 4, 244-250, (1991), Reissbrodt, R. and W. Rabsch, Zentralbl Bakteriol Mikrobiol Hyg [A], 268, 306-317, (1988))。エルシニアバクチンシステムは、染色体高病原性アイランド(HPI)、つまりエルシニアの高病原性株に関連する位置上に存在するybt遺伝子によりコードされる(de Almeida, A. M.ら、Microb. Pathog., 14, 9-21, (1993), Rakin, A.ら、J Bacteriol, 177, 2292-2298, (1995))。ybt遺伝子は、親鉄剤エルシニアバクチンの合成及び分泌に関与するタンパク質(ybtS、irp1、irp2、ybtE、ybtT)、並びに、鉄エルシニアバクチン複合体の取り込みに必要とされる外膜タンパク質(psnlfyuA)及び細胞質タンパク質(ybtP、ybtQ)をコードする(Carniel, E., Microbes Infect., 3, 561-569, (2001))。エルシニアバクチン合成及び/又は取り込み用の遺伝子における突然変異は、マウスの感染モデルにおいてエルシニア病原性の低下をもたらし(Bearden, S. W.ら、Infect. Immun., 65, 1659-1668, (1997), Brem, D.ら、Microbiology, 147, 1115-1127, (2001), Rakin, A.ら、MoI Microbiol, 13, 253-263, (1994))、当該システムがエルシニア発症機序において重要な病原性因子であるということを示した。ybt遺伝子のヌクレオチド配列は、3種の病原性エルシニア株間で少なくとも97%の同一性であり(Carniel, E., Microbes Infect., 3, 561-569, (2001), Chain, P. S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 101, 13826-13831, (2004))、そしてY.ペスチス及びY.シュードツベルクロシスのybtシステムは互換性があると示された(Perry, R. D.ら、Microbiology, 145 (Pt 5), 1181-1190, (1999))。これらの分析により、これらのホモログの機能が、この3種間で保存されているようであるということが示された。さらに、HP1は大腸菌(E.coli)、シトロバクター(Citrobacter)、及びクレブシエラ(Klebsiella)の幾つかの種を含む様々な病原性種において発見された(Bach, S.ら、FEMS Microbiol. Lett., 183, 289-294, (2000))。これらの生物体により発現されるYbtタンパク質はかなり類似しており;実際、エルシニアYbtタンパク質の幾つかに対して生じた抗体が他の病原体由来の対応するタンパク質を認識した(Bach, S.ら、FEMS Microbiol. Lett., 183, 289-294, (2000), Karch, H.ら、Infect Immun, 67, 5994-6001, (1999))。これらの結果により、これらの病原体の中でybtシステムの獲得が比較的最近のことであり、そしてこれらの血清型の多くに関連する侵襲性の表現系に寄与しうることが示唆される。
【0017】
幾つかのさらなるybtに独立した鉄取り込みシステムが、突然変異分析、既知の鉄獲得タンパク質へのホモロジー、又は鉄応答性制御エレメントの存在に基づいてエルシニア種において検出された。一のそのような制御エレメントは、「Furボックス」、つまり鉄と複合体形成する際に調節タンパク質Furを結合するヌクレオチド配列、である。Fe-FurのFurボックスへの結合は、下流のプロモーターの転写を抑制し、そして鉄が限定的になる場合、apo-FurがDNAから解離し、そして転写の抑制が解除される。Fur及びそのホモログは、多くの細菌種において見つかってきており、そして様々な生物体における鉄取り込みシステムに加えて多くの遺伝子を制御する(Campoy, S.ら、Microbiology, 148, 1039-1048, (2002), Horsburgh, M. J.ら、Infect Immun, 69, 3744-3754, (2001), Sebastian, S.ら、J Bacteriol, 184, 3965-3974, (2002), Stojiljkovic, Lら、J MoI Biol, 236, 531-545, (1994))。Y.ペスチス・ゲノムの分析は、そのそれぞれのプロモーターの上流にあるFurボックスを有する多くの遺伝子を同定した。これらの多くは、既知の鉄取り込みシステムにホモロジーを有するタンパク質をコードする(Panina, E. M.ら、Nucleic Acids Res, 29, 5195-5206, (2001))。これらの遺伝子は、機能について研究されることはほとんどないが、幾つかが鉄親鉄剤受容体タンパク質(omrA、irgA、UrA、ihaB、fauA)及び鉄ABCトランスポーター(itsTUS、itpPTS)をコードするようである。エルシニアが他の生物により産生された親鉄剤を利用できるので、これらのタンパク質は、エルシニアについて観察された「親鉄剤の横取り(siderophore piracy)」に関与する。このような鉄獲得方法は、細菌病原体の間では一般的である。
【0018】
幾つかの研究は、他の推定の鉄とり込みシステムの機能を明らかにした。例えば、Y.ペスチスのHmuシステムは、ヘム及びヘム含有化合物をとり込むことを介して鉄を獲得すると示された。ヘムを鉄源として使用する能力は、病原体にとって有利であると思われるが、Y.ペスチスhmu変異体は、マウスの感染モデルにおいて完全に病原性であった(Thompson, J. M.ら、Infect Immun, 67, 3879-92, (1999))。第二の推定のヘム取り込みシステムが配列ホモロジーに基づいてY.ペスチスにおいて同定された。Y.ペスチスのhas遺伝子は、シュードモナス及びセラチアのヘモフォア(hemophore)依存性ヘム獲得遺伝子のホモログである(Rossi, M. S.ら、Infect Immun, 69, 6707-6717, (2001))。これらの生物において、ヘモフォア(HasA)が分泌され、ヘムに結合し、そしてヘムを細菌表面受容体(HasR)にデリバリーしてヘムを細胞中に輸送する。Y.ペスチスHasAタンパク質は、Fur制御性、分泌性、及びヘム結合性であると決定された。しかしながら、これらの遺伝子の突然変異は、二重突然変異が試験された場合でさえ、マウスにおいて病原性について影響を与えなかった(Rossi, M. S.ら、Infect Immun, 69, 6707-6717, (2001))。その結果、発病機序における推定のヘム取り込みについての役割は理解されないまま残っており、そしてヘム取り込みが非マウス宿主の感染の間により重要であることが示されうる。
【0019】
2つの推定の鉄ABCトランスポーターシステムの機能は、エルシニアにおいて試験された。YfeシステムはY.ペスチスにおいて鉄及びマグネシウムを輸送でき、そしてyfe突然変異はマウスの感染モデルにおいて病原性の低下を示した (Bearden, S. W. and R. D. Perry, MoI. Microbiol., 32, 403-414, (1999))。第二の推定の鉄ABCトランスポータータンパク質は、yfu遺伝子によりコードされ、上流のFurボックスの存在により同定された(Gong, S.ら、Infect. Immun., 69, 2829-2837, (2001))。大腸菌において発現されると、yfu遺伝子は、鉄欠損培地での成長を回復させたが、Y.ペスチスにおける比較試験は、鉄獲得におけるYfuの役割を決定することに失敗しており、そしてyfu突然変異はマウス病原性において欠点を示さなかった (Gong, S.ら、Infect. Immun., 69, 2829-2837, (2001))。
【発明の開示】
【0020】
発明の要約
本発明は83kDa、70kDa、66kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、並びに40kDa、38kDa、又は37kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを含む組成物を提供し、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定される。83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そして当該鉄キレート剤を含まない培地中で生育された場合単離できない。いくつかの態様では、当該組成物は、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合に、Y.エンテロコリチカから単離可能である2個の異なる83kDaのポリペプチドを含んでもよい。当該組成物は、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する。当該組成物は、医薬として許容される担体をさらに含むことができる。ポリペプチドは単離可能であってもよく、又は幾つかの態様ではY.エンテロコリチカATCC27729株から単離可能である。組成物は、268kDa、92kDa、79kDa、54kDa、45kDa、31kDa、28kDa、又はその組み合わせの分子量を有する単離ポリペプチドをさらに含んでもよく、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合、Y.エンテロコリチカから単離可能である。
【0021】
本発明はまた、83kDa、70kDa、66kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、並びに268kDa、79kDa、又は45kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを含む組成物を提供し、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定される。83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合に、エルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育される場合単離できない。当該組成物は、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する。当該組成物は、医薬として許容される担体をさらに含むことができる。当該ポリペプチドは、単離可能であってもよいか、又は幾つかの態様では、Y.エンテロコリチカATCC27729株から単離される。
【0022】
本発明は、268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、45kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、及び28kDaの分子量を有する単離ポリペプチドを含む組成物をさらに提供する。ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動することにより測定する。当該ポリペプチドはエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そして当該組成物は、Y.エンテロコリチカ ATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する。当該ポリペプチドは単離可能であってもよく、又は幾つかの態様では、Y.エンテロコリチカATCC27729株から単離される。
【0023】
本発明は、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び46kDa、37kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを含む組成物を提供し、ここで、分子量は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動により測定される。94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地で生育された場合に単離できない。当該組成物は、Y.ペスチスKIM6+での暴露に対してマウスを保護する。当該組成物は、医薬として許容される担体を含むことができる。当該ポリペプチドは単離可能であってもよく、又は幾つかの態様では、Y.エンテロコリチカATCC27729株から単離されてもよい。当該組成物はさらに、254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、又は20kDaの分子量を有する単離ポリペプチドをさらに含んでもよく、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育される場合、Y.ペスチスから単離可能であってもよい。ポリペプチドは、単離可能であってもよく、又は幾つかの態様では、Y.ペスチスKIM6+から単離されてもよい。
【0024】
本発明はまた、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、並びに254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、20kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを含む組成物を提供する。ここで、分子量は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動することにより測定される。94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合単離できない。当該組成物は、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する。組成物は、医薬として許容される担体をさらに含むことができる。ポリペプチドは単離可能であってもよいし、又は幾つかの態様では、Y.ペスチス株KIM6+から単離されてもよい。
【0025】
本発明は、254kDa、104kDa、99kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、60kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、及び20kDaの分子量を有する単離ポリペプチドを含む組成物をさらに提供する。ここで、分子量は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動することにより測定される。当該ポリペプチドは、エルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして当該組成物は、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する。当該ポリペプチドは、単離可能であってもよく、又は幾つかの態様では、Y.ペスチスKIM6+から単離されてもよい。
【0026】
本発明は、対象において感染を治療する方法であって、本発明の有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか又は有する危険性のある対象に投与することを含む、前記方法を提供する。対象は動物、例えば魚類又はヒトなどの哺乳類であってもよい。エルシニアspp.は、例えばY.エンテロコリチカ若しくはY.ペスチス、又はY.ルッケリであってもよい。
【0027】
本発明はまた、対象の症状を治療する方法であって、本発明の組成物の有効量をエルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に投与することを含む前記方法を提供する。対象は動物、例えば魚類又はヒトなどの哺乳動物であってもよい。エルシニアspp.は、例えば、Y.エンテロコリチカ若しくはY.ペスチス、又はY.ルッケリであってもよい。症状は、例えば、下痢、腸炎、ペスト、レッドマウス病、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0028】
本発明はさらに、対象における感染の治療であって、有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか又は有する危険性を有する対象に投与することを含み、ここで当該組成物が本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を含む、前記治療を提供する。当該抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル抗体であってもよい。1の例では、抗体は、83kDa、70kDa、66kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドに特異的に結合し、ここで当該ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合、エルシニア・エンテロコリチカから単離され、そして鉄キレート剤を伴わない培地において生育する場合単離されない。別の例では、抗体は、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを特異的に結合し、ここで当該ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合、エルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育する場合単離されない。
【0029】
本発明は、対象において症状を治療する方法であって、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に有効量の組成物を投与することを含み、ここで当該組成物が本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を含む方法を提供する。抗体はポリクローナル又はモノクローナル抗体であってもよい。一の例では、抗体は83kDa、70kDa、66kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドに特異的に結合する。ここで分子量は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動することにより測定され、ここで当該ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合、エルシニアエンテロコリチカから単離され、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育される場合単離されない。別の例では、当該抗体は、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はこれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドに特異的に結合し、ここで当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合、エルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育される場合、単離されない。
【0030】
本発明は、さらに、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を検出するためのキットを提供する。当該キットは、本発明の単離されたポリペプチド、及び特異的にポリペプチドに結合する抗体を検出する試薬を含む。当該ポリペプチド及び試薬は、一般的に分離容器内に存在する。一例として、当該ポリペプチドは、83kDa、70kDa、又は66kDa、又はその組み合わせの分子量を有してもよく、ここで当該ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合、エルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育される場合、単離できない。別の例として、当該ポリペプチドは、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有してもよく、ここで当該ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合エルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育する場合単離できない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の好ましい実施態様の詳細な記載
本発明は、ポリペプチド、及び当該ポリペプチドを含む組成物を提供する。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、ペプチド結合により結合されるアミノ酸のポリマーを指す。こうして、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、及び酵素と言う用語は、ポリペプチドの定義内に含まれる。当該用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含む。ポリペプチドと言う用語は、アミノ酸のポリマーの特定の長さを示唆することはない。ポリペプチドは、天然ソースから直接単離可能であってもよいし、又は組換え、酵素、又は化学技術の助けを伴って調製することもできる。天然ポリペプチドの場合、そのようなポリペプチドが典型的に単離される。「単離」ポリペプチドは、その自然環境から取り出されたポリペプチドである。例えば、単離ポリペプチドは、細胞質から又は細胞の外膜から取り出されたポリペプチドであり、そして多くのポリペプチド、核酸、及び自然環境における他の細胞物質はもはや存在しない。「単離可能な」ポリペプチドは、特定のソースから単離することができるポリペプチドである。「純粋な」ポリペプチドは、それらが自然状態で付随している他の成分の少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、及び最も好ましくは少なくとも90%が存在しないポリペプチドである。ポリペプチドが通常生じる生物体の外で、例えば化学又は組換え方法を通して産生されるポリペプチドは、当然、単離され精製されていると考えられている。なぜなら、当該ポリペプチドは、自然環境中に存在しなかったためである。本明細書に使用される場合、「ポリペプチド断片」は、プロテアーゼでポリペプチドを切断することからもたらされるポリペプチドの一部を指す。他に記載がない限り「a」、「an」、「the」、及び「少なくとも1」は、互換性を持って使用され、そして1又は1以上であることを意味する。「含む」という用語及びその変化形は、当該用語が本記載及び特許請求の範囲において現れた文脈で限定的な意味を有さないということを意味する。
【0032】
本発明のポリペプチドは、分子量、質量フィンガープリント、又はその組み合わせにより特徴付けられても良い。一般的にキロダルロン(kDa)で示されるポリペプチドの分子量は、通常の方法、例えばゲルろ過、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を含むゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、質量分析、及びHPLCを含む液体クロマトグラフィーを用いて測定されうる。好ましくは、約4%のスタッキングゲルと約10%の分離ゲルを有するSDSポリアクリルアミドゲルを還元及び変性条件下で用いて、ポリペプチドを分離することにより、分子量が測定される。他に記載されない限りでは、分子量は、SDS-PAGEにより測定された分子量を指す。本明細書に使用される場合、「質量フィンガープリント」は、プロテアーゼで切断した後のポリペプチドから得られるポリペプチド断片の集合を指す。一般的に、切断から得られたポリペプチド断片は、質量分析法を用いて分析される。各ポリペプチド断片は、質量(m)、又は「m/z比」若しくは「m/z値」と呼ばれる質量(m)対電荷(z)の比により特徴付けられる。ポリペプチドの質量フィンガープリントを作成する方法は、通常行われている。このような方法の例は、実施例9に開示される。
【0033】
本発明のポリペプチドは、金属制御ポリペプチドであってもよい。本明細書に使用される場合、「金属制御ポリペプチド」は、微生物が低金属条件で生育する場合に、同じ微生物が高金属条件下で生育する場合に比べて高いレベルで微生物により発現されるポリペプチドである。低金属及び高金属条件は本明細書に記載される。例えば、エルシニアspp.により産生される制御ポリペプチドの一のクラスは、高金属条件下では微生物の生育の間に検出できるレベルでは発現されないが、低金属条件下での生育の間検出できるレベルで発現される。エルシニア・エンテロコリチカから単離できるこのような金属制御ポリペプチドの例は、83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する。幾つかの態様では、Y.エンテロコリチカは、2種の異なるポリペプチドを産生してもよく、その各々は、83kDaの分子量を有し、そしてその各々は低金属条件下で微生物の生育の間に検出可能なレベルで発現され、そして高金属条件下での生育の間では検出可能なレベルで発現されない。エルシニア・ペスチスから単離できるこのような金属制御ポリペプチドの例は、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する。
【0034】
エルシニアspp.により産生される金属制御ポリペプチドの別のタイプは、高金属条件において微生物の生育の間に検出可能なレベルで発現されるが、有意に多いポリペプチドが低金属条件における生育の間に発現される。このようなポリペプチドの発現は、低金属条件での生育の間に高められると言われる。一般的に、低金属条件における生育の間ポリペプチドの発現は、高金属条件下での生育の間におけるポリペプチドの発現より少なくとも10%、又は少なくとも50%高い。高い発現を示し、かつY.エンテロコリチカから単離可能である金属制御ポリペプチドの例は、268kDa、79kDa、又は45kDaの分子量を有する。高い発現を示し、かつY.ペスチスから単離される金属制御ポリペプチドの例は、254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、又は20kDaの分子量を有する。幾つかの態様では、Y.ペスチスは、2の異なるポリペプチドを産生してもよく、その各々は31kDaの分子量を有し、そして高い発現を示す。
【0035】
本発明の幾つかのポリペプチドの発現は、金属の存在により有意に影響されることはない。Y.エンテロコリチカから単離可能であるこのようなポリペプチドの例は、92kDa、54kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、又は28kDaの分子量を有する。幾つかの態様では、Y.エンテロコリチカは、2の異なるポリペプチドを産生してもよく、各々31kDaの分子量を有し、そして各々は金属の存在により有意に影響されることはない。Y.ペスチスから単離可能であるこのようなポリペプチドの例は、104kDa、99kDa、60kDa、又は44kDaの分子量を有する。
【0036】
ポリペプチドが金属制御ポリペプチドであるかそうでないかは、ポリペプチドの存在を比較するのに有用な方法、例えばゲルろ過、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を含むゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、質量分析、及びHPLCを含む液体クロマトグラフィーにより測定することができる。微生物の分離培養は、高金属条件下及び低金属条件下で生育される。本発明のポリペプチドは、本明細書に記載されるように単離され、そして各培養物に存在するポリペプチドは分離され、そして比較される。一般的に各培養物からの等量のポリペプチドを用いる。好ましくは、ポリペプチドは、還元及び変性条件下で、約4%のスタッキングゲル及び約10%の分離ゲルを有するSDSポリアクリルアミドゲルを用いて分離される。例えば、各培養物由来の30マイクログラム(μg)の総ポリペプチドが使用され、そしてゲルのウェルにロードされる。ゲルを泳動し、そしてポリペプチドをクマシー・ブリリアント・ブルーで染色した後に、2つのレーンを比較することができる。ポリペプチドが検出できるレベルで発現されるか又はされないかを決定する際に、培養物由来の30μgの総ポリペプチドをSDS-PAGEゲル上で分離し、そして当該技術分野に既知の方法を用いてクマシー・ブリリアント・ブルーで染色した。眼で見ることができるポリペプチドは検出レベルで発現されるとみなす一方、目で見ることができないポリペプチドは、検出レベルで発現されていないとみなすことができる。
【0037】
本発明のポリペプチドは、免役原性活性を有してもよい。「免役原性活性」は、動物において免役応答を誘発するポリペプチドの能力を指す。ポリペプチドに対する免疫応答は、動物において、当該ポリペプチドに対する細胞性及び/又は抗体媒介生免疫応答を発達させることである。通常、免疫応答は、非限定的に、1以上の以下の効果:ポリペプチドのエピトープ又はエピトープ類に対する抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、及び/又は細胞障害性T細胞の産生を含む。「エピトープ」は、特異的B細胞及び/又はT細胞が応答し、その結果当該部位に対する抗体が産生される抗原の部位を指す。免役原性活性は保護的であってもよい。「保護的免役原性活性」は、エルシニアspp.、例えばY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスによる感染を予防又は阻害する動物において免疫応答を誘発するポリペプチドの能力を指す。ポリペプチドが保護的免役活性を有するかについては、当該技術分野に知られている方法により、例えば実施例4又は実施例7に記載される様に、決定することができる。例えば、本発明のポリペプチド又は本発明のポリペプチドの組み合わせは、マウスなどのげっ歯類をエルシニアspp.での暴露に対して保護する。本発明のポリペプチドは、血清反応活性を有してもよい。「血清反応活性」は、エルシニアspp.、好ましくはY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスで感染された動物から得た回復期血清において存在する抗体と反応する候補ポリペプチドの能力を指す。本発明のポリペプチドは、免役調節活性を有しても良い。「免役調節活性」は、特定の抗原に対する免疫応答を高めるために非特異的な様式で作用するポリペプチドの能力を指す。ポリペプチドが免役原性を有するかを決定する方法は、当該技術分野に知られている。
【0038】
本発明のポリペプチドは、参照微生物により発現されるポリペプチドの特性を有する。当該特性は、分子量及び質量フィンガープリントの両方を含む。参照微生物は、Y.エンテロコリチカ、Y.シュードツベルクロシス、Y.ペスチス、Y.ルッケリ、Y.ローデイ、Y.アルドバエ、Y.ベルコビエリ、Y.フレデリクセニー、Y.インターメディア、Y.クリステンセニー、又はY.ムーラレッティー、好ましくY.エンテロコリチカ、例えば、Y.エンテロコリチカATCC27729株、又はY.ペスチス、例えば、Y.ペスチスKIM6+株でありうる(Gongら、Infect. Immun.、69:2829-2837 (2001))。
【0039】
参照微生物が、Y.エンテロコリチカ、例えば、Y.エンテロコリチカATCC27729株である場合、候補ポリペプチドが268kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、又は45kDaの分子量を有し、そして参照微生物により発現されかつ268kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、又は45kDaの分子量を有する金属制御ポリペプチドの質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、候補ポリペプチドは本発明のポリペプチドであると考えられる。好ましくは、その様なポリペプチドは金属制御性である。例えば、候補ポリペプチドが83kDaの分子量を有し、そして参照株Y.エンテロコリチカATCC27729株により産生される金属制御83kDポリペプチドのうちの一における質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、候補化合物は本発明のポリペプチドである。候補ポリペプチドが92kDa、54kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、又は28kDaの分子量を有し、そして参照微生物により発現され、かつそれぞれ92kDa、54kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、又は28kDaの分子量を有するポリペプチドの質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、当該候補ポリペプチドはまた、本発明のポリペプチドであると考えられる。
【0040】
参照微生物がY.ペスチス、例えばY.ペスチスKIM6+株である場合、候補ポリペプチドが、254kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、又は20kDaの分子量を有し、そして参照微生物により発現され、かつそれぞれ254kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、又は20kDaの分子量を有する金属制御ポリペプチドの質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、当該候補ポリペプチドは本発明のポリペプチドであると考えられる。好ましくは、このようなポリペプチドは金属制御性である。例えば、候補ポリペプチドが94kDaの分子量を有し、そして参照株であるY.ペスチスKIM6+株により産生される金属制御94kDaポリペプチドのうちの一つにおける質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、当該候補ポリペプチドは本発明のポリペプチドである。候補ポリペプチドが104kDa、99kDa、60kDa、又は44kDaの分子量を有し、そして参照微生物により発現され、かつ104kDa、99kDa、60kDa、又は44kDaの分子量をそれぞれ有するポリペプチドの質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、当該候補ポリペプチドは本発明のポリペプチドであると考えられる。
【0041】
参照微生物により発現され、そして分子量により上で言及されるポリペプチドは、低金属条件下で参照微生物を生育させ、そして続いて本明細書に開示される方法によりポリペプチドを単離することにより獲得することができる。候補ポリペプチドは、微生物、好ましくはグラム陰性微生物、より好ましくは腸内細菌科の一種、好ましくはエルシニア属の一種、例えばY.エンテロコリチカ、Y.シュードツベルクロシス、又はY.ペスチスから単離できる。候補ポリペプチドは、組換え、酵素、又は化学技術を用いて産生されてもよい。
【0042】
候補ポリペプチドが参照微生物により発現され、そして分子量により上で言及されたポリペプチドの質量フィンガープリントと類似する質量フィンガープリントを有するかを決定するために、当該候補ポリペプチドは、質量分析により評価されてもよい。典型的には、候補ポリペプチドは、ゲル電気泳動により候補ポリペプチドを分離し、そして候補ポリペプチドを含有するゲル部分を切り取ることにより単離される。異なる特性に基づいてポリペプチドを分離する任意のゲル電気泳動方法を使用することができ、例えば1次元又は2次元ゲル電気泳動、並びに、例えば疎水性、pI、又は大きさに基づいた液体クロマトグラフィー分離を含む。候補ポリペプチドは、例えばプロテアーゼを用いた切断により断片化される。好ましくは、プロテアーゼは、リジン又はアルギニンに続くアミノ酸がプロリンである場合を除き、アミノ酸リジンとアミノ酸アルギニンのカルボキシ末端側でペプチド結合を切断する。その様なプロテアーゼの一例はトリプシンである。ポリペプチドをトリプシンで切断する方法は通常行われており、そして当該技術分野に知られている。かかる方法の例は、実施例9に開示されている。
【0043】
ポリペプチドの質量分析方法は通常行われており、そして当該技術分野に知られており、そして非限定的に、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析(Maldi-Tof MS)を含む。一般的に、候補ポリペプチドから得られたポリペプチド断片を含む混合物は、レーザーエネルギーをサンプルに伝え、そしてイオン化、好ましくはモノアイソトピックのポリペプチド断片を産生するマトリックスと混合される。使用可能なマトリックスの例は、例えばシナピン酸又はシアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸を含む。MALDI-TOF MSによるポリペプチドの分析方法の例は、実施例9に記載される。イオン化ポリペプチド断片は、m/z比に従って分離され、そしてm/z比対強度のスペクトルをもたらすように検出される。スペクトルは、候補ポリペプチドから得られるポリペプチド断片を表すm/z値を含む。所定のポリペプチドについて、トリプシン切断から得られた各ポリペプチド断片の量は、等モルであるはずである。しかしながら、トリプシン切断が常に100%の効率ではなく、例えば、幾つかのサイトがより効率的に切断されることが知られている。こうして、MALDI-TOF MSはm/z値を決定するために使用される場合、各m/z値の強度は一般的に同一ではない。一般的に、x軸(m/z比の値を有する軸)の大部分にわたり、スペクトルはバックグランドレベルのノイズを有する。このノイズのバックグランドレベルは、実行条件及び使用される機械に依存して変化し、そして当該スペクトルの目視検査により間単に同定される。m/z値は一般的に、強度がノイズのバックグランドレベルよりも少なくとも2倍、3倍、又は4倍大きい場合、ポリペプチド断片を表すと考えられている。スペクトルは通常、不完全な切断、過切断、混合物中に存在しうる他のポリペプチド、又はポリペプチドを切断するために使用されたプロテアーゼから得られる不自然な結果を通常含み、例えばプロテアーゼの自己溶解からもたらされるm/z値を含む。ポリペプチドをプロテアーゼで切断する当該方法は、かなり正確性の高い質量スペクトルをもたらすと当業者により認識されており、ポリペプチドを正確に特徴づけし、そしてポリペプチドを他のポリペプチドと区別するために使用できる。
