説明

エレクトロクロミック化合物、中間体化合物、及び、それらの製造方法、並びに、エレクトロクロミック化合物を用いた光学装置

【課題】耐久性を有し、応答反応に優れ、鮮鋭な色調で、可逆的なマゼンタの発消色表示を安定して多数回繰り返し行うことができるエレクトロクロミック化合物及びその中間体化合物とそれらの製造方法、並びに、エレクトロクロミック装置を提供すること。
【解決手段】エレクトロクロミック化合物は、2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジフルオロチオフェンを中間体化合物として、これをハロゲン化物B1−A1−Y、B2−A2−Y(但し、Yはアニオンを表しており、A1、A2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、B1、B2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、B1、B2のうち少なくとも一方は、多孔質電極へ担持するための官能基を有している。)と反応さて合成される。エレクトロクロミック化合物3は、エレクトロクロミック装置10の表示電極構造体11の多孔質電極4に担持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色効率、応答速度、表示色純度に優れた、表示装置用途として好適なエレクトロクロミック化合物及びその中間体化合物とそれらの製造方法、並びに、エレクトロクロミック装置に関するものであり、マゼンタの発消色表示のためのエレクトロクロミック化合物及びその中間体化合物とそれらの製造方法、並びに、エレクトロクロミック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、明るく色純度に優れ、且つ、省消費電力で、フルカラー表示への応用が容易な表示色素材料やこれを用いた表示素子への要望が高まってきている。従来、CRT(Cathode Ray Tube)、PDP(Plasma Display Panel)、ELD(Electroluminescence Display)VFD(Vacuum Fluorescent Display)、FED(Field Emission Display)、LED(Light Emitting Diode)等の発光型素子、DMD(Digital Micromirror Display)、LCD(Liquid Crystal Display)、ECD(Electrochromic Display)、EPD(Electrophoresis Display)等の非発光型素子に関する多くの技術の提案がなされている。
【0003】
しかし、従来公知の各種発光型素子を用いた表示デバイスは、ユーザーが発光を直視する形式で使用するものであるため、長時間閲覧すると視覚的な疲労を引き起こすという問題があった。
【0004】
特に、LCDは、非発光型素子の中でも需要が拡大している技術であり、大型、小型の、様々なディスプレイ用途に用いられているが、LCDは視野角が狭く、見やすさの観点からは改善すべき課題を有している。また、LCDを使用している、携帯電話、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等のモバイル機器は、屋外で使用される場合が多く、太陽光下では、表示光が相殺されて視認性が悪化するという問題もあった。
【0005】
非発光型素子のうち反射型表示素子に関しては、電子ペーパーの需要向上により、従来から様々な技術の提案がなされている。例えば、反射型LCDや電気泳動方式の表示デバイスが挙げられる。
【0006】
反射型LCDとしては、二色性色素を用いたG−H型液晶方式や、コレステリック液晶等が知られている。これらの方式は、従来の透過型LCDと比較して、バックライトを使用しないため、省消費電力という利点を有しているが、視野角依存性があり、また光反射効率も低いため、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
【0007】
他方、電気泳動方式の表示デバイスは、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した方式であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有しているが、フルカラー化を行う場合には、カラーフィルターを利用する並置混合法を適用する必要があるため、反射率が低下し、必然的に画面が暗くなってしまうという問題がある。
【0008】
また、近年においては、自動車の調光ミラーや時計等に、エレクトロクロミック(以下、ECと略記する。)素子を用いたものが提案されている。このEC素子は、偏光板等が不要であり、視野角依存性が無く、発色型で視認性に優れ、構造が簡易で且つ大型化も容易で、更には材料の選択によって多様な色調の表示が可能であるという利点を有している。
【0009】
具体的なEC素子を用いた表示装置の例としては、1対の透明電極の少なくとも一方に半導体ナノ多孔質層を設け、この半導体ナノ多孔質層にEC色素を担持させた構成の表示装置が提案されている(例えば、後記する特許文献1、2を参照。)。これらの表示装置は、開回路を構成して電極間の電子の移動を遮断し酸化還元状態を保持するだけで表示状態を静止できるので、表示画像を維持するための電力が不要であり、消費電力が極めて低いという点で優れている。
【0010】
なお、イエロー、シアン、マゼンタの各EC色素をそれぞれ担持させた構造単位を積層させた構成を有し、フルカラー表示を行うことができるEC表示素子は周知であり(例えば、後記する特許文献3、4、5を参照。)、ビオロゲン化合物に関して周知である(例えば、後記する特許文献6を参照。)。
【0011】
また、後記する非特許文献1には、ビス(2−ホスホノエチル)−4、4‘−ビピリジニウムジクロライドの合成に関する記載がある。
【0012】
【特許文献1】特開2003−248242号公報(段落0008、段落0025、図1、図2)
【特許文献2】特開2003−270670号公報(段落0008、段落0031、図1〜図4)
【特許文献3】特開2007−10975号公報(段落0028、段落0046)
【特許文献4】特開2007−41259号公報(段落0011〜0012、段落0148、図1〜図4)
【特許文献5】特開2007−121714号公報(段落0071〜0088)
【特許文献6】特表2006−519222号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】D. Cummins, et al,“Ultrafast Electrochromic Windows Based on Redox-Chomophore Modified Nanostructured Semiconducting and Conducting Films”, J. Phys. Chem. B, 104(2000)11449-11459(Experimental Sections, Scheme 1.)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1、2に提案されている表示装置においては、ビオロゲンと称されるビピリジン化合物をEC色素として用いており、これは青色の発消色を可逆的に行うものであるため、元々フルカラー表示を行うことを前提していないものである。
【0014】
特許文献3、4、5に、フルカラー表示を行うために必要とされるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に発色するEC色素を用いた表示装置についての記載があるが、発色状態から無色状態への変化における完全な無色の実現、及び、無色状態から発色状態への変化における鮮やかな発色の実現を両立させることができ、応答反応に優れ、鮮鋭な色調で、多数回繰り返し安定に可逆的なシアンの発消色表示を行うことができるエレクトロクロミック化合物については、十分な配慮がなされていない。
【0015】
従来技術における有機エレクトロクロミック化合物では、発色状態から無色状態への変化における完全な無色の実現、及び、無色状態から発色状態への変化における鮮やかな発色の実現を両立させることができなかったという問題があった。
【0016】
また、従来技術におけるエレクトロクロミック化合物は、色純度が低いという点や、精密且つ鮮明なカラー画像の表示を行うことが困難であるという問題があった。
【0017】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、優れた性能を有し、発色状態から無色状態への変化における完全な無色の実現、及び、無色状態から発色状態への変化における鮮やかな発色の実現を両立させることができ、耐久性を有し、応答反応に優れ、鮮鋭な色調で、可逆的なマゼンタの発消色表示を安定して多数回繰り返し行うことができるエレクトロクロミック化合物及びその中間体化合物とそれらの製造方法、並びに、エレクトロクロミック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
即ち、本発明は、式(1)によって表される化合物、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなるエレクトロクロミック化合物に係るものである。但し、式(1)において、a、bはa×b=2を満たす整数であり、Yb-はb価アニオンを表し、A1、A2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、B1、B2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、B1、B2のうち少なくとも一方は、多孔質電極へ担持するための官能基を有している。
【0019】
【化1】

