説明

エレベータのかご内手摺装置及びその取付方法

【課題】かご室内からの作業のみによって、簡単に取り付けができ、既設エレベータにも容易に対応することができるエレベータのかご内手摺装置を得る。
【解決手段】手摺3と、ブラケット1と、取付孔が形成されたブラケット1の固定座9と、壁パネル19に形成された取付孔にかご室内から挿入され、フランジ部がかご室内に、ナット部が壁パネル19の裏側に配置されたナット手段14と、固定座9が壁パネル19に宛がわれた状態で、固定座9の取付孔にかご室内から挿入され、壁パネル19の裏側でナット部のネジ孔に締め付けられた手摺固定ネジ15とを備える。そして、上記手摺固定ネジ15の締め付けにより、フランジ部とナット部とによって壁パネル19を、また、フランジ部と手摺固定ネジ15とによって固定座9を狭持して、上記ナット手段14及びブラケット1を壁パネル19にそれぞれ固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータのかご室内に設けられたかご内手摺装置、及びその取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、乗客のことを考慮して、かご室内にかご内手摺装置を設置したものがある。図13及び図14はエレベータのかご室内に備えられた従来のかご内手摺装置を示している。エレベータのかご内手摺装置は、一般に、かご室壁に固定された複数のブラケット25によって棒状の手摺26を支持することにより、上記手摺26をかご室内の所定の高さに配置している。
【0003】
そして、従来では、以下に示す手順によって、かご内手摺装置がかご室壁に取り付けられていた。即ち、先ず、かご室壁を形成する壁パネル27の所定位置に、ブラケット25を固定するための取付孔27aを形成する。次に、予めネジ孔が形成された固定用座金28を、壁パネル27の裏側から上記取付孔27aの位置に合わせて宛がい、この固定用座金28を壁パネル27の裏面に固定する。そして、かご室内から取付ネジ29を固定用座金28のネジ孔に締め付けて、ブラケット25を壁パネル27に固定し、更に手摺26をブラケット25に固定して、図13及び図14に示す状態に完成させる。
【0004】
一方、かご内手摺装置の従来技術として、壁パネルの裏側の所定位置に、予めネジ孔が形成された固定用座金を取り付けておくことにより、かご室内からの作業のみによって、かご内手摺装置を取り付けることができるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−97163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図13及び図14に示す従来のかご内手摺装置では、かご内手摺装置を取り付ける際に、固定用座金を壁パネル裏面の所定位置に固定しなければならず、かご室内とかご室外とに1人ずつ作業者が必要となって、作業性が悪いという問題があった。
【0007】
一方、特許文献1記載のものでは、かご室内からの作業のみによってかご内手摺装置の取り付けが行えるように構成されているが、これを実現するためには、予め固定用座金を壁パネル裏面の所定位置に固定しておかなければならない。即ち、特許文献1記載のものは、新設のエレベータにかご内手摺装置を取り付ける場合や、かご内手摺装置の取り付けがオプションとして備わっている既設エレベータ等にしか対応することはできなかった。したがって、例えば、かご内手摺装置の取り付けが想定されていない既設エレベータに、客先の要求に応じてかご内手摺を取り付ける場合には、上記従来と同様の手順が必要となり、同じ問題が生じることとなっていた。
【0008】
また、最近では、エレベータの省スペース化により、かごと昇降路壁との間に作業者が入るための十分な空間が確保されていない場合も多い。かかる場合には、かご室壁の裏側に作業者が回り込むことができないため、かご室壁を一旦解体してからかご内手摺装置の取り付けを行わなければならなかった。