説明

エレベータかごおよび室内照明器具

【課題】害虫駆除剤の散布による不快感やエレベータかご室内の消灯による不便さをエレベータの乗客に与えずに、エレベータかご室から害虫を除去できるようにすることを目的とする。
【解決手段】かご室1内のランプハウス8には害虫16が通過できる程度の大きさで開口した開口部11が設けられている。さらに、ランプハウス8の内部には、害虫16を誘き寄せる近紫外線の光を発光する誘虫灯12の取り付けられた誘虫室21が設けられている。また、誘虫室21の奥には誘虫灯12の周辺に集まった害虫16を吸引する吸引ファン14の取り付けられた吸引室26が設けられている。かご室1内に入り込んだ走光性の害虫16は開口部11からランプハウス8の内部に入り、誘虫灯12の発光する光に誘き寄せられ、吸引ファン14により吸引され、吸引室26の奥に捕獲される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、入り込んだ害虫を駆除するエレベータかごおよびエレベータかごの室内照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータのかご室から害虫を除去するものとして特許文献1や特許文献2がある。
特許文献1には、エレベータのかご室内に噴射ボタンを設置し、噴射ボタンが押下操作されたときに噴射装置を駆動して噴射口からエレベータかご室内に害虫忌避成分を含んだ害虫駆除剤を噴射することが開示されている。また、特許文献1には、エレベータの運転状態に応じて害虫駆除剤の噴射量を調節することが開示されている。
特許文献2には、エレベータドアを開くときにエレベータかご室内の照明を消灯し、エレベータ乗場に設けられた集蛾灯を点灯させることが開示されている。
【特許文献1】特開2006−96483号公報
【特許文献2】特開2004−149259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている技術には、害虫駆除剤を散布することでエレベータのかご室内の乗客に不快感を与えかねないという課題がある。また、エレベータのかご室内に散布された害虫駆除剤が人体に悪影響を与えるということも考えられる。
特許文献2に開示されている技術には、エレベータドアが開いたときにエレベータかご室内が暗くなるため、エレベータの乗客にとって不便であるという課題がある。
【0004】
本発明は、例えば、害虫駆除剤の散布による不快感やかご室内の消灯による不便さをエレベータの乗客に与えずに、エレベータのかご室から害虫を除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のエレベータかごは、エレベータかご内を照らすランプを内部に囲うと共に、前記内部への入口であって光に集まる習性を有する走光性の虫が通過できる大きさで開口する開口部を有するランプハウスを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、例えば、走光性の害虫をランプハウス内に収集することにより、エレベータのかご室から害虫を除去することができる。また例えば、本発明によれば、害虫駆除剤の使用やかご室内の消灯をしなくても構わないため、利用者が安全で快適に乗車することができるエレベータのかご室を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるエレベータのかご室1の縦断面図であり、ドア7を正面として側方から見たかご室1の縦断面を示している。
実施の形態1におけるエレベータのかご室1について、図1に基づいて以下に説明する。
【0008】
エレベータのかご室1(エレベータかご)は、床1a、天井板1c、床1aに立設されて左右および背面(後方)の三方を囲う壁1bなどによって組み立てられている。また、かご室1の正面(前方)には、利用者が乗り降りするための出入口を開閉するドア7が設けられている。また、エレベータのかご室1内には、照明器具としてランプハウス8が設置されている。なお、エレベータのかご室1はランプハウス8を備える室内の一例である。
【0009】
エレベータのかご室1は、昇降中、床1aと壁1bと天井板1cとドア7とで閉ざされて密閉に近い状態になる。このため、エレベータのかご室1では、ドア7の戸開時に出入口から入り込んだ害虫16や通気孔(図示省略)のようなかご室1の隙間から入り込んだ害虫16がなかなか外に出て行かずに内部に留まってしまう。そして、エレベータの乗降客は害虫16がかご室1内を飛び回ることにより不快感を感じてしまう。
【0010】
実施の形態1におけるエレベータのかご室1はランプハウス8に開口部11を有する。
ランプハウス8は、横断面が円形や方形を形成すると共に底部を閉じている筒状の透光材で構成され、照明灯9(ランプ)を覆っている。ランプハウス8は、底部に透光度(透明度)の高い照明板10を有し、照明灯9が発光した光を照明板10からかご室1内に透光してかご室1内を明るく照らす。ランプハウス8および照明灯9は、天井板1c下面の略中央に設置され、かご室1内の照明器具を構成する。
【0011】
また、ランプハウス8の筒状の側面には、1つ以上の開口部11が設けられている。
ランプハウス8に設けられた開口部11は、害虫が通過できる程度の大きさ(例えば、直径1.0〜2.0cm)で開口し、ランプハウス8内部への害虫の入口となる。
【0012】