【0044】
本発明のこの態様では、候補ポリペプチドを質量分析により分析する際に、好ましくは候補ポリペプチドと参照微生物由来のポリペプチドの両方を同時に調製しそして分析し、それによりサンプルの取り扱い及び実行条件の差からもたらされる潜在的な不自然な結果を低減する。好ましくは、2個のポリペプチドを調製しそして分析するために使用される試薬は全て同じである。例えば、参照微生物由来のポリペプチド及び候補ポリペプチドは、実質的に同じ条件下で単離され、実質的に同じ条件下で断片化され、そして実質的に同じ条件下で同じ機械上でMALDI-TOF MSにより分析される。m/z値の少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は実質的に全てが参照微生物ポリペプチドのスペクトルに存在し、そして上記バックグランドレベルのノイズが候補ポリペプチドのスペクトルに存在する場合、候補ポリペプチドの質量フィンガープリントが、参照微生物由来のポリペプチドの質量フィンガープリントに類似すると考えられる。
【0045】
別の態様では、ポリペプチドが表1又は表2において記載される参照ポリペプチドの分子量を有し、そして表1又は表2に記載されるように参照ポリペプチドのポリペプチド断片の集合を含む質量フィンガープリントを有する場合、当該ポリペプチドは、本発明のポリペプチドであると考えられる。
【0046】
例えば、本発明のポリペプチドは、83kDaのポリペプチド、並びに686.37、975.45、1000.53、1015.46、1140.65、1169.68、1170.64、1197.57、1342.55、1356.74、1394.67、1452.73、1476.72、1520.76、1692.77、1715.75、1828.79、1960.91、2013.02、2018.95、2040.97、2163.05、2225.03、2416.19、及び3174.44の質量を有するポリペプチド断片を含む質量フィンガープリント、或いは1001.49、1103.57、1139.57、1154.51、1170.49、1208.59、1213.67、1337.70、1452.86、1567.84、1633.85、1650.82、1659.91、1708.77、1748.95、1849.92、1986.98、2103.95、2111.03、2163.11、2386.19、2452.09、2537.34、及び3422.66の質量を有するポリペプチド断片を含む質量フィンガープリントを含む。候補ポリペプチドの質量フィンガープリントは、質量分析法により、例えばMALDI-TOF MSにより、決定できる。候補ポリペプチドの質量フィンガープリントは、一般的にさらなるポリペプチド断片を有し、その結果、表1又は表2におけるポリペプチドについて記載されたポリペプチド以外の更なるm/z値を有するであろう。好ましくは候補ポリペプチドが表1又は表2のポリペプチドに比較される場合、候補ポリペプチドは、Y.ペスチス、Y.シュードツベルクロシス、又はY.エンテロコリチカ、より好ましくは、Y.エンテロコリチカ又はY.ペスチスから得られる。候補ポリペプチドは、低金属条件下で微生物を生育すること、そしてそれに続き本明細書に記載される方法によりポリペプチドを単離することにより得ることができる。
【0047】
アミノ酸の改変、例えば酸化及びカルバミドメチル誘導体の形成など、が、サンプルの取り扱いの間に偶発的に導入されうるということが当該技術分野においてよく知られている。さらに、これらの改変タイプは、ポリペプチド断片のm/z値を変化させる。例えば、ポリペプチド断片が、酸化されたメチオニンを含む場合、m/z値は、酸化メチオニンを含まない同じ断片に対して16だけ増加するであろう。従って、「酸化(M)」という注釈を有する表1及び表2におけるこれらのポリペプチドは、酸化メチオニンを含まない同じ断片に対して16だけ増加したm/z値を有する。表1及び表2のポリペプチド断片が、サンプルの取り扱いの間に改変されうるということが理解される。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
【表7】
【0055】
【表8】
【0056】
【表9】
【0057】
【表10】
【0058】
【表11】
【0059】
【表12】
【0060】
【表13】
【0061】
【表14】
【0062】
【表15】
【0063】
さらに別の態様では、本発明は、アミノ酸配列と類似性を有するポリペプチドをさらに含む。類似性は、構造類似性と呼ばれ、そして2個のアミノ酸配列(つまり、候補アミノ酸配列及び参照アミノ酸配列)の残基をアラインし、その配列の長さに沿って同一なアミノ酸の数を最適化することにより、一般的に決定される;いずれか、又は両方の配列におけるギャップが、同一アミノ酸の数を最適化するためにアライメントをする際に許容されるが、それにも関わらず、各配列におけるアミノ酸はその適切な順番のままでなければならない。参照アミノ酸配列は、表3及び表4に開示される。2個のアミノ酸配列は、市販のアルゴリズムを用いて比較できる。好ましくは、2個のアミノ酸配列は、Tatusovaらにより記載されるように、BLAST2サーチアルゴリズムのBlastpプログラムを用いて比較され(FEMS Microbiol Lett 1999, 174:247-250)、そして国立衛生研究所の全米バイオテクノロジー情報センターにより維持されるインターネットサイトで、ワールドワイドウェブをとおして利用できる。好ましくは、BLAST2サーチパラメーターについての全てのデフォルトの値、例えばマトリックス=BLOSUM62;オープンギャップペナルティ=11、イクステンションギャップペナルティ=1、ギャップx_dropoff=50、イクセプト=10、ワードサイズ=3、及び場合によりフィルターオンが使用される。BLASTサーチアルゴリズムを用いた2個のアミノ酸配列の比較において、構造類似性は、「同一性(identities)」と呼ばれる。好ましくは、候補アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列に対して、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性を有する。好ましくは、候補アミノ酸配列及び参照アミノ酸配列の分子量は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定される。候補ポリペプチドは、低金属条件下で微生物を生育させ、そして続いて本明細書に開示される方法によりポリペプチドを単離することにより獲得できる。
【0064】
【表16】
【0065】
【表17】
【0066】
一般的に、参照アミノ酸配列に構造類似性を有する候補アミノ酸配列は、免役原性活性、保護免役原性活性、血清反応活性、免役調節活性、又はそれらの組み合わせを有する。
【0067】
参照微生物により発現され、そして分子量により上で言及されるポリペプチドは、低金属条件下で参照微生物を増殖させ、続いて本明細書に開示される方法によりポリペプチドを単離することによって得ることができる。候補ポリペプチドは、微生物から、好ましくはグラム陰性微生物、より好ましくは腸内細菌科のメンバー、好ましくはエルシニア属のメンバー、例えばY.エンテロコリチカ、Y.シュードツベルクロシス、又はY.ペスチスから単離できる。候補ポリペプチドは、組換え、酵素、又は化学技術を用いて産生されてもよい。
【0068】
本発明のポリペプチドの1以上を発現する微生物の全細胞調製物もまた本発明により提供される。全細胞調製物中に存在する細胞が複製できないが、当該微生物により発現される本発明のポリペプチドの免役原性活性が維持されるように、当該細胞は好ましくは不活性化される。一般的に、当該細胞は、グルタルアルデヒド、ホルマリン、又はホルムアルデヒドなどの薬剤に晒すことにより殺菌される。
【0069】
本発明の組成物は、本明細書に記載される少なくとも1のポリペプチド、又は1を超える整数(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4)である多くのポリペプチドを含んでもよい。幾つかの態様では、組成物は、少なくとも2個の金属制御ポリペプチド及び少なくとも2個のポリペプチドであってその発現が金属の存在により有意に影響されないポリペプチドを含んでもよい。例えば、ポリペプチドがY.エンテロコリチカから単離可能である場合、組成物は、268kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、45kDaの分子量を有する2、3、4、5又はそれより多い単離された金属制御ポリペプチド、又は任意のサブセット若しくはその組み合わせ、並びに92kDa、54kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、28kDaの分子量を有する2個の単離されたポリペプチド、又は任意のサブセット又はその組み合わせを含むことができる。別の例では、ポリペプチドがY.ペスチスから単離可能である場合、組成物は254kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、31kDa、28kDa、20kDaの分子量を有する2、3、4、5、又はそれより多い単離された金属制御ポリペプチド、又は任意サブセット若しくはその組み合わせ、並びに104kDa、99kDa、60kDa、44kDa、46kDa、37kDa、36kDaの分子量を有する2個の単離されたポリペプチド、又は任意のサブセット若しくはその組み合わせを含むことができる。組成物は、1の微生物から単離できるポリペプチドを含むことができるか、又は2以上の微生物の組合せから単離できる。例えば、組成物は、2以上のエルシニアspp.から、2以上のY.エンテロコリチカ株から、又はエルシニアspp.から単離可能であるポリペプチ、並びにエルシニア属のメンバーではない異なる微生物から単離できるポリペプチドを含むことができる。本発明はまた、1以上のエルシニアsppの全細胞調製物を含む組成物も提供する。
【0070】
場合により、本発明のポリペプチドは、当該ポリペプチドの免役学的性質を改良するためにキャリアポリペプチドに共有結合又は結合されうる。有用なキャリアポリペプチドは、当該技術分野に知られている。例えば、本発明のポリペプチドは、F1抗原又はV抗原などのエルシニア外膜免役源に結合することができる。同様に、多糖成分は、本発明のタンパク質に結合されて、当該組成物の保護効果を高める。本発明のポリペプチドを化学的に結合させることは、既知でかつ通常の方法を用いて行うことができる。例えば、様々なホモ二機能性及び/又はへテロ二機能性架橋剤、例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート、ビス(ジアゾベンジジン)、ジメチルアジピミデート、ジメチルピメリミデート、ジメチルスペリミデート、ジスクシンイミジル・スベラート、グルタルアルデヒド、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミド、スルホ-m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミド、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヒアン-1-カルボキシラート(sulfosuccinimidyl 4-(N-maleimidomethyl)cycloheane-1-carboxylate)、スルホスクシンイミジル4-(p-マレイミド-フェニル)ブチラート、及び(1-エチル-3-(ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミドを使用することができる(例えば、Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, generally and Chapter 5, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, NY (1988)を参照のこと)。
【0071】
好ましくは、本発明のかかる組成物は、低濃度のリポ多糖(LPS)を含む。LPSは、多くのグラム陰性細菌の外膜の成分であり(例えば、Nikaido及びVaara, Outer Membrane, In: Escherichia coli and Salmonella typhimurium, Cellular and Molecular Biology, Neidhardtら、(編) American Society for Microbiology, Washington, D.C., pp. 7-22 (1987)を参照のこと)、そして典型的に多糖(O-特異的鎖、外膜及び内部コア)及びリピドA領域を含む。LPSのリピドA成分は、LPS構造の中で最も生物学的に活性な成分であり、そしてともに、哺乳動物で広範囲の病態生理学的作用を誘導する。最も劇的な作用は熱、播種性静脈内凝固、補体活性化、低血圧ショック、及び死亡である。LPSの非特異的免役刺激活性は、LPSを含む組成物の投与部位において肉種の形成を高めうる。
【0072】
LPSの濃度は、当業者に周知の通常の方法を用いて決定されうる。その様な方法は、典型的に、LPSによる色素結合の計測(例えば、Keler及びNowotny, Analyt. Biochem., 156, 189 (1986))、又はリムルス・アメボサイト(lymulus amebocyte)ライセート(LAL)試験の使用を含む(例えば、Endotoxins and Their Detection With the Limulus Amebocyte Lystate Test, Alan R. Liss, Inc., 150 Fifth Avenue, New York, NY (1982)を参照のこと)。LAL試験で一般的に使用される4種の基礎的な市販の方法:ゲルクロット試験;濁度分析(分光)試験;比色試験;及び発色試験が存在する。ゲル-クロットアッセイの例は、商標名:E-TOXATE(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO; Sigma 技術告示第210号を参照のこと)、及びPYROTELL(Associates of Cape Cod, Inc., East Falmouth, MA)のもとで市販されている。一般的に、アッセイ条件は、組成物を、カブトガニ(リムルス ポリフェムス)の循環変形細胞のライセートを含む調製物と接触させることを含む。LPSに晒された場合、ライセートの不透明度及び粘度が増加し、そしてゲル化することもある。約0.1mlの組成物がライセートに加えられる。一般的に、組成物のpHは、6〜8であり、好ましくは6.8〜7.5の間である。組成物及びライセートの混合物は、約37℃で約1時間インキュベートされる。インキュベート後に、当該混合物のゲル化が存在するかを決定するために観察される。ゲル化はエンドトキシンの存在を指し示す。組成物中に存在するエンドトキシンの量を測定するために、エンドトキシンの標準溶液の希釈を行い、そして組成物が試験される時間と同じ時間試験される。エンドトキシンの標準化溶液は、例えば、Sigma Chemical(カタログ番号第210-SE)、米国薬局方(Rockville, MD, カタログ番号第235503)、及びAssociates of Cape Cod, Inc., (カタログ番号E0005)から市販されている。一般的に、本明細書に記載される方法により微生物からポリペプチドを単離することによって、本発明の組成物が調製される場合(例えば、細胞を破壊しそして可溶化し、そして不溶性のポリペプチドを回収することを含む)、本発明の組成物におけるLPSの量は、同条件下で破壊されたが可溶化されていない同量の微生物の混合物において存在するLPSの量より少ない。一般的に、本発明の組成物中におけるLPSのレベルは、選好順序を増加させる際に、同一の微生物を破壊するが、可溶化しないことにより調製される組成物中のLPSのレベルに対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%だけ減少する。
【0073】
本発明の組成物は、場合により、医薬として許容される担体をさらに含む。「医薬として許容される」は、組成物の他の成分と適合し、そしてその受容者にたいして有害ではない希釈剤、担体、賦形剤、塩などを指す。一般的に、組成物が本明細書に記載されるように使用される場合、医薬として許容される担体を含む。本発明の組成物は、選択された投与経路、例えば抗原に対する免疫応答を刺激するために適した経路、に適合される様々な形態で医薬製剤において剤形されてもよい。こうして、本発明の組成物は、例えば、経口;皮内、経皮及び皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内などの非経口;及び鼻腔内、肺内、乳房内、膣内、子宮内、皮内、経皮的、及び直腸内などの局所的を含む既知の経路を介して投与することができる。例えば動物の体を通して分泌性IgA抗体を産生することなどの粘膜性免役を刺激するために、鼻腔内又は呼吸器粘膜に投与すること(例えば、スプレー又はエアロゾル)により粘膜表面に投与することができるということが予見される。
【0074】
本発明の組成物は、徐放性又は遅延放出性インプラントを介して投与することもできる。本発明に記載される使用に適したインプラントが知られており、そして例えば、Emery 及びStraub (WO 01/37810 (2001))、及びEmeryら (WO 96/01620 (1996))に開示されるインプラントを含む。インプラントは、エアロゾル又はスプレーにより投与するために十分小さいサイズで製造されうる。インプラントはまた、ナノスフィア及びマイクロスフィアを含む。
【0075】
本発明の組成物は、本明細書に記載される特定の病気を治療するために十分な量で投与されてもよい。本発明の組成物中に存在するポリペプチド又は全細胞の量は、変化することができる。例えば、ポリペプチドの投与量は、0.01μg〜300mgの間、典型的には0.1mg〜10mgの間でありうる。組成物が全細胞調製物である場合、細胞は、例えば、102細菌/ml、103細菌/ml、104細菌/ml、105細菌/ml、106細菌/ml、107細菌/ml、108細菌/ml、又は109細菌/mlの濃度で存在しうる。注射組成物(例えば、皮下、筋肉内など)では、ポリペプチドは、投与される組成物の総量が、0.5ml〜5.0ml、典型的には1.0〜2.0mlであるような量で、組成物中に存在する。投与される量は、非限定的に選択される特異的ポリペプチド、動物の体重、生理的条件、及び年齢、及び投与経路を含む様々な因子に依存して変化するであろう。こうして、所定の単位用量形態に含まれるポリペプチドの絶対重量は、広く変化させることができ、そして動物の種類、年齢、体重、及び生理的条件などの因子、並びに投与方法に依存する。かかる因子は、当業者により決定されうる。本発明に適した投与の他の例は、Emeryらの米国特許第6,027,736号において開示される。
【0076】
製剤は、単位用量形態で都合よく存在しても良く、そして薬学技術においてよく知られた方法により調製されても良い。医薬として許容される担体を含む組成物を製造する全ての方法は、1以上の付属成分から構成される担体に当該活性化合物(例えば、ポリペプチド又は本発明の全細胞)を関連させるステップを含む。一般的に、製剤は、活性化合物を液体担体、細かく分割された固体担体、又はその両方と密接に及び均一に関連させ、次に必要に応じて生成物を所望の製剤の形状にすることにより調製される。
【0077】
医薬として許容される担体を含む組成物は、アジュバントを含むことができる。「アジュバント」は、特定の抗原に対する免疫応答を高めるために非特異的様式で作用することができる薬剤を指し、そうして任意の所定の免疫化組成物中に必要とされる抗原量、及び/又は関心の抗原に応答する適切な免役を生成するために必要な注射の頻度を潜在的に低減させる。アジュバントは、例えば、IL-1、IL-2、乳化剤、ムラミルジペプチド、ジメチルジオクタデシルアンモニウム・ブロミド(DDA)、アブリジン、水酸化アルミニウム、油、サポニン、α-トコフェロール、多糖類、乳化パラフィン(例えば、商標名EMULSIGENでMVP Laboratories, Ralston, Nebraskaから市販されるパラフィン)、ISA-70、RIBI、及び当該技術分野で知られている他の物質を含んでもよい。本発明のポリペプチドが免役調節活性を有すること、並びにかかるポリペプチドがT及び/又はB細胞アクチベーターとして直接作用するか、又は様々なサイトカインの合成を高め若しくは細胞内シグナル伝達を活性化する特異的細胞型に作用するアジュバントとして使用されうることが予期される。かかるポリペプチドは、現存する組成物の保護指数を増加させるために免疫応答を増強することが予期される。
【0078】
別の実施態様では、医薬として許容される担体を含む本発明の組成物は、生物反応修飾物質、例えば、IL-2、IL-4、及び/又はIL-6、TNF、IFN-α、IFN-γ、及び免疫細胞に作用する他のサイトカイン、を含むことができる。免役化組成物は、抗生物質、保存剤、抗酸化物質、又はキレート剤などの当該技術分野に知られている他の成分を含むことができる。
【0079】
本発明は、本明細書に記載されるポリペプチドを得るための方法も提供する。ポリペプチド及び本発明の全細胞は、エルシニアspp.から単離可能である。好ましい例は、Y.エンテロコリチカ、Y.ペスチス、及びY.シュードツベルクロシスを含む。本発明のポリペプチドを獲得し、そして全細胞調節物を作成するために有用な微生物は、容易に利用できる。さらに、このような微生物は、通常技術により容易に単離可能であり、そして当該技術分野に知られている。微生物は、野生分離株として感染動物に由来してもよく、そして本発明のポリペプチド及び/又は全細胞調製物を得るために使用されてもよく、又は将来使用するために20%グリセロールを含む生物培地及び他の同様の培地中で-20℃〜-95℃で凍結貯蔵庫で貯蔵されてもよい。
【0080】
本発明のポリペプチドが微生物から獲得できる場合、当該微生物は低金属条件下でインキュベートされうる。本明細書で使用される場合、「低金属条件」というフレーズは、微生物に金属制御ポリペプチドを発現させるか、又は当該ポリペプチドの発現を高めさせる遊離金属の量を含む環境、典型的には生物培地を指す。本明細書に使用される場合、「高金属条件」という用語は、細胞に検出可能なレベルで本明細書に記載される1以上の金属制御ポリペプチドを発現させないか、又はかかるポリペプチドの発現を低下させる遊離金属の量を含む環境を指す。金属は、1族から17族の周期表に存在する金属である(IUPAC表記;CAS表記ではそれぞれI-A、H-A、III-B、IV-B、V-B、VI-B、VII-B、VIII、I-B、H-B、III-A、IV-A、V-A、VI-A、及びVII-A族とも呼ばれる)。好ましくは、金属は、2族から12族の金属であり、より好ましくは3族〜12族の金属である。さらにより好ましくは、当該金属は、鉄、亜鉛、銅、マグネシウム、ニッケル、コバルト、マンガン、モリブデン、又はセレンであり、最も好ましくは鉄である。
【0081】
低金属条件は、一般的に金属キレート化合物を細菌培地に加えるか、又は少量の金属しか含まないように調製された細菌培地を使用することの結果である。高金属条件は、キレート物質が培地中に存在せず、金属が当該培地に加えられるか、またはその両方の組み合わせの場合に存在する。金属キレート物質の例として、天然及び合成化合物が挙げられる。天然化合物の例として、フラボノイドなどの植物性フェノール化合物が挙げられる。フラボノイドの例として、銅キレート剤であるカテキン及びナリンゲニンが挙げられ、そして鉄キレート剤であるミリセチン及びケルセチンが挙げられる。合成銅キレート剤の例として、例えば、テトラチオモリブデートが挙げられ、そして合成亜鉛キレート剤として、例えばN,N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)-エチレンジアミンが挙げられる。合成鉄キレート剤の例として、2,2'-ジピリジル(当該技術分野において、α,α'-ビピリジルとも呼ばれる),8-ヒドロキシキノリン、エチレンジアミン-ジ-O-ヒドロキシフェニル酢酸(EDDHA)、デスフェリオキサミン・メタンスルホネート(デスフェロール)、トランスフェリン、ラクトフェリン、オボトランスフェリン、生物学的親鉄剤、例えば、カテコール類及びヒドロキサメート類、及びクエン酸が挙げられる。好ましくは、2,2'-ジピリジルが鉄のキレートに使用される。典型的に2,2'-ジピリジルは、少なくとも0.0025μg/ml、少なくとも0.025μg/ml、又は少なくとも0.25μg/ml、そして一般的には10μg/ml以下、20μg/ml以下、又は30μg/ml以下の濃度で培地に加えられる。
【0082】
fur遺伝子に変異を有するエルシニアspp.は、全部ではないが、本発明の鉄制御ポリペプチドの多くの構成的な発現をもたらすことが予期される。エルシニアspp.のfur変異体は、例えば、トランソポゾン、化学又は部位特異的突然変異誘導であって、グラム陰性細菌に遺伝子ノックアウト変異を生成するのに有用であるものを用いて生成されうる。
【0083】
微生物をインキュベートするために使用される培地及び微生物をインキュベートするために使用される培地の体積は変化しうる。微生物が、本明細書に記載されるポリペプチドの1以上を産生する能力について評価される場合、微生物は、適切な体積、例えば10ml〜1lの培地で成長することができる。例えば、動物に投与するのに用いるポリペプチドを得るために微生物を生育させる場合、多量のポリペプチドの単離を可能にするために、微生物を発酵槽で生育させてもよい。発酵槽において微生物を生育させる方法は、当該技術分野で通常行われており、そして知られている。微生物を生育させるために使用される条件は、金属キレート剤、より好ましくは鉄キレート剤、例えば、2,2'-ジピリジル、6.5〜7.5、好ましくは6.9〜7.1のpH、及び37℃の温度を含む。
【0084】
本発明の幾つかの態様では、微生物は生育後に回収されうる。回収は、微生物を小体積に濃縮し、そして生育培地とは異なる培地中に懸濁することを含む。 微生物の濃縮方法は、当該技術分野において通常行われており、そして知られており、そして例えば、ろ過又は遠心を含む。典型的に、濃縮微生物は、少なくされた量の緩衝液に懸濁される。好ましくは、最終的な緩衝液は、カチオン性のキレート剤、好ましくはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を含む。好ましくは、最終的な緩衝液は、カチオンキレート剤、好ましくはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を含む。使用されうる緩衝液の例は、pH8.5のTris塩基(7.3g/l)及びEDTA(0.9g/l)を含む。場合により、最終的な緩衝液はタンパク質分解を最小にする。これは、最終緩衝液を、8.0を超えるpH、好ましくは少なくとも8.5のpHにすること、及び/又は1以上のプロテイナーゼ阻害剤(例えば、フェニルメタンスルホニル・フロリド)を含めることにより達成されうる。場合により、そして好ましくは、濃縮微生物は、-20℃又はそれ以下の温度で破砕されるまで凍結される。
【0085】
微生物が全細胞調製品として使用される場合、回収された細胞は、当該細胞を不活性するために通常行われかつ既知の方法を用いて処理されうる。或いは、本発明のポリペプチドを調製するために微生物が使用される場合、微生物は、当該技術分野で通常行われかつ知られている化学、物理、又は機械的方法、例えば、フレンチプレス、ソニケーション、ホモジェナイズ、を用いて破砕されてもよい。好ましくは、ホモジェナイズが使用される。ホモジェナイズに有用な適切な装置の例は、モデルC500 Avestin ホモジェナイザー(Avestin Inc, Ottawa Canada)である。本明細書に使用される場合、「破砕」は、細胞を破壊することを指す。微生物の破砕は、当該技術分野において通常行われかつ知られている方法により計測することができ、例えば、光学密度の変化を含む。典型的に、微生物は、1:100の希釈物が計測される場合、透過率が20%だけ増加されるまで、微生物は破砕にかけられる。破砕の間の温度は、タンパク質分解をさらに最小にするため一般的に低く、好ましくは4℃に維持される。
【0086】
破砕された微生物は、界面活性剤、例えばアニオン性、両性、非イオン性、カチオン性界面活性剤中に可溶化される。好ましくは、界面活性剤は、サルコシンであり、より好ましくはラウロイルサルコシン・ナトリウムである。本明細書に使用される場合、「可溶化」は、細胞性物質(例えば、ポリペプチド、核酸、炭水化物)を微生物が破砕された緩衝液の水相に溶解することを指し、そして不溶性の細胞性物質の凝集の形成を指す。可溶化の条件は、好ましくは、本発明のポリペプチドを不溶性の凝集体であって、例えば遠心により簡単に単離することを可能にするために十分な大きさである凝集体へと凝集させることをもたらす。
【0087】
LPSの有意な低下は、破砕された微生物が高レベルのサルコシンで可溶化され、長期間可溶化されるか、又はその組み合わせで可溶化される際に一般に観察される。好ましくは、破砕された微生物のグラム重量に対するサルコシンの最終比は、4.5gのペレット質量あたり1.0g〜6.0gのサルコシンであり、好ましくは4.5gのペレット質量あたり4.5gのサルコシンである。微生物の可溶化は、当該技術分野で通常行われかつ知られている方法、例えば、光学密度の変化、により計測されうる。一般的に、可溶化は、少なくとも24時間、好ましくは、少なくとも48時間、より好ましくは少なくとも72時間、最も好ましくは少なくとも96時間で生じることを可能にしても良い。破砕の間の温度は、一般的に低く、好ましくは4℃に保たれる。
【0088】
本発明の1以上のポリペプチドを含む不溶性凝集体は、当該技術分野で通常行われかつ知られている方法により単離されてもよい。好ましくは、不溶性凝集体は、遠心により単離される。一般的に、界面活性剤中で不溶性であるポリペプチドの遠心は、少なくとも50,000×g、典型的には100,000×gの遠心力を必要とする。かかる遠心力を使用することは、超遠心力の使用を必要とし、そして大量のサンプルへのスケールアップは、しばしば難しく、そして遠心のこのようなタイプについては経済的ではない。本明細書に記載される方法は、有意に低い遠心力(例えば、46,000×g)の使用を許容するために十分大きい不溶性凝集体の調製を提供する。これらの低い遠心力で大量の物質を処理する方法が利用でき、そして当該技術分野に知られている。こうして、不溶性の凝集体は、かなり低コストで単離することができる。大量の物質を遠心するために有用な適した装置の例として、T-1Sharples(Alfa Laval Separations, Warminster, PA) 及び Hitachi Himac CC40高速遠心機(Hitachi-Koki Co, Tokyo, Japan)が挙げられる。
【0089】
場合により及び好ましくは、サルコシンは、単離ポリペプチドから取り除かれる。単離ポリペプチドからサルコシンを取り除く方法は、当該技術分野に知られており、そして、例えば、ダイアフィルトレーション、沈澱形成、疎水性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、又はアフィニティ-クロマトグラフィー、並びに限外ろ過及びアルコール中のポリペプチドをダイアフィルトレーションにより洗浄することを含む。単離後に緩衝液中に懸濁され、そして低温、例えば-20℃又はそれ未満で貯蔵された。
【0090】
本発明のポリペプチドは、当該技術分野に知られている方法を用いて、エルシニア属のメンバーから得られてもよい。ポリペプチドの単離は、例えば、Emeryら(米国特許第5,830,479号)、及びEmeryら(米国特許出願第US20030036639 A1)に記載されるように達成されてもよい。
【0091】
全細胞調製物が作成される本発明のこれらの態様では、当該技術分野に知られる方法が使用されうる。例えば、生育した後に、微生物は、グルタルアルデヒド、ホルマリン、又はホルムアルデヒドなどの薬剤を、培養物中の細胞を不活性化するために十分な濃度で加えることで殺菌することができる。例えば、ホルマリンは、3%(体積:体積)の濃度で加えることができる。細胞を不活性化するために十分な時間の後に、細胞は、例えばダイアフィルトレーション及び/又は遠心により回収でき、そして洗浄されうる。
【0092】
本発明の態様は、本発明の組成物を用いる方法にさらに関する。当該方法は、本発明の組成物の有効量を動物に投与することを含む。当該動物は、例えば、トリ(例えば、ニワトリ又はシチメンチョウ)、ウシ(例えば、ウシ)、ヤギ(例えば、ヤギ)、ヒツジ(例えば、ヒツジ)、ブタ(例えばブタ)、バイソン(例えば、バッファロー)、ペット動物(例えば、ネコ、イヌ、及びウマ)、シカ(例えばシカ、エルク、ヘラジカ、カリブー、及びトナカイ)、又ヒトでありうる。
【0093】
幾つかの態様では、当該方法は、哺乳動物に組成物をさらに投与すること(例えば、1回以上の追加免疫投与)をさらに含んで、二次的免疫応答を高めるか又は刺激してもよい。追加免役は、組成物の初回投与後、1〜8週、好ましくは2〜4週の時点で投与されうる。次の追加免役は、毎年1、2、3、4回以上投与されうる。理論に束縛されることを意図せず、本発明の幾つかの態様では、毎年の追加免役は必要でないということが予期される。なぜなら、動物は、当該動物に投与された組成物のポリペプチド上に存在するエピトープに同一であるか又は構造的に関連するエピトープを有する組成物中に存在するポリペプチドを発現する微生物に晒されることによって、野外において暴露されるからである。
【0094】
一の態様では、本発明は、抗体の作成方法、例えば動物において抗体の産生を誘導する方法、又は組換え技術による方法に関する。産生される抗体は、組成物中に存在する少なくとも1のポリペプチドに特異的に結合する抗体を含む。本発明の当該態様では、「有効量」は、哺乳動物において抗体の産生をもたらすために効果的な量である。動物が本発明の組成物中に存在するポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生するかを決定する方法は、本明細書に記載される様に測定されうる。本発明は、さらに、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体、並びにかかる抗体を含む組成物を含む。
【0095】
本方法は、本組成物のポリペプチドが単離された微生物以外の微生物により発現されるポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生するために使用されてもよい。本明細書に使用される場合、ポリペプチドを「特異的に結合できる」抗体は、抗体の合成を誘導した抗原のエピトープと相互作用するか、又は構造的に関連するエピトープと相互作用する抗体である。本発明の組成物に存在するポリペプチドの少なくとも幾つかは、異なる種の微生物のポリペプチドに保存されるエピトープを典型的に含む。従って、1の微生物に由来する組成物を用いて産生された抗体は、他の微生物により発現されるポリペプチドに結合し、そしてグラム陰性細菌に対する広範囲の保護を提供することが予期される。抗体が特異的に結合しうるグラム陰性細菌の例は、腸内病原菌、例えば、腸内細菌科のメンバー、好ましくはエルシニア属のメンバーである。
【0096】
本発明は、本発明のポリペプチド又は本発明のポリペプチド上に存在するエピトープに構造的に関連するエピトープを有するポリペプチドを発現する微生物を標的化するために、かかる抗体を使用することに関する。化合物は、抗体に共有結合でき、ここで当該化合物は、例えばトキシンでありうる。同様に、かかる化合物は、細菌親鉄剤、例えばエルシニアバクチンに結合できて、微生物を標的化する。本発明の抗体、又はその一部(例えば、Fab断片)を化学的にカップリング又は結合することは、既知でかつ通常行われる方法を用いて行うことができる。
【0097】
一の態様では、本発明は、また、動物において、グラム陰性細菌、好ましくはエルシニア属の一種により引き起こされる感染を治療することに関する。本明細書に使用される場合、「感染」という用語は、グラム陰性細菌、好ましくは、動物体内におけるエルシニア属の一種が動物の体内に存在することを指し、臨床的に明らかであってもなくてもよい。臨床的に明らかではないエルシニア属の一種による感染を患う動物は、しばしば、無症状性のキャリアと呼ばれる。当該方法は、エルシニア属の一種により引き起こされる感染を有する動物に本発明の組成物の有効量を投与し、そして感染を引き起こすエルシニアspp.が減少するかを決定することを含む。感染がエルシニア属の一種により引き起こされるかを決定する方法は、通常行われており、そして当該技術分野に知られている。
【0098】
