説明

エレクトロポレーション用化粧料

【課題】これまでのエレクトロポレーション技術では、必ずしもシワやたるみに対して高い効果と効果の持続を両立させることができなかった。
【解決手段】上記課題は、以下の(a)〜(c)の組成よりなるエレクトロポレーション用化粧料を提供することで解決する。
(a)コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びこれらの誘導体、分解物から選ばれる1種以上を0.1%〜1%
(b)コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など真皮を構成するタンパク質や多糖類の合成を促進するペプチド及びペプチド誘導体から選ばれる1種以上を0.0001%〜1%
(c)表皮基底膜を修復する作用のあるペプチド及びペプチド誘導体から選ばれる1種以上を0.0001%〜0.01%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単純塗布するだけでは十分な効果が得られないシワやたるみの改善について、優れた即効性と効果の持続性をもつ化粧料を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会を迎え、消費者のアンチエイジングに対する意識が非常に高くなっており、特にシワや頬などのたるみは見た目年齢を高くしてしまうため、それらを改善する化粧品のニーズが高まっている。
【0003】
シワやたるみの主な原因は皮膚の真皮層を構成するタンパク質や多糖類、グルサミノグリカンなどの減少、変質であり、その対策として、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などの配合や、真皮層構成成分を作り出す線維芽細胞を活性化させ、コラーゲンやヒアルロン酸などの産生を促す成分の配合などが提案されている(特許文献1乃至特許文献11)。
【0004】
しかしながら、これらの成分を配合した化粧料を塗布するだけでは真皮層まで十分に有用成分が到達しないため、in vitroの試験では効果が出ても、実際には非常に効果が出にくく、消費者の満足度が低いカテゴリーのものであった。
【0005】
これを解決するための一つの施術方法としてエレクトロポレーション(電気穿孔法)という技術が注目されている。これは皮膚に数十ボルトから百ボルト程度のパルス電気を処理することで、皮膚に一時的な穿孔を開け、単純塗布では不可能であった大きな分子量をもつ成分を導入することを可能としたものである(特許文献12、13及び非特許文献1)。
【0006】
これにより、コラーゲンやヒアルロン酸などを塗布した後、エレクトロポレーション処理を行うことで真皮までコラーゲンやヒアルロン酸などを取り込み、シワやたるみに大きな効果をもたせることが可能なっている。
【0007】
しかしながら、この方法では効果が持続しないという欠点がある。これは導入されたコラーゲンやヒアルロン酸が皮膚内において代謝、分解されてしまうことによるものであると考えられている。
【0008】
このように、従来の技術では、シワやたるみに対して高い効果と効果の持続性を両立することができなかった。
【特許文献1】特開2008−094750
【特許文献2】特開2007−001924
【特許文献3】特開2006−160629
【特許文献4】特開2006−063067
【特許文献5】特開2005−263677
【特許文献6】特開2005−179286
【特許文献7】特開2004−067552
【特許文献8】特開2004−043366
【特許文献9】特開2003−137766
【特許文献10】特開平10−330280
【特許文献11】特開平10−226653
【特許文献12】特開平10−234366
【特許文献13】国際公開番号WO2002/066003
【非特許文献1】雑誌「薬剤学」Vol.65 No.3(2005) P183〜186
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこれらの課題を解決し、シワやたるみに対して高い効果の持続性を有するエレクトロポレーション用化粧料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の(a)〜(c)の組成よりなるエレクトロポレーション用化粧料を提供する。
【0011】
(a)コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びこれらの誘導体、分解物から選ばれる1種以上を0.1%〜1%
(b)コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など真皮を構成するタンパク質や多糖類の合成を促進するペプチド及びペプチド誘導体から選ばれる1種以上を0.0001%〜1%
(c)表皮基底膜を修復する作用のあるペプチド及びペプチド誘導体から選ばれる1種以上を0.0001%〜0.01%
【0012】
解決手段の詳細はつぎのとおりである。
(a)のコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びこれらの誘導体、分解物は化粧料、食品及び外用剤に使用できるものであれば特に限定されるのではなく、例えば、サクシニルコラーゲン、ミリストイルサクシニルコラーゲン、イソステアロイルコラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、ヒアルロン酸プロピレングリコール、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどが挙げられる。化粧料への含有量は、0.1〜1重量%である。この範囲より少ないと効果の面で十分でなく、多いと粘度が高くなりすぎ、エレクトロポレーションでの導入に不具合を生じる。
【0013】
(b)のコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など真皮を構成するタンパク質や多糖類の合成を促進するペプチド及び誘導体についても化粧料、食品及び外用剤に使用できるものであれば特に限定されるのではなく、例えば、乳由来トリペプチド、テトラペプチド、ヘキサペプチド、オクタペプチド、オリゴペプチド、トリペプチド−シトルリン、アセチルテトラペプチド、アセチルデカペプチド、パルミトイルトリペプチド、パルミトイルオリゴペプチド、(アルギニン/リシン)ポリペプチドなどが挙げられる。化粧料への含有量は0.0001〜1重量%である。この範囲より少ないと効果の面で十分でなく、1%を超えても効果が向上するわけではないので使用効率が悪い。
【0014】
(c)表皮基底膜を修復する作用のあるペプチド及び誘導体は、基底層を構成するタンパクであるラミニンや4、7、17型コラーゲンなどの合成を促進する部分であり、ヘキサペプチド、オリゴペプチド、アセチルデカペプチド、カプロオイルテトラペプチドなどが挙げられる。化粧料への含有量は0.0001〜0.01重量%である。この範囲より少ないと効果の面で十分でなく、0.01%を超えても効果が向上するわけではないので使用効率が悪い。
【0015】
本発明の化粧料には上記の成分に加えて、必要に応じて、本発明の目的、効果を損わない質的、量的範囲内で通常の化粧品に配合される成分を配合できる。このような成分としては、例えば、精製水、油剤、界面活性剤、エタノール、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、香料、保湿剤、乳化安定剤などが挙げられるが、エレクトロポレーションで皮膚内に導入するという性質を考えると防腐剤や香料等は配合しないことが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、つぎの効果を有する。
【0017】
(a)コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びこれらの誘導体、分解物から選ばれる1種以上を0.1%〜1%、(b)コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など真皮を構成するタンパク質や多糖類の合成を促進するペプチド及びペプチド誘導体から選ばれる1種以上を0.0001%〜1%、(c)表皮基底膜を修復する作用のあるペプチド及びペプチド誘導体から選ばれる1種以上を0.0001%〜0.01%で構成させることにより、効果の持続性に優れたシワ・たるみ改善効果を有するエレクトロポレーション用化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(美容液組成)
つぎに、本発明を実施するための最良の形態としての美容液を例とする組成の実施例を表1に、比較例の美容液組成を表2に示す。
【0019】
表1 美容液組成(実施例)

