説明

エレクトロクロミック化合物並びに関連する媒体及び素子

本発明は、下記一般式(I)で表される物質を含むエレクトロクロミック媒体を有するエレクトロクロミック素子に関する。(式中、Xは、N−R10、O、又は、Sであり、;R1からR10は明細書に定義されるが、R5、及び、R10の少なくとも一つは、4からおよそ50の炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、アルキニル基であり、前記少なくとも一つの炭素原子は、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分への連結基、又は、その一部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基であってもよく、さらに、前記のR5、及び、R10の少なくとも一つは、いずれのβ水素原子も持たないという条件付きである。)
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2004年11月15日に出願された米国仮出願シリアル番号:60/627,875 の利益を主張し、その内容は、参照によって本明細書に完全に組み込まれるものとする。
本発明は、一般に、エレクトロクロミック(EC)素子で使用するための化合物、より詳細には、溶液相EC素子において有用な置換した5,10-ジヒドロフェナジン化合物、及び、その関連する誘導体を含む陽極化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミック光フィルターのような、可変透過光フィルターは、2,3例を挙げると、自動車の窓、及び、サンルーフにおいてだけでなく、建築物の窓、及び、天窓においての使用に対しても提案されている。当該エレクトロクロミック光フィルターは、日中、窓を通した直接の、又は、反射された太陽光の透過率を減らすが、一方で、夜間、これらの透過率を減らさない。上記で特定されたエレクトロクロミック光フィルターは、厄介なまぶしい光、及び、周囲の輝度を減らすだけでなく、窓を通した太陽光の透過により引き起こされる室内資材の退色、及び、熱負荷をも減らす。加えて、エレクトロクロミックミラーは、夜間ドライブ間の後続車の前照灯由来の眩輝を減らすために自動車産業において一般的になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
溶液相エレクトロクロミック素子は、当業界で公知である。例えば、(その内容が、そこに引用された参考文献を含めて、参照によって完全に本明細書に組み込まれる)米国特許番号:4,902,108、発明の名称”SINGLE-COMPARTMENT, SELF-ERASING, SOLUTION-PHASE ELECTROCHROMIC DEVICES, SOLUTIONS FOR USE THEREIN, AND USES THEREOF,”を参照のこと。溶液相エレクトロクロミック素子において、5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン(本明細書で時々、”DMP”と称される)は、陽極物質として一般に用いられる。溶媒中での、DMP(優れた電子ドナー/陽極物質)の 1,1'-ジオクチル-4,4'-ビピリジニウムビス(テトラフルオロボラート)(優れた電子アクセプター/陰極物質)のような 4,4'-ビピリジニウム化合物(ビオロゲン)との使用は、800ナノメートル(nm)付近で広い光吸収を示す電荷移動帯域の形成をもたらす。好ましくは、そのような電荷移動複合体の存在、及び、付随する光吸収は、多くの能力、及び/又は、安定性の根拠を除去されるか、少なくとも実質的に低減される。
【0004】
他の陽極物質が、当業界で検討されている。例えば、そこに引用された参考文献を含み、その内容が参照によって本明細書に完全に組み込まれる米国特許番号:6,020,987、発明の名称”ELECTROCHROMIC MEDIUM CAPABLE OF PRODUCING A PRE-SELECTED COLOR,”を参照のこと。'987特許は、溶液中でビオロゲンと共に低減された電荷移動帯域光吸収を示す 5,10-ジイソプロピル-5,10-ジヒロドフェナジンのような化合物を開示するが、出願人の知識の限りでは、溶液相エレクトロクロミック素子における使用にとって好ましい陽極化合物としてDMPと差し替えられる化合物は、'987特許において一つも開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要約)
従って、本発明の一つの側面は、低減された電荷移動帯域光吸収を有する陽極エレクトロクロミック物質を提供することであり、さらには、強化された安定性を有するミラー、及び、窓のようなEC素子をもたらす陽極物質を提供することである。本発明の実施態様において、置換基がいずれのβ水素原子も有しておらず、5位、及び10位(すなわち、N原子)で結合された分鎖アルキルを含む、置換した5,10-ジヒドロフェナジン化合物が、開示される。
【0006】
驚いたことに、実際に、分鎖アルキルにより、電荷移動複合体の形成が低減され、置換基上のβ水素原子の除去により、これらの化合物を陽極構成要素として利用する素子の安定性を高めることが、発見された。
この実施態様において、少なくとも一つのPN−CXX'−CRR'R''形態の分鎖アルキル基が含まれ、式中、PNは、フェナジン環の5位、及び/又は、10位の窒素原子を表し、X、及び、X'は、同一であっても異なっていてもよいが、H、およそ1からおよそ50までの炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、アルキニル基(例えば、およそ1からおよそ10までの炭素原子のアルキル鎖)であって、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基を含んでいてもよく、R、R'、R''は、同一であっても異なっていてもよいが、およそ1からおよそ50までの炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、アルキニル基(例えば、およそ1からおよそ10までの炭素原子のアルキル鎖)であって、任意で、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基を含んでいてもよい。
【0007】
本発明に従って、X、X'、R、R'、及び/又は、R''のいずれか一つは、米国特許番号:6,262,832、発明の名称”ANODIC ELECTROCHROMIC MATERIALS HAVING A SOLUBILIZING MOIETY”、及び、米国特許番号:6,445,486、発明の名称”ELECTROACTIVE MATERIALS AND BENEFICIAL AGENTS HAVING A SOLUBILIZING MOIETY”で教唆、及び開示されるように可溶性部分、及び/又は、米国特許番号:6,710,906、発明の名称”CONTROLLED DIFFUSION COEFICIENT ELECTROCHROMIC MATERIALS FOR USE IN ELECTROCHROMIC MEDIUMS AND ASSOCIATED ELECTROCHROMIC DEVICES”で教唆されるように拡散係数制御部分と結合していてもよい(その全内容は、そこに引用された参考文献を含めて、参照によって本明細書に完全に組み込まれる)。本発明の実施態様において、フェナジンに結合された分鎖アルキル基は、好ましくは、およそ5からおよそ50までの炭素原子、より好ましくは、およそ5からおよそ20の炭素原子を含んでいる。
【0008】
本発明は、また、(a)少なくとも一つの溶媒;(b)少なくとも一つの陽極電気活性物質;(c)少なくとも一つの陰極電気活性物質、を含み、前記の陽極電気活性物質、及び、陰極電気活性物質の少なくとも一つがエレクトロクロミックであって、さらに(d)少なくとも一つの陽極電気活性物質が下記一般式で表される、エレクトロクロミック素子で使用するためのエレクトロクロミック媒体にも向けられる。
【化1】

【0009】
(式中、Xは、N−R10、O、又は、Sであり、;R1からR10は、同一であっても異なっていてもよいが、H、およそ1からおよそ50までの炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、アルキニル基、及び/又は、およそ1からおよそ50までのケイ素原子を含むシリル基、若しくは、シロキシル基であり、前記の炭素原子、及び/又は、ケイ素原子は、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分への連結基、又は、その一部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基であってもよい。但し、R5、及び、R10の少なくとも一つは、4からおよそ50の炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、アルキニル基であり、前記炭素原子の少なくとも一つは、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分への連結基、又は、その一部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基であってもよく、さらに、前記のR5、及び、R10の少なくとも一つは、いずれのβ水素原子も持たない。)