別の態様では、本発明は、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、イヌ、トリ、げっ歯類、及びシカなどの動物において特定病気の1以上の症状であって、エルシニア属の一種による感染により引き起こされる症状を治療する方法に関する。エルシニアspp.感染により引き起こされる症状の例は、例えば、ウシ、ヒツジ、及びブタ動物及びヒトにおける下痢又は腸炎、イエネコ及びヒトにおけるペスト様の病気、ウシ及び羊における流産、ラムにおける精巣上体炎-精巣炎及び羊における複数の膿瘍形成を含む。本発明のさらに別の態様は、特にマス及びサケの集約的な水産養殖における魚類の冷水病、例えば幼魚の腸管性レッドマウス病、の治療に関する。これらの条件に関わる症状の治療は、予防治療であってもよいし、又は或いは本明細書に記載される病気の発達後に開始されてもよい。本明細書に使用される場合、「症状」という用語は、エルシニアspp.の一種による感染により引き起こされる病気の対象における客観的徴候を指す。本明細書に記載される病気に関わる症状及びかかる症状の評価は、当該技術分野で通常行われておりかつ知られている。予防的である治療、例えば対象が微生物により引き起こされる病気の症状を示す前に開始される治療は、病気を発達させる危険性のある対象の治療として本明細書において言及される。一般的に、病気を発達させる危険性のある動物は、当該病気が診断された地域にいるか、及び/又は当該病気を引き起こすエルシニアspp.に晒される可能性のある動物である。従って、組成物の投与は、本明細書に記載された病気の発症前、間、又は後に行われうる。病気を発達させた後に開始される治療は、1の病気の症状の重篤度を低減させるか、又は当該症状を完全に取り除くことをもたらしてもよい。本発明の態様では、「有効量」は、疾患症状の徴候を予防するため、疾患症状の重篤度を低減するため、及び/又は症状を完全に取り除くために有効な量である。
【0099】
本発明は、グラム陰性細菌によるコロニー形成を低減すること、例えばグラム陰性細菌による、骨格系(例えば、骨、軟骨、腱、及び人体)、筋肉系(例えば、骨格筋及び平滑筋)、循環系(例えば、心臓、血管、キャピラリー、及び血液)、神経系(例えば、脳、脊髄、及び末梢神経)、呼吸器系 (例えば、鼻、気管、肺、気管支、気管支瘤(bronchioceles)、肺胞)、消化器系(例えば、口、唾液腺、食道、肝臓、胃、大腸、及び小腸)、排泄系(例えば、腎臓、尿管、膀胱、及び尿道)、内分泌系(例えば、視床下部、下垂体、甲状腺、膵臓及び副腎)、生殖系(例えば、卵巣、卵管、子宮、腟、乳腺、精巣、及び精嚢)、リンパ系/免疫系(例えば、リンパ、リンパ節及びリンパ管、単核細胞又は白血球細胞、例えば、マクロファージ、好中球、単球、好酸球、好塩基球、リンパ球T細胞及びB細胞)、並びに特異的細胞系列(例えば、前駆細胞、上皮細胞、幹細胞)などへの付着を阻害することにも関する。好ましくは、グラム陰性細菌は、エルシニア属の一種である。当該方法は、本発明の組成物の有効量を、エルシニア属の一種によりコロニー形成されたか又はコロニー形成される危険性を有する動物に本発明の組成物の有効量を投与することを含む。本発明の態様では、「有効量」は、動物における微生物のコロニー形成を低減させるために有効な量である。動物における微生物のコロニー形成を評価する方法は、当該技術分野で通常行われそして知られている。例えば、微生物による動物の腸管へのコロニー形成は、動物の糞中の微生物の存在を計測することにより測定することができる。微生物による動物へのコロニー形成を低減することは、ヒトへの微生物感染を低減することが予期される。
【0100】
本発明の組成物は、細菌感染に対する能動又は受動免役を与えるために使用することができる。一般的に、当該組成物は、能動免役を提供するために動物に投与することができる。しかしながら、当該組成物は、免疫生成物、例えば抗体の産生を誘導するために使用することができる。抗体は、産生動物から回収し、そして別の動物に投与して、受動免役を提供することができる。免役成分、例えば抗体、は、受動免役治療のために血清、血漿、血液、初乳などから抗体組成物を調製するために回収されうる。モノクローナル抗体及び/又は抗-イディオタイプを含む抗体組成物は、既知の方法を用いて調製することができる。かかる抗体組成物は、キメラ抗体及びヒト化抗体を含む。キメラ抗体は、重鎖及び軽鎖の両方のヒト由来定常領域、及び抗原特異的であるマウス由来可変領域を含む(Morrison ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1984, 81(21):6851-5; LoBuglioら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86(11):4220-4; Boulianneら、Nature, 1984, 312(5995):643-6.)。ヒト化抗体は、(可変領域の)マウス定常及びフレームワーク(FR)を、ヒトの対応部分に置換する(Jonesら、Nature, 1986, 321(6069):522-5; Riechmannら、Nature, 1988, 332(6162):323-7; Verhoeyenら、Science, 1988, 239(4847): 1534-6; Queenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86(24): 10029-33; Daughertyら、Nucleic Acids Res., 1991, 19(9): 2471-6.)。或いは、遺伝子操作されてほぼ完全にヒト由来の抗体を産生する特定のマウス種を使用することができ;免疫化に続き、これらのマウスのB細胞を回収し、そして人モノクローナル抗体を産生させるために不死化される(Bruggeman and Taussig, Curr. Opin. Biotechnol., 1997, 8(4):455-8; Lonberg and Huszar, Int. Rev. Immunol., 1995;13(l):65-93; Lonbergら、Nature, 1994, 368:856-9; Taylorら、Nucleic Acids Res., 1992, 20:6287-95.)。受動抗体組成物、及びその断片、例えば、scFv、Fab、F(ab')2、又はFv、又はその他の改変形態は、血清、血漿、血液、初乳などの形態で受容者に投与されてもよい。しかしながら、抗体は、濃縮又は再構成形態、例えば、洗浄溶液、浸透包帯剤、及び/又は局所薬などで後に使用するために、既知の方法を使用して血清、血漿、血液、初乳などから単離されてもよい。受動免役製剤は、急性全身性疾病の治療、又は母の初乳を通して受動免役の適切なレベルを受けることを失敗した幼若動物の受動免役に特に有利でありうる。受動免役に有用な抗体は、様々な薬剤又は抗生物質に結合させるのに有用であり、これは、全身感染又は局所感染の間、本発明のポリペプチド又は本発明のポリペプチド上に存在するエピトープに構造的に関連するエピトープを有するポリペプチドを発現する細菌を直接標的することができる。
【0101】
動物モデル、特にマウスモデル、は、本発明の組成物を実験的に評価するのに利用できる(例えば、Alpar, H. O.ら、Adv. Drug Deliv. Rev., 51, 173-201, (2001)、Brem, D., et ah, Microbiology, 147, 1115-1127, (2001)、Carter, P. B. and F. M. Collins, Infect. Immun., 9, 851-857, (1974)、Collyn, F.ら、Infect. Immun., 72, 4784-9470, (2004)、Di Genaro, M. S.ら、Microbiol. Immunol., 42, 781-788, (1998)、 Grosfeld, H.ら、Infect Immun, 71, 374-383, (2003)、 Jones, S. M.ら、Vaccine, 19, 358-366, (2001)、Karlyshev, A. V.ら、Infect Immun, 69, 7810-7819, (2001)、 Leary, S. E.ら、Microb Pathog, 23, 167-179, (1997)、Noll, A.ら、Eur J Immunol, 29, 986-996, (1999)、Pelludat, Cら、Infect Immun, 70, 1832-1841, (2002)、Sabhnani, L.ら、FEMS Immunol Med Microbiol, 38, 215-29, (2003)、並びに Williamson, E. D.ら、Vaccine, 19, 566-571, (2000)を参照のこと)。これらのマウスモデルは、エルシニア属のメンバーにより引き起こされるヒト疾患の研究に対する一般的に認められたモデルであり、そしてさらに、エルシニアspp.によるヒト疾病の予防を目的とするワクチンの開発及び初期試験において認められたモデルとして機能した。
【0102】
本発明の別の態様は、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を検出する方法を提供する。これらの方法は、動物が本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体を有するかを検出し、そして動物が本明細書に記載されるポリペプチドを発現するか、又は本明細書に記載されるポリペプチドを有するエピトープを共有するポリペプチドを発現する微生物により引き起こされる病気を有するかを診断するのに有用である。かかる診断システムは、キット形態であってもよい。当該方法は、本発明のポリペプチドを含む調製物と抗体を接触させて、混合物をもたらすことを含む。抗体は、生物学的サンプル、例えば、血液、乳、又は初乳中に存在してもよい。当該方法は、さらに、ポリペプチド:抗体複合体を形成させるために、抗体をポリペプチドを特異的に結合することを可能にする条件下で、混合物をインキュベートすることをさらに含む。本明細書に使用される場合、「ポリペプチド:抗体複合体」という用語は、抗体がポリペプチドに特異的に結合する際にもたらされる複合体を指す。本発明のポリペプチドを含む調製品は、ポリペプチド抗体複合体の形成に適切な条件を提供する試薬、例えば緩衝液を含む。次にポリペプチド:抗体複合体が検出される。抗体検出が、当該技術分野に知られており、そして例えば、免役蛍光及びペルオキシダーゼを含むことができる。本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体の存在を検出する方法は、抗体を検出するために使用された様々なフォーマットで使用でき、ラジオイムノアッセイ及び酵素結合免役吸着アッセイを含む。
【0103】
本発明は、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を検出するキットも提供する。検出される抗体は、グラム陰性細菌、より好ましくは腸内細菌科の一種、エルシニア属の一種、例えば、Y.エンテロコリチカ、Y.シュードツベルクロシス、又はY.ペスチスにより引き起こされる感染を患うと疑われる動物から得られうる。当該キットは、本発明の少なくとも1のポリペプチド、又は1より大きい整数(例えば、少なくとも2、少なくとも3など)である多くのポリペプチドを、少なくとも1回のアッセイに十分な量で適切なパッケージ容器内に含む。場合により、本発明を実施するために必要とされる他の試薬、例えば緩衝液及び溶液も含まれる。例えば、キットは、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体の検出を可能にする試薬、例えば動物から得られた抗体に特異的に結合するように設計された検出可能なように標識された二次抗体を含んでもよい。パッケージされたポリペプチドを使用するための説明書もまた、一般的に含められる。本明細書において使用される場合、「パッケージ容器」は、キットの内容を格納するために使用される1以上の物理的構造を指す。パッケージ容器は、周知の方法により構成されて、一般的に、滅菌非汚染環境を提供する。パッケージ容器は、ポリペプチドが本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体を検出するために使用できるということを指し示すラベルを有していてもよい。さらに、パッケージ容器は、抗体を検出するためにキット内の物質をどのように使用するかを指し示す説明書を含む。本明細書に使用される場合、「パッケージ」という用語は、ガラス、プラスチック、紙、ホイルなどの容器であって、ポリペプチド及び他の試薬、例えば二次抗体を限られた範囲内に保持できる容器を指す。こうして、例えばパッケージは、ポリペプチドのマイクログラムの量が入れられたマイクロタイタープレートでありうる。パッケージは、二次抗体を含みうる。「使用のための説明書」は、試薬濃度、又は少なくとも1のアッセイ方法のパラメーター、例えば混合する試薬とサンプルの相対量、試薬/サンプル混合物の保持時間、温度、緩衝液条件などを記載する具体的な表現を含む。
【0104】
本発明は、以下の実施例により示される。特定の実施例、材料、量、及び方法は、本明細書に記載されるように、本発明の範囲及び本質に従って広く解釈すべきであるということが理解される。
【実施例】
【0105】
実施例1
金属制御タンパク質の産生及び単離
以下の実施例において使用される組成物は、Y.エンテロコリチカATCC27729株及びY.ペスチスKIM6+株(R.D. Perry, ケンタッキー大学から頂いた)に由来するタンパク質を用いて調製した。この2つの株は、それぞれ、凍結ストックから、160μM2,2-ジプリジル又は300μM・FeCl3を含む25mlのトリプティク・ソイ培地(TSB)中に植菌して、400rpmで振盪して37℃でインキュベートした。12時間のインキュベート後、5mlの培養物を500mlの予めインキュベートされた(37℃)160μM2,2-ピリジル又は300μM・FeCl3を含む培地に移し、そして100rpmで攪拌しながら37℃でインキュベートした。8時間のインキュベートの後に、培養物を10000×gで20分間遠心した。細菌ペレットを100mlの滅菌生理食塩水に再懸濁し、そして10000×gで10分間遠心して、全ての夾雑培地タンパク質を取り除いた。細菌ペレットを次に40mlのTris緩衝生理食塩水pH7.2(TBS)に懸濁し、そして0.5インチ破砕ホーンを備えるBranson450(Branson, Danbury CT)を用いて、4℃で1.5分間ソニケーションすることにより破砕した。破砕された細菌懸濁液を32000×gで12分間遠心することにより破砕細菌懸濁液を澄まさせた。上清を回収し、そしてラウロイルサルコシン・ナトリウム(4%vol/vol)を4℃で24時間加えることにより可溶化した。界面活性剤不溶性タンパク質濃縮分画を、32000×gで2.5時間遠心することにより4℃で回収した。タンパク質ペレットを200μlTris-緩衝液(pH7.2)中に再懸濁し、そして-90℃で貯蔵した。各抽出物のサンプルを、標準方法に従って10%SDS-PAGEゲル上で分離し、そしてクマシーブルー染色により可視化した(図3)。
【0106】
実施例2
Y.エンテロコリチカ由来の免疫化組成物の調製
実施例1に記載されるY.エンテロコリチカから作成されるタンパク質は、動物に投与するための組成物を製造するために使用された。組成物は、268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、45kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、又は28kDaの分子量を有するポリペプチドを含んだ。83kDa、70kDa、及び66kDの分子量を有するポリペプチドは、鉄制限条件下でのみ発現され、そして268kDa、79kDa、及び45kDの分子量を有するポリペプチドの発現は、鉄制限条件下で高められた。
【0107】
ストックワクチンは、IKA Ultra Turrax T-50ホモジェナイズ・ベッセル(IKA, Cincinnati, OH)を用いて、水性タンパク質懸濁液(500μg総タンパク質/ml)を市販のアジュバントであるEMULSIGEN(MVP Laboratories, Ralston, Nebraska)に乳濁することにより組成物から調製された。当該ワクチンをマウスに投与して、22.5%vol/volのアジュバント濃度を有する0.1mlの注射体積で50μgのトータルタンパク質の最終濃度を与えた。上記製剤において抗原を生理食塩水に置き換え、そして懸濁液をEMULSIGENに乳濁して、22.5%のアジュバント濃度を与えることにより偽薬が調製される。
【0108】
実施例3
暴露生物体の調製
暴露として使用される場合、Y.エンテロコリチカATCC27729を以下のように調製した。簡潔に記載すると、凍結ストックから得た単離体を、血液アガープレート上にストリーキングし、そして37℃で18時間インキュベートした。1のコロニーを25μg/ml2,2'ジピリジルを含む50mlトリプティック・ソイ培地(Difco)に前培養した。培養物を200rpmで回転させながら37℃で6時間インキュベートし、その時点で培養物を4℃にて10分間10000×gで遠心して細菌をペレット化した。細菌ペレットを4℃の生理食塩水中で遠心することにより2回洗浄した。最終的なペレットを25mlの生理食塩水中に再懸濁し、そして暴露に使用した。暴露の直前に、1mlの上記細菌懸濁液を10倍に連続希釈して、CFU数/マウス用量を測った。
【0109】
実施例4
マウスワクチン接種及び静脈内暴露に対する保護を評価するための暴露試験
Y.エンテロコリチカ組成物の有効性は、マウスにおける生伝染性暴露を用いて評価した。20匹のCF-1マウス(Harlan Breeding Laboratories, Indianapolis, IN)を1群あたり10匹のマウスの2つの群に分けた。対照群におけるマウスを、偽薬でワクチン接種し、一方第二群におけるマウスを実施例1に記載される様に得られた50μgの組成物で免疫化した。14日のインターバルで0.1ccの免疫化液を腹腔内に二回投与した。2回目のワクチン接種後14日において、27729株の暴露用量(9.4×104CFU/マウス)を全てのマウスに尾静脈から投与した。暴露後7日間の致死率を記録した。
【0110】
偽薬でワクチン接種された10匹のマウスのうち、10匹(100%)が暴露後168時間内で死亡した一方、ワクチン接種されたマウスは同じ時間内では死亡しなかった。さらに、ワクチン接種されたマウスの全てが、試験の残りの期間を生存し、これらのマウスを暴露後20日で屠殺した。Kalpan-Meier生存分析及びログランク検定により、免疫化が暴露に対して統計的に有意な保護(p<0.0001-)を提供したことが示された(図1を参照のこと)。これらの結果により、鉄制御条件下で生育されたY.エンテロコリチカ由来のタンパク質がマウスの静脈内感染モデルにおける有効な抗原を構成することが示唆された。
【0111】
実施例5
過剰免疫化され、そして回復期にあるマウスポリクローナル血清についてのY.エンテロコリチカタンパク質のウエスタンブロット分析
過剰免疫化されたマウスポリクローナル血清及び回復期の血清に対するY.エンテロコリチカ由来の免疫反応性タンパク質を評価するためにウエスタンブロット分析を使用した。過剰免疫化マウスポリクローナル血清を、実施例2に記載される組成物でワクチン接種した後に得て、そして回復期の血清を、実施例4に記載される試行を生き残ったワクチン接種/暴露マウスから得た。当該組成物は、268kDa、92kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、52kDa、41kDa、38kDa、37kDa、31kDa、28kDaの分子量を有するポリペプチド、及び83kDaの分子量を有する2個のタンパク質を含んだ。83kDa、70kDa、及び66kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄制御条件下でのみ発現された。
【0112】
過剰免疫化血清を得るために、実施例4に記載されるように、14日のインターバルでマウスを2回免疫化した。過剰免疫化ポリクローナル血清を、2回目の免疫化の14日後にマウスから回収した。ワクチン接種/暴露されたマウスから得た回復期血清を、暴露後14日目に得た。Y.エンテロコリチカ27729株から得たタンパク質を、実施例1に記載されるように30μgの総タンパク質を用いてSDS-PAGE(4%スタッキング/10%分離ゲル)上でサイズ分画した。ビオチン化広範囲スタンダードをブロット上の分子量レファレンスとして使用する一方、電気ブロットを助けるために、バンドの移動を、広範囲カレイドスコープ・スタンダード(BioRad)を用いて可視化した。ウエスタン・ブロット分析では、タンパク質は、BioRad Trans Blotトランスファーセルを用いてTowbin緩衝液(25mM・Tris、192mMグリシン、及び20%メタノール)中で、SDS-PAGEゲルから、トランスブロット・ニトロセルロース膜(BioRad)へと一晩4℃50ボルトで電気ブロットされた。ニトロセルロース膜を3.0%魚ゼラチン(Biorad)を用いた標準方法によりブロッキングした。過剰免疫化ポリクローナル血清及び回復期血清を、1.0%魚ゼラチン、0.05%tween20、及び0.2%アジ化ナトリウム(抗体緩衝液)を含むTris緩衝生理食塩水中に1/25000に希釈した。ニトロセルロース膜を一次抗体溶液で一晩インキュベートした。次に、当該膜を0.05%Tween20を含むTris緩衝生理食塩水(TTBS)で2回洗浄し、そして1/10000希釈のアルカリホスファターゼに結合されたヤギ抗マウス抗体(BioRad)及び1/3000希釈のアビジン結合アルカリホスファターゼ(BioRad)を含む抗体緩衝液に移した。当該膜を、シェーカー上で2時間37℃でインキュベートし、そして続いてTTBS中で4回洗浄して、未結合のコンジュゲートを取り除いた。1×AP発色緩衝液(BioRad)中のアルカリホスフェート発色試薬A及びBを含有する基質溶液中で、30分間37℃でシェーカー上で分離した。
【0113】
過剰免疫化及び/又は回復期血清に由来する抗体と免疫反応すると実施例1に記載される組成物に由来するタンパク質を潜在的に同定するツールとして、ウエスタンブロット分析を使用した。ウエスタンブロット分析は、多くの免疫反応性タンパク質を明らかにした。過剰免疫化血清は、268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、52kDa、41kDa、38kDa、37kDa、31kDa、及び28kDaのタンパク質と反応する抗体を含んだ。同様に、回復期血清は、268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、52kDa、41kDa、38kDa、37kDa、31kDa及び28kDaでの同一の結合パターンを示した。さらに、3種の免疫反応性タンパク質が52kDa、40kDA、及び20kDa領域で見られ、これらは最初SDS-PAGEゲル上では見られず、また、過剰免疫化血清を用いてウエスタンブロット分析においても見られなかった。これらの3種のタンパク質が、SDS-PAGEゲル上で可視化するには濃度が低すぎるが、暴露後においてこれらのタンパク質の強いバンド強度をもたらす免疫系を刺激した後に、強いバンド強度をもたらす高度免疫原性であると仮説を立てることは興味深いことである。
【0114】
ワクチン組成物のウエスタンブロット分析は、過剰免疫化血清と回復期血清の両方の間で、免疫反応性タンパク質のバンド強度の差を明らかにした。これらの差は、個々のタンパク質の異なる免疫原性の結果でありうるし、そして免疫システムによる組成物中に存在する個々のタンパク質の認識の仕方の結果でありうる。さらに、組成物中のタンパク質の量及び比率は、動物による組成物中に存在する個々のタンパク質への免役学的応答に影響することができる各タンパク質の免役学的状態に影響することができる。それにも関わらず、組成物中の各タンパク質は、ウエスタンブロットにより試験される際に免役学的に反応しており、そうしてワクチン接種の際のマウスにおける免疫応答は、組成物中の各々個別のタンパク質に応答する抗体の増加を認識し、そして応答した。まとめると、実施例4に記載される結果により、タンパク質組成物が、100%の致死率を有する非ワクチン接種マウスに比べて、暴露されたマウスに100%の保護をかなり効果的に提供したことが示される。
【0115】
実施例6
Y.エンテロコリチカのタンパク質に対して調製された高度免疫化血清を用いた、Y.ペスチスタンパク質のウエスタンブロット分析
実施例5に記載される様にY.エンテロコリチカ由来の組成物に対して調製された過剰免疫化血清に対する、Y.ペスチス由来の免疫反応性タンパク質を評価するためにウエスタンブロット分析を使用した。当該組成物は、254kDa、104kDa、99kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、60kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、及び20kDaの分子量を有するポリペプチドを含んだ。94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、及び64kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄制御条件下でのみ発現された。Y.ペスチス株KIM6+由来のタンパク質は、最初に、実施例5に記載される様に30μgの総タンパク質を用いてSDS-PAGE(4%スタッキングゲル/10%分離ゲル)上でサイズ分画した。ウエスタンブロット分析は、回復期血清がY.ペスチスの膜タンパク質に対して試験されなかったという変更を除いて、実施例5に記載されるのと同一の条件下で実行される。この結果により、およそ254kDa、94kDa、88kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、及び20kDa領域のタンパク質が、Y.エンテロコリチカの膜タンパク質に対して調製された過剰免疫化血清に由来する抗体と免疫反応性であることが示される。
【0116】
実施例7
マウスワクチン接種並びに静脈内及び肺内Y.ペスチス暴露に対する保護を評価する暴露試験
16〜22gの重量の88匹のメスのスイス-ウェブスター(Harlan Laboratories)を、1〜4と名付けた4群に均等に分けた(22匹のマウス/群)。これらの動物を、HEPA-フィルター、マイクロベント・ポジティブ空気供給動物飼育システム(BSL3施設)中で飼育する。食餌と水を自由に与えた。
【0117】
実施例1において上で記載されたように、Y.ペスチスKIM6+株由来のタンパク質を調製し、そして20%vol/vol及び500μgの総タンパク質/mlの終濃度でアジュバントとして水酸化アルミニウムを用いてワクチンとして剤形した。同じアジュバント濃度を維持する一方、抗原をPBSと置き換えることにより偽薬を調製する。群1及び3におけるマウスを、14日のインターバルで50μgの総タンパク質を含む0.1mlのワクチンで2回腹腔内ワクチン接種し、一方群2及び4のマウスを同じスケジュールで偽薬で免疫化する。
【0118】
Y.ペスチスCO92株を暴露に用い、そしてBSL3封じ込め施設で調製する。第二のワクチン接種後14日目で、群1及び2のマウスを、0.1mlのCO92株(一匹のマウスあたり103CFU又は約100LD50)で側尾静脈から静脈内暴露させる。群3及び4のマウスは、生理的食塩水中に希釈されたY.ペスチスCO92のエアロゾル化暴露用量にかけて、マウス一匹当たり100LD50CFUの濃度を30分間、機密チャンバー中で達成した。スイス・ウェブスターマウスにおけるCO92株のエアロゾル化LD50は、提案された暴露実験の前に、小規模の予備研究により測定される。致死率は、暴露後21日間記録される。
【0119】
実施例8
魚ワクチン接種及びY.ルッケリ暴露に対する保護を評価するための暴露研究
群1及び2と名付けられた2群の約2gの重量の20匹のニジマスを、2つの分離された60lのタンク中で、18℃の温度で維持する。魚は、1日二回市販のマス用餌(Ziegler Brothers, Gardners, PA)を与えた実施例1に記載されるのと同じ方法を用いてY.ルッケリから得られた組成物で、群1の魚をワクチン接種する。Y.ルッケリから得られた抽出タンパク質を、魚に投与するためのワクチン組成物を調製するために使用する。ストックワクチンは、水性タンパク質懸濁液を、Drakeol6ミネラルオイル及びArlacelAを乳濁剤として含む油中水滴エマルジョンへと、水性タンパク質懸濁液を乳濁することにより、組成物から調製される。ワクチンは、腹腔内投与されて、0.1ccを用いて0.1ccの注射体積中の25μgの総タンパク質の最終投与量を与えた。偽薬は、上記製剤中で抗原を生理食塩水に置き換えることにより調製し、そして群2の魚に与えられる(対照)。魚は、第一ワクチン接種後28日目に第二ワクチンが与えられる。第二ワクチン接種の14日後、全ての魚を腹腔内で暴露させる。
【0120】
Y.ルッケリの毒性単離株を暴露に用いる。暴露単離株を160μM・2,2-ジプリジルを含むトリプティック・ソイ培地(TSB)中で培養し、そして37℃で12時間インキュベートして増殖させる。培養物を、10000×gで遠心することにより生理食塩水中で一回洗浄し、そして生理食塩水中に再懸濁する。培養物を、5.0×107CFU/mlに調節する。各マスを5.0×106CFUの最終暴露用量で対応する細菌0.1ccを用いて腹腔内接種する。暴露後14日間毎日死亡率を記録した。全ての死亡した魚をタンクから除き、そして肝臓を取り除き、そして暴露細菌の存在を計数する。有効性をワクチン接種-非ワクチン接種対照を比較して生存度合いとして計測する。
【0121】
実施例9
Y.エンテロコリチカATCC27729株及びY.ペスチスKIM6+株の鉄制御タンパク質の特徴決定
Y.エンテロコリチカATCC27729株及びY.ペスチスKIM6+株由来である実施例1に記載される様に調製される組成物におけるタンパク質を、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析(MALDI-TOF MS)を用いて特徴決定した。各組成物のサンプルを10%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲルを用いて分離した。組成物のタンパク質を分離した後に、ゲルをクマシー・ブリリアント・ブルーで染色して、タンパク質を可視化した。
【0122】
材料と方法
切り取り及び洗浄
ゲルを水で10分間2回洗浄した。目的の各タンパク質バンドを、サンプルに存在するゲルの量を少なくするためにできるだけタンパク質バンドの近くでカットすることにより切り取った。各ゲルスライスを1×1mm立方体に切り取り、そして1.5mlチューブに入れた。ゲル片を水で15分間洗浄した。洗浄ステップで使用される溶媒体積の全ては、ゲルスライスの体積の2倍の体積に大体等しくした。ゲルスライスを次に水/アセトニトリル(1:1)で15分間洗浄した。水/アセトニトリル混合物を取り除き、そしてアセトニトリルを、ゲル片が粘性白色になるまで覆うために加え、その時点でアセトニトリルを取り除いた。ゲル片を100mM・NH4HCO3中に再水和し、そして五分後、ゲル片の体積の二倍に等しい体積のアセトニトリルを加えた。これを15分間インキュベートし、液体を取り除き、そしてゲル片をSpeedVac中で乾燥させた。
【0123】
還元及びアルキル化
乾燥ゲル片を10mM・DTT及び100mM・NH4HCO3中に再水和し、そして45分間56℃でインキュベートした。チューブを室温に冷却させた後、液体を取り除き、そして55mMヨードアセトアミド及び100mM・NH4HCO3の等量の混合物をすぐに加えた。これを暗所で30分間室温でインクベートした。液体を取り除き、ゲル片が粘性白色となるまで覆うためにアセトニトリルを加え、この時点でアセトニトリルを取り除いた。ゲル片を100mM・NH4HCO3で再水和し、そして5分後、ゲル片の体積の2倍に等しい体積のアセトニトリルを加えた。これを15分間インキュベートし、液体を取り除き、そしてゲル片をSpeedVac中で乾燥させた。残存クマシーが未だ残るならば、100mM・NH4HCO3/アセトニトリルでの洗浄を繰り返した。
【0124】
ゲル内切断
ゲル片を、SpeedVac内で完全に乾燥させた。このゲル片を4℃で切断緩衝液(50mM・NH4HCO3、5mM・CaCl2、12.5ng/μlトリプシン)で再水和した。ゲル片を覆うために十分な量の緩衝液、及びさらに多い量の緩衝液を加えた。ゲル片を氷上で45分間インキュベートし、そして上清を取り除き、そしてトリプシンを伴わない5〜2μlの同じ緩衝液で置換した。これを37℃で一晩エアインキュベーター内でインキュベートした。
【0125】
ペプチドの抽出
十分な体積の25mM・NH4HCO3をゲル片を覆うために加え、そして(一般的に、バス・ソニケーター中で)15分間インキュベートした。等体積のアセトニトリルを加え、そして15分間(可能ならばバスソニケーター中で)インキュベートし、そして上清を回収した。NH4HCO3の代わりに5%ギ酸を用いて抽出を2回繰り返した。ゲル片を覆うために十分な体積の5%ギ酸を加え、そして15分間(典型的にバスソニケーター内で)インキュベートし、そして上清を取り除いた。抽出物を貯蔵し、そして10mM・DTTを1mM・DTTの終濃度になるまで加えた。サンプルをSpeedVac中で約5μlの終体積になるまで乾燥させた。
【0126】
ペプチドの脱塩
サンプルを、製造者により提案されるようにZIPTIPピペットチップ(C18, Millipore, Billerica, MA)を用いて脱塩した。簡潔に記載すると、サンプルを再構成溶液(5:95アセトニトリル:H2O、0.1%〜0.5%トリフルオロ酢酸)中に再構成し、遠心し、そしてpHが3未満であることを確かめるためにpHがチェックされた。ZIPTIPは、10μlの溶液1(50:50アセトニトリル:H2O、0.1%トリフルオロ酢酸)を吸引し、そして吸引された一定量を捨てることにより水和させた。次に、10μlの溶液2(脱イオンH2Oに溶解した0.1%トリフルオロ酢酸)を吸引し、そして吸引された一定量を捨てた。10μlのサンプルをチップ中にゆっくり吸引し、サンプルをサンプルチューブ中に排出させることにより溶液を捨て、そして当該方法を5〜6回繰り返して洗浄した。2.5μlの氷冷溶液3(60:40、アセトニトリル:H2O、0.1%トリフルオロ酢酸)を吸引し、排出し、そして次に等量をチップから再吸引し、そして排出を3回おこなうことによりペプチドを溶出させた。溶液をチップから排出した後に、チューブに蓋をし、そして氷上に置いた。
【0127】
質量分析ペプチド・マッピング
ペプチドを10μl〜30μlの5%ギ酸中に懸濁し、そしてMALDI-TOF MS(Bruker Daltonics Inc., Billerica, MA)により分析した。ペプチド断片の質量スペクトルを、製造業者により提案されるとおりに測定した。簡潔に記載すると、トリプシン切断から得られたペプチドを含むサンプルをマトリックスであるシアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸と混合し、標的に移し、そして乾燥させた。乾燥されたサンプルを質量分析器に移し、照射させ、そして各イオンの飛行時間を検出し、そして当該組成物に存在する各タンパク質のペプチド質量フィンガープリントを測定するために使用した。既知のポリペプチド(ヒトアンギオテンシンII、モノアイソトピック質量MH+1046.5(Sigma Chemical Co.)、及びアデノコルチコトロピン(adenocorticotropin)ホルモン断片18-39、MH+2465.2(Sigma Chemical Co.))を当該機械を標準化するために使用した。
【0128】
データ分析
各質量スペクトルにおけるペプチドの実験的に観察された質量を、Mascotサーチエンジン(Matrix Science Ltd., London, UK、及びwww.matrixscience.com, Perkinsら、Electrophoresis 20, 3551-3567 (1999)を参照のこと)のペプチド質量フィンガープリントサーチ法を用いて既知のタンパク質から得られた予期された質量と比較した。サーチパラメーターは、以下の:データーベース、NCBInr;分類、細菌(ユーバクテリア);サーチタイプ、ペプチド質量フィンガープリント;酵素、トリプシン;固定修飾、なし;変数修飾、なし又は酸化メチオニン;質量値、モノアイソトピック;タンパク質重量、制限無し;ペプチド質量許容範囲、±1Da又は±330ppm;ペプチド荷電状態、Mr;最大過誤切断、1;クエリー数、25を含んだ。
【0129】
結果
このサーチ結果は、組成物中に存在するタンパク質の質量フィンガープリントである(表5及び6)。
【0130】
【表18】
【0131】
【表19】
【0132】
【表20】
【0133】
【表21】
【0134】
【表22】
【0135】
【表23】
【0136】
【表24】
【0137】
【表25】
【0138】
【表26】
【0139】
【表27】
【0140】
【表28】
【0141】
【表29】
【0142】
【表30】
【0143】
【表31】
【0144】
【表32】
【0145】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電気的に利用できるもの(例えば、GenBank及びRefSeqに受託されたヌクレオチド配列、及び例えばSwissProt、PIR、PRF、PDBに受諾されたアミノ酸配列、及びGenBank及びRdfSeqにおける注釈つきのコード領域からの翻訳)は、本明細書に援用される。前述の詳細な記載及び実施例は、理解を明らかにすることのみを目的として与えられた。それらから不要な制限がされると理解すべきではない。本発明は、提示されそして記載された詳細そのものに制限されることはなく、当業者に明らかな変化は、特許請求書により定義される発明の範囲に含まれるであろう。
【0146】
他に記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量、分子量、その他もろもろを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語により修飾されていると理解すべきである。従って、そうではないと他に記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数字のパラメーターは、本発明により得られると考えられる所望される性質に左右されて変わりうる近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲の菌討論を制限する試みとしてではなく、各数字のパラメーターは、報告された有効数字の数の範囲内で、そして通常の四捨五入の技術を適用することにより、解釈されるべきである。