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、かご室内からの作業のみによって、簡単にかご室壁の所定位置に取り付けることができ、更に、既設エレベータにも容易に対応することができるエレベータのかご内手摺装置、及びその取付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るエレベータのかご内手摺装置は、エレベータのかご室内の所定高さに配置された手摺と、手摺を支持するブラケットと、ブラケットに設けられ、取付孔が形成された固定座と、かご室の壁パネルに形成された取付孔にかご室内から挿入され、壁パネルの取付孔よりも大きなフランジ部がかご室内に、ネジ孔が形成されたナット部が、壁パネルの取付孔を通って壁パネルの裏側に配置されたナット手段と、固定座がフランジ部を覆うように壁パネルに宛がわれた状態で、固定座の取付孔にかご室内から挿入され、壁パネルの裏側でナット部のネジ孔に締め付けられた手摺固定ネジと、を備え、フランジ部とナット部とによって壁パネルが、また、フランジ部と手摺固定ネジとによって固定座が挟持されることにより、ナット手段及びブラケットが、壁パネルにそれぞれ固定されたものである。
【0011】
この発明に係るエレベータのかご内手摺装置の取付方法は、エレベータのかご室の壁パネルに、かご室内から取付孔を形成するステップと、壁パネルの取付孔にかご室内からナット手段を挿入して、壁パネルの取付孔よりも大きなフランジ部をかご室内に、ネジ孔が形成されたナット部を壁パネルの裏側に配置するステップと、手摺を支持するブラケットに、取付孔が形成された固定座を固定するステップと、フランジ部を覆うように固定座を壁パネルに宛がい、固定座の取付孔にかご室内から手摺固定ネジを挿入して、手摺固定ネジを壁パネルの裏側でナット部のネジ孔に締め付けるステップと、手摺固定ネジの締め付けにより、フランジ部とナット部とによって壁パネルを、また、フランジ部と手摺固定ネジとによって固定座を狭持し、ナット手段及びブラケットを壁パネルにそれぞれ固定するステップと、を備えたものである。
【0012】
また、この発明に係るエレベータのかご内手摺装置の取付方法は、エレベータのかご室の壁パネルに、かご室内から第1の取付孔を形成するステップと、壁パネルに第1の取付孔を形成した後、この第1の取付孔に近接する位置に、第2の取付孔を形成するステップと、壁パネルの第2の取付孔にかご室内からナット手段を挿入して、壁パネルの第2の取付孔よりも大きなフランジ部をかご室内に、ネジ孔が形成されたナット部を壁パネルの裏側に配置するステップと、手摺を支持するブラケットに、取付孔が形成された固定座を固定するステップと、壁パネルの第1の取付孔及びフランジ部を覆うように固定座を壁パネルに宛がい、固定座の取付孔にかご室内から手摺固定ネジを挿入して、手摺固定ネジを壁パネルの裏側でナット部のネジ孔に締め付けるステップと、手摺固定ネジの締め付けにより、フランジ部とナット部とによって壁パネルを、また、フランジ部と手摺固定ネジとによって固定座を狭持し、ナット手段及びブラケットを壁パネルにそれぞれ固定するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、かご室内からの作業のみによって、かご内手摺装置を簡単にかご室壁の所定位置に取り付けることができ、更に、既設エレベータにも容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0015】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータのかご内手摺装置を示す正面図、図2は図1に示すかご内手摺装置のA−A断面図、図3は図1に示すかご内手摺装置のB−B断面図、図4は図3に示すかご内手摺装置のC矢視図である。
【0016】
エレベータのかご室内に設けられたかご内手摺装置は、かご室壁に設けられた複数(図1乃至図4では2つ)のブラケット1と、ブラケット1をかご室壁に固定するためのブラケット固定手段2と、ブラケット1に支持された棒状の手摺3とによって構成される。
【0017】
手摺3は、エレベータの乗客が持ち易いように、かご室内の所定の高さに水平に配置される。この手摺3の内部には、図1及び図2に示すように、長手に沿ってアリ溝付レール4が設けられている。そして、乗客が把持する把持部5は、アリ溝付レール4を覆うように配置され、例えば、皿ネジ6により、上記アリ溝付レール4に所定間隔毎に固定されている。
【0018】