…(1)
【0020】
また、本発明は、式(2)によって表される2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジフルオロチオフェン、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなる中間体化合物に係るものである。
【0021】
【化2】

…(2)
【0022】
また、本発明は、2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジブロモチオフェンをリチウム化し、次いで、フッ素化剤によってフッ素基を導入することを複数回繰り返す工程を有する、上記式(2)によって表される2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジフルオロチオフェン、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなる中間体化合物の製造方法に係るものである。
【0023】
また、本発明は、上記式(2)によって表される2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジフルオロチオフェン、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなる中間体化合物をハロゲン化物B1−A1−Y、B2−A2−Y(但し、Yはアニオンを表しており、A1、A2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、B1、B2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、B1、B2のうち少なくとも一方は、多孔質電極へ担持するための官能基を有している。)と反応させる工程を有し、上記式(1)によって表される化合物又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなるエレクトロクロミック化合物の製造方法に係るものである。
【0024】
また、本発明は、上記式(1)によって表される化合物又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなるエレクトロクロミック化合物を用いた光学装置に係るものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によるエレクトロクロミック化合物は、耐久性を有し、応答反応に優れ、鮮鋭な色調で、多数回繰り返しに可逆的なシアンの発消色表示を行うことができる、エレクトロクロミック装置に好適に使用することができる。
【0026】
本発明による中間体化合物は、上記式(1)によって表される化合物、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなるエレクトロクロミック化合物の製造方法に好適に使用することができる。
【0027】
本発明による中間体化合物の製造方法によれば、上記式(1)によって表される化合物、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなるエレクトロクロミック化合物の製造方法における中間体として好適に使用することができる、上記式(2)によって表される2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジフルオロチオフェン、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体を提供することができる。
【0028】
本発明によるエレクトロクロミック化合物の製造方法によれば、上記式(2)によって表される2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジフルオロチオフェン、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなる中間体化合物を合成原料として用いて、上記式(1)によって表される化合物、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなるエレクトロクロミック化合物を合成することができる。
【0029】
本発明による光学装置によれば、上記式(1)によって表される化合物、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなるエレクトロクロミック化合物を用いるので、エレクトロクロミズムに基づく高性能な光学装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の中間体化合物は、上記式(1)によって表される化合物、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなるエレクトロクロミック化合物を合成するための中間体であり、この中間体化合物は効率よく高い収率で合成することができるので、効率よくエレクトロクロミック化合物を合成することができる。
【0031】
本発明の中間体化合物の製造方法は、上記式(1)によって表される化合物、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなるエレクトロクロミック化合物を合成するための中間体を合成するものであり、この中間体化合物は効率よく高い収率で合成することができるので、効率よくエレクトロクロミック化合物を合成することができる。
【0032】
本発明の光学装置では、第1の支持基板、この第1の支持基板上に形成された第1の透明電極、及び、この第1の透明電極上に形成された金属酸化物多孔質電極を含む表示電極構造体と、第2の支持基板、この第2の支持基板上に形成された第2の透明電極を含む対向電極構造体と、前記表示電極構造体及び前記対向電極構造体によって挟持された電解質層とを具備し、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極とが対向するように配置され、エレクトロクロミック化合物が前記金属酸化物多孔質電極に担持され、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極の間に印加する電圧の制御によって、エレクトロクロミック化合物による可逆的な発消色を行うエレクトロクロミック素子構造体を有し、上記式(1)によって表される化合物、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなる化合物が前記エレクトロクロミック化合物として使用され、前記電圧の印加の制御によってマゼンタの可逆的な発消色を行う、エレクトロクロミック装置として構成されるのがよい。この構成によれば、耐久性を有し、応答反応に優れ、鮮鋭な色調で、多数回繰り返しに可逆的なマゼンタの発消色表示を行うことができる、エレクトロクロミック装置を提供することができる。
【0033】
また、前記エレクトロクロミック素子構造体を第1のエレクトロクロミック素子構造体とし、前記エレクトロクロミック素子構造体において前記エレクトロクロミック化合物としてイエローの可逆的な発色を行う化合物が使用された第2のエレクトロクロミック素子構造体と、前記エレクトロクロミック素子構造体において前記エレクトロクロミック化合物としてシアンの可逆的な発色を行う化合物が使用された第3のエレクトロクロミック素子構造体とを有し、前記第1、第2、第3のエレクトロクロミック素子構造体が積層され、フルカラーの画像を表示する構成とするのがよい。この構成によれば、発消色の多数回繰り返しに対して耐久性を有し、応答反応に優れ、鮮鋭な色調で、フルカラー表示を行うことができる、エレクトロクロミック装置を提供することができる。
【0034】
以下、本発明による、エレクトロクロミック化合物及びその中間体化合物とそれらの製造方法、並びに、エレクトロクロミック装置について、図を参照して具体的に説明する。
【0035】
但し、本発明は、以下の例に限定されるものではなく、従来公知の構成を適宜付加することができ、本発明の要旨を何ら逸脱しないものとする。
【0036】
実施の形態
本実施の形態による、式(2)によって表される中間体化合物である2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジフルオロチオフェン(C1482SF2)は、2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジブロモチオフェン(C1482SBr2)をリチウム化、次いで、フッ素基を導入する工程を1から複数回繰り返すことによって、高い収率で合成することができ、式(1)によって表されるエレクトロクロミック化合物はこの中間体化合物(式(2))を用いて合成することができる。
【0037】
本実施の形態による、式(2)によって表される中間体化合物である2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジフルオロチオフェンは、式(1)によって表されるエレクトロクロミック化合物の製造方法に直接好適に使用することができる。
【0038】
本実施の形態による、式(1)によって表されるエレクトロクロミック化合物は、エレクトロクロミック装置に好適に使用することができ、発色状態から無色状態への変化におけるほぼ完全な無色の実現、及び、無色状態から発色状態への変化における鮮やかな発色の実現を両立させることができ、応答反応に優れ、鮮鋭な色調で、多数回繰り返し安定に可逆的なシアンの発消色表示を行うことができる。
【0039】
本実施の形態によるエレクトロクロミック装置は、支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体(表示電極構造体と対向電極構造体)が、透明電極同士が対向するように電解質層を挟持して配置されており、一対の電極構造体を構成する透明電極のうちの、少なくとも表示電極構造体の上に、式(1)によって表されるエレクトロクロミック化合物が担持された金属酸化物多孔質電極が形成されており、一対の電極構造体の間に印加する電圧を制御することによって、マゼンタの可逆的な発消色を行うことができるエレクトロクロミック装置である。
【0040】
従来技術における有機エレクトロクロミック化合物では、発色状態から無色状態への変化におけるほぼ完全な無色の実現、及び、無色状態から発色状態への変化における鮮やかな発色の実現を両立させることができなかったが、本発明によれば、明瞭なマゼンタの発消色を多数回繰り返し安定して表示することが可能な、フルカラー画像形成に寄与し得るエレクトロクロミック化合物を使用したことにより、応答速度、発色効率に優れ、色純度が高く、精密な画像制御が可能なエレクトロクロミック装置を得ることができた。
【0041】
また、本発明によれば、エレクトロクロミック化合物による多数回の発消色動作の後において、可視吸収スペクトル形状は発消色動作前の初期状態のスペクトル形状とほぼ同じであり変化を生じることがなく、発色状態が変化して不安定になることがなく、また、発色濃度の低下もなく、多数回の発消色の動作の繰り返しに対して耐久性を有するので、多数回繰り返して発消色動作を行った場合にも、鮮明な発消色を可逆的に行うことができ、極めて安定な発色の画像表示を行うエレクトロクロミック装置を実現することができる。また、精密な画像制御によってフルカラー画像表示を行うエレクトロクロミック装置の場合にも、フルカラー化に寄与し得る有機エレクトロミック色素の発消色によって、フルカラー表示として要求される発色を多数回繰り返しても、明瞭な色表示を安定して行うことができる。
【0042】
図1は、本発明の実施の形態による、エレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。
【0043】
図1に示すように、エレクトロクロミック装置10は、支持基板1上に、透明電極2と、本発明のエレクトロクロミック化合物3が担持された多孔質電極4とを具備する構成の表示電極構造体11と、支持基板6上に、透明電極7と多孔質電極8とを具備する構成の対向電極構造体12とが、電解質層5を介して対向配置された構成を有している。
【0044】
なお、図1においては、対向する透明電極2、7の何れにも多孔質電極4、8が形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて一方の電極にのみ多孔質電極を形成させ、この多孔質電極にエレクトロクロミック化合物3を担持させた構成としてもよい。以下、構成要素について順次説明する。
【0045】
<支持基板>
支持基板1、6は、耐熱性に優れ、且つ、平面方向の寸法安定性の高い材料が好適であり、具体的には、ガラス材料、透明性樹脂が適用できるが、これに限定されるものではない。
【0046】
透明性樹脂を適用する場合には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリサルフォン(PS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン等の高分子材料が挙げられ、これらの何れかによるプラスチック基板を使用することができる。
【0047】
<透明電極>
透明電極2、7は、所定の透明基板上に透明電極層が積層されたものとする。透明電極2、7を構成する電極材料としては、例えば、In23とSnO2との混合物、いわゆるITO膜(スズ−ドープ酸化インジウム膜)や、SnO2又はIn23をコーティングした膜等が挙げられる。また、上記ITO膜や、SnO2 又はIn23をコーティングした膜にSn、Sb、F等をドーピングしてもよく、フッ素−ドープ酸スズ膜はFTO膜と呼ばれている。その他、MgOやZnO等も適用できる。ZnOにAlをドープしたAZO膜、ZnOにガリウム(Ga)をドープしたGZO膜、ZnOにインジウム(In)をドープしたもの等も適用することができる。
【0048】
<多孔質電極>
多孔質電極4、8は、後述するエレクトロクロミック化合物の高い担持機能を確保するために、表面積が大きい材料により構成することが好適である。例えば、表面及び内部に微細孔を有した多孔質形状、ロット形状、ワイヤ形状、メソポーラス形状、集合粒子状等となっているものが挙げられる。
【0049】
多孔質電極4、8の材料としては、例えば、金属、真性半導体、有機半導体、カーボン等が適用できるが、酸化物半導体、複合酸化物半導体等が、透過率が高く好適である。
【0050】
酸化物半導体、複合酸化物半導体としては、例えば、TiO2、SnO2、SrTiO3、WO3、ZnO、Ta25、Nb25、In23、KTiO3、Cu2O、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム、SnO2−ZnO、Nb25−SrTiO3、Nb25−Ta25、Nb25−ZrO2、Nb25−TiO2、Ti−SnO2、Zr−SnO2、Sb−SnO2、Bi−SnO2、In−SnO2等が挙げられ、特にTiO2、SnO2、Sb−SnO2、In−SnO2が好適である。
【0051】
また、多孔質電極8については、多孔質電極上に有機ラジカル化合物を担持させると、電極の蓄電容量が向上して、より好ましい。
【0052】
<エレクトロクロミック化合物>
次に、エレクトロクロミック化合物3について説明する。エレクトロクロミック化合物3は、多孔質電極4の表面及び内部の微細孔に担持されているものとし、本発明においては、特に、上記式(1)で示される化合物を適用する。
【0053】
但し、上述のように、上記式(1)において、a、bはa×b=2を満たす整数であり、Yb-はb価アニオンを表している。これは弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸イオン、過沃素酸イオン、六弗化燐酸イオン、六弗化アンチモン酸イオン、六弗化錫酸イオン、燐酸イオン、硼弗化水素酸イオン、四弗硼素酸イオン等の無機酸イオン、チオシアン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、ベンゼンカルボン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、トリハロアルキルカルボン酸イオン、アルキル硫酸イオン、トリハロアルキル硫酸イオン、ニコチン酸イオン、テトラシアノキノジメタンイオン等の有機酸イオンから選択されるものとする。
【0054】
また、上述のように、上記式(1)において、A1、A2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、B1、B2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、A1、A2のうち少なくとも一方は、エレクトロクロミック化合物を多孔質電極へ担持させるための官能基を有している。なお、A1、A2は、エレクトロクロミック化合物がマゼンタの可逆的な発消色を行うために必要なものである。
【0055】
エレクトロクロミック化合物を多孔質電極に吸着させる吸着基として作用する官能基として、ホスホン酸基、カルボン酸基、水酸基、スルホン酸基等の酸性基が好ましく、ホスホン酸基は吸着能が高く特に好ましい。アミノ基をこのような官能基とすることもできる。また、金属ハロゲン化物を用いて、多孔質電極表面に共有結合させることも可能である。
【0056】
上記式(1)に示す色素化合物の製造方法について説明する。上記式(1)の色素化合物は、上記式(2)の中間体化合物と、例えば、下記式(3)によって表されるハロゲン化物(特に臭化物、よう化物が好適)を適当な溶媒中で反応させるか、或いは、直接反応させることによって得ることができる。
【0057】
【化3】