【0147】
本発明の広い範囲を規定する数値範囲及びパラメーターが近似値であるにもかかわらず、具体例で記載された数値は、可能な限り正確に記録する。しかしながら、全ての数値は、それぞれの試験計測において見られる標準誤差から必ずもたらされる範囲を本来的に含む。
【0148】
全ての見出しは読み手の便宜のためであり、そして他に記載がない限り、見出しに続く文章の意味を制限するために使用されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】Y.エンテロコリチカATCC27729株及びY.ペスチスKIM6+の界面活性剤-不溶性タンパク質-濃縮抽出物であって、10%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動させることにより分離されたもの。ゲル画像の左側の数字は、レーン1に示される標準物質の分子量(kDa)を示す。レーン1は分子量標準物質であり;レーン2は300μM・FeCl3を添加された培地中で育ったY.ペスチスKIM6+株であり;レーン3は160μM・2,2-ジプリジルを添加された培地中で育ったY.ペスチスKIM6+株であり;レーン4は160μM・2,2-ジプリジルを添加された培地中で育ったY.エンテロコリチカATCC27729株であり;レーン5は300μM・FeCl3を添加した培地中で育ったY.エンテロコリチカATCC27729株である。
【図2】ワクチン接種及び非ワクチン接種されたマウスであって、Y.エンテロコリチカで暴露された後のマウスの生存。グラフは、鉄制限条件下で生育されたY.エンテロコリチカ27729株由来の膜タンパク質で免疫化し、その後、27729株で生暴露した後のマウスの生存分析を示す。死亡率を暴露後7日間記録した。
【図3A】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3B】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3C】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3D】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3E】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3F】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3G】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3H】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【技術分野】
【0001】
本発明は83kDa、70kDa、66kDa又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、並びに40kDa、38kDa、又は37kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを含む組成物を提供する。ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定される。
【0002】
本出願は、2005年1月21日に出願された米国仮出願第60/646,106号の利益を主張する。当該出願は本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
ヒトに対して病原性である3種のエルシニア種:Y.ペスチス(Y. pestis)、Y.シュードツベルクロシス(Y. pseudotuberculosis)、及びY.エンテロコリチカ(Y. enterocolitica)が存在する。Y.ペスチスは、ペストの病原である一方、Y.シュードツベルクロシス及びY.エンテロコリチカの特異的病原性血清型(specific pathogenic serovars)は、胃腸管の病気を引き起こす。エルシニアの他の種は、Y.ローデイ(Y. rohdei)、Y.アルドバエ(Y. aldovae)、Y.ベルコビエリ(Y. bercovieri)、Y.フレデリクセニー(Y. frederiksenii)、Y.インターメディア(Y. intermedia)、Y.クリステンセニー(Y. kristensenii)、及びY.ムーラレッティー(Y. moolaretti)を含み、感染しやすい個体に下痢性疾患を引き起こす能力を有するエンテロコリチカ様日和見病原体と考えられている(Agbonlahor, J Clin Microbiol, 23, 891-6, (1986), Cafferkeyら、J Hosp Infect, 24, 109-15, (1993), Loftusら、Dig Dis Sci, 47, 2805-10, (2002))。エルシニアはまた、他の動物種に感染でき、様々な病気を引き起こす。哺乳動物の多くの野生種及び家畜種は、腸管病原体Y.エンテロコリチカ及びY.シュードツベルクロシスに感染しやすいが、これらの感染の多くは無症状であり、そしてこのような動物は通常、ヒトに伝染するための病原体の無症状性キャリアとしてのみ働く(Fantasiaら、J Clin Microbiol, 22, 314-5, (1985), Fantasia,ら、Vet Rec, 132, 532-4, (1993), Fukushimaら、J Clin Microbiol, 18, 981-2, (1983), Kageyamaら、J Med Primatol, 31, 129-35, (2002), Katoら、Appl Environ Microbiol, 49, 198-200, (1985), Poelmaら、Acta Zool Pathol Antverp, 3-9, (1977), Shayeganiら、Appl Environ Microbiol, 52, 420-4, (1986), Yanagawaら、Microbiol Immunol, 22, 643-6, (1978).)。しかしながら、腸管病原性エルシニアが、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、イヌ、トリ、及び家畜化シカなどの家畜において下痢性疾患及び全身倦怠感に関わるということが報告された(Jerrett, I. V.ら、Aust Vet J, 67, 212-4, (1990), Slee, K. J.ら、Aust Vet J, 65, 271-5, (1988), Slee, K. J. and C. Button, Aust Vet J, 67, 396-8, (1990), Slee, K. J. and C. Button, Aust Vet J, 67, 320-2, (1990), Zheng, X. B., J Appl Bacteriol, 62, 521-5, (1987))。Y.ペスチスは、様々なげっ歯類、並びに非ヒト霊長類に疾患を引き起こすことができる(Davis, K. J.ら、Arch Pathol Lab Med, 120, 156-63, (1996), Meyer, K. F.ら、J Infect Dis, 129, Suppl:S85-12, (1974))。Y.ペスチスは、イエネコにおける潜在的に重篤な感染にも関わり(Gasper, P. W.ら、J Med Entomol, 30, 20-6, (1993))、そしてイヌでのY.ペスチス感染が少数ながら報告された(Orloski, K. A. and M. Eidson, J Am Vet Med Assoc, 207, 316-8, (1995))。さらに、エルシニア・ルッケリ(Yersinia ruckeri)は、魚の病原体であり、サケ科においてレッドマウス病を引き起こす(Furones, M. D.ら、Ann. Rev. Fish Dis., 3, 105-125, (1993))。
【0004】
ペストは、疑う余地なく人類の有史において最も被害を与えた急性感染性疾患の一つであり、全世界で1億〜2億人を殺したと推定されている(Perry, R. D.及びJ. D. Fetherston, Clin Microbiol Rev, 10, 35-66, (1997))。近年では、ペストの発生は、米国及びその他先進工業国では比較的稀なものとなったが、風土病地域は、オーストラリアを除く全ての大陸に存在する。世界的な調査により、毎年2000〜5000ケースのペストがここ数年で報告されたということが示されたが、伝染病学者は、多くのヒトペストのケースが報告されていないと疑っている。Y.シュードツベルクロシスの発生はかなり稀であり、そして主に、フィンランド、日本、及び以前のソビエト連邦において主に起こった(Inoue, M.ら、Zentralbl Bakteriol Mikrobiol Hyg [B], 186, 504-511, (1988), Nuorti, J. P.ら、J Infect Dis, 189, 166-11 A, (2004), Rodina, L. V.ら、Zh Mikrobiol Epidemiol Immunobiol, 116-118, (1998), Toyokawa, Y.ら、Kansenshogaku Zasshi, 67, 36- 44, (1993))。多くのY.シュードツベルクロシス感染は、糞口経路により感染すると想定されるが;しかしながら、感染媒体は、多くの場合同定されていなかった。米国では、Y.エンテロコリチカによる感染が、Y.シュードツベルクロシスによる感染よりも一般的で有り、そして一般的に汚染ブタ製品の消費に関連する(Ray, S. M.ら、Clin Infect Dis, 38 Suppl 3, S181-189, (2004))。Y.エンテロコリチカにより引き起こされるヒトの疾患の発生は、特定するのが難しい。なぜなら、この生物に関する感染は、典型的に自己限定性であり、そして不十分な検出技術により、原因物質を正確に診断する能力が限られるからである。しかしながら、1996〜1999年のFoodNetサーベイランスにより、米国において100,000当たりおよそ1回のY.エンテロコリチカ感染が見積もられた(Ray, S. M.ら、Clin Infect Dis, 38 Suppl 3, S181-189, (2004))。
【0005】
ペストは、流行性及び風土病性の両方の伝染性を有する動物及びヒトの感染性疾患である。最も一般的な伝染手段は、感染げっ歯類の病原体保有動物からノミへの伝染であり、ノミはヒトへの伝染の通常の媒介生物として働く。しかしながら、ヒト-ヒト間の伝染は、汚染液滴の直接的な接触又は呼気吸入によっても生じる(肺炎型)。それにも関わらず、通常の感染では、Y.ペスチスは、一般的に皮下経路から血流に侵入し、ここでY.ペスチスはリンパ節へと移動し、そして増殖し始める。ペストの臨床症状は、横痃と呼ばれるリンパ節付近の大きな腫大を含む。場合により、Y.ペスチスは血流中で急速に増殖し、熱、頭痛、寒気、及びときおり胃腸障害を含む。これらの症状は、早期には誤診されることが多く、その結果抗生物質治療が、有効な介入には遅すぎる段階になって投与されることもある。Y.ペスチスによる敗血症感染は、50%の致死率を有し(Perry, R. D.及びJ. D. Fetherston, Clin Microbiol Rev, 10, 35-66, (1997))、そして肺炎感染を導きうる。ペストの肺炎形態は、エアロゾル経路により過度に伝染性が強く、そして疾患の急激な開始及び100%に近い死亡率により特徴付けされる。その結果、投与が早ければ抗生物質治療を利用でき、そして効果的ではあるが、肺炎ペストの急速な開始及び敗血症ペストの誤診は、この疾患の治療における主要な障害となっている。
【0006】
多くのヒト感染が糞口経路により伝染され、そして腸管に限られるので、Y.エンテロコリチカ及びY.シュードツベルクロシスは、腸病原体として考えられている。通常の宿主では、Y.エンテロコリチカは下痢性疾患を引き起こし、当該疾患は、熱及び虫垂炎に似た下腹部痛を伴うこともある。Y.シュードツベルクロシスは、通常、下痢性疾患を引き起こすことはなく、そして虫垂炎として誤診されうる腸管膜リンパ節炎を引き起こすようである。摂取後に、両生物体は腸管リンパ組織に付着し、そして粘膜層を横断し、ここで両生物体は、腸管膜リンパ節において増幅することができ、そして脾臓及び肝臓に移動することができる(Lian, C. J.ら、J Med Microbiol, 24, 219-226, (1987), Une, T., Microbiol Immunol, 21, 505-516, (1977))。Y.シュードツベルクロシス及びY.エンテロコリチカの特定の血清型は脈管系に広がり、そして敗血症の致死例を引き起こしうる(Bottone, E. J., Clin. Microbiol. Rev., 10, 257-276, (1997), Lenz, T.ら、J Infect Dis, 150, 963, (1984))が、両生物体のさらに侵襲的な疾患は、通常、易感染性の個体に限定される。Y.エンテロコリチカは、輸血後の敗血症に関わり;これらの場合では、供給血液が、冷蔵温度で生存し、そして生育することができる当該生物体で汚染される (Natkin, J. B., KG, Clin Lab Med, 19, 523-536, (1999))。さらに、腸管エルシニア感染は、反応性関節炎及び甲状腺炎などの遅延型続発症を誘導しうる(Bottone, E. J., Clin. Microbiol. Rev., 10, 257-276, (1997), Gaston, J. S.ら、Arthritis Rheum., 42, 2239-2242, (1999), Taccetti, G.ら、Clin Exp Rheumatol, 12, 681-684, (1994))。抗生物質による治療は、これらの二つの病原体により引き起こされる胃腸管疾患の重篤度又は期間を低減することを示さなかった(Hoogkamp-Korstanje, J., J Antimicrob Chemother, 20, 123, (1987), Pai, C. H.ら、J Pediatr, 104, 308-11, (1984))。しかしながら、易感染性の宿主は、通常、疾患のより重篤な臨床症状を予防するために典型的に抗生物質で治療される。これらの腸管病原体のいずれかにより引き起こされる敗血症も、一般的に抗生物質で治療され、そしてこのような治療はY.エンテロコリチカに対しては成功することが多い(Gayraud, M.ら、Clin Infect Dis, 17, 405-10, (1993))。対照的に、敗血症がY.シュードツベルクロシスにより引き起こされている患者において、抗生物質治療は伝統的にあまり効果的ではなく、そしてY.シュードツベルクロシスに関する致死率はおよそ75%である(Natkin, J. B., KG, Clin Lab Med, 19, 523-536, (1999))。
【0007】
米国では、Y.ペスチスによる自然感染は稀であるが、当該生物体が生物テロ薬剤となるという恐れが存在する。Y.ペスチス生物体は、幾つかの特徴のため意図的な大量感染のツールとして第一候補となる。第一に、当該生物体は、大量散布に都合のよい方法であるエアロゾルにより撒かれた際に感染性が高いためである。第二に、治療されなかった場合、Y.ペスチスに付随する死亡率は高く、そして肺炎型のペストは、症状の急速な開始により区別され、当該急速な開始は、効果的な介入には遅すぎると認められるからである。最後に、Y.ペスチスは明確な遺伝システムを有し、そうして抗生物質耐性株が比較的簡単に作成されるためである。
【0008】
様々なレベルの有効性及び安全性を有する幾つかのペストワクチンが研究されてきた。最も初期のワクチンは、Y.ペスチスの死菌全細胞(KWC)からなり、このタイプのワクチンは、1890年代後半に使用され、腺ペストの形態に対して保護を与える。しかしながら、KWC免役化が、肺炎型ペストに対してほとんど保護を与えないという証拠が存在し(Cohen, R. J. and J. L. Stockard, JAMA, 202, 365-366, (1967), Meyer, K. R, Bull World Health Organ, 42, 653-666, (1970))、そしてこれらのワクチンに対するさらなる欠点は、数ヶ月にわたる複数回の注射が予防免役に必要であるという点である。Y.ペスチスの弱毒化株であるEV76株は、ペストの生ワクチンとして研究されてきた。マウスの研究では、当該ワクチンは、皮下及び吸入暴露に対する保護を与えることが示され、そして予防にわずか1回の投与しか必要としない(Russell, P.ら、Vaccine, 13, 1551-1556, (1995))。しかしながら、EV76株は完全に無発症性ではなく、ワクチン接種されたマウスのおよそ1%が死亡する(Russell, P.ら、Vaccine, 13, 1551-1556, (1995))。興味深いことに、生ワクチンとして使用するのに適したY.ペスチスの無発症性の株を作成する幾つかの成功していない試みが存在する(Titball, R. W. and E. D. Williamson, Vaccine, 19, 4175-4184, (2001))。
【0009】
サブユニットワクチンは、安全かつ効果的なペストの予防用のワクチンの最も有望なタイプであると考えられている。その第一の理由は、ヒト宿主の副作用についての恐れがないからである。エルシニア病原体に付随する幾つかの表面タンパク質がその免役原性について試験された;これらのタンパク質の全てが抗体応答を誘導したが、F1カプセル及び分泌性V抗原が暴露に対して良好な保護を誘発した(Titball, R. W.及びE. D. Williamson, Vaccine, 19, 4175-4184, (2001))。F1及びV抗原の両方ともが、動物モデルにおいて個々の抗原として保護を提供するが、2個の抗原の組み合わせは優れた保護を提供する。多くの最近の研究により、F1及びV抗原に対する最良のデリバリーシステムを発見する試みにおいて、選択されたアジュバントと剤形されたF1/Vワクチンが試験されてきた(Alpar, H. O.ら、Adv. Drug Deliv. Rev., 51, 173-201, (2001), Eyles, J. E.ら、J Control Release, 63, 191-200, (2000), Jones, S. M.ら、Vaccine, 19, 358-366, (2001), Reddin, K. M.ら、Vaccine, 16, 761-767, (1998), Williamson, E. D.ら、Vaccine, 19, 566-571, (2000), Williamson, E. D.ら、Vaccine, 14, 1613-9, (1996))。
【0010】
他の革新的戦略は、弱毒化サルモネラ株をY.ペスチス抗原のワクチン担体として使用した。F1/V融合タンパク質を発現するサルモネラaroA突然変異体をワクチン株として使用する場合、86%のマウスが、その後の致死量のY.ペスチスの暴露を生き抜いた(Leary, S. E.ら、Microb Pathog, 23, 167-179, (1997))。同様に、切り詰めF1カプセルをコードする遺伝子を有するDNAプラスミドからなるワクチンは、異なるマウス種において80〜100%の保護を提供した(Grosfeld, H.ら、Infect Immun, 71, 374-383, (2003))。さらに、あるグループの研究者は、F1抗原のB及びT細胞エピトープをマッピングし、そしてワクチン製剤中に免疫反応性ペプチドを利用した(Sabhnani, L.ら、FEMS Immunol Med Microbiol, 38, 215-29, (2003))。この結果により、エピトープペプチドの混合物がY.ペスチスの致死量に対して、83%のマウスを保護したということが示された。
【0011】
保護用ペストワクチンについての多くの研究とは対照的に、腸内病原体エルシニア種による感染を予防することについて、ほとんど研究努力が払われていなかった。しかしながら、いくらかの研究が有望な結果を示していた。例えば、マウスに経口投与された弱毒化エンテロコリチカ株は、防御効果を示し、経口暴露後の脾臓及び肝臓における細菌量を低減させた(Igwe, E. Lら、Infect Immun, 67, 5500-5507, (1999))。しかしながら、これらの株は、生経口ワクチン担体として主に作成され、そしてエルシニア症の予防についてこれらの株の更なる試験は報告されなかった。2個のサブユニットのワクチンが、感染の動物モデルにおいて有効なものとして示された。第一のサブユニットワクチンは、Y.エンテロコリチカ由来の細胞抽出物からなり、そしてマウスに鼻腔内投与された。免疫化されたマウスは、鼻腔内暴露されたY.エンテロコリチカの肺からの排除を高めた(Di Genaro, M. S.ら、Microbiol. Immunol., 42, 781-788, (1998))。第二サブユニットワクチンは、Y.エンテロコリチカ由来の熱ショックタンパク質HSP60を用いて剤形され、インターロイキン12でアジュバント化された(Noll, A. and Autenriethlb, Infect Immun, 64, 2955-2961, (1996))。当該ワクチンを用いた免疫化は、暴露後のマウス脾臓内の細菌を有意に低下させ、保護効果を示した。追加研究は、Y.エンテロコリチカHSP60をコードするDNAからなるワクチンを、マウスの筋肉内免疫化において利用した(Noll, A.ら、Eur J Immunol, 29, 986-996, (1999))。当該研究により、hsp60mRNAが、免疫化の後に様々な宿主組織中に存在したが、Y.エンテロコリチカ暴露に対する保護が脾臓に限定され、そして小腸粘膜において保護が観察されなかったということが示された。
【0012】
病原性エルシニア種により引き起こされる疾患間の類似性及び相違点は、過去10年において多くの研究の中心であった。これは、一部には、病原性エルシニアが有用な病原進化モデルを提供するということを示唆する幾つかの知見のためである。第一に、DNAハイブリダイゼーション研究及び完全に配列決定されたY.ペスチス及びY.シュードツベルクロシス株の近年のゲノム比較により、これらの二種の病原体が高度に関連することが示唆され(Chain, P. S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 101, 13826-13831, (2004)、Ibrahim, A.ら、FEMS Microbiol Lett, 114, 173-177, (1993))、そしてY.ペスチスがY.シュードツベルクロシスから1500〜20000年ほど前に進化したことが推定された(Achtman, M.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 96, 14043- 14048, (1999))。しかしながら、これらの進化上の近い関係にもかかわらず、Y.シュードツベルクロシスとY.ペスチスはかなり異なる疾患をヒトに引き起こす。さらに、部分的な配列決定及び16sRNAハイブリダイゼーション研究により、Y.エンテロコリチカがその属の他の病原体種の遠縁であることが示唆された(Ibrahim, A.ら、FEMS Microbiol Lett, 114, 173-177, (1993), Moore, R. L. and R. R. Brubaker, Int J Syst Bacteriol, 25, 336-339, (1975))が、Y.エンテロコリチカは、Y.シュードツベルクロシスで観察された感染症と類似する胃腸管感染症を引き起こす。近年の研究は、疾患を引き起こすのに利用する異なるメカニズムを明らかにする試みにおいて、当該3種の病原性エルシニア種の病原性遺伝子について焦点をあてた。マウスモデルは、エルシニア発病機序を研究するのに特に役に立った。なぜなら、静脈内注射されるとマウスにおいて同様の疾患を引き起こし、そしてより自然な感染が、経口及び肺暴露経路を通して効果的に模倣することができるからである。
【0013】
少数の病原性因子はY.ペスチスに固有である。これらは、Y.ペスチスプラスミドpPCP及びpMT上にコードされるタンパク質を含み、これらのプラスミドはY.エンテロコリチカ又はY.シュードツベルクロシスにおいは見られない。pPCPプラスミドは、プラスミノーゲンアクチベーター、つまり皮下注入の後に哺乳動物宿主組織中へ細菌の急速な広がりに関するタンパク質、をコードする (Sodeinde, O. A.ら、Science, 258, 1004-1007, (1992))。pMTプラスミドは、非ヒト宿主への感染を手助けする少なくとも2個の遺伝子を有する。pMTにコードされるcaf1遺伝子は、F1カプセル、つまりマウス宿主内での貪食を阻害するが霊長類における病原性には必要とされない因子、の集合に必要とされる(Friedlander, A. M.ら、Clin. Infect. Dis., 21 Suppl 2, S178-181, (1995))。マウストキシンは、pMTプラスミド上にコードされており、そしてノミにおける生存を促進すると信じられているが、マウス宿主において必要とされるウイルス因子ではない(Hinnebusch, B. J.ら、Science, 296, 733-735, (2002), Hinnebusch, J.ら、Int J Med Microbiol, 290, 483-487, (2000))。これらの種間の他の相違は、エルシニアにより産生されるリポ多糖(LPS)の構造である。Y.エンテロコリチカ及びY.シュードツベルクロシスの両者は、胃腸管における生存を高めると理論化されている様々なO-抗原側鎖を発現し(Reeves, P., Trends Microbiol., 3, 381-386, (1995))、そして侵襲的疾患の間、補体介在性溶解を阻害するであろう(Karlyshev, A. V.ら、Infect Immun, 69, 7810-7819, (2001))。対照的に、Y.ペスチスは、幾つかのO-抗原生合成遺伝子の突然変異のためO-特異的側鎖を伴わない粗いLPS表現形を有する(Prior, J. G.ら、Microb. Pathog., 30, 48-57, (2001), Skurnik, M. P., A; Ervela, E, MoI Microbiol, 37, 316- 330, (2000))。
【0014】
興味深いことに、ゲノム配列決定プロジェクトにより、3種全ての病原性エルシニア種に存在する幾つかの病原性遺伝子が、Y.ペスチスにおいて、当該遺伝子を機能的でないものとする突然変異を獲得したことが明らかになった(Chain, P. S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 101, 13826-13831, (2004), Parkhill, J.ら、Nature, 413, 523-527, (2001))。これらの幾つかは、腸管病原性Y.エンテロコリチカ及びY.シュードツベルクロシス種の腸侵襲の間に機能するインバシン(invasin)タンパク質をコードし、その結果、Y.ペスチスは、宿主微小環境(niche)にコロニー形成しない(Simonet, M.ら、Infect Immun, 64, 375-379, (1996))。Y.ペスチスにおいて失われた機能を有する他の遺伝子は、中間代謝に関与する遺伝子を含み、そしてこれらの機能上の欠失が、Y.ペスチスを宿主の外で生存できない偏性寄生生物種にした進化の一部であると理論化される(Parkhill, J.ら、Nature, 413, 523-527, (2001))。エルシニアの発症機序についての研究は、エルシニアの全ての病原体種においてみられる70kbのウイルスプラスミドについて広く注目した。Y.シュードツベルクロシス及び病原性Y.エンテロコリチカにおいてpYV、並びにY.ペスチスにおいてpCD1と呼ばれる当該プラスミドの配列は、Y.シュードツベルクロシスとY.ペスチスとの間で著しく保存されている(Chain, P. S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 101, 13826-13831, (2004))。従って、より遠縁のY.エンテロコリチカ種は、より相違しているpYVプラスミドを有しているが、当該病原性遺伝子の配列は3種全ての間で高度に保存されている(Hu, P.ら、J Bacteriol, 180, 5192-5202, (1998)、Snellings, N. J., ら、 Infect Immun, 69, 4627-38, (2001))。当該プラスミドへの着目は、実験によりpYVプラスミドがエルシニアの病原性に絶対必要であるが、当該プラスミドのみでは特定の非病原性株の病原性を修復できないということを見つけ出し、非pVY遺伝子もまた発症機序に関与することが示唆された際に始まった(Heesemann, J.ら、Infect Immun, 46, 105-110, (1984), Heesemann, J. and R. Laufs, J Bacteriol, 155, 761-767, (1983))。当該プラスミド上の大きい遺伝子座は、Ysc-Yopシステム、III型分泌システム、及びその関連するエフェクタータンパク質をコードする。当該システムは、III型分泌装置(Type III secretion apparatus)の最初の例で有り、現在では、多くの動物及び植物微生物病原体において同定されている(参考として、Cornells, G. R., Nat. Rev. MoI. Cell. Biol, 3, 742-752, (2002)を参照のこと)。エルシニアYop-Ysc分泌システムは、「インジェクチソーム(injectisome)」タンパク質、トランスロケーターエフェクタータンパク質、及びYopエフェクタータンパク質を含む。様々なIII型分泌システムについての電子顕微鏡研究及び標識研究により、インジェクチソームタンパク質が細菌の細胞質及び外側膜に伸びている孔を形成し、そして細胞表面から針様構造を突出させることが明らかになった(Blocker, A., et al, MoI. Microbiol., 39, 652-663, (2001), Kimbrough, T. G. and S. I. Miller, Proc Natl Acad Sci U S A, 97, 11008-11013, (2000), Kubori, T.ら、Science, 280, 602-605, (1998), Sukhan, A.ら、J Bacteriol, 183, 1159-1167, (2001))。トランスロケータータンパク質は、宿主マクロファージ及び多形核好中球(PMN)と相互作用して、宿主細胞膜中に孔様構造を形成するようである。(Neyt, C. and G. R. Cornells, MoI Microbiol, 33, 971-981, (1999))。次に、集合された分泌装置により、エフェクターYopsの細菌細胞膜を介した移動を可能にし、そして宿主細胞に注入され、ここでこれらは様々な免役応答経路に干渉することにより機能する(Bleves, S. and G. R. Cornells, Microbes Infect., 2, 1451-1460, (2000), Cornells, G. R., Nat. Rev. MoI. Cell. Biol., 3, 742-752, (2002))。yadA遺伝子はまた、真核細胞に結合しそして付着する能力を有するYadAアドへシンをコードするpYVプラスミド上に存在する(Eitel, J. and P. Dersch, Infect Immun, 70, 4880-91, (2002), Skurnik, M.ら、Infect Immun, 62, 1252-61, (1994))。当該タンパク質は、腸管病原体エルシニアにおいてのみ機能するようである。なぜなら、Y.ペスチスにおけるフレームシフト変異がyadA遺伝子を機能的でないものとするからである(Hu, P.ら、J Bacteriol, 180, 5192-5202, (1998))。
【0015】
エルシニア感染において鉄が関与することが長らく立証されてきた。鉄過剰患者、例えばβサラセミアを患う患者などは、エルシニア感染の感受性が高い(Farmakis, D.ら、Med. Sci. Monit., 9, RA 19-22, (2003))。さらに、病原性は、ヘム又はヘム含有化合物を加えることにより特定の無発病性Y.ペスチスにおいて病原性を修復することができる (Burrows, T. W. and S. Jackson, Br. J. Exp. Pathol., 37, 577-583, (1956))。エルシニア及び他の細菌に関するこれらの初期の観察は、研究者に微生物の鉄とり込みメカニズムのいくつかについて研究を行わせた。哺乳動物宿主において、利用可能な鉄は、かなり限られており;細胞内の鉄は貯蔵タンパク質と複合体形成し、そして細胞外の鉄は宿主タンパク質トランスフェリン及びラクトフェリンにより結合されている。これらの制御された鉄条件は、侵入した微生物の増殖を制限し、そうして感染に対する防御バリアとして作用する。多くの病原体は、これらの鉄欠乏条件下で鉄を捕集する能力を進化させてきており、トランスフェリン又はヘム含有化合物から鉄を効果的に「盗む」。細菌により利用される最も一般的なメカニズムのうちの一つは、親鉄剤(siderophore)、つまり鉄に対して高親和性を有する小分子、の合成及び分泌である(Andrews, S. Cら、FEMS Microbiol. Rev., 27, 215-237,(2003))。鉄-親鉄剤複合体は、細菌細胞表面上の外膜受容体により結合され、そして外膜、ペリプラスム、及びABCトランスポータータンパク質の協調作用を通して、鉄は細胞内に輸送される。他の外膜受容体は、ヘム及びヘム含有化合物を直接結合し、これらの分子から鉄を捕集する。幾つかのエルシニア鉄取り込みシステムの役割は解明されてきている一方、多くの推定システムが同定されてきたが、特性は明らかにされていない。
【0016】
エルシニアは、鉄を取得するために他の細菌及び真菌により産生される様々な親鉄剤を使用できるが、エルシニアバクチンは、エルシニアが産生する親鉄剤であって検出された唯一のものである(Baumler, A.ら、Zentralbl. Bakteriol., 278, 416-424,(1993), Rabsch, W. and G. Winkelmann, Biol Met, 4, 244-250, (1991), Reissbrodt, R. and W. Rabsch, Zentralbl Bakteriol Mikrobiol Hyg [A], 268, 306-317, (1988))。エルシニアバクチンシステムは、染色体高病原性アイランド(HPI)、つまりエルシニアの高病原性株に関連する位置上に存在するybt遺伝子によりコードされる(de Almeida, A. M.ら、Microb. Pathog., 14, 9-21, (1993), Rakin, A.ら、J Bacteriol, 177, 2292-2298, (1995))。ybt遺伝子は、親鉄剤エルシニアバクチンの合成及び分泌に関与するタンパク質(ybtS、irp1、irp2、ybtE、ybtT)、並びに、鉄エルシニアバクチン複合体の取り込みに必要とされる外膜タンパク質(psnlfyuA)及び細胞質タンパク質(ybtP、ybtQ)をコードする(Carniel, E., Microbes Infect., 3, 561-569, (2001))。エルシニアバクチン合成及び/又は取り込み用の遺伝子における突然変異は、マウスの感染モデルにおいてエルシニア病原性の低下をもたらし(Bearden, S. W.ら、Infect. Immun., 65, 1659-1668, (1997), Brem, D.ら、Microbiology, 147, 1115-1127, (2001), Rakin, A.ら、MoI Microbiol, 13, 253-263, (1994))、当該システムがエルシニア発症機序において重要な病原性因子であるということを示した。ybt遺伝子のヌクレオチド配列は、3種の病原性エルシニア株間で少なくとも97%の同一性であり(Carniel, E., Microbes Infect., 3, 561-569, (2001), Chain, P. S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 101, 13826-13831, (2004))、そしてY.ペスチス及びY.シュードツベルクロシスのybtシステムは互換性があると示された(Perry, R. D.ら、Microbiology, 145 (Pt 5), 1181-1190, (1999))。これらの分析により、これらのホモログの機能が、この3種間で保存されているようであるということが示された。さらに、HP1は大腸菌(E.coli)、シトロバクター(Citrobacter)、及びクレブシエラ(Klebsiella)の幾つかの種を含む様々な病原性種において発見された(Bach, S.ら、FEMS Microbiol. Lett., 183, 289-294, (2000))。これらの生物体により発現されるYbtタンパク質はかなり類似しており;実際、エルシニアYbtタンパク質の幾つかに対して生じた抗体が他の病原体由来の対応するタンパク質を認識した(Bach, S.ら、FEMS Microbiol. Lett., 183, 289-294, (2000), Karch, H.ら、Infect Immun, 67, 5994-6001, (1999))。これらの結果により、これらの病原体の中でybtシステムの獲得が比較的最近のことであり、そしてこれらの血清型の多くに関連する侵襲性の表現系に寄与しうることが示唆される。
【0017】