ブラケット1は、図3及び図4に示すように、要部を構成するL字状の支柱7、支柱7の一端部に設けられた手摺固定手段8、支柱7の他端部に設けられた固定座9によって構成される。手摺固定手段8は、ブラケット1に手摺3を支持させるためのものであり、手摺3の任意の位置に固定自在に構成される。例えば、手摺固定手段8は、支柱7の一端部に溶接等によって設けられた板状の取付座10と、取付座10に設けられた固定ネジ11のネジ座12とにより、アリ溝付レール4の突起部4aを挟持して、支柱7の一端部を手摺3に固定する。即ち、手摺固定手段8(ブラケット1)は、固定ネジ11が弛緩されることにより、アリ溝付レール4に沿ってスライド自在となり、固定ネジ11を締め付けることにより、アリ溝付レール4の任意の位置に固定される。また、上記固定座9は、ブラケット1に設けられたフランジの機能を有し、皿ネジ13等によって支柱7の他端面に固定される。なお、固定座9には、支柱7の他端部をかご室壁に取り付けるための複数の取付孔が形成されている。
【0019】
ブラケット固定手段2は、かご室内からの作業のみによって、ブラケット1(支柱7の他端部)をかご室壁に固定するためのものであり、例えば、回転式ナット14(ナット手段)と、手摺固定ネジ15とによって構成される。
【0020】
図5はこの発明の実施の形態1における回転式ナットを示す図、図6は図5に示す回転式ナットのD−D断面図である。回転式ナット14は、図5及び図6に示すように、フランジ部16、ナット支持部17、ナット部18から構成され、手摺固定ネジ15を使用したかご室内からの作業のみによって、かご室壁を形成する壁パネル19に固定される。具体的に、フランジ部16は、壁パネル19に形成されたかご内手摺装置取付用の取付孔(図1乃至図4においては図示せず)よりも一回り大きな形状を呈しており、その中央部に貫通孔16aが形成されている。ナット支持部17は、貫通孔16aの両側から突出するように、フランジ部16の一側面に立設されている。また、ナット支持部17は、所定の間隙を有して対向するように平行に配置され、その長手に沿って長孔17aが形成されている。
【0021】
ナット部18は、手摺固定ネジ15のネジ部が締め付けられる部分であり、ナット支持部17に対して回転自在に、且つ長孔17aに沿って移動自在に設けられ、上記ナット支持部17間に配置されている。ここで、18aはナット部18をナット支持部17に対して回転自在に支持させるための軸である。この軸18aは、ナット部18の両側面から突出し、各長孔17aを貫通するように設けられている。なお、軸18aは、その軸方向が長孔17aの長手方向に直交するように配置されている。18bはナット部18の中央部に形成されたネジ孔である。このネジ孔18bは、かご内手摺装置の取付時に手摺固定ネジ15が螺嵌され、上記軸18aの軸方向と直交するように形成されている。また、18cはナット部18に形成された傾斜面である。この傾斜面18cは、全体として略四角柱形状を呈するナット部18の長手方向一端部に形成されるとともに、このナット部18が長孔17aの長手に平行に配置された状態で、フランジ部16の一側面に対して所定の角度を有して対向するように形成されている。
【0022】
上記構成のブラケット固定手段2を使用して、ブラケット1をかご室壁に固定する場合には、先ず、壁パネル19に予め形成されたかご内手摺取付用の取付孔に、かご室内から回転式ナット14を挿入する。この時、回転式ナット14は、図5に示すように、ナット部18の長手がナット支持部17の長手と同じ方向を向くようにしておき、この状態で壁パネル19の取付孔に挿入する。そして、壁パネル19に形成した全ての取付孔に回転式ナット14を挿入し、各回転式ナット14のフランジ部16をかご室内に、また、ナット支持部17及びナット部18を、壁パネル19の取付孔を通過して壁パネル19の裏面から突出させた状態に配置する。
【0023】
回転式ナット14を上記状態に配置した後、かご室内に配置された上記フランジ部16を覆うように、支柱7の他端部に固定された固定座9を壁パネル19に宛がい、固定座9の取付孔とフランジ部16の貫通孔16aとの位置が一致するように、固定座9の配置を調整する。そして、かかる状態で、手摺固定ネジ15を固定座9の取付孔にかご室内から挿入し、壁パネル19の裏側でナット部18のネジ孔18bに締め付けることにより、固定座9、即ちブラケット1を壁パネル19に固定する。
【0024】
なお、固定座9の取付孔から挿入された手摺固定ネジ15は、フランジ部16の貫通孔16aを通って壁パネル19の裏側に達した後、先端部がナット部18の傾斜面18cに接触する。すると、ナット部18は、手摺固定ネジ15が更に奥に押し込まれることにより、手摺固定ネジ15から受ける力を傾斜面18cによって逃がすように約90度回転し、ネジ孔18bが手摺固定ネジ15のネジ部に対して一直線状に配置される。かかる状態から手摺固定ネジ15を回転させる(締め付ける)と、手摺固定ネジ15がネジ孔18bに噛み合い、手摺固定ネジ15は、そのネジ頭が固定座9に接触するまで進入する。そして、手摺固定ネジ15は、そのネジ頭が固定座9に接触した後、ナット部18が壁パネル19の裏面に接触するまで長孔17aに沿って移動する。即ち、最終的に、フランジ部16とナット部18とによって壁パネル19が挟持され、また、フランジ部16と手摺固定ネジ15のネジ頭とによって固定座9が挟持されることにより、回転式ナット14及びブラケット1が、壁パネル19にそれぞれ固定される。