【0020】
表2 美容液組成(比較例)

【0021】
(製造方法)
各成分を均一に混合し、常法により美容液を得た。
【0022】
(評価)
シワやたるみについて、官能評価によって効果の確認を行った。すなわち、30代から50代の女性3人ずつを6つの群(実施例1〜3、比較例1〜3の群それぞれに3名ずつ)に分け、美容液6gを顔面に塗布後、エレクトロポレーションによる導入を20分間行った。これを週1回、4週間行った後、専門パネラーによる目視評価を、額、目尻のシワ及びほうれい線、頬部のたるみについて、試験開始前と試験終了時、さらに試験終了4週後に行った。判断基準としては、試験開始時との比較について、以下のとおりスコア化し、3名の平均点をそれぞれ算出した。その結果を表3に示した。
3点:著しい改善、2点:改善、1点:やや改善、0点:変化なし、−1点:悪化
【0023】
表3 シワ・たるみの改善効果

【0024】
表2に示したように、実施例1〜3は比較例1〜3に比べ、試験終了時及び試験終了4週後において優れたシワ・たるみ改善効果をもつことが分かった。特に試験終了4週後の結果の差が著しかった。これの結果から、サクシニルコラーゲン、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムとともにコラーゲン合成促進効果をもつ乳由来トリペプチドやパルミトイルトリペプチドと表皮基底膜修復効果をもつカプロオイルテトラペプチドやヘキサペプチドを添加することで優れたシワ・たるみ改善効果のあることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(c)の組成よりなるエレクトロポレーション用化粧料。
(a)コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びこれらの誘導体、分解物から選ばれる1種以上を0.1%〜1%
(b)コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など真皮を構成するタンパク質や多糖類の合成を促進するペプチド及びペプチド誘導体から選ばれる1種以上を0.0001%〜1%
(c)表皮基底膜を修復する作用のあるペプチド及びペプチド誘導体から選ばれる1種以上を0.0001%〜0.01%

【公開番号】特開2010−77046(P2010−77046A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245203(P2008−245203)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(397032415)日興製薬株式会社 (2)
【Fターム(参考)】