【0058】
但し、Xは臭素又はヨウ素であるものとする。A、Bは、上記A1、A2、B1、B2の構造に従うものとする。
【0059】
次に、上記式(2)に示す化合物中間体、及び、上記式(1)に示すエレクトロクロミック化合物の製造方法について説明する。
【0060】
図2は、本発明の実施の形態による製造工程を説明する図であり、図2(A)は中間体の製造工程を説明する図、図2(B)はエレクトロクロミック化合物の製造工程を説明する図である。
【0061】
図2(A)(a)に示すように、2,3,4,5−テトラブロモチオフェン(C4Br4S)(図2中の式(2−1))と、図2中の式(2−2)によって表されるピリジン化合物(又はその誘導体)、例えば、4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−ピリジル)−1,3,2,−ジオキサボロン(C1116BNO2)(下記式(4)、図2中の式(2−2a))、下記式(5)によって表される化合物(R=Hであれば、4−(ジヒドロキシボリル)ピリジン(C56BNO2)である化合物(図2中の式(2−2b))、又は、4−(トリメチルスタンニル)ピリジン(C813NSn)(下記式(6)、図2中の式(2−2c))を、パラジウム系触媒と、必要に応じて塩基の存在下において、適当な溶媒中でカップリング反応させることによって、式(7)、図2中の式(2−3)によって表される化合物(2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジブロモチオフェン)を得る。
【0062】
【化4】