【0025】
なお、20は上記手順によって固定座9を壁パネル19に取り付けた後に、固定座9及び手摺固定ネジ15をかご室内から覆うカバー、21はカバー20を支柱7の所定位置に固定するための押えゴムである。図4は上記カバー20と手摺3とを取り外した状態を示している。
【0026】
次に、上記構成を有するかご内手摺装置をかご室壁に取り付ける際の動作について説明する。作業者は、先ず、かご室内において、かご内手摺装置の取付位置を決定する。そして、決定した取付位置に基づいて、壁パネル19の所定位置にブラケット1の他端部を取り付けるための取付孔を形成し、形成した各取付孔に回転式ナット14を挿入しておく。次に、手摺固定手段8の固定ネジ11を弛緩させた状態でネジ座12をアリ溝付レール4内に配置し、ブラケット1を手摺3に対してその長手方向にスライド自在な状態で取り付ける。また、押えゴム21をカバー20と支柱7との間から抜いて、カバー20をフリーな状態にしておく。
【0027】
そして、作業者は、ブラケット1の他端部に予め固定した固定座9を壁パネル19の所定位置に宛がい、手摺固定ネジ15を用いて固定座9を壁パネル19に固定する。双方のブラケット1を壁パネル19に固定した後、手摺3を所望の位置に配置し直し、固定ネジ11を締め付けて手摺3をブラケット1に固定する。また、固定座9を覆うようにカバー20を配置した後、押えゴム21によってカバー20を固定する。
【0028】
この発明の実施の形態1によれば、かご室内からの作業のみによって、簡単に壁パネル19の所望の位置にかご内手摺装置を取り付けることができる。したがって、かご内手摺装置の取り付けに1人の作業者しか必要とせず、作業性の向上及び作業コストの低減を図ることが可能となる。
【0029】
また、上記構成のかご内手摺装置は、既設エレベータであっても、かご室内からの作業のみによって、かご室壁の任意の位置に簡単に取り付けられる。なお、上記構成のかご内手摺装置は、新設のエレベータに取り付けることも当然可能であるが、一般に、新設するエレベータにかご内手摺装置を取り付ける場合や、かご内手摺装置がオプションとして備えられた既設エレベータを改修してかご内手摺装置を追加する場合には、かご内手摺装置の取付位置となる壁パネル19の裏面に、予めナット等が設けられている場合が多い。また、既設エレベータでは、エレベータサービスの低下を防止するため、改修工事を短期間で行う必要がある。したがって、かご室内からの作業のみによって短時間で取り付けが可能な上記かご内手摺装置は、かご内手摺装置の設置が想定されていない既設エレベータに対して、特に有効な手段となる。
【0030】
また、かごと昇降路壁との間に作業者が入るための十分な空間が確保されていないような省スペース化されたエレベータに対しても有効であり、作業者が昇降路内に落下するといった事故を確実に防止することが可能となる。
【0031】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2におけるエレベータのかご内手摺装置を示す正面図、図8はこの発明の実施の形態2におけるエレベータのかご内手摺装置を示す側面図、図9は図7に示すかご内手摺装置のE−E断面図、図10は図7に示すかご内手摺装置のF−F断面図、図11は図10に示すかご内手摺装置のG矢視図である。なお、図10は手摺3を、図11は手摺3とカバー20とを取り外した状態を示している。
【0032】
図7乃至図11において、ブラケット1は、上記支柱7及び手摺固定手段8と、支柱7の他端部に設けられた固定座9及び取付用座板22とによって構成される。固定座9は、実施の形態1の場合と同様に、皿ネジ13等によって支柱7の他端面に固定されている。取付用座板22は、固定座9よりも幅及び高さが共に大きい長方形状を呈しており、固定座9の裏面に、皿ネジ23によって締結固定されている。また、取付用座板22には、その中央部に、支柱7の他端部をかご室壁に取り付けるための取付孔(図示せず)が、上下に並んで形成されている。
【0033】