かご室1は、誘虫灯12を内部に有する誘虫室21を天井板1cの上に備える。
誘虫室21は照明灯9の上方に設置され、誘虫灯12が照明灯9の略真上に位置する。また、誘虫室21は誘虫灯12の略真下(照明灯9の略真上)に天井板1cと共に開口する入口部23を有し、入口部23でランプハウス8の内部と通じている。
【0013】
但し、誘虫室21はランプハウス8の内部と通じていればよく、誘虫室21の誘虫灯12や入口部23は照明灯9の上方に位置しなくても構わない。例えば、誘虫室21の誘虫灯12や入口部23は、ランプハウス8の開口部11の上方、つまり、ランプハウス8の外周の上方に設けられてもよい。また例えば、誘虫室21は、かご室1の内部に設けられてもよい。例えば、誘虫室21は、かご室1の天井裏ではなく、ランプハウス8と横並びに設置されていてもよい。
【0014】
誘虫室21の誘虫灯12は害虫が好む波長の光(例えば、近紫外線)を発光する。
【0015】
また、誘虫室21は、害虫を吸引して閉じ込める吸引室26(吸引部)と繋がっている。
吸引室26は、内部に吸引ファン14が取り付けられ、誘虫室21から吸引室26への害虫の入口となる吸引口13と吸引口13から吸引ファン14に向けての害虫の通り道となる吸引路22とを有する。また、吸引室26は、吸引ファン14に吸引された害虫を吸引室26内に閉じ込めるための害虫捕獲部15(閉じ込め部)を吸引路22の奥に備える。
吸引ファン14は、回転して吸引口13側から害虫捕獲部15側に流れる風を発生させ、誘虫灯12に誘き寄せられた害虫16をその風力で害虫捕獲部15に吸引する。
害虫捕獲部15は、粘着シートや綿状繊維シートなどの付着材(付着部)を有し、吸引された害虫16を付着材に付着させる。また、害虫捕獲部15は、付着材の代わりに害虫16を死亡させる程度の電圧をかけた電圧パネルを有してもよいし、付着材や電圧パネルを有していない単なる袋小路であっても構わない。
【0016】
次に、実施の形態1におけるエレベータのかご室1の作用について説明する。
飛翔性の昆虫(以下、害虫という)の多くは光に集まる習性(走光性)があり、かご室1内に入り込んだ害虫16は、その習性から、照明灯9および誘虫灯12が内側で発光しているランプハウス8付近に集まる。さらに、ランプハウス8には開口部11が設けられているため、害虫16は開口部11からランプハウス8の内部に入り込む。
これにより、かご室1内に入り込んだ害虫16をランプハウス8内に収集し、害虫16がかご室1内を飛び回ることを抑止することができる。つまり、かご室1内の乗客が害虫16の存在により不快感を感じてしまうという事象を減らすことができる。
【0017】
また、開口部11からランプハウス8の内部に入り込んだ害虫16は、誘虫灯12により発光される好みの波長の光(例えば、近紫外線)に誘き寄せられて入口部23から誘虫室21内に入り込み、誘虫灯12の周辺に集まる。
これにより、ランプハウス8の内部に入り込んだ害虫16が開口部11からランプハウス8の外に出てかご室1内を再び飛び回るということを防ぐことができる。
【0018】
さらに、誘虫灯12の周辺に集まった害虫16は、回転する吸引ファン14により発生した風により吸引口13から吸引され、吸引路22を通って吸引室26の奥(吸引ファン14の先)へ強制的に収集される。吸引された害虫16は、吸引された勢いで吸引室26の奥に位置する害虫捕獲部15の付着材(例えば、粘着シートや綿状繊維シート)に付着してしまい、誘虫室21に戻ることはできない。そして、害虫16は害虫捕獲部15の付着材に付着したまま死んでしまう。また、害虫16は、害虫捕獲部15の付着材に付着しなくても、吸引ファン14が回転しているため誘虫室21に戻ることができず、吸引室26に閉じ込められて死んでしまう。また、害虫捕獲部15に電圧パネルを有する場合、吸引された害虫16は電圧パネルに触れた際に電圧パネルにかけられた電圧により死んでしまう。
これにより、かご室1内に入り込んだ害虫16を害虫駆除剤の散布をせずに駆除することができる。また、害虫16は吸引室26に閉じ込められるため、ランプハウス8の照明板10に害虫16の死骸が溜まることもない。
また、吸引室26や害虫捕獲部15を着脱可能にしてもよい。着脱可能にすることで、害虫16の死骸の清掃がし易くなる。
【0019】
実施の形態1では、害虫16が通る開口部11を有するランプハウス8と、ランプハウス8に設けられた誘虫灯12とを備えたエレベータのかご室1について説明した。さらに、実施の形態1では、害虫16を吸引するための吸引口13を入口側(誘虫室21側)に有すると共に、出口側(吸引室26の奥側、害虫捕獲部15側、吸引先)に害虫16を吸引する吸引ファン14を吸引口13の先に備えるエレベータのかご室1について説明した。
【0020】
実施の形態1におけるエレベータのかご室1では、かご室1内を害虫16が飛び回るために乗客が不快になるということが無い。また、実施の形態1におけるエレベータのかご室1では、害虫駆除剤を散布して、乗客に不快感を与えたり、乗客の体に悪影響を与えたりするということが無い。さらに、実施の形態1におけるエレベータのかご室1では、害虫16を除去するために照明灯9を消灯する必要もないため、かご室1内を暗くして乗客に不快感を感じさせることもない。このため、実施の形態1におけるエレベータのかご室1内の乗客は、安全で且つ快適に他の階へ移動することができる。
【0021】
実施の形態2.