【0010】
本発明の好ましい実施態様において、R5、及び、R10の両方は、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、4からおよそ50の炭素原子を含むアルキニル基であり、前記炭素原子の少なくとも一つは、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分への連結基、又は、その一部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基であってもよく、さらに、前記のR5、及び、R10の両方は、いずれのβ水素原子も持たない。この実施態様において、R5、及び、R10の少なくとも一つは、およそ5からおよそ20までの炭素原子を含む、ネオペンチル基のようなアルキル基を含んでいてもよい。
本発明の別の好ましい実施態様において、このEC媒体は、さらに、架橋された重合体マトリクス、フリースタンディングゲル、及び、本質的に非滲出なゲルの少なくとも一つを含む。
【0011】
本発明は、また、(a)それと一体となった電気導電性を有する少なくとも一つの基板、及び、(b)本明細書に開示されるようなエレクトロクロミック媒体を含むEC素子にも向けられる。
本発明は、さらに、(a)それと一体となった電気導電性物質を有する本質的に透明な一番目の基板;(b)それに伴われる電気導電性物質を有する二番目の基板;及び、(c)本明細書に記載されるようなエレクトロクロミック媒体を含むEC素子に向けられる。
本発明に従って、エレクトロクロミック素子は、窓、ミラー、その他種々のものを含んでいてもよく、自洗式親水性被覆だけでなく、周囲の金属輪を含んでいてもよい。
好ましくは、本発明に従って組み立てられた当該エレクトロクロミック素子は、ビオロゲンを含む溶液中で、5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジンに比べて、低減された電荷移動帯域を提示する。
本発明のこれらの、並びに、その他の特徴、利益、及び、目的は、下記の明細書、特許請求の範囲、及び、添付された図面の参照によって当業者によりさらに理解され、高く評価される。
本発明は、ここに、図面への参照と共にそこに記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
ここで図面、とりわけ図1を参照すると、エレクトロクロミック素子100の横断面の概略図が示され、これは通常、前面部112A、及び、裏面部112Bを有する一番目の透明な基板112、前面部114A、及び、裏面部114Bを有する透明であってもよい二番目の基板114、一番目の透明な基板112の裏の内側面112Bに付属する一番目の透明な電極(すなわち、電気導電性物質)118、二番目の基板114の前の内側面114Aに付属する透明であってもよい二番目の電極(すなわち、電気導電性物質)120、並びに、前記二つの層状基板の間に提供されるシール122を含む。基板112、及び、114は通常、平行に間隔を離された様式で保持される。シール122は、電極118、及び、120の両方と接触してエレクトロクロミック媒体124を含むチャンバー116を、基板112、及び、114の間に供給する役目をする。
【0013】
エレクトロクロミック素子100は、例証の目的にすぎないが、窓、ミラー、ディスプレイ素子等であってもよいことが理解される。さらに、図1は単にエレクトロクロミック素子100の概略図に過ぎないことが理解される。従って、構成要素のいくつかは、絵で表した明瞭さに対するそれらの現在の縮尺から変形される。実際に、両方共にその内容が参照によって本明細書に完全に組み込まれる、米国特許番号:5,818,625、発明の名称”ELECTROCHROMIC REARVIEW MIRROR INCORPORATING A THIRD SURFACE METAL REFLECTOR”、及び、米国特許番号:6,597,489、発明の名称”ELECTRODE DESIGN FOR ELECTROCHROMIC DEVICES”に開示されるものを含む多数の他のエレクトロクロミック素子構成が使用のために検討される。
【0014】
本発明に従って、エレクトロクロミック媒体124は、好ましくは、少なくとも一つの溶媒、少なくとも一つの陽極物質、及び、少なくとも一つの陰極物質を含んでいる。通常は、陽極物質、及び、陰極物質の両方共に電気活性であり、それらの少なくとも一つは、エレクトロクロミックである。その通常の意味に関わらず、”電気活性”という用語は、特定の電位差にさらされると、その酸化状態の変更を受ける物質として本明細書で定義されることが理解される。さらに、”エレクトロクロミック”という用語は、その通常の意味に関わらず、特定の電位差にさらされると、一つ以上の波長において、その吸光係数の変化を示す物質として本明細書で定義されることが理解される。
【0015】
エレクトロクロミック媒体124は、好ましくは下記の部類の一つから選択される。
単層− エレクトロクロミック媒体は物質の単層であり、この物質は小さな異質の領域を含んでいてもよく、物質がイオン導電性電解質溶液中に含まれており、電気化学的に酸化され、又は、還元されるときに導電性電解質溶液の中にとどまる溶液相素子を含む。米国特許番号:6,193,912、発明の名称”NEAR INFRARED-ABSORBING ELECTROCHROMIC COMPOUNDS AND DEVICES COMPRISING SAME”、米国特許番号:6,188,505、発明の名称”COLOR-STABILIZED ELECTROCHROMIC DEVICES”、米国特許番号:6,262,832、発明の名称”ANODIC ELECTROCHROMIC MATERIALS HAVING A SOLUBILIZING MOIETY”、米国特許番号:6,137,620、発明の名称”ELECTROCHROMIC MEDIA WITH CONCENTRATION-ENHANCED STABILITY, PROCESS FOR PREPARATION THEREOF AND USE IN ELECTROCHROMIC DEVICES”、米国特許番号:6,195,192、発明の名称”ELECTROCHROMIC MATERIALS WITH ENHANCED ULTRAVIOLET STABILITY”、米国特許番号:6,392,783、発明の名称”SUBSTITUTED METALLOGENES FOR USE AS ANODIC ELECTROCHROMIC MATERIALS, AND ELECTROCHROMIC MEDIA AND DEVICES COMPRINSING THE SAME”、及び、米国特許番号:6,249,369、発明の名称”COUPLED ELECTROCHROMIC COMPOUNDS WITH PHOTOSTABLE DICATION OXIDATION STATES”は、単層エレクトロクロミック媒体で使用されてもよい多数の溶媒に加えて陽極物質、及び、陰極物質を開示し、その全ての開示は、そこに引用された参考文献を含めて、参照によって本明細書に完全に組み込まれる。
【0016】
溶液相電気活性物質は、米国特許番号:5,928,572、発明の名称”ELECTROCHROMIC LAYER AND DIVICES COMPRINSING SAME”、又は、国際特許出願番号:PCT/US98/05570、発明の名称”ELECTROCHROMIC POLYMERIC SOLID FILMS, MANUFACTURING ELECTROCHROMIC DEVICES USING SUCH SOLID FILMS, AND PROCESSES FOR MAKING SUCH SOLID FILMS AND DEVICES”の教唆に従う架橋された重合体マトリクスの連続的な溶液相に含まれていてもよく、その全ての開示は、そこに引用された参考文献を含めて、参照によって本明細書に完全に組み込まれる。
その少なくとも二つがエレクトロクロミックである少なくとも三つの電気活性物質を、米国特許番号:6,020,987、発明の名称”ELECTROCHROMIC MEDIUM CAPABLE OF PRODUCING A PRE-SELECTED COLOR”に記載されるとおり事前に選択した色を与えるために結合させることでき、その全ての開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。エレクトロクロミック媒体の色を選択するこの能力は、建築物の窓を設計するときにとりわけ好都合である。