幾つかのさらなるybtに独立した鉄取り込みシステムが、突然変異分析、既知の鉄獲得タンパク質へのホモロジー、又は鉄応答性制御エレメントの存在に基づいてエルシニア種において検出された。一のそのような制御エレメントは、「Furボックス」、つまり鉄と複合体形成する際に調節タンパク質Furを結合するヌクレオチド配列、である。Fe-FurのFurボックスへの結合は、下流のプロモーターの転写を抑制し、そして鉄が限定的になる場合、apo-FurがDNAから解離し、そして転写の抑制が解除される。Fur及びそのホモログは、多くの細菌種において見つかってきており、そして様々な生物体における鉄取り込みシステムに加えて多くの遺伝子を制御する(Campoy, S.ら、Microbiology, 148, 1039-1048, (2002), Horsburgh, M. J.ら、Infect Immun, 69, 3744-3754, (2001), Sebastian, S.ら、J Bacteriol, 184, 3965-3974, (2002), Stojiljkovic, Lら、J MoI Biol, 236, 531-545, (1994))。Y.ペスチス・ゲノムの分析は、そのそれぞれのプロモーターの上流にあるFurボックスを有する多くの遺伝子を同定した。これらの多くは、既知の鉄取り込みシステムにホモロジーを有するタンパク質をコードする(Panina, E. M.ら、Nucleic Acids Res, 29, 5195-5206, (2001))。これらの遺伝子は、機能について研究されることはほとんどないが、幾つかが鉄親鉄剤受容体タンパク質(omrA、irgA、UrA、ihaB、fauA)及び鉄ABCトランスポーター(itsTUS、itpPTS)をコードするようである。エルシニアが他の生物により産生された親鉄剤を利用できるので、これらのタンパク質は、エルシニアについて観察された「親鉄剤の横取り(siderophore piracy)」に関与する。このような鉄獲得方法は、細菌病原体の間では一般的である。
【0018】
幾つかの研究は、他の推定の鉄とり込みシステムの機能を明らかにした。例えば、Y.ペスチスのHmuシステムは、ヘム及びヘム含有化合物をとり込むことを介して鉄を獲得すると示された。ヘムを鉄源として使用する能力は、病原体にとって有利であると思われるが、Y.ペスチスhmu変異体は、マウスの感染モデルにおいて完全に病原性であった(Thompson, J. M.ら、Infect Immun, 67, 3879-92, (1999))。第二の推定のヘム取り込みシステムが配列ホモロジーに基づいてY.ペスチスにおいて同定された。Y.ペスチスのhas遺伝子は、シュードモナス及びセラチアのヘモフォア(hemophore)依存性ヘム獲得遺伝子のホモログである(Rossi, M. S.ら、Infect Immun, 69, 6707-6717, (2001))。これらの生物において、ヘモフォア(HasA)が分泌され、ヘムに結合し、そしてヘムを細菌表面受容体(HasR)にデリバリーしてヘムを細胞中に輸送する。Y.ペスチスHasAタンパク質は、Fur制御性、分泌性、及びヘム結合性であると決定された。しかしながら、これらの遺伝子の突然変異は、二重突然変異が試験された場合でさえ、マウスにおいて病原性について影響を与えなかった(Rossi, M. S.ら、Infect Immun, 69, 6707-6717, (2001))。その結果、発病機序における推定のヘム取り込みについての役割は理解されないまま残っており、そしてヘム取り込みが非マウス宿主の感染の間により重要であることが示されうる。
【0019】
2つの推定の鉄ABCトランスポーターシステムの機能は、エルシニアにおいて試験された。YfeシステムはY.ペスチスにおいて鉄及びマグネシウムを輸送でき、そしてyfe突然変異はマウスの感染モデルにおいて病原性の低下を示した (Bearden, S. W. and R. D. Perry, MoI. Microbiol., 32, 403-414, (1999))。第二の推定の鉄ABCトランスポータータンパク質は、yfu遺伝子によりコードされ、上流のFurボックスの存在により同定された(Gong, S.ら、Infect. Immun., 69, 2829-2837, (2001))。大腸菌において発現されると、yfu遺伝子は、鉄欠損培地での成長を回復させたが、Y.ペスチスにおける比較試験は、鉄獲得におけるYfuの役割を決定することに失敗しており、そしてyfu突然変異はマウス病原性において欠点を示さなかった (Gong, S.ら、Infect. Immun., 69, 2829-2837, (2001))。
【発明の開示】
【0020】
発明の要約
本発明は83kDa、70kDa、66kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、並びに40kDa、38kDa、又は37kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを含む組成物を提供し、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定される。83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そして当該鉄キレート剤を含まない培地中で生育された場合単離できない。いくつかの態様では、当該組成物は、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合に、Y.エンテロコリチカから単離可能である2個の異なる83kDaのポリペプチドを含んでもよい。当該組成物は、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する。当該組成物は、医薬として許容される担体をさらに含むことができる。ポリペプチドは単離可能であってもよく、又は幾つかの態様ではY.エンテロコリチカATCC27729株から単離可能である。組成物は、268kDa、92kDa、79kDa、54kDa、45kDa、31kDa、28kDa、又はその組み合わせの分子量を有する単離ポリペプチドをさらに含んでもよく、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合、Y.エンテロコリチカから単離可能である。
【0021】
本発明はまた、83kDa、70kDa、66kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、並びに268kDa、79kDa、又は45kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを含む組成物を提供し、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定される。83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合に、エルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育される場合単離できない。当該組成物は、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する。当該組成物は、医薬として許容される担体をさらに含むことができる。当該ポリペプチドは、単離可能であってもよいか、又は幾つかの態様では、Y.エンテロコリチカATCC27729株から単離される。
【0022】
本発明は、268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、45kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、及び28kDaの分子量を有する単離ポリペプチドを含む組成物をさらに提供する。ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動することにより測定する。当該ポリペプチドはエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そして当該組成物は、Y.エンテロコリチカ ATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する。当該ポリペプチドは単離可能であってもよく、又は幾つかの態様では、Y.エンテロコリチカATCC27729株から単離される。
【0023】
本発明は、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び46kDa、37kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを含む組成物を提供し、ここで、分子量は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動により測定される。94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地で生育された場合に単離できない。当該組成物は、Y.ペスチスKIM6+での暴露に対してマウスを保護する。当該組成物は、医薬として許容される担体を含むことができる。当該ポリペプチドは単離可能であってもよく、又は幾つかの態様では、Y.エンテロコリチカATCC27729株から単離されてもよい。当該組成物はさらに、254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、又は20kDaの分子量を有する単離ポリペプチドをさらに含んでもよく、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育される場合、Y.ペスチスから単離可能であってもよい。ポリペプチドは、単離可能であってもよく、又は幾つかの態様では、Y.ペスチスKIM6+から単離されてもよい。
【0024】
本発明はまた、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、並びに254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、20kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを含む組成物を提供する。ここで、分子量は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動することにより測定される。94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合単離できない。当該組成物は、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する。組成物は、医薬として許容される担体をさらに含むことができる。ポリペプチドは単離可能であってもよいし、又は幾つかの態様では、Y.ペスチス株KIM6+から単離されてもよい。
【0025】
本発明は、254kDa、104kDa、99kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、60kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、及び20kDaの分子量を有する単離ポリペプチドを含む組成物をさらに提供する。ここで、分子量は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動することにより測定される。当該ポリペプチドは、エルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして当該組成物は、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する。当該ポリペプチドは、単離可能であってもよく、又は幾つかの態様では、Y.ペスチスKIM6+から単離されてもよい。
【0026】
本発明は、対象において感染を治療する方法であって、本発明の有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか又は有する危険性のある対象に投与することを含む、前記方法を提供する。対象は動物、例えば魚類又はヒトなどの哺乳類であってもよい。エルシニアspp.は、例えばY.エンテロコリチカ若しくはY.ペスチス、又はY.ルッケリであってもよい。
【0027】
本発明はまた、対象の症状を治療する方法であって、本発明の組成物の有効量をエルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に投与することを含む前記方法を提供する。対象は動物、例えば魚類又はヒトなどの哺乳動物であってもよい。エルシニアspp.は、例えば、Y.エンテロコリチカ若しくはY.ペスチス、又はY.ルッケリであってもよい。症状は、例えば、下痢、腸炎、ペスト、レッドマウス病、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0028】
本発明はさらに、対象における感染の治療であって、有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか又は有する危険性を有する対象に投与することを含み、ここで当該組成物が本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を含む、前記治療を提供する。当該抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル抗体であってもよい。1の例では、抗体は、83kDa、70kDa、66kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドに特異的に結合し、ここで当該ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合、エルシニア・エンテロコリチカから単離され、そして鉄キレート剤を伴わない培地において生育する場合単離されない。別の例では、抗体は、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを特異的に結合し、ここで当該ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合、エルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育する場合単離されない。
【0029】
本発明は、対象において症状を治療する方法であって、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に有効量の組成物を投与することを含み、ここで当該組成物が本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を含む方法を提供する。抗体はポリクローナル又はモノクローナル抗体であってもよい。一の例では、抗体は83kDa、70kDa、66kDa、又はその組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドに特異的に結合する。ここで分子量は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動することにより測定され、ここで当該ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合、エルシニアエンテロコリチカから単離され、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育される場合単離されない。別の例では、当該抗体は、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はこれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドに特異的に結合し、ここで当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合、エルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育される場合、単離されない。
【0030】
本発明は、さらに、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を検出するためのキットを提供する。当該キットは、本発明の単離されたポリペプチド、及び特異的にポリペプチドに結合する抗体を検出する試薬を含む。当該ポリペプチド及び試薬は、一般的に分離容器内に存在する。一例として、当該ポリペプチドは、83kDa、70kDa、又は66kDa、又はその組み合わせの分子量を有してもよく、ここで当該ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合、エルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育される場合、単離できない。別の例として、当該ポリペプチドは、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有してもよく、ここで当該ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされる場合エルシニア・ペスチスから単離可能であり、そして鉄キレート剤を伴わない培地中で生育する場合単離できない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の好ましい実施態様の詳細な記載
本発明は、ポリペプチド、及び当該ポリペプチドを含む組成物を提供する。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、ペプチド結合により結合されるアミノ酸のポリマーを指す。こうして、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、及び酵素と言う用語は、ポリペプチドの定義内に含まれる。当該用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含む。ポリペプチドと言う用語は、アミノ酸のポリマーの特定の長さを示唆することはない。ポリペプチドは、天然ソースから直接単離可能であってもよいし、又は組換え、酵素、又は化学技術の助けを伴って調製することもできる。天然ポリペプチドの場合、そのようなポリペプチドが典型的に単離される。「単離」ポリペプチドは、その自然環境から取り出されたポリペプチドである。例えば、単離ポリペプチドは、細胞質から又は細胞の外膜から取り出されたポリペプチドであり、そして多くのポリペプチド、核酸、及び自然環境における他の細胞物質はもはや存在しない。「単離可能な」ポリペプチドは、特定のソースから単離することができるポリペプチドである。「純粋な」ポリペプチドは、それらが自然状態で付随している他の成分の少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、及び最も好ましくは少なくとも90%が存在しないポリペプチドである。ポリペプチドが通常生じる生物体の外で、例えば化学又は組換え方法を通して産生されるポリペプチドは、当然、単離され精製されていると考えられている。なぜなら、当該ポリペプチドは、自然環境中に存在しなかったためである。本明細書に使用される場合、「ポリペプチド断片」は、プロテアーゼでポリペプチドを切断することからもたらされるポリペプチドの一部を指す。他に記載がない限り「a」、「an」、「the」、及び「少なくとも1」は、互換性を持って使用され、そして1又は1以上であることを意味する。「含む」という用語及びその変化形は、当該用語が本記載及び特許請求の範囲において現れた文脈で限定的な意味を有さないということを意味する。
【0032】
本発明のポリペプチドは、分子量、質量フィンガープリント、又はその組み合わせにより特徴付けられても良い。一般的にキロダルロン(kDa)で示されるポリペプチドの分子量は、通常の方法、例えばゲルろ過、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を含むゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、質量分析、及びHPLCを含む液体クロマトグラフィーを用いて測定されうる。好ましくは、約4%のスタッキングゲルと約10%の分離ゲルを有するSDSポリアクリルアミドゲルを還元及び変性条件下で用いて、ポリペプチドを分離することにより、分子量が測定される。他に記載されない限りでは、分子量は、SDS-PAGEにより測定された分子量を指す。本明細書に使用される場合、「質量フィンガープリント」は、プロテアーゼで切断した後のポリペプチドから得られるポリペプチド断片の集合を指す。一般的に、切断から得られたポリペプチド断片は、質量分析法を用いて分析される。各ポリペプチド断片は、質量(m)、又は「m/z比」若しくは「m/z値」と呼ばれる質量(m)対電荷(z)の比により特徴付けられる。ポリペプチドの質量フィンガープリントを作成する方法は、通常行われている。このような方法の例は、実施例9に開示される。
【0033】
本発明のポリペプチドは、金属制御ポリペプチドであってもよい。本明細書に使用される場合、「金属制御ポリペプチド」は、微生物が低金属条件で生育する場合に、同じ微生物が高金属条件下で生育する場合に比べて高いレベルで微生物により発現されるポリペプチドである。低金属及び高金属条件は本明細書に記載される。例えば、エルシニアspp.により産生される制御ポリペプチドの一のクラスは、高金属条件下では微生物の生育の間に検出できるレベルでは発現されないが、低金属条件下での生育の間検出できるレベルで発現される。エルシニア・エンテロコリチカから単離できるこのような金属制御ポリペプチドの例は、83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する。幾つかの態様では、Y.エンテロコリチカは、2種の異なるポリペプチドを産生してもよく、その各々は、83kDaの分子量を有し、そしてその各々は低金属条件下で微生物の生育の間に検出可能なレベルで発現され、そして高金属条件下での生育の間では検出可能なレベルで発現されない。エルシニア・ペスチスから単離できるこのような金属制御ポリペプチドの例は、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する。
【0034】
エルシニアspp.により産生される金属制御ポリペプチドの別のタイプは、高金属条件において微生物の生育の間に検出可能なレベルで発現されるが、有意に多いポリペプチドが低金属条件における生育の間に発現される。このようなポリペプチドの発現は、低金属条件での生育の間に高められると言われる。一般的に、低金属条件における生育の間ポリペプチドの発現は、高金属条件下での生育の間におけるポリペプチドの発現より少なくとも10%、又は少なくとも50%高い。高い発現を示し、かつY.エンテロコリチカから単離可能である金属制御ポリペプチドの例は、268kDa、79kDa、又は45kDaの分子量を有する。高い発現を示し、かつY.ペスチスから単離される金属制御ポリペプチドの例は、254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、又は20kDaの分子量を有する。幾つかの態様では、Y.ペスチスは、2の異なるポリペプチドを産生してもよく、その各々は31kDaの分子量を有し、そして高い発現を示す。
【0035】
本発明の幾つかのポリペプチドの発現は、金属の存在により有意に影響されることはない。Y.エンテロコリチカから単離可能であるこのようなポリペプチドの例は、92kDa、54kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、又は28kDaの分子量を有する。幾つかの態様では、Y.エンテロコリチカは、2の異なるポリペプチドを産生してもよく、各々31kDaの分子量を有し、そして各々は金属の存在により有意に影響されることはない。Y.ペスチスから単離可能であるこのようなポリペプチドの例は、104kDa、99kDa、60kDa、又は44kDaの分子量を有する。
【0036】
ポリペプチドが金属制御ポリペプチドであるかそうでないかは、ポリペプチドの存在を比較するのに有用な方法、例えばゲルろ過、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を含むゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、質量分析、及びHPLCを含む液体クロマトグラフィーにより測定することができる。微生物の分離培養は、高金属条件下及び低金属条件下で生育される。本発明のポリペプチドは、本明細書に記載されるように単離され、そして各培養物に存在するポリペプチドは分離され、そして比較される。一般的に各培養物からの等量のポリペプチドを用いる。好ましくは、ポリペプチドは、還元及び変性条件下で、約4%のスタッキングゲル及び約10%の分離ゲルを有するSDSポリアクリルアミドゲルを用いて分離される。例えば、各培養物由来の30マイクログラム(μg)の総ポリペプチドが使用され、そしてゲルのウェルにロードされる。ゲルを泳動し、そしてポリペプチドをクマシー・ブリリアント・ブルーで染色した後に、2つのレーンを比較することができる。ポリペプチドが検出できるレベルで発現されるか又はされないかを決定する際に、培養物由来の30μgの総ポリペプチドをSDS-PAGEゲル上で分離し、そして当該技術分野に既知の方法を用いてクマシー・ブリリアント・ブルーで染色した。眼で見ることができるポリペプチドは検出レベルで発現されるとみなす一方、目で見ることができないポリペプチドは、検出レベルで発現されていないとみなすことができる。
【0037】
本発明のポリペプチドは、免役原性活性を有してもよい。「免役原性活性」は、動物において免役応答を誘発するポリペプチドの能力を指す。ポリペプチドに対する免疫応答は、動物において、当該ポリペプチドに対する細胞性及び/又は抗体媒介生免疫応答を発達させることである。通常、免疫応答は、非限定的に、1以上の以下の効果:ポリペプチドのエピトープ又はエピトープ類に対する抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、及び/又は細胞障害性T細胞の産生を含む。「エピトープ」は、特異的B細胞及び/又はT細胞が応答し、その結果当該部位に対する抗体が産生される抗原の部位を指す。免役原性活性は保護的であってもよい。「保護的免役原性活性」は、エルシニアspp.、例えばY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスによる感染を予防又は阻害する動物において免疫応答を誘発するポリペプチドの能力を指す。ポリペプチドが保護的免役活性を有するかについては、当該技術分野に知られている方法により、例えば実施例4又は実施例7に記載される様に、決定することができる。例えば、本発明のポリペプチド又は本発明のポリペプチドの組み合わせは、マウスなどのげっ歯類をエルシニアspp.での暴露に対して保護する。本発明のポリペプチドは、血清反応活性を有してもよい。「血清反応活性」は、エルシニアspp.、好ましくはY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスで感染された動物から得た回復期血清において存在する抗体と反応する候補ポリペプチドの能力を指す。本発明のポリペプチドは、免役調節活性を有しても良い。「免役調節活性」は、特定の抗原に対する免疫応答を高めるために非特異的な様式で作用するポリペプチドの能力を指す。ポリペプチドが免役原性を有するかを決定する方法は、当該技術分野に知られている。
【0038】
本発明のポリペプチドは、参照微生物により発現されるポリペプチドの特性を有する。当該特性は、分子量及び質量フィンガープリントの両方を含む。参照微生物は、Y.エンテロコリチカ、Y.シュードツベルクロシス、Y.ペスチス、Y.ルッケリ、Y.ローデイ、Y.アルドバエ、Y.ベルコビエリ、Y.フレデリクセニー、Y.インターメディア、Y.クリステンセニー、又はY.ムーラレッティー、好ましくY.エンテロコリチカ、例えば、Y.エンテロコリチカATCC27729株、又はY.ペスチス、例えば、Y.ペスチスKIM6+株でありうる(Gongら、Infect. Immun.、69:2829-2837 (2001))。
【0039】
参照微生物が、Y.エンテロコリチカ、例えば、Y.エンテロコリチカATCC27729株である場合、候補ポリペプチドが268kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、又は45kDaの分子量を有し、そして参照微生物により発現されかつ268kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、又は45kDaの分子量を有する金属制御ポリペプチドの質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、候補ポリペプチドは本発明のポリペプチドであると考えられる。好ましくは、その様なポリペプチドは金属制御性である。例えば、候補ポリペプチドが83kDaの分子量を有し、そして参照株Y.エンテロコリチカATCC27729株により産生される金属制御83kDポリペプチドのうちの一における質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、候補化合物は本発明のポリペプチドである。候補ポリペプチドが92kDa、54kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、又は28kDaの分子量を有し、そして参照微生物により発現され、かつそれぞれ92kDa、54kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、又は28kDaの分子量を有するポリペプチドの質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、当該候補ポリペプチドはまた、本発明のポリペプチドであると考えられる。
【0040】
参照微生物がY.ペスチス、例えばY.ペスチスKIM6+株である場合、候補ポリペプチドが、254kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、又は20kDaの分子量を有し、そして参照微生物により発現され、かつそれぞれ254kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、又は20kDaの分子量を有する金属制御ポリペプチドの質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、当該候補ポリペプチドは本発明のポリペプチドであると考えられる。好ましくは、このようなポリペプチドは金属制御性である。例えば、候補ポリペプチドが94kDaの分子量を有し、そして参照株であるY.ペスチスKIM6+株により産生される金属制御94kDaポリペプチドのうちの一つにおける質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、当該候補ポリペプチドは本発明のポリペプチドである。候補ポリペプチドが104kDa、99kDa、60kDa、又は44kDaの分子量を有し、そして参照微生物により発現され、かつ104kDa、99kDa、60kDa、又は44kDaの分子量をそれぞれ有するポリペプチドの質量フィンガープリントに類似する質量フィンガープリントを有する場合、当該候補ポリペプチドは本発明のポリペプチドであると考えられる。
【0041】
参照微生物により発現され、そして分子量により上で言及されるポリペプチドは、低金属条件下で参照微生物を生育させ、そして続いて本明細書に開示される方法によりポリペプチドを単離することにより獲得することができる。候補ポリペプチドは、微生物、好ましくはグラム陰性微生物、より好ましくは腸内細菌科の一種、好ましくはエルシニア属の一種、例えばY.エンテロコリチカ、Y.シュードツベルクロシス、又はY.ペスチスから単離できる。候補ポリペプチドは、組換え、酵素、又は化学技術を用いて産生されてもよい。
【0042】
候補ポリペプチドが参照微生物により発現され、そして分子量により上で言及されたポリペプチドの質量フィンガープリントと類似する質量フィンガープリントを有するかを決定するために、当該候補ポリペプチドは、質量分析により評価されてもよい。典型的には、候補ポリペプチドは、ゲル電気泳動により候補ポリペプチドを分離し、そして候補ポリペプチドを含有するゲル部分を切り取ることにより単離される。異なる特性に基づいてポリペプチドを分離する任意のゲル電気泳動方法を使用することができ、例えば1次元又は2次元ゲル電気泳動、並びに、例えば疎水性、pI、又は大きさに基づいた液体クロマトグラフィー分離を含む。候補ポリペプチドは、例えばプロテアーゼを用いた切断により断片化される。好ましくは、プロテアーゼは、リジン又はアルギニンに続くアミノ酸がプロリンである場合を除き、アミノ酸リジンとアミノ酸アルギニンのカルボキシ末端側でペプチド結合を切断する。その様なプロテアーゼの一例はトリプシンである。ポリペプチドをトリプシンで切断する方法は通常行われており、そして当該技術分野に知られている。かかる方法の例は、実施例9に開示されている。
【0043】
ポリペプチドの質量分析方法は通常行われており、そして当該技術分野に知られており、そして非限定的に、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析(Maldi-Tof MS)を含む。一般的に、候補ポリペプチドから得られたポリペプチド断片を含む混合物は、レーザーエネルギーをサンプルに伝え、そしてイオン化、好ましくはモノアイソトピックのポリペプチド断片を産生するマトリックスと混合される。使用可能なマトリックスの例は、例えばシナピン酸又はシアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸を含む。MALDI-TOF MSによるポリペプチドの分析方法の例は、実施例9に記載される。イオン化ポリペプチド断片は、m/z比に従って分離され、そしてm/z比対強度のスペクトルをもたらすように検出される。スペクトルは、候補ポリペプチドから得られるポリペプチド断片を表すm/z値を含む。所定のポリペプチドについて、トリプシン切断から得られた各ポリペプチド断片の量は、等モルであるはずである。しかしながら、トリプシン切断が常に100%の効率ではなく、例えば、幾つかのサイトがより効率的に切断されることが知られている。こうして、MALDI-TOF MSはm/z値を決定するために使用される場合、各m/z値の強度は一般的に同一ではない。一般的に、x軸(m/z比の値を有する軸)の大部分にわたり、スペクトルはバックグランドレベルのノイズを有する。このノイズのバックグランドレベルは、実行条件及び使用される機械に依存して変化し、そして当該スペクトルの目視検査により間単に同定される。m/z値は一般的に、強度がノイズのバックグランドレベルよりも少なくとも2倍、3倍、又は4倍大きい場合、ポリペプチド断片を表すと考えられている。スペクトルは通常、不完全な切断、過切断、混合物中に存在しうる他のポリペプチド、又はポリペプチドを切断するために使用されたプロテアーゼから得られる不自然な結果を通常含み、例えばプロテアーゼの自己溶解からもたらされるm/z値を含む。ポリペプチドをプロテアーゼで切断する当該方法は、かなり正確性の高い質量スペクトルをもたらすと当業者により認識されており、ポリペプチドを正確に特徴づけし、そしてポリペプチドを他のポリペプチドと区別するために使用できる。
【0044】
本発明のこの態様では、候補ポリペプチドを質量分析により分析する際に、好ましくは候補ポリペプチドと参照微生物由来のポリペプチドの両方を同時に調製しそして分析し、それによりサンプルの取り扱い及び実行条件の差からもたらされる潜在的な不自然な結果を低減する。好ましくは、2個のポリペプチドを調製しそして分析するために使用される試薬は全て同じである。例えば、参照微生物由来のポリペプチド及び候補ポリペプチドは、実質的に同じ条件下で単離され、実質的に同じ条件下で断片化され、そして実質的に同じ条件下で同じ機械上でMALDI-TOF MSにより分析される。m/z値の少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は実質的に全てが参照微生物ポリペプチドのスペクトルに存在し、そして上記バックグランドレベルのノイズが候補ポリペプチドのスペクトルに存在する場合、候補ポリペプチドの質量フィンガープリントが、参照微生物由来のポリペプチドの質量フィンガープリントに類似すると考えられる。
【0045】
別の態様では、ポリペプチドが表1又は表2において記載される参照ポリペプチドの分子量を有し、そして表1又は表2に記載されるように参照ポリペプチドのポリペプチド断片の集合を含む質量フィンガープリントを有する場合、当該ポリペプチドは、本発明のポリペプチドであると考えられる。
【0046】
例えば、本発明のポリペプチドは、83kDaのポリペプチド、並びに686.37、975.45、1000.53、1015.46、1140.65、1169.68、1170.64、1197.57、1342.55、1356.74、1394.67、1452.73、1476.72、1520.76、1692.77、1715.75、1828.79、1960.91、2013.02、2018.95、2040.97、2163.05、2225.03、2416.19、及び3174.44の質量を有するポリペプチド断片を含む質量フィンガープリント、或いは1001.49、1103.57、1139.57、1154.51、1170.49、1208.59、1213.67、1337.70、1452.86、1567.84、1633.85、1650.82、1659.91、1708.77、1748.95、1849.92、1986.98、2103.95、2111.03、2163.11、2386.19、2452.09、2537.34、及び3422.66の質量を有するポリペプチド断片を含む質量フィンガープリントを含む。候補ポリペプチドの質量フィンガープリントは、質量分析法により、例えばMALDI-TOF MSにより、決定できる。候補ポリペプチドの質量フィンガープリントは、一般的にさらなるポリペプチド断片を有し、その結果、表1又は表2におけるポリペプチドについて記載されたポリペプチド以外の更なるm/z値を有するであろう。好ましくは候補ポリペプチドが表1又は表2のポリペプチドに比較される場合、候補ポリペプチドは、Y.ペスチス、Y.シュードツベルクロシス、又はY.エンテロコリチカ、より好ましくは、Y.エンテロコリチカ又はY.ペスチスから得られる。候補ポリペプチドは、低金属条件下で微生物を生育すること、そしてそれに続き本明細書に記載される方法によりポリペプチドを単離することにより得ることができる。