以下、実施の形態1と異なる事項を主に説明し、説明を省略する事項については実施の形態1と同様であるものとする。
【0022】
図2および図3は、実施の形態2におけるエレベータのかご室1の縦断面図であり、実施の形態1の図1に対応する図である。
図2および図3において、誘虫室21の入口部23は、円錐状のテーパー部24により、ランプハウス8の内部側から誘虫室21の内部側に向けて先細りに形成されている。テーパー部24は、ランプハウス8の内部側において害虫16が誘虫室21に入り易いように大きく開口していると共に、誘虫室21の内部側において害虫16が誘虫室21から出辛いように小さく開口している。また、誘虫室21の入口部23は、先細りしたテーパー部24の先端部から誘虫灯12に向けて伸張している筒部25を有する。テーパー部24の先細りした先端および筒部25は、害虫16が通過できる程度の大きさ(例えば、直径0.5〜1.0cm)で開口している。
【0023】
これにより、誘虫灯12に誘き寄せられて誘虫室21内に入り込んだ害虫16がランプハウス8の内部に戻ってしまうことを抑止することができる。したがって、実施の形態2におけるエレベータのかご室1は、誘虫室21内に一度入り込んだ害虫16が再びかご室1内を飛び回るということを抑止することができる。
【0024】
誘虫室21は、図2に示すように吸引室26を備えなくてもよいし、図3に示すように吸引室26を備えていてもよい。吸引室26を無くすことにより、コストを下げることができる。また、吸引室26を無くした場合でも、入口部23が先細りに形成されていることにより、害虫16の捕獲効果は確保されている。
【0025】
実施の形態3.
以下、実施の形態1および実施の形態2と異なる事項を主に説明し、説明を省略する事項については実施の形態1と実施の形態2との少なくともいずれかと同様であるものとする。
【0026】
図4は、実施の形態3におけるエレベータのかご室1の縦断面図であり、実施の形態1の図1に対応する図である。
図4において、エレベータのかご室1は誘虫室21を備えず、吸引室26の吸引口13はランプハウス8の内部において照明灯9の近辺に設けられている。そして、吸引室26の吸引ファン14は照明灯9に集まった害虫16を吸引口13から吸引して害虫捕獲部15に捕獲する。
【0027】
照明灯9には、誘虫効果が高い光(例えば、近紫外線)を発光するものを用いてもよい。
【0028】
これにより、誘虫灯12を別途設ける必要が無く、コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態1におけるエレベータのかご室1の縦断面図。
【図2】実施の形態2におけるエレベータのかご室1の縦断面図。
【図3】実施の形態2におけるエレベータのかご室1の縦断面図。
【図4】実施の形態3におけるエレベータのかご室1の縦断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 かご室、1a 床、1b 壁、1c 天井板、7 ドア、8 ランプハウス、9 照明灯、10 照明板、11 開口部、12 誘虫灯、13 吸引口、14 吸引ファン、15 害虫捕獲部、16 害虫、21 誘虫室、22 吸引路、23 入口部、24 テーパー部、25 筒部、26 吸引室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかご内を照らすランプを内部に囲うと共に、前記内部への入口であって光に集まる習性を有する走光性の虫が通過できる大きさで開口する開口部を有するランプハウス
を備えたことを特徴とするエレベータかご。
【請求項2】
虫が誘き寄せられる特定の波長の光を発光する誘虫灯を内部に有する誘虫室であり、前記ランプハウスの内部に通じる入口部を有し、前記ランプハウスの内部に入った虫を前記誘虫灯で誘き寄せて前記入口部から内部に集める誘虫室
を備えたことを特徴とする請求項1記載のエレベータかご。
【請求項3】
前記誘虫室の前記入口部は、前記ランプハウスの内部側から前記誘虫室の内部側に向けて先細りしている
ことを特徴とする請求項2記載のエレベータかご。
【請求項4】
前記誘虫室は、前記誘虫灯に誘き寄せられた虫を吸引する吸引部を有する
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載のエレベータかご。
【請求項5】
前記ランプハウスの内部に通じる入口部を有し、前記ランプハウスの内部に入った虫を前記入口部から吸引する吸引部を有する
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータかご。
【請求項6】
前記吸引部は、風を発生して虫を吸引するファンを有する
ことを特徴とする請求項4または請求項5記載のエレベータかご。
【請求項7】
前記吸引部は、前記ファンにより吸引された虫を閉じ込める閉じ込め部を有する
ことを特徴とする請求項6記載のエレベータかご。
【請求項8】
前記閉じ込め部は、前記ファンにより吸引された虫を付着する付着部を有する
ことを特徴とする請求項7記載のエレベータかご。
【請求項9】
室内を照らすランプを内部に囲うと共に、前記内部への入口であって光に集まる習性を有する走光性の虫が通過できる大きさで開口する開口部を有するランプハウス
を備えたことを特徴とする室内照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−179420(P2009−179420A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18515(P2008−18515)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】