【0017】
陽極物質、及び、陰極物質は、国際特許出願番号:PCT/WO97/EP498、発明の名称”ELECTROCHROMIC SYSTEM”に記載されるような架橋ユニットによって結合されるか、又は、連結されることが可能であり、その全ての開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。陽極物質、又は、陰極物質を同様の方法により連結することもまた可能である。これらの出願に記載される構想を、連結された種々のエレクトロクロミック物質をもたらすために、さらに組み合わせることもできる。
さらに、単層媒体は、陽極物質、及び、陰極物質を、国際特許出願番号:PCT/WO98/EP3862、発明の名称”ELECTROCHROMIC POLYMER SYSTEM”、米国特許番号:6,002,511、又は、国際特許出願番号:PCT/US98/05570、発明の名称”ELECTROCHROMIC POLYMERIC SOLID FILMS, MANUFACTURING ELECTROCHROMIC DEVICES USING SUCH SOLID FILMS, AND PROCESSES FOR MAKING SUCH SOLID FILMS AND DEVICES”に記載されるような重合体マトリクスの中に取り込むことが可能な媒体を含み、その全ての開示は、そこに引用された参考文献を含めて、参照によって本明細書に完全に組み込まれる。
一つ以上の媒体中の物質が、装置、例えば、物質が電気化学的に酸化され、又は、還元されるときに電気導電性電極上に層、又は、部分的な層を形成するイオン導電性電解質溶液中に含まれる成膜装置の運転中に相変化を受ける、媒体もまた含まれる。
【0018】
多層− 媒体は、複数の層中に作られ、電気導電性電極に直接的に結び付けられるか、又は、それに極めて接近して閉じ込められる少なくとも一つの物質であって、前記物質は、電気化学的に酸化され、又は、還元される時に結び付けられ、又は、閉じ込められたままである。エレクトロクロミック媒体のこの型の例としては、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、及び、酸化バナジウムといった酸化金属被膜が挙げられる。電極に結び付けられるポリチオフェン、ポリアニリン、又は、ポリピロールといった一つ以上の有機エレクトロクロミック層を含む媒体もまた、多層媒体として考慮されてもよい。
好ましくは、米国特許番号:5,940,201、発明の名称”ELECTROCHROMIC MIRROR WITH TWO THIN GLASS ELEMENTS AND A GELLED ELECTROCHROMIC MEDIUM”に開示されるようにエレクトロクロミック素子中にゲルを組み込んでもよく、その全ての開示は、参照によって本明細書に取り込まれる。
【0019】
さらに、このエレクトロクロミック媒体は、光吸収体、光(UV)安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、増粘剤、粘度修飾因子、色合い提供物質(tint providing agents)、色安定化添加剤としても言及されるレドックス緩衝液、及び、その混合物といった他の物質を含んでいてもよい。適切なUV-安定剤は、2、3例を挙げると、商標:Uvinul N-35としてニューヨーク州、ParsippanyのBASFにより、商標:Viosorb 910としてニューヨーク州、FlushingのAceto Corp.により販売される物質である2-エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリラート、商標:Uvinul N-539としてBASFにより販売される物質である(2-エチルヘキシル)-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリラート、商標:Tinuvin PとしてCiba-Geigy Corp.により販売される物質である2-(2'-ヒドロキシ-4'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、Ciba-Geigy Corp.により販売されるTinuvin 213から従来のエステル化に引き続き従来の加水分解によって調製される(下に”Tinuvin PE”)物質である3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸ペンチルエステル、商標Tinuvin 384としてCiba-Geigy Corp.により販売される物質であるベンゼンプロパン酸, 3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-, C7-9-分鎖状、及び、直鎖状アルキルエステル類、他でも多く販売されるがその内で、Aldrich Chemical Co.により販売される物質である2,4-ジヒロドキシベンゾフェノン、商標:Cyasorb UV 9としてAmerican Cyanamidにより販売される物質である2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、並びに、商標:Sanduvor VSUとしてSandoz Color & Chemicalsにより販売される物質である2-エチル-2'-エトキシアルアニリドを含んでいてもよい。
【0020】
例証の目的にすぎないが、陽極物質、及び、陰極物質の濃度は、およそ1ミリモル(mM)からおよそ 500 mM の範囲であってよく、より好ましくは、およそ2 mM からおよそ 100 mM の範囲である。陰極物質も陽極物質も特定の濃度が提供される一方で、好ましい濃度は、エレクトロクロミック媒体124を含むチャンバーの幾何学図形に非常に依存して異なっていてもよいことが理解される。
【0021】
本開示の目的のために、エレクトロクロミック媒体124の溶媒は、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラグリム、並びに、他のポリエーテル類;エトキシエタノールのようなエタノール類;アセトニトリル、グルタロニトリル、3-ヒドロキシプロピオニトリル、及び、2-メチルグルタロニトリルのようなニトリル類;2-アセチルブチロラクトン、及び、シクロペンタノンを含むケトン類; beta-プロピオラクトン、gamma-ブチロラクトン、及び、gamma-バレロラクトンを含む環状エステル類、プロピレンカルボナート(PC)、エチレンカルボナートを含む環状カルボナート類;並びに、その均質な混合物を含む、一般的な市販の溶媒のいずれか一つを含んでいてもよい。特定の溶媒が、エレクトロクロミック媒体と関連して開示される一方で、目前に本開示を有する当業者に知られる多数の他の溶媒が同様に使用のために検討される。
【0022】
透明基板112は、透明で、素子が曝される環境条件で機能できるだけの十分な強度を有しているいずれの物質であってもよい。基板112は、あらゆる型のホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、フロートガラス、又は、例えば、MYLAR(登録商標)、ポリビニリデンクロライド、ポリビニリデンフルオライドのようなポリビニリデンハロゲン化物、電磁スペクトルの可視領域において透明で、Summitt, N.J.のTicona, LLCから入手可能なTopas(登録商標)のような環状オレフィン共重合体のような重合体、若しくは、樹脂のようないずれか一つの他の物質、を含んでいてもよい。二番目の基板114もまた十分な強度を有しており、素子が曝される環境条件で機能することができる。EC窓としての使用のために、基板114もまた透明であり、基板112と同じ物質で作られる。素子が、素子全体を通過する光を必要としないミラー、又は、他の素子として使用される場合には、基板114は、セラミック物質、又は、金属物質を含んでいてもよい。
【0023】
一番目の基板、及び/又は、二番目の基板である112と114は、電気導電性物質の層(118、及び、120)で表面を覆われる前に、又は、後に、それぞれ任意で、調節され、熱強化され、及び/又は、化学的に強化されてもよいことが理解される。一番目の基板112、及び、二番目の基板114は、好ましくは、およそ 0.5 ミリメートル(mm)からおよそ 12.7 mm に及ぶ範囲の厚さを有するガラスシートから作られ、より好ましくは、特定の低質量用途のためのおよそ 1.0 mm 未満である。
