説明

エレベータのかご上手摺装置

【課題】本発明は、十分な強度で容易にかご上に設置することができるエレベータのかご上手摺装置を得ることを目的とするものである。
【解決手段】各手摺12,13,14は、上枠4に固定された一対の上枠固定部15と、基部が上枠固定部15に接続され、上枠4上に立設された手摺本体16とを有している。各上枠固定部15は、取付部材としての断面コ字形の第1の取付金17と、第1の取付金17の内側に挿入されて第1の取付金17との間に上枠4を挟持する取付部材としての断面コ字形の第2の取付金18とを有している。第1及び第2の取付金17,18は、複数の締結具(ボルト・ナット等)を用いて互いに締結されることにより、上枠4を把持し上枠4に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータのかご上手摺装置に関し、特にかご上への設置が容易なかご上手摺装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータの改修工事において、既存のかごにかご上手摺装置がない場合や、かご上手摺装置があっても現在の基準を満足していない場合、既存のかごに新たなかご上手摺装置を設置する必要がある。このような場合、手摺取付用の取付孔がかごの上枠に加工される。
【0003】
また、従来の作業台装置では、ガイドレールに係合するガイドローラのかごへの取付部を利用して、支持ベース部材がかご上に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−143129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来のかご上手摺装置の設置方法のうち、上枠に取付孔を加工する方法は、現地での作業にかなりの手間がかかってしまう。また、ガイドローラの取付部によりかご上手摺装置を支持するための十分な強度を確保するのが難しい。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、十分な強度で容易にかご上に設置することができるエレベータのかご上手摺装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベータのかご上手摺装置は、締結具を用いて互いに締結されることにより、かごの上枠を把持し上枠に固定される複数の取付部材を有する上枠固定部、及び基部が上枠固定部に接続されており、上枠上に立設される手摺本体を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明のエレベータのかご上手摺装置は、取付部材を締結具で互いに締結することにより、これらの取付部材により上枠を把持し、これにより上枠固定部を上枠に固定するので、上枠への孔明け加工等は不要であり、上枠の任意の位置に上枠固定部を固定することができ、十分な強度で容易にかご上に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータのかごを示す斜視図である。
【図2】図1のかご上へのかご上手摺装置の設置途中の状態を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態2によるかご上手摺装置の要部を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図3の上枠固定部を幅寸法の異なる上枠に固定した状態を示す平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】この発明の実施の形態3によるかご上手摺装置の断面図である。
【図8】この発明の実施の形態4によるかご上手摺装置の断面図である。
【図9】図8の上枠固定部を幅寸法及び高さ寸法の異なる上枠に固定した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータのかごを示す斜視図、図2は図1のかご上へのかご上手摺装置の設置途中の状態を示す斜視図である。図において、かご室1は、かご枠2に支持されている。かご枠2は、かご室1を支持するかご床3、かご床3の上方に水平に配置されている矩形の上枠4、かご床3と上枠4との間に垂直に固定されている一対の縦柱5とを有している。
【0011】
上枠4は、前枠6と、前枠6に対向する後枠7と、前枠6の第1の端部と後枠7の第1の端部との間に接続された第1の側枠8と、前枠6の第2の端部と後枠7の第2の端部との間に接続された第2の側枠9とを有している。これらの前枠6、後枠7及び側枠8,9は、いずれも断面矩形で直線状の部材である。
【0012】
後枠7は、前枠6に平行に配置されている。側枠8,9は、互いに平行に配置されている。側枠8,9の中間部には、縦柱5の上端部が固定されている。前枠6には、かごドア装置10が取り付けられている。かご室1の前面には、かご出入口を開閉する一対のかごドア11が設けられている。
【0013】
かご上手摺装置は、第1の側枠8に取り付けられた第1の側部手摺12と、第2の側枠9に取り付けられた第2の側部手摺13と、後枠7に取り付けられた後部手摺14とを有している。
【0014】
各手摺12,13,14は、上枠4に固定された一対の上枠固定部15と、基部が上枠固定部15に接続され、上枠4上に立設された手摺本体16とを有している。各上枠固定部15は、取付部材としての断面コ字形の第1の取付金17と、第1の取付金17の内側に挿入されて第1の取付金17との間に上枠4を挟持する取付部材としての断面コ字形の第2の取付金18とを有している。
【0015】
第1及び第2の取付金17,18は、複数の締結具19(ボルト・ナット等)を用いて互いに締結されることにより、上枠4を把持し上枠4に固定される。手摺本体16の基部は、工場出荷前に予め第1の取付金17に固定されている。
【0016】
このようなエレベータのかご上手摺装置では、第1及び第2の取付金17,18を締結具19で互いに締結することにより、これらの取付金17,18により上枠4を把持し、これにより上枠固定部15を上枠4に固定するので、上枠4への孔明け加工等、現地での追加加工は不要であり、上枠4の任意の位置に上枠固定部15を固定することができ、十分な強度で容易に手摺12,13,14をかご上に設置することができる。
【0017】
実施の形態2.