【0047】
アミノ酸の改変、例えば酸化及びカルバミドメチル誘導体の形成など、が、サンプルの取り扱いの間に偶発的に導入されうるということが当該技術分野においてよく知られている。さらに、これらの改変タイプは、ポリペプチド断片のm/z値を変化させる。例えば、ポリペプチド断片が、酸化されたメチオニンを含む場合、m/z値は、酸化メチオニンを含まない同じ断片に対して16だけ増加するであろう。従って、「酸化(M)」という注釈を有する表1及び表2におけるこれらのポリペプチドは、酸化メチオニンを含まない同じ断片に対して16だけ増加したm/z値を有する。表1及び表2のポリペプチド断片が、サンプルの取り扱いの間に改変されうるということが理解される。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
【表7】
【0055】
【表8】
【0056】
【表9】
【0057】
【表10】
【0058】
【表11】
【0059】
【表12】
【0060】
【表13】
【0061】
【表14】
【0062】
【表15】
【0063】
さらに別の態様では、本発明は、アミノ酸配列と類似性を有するポリペプチドをさらに含む。類似性は、構造類似性と呼ばれ、そして2個のアミノ酸配列(つまり、候補アミノ酸配列及び参照アミノ酸配列)の残基をアラインし、その配列の長さに沿って同一なアミノ酸の数を最適化することにより、一般的に決定される;いずれか、又は両方の配列におけるギャップが、同一アミノ酸の数を最適化するためにアライメントをする際に許容されるが、それにも関わらず、各配列におけるアミノ酸はその適切な順番のままでなければならない。参照アミノ酸配列は、表3及び表4に開示される。2個のアミノ酸配列は、市販のアルゴリズムを用いて比較できる。好ましくは、2個のアミノ酸配列は、Tatusovaらにより記載されるように、BLAST2サーチアルゴリズムのBlastpプログラムを用いて比較され(FEMS Microbiol Lett 1999, 174:247-250)、そして国立衛生研究所の全米バイオテクノロジー情報センターにより維持されるインターネットサイトで、ワールドワイドウェブをとおして利用できる。好ましくは、BLAST2サーチパラメーターについての全てのデフォルトの値、例えばマトリックス=BLOSUM62;オープンギャップペナルティ=11、イクステンションギャップペナルティ=1、ギャップx_dropoff=50、イクセプト=10、ワードサイズ=3、及び場合によりフィルターオンが使用される。BLASTサーチアルゴリズムを用いた2個のアミノ酸配列の比較において、構造類似性は、「同一性(identities)」と呼ばれる。好ましくは、候補アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列に対して、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性を有する。好ましくは、候補アミノ酸配列及び参照アミノ酸配列の分子量は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定される。候補ポリペプチドは、低金属条件下で微生物を生育させ、そして続いて本明細書に開示される方法によりポリペプチドを単離することにより獲得できる。
【0064】
【表16】
【0065】
【表17】
【0066】
一般的に、参照アミノ酸配列に構造類似性を有する候補アミノ酸配列は、免役原性活性、保護免役原性活性、血清反応活性、免役調節活性、又はそれらの組み合わせを有する。
【0067】
参照微生物により発現され、そして分子量により上で言及されるポリペプチドは、低金属条件下で参照微生物を増殖させ、続いて本明細書に開示される方法によりポリペプチドを単離することによって得ることができる。候補ポリペプチドは、微生物から、好ましくはグラム陰性微生物、より好ましくは腸内細菌科のメンバー、好ましくはエルシニア属のメンバー、例えばY.エンテロコリチカ、Y.シュードツベルクロシス、又はY.ペスチスから単離できる。候補ポリペプチドは、組換え、酵素、又は化学技術を用いて産生されてもよい。
【0068】
本発明のポリペプチドの1以上を発現する微生物の全細胞調製物もまた本発明により提供される。全細胞調製物中に存在する細胞が複製できないが、当該微生物により発現される本発明のポリペプチドの免役原性活性が維持されるように、当該細胞は好ましくは不活性化される。一般的に、当該細胞は、グルタルアルデヒド、ホルマリン、又はホルムアルデヒドなどの薬剤に晒すことにより殺菌される。
【0069】
本発明の組成物は、本明細書に記載される少なくとも1のポリペプチド、又は1を超える整数(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4)である多くのポリペプチドを含んでもよい。幾つかの態様では、組成物は、少なくとも2個の金属制御ポリペプチド及び少なくとも2個のポリペプチドであってその発現が金属の存在により有意に影響されないポリペプチドを含んでもよい。例えば、ポリペプチドがY.エンテロコリチカから単離可能である場合、組成物は、268kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、45kDaの分子量を有する2、3、4、5又はそれより多い単離された金属制御ポリペプチド、又は任意のサブセット若しくはその組み合わせ、並びに92kDa、54kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、28kDaの分子量を有する2個の単離されたポリペプチド、又は任意のサブセット又はその組み合わせを含むことができる。別の例では、ポリペプチドがY.ペスチスから単離可能である場合、組成物は254kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、31kDa、28kDa、20kDaの分子量を有する2、3、4、5、又はそれより多い単離された金属制御ポリペプチド、又は任意サブセット若しくはその組み合わせ、並びに104kDa、99kDa、60kDa、44kDa、46kDa、37kDa、36kDaの分子量を有する2個の単離されたポリペプチド、又は任意のサブセット若しくはその組み合わせを含むことができる。組成物は、1の微生物から単離できるポリペプチドを含むことができるか、又は2以上の微生物の組合せから単離できる。例えば、組成物は、2以上のエルシニアspp.から、2以上のY.エンテロコリチカ株から、又はエルシニアspp.から単離可能であるポリペプチ、並びにエルシニア属のメンバーではない異なる微生物から単離できるポリペプチドを含むことができる。本発明はまた、1以上のエルシニアsppの全細胞調製物を含む組成物も提供する。
【0070】
場合により、本発明のポリペプチドは、当該ポリペプチドの免役学的性質を改良するためにキャリアポリペプチドに共有結合又は結合されうる。有用なキャリアポリペプチドは、当該技術分野に知られている。例えば、本発明のポリペプチドは、F1抗原又はV抗原などのエルシニア外膜免役源に結合することができる。同様に、多糖成分は、本発明のタンパク質に結合されて、当該組成物の保護効果を高める。本発明のポリペプチドを化学的に結合させることは、既知でかつ通常の方法を用いて行うことができる。例えば、様々なホモ二機能性及び/又はへテロ二機能性架橋剤、例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート、ビス(ジアゾベンジジン)、ジメチルアジピミデート、ジメチルピメリミデート、ジメチルスペリミデート、ジスクシンイミジル・スベラート、グルタルアルデヒド、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミド、スルホ-m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミド、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヒアン-1-カルボキシラート(sulfosuccinimidyl 4-(N-maleimidomethyl)cycloheane-1-carboxylate)、スルホスクシンイミジル4-(p-マレイミド-フェニル)ブチラート、及び(1-エチル-3-(ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミドを使用することができる(例えば、Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, generally and Chapter 5, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, NY (1988)を参照のこと)。
【0071】
好ましくは、本発明のかかる組成物は、低濃度のリポ多糖(LPS)を含む。LPSは、多くのグラム陰性細菌の外膜の成分であり(例えば、Nikaido及びVaara, Outer Membrane, In: Escherichia coli and Salmonella typhimurium, Cellular and Molecular Biology, Neidhardtら、(編) American Society for Microbiology, Washington, D.C., pp. 7-22 (1987)を参照のこと)、そして典型的に多糖(O-特異的鎖、外膜及び内部コア)及びリピドA領域を含む。LPSのリピドA成分は、LPS構造の中で最も生物学的に活性な成分であり、そしてともに、哺乳動物で広範囲の病態生理学的作用を誘導する。最も劇的な作用は熱、播種性静脈内凝固、補体活性化、低血圧ショック、及び死亡である。LPSの非特異的免役刺激活性は、LPSを含む組成物の投与部位において肉種の形成を高めうる。
【0072】
LPSの濃度は、当業者に周知の通常の方法を用いて決定されうる。その様な方法は、典型的に、LPSによる色素結合の計測(例えば、Keler及びNowotny, Analyt. Biochem., 156, 189 (1986))、又はリムルス・アメボサイト(lymulus amebocyte)ライセート(LAL)試験の使用を含む(例えば、Endotoxins and Their Detection With the Limulus Amebocyte Lystate Test, Alan R. Liss, Inc., 150 Fifth Avenue, New York, NY (1982)を参照のこと)。LAL試験で一般的に使用される4種の基礎的な市販の方法:ゲルクロット試験;濁度分析(分光)試験;比色試験;及び発色試験が存在する。ゲル-クロットアッセイの例は、商標名:E-TOXATE(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO; Sigma 技術告示第210号を参照のこと)、及びPYROTELL(Associates of Cape Cod, Inc., East Falmouth, MA)のもとで市販されている。一般的に、アッセイ条件は、組成物を、カブトガニ(リムルス ポリフェムス)の循環変形細胞のライセートを含む調製物と接触させることを含む。LPSに晒された場合、ライセートの不透明度及び粘度が増加し、そしてゲル化することもある。約0.1mlの組成物がライセートに加えられる。一般的に、組成物のpHは、6〜8であり、好ましくは6.8〜7.5の間である。組成物及びライセートの混合物は、約37℃で約1時間インキュベートされる。インキュベート後に、当該混合物のゲル化が存在するかを決定するために観察される。ゲル化はエンドトキシンの存在を指し示す。組成物中に存在するエンドトキシンの量を測定するために、エンドトキシンの標準溶液の希釈を行い、そして組成物が試験される時間と同じ時間試験される。エンドトキシンの標準化溶液は、例えば、Sigma Chemical(カタログ番号第210-SE)、米国薬局方(Rockville, MD, カタログ番号第235503)、及びAssociates of Cape Cod, Inc., (カタログ番号E0005)から市販されている。一般的に、本明細書に記載される方法により微生物からポリペプチドを単離することによって、本発明の組成物が調製される場合(例えば、細胞を破壊しそして可溶化し、そして不溶性のポリペプチドを回収することを含む)、本発明の組成物におけるLPSの量は、同条件下で破壊されたが可溶化されていない同量の微生物の混合物において存在するLPSの量より少ない。一般的に、本発明の組成物中におけるLPSのレベルは、選好順序を増加させる際に、同一の微生物を破壊するが、可溶化しないことにより調製される組成物中のLPSのレベルに対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%だけ減少する。
【0073】
本発明の組成物は、場合により、医薬として許容される担体をさらに含む。「医薬として許容される」は、組成物の他の成分と適合し、そしてその受容者にたいして有害ではない希釈剤、担体、賦形剤、塩などを指す。一般的に、組成物が本明細書に記載されるように使用される場合、医薬として許容される担体を含む。本発明の組成物は、選択された投与経路、例えば抗原に対する免疫応答を刺激するために適した経路、に適合される様々な形態で医薬製剤において剤形されてもよい。こうして、本発明の組成物は、例えば、経口;皮内、経皮及び皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内などの非経口;及び鼻腔内、肺内、乳房内、膣内、子宮内、皮内、経皮的、及び直腸内などの局所的を含む既知の経路を介して投与することができる。例えば動物の体を通して分泌性IgA抗体を産生することなどの粘膜性免役を刺激するために、鼻腔内又は呼吸器粘膜に投与すること(例えば、スプレー又はエアロゾル)により粘膜表面に投与することができるということが予見される。
【0074】
本発明の組成物は、徐放性又は遅延放出性インプラントを介して投与することもできる。本発明に記載される使用に適したインプラントが知られており、そして例えば、Emery 及びStraub (WO 01/37810 (2001))、及びEmeryら (WO 96/01620 (1996))に開示されるインプラントを含む。インプラントは、エアロゾル又はスプレーにより投与するために十分小さいサイズで製造されうる。インプラントはまた、ナノスフィア及びマイクロスフィアを含む。
【0075】
本発明の組成物は、本明細書に記載される特定の病気を治療するために十分な量で投与されてもよい。本発明の組成物中に存在するポリペプチド又は全細胞の量は、変化することができる。例えば、ポリペプチドの投与量は、0.01μg〜300mgの間、典型的には0.1mg〜10mgの間でありうる。組成物が全細胞調製物である場合、細胞は、例えば、102細菌/ml、103細菌/ml、104細菌/ml、105細菌/ml、106細菌/ml、107細菌/ml、108細菌/ml、又は109細菌/mlの濃度で存在しうる。注射組成物(例えば、皮下、筋肉内など)では、ポリペプチドは、投与される組成物の総量が、0.5ml〜5.0ml、典型的には1.0〜2.0mlであるような量で、組成物中に存在する。投与される量は、非限定的に選択される特異的ポリペプチド、動物の体重、生理的条件、及び年齢、及び投与経路を含む様々な因子に依存して変化するであろう。こうして、所定の単位用量形態に含まれるポリペプチドの絶対重量は、広く変化させることができ、そして動物の種類、年齢、体重、及び生理的条件などの因子、並びに投与方法に依存する。かかる因子は、当業者により決定されうる。本発明に適した投与の他の例は、Emeryらの米国特許第6,027,736号において開示される。
【0076】
製剤は、単位用量形態で都合よく存在しても良く、そして薬学技術においてよく知られた方法により調製されても良い。医薬として許容される担体を含む組成物を製造する全ての方法は、1以上の付属成分から構成される担体に当該活性化合物(例えば、ポリペプチド又は本発明の全細胞)を関連させるステップを含む。一般的に、製剤は、活性化合物を液体担体、細かく分割された固体担体、又はその両方と密接に及び均一に関連させ、次に必要に応じて生成物を所望の製剤の形状にすることにより調製される。
【0077】
医薬として許容される担体を含む組成物は、アジュバントを含むことができる。「アジュバント」は、特定の抗原に対する免疫応答を高めるために非特異的様式で作用することができる薬剤を指し、そうして任意の所定の免疫化組成物中に必要とされる抗原量、及び/又は関心の抗原に応答する適切な免役を生成するために必要な注射の頻度を潜在的に低減させる。アジュバントは、例えば、IL-1、IL-2、乳化剤、ムラミルジペプチド、ジメチルジオクタデシルアンモニウム・ブロミド(DDA)、アブリジン、水酸化アルミニウム、油、サポニン、α-トコフェロール、多糖類、乳化パラフィン(例えば、商標名EMULSIGENでMVP Laboratories, Ralston, Nebraskaから市販されるパラフィン)、ISA-70、RIBI、及び当該技術分野で知られている他の物質を含んでもよい。本発明のポリペプチドが免役調節活性を有すること、並びにかかるポリペプチドがT及び/又はB細胞アクチベーターとして直接作用するか、又は様々なサイトカインの合成を高め若しくは細胞内シグナル伝達を活性化する特異的細胞型に作用するアジュバントとして使用されうることが予期される。かかるポリペプチドは、現存する組成物の保護指数を増加させるために免疫応答を増強することが予期される。
【0078】
別の実施態様では、医薬として許容される担体を含む本発明の組成物は、生物反応修飾物質、例えば、IL-2、IL-4、及び/又はIL-6、TNF、IFN-α、IFN-γ、及び免疫細胞に作用する他のサイトカイン、を含むことができる。免役化組成物は、抗生物質、保存剤、抗酸化物質、又はキレート剤などの当該技術分野に知られている他の成分を含むことができる。
【0079】
本発明は、本明細書に記載されるポリペプチドを得るための方法も提供する。ポリペプチド及び本発明の全細胞は、エルシニアspp.から単離可能である。好ましい例は、Y.エンテロコリチカ、Y.ペスチス、及びY.シュードツベルクロシスを含む。本発明のポリペプチドを獲得し、そして全細胞調節物を作成するために有用な微生物は、容易に利用できる。さらに、このような微生物は、通常技術により容易に単離可能であり、そして当該技術分野に知られている。微生物は、野生分離株として感染動物に由来してもよく、そして本発明のポリペプチド及び/又は全細胞調製物を得るために使用されてもよく、又は将来使用するために20%グリセロールを含む生物培地及び他の同様の培地中で-20℃〜-95℃で凍結貯蔵庫で貯蔵されてもよい。
【0080】
本発明のポリペプチドが微生物から獲得できる場合、当該微生物は低金属条件下でインキュベートされうる。本明細書で使用される場合、「低金属条件」というフレーズは、微生物に金属制御ポリペプチドを発現させるか、又は当該ポリペプチドの発現を高めさせる遊離金属の量を含む環境、典型的には生物培地を指す。本明細書に使用される場合、「高金属条件」という用語は、細胞に検出可能なレベルで本明細書に記載される1以上の金属制御ポリペプチドを発現させないか、又はかかるポリペプチドの発現を低下させる遊離金属の量を含む環境を指す。金属は、1族から17族の周期表に存在する金属である(IUPAC表記;CAS表記ではそれぞれI-A、H-A、III-B、IV-B、V-B、VI-B、VII-B、VIII、I-B、H-B、III-A、IV-A、V-A、VI-A、及びVII-A族とも呼ばれる)。好ましくは、金属は、2族から12族の金属であり、より好ましくは3族〜12族の金属である。さらにより好ましくは、当該金属は、鉄、亜鉛、銅、マグネシウム、ニッケル、コバルト、マンガン、モリブデン、又はセレンであり、最も好ましくは鉄である。
【0081】
低金属条件は、一般的に金属キレート化合物を細菌培地に加えるか、又は少量の金属しか含まないように調製された細菌培地を使用することの結果である。高金属条件は、キレート物質が培地中に存在せず、金属が当該培地に加えられるか、またはその両方の組み合わせの場合に存在する。金属キレート物質の例として、天然及び合成化合物が挙げられる。天然化合物の例として、フラボノイドなどの植物性フェノール化合物が挙げられる。フラボノイドの例として、銅キレート剤であるカテキン及びナリンゲニンが挙げられ、そして鉄キレート剤であるミリセチン及びケルセチンが挙げられる。合成銅キレート剤の例として、例えば、テトラチオモリブデートが挙げられ、そして合成亜鉛キレート剤として、例えばN,N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)-エチレンジアミンが挙げられる。合成鉄キレート剤の例として、2,2'-ジピリジル(当該技術分野において、α,α'-ビピリジルとも呼ばれる),8-ヒドロキシキノリン、エチレンジアミン-ジ-O-ヒドロキシフェニル酢酸(EDDHA)、デスフェリオキサミン・メタンスルホネート(デスフェロール)、トランスフェリン、ラクトフェリン、オボトランスフェリン、生物学的親鉄剤、例えば、カテコール類及びヒドロキサメート類、及びクエン酸が挙げられる。好ましくは、2,2'-ジピリジルが鉄のキレートに使用される。典型的に2,2'-ジピリジルは、少なくとも0.0025μg/ml、少なくとも0.025μg/ml、又は少なくとも0.25μg/ml、そして一般的には10μg/ml以下、20μg/ml以下、又は30μg/ml以下の濃度で培地に加えられる。
【0082】
fur遺伝子に変異を有するエルシニアspp.は、全部ではないが、本発明の鉄制御ポリペプチドの多くの構成的な発現をもたらすことが予期される。エルシニアspp.のfur変異体は、例えば、トランソポゾン、化学又は部位特異的突然変異誘導であって、グラム陰性細菌に遺伝子ノックアウト変異を生成するのに有用であるものを用いて生成されうる。
【0083】
微生物をインキュベートするために使用される培地及び微生物をインキュベートするために使用される培地の体積は変化しうる。微生物が、本明細書に記載されるポリペプチドの1以上を産生する能力について評価される場合、微生物は、適切な体積、例えば10ml〜1lの培地で成長することができる。例えば、動物に投与するのに用いるポリペプチドを得るために微生物を生育させる場合、多量のポリペプチドの単離を可能にするために、微生物を発酵槽で生育させてもよい。発酵槽において微生物を生育させる方法は、当該技術分野で通常行われており、そして知られている。微生物を生育させるために使用される条件は、金属キレート剤、より好ましくは鉄キレート剤、例えば、2,2'-ジピリジル、6.5〜7.5、好ましくは6.9〜7.1のpH、及び37℃の温度を含む。
【0084】
本発明の幾つかの態様では、微生物は生育後に回収されうる。回収は、微生物を小体積に濃縮し、そして生育培地とは異なる培地中に懸濁することを含む。 微生物の濃縮方法は、当該技術分野において通常行われており、そして知られており、そして例えば、ろ過又は遠心を含む。典型的に、濃縮微生物は、少なくされた量の緩衝液に懸濁される。好ましくは、最終的な緩衝液は、カチオン性のキレート剤、好ましくはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を含む。好ましくは、最終的な緩衝液は、カチオンキレート剤、好ましくはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を含む。使用されうる緩衝液の例は、pH8.5のTris塩基(7.3g/l)及びEDTA(0.9g/l)を含む。場合により、最終的な緩衝液はタンパク質分解を最小にする。これは、最終緩衝液を、8.0を超えるpH、好ましくは少なくとも8.5のpHにすること、及び/又は1以上のプロテイナーゼ阻害剤(例えば、フェニルメタンスルホニル・フロリド)を含めることにより達成されうる。場合により、そして好ましくは、濃縮微生物は、-20℃又はそれ以下の温度で破砕されるまで凍結される。
【0085】
微生物が全細胞調製品として使用される場合、回収された細胞は、当該細胞を不活性するために通常行われかつ既知の方法を用いて処理されうる。或いは、本発明のポリペプチドを調製するために微生物が使用される場合、微生物は、当該技術分野で通常行われかつ知られている化学、物理、又は機械的方法、例えば、フレンチプレス、ソニケーション、ホモジェナイズ、を用いて破砕されてもよい。好ましくは、ホモジェナイズが使用される。ホモジェナイズに有用な適切な装置の例は、モデルC500 Avestin ホモジェナイザー(Avestin Inc, Ottawa Canada)である。本明細書に使用される場合、「破砕」は、細胞を破壊することを指す。微生物の破砕は、当該技術分野において通常行われかつ知られている方法により計測することができ、例えば、光学密度の変化を含む。典型的に、微生物は、1:100の希釈物が計測される場合、透過率が20%だけ増加されるまで、微生物は破砕にかけられる。破砕の間の温度は、タンパク質分解をさらに最小にするため一般的に低く、好ましくは4℃に維持される。
【0086】
破砕された微生物は、界面活性剤、例えばアニオン性、両性、非イオン性、カチオン性界面活性剤中に可溶化される。好ましくは、界面活性剤は、サルコシンであり、より好ましくはラウロイルサルコシン・ナトリウムである。本明細書に使用される場合、「可溶化」は、細胞性物質(例えば、ポリペプチド、核酸、炭水化物)を微生物が破砕された緩衝液の水相に溶解することを指し、そして不溶性の細胞性物質の凝集の形成を指す。可溶化の条件は、好ましくは、本発明のポリペプチドを不溶性の凝集体であって、例えば遠心により簡単に単離することを可能にするために十分な大きさである凝集体へと凝集させることをもたらす。
【0087】
LPSの有意な低下は、破砕された微生物が高レベルのサルコシンで可溶化され、長期間可溶化されるか、又はその組み合わせで可溶化される際に一般に観察される。好ましくは、破砕された微生物のグラム重量に対するサルコシンの最終比は、4.5gのペレット質量あたり1.0g〜6.0gのサルコシンであり、好ましくは4.5gのペレット質量あたり4.5gのサルコシンである。微生物の可溶化は、当該技術分野で通常行われかつ知られている方法、例えば、光学密度の変化、により計測されうる。一般的に、可溶化は、少なくとも24時間、好ましくは、少なくとも48時間、より好ましくは少なくとも72時間、最も好ましくは少なくとも96時間で生じることを可能にしても良い。破砕の間の温度は、一般的に低く、好ましくは4℃に保たれる。
【0088】
本発明の1以上のポリペプチドを含む不溶性凝集体は、当該技術分野で通常行われかつ知られている方法により単離されてもよい。好ましくは、不溶性凝集体は、遠心により単離される。一般的に、界面活性剤中で不溶性であるポリペプチドの遠心は、少なくとも50,000×g、典型的には100,000×gの遠心力を必要とする。かかる遠心力を使用することは、超遠心力の使用を必要とし、そして大量のサンプルへのスケールアップは、しばしば難しく、そして遠心のこのようなタイプについては経済的ではない。本明細書に記載される方法は、有意に低い遠心力(例えば、46,000×g)の使用を許容するために十分大きい不溶性凝集体の調製を提供する。これらの低い遠心力で大量の物質を処理する方法が利用でき、そして当該技術分野に知られている。こうして、不溶性の凝集体は、かなり低コストで単離することができる。大量の物質を遠心するために有用な適した装置の例として、T-1Sharples(Alfa Laval Separations, Warminster, PA) 及び Hitachi Himac CC40高速遠心機(Hitachi-Koki Co, Tokyo, Japan)が挙げられる。
【0089】
場合により及び好ましくは、サルコシンは、単離ポリペプチドから取り除かれる。単離ポリペプチドからサルコシンを取り除く方法は、当該技術分野に知られており、そして、例えば、ダイアフィルトレーション、沈澱形成、疎水性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、又はアフィニティ-クロマトグラフィー、並びに限外ろ過及びアルコール中のポリペプチドをダイアフィルトレーションにより洗浄することを含む。単離後に緩衝液中に懸濁され、そして低温、例えば-20℃又はそれ未満で貯蔵された。
【0090】
本発明のポリペプチドは、当該技術分野に知られている方法を用いて、エルシニア属のメンバーから得られてもよい。ポリペプチドの単離は、例えば、Emeryら(米国特許第5,830,479号)、及びEmeryら(米国特許出願第US20030036639 A1)に記載されるように達成されてもよい。
【0091】
全細胞調製物が作成される本発明のこれらの態様では、当該技術分野に知られる方法が使用されうる。例えば、生育した後に、微生物は、グルタルアルデヒド、ホルマリン、又はホルムアルデヒドなどの薬剤を、培養物中の細胞を不活性化するために十分な濃度で加えることで殺菌することができる。例えば、ホルマリンは、3%(体積:体積)の濃度で加えることができる。細胞を不活性化するために十分な時間の後に、細胞は、例えばダイアフィルトレーション及び/又は遠心により回収でき、そして洗浄されうる。
【0092】
本発明の態様は、本発明の組成物を用いる方法にさらに関する。当該方法は、本発明の組成物の有効量を動物に投与することを含む。当該動物は、例えば、トリ(例えば、ニワトリ又はシチメンチョウ)、ウシ(例えば、ウシ)、ヤギ(例えば、ヤギ)、ヒツジ(例えば、ヒツジ)、ブタ(例えばブタ)、バイソン(例えば、バッファロー)、ペット動物(例えば、ネコ、イヌ、及びウマ)、シカ(例えばシカ、エルク、ヘラジカ、カリブー、及びトナカイ)、又ヒトでありうる。
【0093】
幾つかの態様では、当該方法は、哺乳動物に組成物をさらに投与すること(例えば、1回以上の追加免疫投与)をさらに含んで、二次的免疫応答を高めるか又は刺激してもよい。追加免役は、組成物の初回投与後、1〜8週、好ましくは2〜4週の時点で投与されうる。次の追加免役は、毎年1、2、3、4回以上投与されうる。理論に束縛されることを意図せず、本発明の幾つかの態様では、毎年の追加免役は必要でないということが予期される。なぜなら、動物は、当該動物に投与された組成物のポリペプチド上に存在するエピトープに同一であるか又は構造的に関連するエピトープを有する組成物中に存在するポリペプチドを発現する微生物に晒されることによって、野外において暴露されるからである。
【0094】
一の態様では、本発明は、抗体の作成方法、例えば動物において抗体の産生を誘導する方法、又は組換え技術による方法に関する。産生される抗体は、組成物中に存在する少なくとも1のポリペプチドに特異的に結合する抗体を含む。本発明の当該態様では、「有効量」は、哺乳動物において抗体の産生をもたらすために効果的な量である。動物が本発明の組成物中に存在するポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生するかを決定する方法は、本明細書に記載される様に測定されうる。本発明は、さらに、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体、並びにかかる抗体を含む組成物を含む。
【0095】
本方法は、本組成物のポリペプチドが単離された微生物以外の微生物により発現されるポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生するために使用されてもよい。本明細書に使用される場合、ポリペプチドを「特異的に結合できる」抗体は、抗体の合成を誘導した抗原のエピトープと相互作用するか、又は構造的に関連するエピトープと相互作用する抗体である。本発明の組成物に存在するポリペプチドの少なくとも幾つかは、異なる種の微生物のポリペプチドに保存されるエピトープを典型的に含む。従って、1の微生物に由来する組成物を用いて産生された抗体は、他の微生物により発現されるポリペプチドに結合し、そしてグラム陰性細菌に対する広範囲の保護を提供することが予期される。抗体が特異的に結合しうるグラム陰性細菌の例は、腸内病原菌、例えば、腸内細菌科のメンバー、好ましくはエルシニア属のメンバーである。
【0096】
本発明は、本発明のポリペプチド又は本発明のポリペプチド上に存在するエピトープに構造的に関連するエピトープを有するポリペプチドを発現する微生物を標的化するために、かかる抗体を使用することに関する。化合物は、抗体に共有結合でき、ここで当該化合物は、例えばトキシンでありうる。同様に、かかる化合物は、細菌親鉄剤、例えばエルシニアバクチンに結合できて、微生物を標的化する。本発明の抗体、又はその一部(例えば、Fab断片)を化学的にカップリング又は結合することは、既知でかつ通常行われる方法を用いて行うことができる。
【0097】
一の態様では、本発明は、また、動物において、グラム陰性細菌、好ましくはエルシニア属の一種により引き起こされる感染を治療することに関する。本明細書に使用される場合、「感染」という用語は、グラム陰性細菌、好ましくは、動物体内におけるエルシニア属の一種が動物の体内に存在することを指し、臨床的に明らかであってもなくてもよい。臨床的に明らかではないエルシニア属の一種による感染を患う動物は、しばしば、無症状性のキャリアと呼ばれる。当該方法は、エルシニア属の一種により引き起こされる感染を有する動物に本発明の組成物の有効量を投与し、そして感染を引き起こすエルシニアspp.が減少するかを決定することを含む。感染がエルシニア属の一種により引き起こされるかを決定する方法は、通常行われており、そして当該技術分野に知られている。
【0098】
別の態様では、本発明は、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、イヌ、トリ、げっ歯類、及びシカなどの動物において特定病気の1以上の症状であって、エルシニア属の一種による感染により引き起こされる症状を治療する方法に関する。エルシニアspp.感染により引き起こされる症状の例は、例えば、ウシ、ヒツジ、及びブタ動物及びヒトにおける下痢又は腸炎、イエネコ及びヒトにおけるペスト様の病気、ウシ及び羊における流産、ラムにおける精巣上体炎-精巣炎及び羊における複数の膿瘍形成を含む。本発明のさらに別の態様は、特にマス及びサケの集約的な水産養殖における魚類の冷水病、例えば幼魚の腸管性レッドマウス病、の治療に関する。これらの条件に関わる症状の治療は、予防治療であってもよいし、又は或いは本明細書に記載される病気の発達後に開始されてもよい。本明細書に使用される場合、「症状」という用語は、エルシニアspp.の一種による感染により引き起こされる病気の対象における客観的徴候を指す。本明細書に記載される病気に関わる症状及びかかる症状の評価は、当該技術分野で通常行われておりかつ知られている。予防的である治療、例えば対象が微生物により引き起こされる病気の症状を示す前に開始される治療は、病気を発達させる危険性のある対象の治療として本明細書において言及される。一般的に、病気を発達させる危険性のある動物は、当該病気が診断された地域にいるか、及び/又は当該病気を引き起こすエルシニアspp.に晒される可能性のある動物である。従って、組成物の投与は、本明細書に記載された病気の発症前、間、又は後に行われうる。病気を発達させた後に開始される治療は、1の病気の症状の重篤度を低減させるか、又は当該症状を完全に取り除くことをもたらしてもよい。本発明の態様では、「有効量」は、疾患症状の徴候を予防するため、疾患症状の重篤度を低減するため、及び/又は症状を完全に取り除くために有効な量である。
【0099】
本発明は、グラム陰性細菌によるコロニー形成を低減すること、例えばグラム陰性細菌による、骨格系(例えば、骨、軟骨、腱、及び人体)、筋肉系(例えば、骨格筋及び平滑筋)、循環系(例えば、心臓、血管、キャピラリー、及び血液)、神経系(例えば、脳、脊髄、及び末梢神経)、呼吸器系 (例えば、鼻、気管、肺、気管支、気管支瘤(bronchioceles)、肺胞)、消化器系(例えば、口、唾液腺、食道、肝臓、胃、大腸、及び小腸)、排泄系(例えば、腎臓、尿管、膀胱、及び尿道)、内分泌系(例えば、視床下部、下垂体、甲状腺、膵臓及び副腎)、生殖系(例えば、卵巣、卵管、子宮、腟、乳腺、精巣、及び精嚢)、リンパ系/免疫系(例えば、リンパ、リンパ節及びリンパ管、単核細胞又は白血球細胞、例えば、マクロファージ、好中球、単球、好酸球、好塩基球、リンパ球T細胞及びB細胞)、並びに特異的細胞系列(例えば、前駆細胞、上皮細胞、幹細胞)などへの付着を阻害することにも関する。好ましくは、グラム陰性細菌は、エルシニア属の一種である。当該方法は、本発明の組成物の有効量を、エルシニア属の一種によりコロニー形成されたか又はコロニー形成される危険性を有する動物に本発明の組成物の有効量を投与することを含む。本発明の態様では、「有効量」は、動物における微生物のコロニー形成を低減させるために有効な量である。動物における微生物のコロニー形成を評価する方法は、当該技術分野で通常行われそして知られている。例えば、微生物による動物の腸管へのコロニー形成は、動物の糞中の微生物の存在を計測することにより測定することができる。微生物による動物へのコロニー形成を低減することは、ヒトへの微生物感染を低減することが予期される。
【0100】