…(4)
【0063】
【化5】

…(5)
但し、Rは水素又は族炭化水素である。
【0064】
【化6】

…(6)
【0065】
【化7】

…(7)
【0066】
図2(A)(b)に示すように、得られた上記式(7)、図2中の式(2−3)の化合物を、乾燥・低温雰囲気下で、n−ブチルリチウム(図2中の式(2−4)、C49Li)等のリチウム化試薬と反応させ、ブロモ基のひとつをリチウム化する。そのため、リチウム化試薬は、上記式(7)の化合物に対して、1.0〜1.2倍モル反応させるのが好ましい。ここでは、反応溶媒に、脱水されたエーテルやTHF等を用いることができ、反応温度は、−10℃〜−100℃の範囲で行うことが好ましい。このようにして、ブロモ基のひとつがリチウム化された式(9)、図2中の式(2−5)に示す化合物(C1482SBrLi)を生じる。
【0067】
図2(A)(c)に示すように、引き続き適当なフッ素化剤と反応させることにより、上記式(7)、図2中の式(2−3)の化合物にフッ素基を導入した式(8)、図2中の(2−7)に示す化合物、2,5−ビス(4−ピリジル)−3−フルオロ−4−ブロモチオフェン、C1482SBrF)を生成する。フッ素化剤には、SF4、SbF5、NaBF4、NH4BF4等の公知のものが使用できるが、N−フルオロベンゼンスルホンアミド(図2中の式(2−6)、C66NO2S)が好ましく用いられる。
【0068】
このとき、図2(A)(d)に示すように、フッ素基が導入された下記式(8)、図2中の式(2−7)の化合物はすぐさま、周囲の下記式(9)、図2中の式(2−5)の化合物と反応し、下記の反応式に従って、上記式(1)、図2中の式(2−8)の化合物、本発明の目的とする中間体化合物、上記式(2))と上記式(7)、図2中の式(2−3)の化合物とを生成するので、化学量論上の理論収率は50%である。
【0069】
反応式:式(8)の化合物+式(9)の化合物 → 式(1)の化合物+式(7)の化合物
【0070】
【化8】

…(8)
【0071】
【化9】

…(9)
【0072】
この反応で生成した上記式(7)の化合物に対して、同じ工程を、n=1、2、3、4、5、…と繰り返せば、化学量論上の理論収率は、1/2(=50%)、3/4(=75%)、7/8(=87.5%)、15/16(=93.75%)、31/32(=96.875%)、…と増加していく。工程の煩雑さと収率を考え合わせると、上記式(1)の化合物を得るためには、本工程を1〜4回程度繰り返すのが好ましい。反応後の精製は、再結晶や、カラム精製等、公知の精製法を用いることができる。
【0073】
以上のようにして、本発明のエレクトロクロミック化合物の合成のための上記式(2)に示す中間体化合物(2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジフルオロチオフェン)を合成することができる。
【0074】
次に、上記式(1)に示すエレクトロクロミック化合物の製造方法について説明する。
【0075】
図2(B)に示すように、図2(A)に示す工程によって合成された上記式(2)、図2中の式(2−8)に示す中間体化合物とハロゲン化物(図2中の式(2−9a))、(2−9b)とを反応させることによって、上記式(1)、図2中の式(2−10)に示す目的とするエレクトロクロミック化合物を合成することができる。
【0076】
上記式式(1)、又は、図2中の式(2−10)に表す化合物は、前述した、b価アニオンであるYb-、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であるA1、A2、及び、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であるB1、B2の何れにおいても、適宜選定した構造の全てを合成することができ、何れにおいても本発明の目的である、明瞭且つ鮮鋭で、繰返し特性が良好なマゼンタの発消色が可能であることが確かめられた。
【0077】
上記式(1)では、2価として表記されているが、マゼンタの発色を行う際には、還元反応により1価のラジカル状態となる。この化合物は、1価の状態に安定化させることができ、マゼンタ発色用のエレクトロクロミック化合物として極めて優れていることが確かめられた。
【0078】
以上の説明では、上記式(2)によって表される中間体化合物、及び、上記式(1)によって表されるエレクトロクロミック化合物の合成について説明したが、以上の説明において、図2(A)(a)の式(2−2)に示すピリジン化合物のC5N環のC(炭素)原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換されたピリジン化合物誘導体を使用することによって、C5N環のC(炭素)原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された、2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジフルオロチオフェン誘導体を合成することができ、この誘導体を使用することによって、上記式(1)によって表されるエレクトロクロミック化合物の誘導体を合成することができる。
【0079】
上記式(1)によって表されるエレクトロクロミック化合物の具体例を下記式(10)〜(15)に示す。下記式(10)〜(15)によって表される化合物はそれぞれ2、5−ビス(4−ピリジル)チオフェン誘導体であると見なすことができる。
【0080】
【化10】