次に、上記構成を有するかご内手摺装置をかご室壁に取り付ける際の動作について説明する。作業者は、先ず、かご室内において、壁パネル19の所定位置にブラケット1の他端部を取り付けるための取付孔を形成する。
【0034】
ここで、かご室壁を形成する壁パネル19は、一般に、かご室壁としての所定の強度を確保する必要があり、その裏面に、図12に示すようなL字形状等の補強板24が設けられている場合が多い。したがって、作業者が壁パネル19に取付孔を形成した際に、図7に示すように、補強板24の立ち上がり部の位置Hに取付孔を形成してしまうことがある。このような場合には、作業者は、補強板24を避けるように、上記位置Hに近接した位置Jに、再度取付孔を形成する。なお、補強板24は一般に上下方向に配置されていることが多いため、位置Hから水平方向に所定距離ずれた位置Jに取付孔を形成すると良い。上記位置Jに取付孔を形成した後、取付用座金22に形成された取付孔の位置に合わせて壁パネル19に取付孔を形成し、間違って開けてしまった位置H以外の取付孔に、回転式ナット14を挿入しておく。また、作業者は、支柱7に押えゴム21及びカバー20を挿入した後、支柱7の他端部に皿ネジ13によって固定座9を、また皿ネジ23によって取付用座板22を締結固定しておく。
【0035】
そして、作業者は、ブラケット1の他端部に固定された取付用座金22を、回転式ナット14のフランジ部16と最初に開けてしまった位置Hの取付孔との双方を隠すようにして、壁パネル19の所定位置に宛がい、手摺固定ネジ15を用いて取付用座金22を壁パネル19に固定する。双方のブラケット1を壁パネル19に固定した後、手摺3を所望の位置に配置し直し、固定ネジ11を締め付けて手摺3をブラケット1に固定する。なお、その他は、実施の形態1と同様の構成及び効果を有する。
【0036】
この発明の実施の形態2によれば、補強材24に干渉するような位置に取付孔を形成してしまったような場合でも、その取付孔を取付用座金22で隠すことができ、かご内手摺装置の設置後に意匠性の問題が生じることはない。また、取付用座板22が所定の幅及び高さを有し、壁パネル19に面接触した状態で取り付けられるため、かご内手摺装置の取付部分の剛性を向上させることができる。
【0037】
また、既設エレベータでは、かご室内から壁パネル19の裏側の状態を把握することは困難であり、実際には、調査等を行わなければ、壁パネル19の裏面に設けられた補強板24の位置等は分からない。このため、取付用座金22を使用することにより、上記調査等のための時間とコストとが不要となり、かご内手摺装置の取付を迅速且つ安価に提供することが可能となる。
【0038】
なお、図7乃至図11に示すかご内手摺装置は、手摺固定ネジ15のネジ頭がかご室内に露出された状態で取り付けられている。このため、例えば、手摺固定ネジ15を、特殊工具によってのみ締結及び弛緩が行えるような所定の形状(例えば、ネジ頭を楕円形状にして、+ドライバー用の溝をなくしたもの)にしておき、エレベータの乗客等の悪戯によってかご内手摺装置が取り外されることを防止しても良い。また、固定座9を固定している皿ネジ23が悪戯等によって取り外されることを防止するため、図8に示すように、皿ネジ23を覆うカバー20の下端部を取付用座金22に溶接等によって固定しても良い。なお、溶接等といった一般工具では取り外すことができない所定の方法によってカバー20を固定する上記手段は、実施の形態1の場合にも応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータのかご内手摺装置を示す正面図である。
【図2】図1に示すかご内手摺装置のA−A断面図である。
【図3】図1に示すかご内手摺装置のB−B断面図である。
【図4】図3に示すかご内手摺装置のC矢視図である。
【図5】この発明の実施の形態1における回転式ナットを示す図である。
【図6】図5に示す回転式ナットのD−D断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2におけるエレベータのかご内手摺装置を示す正面図である。
【図8】この発明の実施の形態2におけるエレベータのかご内手摺装置を示す側面図である。
【図9】図7に示すかご内手摺装置のE−E断面図である。
【図10】図7に示すかご内手摺装置のF−F断面図である。
【図11】図10に示すかご内手摺装置のG矢視図である。
【図12】エレベータのかご室壁の構成を説明するための図である。
【図13】従来のエレベータのかご内手摺装置を示す正面図である。