さらに、基板112、及び、114は、米国特許番号:6,239,898、発明の名称”ELECTROCHROMIC STRUCTURES”、米国特許番号:6,193,378、発明の名称”ELECTROCHROMIC DEVICE HAVING A SELF-CLEANING HYDROPHILIC COATING”、及び、米国特許出願シリアル番号:09/602,919、発明の名称”AN ELECTRO-OPTIC DEVICE HAVING A SELF-CLANING HYDROPHILIC COATING”に記載されるように処理されるか、又は、表面を覆われてもよく、その全ての開示は、参照によって本明細書に完全に取り込まれる。反射防止被覆、親水性被覆、低-E被覆、及び、UV-遮断層のような他の処置もまた本発明に従う使用のために検討される。当該被覆は、他の実施態様と同様に、この実施態様においても基板112、及び/又は、基板114と関連していてもよいことが理解される。
【0024】
透明な電極118は、透明基板112にうまく接着しエレクトロクロミック素子内のいずれの物質による腐食作用にも耐久性があり、大気による腐食に対して耐久性があり、最小限の拡散性、又は、鏡面反射率、高い光透過率、中間付近の色合い、及び、優れた電気導電性を有するいずれの物質で作られていてもよい。透明な電極118の例としては、フッ素ドープした酸化錫、ドープした酸化亜鉛、亜鉛ドープした酸化インジウム、錫ドープした酸化インジウム(ITO)、ドイツアルゼナウ(Alzenau)のLEYBOLD AGのJ. Stollenwerk, B. Ocker, K. H. Kretschmer により”Transparent Conductive Multilayer-Systems for FPD Applications”に開示されるようなITO/金属/ITO(IMI)、オハイオ州、トレドのLibbey Owens-Ford Co. から入手可能なTEC20、若しくは、TEC15のような、上記で参照された米国特許番号:5,202,787 に開示される物質、又は、他の透明な良導体が挙げられる。
【0025】
通常、透明な電極118の伝導性は、その厚さ、及び、組成物によって決まる。IMIは通常、他の物質と比べて優れた導電性を有する。IMI構造における種々の層の厚さは変えられてもよいが、通常、一番目のITO層の厚さが、およそ 10 Å からおよそ 200 Å に及び、金属が、およそ 10 Å からおよそ 200 Å に及び、さらに、二番目のITO層が、およそ 10 Å からおよそ 200 Å に及ぶ。必要に応じて、任意の色合い抑制物質の層、又は、複数の層が、電磁スペクトルのいずれか不必要な部分の伝達を抑制するために、透明な電極118、及び、基板112の内側面112Bの間に挿入されてもよい。電極120は、透明な電極118と同じ多くの特性を含んでいてもよく、同じ物質から作ることも可能であるが、電極120が透明である必要がない場合には、銀、金、プラチナ、及び、その合金類のような金属類で作られていてもよい。
【0026】
図1に示される特定の実施態様において、シール122は、周囲を密封するために、要素112、及び、要素114の内側面、並びに/又は、電極118、並びに、電極120に粘着して接着することが可能ないずれの物質であってもよく、それによって、エレクトロクロミック媒体124は、透明な基板の間に位置を定められたチャンバーから漏れ出さない。このシールは好ましくは、ガラス、金属、酸化金属、及び、他の基板物質への優れた粘着性を有し、好ましくは、酸素、水蒸気、並びに、他の弊害をもたらす蒸気、及び、気体に対する低い透過性を有し、さらに、含み、保護するように作られているエレクトロクロミック物質と相互作用し、又は、害してはならない。このシールは、いずれの従来法で適用されてもよい。エレクトロクロミック素子100を構築する好ましい方法に加え好ましいシール物質、及び、シールの適用方法が、さらに下記に記載される。
【0027】
エレクトロクロミック素子100はさらに、一番目の要素112、及び、二番目の要素114の周囲を囲むことが可能なバスクリップ(示さず)のようなエレクトロクロミック媒体への電気的な接触を供給する手段を含み、その手段は、米国特許番号:6,407,847、発明の名称”ELECTROCHROMIC MEDIUM HAVING A COLOR STABILITY”に開示されるように電極118、及び、電極120と物理的、及び、電気的に接触するような方式であり、その内容は、参照によって本明細書に完全に取り込まれる。バスクリップはこのように、電流が、一番目の電極118、及び、二番目の電極120、及び、その間のチャンバー116に収納されるエレクトロクロミック媒体124を通して、外側の駆動回路の間を流れることを可能にする。このように、エレクトロクロミック素子100の光線透過率は、外側の駆動回路の電気制御に応じて変えられてもよい。
【0028】
バスクリップは、いずれの既知の構成、及び/又は、既知の物質で作られていてもよいことが理解される。バスクリップ用の考えられる構成は、米国特許番号:6,064,509、発明の名称”CLIP FOR USE WITH TRANSPARENT CONDUCTIVE ELECTRODES IN ELECTROCHROMIC DEVICES”に開示され、その開示は、参照によって本明細書に完全に取り込まれる。さらに、電気的な接触が、米国出願シリアル番号:60/614,150、発明の名称”VEHICULAR REARVIEW MIRROR ELEMENTS AND ASSEMBLIES INCORPORATING THESE ELEMENTS”に開示されるようにミラーの周囲にある可視的な金属輪と共にエレクトロクロミックミラーで使用されるような従来の導電性インク、金属箔等により供給されてもよく、その内容は、参照によって本明細書に完全に取り込まれる。
【0029】
本明細書の上記で簡単に検討されたとおり、本発明は、溶液相EC素子に有用な置換された5,10-ジヒロドフェナジン化合物、及び、その関連する誘導体を含む陽極化合物に向けられる。
5,10-ジヒドロフェナジンの標識化は、下記のとおり示される。
【化2】

【0030】
DMPにおいて、R1、及び、R2は共にメチル基である。プロピレンカルボナート(PC)中の 0.03 M のDMP、及び、0.03 M のオクチルビオロゲンテトラフルオロボラートの溶液を、PC中の 0.03 M のDMP溶液と比較すると、DMPのみを含む溶液中では、広い光吸収帯域が観察されないのに対して、DMP、及び、ビオロゲンの両方を含む溶液中では、広い光吸収帯域が容易に観察される(749 nm における 1 cm セルで、ΔA=0.80)。我々は驚くべきことに、フェナジン上の比較的小さな分鎖アルキルがこの吸光度を著しく低減できることを発見した。いかなるある特定の説に束縛されることなく、ビオロゲン、及び、フェナジン間のドナー−アクセプター複合体の形成は、観察される光吸収を引き起こすと見られている。同様の実験は、DMPを5,10-ジイソプロピル-5,10-ジヒドロフェナジンに置き換えることが結果として 674 nm においてわずか0.10の吸光度となることを示す。2-tert-ブチル-5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン化合物は、同様の条件下で 768 nm において0.66の吸光度を示す。電荷移動帯域光吸収の低減は、より優れたハイエンドな反射率を有するミラー、より優れたハイエンドな透過を有する窓といったEC素子をもたらす。
【0031】
我々はまた、窒素に付属するより小さいイソプロピル基が2位のt-ブチル基よりも電荷移動光吸収を低減する点においてより効果的であることにも気が付いた。我々はさらに、基(メチル基と同じ位小さな基でも)による1位の置換もまた電荷移動帯域光吸収を低減することに気が付いた。
フェノチアジンにおける電荷移動光吸収の低減もまた観察される。前記の実験で、DMPを10-メチルフェノチアジンに置き換えると、512 nm における電荷移動帯域(ΔA=0.055)であった。10-ネオペンチルフェノチアジンを使用すると、512 nm における吸光度は、著しく低減する(ΔA=0.023)。
【0032】
プロピレンカルボナート中のDMPカチオンラジカルの 10 mM 溶液を、セル内にガラス基板状の二つの透明な電極と共に収納し、エポキシシールで封印し、続けてアノードにおいてジカチオンを、カソードにおいて中性のDMPを生成するために十分な電位をかけることにより一週間試験すると、435 nm から 460 nm までの範囲における光吸収帯域の強度は、その初めの値のおよそ 67 % まで低減される。同様の試験を5,10-ジエチル-5-10-ジヒドロフェナジン(DEP+)のカチオンラジカル溶液で実施すると、435 nm から 460 nm までの範囲における光吸収は、初めの値の 97 % である。また一方、これらの溶液を一週間の擬似的な太陽照射(UV暴露)にさらすと、DMPカチオンラジカル溶液は、460 nm 付近でその初めの光吸収の 89 % を保持し、DEPカチオンラジカル溶液は、同じ波長範囲においてその初めの光吸収のわずか 67 % を保持していた。
【0033】