…(10)
【0081】
【化11】

…(11)
【0082】
【化12】

…(12)
【0083】
【化13】

…(13)
【0084】
【化14】

…(14)
【0085】
【化15】

…(15)
【0086】
なお、上記式(10)〜(15)によって表される化合物において、C5N環のC(炭素)原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換されたものであってもよいいことは言うまでもない。
【0087】
<エレクトロクロミック化合物の多孔質電極への担持>
次に、2、5−ビス(4−ピリジル)チオフェン誘導体よりなるエレクトロクロミック化合物を、多孔質電極4に担持する方法について説明する。例えば、多孔質電極4の表面に吸着させる方法を適用できる。この具体的方法としては、スピンコート等の塗布法や担持させる化合物の溶液に浸す自然吸着法等が適用でき、特に、特別な装置を必要としない自然吸着法が好適である。
【0088】
自然吸着法としては、所定のエレクトロクロミック化合物を所定の溶媒に溶解して溶液を作製し、この溶液に、予め乾燥処理を施した多孔質電極4を形成しておいた透明基板を浸漬する方法や、所定のエレクトロクロミック化合物を溶解した溶液を多孔質電極4に塗布する方法が挙げられる。この自然吸着法において、本発明の化合物は、その構造中にホスホン酸基を有しており、多孔質電極4に確実に担持させることができる。
【0089】
なお、エレクトロクロミック化合物を溶解する溶媒としては、例えば、水、アルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素等が適用でき、これらは、単独で用いてもよく、適宜混合して用いてもよい。特に溶解度の観点から、水を用いることが好適である。
【0090】
エレクトロクロミック化合物を多孔質電極の表面へ化学結合によって担持させる方法も好適である。多孔質電極の表面とエレクトロクロミック化合物骨格との間に、所定の官能基、例えば、アルキル基、フェニル基、エステル基、アミド基等を介在させて、エレクトロクロミック化合物を多孔質電極の表面に化学結合によって担持させることもできる。
【0091】
また、多孔質電極の表面をシランカップリング剤等によって表面改質した後に、エレクトロクロミック化合物を化学結合させて担持させることもできる。このような化学結合による強い力によって、エレクトロクロミック化合物が多孔質電極の表面に強固に担持されるので、エレクトロクロミック装置の耐久性を向上させることができる。また、エレクトロクロミック化合物の溶解性の高い材料からなる電界質層も使用することができるようになり、使用するエレクトロクロミック化合物の範囲が広くなり、選択の自由度が大きくなる。
【0092】
なお、図1においては、エレクトロクロミック化合物3を表示電極構造体11側の多孔質電極4のみに担持させた例について示したが、本発明のエレクトロクロミック装置はこの構成に限定されるものではない。
【0093】
即ち、対向電極構造体12側の多孔質電極8にも所定のエレクトロクロミック化合物を担持させた構成としてもよい。この場合には、発色反応と消色反応とが、酸化反応、還元反応のうち、それぞれ逆反応に応じて生じるように材料選定することが必要である。
【0094】
例えば、多孔質電極4に担持させた有機EC色素が還元反応によってラジカル状態となり発色する場合には、多孔質電極8には定常状態で多孔質電極4に担持させた有機EC色素と同色調であり、酸化反応によって発色するエレクトロクロミック化合物を選定する。
【0095】
このように、両電極構造体11、12においてエレクトロクロミック化合物を担持させた構成とすることにより、色表示濃度を十分に高くすることができるので、最終的に得られるエレクトロクロミック装置において、発色が明瞭化し、画像の鮮明さを向上させることができる。
【0096】
<電解質>
電解質層5は、溶媒に支持電解質が溶解された構成を有している。支持電解質としては、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等のリチウム塩や、例えば、KCl、KI、KBr等のカリウム塩や、例えば、NaCl、NaI、NaBr等のナトリウム塩や、例えば、ほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等のテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0097】
電解質層5には、必要に応じて公知の酸化還元化合物を添加してもよい。酸化還元物質としては、例えば、フェロセン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、フェニレンジアミン誘導体等が適用できる。
【0098】
上記の溶媒としては、支持電解質を溶解し、上述したエレクトロクロミック化合物を溶解しないものを選択する。例えば、水、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン、ガンマブチロラクトン、3−メトキシプロピオニトリル等から適宜選定する。
【0099】
また、電解質層5には、いわゆるマトリックス材を適用してもよい。マトリックス材は、目的に応じて適宜選択でき、例えば、骨格ユニットがそれぞれ、−(C−C−O)n−、−(CC(CH3)−O)n−、−(C−C−N)n−、若しくは−(C−C−S)n−によって表されるポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィドが挙げられる。なお、これら骨格ユニットを主鎖構造として、適宜枝分かれ構造を有していてもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等も好適である。
【0100】
電解質層5は、高分子固体電解質層としてもよい。なお、この場合、マトリックス材のポリマーに所定の可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤としては、マトリックスポリマーが親水性の場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及びこれらの混合物が好適であり、疎水性の場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、及びこれらの混合物が好適である。
【0101】
本発明のエレクトロクロミック装置の製造方法について説明する。表示電極構造体11を作製する。所定の材料と膜厚の支持基板1上に透明電極2を形成し、その後、多孔質電極4を形成する。その後、例えば、有機EC色素水溶液に浸漬させることにより色素の担持を行い、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行う。
【0102】
続いて、対向電極構造体12を、所定の材料と膜厚の支持基板6上に透明電極7を形成し、その後、多孔質電極8を形成することにより作製する。但し、多孔質電極4、8の詳細な形成方法については上述した方法に従うものとする。有機EC色素を担持させる電極についても、双方とするか一方とするか適宜選定する。
【0103】
次に、電解質層用の溶液の調製を行う。続いて、表示電極構造体11と、対向電極構造体12とを、所定の接着剤を用いて貼り合わせるが、このとき後工程で電解液を注入できるように一部分に注入口を形成しておく。その後、電解液を注入口から注入し、樹脂接着材で封止することにより、対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が作製される。
【0104】
次に、本発明のエレクトロクロミック装置10を用いた表示方法について説明する。
【0105】
図1のエレクトロクロミック装置10において、多孔質電極4の表面には、定常状態において可視域にほとんど吸収をもたない式(1)に示すエレクトロクロミック化合物が担持されている。エレクトロクロミック装置10を構成する対の電極構造体11、12に、所定のリード線を結線し表示装置として構成する。所定のリード線を通じて所定の電圧を印加すると、多孔質電極4とこれに担持されたエレクトロクロミック化合物材料との間に電子の授受がなされ、エレクトロクロミック化合物において電気化学的な還元反応が起き、ラジカル状態となってマゼンタに発色する。
【0106】
なお、対向電極構造体12側の多孔質電極8は、上記有機EC色素と逆の電荷をチャージし(有機EC色素が還元反応によって−の電荷をチャージしているときには、多孔質電極8は+の電荷をチャージする)、色素による発色機能を高め、且つ、安定化させる。