本発明の組成物は、細菌感染に対する能動又は受動免役を与えるために使用することができる。一般的に、当該組成物は、能動免役を提供するために動物に投与することができる。しかしながら、当該組成物は、免疫生成物、例えば抗体の産生を誘導するために使用することができる。抗体は、産生動物から回収し、そして別の動物に投与して、受動免役を提供することができる。免役成分、例えば抗体、は、受動免役治療のために血清、血漿、血液、初乳などから抗体組成物を調製するために回収されうる。モノクローナル抗体及び/又は抗-イディオタイプを含む抗体組成物は、既知の方法を用いて調製することができる。かかる抗体組成物は、キメラ抗体及びヒト化抗体を含む。キメラ抗体は、重鎖及び軽鎖の両方のヒト由来定常領域、及び抗原特異的であるマウス由来可変領域を含む(Morrison ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1984, 81(21):6851-5; LoBuglioら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86(11):4220-4; Boulianneら、Nature, 1984, 312(5995):643-6.)。ヒト化抗体は、(可変領域の)マウス定常及びフレームワーク(FR)を、ヒトの対応部分に置換する(Jonesら、Nature, 1986, 321(6069):522-5; Riechmannら、Nature, 1988, 332(6162):323-7; Verhoeyenら、Science, 1988, 239(4847): 1534-6; Queenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86(24): 10029-33; Daughertyら、Nucleic Acids Res., 1991, 19(9): 2471-6.)。或いは、遺伝子操作されてほぼ完全にヒト由来の抗体を産生する特定のマウス種を使用することができ;免疫化に続き、これらのマウスのB細胞を回収し、そして人モノクローナル抗体を産生させるために不死化される(Bruggeman and Taussig, Curr. Opin. Biotechnol., 1997, 8(4):455-8; Lonberg and Huszar, Int. Rev. Immunol., 1995;13(l):65-93; Lonbergら、Nature, 1994, 368:856-9; Taylorら、Nucleic Acids Res., 1992, 20:6287-95.)。受動抗体組成物、及びその断片、例えば、scFv、Fab、F(ab')2、又はFv、又はその他の改変形態は、血清、血漿、血液、初乳などの形態で受容者に投与されてもよい。しかしながら、抗体は、濃縮又は再構成形態、例えば、洗浄溶液、浸透包帯剤、及び/又は局所薬などで後に使用するために、既知の方法を使用して血清、血漿、血液、初乳などから単離されてもよい。受動免役製剤は、急性全身性疾病の治療、又は母の初乳を通して受動免役の適切なレベルを受けることを失敗した幼若動物の受動免役に特に有利でありうる。受動免役に有用な抗体は、様々な薬剤又は抗生物質に結合させるのに有用であり、これは、全身感染又は局所感染の間、本発明のポリペプチド又は本発明のポリペプチド上に存在するエピトープに構造的に関連するエピトープを有するポリペプチドを発現する細菌を直接標的することができる。
【0101】
動物モデル、特にマウスモデル、は、本発明の組成物を実験的に評価するのに利用できる(例えば、Alpar, H. O.ら、Adv. Drug Deliv. Rev., 51, 173-201, (2001)、Brem, D., et ah, Microbiology, 147, 1115-1127, (2001)、Carter, P. B. and F. M. Collins, Infect. Immun., 9, 851-857, (1974)、Collyn, F.ら、Infect. Immun., 72, 4784-9470, (2004)、Di Genaro, M. S.ら、Microbiol. Immunol., 42, 781-788, (1998)、 Grosfeld, H.ら、Infect Immun, 71, 374-383, (2003)、 Jones, S. M.ら、Vaccine, 19, 358-366, (2001)、Karlyshev, A. V.ら、Infect Immun, 69, 7810-7819, (2001)、 Leary, S. E.ら、Microb Pathog, 23, 167-179, (1997)、Noll, A.ら、Eur J Immunol, 29, 986-996, (1999)、Pelludat, Cら、Infect Immun, 70, 1832-1841, (2002)、Sabhnani, L.ら、FEMS Immunol Med Microbiol, 38, 215-29, (2003)、並びに Williamson, E. D.ら、Vaccine, 19, 566-571, (2000)を参照のこと)。これらのマウスモデルは、エルシニア属のメンバーにより引き起こされるヒト疾患の研究に対する一般的に認められたモデルであり、そしてさらに、エルシニアspp.によるヒト疾病の予防を目的とするワクチンの開発及び初期試験において認められたモデルとして機能した。
【0102】
本発明の別の態様は、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を検出する方法を提供する。これらの方法は、動物が本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体を有するかを検出し、そして動物が本明細書に記載されるポリペプチドを発現するか、又は本明細書に記載されるポリペプチドを有するエピトープを共有するポリペプチドを発現する微生物により引き起こされる病気を有するかを診断するのに有用である。かかる診断システムは、キット形態であってもよい。当該方法は、本発明のポリペプチドを含む調製物と抗体を接触させて、混合物をもたらすことを含む。抗体は、生物学的サンプル、例えば、血液、乳、又は初乳中に存在してもよい。当該方法は、さらに、ポリペプチド:抗体複合体を形成させるために、抗体をポリペプチドを特異的に結合することを可能にする条件下で、混合物をインキュベートすることをさらに含む。本明細書に使用される場合、「ポリペプチド:抗体複合体」という用語は、抗体がポリペプチドに特異的に結合する際にもたらされる複合体を指す。本発明のポリペプチドを含む調製品は、ポリペプチド抗体複合体の形成に適切な条件を提供する試薬、例えば緩衝液を含む。次にポリペプチド:抗体複合体が検出される。抗体検出が、当該技術分野に知られており、そして例えば、免役蛍光及びペルオキシダーゼを含むことができる。本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体の存在を検出する方法は、抗体を検出するために使用された様々なフォーマットで使用でき、ラジオイムノアッセイ及び酵素結合免役吸着アッセイを含む。
【0103】
本発明は、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を検出するキットも提供する。検出される抗体は、グラム陰性細菌、より好ましくは腸内細菌科の一種、エルシニア属の一種、例えば、Y.エンテロコリチカ、Y.シュードツベルクロシス、又はY.ペスチスにより引き起こされる感染を患うと疑われる動物から得られうる。当該キットは、本発明の少なくとも1のポリペプチド、又は1より大きい整数(例えば、少なくとも2、少なくとも3など)である多くのポリペプチドを、少なくとも1回のアッセイに十分な量で適切なパッケージ容器内に含む。場合により、本発明を実施するために必要とされる他の試薬、例えば緩衝液及び溶液も含まれる。例えば、キットは、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体の検出を可能にする試薬、例えば動物から得られた抗体に特異的に結合するように設計された検出可能なように標識された二次抗体を含んでもよい。パッケージされたポリペプチドを使用するための説明書もまた、一般的に含められる。本明細書において使用される場合、「パッケージ容器」は、キットの内容を格納するために使用される1以上の物理的構造を指す。パッケージ容器は、周知の方法により構成されて、一般的に、滅菌非汚染環境を提供する。パッケージ容器は、ポリペプチドが本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体を検出するために使用できるということを指し示すラベルを有していてもよい。さらに、パッケージ容器は、抗体を検出するためにキット内の物質をどのように使用するかを指し示す説明書を含む。本明細書に使用される場合、「パッケージ」という用語は、ガラス、プラスチック、紙、ホイルなどの容器であって、ポリペプチド及び他の試薬、例えば二次抗体を限られた範囲内に保持できる容器を指す。こうして、例えばパッケージは、ポリペプチドのマイクログラムの量が入れられたマイクロタイタープレートでありうる。パッケージは、二次抗体を含みうる。「使用のための説明書」は、試薬濃度、又は少なくとも1のアッセイ方法のパラメーター、例えば混合する試薬とサンプルの相対量、試薬/サンプル混合物の保持時間、温度、緩衝液条件などを記載する具体的な表現を含む。
【0104】
本発明は、以下の実施例により示される。特定の実施例、材料、量、及び方法は、本明細書に記載されるように、本発明の範囲及び本質に従って広く解釈すべきであるということが理解される。
【実施例】
【0105】
実施例1
金属制御タンパク質の産生及び単離
以下の実施例において使用される組成物は、Y.エンテロコリチカATCC27729株及びY.ペスチスKIM6+株(R.D. Perry, ケンタッキー大学から頂いた)に由来するタンパク質を用いて調製した。この2つの株は、それぞれ、凍結ストックから、160μM2,2-ジプリジル又は300μM・FeCl3を含む25mlのトリプティク・ソイ培地(TSB)中に植菌して、400rpmで振盪して37℃でインキュベートした。12時間のインキュベート後、5mlの培養物を500mlの予めインキュベートされた(37℃)160μM2,2-ピリジル又は300μM・FeCl3を含む培地に移し、そして100rpmで攪拌しながら37℃でインキュベートした。8時間のインキュベートの後に、培養物を10000×gで20分間遠心した。細菌ペレットを100mlの滅菌生理食塩水に再懸濁し、そして10000×gで10分間遠心して、全ての夾雑培地タンパク質を取り除いた。細菌ペレットを次に40mlのTris緩衝生理食塩水pH7.2(TBS)に懸濁し、そして0.5インチ破砕ホーンを備えるBranson450(Branson, Danbury CT)を用いて、4℃で1.5分間ソニケーションすることにより破砕した。破砕された細菌懸濁液を32000×gで12分間遠心することにより破砕細菌懸濁液を澄まさせた。上清を回収し、そしてラウロイルサルコシン・ナトリウム(4%vol/vol)を4℃で24時間加えることにより可溶化した。界面活性剤不溶性タンパク質濃縮分画を、32000×gで2.5時間遠心することにより4℃で回収した。タンパク質ペレットを200μlTris-緩衝液(pH7.2)中に再懸濁し、そして-90℃で貯蔵した。各抽出物のサンプルを、標準方法に従って10%SDS-PAGEゲル上で分離し、そしてクマシーブルー染色により可視化した(図3)。
【0106】
実施例2
Y.エンテロコリチカ由来の免疫化組成物の調製
実施例1に記載されるY.エンテロコリチカから作成されるタンパク質は、動物に投与するための組成物を製造するために使用された。組成物は、268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、45kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、又は28kDaの分子量を有するポリペプチドを含んだ。83kDa、70kDa、及び66kDの分子量を有するポリペプチドは、鉄制限条件下でのみ発現され、そして268kDa、79kDa、及び45kDの分子量を有するポリペプチドの発現は、鉄制限条件下で高められた。
【0107】
ストックワクチンは、IKA Ultra Turrax T-50ホモジェナイズ・ベッセル(IKA, Cincinnati, OH)を用いて、水性タンパク質懸濁液(500μg総タンパク質/ml)を市販のアジュバントであるEMULSIGEN(MVP Laboratories, Ralston, Nebraska)に乳濁することにより組成物から調製された。当該ワクチンをマウスに投与して、22.5%vol/volのアジュバント濃度を有する0.1mlの注射体積で50μgのトータルタンパク質の最終濃度を与えた。上記製剤において抗原を生理食塩水に置き換え、そして懸濁液をEMULSIGENに乳濁して、22.5%のアジュバント濃度を与えることにより偽薬が調製される。
【0108】
実施例3
暴露生物体の調製
暴露として使用される場合、Y.エンテロコリチカATCC27729を以下のように調製した。簡潔に記載すると、凍結ストックから得た単離体を、血液アガープレート上にストリーキングし、そして37℃で18時間インキュベートした。1のコロニーを25μg/ml2,2'ジピリジルを含む50mlトリプティック・ソイ培地(Difco)に前培養した。培養物を200rpmで回転させながら37℃で6時間インキュベートし、その時点で培養物を4℃にて10分間10000×gで遠心して細菌をペレット化した。細菌ペレットを4℃の生理食塩水中で遠心することにより2回洗浄した。最終的なペレットを25mlの生理食塩水中に再懸濁し、そして暴露に使用した。暴露の直前に、1mlの上記細菌懸濁液を10倍に連続希釈して、CFU数/マウス用量を測った。
【0109】
実施例4
マウスワクチン接種及び静脈内暴露に対する保護を評価するための暴露試験
Y.エンテロコリチカ組成物の有効性は、マウスにおける生伝染性暴露を用いて評価した。20匹のCF-1マウス(Harlan Breeding Laboratories, Indianapolis, IN)を1群あたり10匹のマウスの2つの群に分けた。対照群におけるマウスを、偽薬でワクチン接種し、一方第二群におけるマウスを実施例1に記載される様に得られた50μgの組成物で免疫化した。14日のインターバルで0.1ccの免疫化液を腹腔内に二回投与した。2回目のワクチン接種後14日において、27729株の暴露用量(9.4×104CFU/マウス)を全てのマウスに尾静脈から投与した。暴露後7日間の致死率を記録した。
【0110】
偽薬でワクチン接種された10匹のマウスのうち、10匹(100%)が暴露後168時間内で死亡した一方、ワクチン接種されたマウスは同じ時間内では死亡しなかった。さらに、ワクチン接種されたマウスの全てが、試験の残りの期間を生存し、これらのマウスを暴露後20日で屠殺した。Kalpan-Meier生存分析及びログランク検定により、免疫化が暴露に対して統計的に有意な保護(p<0.0001-)を提供したことが示された(図1を参照のこと)。これらの結果により、鉄制御条件下で生育されたY.エンテロコリチカ由来のタンパク質がマウスの静脈内感染モデルにおける有効な抗原を構成することが示唆された。
【0111】
実施例5
過剰免疫化され、そして回復期にあるマウスポリクローナル血清についてのY.エンテロコリチカタンパク質のウエスタンブロット分析
過剰免疫化されたマウスポリクローナル血清及び回復期の血清に対するY.エンテロコリチカ由来の免疫反応性タンパク質を評価するためにウエスタンブロット分析を使用した。過剰免疫化マウスポリクローナル血清を、実施例2に記載される組成物でワクチン接種した後に得て、そして回復期の血清を、実施例4に記載される試行を生き残ったワクチン接種/暴露マウスから得た。当該組成物は、268kDa、92kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、52kDa、41kDa、38kDa、37kDa、31kDa、28kDaの分子量を有するポリペプチド、及び83kDaの分子量を有する2個のタンパク質を含んだ。83kDa、70kDa、及び66kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄制御条件下でのみ発現された。
【0112】
過剰免疫化血清を得るために、実施例4に記載されるように、14日のインターバルでマウスを2回免疫化した。過剰免疫化ポリクローナル血清を、2回目の免疫化の14日後にマウスから回収した。ワクチン接種/暴露されたマウスから得た回復期血清を、暴露後14日目に得た。Y.エンテロコリチカ27729株から得たタンパク質を、実施例1に記載されるように30μgの総タンパク質を用いてSDS-PAGE(4%スタッキング/10%分離ゲル)上でサイズ分画した。ビオチン化広範囲スタンダードをブロット上の分子量レファレンスとして使用する一方、電気ブロットを助けるために、バンドの移動を、広範囲カレイドスコープ・スタンダード(BioRad)を用いて可視化した。ウエスタン・ブロット分析では、タンパク質は、BioRad Trans Blotトランスファーセルを用いてTowbin緩衝液(25mM・Tris、192mMグリシン、及び20%メタノール)中で、SDS-PAGEゲルから、トランスブロット・ニトロセルロース膜(BioRad)へと一晩4℃50ボルトで電気ブロットされた。ニトロセルロース膜を3.0%魚ゼラチン(Biorad)を用いた標準方法によりブロッキングした。過剰免疫化ポリクローナル血清及び回復期血清を、1.0%魚ゼラチン、0.05%tween20、及び0.2%アジ化ナトリウム(抗体緩衝液)を含むTris緩衝生理食塩水中に1/25000に希釈した。ニトロセルロース膜を一次抗体溶液で一晩インキュベートした。次に、当該膜を0.05%Tween20を含むTris緩衝生理食塩水(TTBS)で2回洗浄し、そして1/10000希釈のアルカリホスファターゼに結合されたヤギ抗マウス抗体(BioRad)及び1/3000希釈のアビジン結合アルカリホスファターゼ(BioRad)を含む抗体緩衝液に移した。当該膜を、シェーカー上で2時間37℃でインキュベートし、そして続いてTTBS中で4回洗浄して、未結合のコンジュゲートを取り除いた。1×AP発色緩衝液(BioRad)中のアルカリホスフェート発色試薬A及びBを含有する基質溶液中で、30分間37℃でシェーカー上で分離した。
【0113】
過剰免疫化及び/又は回復期血清に由来する抗体と免疫反応すると実施例1に記載される組成物に由来するタンパク質を潜在的に同定するツールとして、ウエスタンブロット分析を使用した。ウエスタンブロット分析は、多くの免疫反応性タンパク質を明らかにした。過剰免疫化血清は、268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、52kDa、41kDa、38kDa、37kDa、31kDa、及び28kDaのタンパク質と反応する抗体を含んだ。同様に、回復期血清は、268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、52kDa、41kDa、38kDa、37kDa、31kDa及び28kDaでの同一の結合パターンを示した。さらに、3種の免疫反応性タンパク質が52kDa、40kDA、及び20kDa領域で見られ、これらは最初SDS-PAGEゲル上では見られず、また、過剰免疫化血清を用いてウエスタンブロット分析においても見られなかった。これらの3種のタンパク質が、SDS-PAGEゲル上で可視化するには濃度が低すぎるが、暴露後においてこれらのタンパク質の強いバンド強度をもたらす免疫系を刺激した後に、強いバンド強度をもたらす高度免疫原性であると仮説を立てることは興味深いことである。
【0114】
ワクチン組成物のウエスタンブロット分析は、過剰免疫化血清と回復期血清の両方の間で、免疫反応性タンパク質のバンド強度の差を明らかにした。これらの差は、個々のタンパク質の異なる免疫原性の結果でありうるし、そして免疫システムによる組成物中に存在する個々のタンパク質の認識の仕方の結果でありうる。さらに、組成物中のタンパク質の量及び比率は、動物による組成物中に存在する個々のタンパク質への免役学的応答に影響することができる各タンパク質の免役学的状態に影響することができる。それにも関わらず、組成物中の各タンパク質は、ウエスタンブロットにより試験される際に免役学的に反応しており、そうしてワクチン接種の際のマウスにおける免疫応答は、組成物中の各々個別のタンパク質に応答する抗体の増加を認識し、そして応答した。まとめると、実施例4に記載される結果により、タンパク質組成物が、100%の致死率を有する非ワクチン接種マウスに比べて、暴露されたマウスに100%の保護をかなり効果的に提供したことが示される。
【0115】
実施例6
Y.エンテロコリチカのタンパク質に対して調製された高度免疫化血清を用いた、Y.ペスチスタンパク質のウエスタンブロット分析
実施例5に記載される様にY.エンテロコリチカ由来の組成物に対して調製された過剰免疫化血清に対する、Y.ペスチス由来の免疫反応性タンパク質を評価するためにウエスタンブロット分析を使用した。当該組成物は、254kDa、104kDa、99kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、60kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、及び20kDaの分子量を有するポリペプチドを含んだ。94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、及び64kDaの分子量を有するポリペプチドは、鉄制御条件下でのみ発現された。Y.ペスチス株KIM6+由来のタンパク質は、最初に、実施例5に記載される様に30μgの総タンパク質を用いてSDS-PAGE(4%スタッキングゲル/10%分離ゲル)上でサイズ分画した。ウエスタンブロット分析は、回復期血清がY.ペスチスの膜タンパク質に対して試験されなかったという変更を除いて、実施例5に記載されるのと同一の条件下で実行される。この結果により、およそ254kDa、94kDa、88kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、及び20kDa領域のタンパク質が、Y.エンテロコリチカの膜タンパク質に対して調製された過剰免疫化血清に由来する抗体と免疫反応性であることが示される。
【0116】
実施例7
マウスワクチン接種並びに静脈内及び肺内Y.ペスチス暴露に対する保護を評価する暴露試験
16〜22gの重量の88匹のメスのスイス-ウェブスター(Harlan Laboratories)を、1〜4と名付けた4群に均等に分けた(22匹のマウス/群)。これらの動物を、HEPA-フィルター、マイクロベント・ポジティブ空気供給動物飼育システム(BSL3施設)中で飼育する。食餌と水を自由に与えた。
【0117】
実施例1において上で記載されたように、Y.ペスチスKIM6+株由来のタンパク質を調製し、そして20%vol/vol及び500μgの総タンパク質/mlの終濃度でアジュバントとして水酸化アルミニウムを用いてワクチンとして剤形した。同じアジュバント濃度を維持する一方、抗原をPBSと置き換えることにより偽薬を調製する。群1及び3におけるマウスを、14日のインターバルで50μgの総タンパク質を含む0.1mlのワクチンで2回腹腔内ワクチン接種し、一方群2及び4のマウスを同じスケジュールで偽薬で免疫化する。
【0118】
Y.ペスチスCO92株を暴露に用い、そしてBSL3封じ込め施設で調製する。第二のワクチン接種後14日目で、群1及び2のマウスを、0.1mlのCO92株(一匹のマウスあたり103CFU又は約100LD50)で側尾静脈から静脈内暴露させる。群3及び4のマウスは、生理的食塩水中に希釈されたY.ペスチスCO92のエアロゾル化暴露用量にかけて、マウス一匹当たり100LD50CFUの濃度を30分間、機密チャンバー中で達成した。スイス・ウェブスターマウスにおけるCO92株のエアロゾル化LD50は、提案された暴露実験の前に、小規模の予備研究により測定される。致死率は、暴露後21日間記録される。
【0119】
実施例8
魚ワクチン接種及びY.ルッケリ暴露に対する保護を評価するための暴露研究
群1及び2と名付けられた2群の約2gの重量の20匹のニジマスを、2つの分離された60lのタンク中で、18℃の温度で維持する。魚は、1日二回市販のマス用餌(Ziegler Brothers, Gardners, PA)を与えた実施例1に記載されるのと同じ方法を用いてY.ルッケリから得られた組成物で、群1の魚をワクチン接種する。Y.ルッケリから得られた抽出タンパク質を、魚に投与するためのワクチン組成物を調製するために使用する。ストックワクチンは、水性タンパク質懸濁液を、Drakeol6ミネラルオイル及びArlacelAを乳濁剤として含む油中水滴エマルジョンへと、水性タンパク質懸濁液を乳濁することにより、組成物から調製される。ワクチンは、腹腔内投与されて、0.1ccを用いて0.1ccの注射体積中の25μgの総タンパク質の最終投与量を与えた。偽薬は、上記製剤中で抗原を生理食塩水に置き換えることにより調製し、そして群2の魚に与えられる(対照)。魚は、第一ワクチン接種後28日目に第二ワクチンが与えられる。第二ワクチン接種の14日後、全ての魚を腹腔内で暴露させる。
【0120】
Y.ルッケリの毒性単離株を暴露に用いる。暴露単離株を160μM・2,2-ジプリジルを含むトリプティック・ソイ培地(TSB)中で培養し、そして37℃で12時間インキュベートして増殖させる。培養物を、10000×gで遠心することにより生理食塩水中で一回洗浄し、そして生理食塩水中に再懸濁する。培養物を、5.0×107CFU/mlに調節する。各マスを5.0×106CFUの最終暴露用量で対応する細菌0.1ccを用いて腹腔内接種する。暴露後14日間毎日死亡率を記録した。全ての死亡した魚をタンクから除き、そして肝臓を取り除き、そして暴露細菌の存在を計数する。有効性をワクチン接種-非ワクチン接種対照を比較して生存度合いとして計測する。
【0121】
実施例9
Y.エンテロコリチカATCC27729株及びY.ペスチスKIM6+株の鉄制御タンパク質の特徴決定
Y.エンテロコリチカATCC27729株及びY.ペスチスKIM6+株由来である実施例1に記載される様に調製される組成物におけるタンパク質を、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析(MALDI-TOF MS)を用いて特徴決定した。各組成物のサンプルを10%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲルを用いて分離した。組成物のタンパク質を分離した後に、ゲルをクマシー・ブリリアント・ブルーで染色して、タンパク質を可視化した。
【0122】
材料と方法
切り取り及び洗浄
ゲルを水で10分間2回洗浄した。目的の各タンパク質バンドを、サンプルに存在するゲルの量を少なくするためにできるだけタンパク質バンドの近くでカットすることにより切り取った。各ゲルスライスを1×1mm立方体に切り取り、そして1.5mlチューブに入れた。ゲル片を水で15分間洗浄した。洗浄ステップで使用される溶媒体積の全ては、ゲルスライスの体積の2倍の体積に大体等しくした。ゲルスライスを次に水/アセトニトリル(1:1)で15分間洗浄した。水/アセトニトリル混合物を取り除き、そしてアセトニトリルを、ゲル片が粘性白色になるまで覆うために加え、その時点でアセトニトリルを取り除いた。ゲル片を100mM・NH4HCO3中に再水和し、そして五分後、ゲル片の体積の二倍に等しい体積のアセトニトリルを加えた。これを15分間インキュベートし、液体を取り除き、そしてゲル片をSpeedVac中で乾燥させた。
【0123】
還元及びアルキル化
乾燥ゲル片を10mM・DTT及び100mM・NH4HCO3中に再水和し、そして45分間56℃でインキュベートした。チューブを室温に冷却させた後、液体を取り除き、そして55mMヨードアセトアミド及び100mM・NH4HCO3の等量の混合物をすぐに加えた。これを暗所で30分間室温でインクベートした。液体を取り除き、ゲル片が粘性白色となるまで覆うためにアセトニトリルを加え、この時点でアセトニトリルを取り除いた。ゲル片を100mM・NH4HCO3で再水和し、そして5分後、ゲル片の体積の2倍に等しい体積のアセトニトリルを加えた。これを15分間インキュベートし、液体を取り除き、そしてゲル片をSpeedVac中で乾燥させた。残存クマシーが未だ残るならば、100mM・NH4HCO3/アセトニトリルでの洗浄を繰り返した。
【0124】
ゲル内切断
ゲル片を、SpeedVac内で完全に乾燥させた。このゲル片を4℃で切断緩衝液(50mM・NH4HCO3、5mM・CaCl2、12.5ng/μlトリプシン)で再水和した。ゲル片を覆うために十分な量の緩衝液、及びさらに多い量の緩衝液を加えた。ゲル片を氷上で45分間インキュベートし、そして上清を取り除き、そしてトリプシンを伴わない5〜2μlの同じ緩衝液で置換した。これを37℃で一晩エアインキュベーター内でインキュベートした。
【0125】
ペプチドの抽出
十分な体積の25mM・NH4HCO3をゲル片を覆うために加え、そして(一般的に、バス・ソニケーター中で)15分間インキュベートした。等体積のアセトニトリルを加え、そして15分間(可能ならばバスソニケーター中で)インキュベートし、そして上清を回収した。NH4HCO3の代わりに5%ギ酸を用いて抽出を2回繰り返した。ゲル片を覆うために十分な体積の5%ギ酸を加え、そして15分間(典型的にバスソニケーター内で)インキュベートし、そして上清を取り除いた。抽出物を貯蔵し、そして10mM・DTTを1mM・DTTの終濃度になるまで加えた。サンプルをSpeedVac中で約5μlの終体積になるまで乾燥させた。
【0126】
ペプチドの脱塩
サンプルを、製造者により提案されるようにZIPTIPピペットチップ(C18, Millipore, Billerica, MA)を用いて脱塩した。簡潔に記載すると、サンプルを再構成溶液(5:95アセトニトリル:H2O、0.1%〜0.5%トリフルオロ酢酸)中に再構成し、遠心し、そしてpHが3未満であることを確かめるためにpHがチェックされた。ZIPTIPは、10μlの溶液1(50:50アセトニトリル:H2O、0.1%トリフルオロ酢酸)を吸引し、そして吸引された一定量を捨てることにより水和させた。次に、10μlの溶液2(脱イオンH2Oに溶解した0.1%トリフルオロ酢酸)を吸引し、そして吸引された一定量を捨てた。10μlのサンプルをチップ中にゆっくり吸引し、サンプルをサンプルチューブ中に排出させることにより溶液を捨て、そして当該方法を5〜6回繰り返して洗浄した。2.5μlの氷冷溶液3(60:40、アセトニトリル:H2O、0.1%トリフルオロ酢酸)を吸引し、排出し、そして次に等量をチップから再吸引し、そして排出を3回おこなうことによりペプチドを溶出させた。溶液をチップから排出した後に、チューブに蓋をし、そして氷上に置いた。
【0127】
質量分析ペプチド・マッピング
ペプチドを10μl〜30μlの5%ギ酸中に懸濁し、そしてMALDI-TOF MS(Bruker Daltonics Inc., Billerica, MA)により分析した。ペプチド断片の質量スペクトルを、製造業者により提案されるとおりに測定した。簡潔に記載すると、トリプシン切断から得られたペプチドを含むサンプルをマトリックスであるシアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸と混合し、標的に移し、そして乾燥させた。乾燥されたサンプルを質量分析器に移し、照射させ、そして各イオンの飛行時間を検出し、そして当該組成物に存在する各タンパク質のペプチド質量フィンガープリントを測定するために使用した。既知のポリペプチド(ヒトアンギオテンシンII、モノアイソトピック質量MH+1046.5(Sigma Chemical Co.)、及びアデノコルチコトロピン(adenocorticotropin)ホルモン断片18-39、MH+2465.2(Sigma Chemical Co.))を当該機械を標準化するために使用した。
【0128】
データ分析
各質量スペクトルにおけるペプチドの実験的に観察された質量を、Mascotサーチエンジン(Matrix Science Ltd., London, UK、及びwww.matrixscience.com, Perkinsら、Electrophoresis 20, 3551-3567 (1999)を参照のこと)のペプチド質量フィンガープリントサーチ法を用いて既知のタンパク質から得られた予期された質量と比較した。サーチパラメーターは、以下の:データーベース、NCBInr;分類、細菌(ユーバクテリア);サーチタイプ、ペプチド質量フィンガープリント;酵素、トリプシン;固定修飾、なし;変数修飾、なし又は酸化メチオニン;質量値、モノアイソトピック;タンパク質重量、制限無し;ペプチド質量許容範囲、±1Da又は±330ppm;ペプチド荷電状態、Mr;最大過誤切断、1;クエリー数、25を含んだ。
【0129】
結果
このサーチ結果は、組成物中に存在するタンパク質の質量フィンガープリントである(表5及び6)。
【0130】
【表18】
【0131】
【表19】
【0132】
【表20】
【0133】
【表21】
【0134】
【表22】
【0135】
【表23】
【0136】
【表24】
【0137】
【表25】
【0138】
【表26】
【0139】
【表27】
【0140】
【表28】
【0141】
【表29】
【0142】
【表30】
【0143】
【表31】
【0144】
【表32】
【0145】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電気的に利用できるもの(例えば、GenBank及びRefSeqに受託されたヌクレオチド配列、及び例えばSwissProt、PIR、PRF、PDBに受諾されたアミノ酸配列、及びGenBank及びRdfSeqにおける注釈つきのコード領域からの翻訳)は、本明細書に援用される。前述の詳細な記載及び実施例は、理解を明らかにすることのみを目的として与えられた。それらから不要な制限がされると理解すべきではない。本発明は、提示されそして記載された詳細そのものに制限されることはなく、当業者に明らかな変化は、特許請求書により定義される発明の範囲に含まれるであろう。
【0146】
他に記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量、分子量、その他もろもろを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語により修飾されていると理解すべきである。従って、そうではないと他に記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数字のパラメーターは、本発明により得られると考えられる所望される性質に左右されて変わりうる近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲の菌討論を制限する試みとしてではなく、各数字のパラメーターは、報告された有効数字の数の範囲内で、そして通常の四捨五入の技術を適用することにより、解釈されるべきである。
【0147】
本発明の広い範囲を規定する数値範囲及びパラメーターが近似値であるにもかかわらず、具体例で記載された数値は、可能な限り正確に記録する。しかしながら、全ての数値は、それぞれの試験計測において見られる標準誤差から必ずもたらされる範囲を本来的に含む。
【0148】
全ての見出しは読み手の便宜のためであり、そして他に記載がない限り、見出しに続く文章の意味を制限するために使用されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】Y.エンテロコリチカATCC27729株及びY.ペスチスKIM6+の界面活性剤-不溶性タンパク質-濃縮抽出物であって、10%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動させることにより分離されたもの。ゲル画像の左側の数字は、レーン1に示される標準物質の分子量(kDa)を示す。レーン1は分子量標準物質であり;レーン2は300μM・FeCl3を添加された培地中で育ったY.ペスチスKIM6+株であり;レーン3は160μM・2,2-ジプリジルを添加された培地中で育ったY.ペスチスKIM6+株であり;レーン4は160μM・2,2-ジプリジルを添加された培地中で育ったY.エンテロコリチカATCC27729株であり;レーン5は300μM・FeCl3を添加した培地中で育ったY.エンテロコリチカATCC27729株である。
【図2】ワクチン接種及び非ワクチン接種されたマウスであって、Y.エンテロコリチカで暴露された後のマウスの生存。グラフは、鉄制限条件下で生育されたY.エンテロコリチカ27729株由来の膜タンパク質で免疫化し、その後、27729株で生暴露した後のマウスの生存分析を示す。死亡率を暴露後7日間記録した。
【図3A】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3B】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3C】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3D】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3E】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3F】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3G】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【図3H】配列番号1〜23のヌクレオチド配列。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び40kDa、38kDa、又は37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項2】
医薬として許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、Y.エンテロコリチカATCC27729株から単離可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
268kDa、92kDa、79kDa、54kDa、45kDa、31kDa、28kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有し、そして鉄キレート剤を伴わない培地で生育された場合にY.エンテロコリチカから単離可能である単離ポリペプチドをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にY.エンテロコリチカから単離可能である2個の83kDaポリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び268kDa、79kDa、又は45kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、Y.エンテロコリチカ27729株から単離可能である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