さらに、光吸収スペクトルの多くの特性は重要な変化を示した。クロマトグラフ分析、及び、マススペクトル分析は、UV暴露によるDEPカチオンラジカル溶液の吸収スペクトルにおける変化が、主にフェナジン窒素由来の二番目の炭素由来の水素原子、又は、窒素に結合したエチル基由来のβ水素の引抜き後に形成される分解生成物の存在に起因することが示唆された。これらの結果により我々は、より優れた安定性の素子を得ることができるかどうかを判断するために、β水素を含まない化合物の合成を試みることにした。我々は、β水素原子を含まない置換基、例えば、ネオペンチル、及び/又は、1-アダマンタンメチルの使用が、陽極構成要素としてのDMPの使用によるEC素子の長期間の耐久性を向上させることを実証した。
【0034】
構成要素の一部としてエレクトロクロミック媒体を有する本明細書で定義されるようなエレクトロクロミック素子は、透過光、又は、反射光を調節し得る幅広い種々の用途で使用することができる。当該素子は、2、3例を挙げると、乗り物用バックミラー、建造物の外装用窓、家、又は、航空機を含む乗り物の透明部材(vehicle including aircraft transparencies)、ディスプレイ素子、ディスプレイ用コントラスト増進フィルター、及び、写真素子用光フィルター、及び、光センサーを含む。
本発明は、下記の実施例によってさらに記載される。
【実施例】
【0035】
実施例1
5,10-ビス[(3-トリエチルアンモニウム)n-プロピル]-5,10-ジヒドロフェナジンの合成
18.3 kg の1,3-ジブロモプロパン、9.09 kg のトリエチルアミン、及び、25 L のアセトンを入れた 50 L の反応装置を窒素ガス中で還流するために48時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷やした。白い結晶質の1-ブロモ-3-トリエチルアンモニウムプロパンブロマイドを真空濾過によって単離し、あらゆる残りの出発物質を除去するために、10 L のアセトンで2回リンスした。
【0036】
18.4 kg の1-ブロモ-3-トリエチルアンモニウムプロパンブロマイドを 3.2 kg の亜ジチオン酸ナトリウム、3.0 kg の炭酸ナトリウム水和物、2.16 kg のフェナジン、0.61 kg のメチルトリ-ブチルアンモニウムクロライド、0.36 kg のヨウ化ナトリウム、25 L のアセトニトリル、及び、2.5 L の水と共に 100 L の反応装置へ移した。この反応混合物を攪拌し、窒素ガス中で還流するために72時間過熱した。この反応混合物を次に室温まで冷却した。25 L の水を冷却溶液に加え、次にアセトニトリルを蒸留除去した。次に、18.75 L のメタノールを加え、この混合物をポールフィルター(pall filter)を通して清潔な 100 L の反応装置に移した。1 L のトリエチルアミン、及び、12 L の 40 % テトラフルオロホウ酸ナトリウム溶液をこの混合物に加えた。この溶液を室温で8時間攪拌した。
【0037】
この黄色のテトラフルオロホウ酸塩を次に濾過し、10 L の脱イオン水で2回リンスした。この塩を清潔な 100 L の反応装置に加え、17.5 L のメタノール、14 L の水、6 L の 40 % テトラフルオロホウ酸ナトリウム溶液、及び、1 L のトリエチルアミンを、固体物を溶解するための還流をするために加熱した混合物に加えた。次に加熱を止め、この混合物を室温まで冷却した。この混合物を次に、濾過前に室温で4時間攪拌した。
黄色から薄緑色の結晶質固体物を濾過し、10 L の脱イオン水で2回リンスした。この生成物を、一度再結晶した生成物、17.5 L のメタノール、17 L の水、3.0 L の 40 % テトラフルオロホウ酸ナトリウム水溶液、及び、過熱して還流し、続いて室温まで冷却した1 L のトリエチルアミンを入れることにより、清潔な 100 L の反応装置中で2回目の再結晶を行った。この混合物を次に、室温で4時間攪拌した。
【0038】
黄色から薄緑色の結晶質固体物を濾過し、10 L の脱イオン水で2回リンスした。この生成物を、二度再結晶した生成物、17.5 L のメタノール、17 L の水、3.0 L の 40 % テトラフルオロホウ酸ナトリウム水溶液、及び、過熱して還流し、続いて室温まで冷却した1 L のトリエチルアミンを入れることにより、清潔な 100 L の反応装置中で3回目の再結晶を行った。この混合物を次に、室温で4時間攪拌し、この生成物を真空濾過し、10 L の脱イオン水で2回リンスし、次に 10 L のエタノールでリンスした。この生成物である5,10-ビス[(3-トリエチルアンモニウム)n-プロピル]-5,10-ジヒドロフェナジンを真空オーブンにおいて、およそ 70 ℃ で8時間乾燥した。
【0039】
実施例2
5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジンの合成
5 L の三つ首丸底フラスコに 90 g のフェナジンを入れ、2 L のアセトニトリル中に溶解した。この混合物を攪拌し、窒素ガス下で過熱して穏やかに還流した。110 g の亜ジチオン酸ナトリウムを 200 mL の水に溶解した。亜ジチオン酸ナトリウムの水溶液を30分間を越える間、液体追加漏斗を介して加え、2時間還流した。加熱を止め、2 L の水を15分間を越えて滴下した。この混合物を室温まで冷却し、真空濾過して白い固体物(5,10-ジヒロドフェナジン)を得た。この化合物を 100 mL の水で洗浄し、次に真空オーブンにおいて、70 ℃ で4時間、又は、乾くまで速やかに乾燥した。
【0040】
150 g の乾燥した5,10-ジヒドロフェナジン、及び、1.0 L のピリジンを入れた 5 L の三つ首丸底フラスコを窒素ガス下で室温において固体物を溶解するために攪拌した。218.5 g の塩化ピバロイルを30分間を越える間、液体追加漏斗を介して滴下した。この混合物を一晩、過熱し、還流した。加熱を止め、攪拌しながら1.5 L の水を30分間を越えて滴下した。この混合物を室温まで冷却し、沈殿した固体物を真空濾過した。この固体物を 1 L の水で洗浄し、真空オーブンにおいて、70 ℃ で完全に乾くまで乾燥した。得られた 164.2 g の5,10-ピバロイルフェナジンを、固体物を 500 mL の熱いエタノール中に溶解することにより再結晶した。この溶液をおよそ 0 ℃ まで4時間冷却し、次に再結晶生成物を濾過し、100 mL のエタノールで洗浄し、乾燥し、140.9 g の5,10-ピバロイルフェナジンを生じた。
【0041】
140.9 g の5,10-ピバロイルフェナジンを 5 L の三つ首丸底フラスコに入れ、2 L の乾燥したテトロフラン(THF)中に攪拌しながら窒素ガス下、室温で溶解した。次に、1.006 L の 1.0 M ボラン THF溶液を、液体追加漏斗を介して1時間を越えて加えた。この溶液を一晩、加熱し、還流した。翌日、この溶液を室温まで冷却し、余分のボランをクエンチするために、50 mL のエタノールをゆっくりと滴下した。この反応溶液をおよそ 250 mL の総容量まで濃縮し、次に 250 mL のエタノールを加えた。THFを除去し、この混合物をおよそ 0 ℃ まで4時間冷却した。5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジンを真空濾過により単離し、冷やしたエタノールで洗浄した。不純物を 300 mL のエタノール中で3回の再結晶により除去した。
【0042】
実施例3
5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジンの補足的な合成
5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジンは下記の三つのステップの合成を使用して調製することもできる。一番目のステップで、フェナジンを亜ジチオン酸ナトリウムで5,10-ジヒドロフェナジンに還元する。使用した方法は次のとおりである。5 L の三つ首丸底フラスコに、90 g のフェナジン、110 g の亜ジチオン酸ナトリウム、1 L の水、及び、2 L のアセトニトリルを入れる。窒素ガス下で攪拌、及び、過熱して穏やかに還流する。少なくとも3時間還流し、次に過熱を止め、3 L の水を、15分間を越えて滴下する。50 ℃ 以下まで冷却し、フィルターキャンドルを用いてほとんどの溶媒を除去する。500 mL の水を加え、およそ10分間攪拌する。フィルターキャンドルを用いてほとんどの水を除去する。再び、500 mL の水を加え、10分間攪拌し、フィルターキャンドルを用いてほとんどの水を除去する。1.2 L のトルエンを加え、還流するために加熱する。5,10-ジヒドロフェナジンを乾燥するために、350 mL のトルエンを蒸留して除去する。
【0043】