【0107】
図1に示すエレクトロクロミック装置を構成する各層の厚さを例示すれば、以下の通りである。
【0108】
支持基板1の厚さ=10μm〜10mm、
支持基板6の厚さ=10μm〜10mm、
透明電極2の厚さ=40nm〜1000nm、
透明電極7の厚さ=40nm〜1000nm、
多孔質電極4の厚さ=1.5μm〜30μm、
多孔質電極8の厚さ=1.5μm〜30μm、
表示電極構造体11の厚さ=11μm〜11mm、
対向電極構造体12の厚さ=11μm〜11mm、
透明電極2と透明電極7との間隔=1μm〜1mmである。
【0109】
なお、本発明のエレクトロクロミック装置は、図1に示した構成に限定されるものではなく、多色表示が可能な装置構成に応用することができる。即ち、図1に示すエレクトロクロミック構成と同様の構造であって、電気化学的な反応によりラジカル状態となって、シアン(C)、イエロー(Y)に発色するエレクトロクロミック化合物を所定の多孔質電極に担持させて電極構造体を作製し、これら三層を用いて、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の積層構造とすることにより、発消色表示を可逆的に行うことができるフルカラー表示のエレクトロクロミック装置が得られる。
【0110】
エレクトロクロミック化合物(有機EC色素)としては、イエロー域(430〜490nmの範囲)、マゼンタ域(500〜580nmの範囲)、シアン域(600〜700nmの範囲)に吸収極大をもつ色素を使用することが望ましい。
【0111】
フルカラー表示のエレクトロクロミック装置は、支持基板上に少なくとも透明電極が形成されている一対の電極構造体(表示電極構造体と対向電極構造体)が、透明電極同士が対向するように電解質層を挟持して配置されており、一対の電極構造体を構成する透明電極のうちの、少なくとも表示電極構造体の上に、エレクトロクロミック化合物が担持された金属酸化物多孔質電極が形成されており、一対の電極構造体間に印加する電圧の制御によって発消色を行うことができ、(a)上記式(1)によって表されるエレクトロクロミック化合物が担持された金属酸化物多孔質電極が形成されており、マゼンタの可逆的な発消色を行うことができるエレクトロクロミック素子構造体、(b)イエローの可逆的な発色を行うことができるエレクトロクロミック素子構造体、(c)シアンの可逆的な発色を行うことができるエレクトロクロミック素子構造体の3つの素子構造体を積層することによって形成され、各エレクトロクロミック素子構造体に印加する電圧を制御することによって、全体としてフルカラーの画像を表示することができる。
【0112】
図3は、本発明の実施の形態による、カラー表示を行うことができるエレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。
【0113】
図3に示すエレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれは、図1に示すエレクトロクロミック装置と同様の構成を有している。
【0114】
図3に示す、カラー表示を行うことができるエレクトロクロミック装置は、(a)第1の支持基板(支持基板1a、1b、1c)、この第1の支持基板上に形成された第1の透明電極(透明電極2a、2b、2c)、及び、この第1の透明電極上に形成された第1の金属酸化物多孔質電極(多孔質電極4a、4b、4c)を含む表示電極構造体11a、11b、11cと、(b)第2の支持基板(支持基板6a、6b、6c)、この第2の支持基板上に形成された第2の透明電極(透明電極7a、7b、7c)、及び、この第2の透明電極上に形成された第2の金属酸化物多孔質電極(多孔質電極8a、8、8c)を含む対向電極構造体12a、12b、12cと、(c)表示電極構造体11a、11b、11及び対向電極構造体12a、12b、12cによって挟持された電解質層5a、5b、5cとを具備している。
【0115】
電解質層5a、5b、5cを介して第1の透明電極(2a、2b、2c)と第2の透明電極(7a、7b、7c)とが対向するように配置され、エレクトロクロミック化合物(有機EC色素3a、3b、3c)が第1の金属酸化物多孔質電極(4a、4b、4c)に担持され、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cが形成されている。
【0116】
エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cが積層されており、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれの第1の透明電極(2a、2b、2c)と第2の透明電極(7a、7b、7c)の間に印加する電圧を制御することによって、エレクトロクロミック化合物による可逆的な発消色を行うことができる。
【0117】
エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれの第1の金属酸化物多孔質電極(4a、4b、4c)にそれぞれ担持されるエレクトロクロミック化合物(有機EC色素3a、3b、3c)は、図3の上方を目視方向とすると、マゼンタ、イエロー、シアンとする。
【0118】
なお、図3においては、対向する透明電極2a、7a;2b、7b;2c、7c;の何れにも多孔質電極4a、8a;4b、8b;4c、8cが形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて一方の電極にのみ多孔質電極を形成させ、この多孔質電極にエレクトロクロミック化合物3a、3b,3cを担持させた構成としてもよい。
【0119】
図1、図3に示すエレクトロクロミック装置において使用されるエレクトロクロミック化合物としては、電圧が印加されていない状態では可視光領域に吸収を示さず消色状態にあり、電圧が印加された状態では可視光領域に吸収を示し発色状態となる化合物、逆に、電圧が印加された状態では可視光領域に吸収を示さず消色状態にあり、電圧が印加されていない状態では可視光領域に吸収を示し発色状態となる化合物、或いは、印加される電圧の大きさによって発色が異なる多発色状態が可能な化合物の何れであってもよく、目的に応じて適宜選択することができ、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれに印加する電圧を制御することによって、フルカラーの画像を表示することができる。
【0120】
また、図1、図3に示すエレクトロクロミック装置において、アクティブマトリックス駆動を行うために、第1の支持基板(支持基板1、1a、1b、1c)に第1の透明電極(透明電極2、2a、2b、2c)を分画として形成し、即ち、各画素に対応するように相互に独立させた分画の複数個をマトリックス状に形成し、各分画上に第1の金属酸化物多孔質電極(多孔質電極4、4a、4b、4c)を形成して、各分画に対応して、ゲート線及びソース線によって接続される薄膜トランジスタ(TFT)を第1の透明電極上に形成配置する構成を有する装置とすることもできる。この装置によれば、薄膜トランジスタに印加する電圧を制御することによって、エレクトロクロミック素子構造体10A、10B、10Cのそれぞれの各画素に対応する分画における発消色を制御することができる。
【0121】
更に、上記構成を有する、図1に示すエレクトロクロミック装置において、透明電極2が分画され画素に対応するよう形成され、即ち、アクティブマトリックス駆動を行うために、シアン、マゼンタ、イエローに対応する第1、第2及び第3分画からなる分画の複数個からなるマトリックス状の透明電極2を支持基板1上に形成し、第1、第2及び第3分画上に多孔質電極4を形成して、第1、第2及び第3分画上に形成された多孔質電極4上にそれぞれ、シアン、マゼンタ、イエローの発色が可能なエレクトロクロミック化合物を担持させ、第1、第2及び第3分画に対応して、ゲート線及びソース線によって接続される薄膜トランジスタを透明電極2上に形成配置する構成を有する装置とすることもできる。この装置によれば、薄膜トランジスタに印加する電圧を制御することによって、それぞれの各画素に対応する第1、第2及び第3分画における発消色を制御することができる。
【0122】
次に、本発明のエレクトロクロミック装置についての具体的な実施例と、これとの比較例を挙げて説明する。
【0123】
実施例
(エレクトロクロミック化合物中間体(上記式(2)によって表される化合物)の合成)