医薬として許容される担体をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
以下の:
268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、45kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、及び28kDaの分子量を有する単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで上記ポリペプチドが、エルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、Y.エンテロコリチカATCC27729株から単離可能である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び46kDa、37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動することにより測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項12】
医薬として許容される担体をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、又は20kDaの分子量を有し、そして前記鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合にY.ペスチスから単離可能である単離ポリペプチドをさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、Y.ペスチスKIM6+株から単離可能である、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、20kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド上での電気泳動により測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項16】
医薬として許容される担体をさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリペプチドがY.ペスチスKIM6+株から単離できる、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
以下の:
254kDa、104kDa、99kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、60kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、及び20kDaの分子量を有する単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで当該ポリペプチドが、エルシニア・ペスチスから単離でき、そして当該組成物がY.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、Y.ペスチスKIM6+株から単離可能である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
対象において感染を治療する方法であって、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか、又は感染を有する危険性のある対象に有効量の組成物を投与することを含み、ここで当該組成物が、以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び40kDa、38kDa、37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで、83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地においてインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護し、
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び268kDa、79kDa、45kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで、83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地においてインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護するか、或いは
268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、45kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、及び28kDaの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで、当該ポリペプチドがエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する、
を含む、前記方法。
【請求項21】
前記対象が哺乳動物である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳動物がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記エルシニアspp.が、Y.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
対象において症状を治療する方法であって、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に有効量の組成物を投与することを含み、ここで当該組成物が以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び40kDa、38kDa、又は37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物がY.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護し、
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び268kDa、79kDa、45kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物がY.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護するか、或いは
268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、45kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、及び28kDaの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで当該ポリペプチドがエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する、
を含む、前記方法。
【請求項25】
前記対象が哺乳動物である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項24に記載される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記症状が、下痢、腸炎、又はペスト、或いはそれらの組み合わせである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
対象において感染を治療する方法であって、組成物の有効量を、Y.エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか、又は当該感染を有する危険性のある対象に投与することを含み、ここで、当該組成物が以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び46kDa、37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物がY.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、20kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地において生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護するか、或いは
254kDa、104kDa、99kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、60kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、及び20kDaの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで当該ポリペプチドがエルシニア・ペスチスから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する、
を含む、前記方法。
【請求項30】
前記対象が哺乳動物である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物がヒトである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
対象において症状を治療する方法であって、
有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に投与することを含み、ここで当該組成物が以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び46kDa、37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物がY.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護し、
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、20kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地において生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護するか、或いは
254kDa、104kDa、99kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、60kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、及び20kDaの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで当該ポリペプチドがエルシニア・ペスチスから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する、
を含む、前記方法。
【請求項34】
前記対象が哺乳動物である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物がヒトである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記症状が下痢、腸炎、又はペスト或いはそれらの組合わせである、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
対象の感染を治療する方法であって、有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか又は当該感染を有する危険性のある対象に投与することを含み、ここで、当該組成物が以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを特異的に結合する抗体
を含み、ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できない、前記方法。
【請求項39】
前記対象が哺乳動物である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記哺乳動物がヒトである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
対象において症状を治療する方法であって、有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に投与することを含み、ここで当該組成物は、以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを特異的に結合する抗体
を含み、ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できない、前記方法。
【請求項44】
前記対象が哺乳動物である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記哺乳動物がヒトである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記症状が、下痢、腸炎、又はペスト、或いはそれらの組み合わせである、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
対象において感染を治療する方法であって、有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか、又は当該感染を有する危険性のある対象に投与することを含み、ここで当該組成物が、以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドに特異的に結合する抗体
を含み、ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できない、前記方法。
【請求項50】
前記対象が哺乳動物である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記哺乳動物がヒトである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
対象において症状を治療する方法であって、有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に投与することを含み、ここで当該組成物が、以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドに特異的に結合する抗体を含み、ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できない、前記方法。
【請求項55】
前記対象が哺乳動物である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記哺乳動物がヒトである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記症状が下痢、腸炎、又はペスト、又はその組み合わせである、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
レッドマウス病の症状を治療する方法であって、有効量の組成物を、エルシニア・ルッケリにより引き起こされる感染を有する危険性があるか、又はエルシニア・ルッケリにより引き起こされる感染を有する魚に投与することを含み、ここで当該組成物が、Y.ルッケリから単離されたサルコシン不溶性ポリペプチドを含む、前記方法。
【請求項61】
ポリペプチドに特異的に結合する抗体を検出するキットであって、別々の容器に、以下の:
83kDa、70kDa、又は66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量がドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、並びに
上記ポリペプチドに特異的に結合する抗体を検出する試薬
を含む、前記キット。
【請求項62】
ポリペプチドに特異的に結合する抗体を検出するキットであって、別々の容器に、以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量がドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、並びに
上記ポリペプチドに特異的に結合する抗体を検出する試薬
を含む、前記キット。
【請求項1】
以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び40kDa、38kDa、又は37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項2】
医薬として許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、Y.エンテロコリチカATCC27729株から単離可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
268kDa、92kDa、79kDa、54kDa、45kDa、31kDa、28kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有し、そして鉄キレート剤を伴わない培地で生育された場合にY.エンテロコリチカから単離可能である単離ポリペプチドをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にY.エンテロコリチカから単離可能である2個の83kDaポリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び268kDa、79kDa、又は45kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、Y.エンテロコリチカ27729株から単離可能である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
医薬として許容される担体をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
以下の:
268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、45kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、及び28kDaの分子量を有する単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで上記ポリペプチドが、エルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、Y.エンテロコリチカATCC27729株から単離可能である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び46kDa、37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動することにより測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項12】
医薬として許容される担体をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、又は20kDaの分子量を有し、そして前記鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合にY.ペスチスから単離可能である単離ポリペプチドをさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、Y.ペスチスKIM6+株から単離可能である、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、20kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド上での電気泳動により測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項16】
医薬として許容される担体をさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリペプチドがY.ペスチスKIM6+株から単離できる、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
以下の:
254kDa、104kDa、99kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、60kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、及び20kDaの分子量を有する単離ポリペプチド
を含む組成物であって、ここで分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで当該ポリペプチドが、エルシニア・ペスチスから単離でき、そして当該組成物がY.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する、前記組成物。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、Y.ペスチスKIM6+株から単離可能である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
対象において感染を治療する方法であって、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか、又は感染を有する危険性のある対象に有効量の組成物を投与することを含み、ここで当該組成物が、以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び40kDa、38kDa、37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで、83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地においてインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護し、
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び268kDa、79kDa、45kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで、83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地においてインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護するか、或いは
268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、45kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、及び28kDaの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで、当該ポリペプチドがエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する、
を含む、前記方法。
【請求項21】
前記対象が哺乳動物である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳動物がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記エルシニアspp.が、Y.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
対象において症状を治療する方法であって、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に有効量の組成物を投与することを含み、ここで当該組成物が以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び40kDa、38kDa、又は37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物がY.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護し、
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び268kDa、79kDa、45kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで83kDa、70kDa、又は66kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物がY.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護するか、或いは
268kDa、92kDa、83kDa、79kDa、70kDa、66kDa、54kDa、45kDa、40kDa、38kDa、37kDa、31kDa、及び28kDaの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで当該ポリペプチドがエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.エンテロコリチカATCC27729株での暴露に対してマウスを保護する、
を含む、前記方法。
【請求項25】
前記対象が哺乳動物である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項24に記載される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記症状が、下痢、腸炎、又はペスト、或いはそれらの組み合わせである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
対象において感染を治療する方法であって、組成物の有効量を、Y.エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか、又は当該感染を有する危険性のある対象に投与することを含み、ここで、当該組成物が以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び46kDa、37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物がY.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、20kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地において生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護するか、或いは
254kDa、104kDa、99kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、60kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、及び20kDaの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで当該ポリペプチドがエルシニア・ペスチスから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する、
を含む、前記方法。
【請求項30】
前記対象が哺乳動物である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物がヒトである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
対象において症状を治療する方法であって、
有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に投与することを含み、ここで当該組成物が以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び46kDa、37kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドは、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物がY.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護し、
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、及び254kDa、46kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、20kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDaの分子量を有する上記ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地において生育された場合に単離できず、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護するか、或いは
254kDa、104kDa、99kDa、94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、64kDa、60kDa、46kDa、44kDa、37kDa、36kDa、31kDa、28kDa、及び20kDaの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、ここで当該ポリペプチドがエルシニア・ペスチスから単離可能であり、そしてここで当該組成物が、Y.ペスチスKIM6+株での暴露に対してマウスを保護する、
を含む、前記方法。
【請求項34】
前記対象が哺乳動物である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物がヒトである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記症状が下痢、腸炎、又はペスト或いはそれらの組合わせである、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
対象の感染を治療する方法であって、有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか又は当該感染を有する危険性のある対象に投与することを含み、ここで、当該組成物が以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを特異的に結合する抗体
を含み、ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できない、前記方法。
【請求項39】
前記対象が哺乳動物である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記哺乳動物がヒトである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
対象において症状を治療する方法であって、有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に投与することを含み、ここで当該組成物は、以下の:
83kDa、70kDa、66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドを特異的に結合する抗体
を含み、ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できない、前記方法。
【請求項44】
前記対象が哺乳動物である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記哺乳動物がヒトである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記症状が、下痢、腸炎、又はペスト、或いはそれらの組み合わせである、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
対象において感染を治療する方法であって、有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有するか、又は当該感染を有する危険性のある対象に投与することを含み、ここで当該組成物が、以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドに特異的に結合する抗体
を含み、ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できない、前記方法。
【請求項50】
前記対象が哺乳動物である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記哺乳動物がヒトである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
対象において症状を治療する方法であって、有効量の組成物を、エルシニアspp.により引き起こされる感染を有する対象に投与することを含み、ここで当該組成物が、以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する2個の単離ポリペプチドに特異的に結合する抗体を含み、ここで、分子量はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・ペスチスから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できない、前記方法。
【請求項55】
前記対象が哺乳動物である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記哺乳動物がヒトである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記エルシニアspp.がY.エンテロコリチカ又はY.ペスチスである、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記症状が下痢、腸炎、又はペスト、又はその組み合わせである、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
レッドマウス病の症状を治療する方法であって、有効量の組成物を、エルシニア・ルッケリにより引き起こされる感染を有する危険性があるか、又はエルシニア・ルッケリにより引き起こされる感染を有する魚に投与することを含み、ここで当該組成物が、Y.ルッケリから単離されたサルコシン不溶性ポリペプチドを含む、前記方法。
【請求項61】
ポリペプチドに特異的に結合する抗体を検出するキットであって、別々の容器に、以下の:
83kDa、70kDa、又は66kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量がドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、並びに
上記ポリペプチドに特異的に結合する抗体を検出する試薬
を含む、前記キット。
【請求項62】
ポリペプチドに特異的に結合する抗体を検出するキットであって、別々の容器に、以下の:
94kDa、88kDa、77kDa、73kDa、又は64kDa、又はそれらの組み合わせの分子量を有する単離ポリペプチド、
ここで、分子量がドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により測定され、当該ポリペプチドが、鉄キレート剤を含む培地中でインキュベートされた場合にエルシニア・エンテロコリチカから単離可能であり、かつ、当該鉄キレート剤を伴わない培地中で生育された場合に単離できず、並びに
上記ポリペプチドに特異的に結合する抗体を検出する試薬
を含む、前記キット。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【公表番号】特表2008−528512(P2008−528512A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552375(P2007−552375)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/002474
【国際公開番号】WO2006/079076
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(507246198)エピトピックス,リミティド ライアビリティ カンパニー (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/002474
【国際公開番号】WO2006/079076
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(507246198)エピトピックス,リミティド ライアビリティ カンパニー (5)
【Fターム(参考)】
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