次のステップは、トリメチルアセチルクロライドを有する窒素のアシル化を含む。トルエン中の乾燥した5,10-ジヒドロフェナジンを含む 5 L の三つ首丸底フラスコに、3.0 g のパラ-ジメチルアミノピリジン、300 g のトリメチルアセチルクロライド、及び、300 gのトリエチルアミンを加える。過熱して還流し、還流を少なくとも10時間維持する。加熱を止め、この反応混合物を 30 ℃ 以下まで冷却する。30分間を越えて 50 mL の水をゆっくりと加え、次に15分間攪拌する。攪拌を止め、次に下の水層を分離して処分する。380 mL の水、及び、120 mL の 50 % 水酸化ナトリウム溶液を加える。少なくとも2時間攪拌し、次に下の水層を分離して処分する。250 mL の水を加え、15分間攪拌する。下の水層を分離して処分する。次に、ジアミド溶液を 150 mL のトルエン反応溶媒を蒸留することにより乾燥する。
【0044】
三番目、及び、最後のステップは、ボランを有する第3アミンに相当するアミド官能基の還元である。1.050 L の 1.0 M ボラン:THF複合体 THF溶液を 5 L の反応フラスコに加える。ボラン溶液をおよそ 10 ℃ まで冷却し、次にジアミドトルエン溶液を、2時間を越える間にボラン溶液に加える。加える間、反応溶液の温度を、およそ 10 ℃ からおよそ 20 ℃ までの間に維持する。追加が完了した後、およそ 20 ℃ で1時間攪拌し、次におよそ 40 ℃ からおよそ 50 ℃ までの間まで加熱温度を上昇させる。この温度で最低8時間攪拌する。3 mL の水を、30分間を越える間にゆっくりと加え、次にその後に 50 mL を素早く加えることにより、還元反応をクエンチする。およそ 55 ℃ まで加熱し、少なくとも15分間攪拌する。下の水層を分離して処分する。さらに 500 mL の水を加え、およそ 55 ℃ で少なくとも15分間攪拌する。下の水層を分離して処分する。過熱して還流し、次に反応温度がおよそ 125 ℃ に達するまで、THF、及び、トルエンの溶媒を蒸留する。およそ 70 ℃ まで冷却し、200 mL のアセトンに引き続き 325 mL のエタノールを加える。25 g の酸性重合体樹脂である Sorbent Technologies の UBK510L を加える。少なくとも4時間過熱して還流し、次にフィルターキャンドルを通して清潔な 1 L のフラスコに移す。反応溶液を過熱して還流し、300 mL の溶媒を還流する。反応溶液をおよそ 10 ℃ まで徐々に冷却し、少なくとも2時間保持する。
【0045】
好ましい生成物をブフナー(Buchner)漏斗で濾過し、150 mL の冷やしたエタノールで洗浄する。およそ 70 ℃ で4時間乾燥し、白い結晶質の5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジンを生じる。
【0046】
実施例4
5,10-(1-アダマンタンメチル)-5,10-ジヒドロフェナジンの合成
5,10-(1-アダマンタンメチル)-5,10-ジヒドロフェナジンは、実施例2に記載された5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジンの合成と非常によく似た三つのステップの方法により得られた。5,10-ジヒドロフェナジンは、実施例2に記載されたのと同じ方法で得られた。
【0047】
Aldrich Corporationから入手できるアダマンタンカルボニルクロライドを、1 L の三つ首丸底フラスコに 20.8 g の5,10-ジヒドロフェナジン、及び、300 mL のピリジンと共に加えた。この混合物を攪拌し、窒素ガス下で 50 ℃ まで加熱した。固体追加漏斗を用いて、アダマンタンカルボニルクロライドを、10分間を越えて加えた。この反応混合物を次に16時間過熱して還流した。加熱を止め、300 mL の水を、30分間を越えて加えた。好ましいジアミドが沈殿し、上清を捨て去った。この沈殿を 400 mL の熱いメタノール中に溶解し、次に 0 ℃ で16時間結晶化を許容した。
【0048】
この再結晶したジアミドを真空濾過し、エタノールで洗浄し、次に 70 ℃ で16時間乾燥した。少量のフェナジンが混入したジアミドの乾燥質量は、26.2 g であった。この固体物を、1 L の三つ首の丸底フラスコに加え、500 mL のテトラヒドロフラン(THF)中に溶解した。この溶液に、130 mL の 1.0 M ボラン-THF複合体 THF溶液を、45分間を越えて加えた。この反応混合物を次に 50 ℃ まで一晩加熱した。
この反応混合物を室温まで冷却し、エタノールをゆっくりと追加してクエンチした。その後1時間、250 mL のエタノールを加え、この溶液を 0 ℃ まで冷却した。4時間後、結晶化した5,10-(1-アダマンタンメチル)-5,10-ジヒドロフェナジンを 7.1 g の乾燥質量を有するオフホワイト色の結晶として濾過した。
【0049】
実施例5
2,7-ジネオペンチル-5,10-ジメチル-5,10-ヒジドロフェナジンの合成
2,7-ジネオペンチル-5,10-ジメチル-5,10-ヒジドロフェナジンは、5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジンを出発物質として使用する二つのステップの合成を使用して調製することができる。一番目のステップは、2位、及び、おそらく7位のフリーデル・クラフツのジアシル化である。しかしながら、この物質は完全に特徴づけされていないので、2位、6位のジアシル化、2位、8位のジアシル化、及び、2位、9位のジアシル化といった他の可能性も存在する。この反応が異性体混合物を形成することができる可能性もあるが、我々はこの実施例において、2,7異性体として述べる。
【0050】
21.0 g の5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン、4.1 g の塩化亜鉛、36.2 g のトリメチルアセチルクロライド、55.6 g の1,1'-ジオクチル-4,4'-ジピリジニウムビス-テトラフルオロボラート、及び、500 mL のジクロロエタノールを 1 L の反応フラスコに加え、窒素ガス下で過熱して穏やかに還流する。この反応混合物を16時間還流し、次に室温まで冷却し、塩化亜鉛、及び、ジピリジニウム塩を除去するためにシリカゲルで濾過する。この濾液を全てのジクロロエタンを除去するために濃縮する。次に、200 mL のエタノールを加え、溶解するために 70 ℃ で攪拌し、さらに次に 95 mL のエタノールを蒸留し、徐々に室温まで冷却する。この溶液を、室温で16時間結晶化を許容し、次にオレンジ色の結晶質の2,7-トリメチルアセチル-5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジンを濾過し、50 mL の冷やしたエタノールで洗浄する。次に、この物質を真空オーブンにおいて、およそ 70 ℃ で4時間乾燥し、28.1 g の好ましい生成物が 74.3 % の収率で得られる。
【0051】
二番目のステップは、アルカンへのケトン基のウォルフ・キッシュナー還元であり、トリメチルアセチル基からネオペンチル基を形成する。27.1 g の2,7-トリメチルアセチル-5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン、21.5 g のヒドラジン水和物、48.2 g のカリウム tert-ブトキシド、及び、500 mL のトルエンを 2 L の反応フラスコへ加える。この混合物を72時間還流し、室温まで冷却し、次に 2 L の分液漏斗へ移す。次に、トルエン反応混合物をそれぞれ 500 mL の水で二回洗浄し、水層を捨て去る。残ったトルエン溶液を乾燥するまで濃縮し、次に 100 mL のアセトン、及び、100 mL のエタノール中に溶解する。この物質を次に過熱して還流し、100 mL の溶媒を大気中で除く。次に、この溶液をおよそ 5 ℃ まで2時間徐々に冷却する。好ましい生成物である2,7-ジネオペンチル-5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジンを濾過し、50 mL の冷やしたエタノールで洗浄する。この生成物を真空オーブンにおいて、およそ 70 ℃ で4時間乾燥し、13.5 g のオフホワイトの結晶生成物が得られる。
【0052】
実施例6
2,5,7,10-テトラネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジンの合成
2,5,7,10-テトラネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジンは、5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジンを出発物質として使用する二つのステップの合成を使用して調製することができる。一番目のステップは、2位、及び、おそらく7位のフリーデル・クラフツのジアシル化である。しかしながら、この物質は完全に特徴づけされていないので、2位、6位のジアシル化、2位、8位のジアシル化、及び、2位、9位のジアシル化といった他の可能性も存在する。この反応が異性体混合物を形成することができる可能性もあるが、我々はこの実施例において、2,7異性体として述べる。
【0053】