アルゴン雰囲気下、2,3,4,5−テトラブロモチオフェン2.4g(6mmol)、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン2.71g(13.2mmol)、Pd(PPh18mg(0.156mmol)、NaCO3.81g(36mmol)、1,4−ジオキサン50mL、水36mLを110℃で48時間還流した。冷却後、酢酸エチルと水を加えてよく撹拌し、有機層と、新たに水層を抽出した酢酸エチルをあわせた。これを塩水で洗い乾燥させて固体を得た。この固体をTHF/ヘキサン混合溶媒で再結晶し、淡黄色の結晶(上記式(7)によって表される化合物)を2.0g得た(収率=85%)。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6):δ8.77-8.75(d,4H), 7.73-7.72(d,4H)。
【0124】
このようにして得られた上記式(7)によって表される化合物1.98g(5mmol)を乾燥THF150mLに溶解させた。これに、アルゴン雰囲気下、−78℃で、n−ブチルリチウムの2.6Mヘキサン溶液を2mL(5.2mmol)滴下し、そのまま30分反応させた。続いて、フッ素化剤としてN−フルオロベンゼンスルホンイミドを1.58g(5mmol)加えた。同様の手順で、
n−ブチルリチウム溶液1mL、N−フルオロベンゼンスルホンイミド0.79g、
n−ブチルリチウム溶液0.5mL、N−フルオロベンゼンスルホンイミド0.39g、
n−ブチルリチウム溶液0.25mL、N−フルオロベンゼンスルホンイミド0.20gを反応させた。
【0125】
即ち、同じ工程を合計4回繰り返した。反応液を室温に戻し、希塩酸と酢酸エチルを加えて、有機層を集め塩水で洗い乾燥させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、淡ピンク色の結晶(上記式(2)によって表される中間体化合物)0.9g(収率=65%)を得た。なお、対応する化学量論上の理論収率は93.75%である。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6): δ8.72(d,4H,J=5.1Hz), δ7.64(d,4H,J=5.4Hz)、
19F-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ31.66(s,2F) vs hexafluorobenzene。
【0126】
(エレクトロクロミック化合物式(1)の合成)
上記式(10)〜(15)によって表されるエレクトロクロミック化合物は上記の方法で得られた上記式(2)によって表される中間体化合物を用いて、公知の方法(特許文献6、非特許文献1を参照。)で合成できた。
【0127】
(表示電極構造体の作製)
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板1上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極2)を形成した。次に、pH=約1.0の塩酸水溶液に1次粒径20nmの酸化チタンを15重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、更に、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚5μmの酸化チタン多孔質電極4が形成されたFTO基板が得られた。
【0128】
(エレクトロクロミック化合物の多孔質電極への担持)
上記酸化チタン膜よりなる多孔質電極4が形成されたFTO基板を、上述のようにして作製した所定のエレクトロクロミック化合物の5mM水溶液に24時間浸漬させ、酸化チタン電極にエレクトロクロミック化合物を担持させた。その後、エタノール溶液で洗浄処理、乾燥処理を行った。
【0129】
(対向電極構造体の作製)
厚さ1.1mmのガラス製の支持基板6上に、平面的に15Ω/□のFTO膜(透明電極7)を形成した。次に、酸性水溶液に1次粒径20nmのアンチモンドープされた酸化スズを20重量%分散させたスラリーに、ポリエチレングリコールを5重量%の割合で溶解させて塗料を作製した。この塗料を、上記FTO膜上にスキージ法によって塗布した。次に、ホットプレート上で80℃、15分間の乾燥処理を行い、更に、電気炉で500℃、1時間焼結を行い、膜厚12μmのアンチモンドープ酸化スズ多孔質電極8が形成されたFTO基板が得られた。
【0130】
(電解質層用の溶液の調製)
電解質層5形成用溶液は、ガンマブチロラクロンに、過塩素酸リチウムを0.1mol/L溶解させ、脱水、脱気したものを適用した。
【0131】
(電極構造体の貼り合わせ)
上述のようにして作製した表示電極構造体(色素担持酸化チタン多孔質電極付き基板)と、対向電極構造体(アンチモンドープ酸化スズ多孔質電極付き基板)とを、厚さ50μmの熱可塑性フィルム接着剤を用いて、90℃で熱融着によって貼り合わせた。この際、後述の工程により、電解液を注入できるように、一部分に注入口を形成した。表示及び対向電極構造体の透明電極の間の距離は50μmであった。
【0132】
(電解質溶液の注入)
電解液を、注入口から真空注入した。その後、注入口をエポキシ系の熱硬化樹脂で封止することにより、電解質層を挟持した状態で対向した電極構造体を具備するエレクトロクロミック装置が完成した。
【0133】
(エレクトロクロミック装置の評価例1)
エレクトロクロミック化合物として、上記式(11)によって表される化合物を適用した。
【0134】
図4は、本発明の実施の形態による、実施例(評価例1)におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。図4において、縦軸は吸光度(任意単位)、横軸は波長(nm)を示す。
【0135】
実施例(評価例1)におけるエレクトロクロミック装置は、上記式(11)によって表される化合物の紫外吸収端が、400nm以下であるために、通常の状態ではほぼ無色であった。この装置の、表示及び対向電極構造体の透明電極の間に、−1.5Vの電圧を印加すると、直ちに鮮やかなマゼンタに発色した。発消色による色表示変更の応答速度は約140msであり、実用上充分に良好な速度であった。更に、表示及び対向電極構造体の間に0.5Vを印加すると再び直ちに透明となった。発消色による色表示変更の応答速度は約90msであった。
【0136】
更に、この実施例(評価例1)におけるエレクトロクロミック装置の表示及び対向電極構造体の透明電極の間に、−1.5Vと0.5Vを交互に1Hzで100万回繰返し印加したが、100万回電圧印加を繰り返した後においても、可視吸収スペクトルの形状は初期の状態と殆ど変化が見られず、実用上充分に優れた耐久性を有していることが確認された。
【0137】
(エレクトロクロミック装置の評価例2)
評価例1における上記式(11)によって表される化合物に変えて、上記式(13)によって表される化合物を適用した。
【0138】
図5は、本発明の実施の形態による、実施例(評価例2)におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。図5において、縦軸は吸光度(任意単位)、横軸は波長(nm)を示す。
【0139】
実施例(評価例2)におけるエレクトロクロミック装置は、上記式(13)によって表される化合物の紫外吸収端が、400nm以下であるために、通常の状態ではほぼ無色であった。この装置を実施例(評価例1)と同様に評価したところ、鮮やかなマゼンタ発色が確認され、応答速度はそれぞれ、150ms、90msであった。100万回の発消色繰り返しの後も、可視吸収スペクトルの形状は初期の状態と殆ど変化が見られず、初期状態と特性は変化しなかった。
比較例
(エレクトロクロミック装置の比較例1)
評価例1における上記式(11)によって表される化合物に変えて、下記式(16)によって表される化合物を適用した。
【0140】
図6は、本発明の実施の形態による、比較例1におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。図6において、縦軸は吸光度(任意単位)、横軸は波長(nm)を示す。
【0141】
比較例1におけるエレクトロクロミック装置は、下記式(16)によって表される化合物の紫外吸収端が、420nm付近であるために、通常の状態で、やや黄色い着色がみられた。実施例(評価例1、評価例2)におけるエレクトロクロミック装置と同様に評価したところ、電圧印加時の発色が鮮やかで、応答速度と繰り返し耐久性も、実施例と同様に良好であった。
【0142】
【化16】