次に、図3はこの発明の実施の形態2によるかご上手摺装置の要部を示す平面図、図4は図3のIV−IV線に沿う断面図、図5は図3の上枠固定部15を幅寸法の異なる上枠4に固定した状態を示す平面図、図6は図5のVI−VI線に沿う断面図である。なお、図3は図4のIII−III線に沿う断面図に相当し、図5は図6のV−V線に沿う断面図に相当する。
【0018】
第1の取付金17には、互いに対向する一対の平板状の第1の対向部17aと、第1の対向部17a間を接続する平板状の第1の接続部17bとが形成されている。第2の取付金18には、互いに対向する一対の平板状の第2の対向部18aと、第2の対向部18a間を接続する平板状の第2の接続部18bとが形成されている。
【0019】
各第1の対向部17aには、締結具19が通される一対の長孔17cが設けられている。各第2の対向部18aには、締結具19が通される一対の挿通孔が設けられている。これにより、第2の取付金18の第1の取付金17への締結位置(挿入深さ)が調整可能になっている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0020】
このようなかご上手摺装置では、第1の取付金17に長孔17cが設けられているので、第2の取付金18の第1の取付金17への締結位置を容易に調整することができ、上枠4の幅寸法が異なる場合でも、同一の構成の上枠固定部15により対応することができ、コストを低減することができる。
【0021】
なお、第1及び第2の取付金17,18の向きを図4の状態から90°変更し、取付金17,18の開口が下方へ向くように配置することにより、上枠4の高さ寸法が異なる場合にも、同一の構成の上枠固定部15により対応することができる。
また、上記の例では、第1の取付金17に長孔17cを設けたが、第2の取付金18に長孔を設けても、第1及び第2の取付金17,18の両方に長孔を設けてもよい。
【0022】
実施の形態3.
次に、図7はこの発明の実施の形態3によるかご上手摺装置の断面図である。図において、第1の取付金17と第2の取付金18とを締結具19により締結した状態で、一方の前記第1の対向部17aと一方の第2の対向部18aとの間には、隙間gが設けられている。他の構成は、実施の形態1又は2と同様である。
【0023】
このようなかご上手摺装置では、締結具19を締め付けることにより、第1の取付金17に上枠4を挟み込む方向の力が発生するため、上枠固定部15と上枠4との間に生じる摩擦力により、上枠固定部15を上枠4に強固に固定することができ、上枠固定部15の横ずれを防止することができる。
【0024】
実施の形態4.
次に、図8はこの発明の実施の形態4によるかご上手摺装置の断面図、図9は図8の上枠固定部15を幅寸法及び高さ寸法の異なる上枠4に固定した状態を示す断面図である。図において、上枠固定部15は、L字形の4個の取付部材、即ち第1ないし第4の取付金21〜24を有している。これらの取付金21〜24は、同一形状、同一寸法の部材である。
【0025】
また、取付金21〜24は、上枠4の長手方向に直角な断面の外周を四方から囲むように配置されている。さらに、取付金21〜24は、締結具19を用いて互いに締結されることにより、上枠4を把持し上枠4に固定される。さらにまた、取付金21〜24には、締結具19が通される挿通孔と長孔21a〜24aとが設けられている。手摺本体16の基部は、工場出荷前に予め第1の取付金21に固定されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0026】
このようなL字形の取付金21〜24を用いた上枠固定部15によっても、上枠4への孔明け加工等が不要であり、上枠4の任意の位置に上枠固定部15を固定することができ、十分な強度で容易に手摺12,13,14をかご上に設置することができる。
【0027】
また、取付金21〜24に長孔21a〜24aを設けたので、上枠4の幅寸法及び高さ寸法が異なる場合でも、同一の構成の上枠固定部15により対応することができ、コストを低減することができる。
【0028】
なお、実施の形態4において、長孔21a〜24aは、必ずしも全ての取付金21〜24に設けなくてもよい。但し、全ての取付金21〜24を同一構造とすることにより、部品の種類を削減してコストを低減できる。
また、実施の形態1〜4のかご上手摺装置は折り畳み式ではないが、一般的に用いられている折り畳み式のかご上手摺装置にもこの発明は適用できる。例えば、手摺本体16を上枠固定部15に対して回動可能にし、かご上に倒して収納可能としてもよい。
さらに、構成の異なる上枠固定部15を組み合わせて用いてもよい。
さらにまた、上枠固定部15の数は特に限定されるものではなく、1つの手摺本体16に対して、1個又は3個以上であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
4 上枠、15 上枠固定部、16 手摺本体、17,21 第1の取付金、17a 第1の対向部、17b 第1の接続部、17c,21a〜24a 長孔、18,22 第2の取付金、18a 第1の対向部、18b 第2の接続部、19 締結具、23 第3の取付金、24 第4の取付金。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結具を用いて互いに締結されることにより、かごの上枠を把持し前記上枠に固定される複数の取付部材を有する上枠固定部、及び
基部が前記上枠固定部に接続されており、前記上枠上に立設される手摺本体
を備えていることを特徴とするエレベータのかご上手摺装置。
【請求項2】
前記上枠固定部は、
互いに対向する一対の平板状の第1の対向部と、前記第1の対向部間を接続する平板状の第1の接続部とが形成された前記取付部材としての断面コ字形の第1の取付金と、
互いに対向する一対の平板状の第2の対向部と、前記第2の対向部間を接続する平板状の第2の接続部とが形成され、前記第1の取付金の内側に挿入されて前記第1の取付金との間に前記上枠を挟持する前記取付部材としての断面コ字形の第2の取付金と
を有していることを特徴とする請求項1記載のエレベータのかご上手摺装置。
【請求項3】
前記第1の取付金と前記第2の取付金とを前記締結具により締結した状態で、一方の前記第1の対向部と一方の前記第2の対向部との間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項2記載のエレベータのかご上手摺装置。
【請求項4】
前記上枠固定部は、前記上枠の長手方向に直角な断面の外周を四方から囲む前記取付部材であるL字形の4個の取付金を有していることを特徴とする請求項1記載のエレベータのかご上手摺装置。
【請求項5】
少なくとも1つの前記取付部材には、前記締結具が通される長孔が設けられており、前記取付部材同士の締結位置が調整可能になっていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のエレベータのかご上手摺装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−136306(P2012−136306A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288420(P2010−288420)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】