25.6 g の5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジン、3.4 g の塩化亜鉛、25.6 g のトリメチルアセチルクロライド、44.8 g の1,1'-ジオクチル-4,4'-ジピリジニウムビス-テトラフルオロボラート、及び、250 mL のジクロロエタンを 1 L の反応フラスコに加え、16時間過熱して穏やかに還流し、次に室温まで冷却し、塩化亜鉛、及び、ジピリジニウム塩を除去するためにシリカゲルで濾過する。この濾液を全てのジクロロエタンを除去するために濃縮する。次に、200 mL のエタノールを加え、この塩を溶解するために、混合物を 70 ℃ で攪拌する。この溶液を次に、徐々に室温まで冷却し、16時間保持する。ライトオレンジで結晶質の2,7-ジ-(トリメチルアセチル)-5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジンを濾過し、50 mL の冷やしたエタノールで洗浄する。この固体物を次に、真空オーブンにおいて、70 ℃ で4時間乾燥し、20.5 g の好ましい生成物を得る。この濾過物を次に 50 mL まで濃縮し、5 ℃ で2時間冷却する。7.9 g の二番目の収穫物を回収した。
【0054】
二番目のステップは、ネオペンチル基へのトリメチルアセチル基のウォルフ・キッシュナー還元である。18.4 g の2,7-ジ-(トリメチルアセチル)-5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジン、9.4 g のヒドラジン水和物、25.2 g のカリウム tert-ブトキシド、及び、300 mL のトルエンを 500 mL の反応フラスコへ加える。次に、この反応混合物を72時間還流し、5.0 g のカリウム tert-ブトキシドをこの混合物に加える。この混合物を次に、さらに72時間還流し、さらに次に 50 ℃ まで冷却する。この混合物を次に、分液漏斗へ移し、それぞれ 100 mL の水で二回洗浄した。残ったトルエン溶液を次に、乾燥するまで濃縮し、次に 300 mL の温かいアセトン中に再溶解する。50 mL のエタノールを加え、次に 300 mL の溶媒を大気中で除く。この反応溶液を次に、室温まで冷却し、2時間保持する。好ましい生成物である2,5,7,10-テトラネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジンを濾過し、50 mL の冷やしたエタノールで洗浄した。この生成物を真空オーブンにおいて、70 ℃ で4時間乾燥し、9.4 g のオフホワイトの結晶生成物を得た。
【0055】
実施例7
0.03 M DMPのPC溶液を 1 cm キュベット中に入れ、吸収スペクトルを 1200 nm から 350 nm までShimadzu 3105 UV-VIS-NIR 分光計で大気を対照として測定した。次に、0.03 M DMP、及び、0.03 M オクチルビオロゲンのPC溶液を同じやり方で測定した。二つのスペクトルの違いは、電荷移動帯域光吸収の割合として得た。1200 nm から 500 nm までの間での0.798の最大吸光度は、749 nm において記録された。
2-t-ブチル-5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン、5,10-ジイソプロピル-5,10-ジヒドロフェナジン、5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジン、及び、5,10-ビス[(3-トリエチルアンモニウム)n-プロピル]、及び、5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジンの同様の溶液をオクチルビオロゲンと共に調製し、このスペクトルを記録した。最大波長、及び、吸光度を表1に示す。
【表1】

【0056】
本明細書に特定される化合物の命名法に伴うあらゆる不明確さを排除する試みで、同じものの構造を本明細書の下記に提供する。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【0057】
実施例8
一面をITOでコートした二つの2インチ x 5インチのガラス片を置き、ITOでコートした面を、250 μm のスペーサーを含むエポキシシールによって間隔を介する関係で互いに面するように一列に並べ、空洞を形成するためにシールを硬化することによりエレクトロクロミック窓を準備した。0.015 M の5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン、0.012 M のメチルビオロゲン、並びに、それぞれ 0.0005 M のオクタメチルメチルヘキサノアートフェロセン(octamethyl methylhexanoate ferrocene)、及び、オクタメチルメチルヘキサノアートフェロシニウムテトラフルオロボラート(octamethyl methylhexanoate ferroceninium tetrafluoroborate)のPC溶液(溶液1)をこの窓の空洞に入れた。同様の窓に、0.015 M の5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジン、0.021 M のメチルビオロゲン、並びに、それぞれ 0.0005 M のオクタメチルメチルヘキサノアートフェロセン(octamethyl methylhexanoate ferrocene)、及び、オクタメチルメチルヘキサノアートフェロシニウムテトラフルオロボラート(octamethyl methylhexanoate ferrocinium tetrafluoroborate)のPC溶液(溶液2)を入れた。この窓を、1.2 V の電位の断続的な適用により高伝導状態と低伝導状態の間を循環させる種々の耐久性試験にかけたが、下記のとおりである:高温(85 ℃)に8000時間を越えてさらす、擬似的な太陽光(”1太陽光”とも言われる 340 nm において 0.55 W/m2 で、及び、”2太陽光”とも言われる 340 nm において 1.1 W/m2 で運転したAtlas Weather-Ometer)に4000時間を越えてさらす。
【0058】
下記の表は、耐久性試験における溶液に対しての色の変化(ΔE=(ΔL*2 + Δa*2 + Δb*2)1/2として定義される)を載せたものである。


【表2】

【0059】
実施例9
二つの2インチ x 5インチの窓を周囲のエポキシシール、及び、ITOの透明電極を有する 250 μm の間隔の空いたセルと共に準備した。この窓の一つを 0.010 M のDMPカチオンラジカルのPC溶液で満たし、もう一方の窓を 0.01 M の5,10-ジネオペンチル-5,10-ジヒドロフェナジン(NPP)のPC溶液で満たして、両方の窓の吸収スペクトルを測定した。我々は、このNPPカチオンラジカルが、460 nm 付近で著しくより広い吸収帯域を示すことを見出した(λmax=465 nm、fwhm=74 nm 、DMPカチオンラジカルのλmax=461 nm 、fwhm=58 nm と比較して)。
【0060】
本発明はその特定の好ましい実施態様に基づき本明細書に詳細に記載されるが、多くの修飾、及び、変更が当業者によりもたらされてもよい。従って、付加する特許請求の範囲の発明の範囲のみによって限定され、本明細書に示される実施態様を記載する詳細、及び、手段によっては限定されないことが我々の意図である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1の図面は、本発明に従って組み立てられたエレクトロクロミック素子の横断面の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロクロミック素子であって:
それと一体となった電気導電性物質を有する本質的に透明な一番目の基板;
それと一体となった電気導電性物質を有する二番目の基板;並びに、
エレクトロクロミック媒体を含み、前記エレクトロクロミック媒体は:
少なくとも一つの溶媒;
少なくとも一つの陽極電気活性物質;
少なくとも一つの陰極電気活性物質を含み;
前記の陽極電気活性物質、及び、陰極電気活性物質の少なくとも一つは、エレクトロクロミックであって;さらに、
少なくとも一つの陽極電気活性物質は、下記一般式で表される、エレクトロクロミック素子。
【化1】