…(16)
【0143】
(エレクトロクロミック装置の比較例2)
評価例1における上記式(11)によって表される化合物に変えて、下記式(17)によって表される化合物を適用した。
【0144】
図7は、本発明の実施の形態による、比較例2におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。図7において、縦軸は吸光度(任意単位)、横軸は波長(nm)を示す。
【0145】
比較例2におけるエレクトロクロミック装置は、下記式(17)によって表される化合物の紫外吸収端が、420nm付近であるために、通常の状態で、やや黄色い着色がみられた。実施例(評価例1、評価例2)におけるエレクトロクロミック装置と同様に評価したところ、電圧印加時の発色が鮮やかで、応答速度と繰り返し耐久性も、実施例と同様に良好であった。
【0146】
【化17】

…(17)
【0147】
(エレクトロクロミック装置の比較例3)
上記評価例1における上記式(11)によって表される化合物に変えて、下記式(18)によって表される化合物を適用した。
【0148】
図8は、本発明の実施の形態による、比較例3におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。図8において、縦軸は吸光度(任意単位)、横軸は波長(nm)を示す。
【0149】
比較例3におけるエレクトロクロミック装置は、下記式(18)によって表される化合物の紫外吸収端が、420nm付近であるために、通常の状態で、やや黄色い着色がみられた。実施例(評価例1、評価例2)におけるエレクトロクロミック装置と同様に評価したところ、電圧印加時の発色が鮮やかで、応答速度と繰り返し耐久性も、実施例と同様に良好であった。
【0150】
【化18】

…(18)
【0151】
(エレクトロクロミック装置の比較例4)
上記評価例1における上記式(11)によって表される化合物に変えて、下記式(19)によって表される化合物を適用した。
【0152】
図9は、本発明の実施の形態による、比較例4におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。図9において、縦軸は吸光度(任意単位)、横軸は波長(nm)を示す。
【0153】
比較例4におけるエレクトロクロミック装置は、下記式(19)によって表される化合物の紫外吸収端が、420nm付近であるために、通常の状態で、やや黄色い着色がみられた。実施例(評価例1、評価例2)におけるエレクトロクロミック装置と同様に評価したところ、電圧印加時の発色が鮮やかで、応答速度と繰り返し耐久性も、実施例と同様に良好であった。
【0154】
【化19】

…(19)
【0155】
(エレクトロクロミック装置の比較例5)
上記評価例1における上記式(11)によって表される化合物に変えて、下記式(20)によって表される化合物を適用した。
【0156】
図10は、本発明の実施の形態による、比較例5におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。図10において、縦軸は吸光度(任意単位)、横軸は波長(nm)を示す。
【0157】
比較例5におけるエレクトロクロミック装置は、式(20)によって表される化合物の紫外吸収端が、400nm以下であるために、通常の状態ではほぼ無色であった。実施例(評価例1、評価例2)におけるエレクトロクロミック装置と同様に評価したところ、応答速度と繰り返し耐久性は、実施例と同様に良好であったが、電圧印加時の発色がブロードで、紫色であった。マゼンタ発色色素としては色純度が劣る。
【0158】
【化20】

…(20)
【0159】
なお、上記式(16)によって表される化合物は2、5−ビス(4−ピリジル)フラン誘導体であると見なすことができ、上記式(17)、(18)、(19)、(20)によって表される化合物は2,5−ビス(4−ピリジル)チオフェン誘導体であると見なすことができる。
【0160】
以上の結果から明らかなように、本発明の方法によれば、極めて応答反応に優れ、消色時は無色、且つ、発色は鮮鋭な色調で、安定に可逆的な発消色表示を行うことができるマゼンタ発色のエレクトロクロミック化合物とエレクトロクロミック装置を得ることができた。
【0161】
本発明によるエレクトロクロミック装置は、各種の用途に使用される表示素子や表示板、防眩ミラー、調光素子、光スイッチ、光メモリ等に使用することができる。
【0162】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0163】
例えば、有機エレクトロクロミック化合物は上記(10)〜(15)に示すものに限定されことなく、必要に応じて任意に変更可能であり、図1、図3に示すクロミック装置に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0164】
以上説明したように、本発明によれば、エレクトロクロミック装置の性能の向上に有用なエレクトロクロミック化合物及びその合成に使用される中間体化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の実施の形態による、エレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。
【図2】同上、中間体及びエレクトロクロミック化合物の製造工程を説明する図である。
【図3】同上、カラー表示を行うことができるエレクトロクロミック装置の一例の概略構成を説明する断面図である。
【図4】同上、実施例(評価例1)におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。
【図5】同上、実施例(評価例1)におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。
【図6】同上、比較例におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。
【図7】同上、比較例におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。
【図8】同上、比較例におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。
【図9】同上、比較例におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。
【図10】同上、比較例におけるエレクトロクロミック装置の発色時の可視吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0166】
1、1a、1b、1c、6、6a、6b、6c…支持基板、
2、2a、2b、2c、7、7a、7b、7c…透明電極、
3、3a、3b、3c…有機EC色素、
4、4a、4b、4c、8、8a、8、8c…多孔質電極、
5、5a、5b、5c…電解質層、
10A、10B、10C…エレクトロクロミック素子構造体、
10…エレクトロクロミック装置、
11、11a、11b、11c…表示電極構造体、
12、12a、12b、12c…対向電極構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)によって表される化合物、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなるエレクトロクロミック化合物。
【化1】

…(1)
但し、上記式(1)において、a、bはa×b=2を満たす整数であり、Yb-はb価アニオンを表し、A1、A2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、B1、B2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、B1、B2のうち少なくとも一方は、多孔質電極へ担持するための官能基を有している。
【請求項2】
式(2)によって表される2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジフルオロチオフェン、又はそのC5N環の炭素原子に結合する水素原子が他の原子又は原子団によって置換された誘導体からなる中間体化合物。
【化2】

…(2)
【請求項3】
請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物を合成するための、請求項2に記載の中間体化合物。
【請求項4】
2,5−ビス(4−ピリジル)−3,4−ジブロモチオフェンをリチウム化し、次いで、フッ素化剤によってフッ素基を導入することを複数回繰り返す工程を有する、請求項2に記載の中間体化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物を合成するための、請求項4に記載の中間体化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載の中間体化合物をハロゲン化物B1−A1−Y、B2−A2−Y(但し、Yはアニオンを表しており、A1、A2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、B1、B2は、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、B1、B2のうち少なくとも一方は、多孔質電極へ担持するための官能基を有している。)と反応させる工程を有する、請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物を用いた、光学装置。
【請求項8】
第1の支持基板、この第1の支持基板上に形成された第1の透明電極、及び、この第
1の透明電極上に形成された金属酸化物多孔質電極を含む表示電極構造体と、
第2の支持基板、この第2の支持基板上に形成された第2の透明電極を含む対向電極
構造体と、
前記表示電極構造体及び前記対向電極構造体によって挟持された電解質層と
を具備し、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極とが対向するように配置され、エレクトロクロミック化合物が前記金属酸化物多孔質電極に担持され、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極の間に印加する電圧の制御によって、エレクトロクロミック化合物による可逆的な発消色を行うエレクトロクロミック素子構造体を有し、前記エレクトロクロミック化合物として、請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物が使用され、前記電圧の印加の制御によってマゼンタの可逆的な発消色を行う、エレクトロクロミック装置として構成された、請求項7に記載の光学装置。
【請求項9】
前記エレクトロクロミック素子構造体を第1のエレクトロクロミック素子構造体とし、前記エレクトロクロミック素子構造体において前記エレクトロクロミック化合物としてイエローの可逆的な発色を行う化合物が使用された第2のエレクトロクロミック素子構造体と、前記エレクトロクロミック素子構造体において前記エレクトロクロミック化合物としてシアンの可逆的な発色を行う化合物が使用された第3のエレクトロクロミック素子構造体とを有し、前記第1、第2、第3のエレクトロクロミック素子構造体が積層され、フルカラーの画像を表示する、請求項8に記載の光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−48142(P2009−48142A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216758(P2007−216758)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】