(式中、Xは、N−R10、O、又は、Sであり、;R1からR10は、同一であっても異なっていてもよいが、H、およそ1からおよそ50までの炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、アルキニル基、及び/又は、およそ1からおよそ50までのケイ素原子を含むシリル基、若しくは、シロキシル基であり、前記の炭素原子、及び/又は、ケイ素原子は、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分への連結基、又は、その一部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基であってもよい。但し、R5、及び、R10の少なくとも一つは、4からおよそ50の炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、アルキニル基であり、前記炭素原子の少なくとも一つは、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分への連結基、又は、その一部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基であってもよく、さらに、R5、及び、R10の少なくとも一つは、いずれのβ水素原子も持たない。)
【請求項2】
エレクトロクロミックで使用するためのエレクトロクロミック媒体であって:
少なくとも一つの溶媒;
少なくとも一つの陽極電気活性物質;
少なくとも一つの陰極電気活性物質を含み;
前記の陽極電気活性物質、及び、陰極電気活性物質の少なくとも一つはエレクトロクロミックであって;さらに、
少なくとも一つの陽極電気活性物質は下記一般式で表される、エレクトロクロミック媒体。
【化2】

(式中、Xは、N−R10、O、又は、Sであり、;R1からR10は、同一であっても異なっていてもよいが、H、およそ1からおよそ50までの炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、アルキニル基、及び/又は、およそ1からおよそ50までのケイ素原子を含むシリル基、若しくは、シロキシル基であり、前記の炭素原子、及び/又は、ケイ素原子は、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分への連結基、又は、その一部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基であってもよい。但し、R5、及び、R10の少なくとも一つは、4からおよそ50の炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、アルキニル基であり、前記炭素原子の少なくとも一つは、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分への連結基、又は、その一部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基であってもよく、さらに、R5、及び、R10の少なくとも一つは、いずれのβ水素原子も持たない。)
【請求項3】
式中、Xは、N−R10であり、;R1からR10は、同一であっても異なっていてもよいが、H、およそ1からおよそ50までの炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、アルキニル基、及び/又は、およそ1からおよそ50までのケイ素原子を含むシリル基、若しくは、シロキシル基であり、前記の炭素原子、及び/又は、ケイ素原子は、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分への連結基、又は、その一部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基であってもよい。但し、R5、及び、R10の両方は、4からおよそ50の炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、アルコキシ、アルケニル、及び/又は、アルキニル基であり、前記炭素原子の少なくとも一つは、ハロゲン、N、O、及び/若しくは、Sを含む部分への連結基、又は、その一部分、並びに/又は、アルコール類、エステル類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、及び、その組み合わせを含む一つ以上の官能基であってもよく、さらに、前記のR5、及び、R10の両方は、いずれのβ水素原子も持たない、請求項2に記載されたエレクトロクロミック媒体。
【請求項4】
5、及び、R10の少なくとも一つが、およそ5からおよそ20の炭素原子を含むアルキル基を含む、請求項2に記載されたエレクトロクロミック媒体。
【請求項5】
5、及び、R10が、およそ5からおよそ20の炭素原子を含むアルキル基を含む、請求項2に記載されたエレクトロクロミック媒体。
【請求項6】
5、及び、R10の少なくとも一つが、ネオペンチル基を含む、請求項2に記載されたエレクトロクロミック媒体。
【請求項7】
5、及び、R10が、ネオペンチル基を含む、請求項2に記載されたエレクトロクロミック媒体。
【請求項8】
5、及び、R10が、ネオペンチル基で構成される、請求項2に記載されたエレクトロクロミック媒体。
【請求項9】
1からR10が、ベンジル基を持たない、請求項2に記載されたエレクトロクロミック媒体。
【請求項10】
5、及び、R10が、ベンジル基を持たない、請求項2に記載されたエレクトロクロミック媒体。
【請求項11】
エレクトロクロミック媒体が、さらに、架橋された重合体マトリクス、フリースタンディングゲル、及び、本質的に非滲出なゲルの少なくとも一つを含む、請求項2に記載されたエレクトロクロミック媒体。
【請求項12】
少なくとも一つのそれと一体となった電気導電性物質を有する基板、及び、請求項2に記載されたエレクトロクロミック媒体を含む、エレクトロクロミック素子。
【請求項13】
素子が、エレクトロクロミック窓を含む、請求項12に記載されたエレクトロクロミック素子。
【請求項14】
基板が、反射性物質でコーティングされている、請求項12に記載されたエレクトロクロミック素子。
【請求項15】
素子が、エレクトロクロミックミラーを含む、請求項14に記載されたエレクトロクロミック素子。
【請求項16】
素子が、周囲に金属輪を含む、請求項15に記載されたエレクトロクロミック素子。
【請求項17】
基板が、およそ 1.0 mm 厚未満である、請求項12に記載されたエレクトロクロミック素子。
【請求項18】
素子が、航空機透明部材である、請求項17に記載されたエレクトロクロミック素子。
【請求項19】
基板が、親水性被覆を含む、請求項12に記載されたエレクトロクロミック素子。
【請求項20】
素子が、5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジンと比較してビオロゲンによって溶液中で低減された電荷移動帯域を示す、請求項12に記載されたエレクトロクロミック素子。
【請求項21】
少なくとも一つのそれと一体となった電気導電性物質を有する基板、及び、請求項8に記載されたエレクトロクロミック媒体を含む、エレクトロクロミック素子。
【請求項22】
それと一体となった電気導電性物質を有する本質的に透明な一番目の基板;
それと一体となった電気導電性物質を有する二番目の基板;及び、
前記一番目の基板と前記二番目の基板との間に位置するチャンバー内に含まれる請求項4に記載されたエレクトロクロミック媒体を含む、エレクトロクロミック素子。
【請求項23】
それと一体となった電気導電性物質を有する本質的に透明な一番目の基板;
それと一体となった電気導電性物質を有する二番目の基板;及び、
前記一番目の基板と前記二番目の基板との間に位置するチャンバー内に含まれる請求項6に記載されたエレクトロクロミック媒体を含む、エレクトロクロミック素子。
【請求項24】
それと一体となった電気導電性物質を有する本質的に透明な一番目の基板;
それと一体となった電気導電性物質を有する二番目の基板;及び、
前記一番目の基板と前記二番目の基板との間に位置するチャンバー内に含まれる請求項8に記載されたエレクトロクロミック媒体を含む、エレクトロクロミック素子。
【請求項25】
エレクトロクロミック素子で使用するためのエレクトロクロミック媒体であって: 少なくとも一つの溶媒;
少なくとも一つの陽極電気活性物質;
少なくとも一つの陰極電気活性物質を含み;
少なくとも一つの陽極電気活性物質は、5,10-ジアルキル-5,10-ジヒドロフェナジン化合物を含み、少なくとも一つのアルキル基が、少なくとも四つの炭素原子を含みいずれのβ水素原子も持たないフェナジン化合物に結合された、エレクトロクロミック媒体。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−521031(P2008−521031A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541322(P2007−541322)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/040768
【国際公開番号】WO2006/055391
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(500115826)ジェンテックス コーポレイション (46)
【Fターム(参考)】