【図14】図13に示すかご内手摺装置のK−K断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ブラケット
2 ブラケット固定手段
3 手摺
4 アリ溝付レール、
4a 突起部
5 把持部
6 皿ネジ
7 支柱
8 手摺固定手段
9 固定座
10 取付座
11 固定ネジ
12 ネジ座
13 皿ネジ
14 回転式ナット
15 手摺固定ネジ
16 フランジ部
16a 貫通孔
17 ナット支持部
17a 長孔
18 ナット部
18a 軸
18b ネジ孔
18c 傾斜面
19 壁パネル
20 カバー
21 押えゴム
22 取付用座板
23 皿ネジ
24 補強板
25 ブラケット
26 手摺
27 壁パネル
27a 取付孔
28 固定用座金
29 取付ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご室内の所定高さに配置された手摺と、
前記手摺を支持するブラケットと、
前記ブラケットに設けられ、取付孔が形成された固定座と、
かご室の壁パネルに形成された取付孔にかご室内から挿入され、前記壁パネルの取付孔よりも大きなフランジ部がかご室内に、ネジ孔が形成されたナット部が、前記壁パネルの取付孔を通って前記壁パネルの裏側に配置されたナット手段と、
前記固定座が前記フランジ部を覆うように前記壁パネルに宛がわれた状態で、前記固定座の取付孔にかご室内から挿入され、前記壁パネルの裏側で前記ナット部のネジ孔に締め付けられた手摺固定ネジと、
を備え、
前記フランジ部と前記ナット部とによって前記壁パネルが、また、前記フランジ部と前記手摺固定ネジとによって前記固定座が挟持されることにより、前記ナット手段及び前記ブラケットが、前記壁パネルにそれぞれ固定されたことを特徴とするエレベータのかご内手摺装置。
【請求項2】
手摺の長手に沿って設けられたレールと、
ブラケットに設けられ、前記レールに沿ってスライド自在で、且つ前記手摺の任意の位置に固定自在な手摺固定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかご内手摺装置。
【請求項3】
手摺固定ネジは、特殊工具によってのみ締結及び弛緩できる所定の形状を呈することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータのかご内手摺装置。
【請求項4】
固定座及び手摺固定ネジをかご室内から覆うカバーと、
を備え、
前記カバーは、一般工具では取り外すことができない所定の方法によって固定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータのかご内手摺装置。
【請求項5】
エレベータのかご室の壁パネルに、かご室内から取付孔を形成するステップと、
前記壁パネルの取付孔にかご室内からナット手段を挿入して、前記壁パネルの取付孔よりも大きなフランジ部をかご室内に、ネジ孔が形成されたナット部を前記壁パネルの裏側に配置するステップと、
手摺を支持するブラケットに、取付孔が形成された固定座を固定するステップと、
前記フランジ部を覆うように前記固定座を前記壁パネルに宛がい、前記固定座の取付孔にかご室内から手摺固定ネジを挿入して、前記手摺固定ネジを前記壁パネルの裏側で前記ナット部のネジ孔に締め付けるステップと、
前記手摺固定ネジの締め付けにより、前記フランジ部と前記ナット部とによって前記壁パネルを、また、前記フランジ部と前記手摺固定ネジとによって前記固定座を狭持し、前記ナット手段及び前記ブラケットを前記壁パネルにそれぞれ固定するステップと、
を備えたことを特徴とするエレベータのかご内手摺装置の取付方法。
【請求項6】
エレベータのかご室の壁パネルに、かご室内から第1の取付孔を形成するステップと、
前記壁パネルに第1の取付孔を形成した後、この第1の取付孔に近接する位置に、第2の取付孔を形成するステップと、
前記壁パネルの第2の取付孔にかご室内からナット手段を挿入して、前記壁パネルの第2の取付孔よりも大きなフランジ部をかご室内に、ネジ孔が形成されたナット部を前記壁パネルの裏側に配置するステップと、
手摺を支持するブラケットに、取付孔が形成された固定座を固定するステップと、
前記壁パネルの第1の取付孔及び前記フランジ部を覆うように前記固定座を前記壁パネルに宛がい、前記固定座の取付孔にかご室内から手摺固定ネジを挿入して、前記手摺固定ネジを前記壁パネルの裏側で前記ナット部のネジ孔に締め付けるステップと、
前記手摺固定ネジの締め付けにより、前記フランジ部と前記ナット部とによって前記壁パネルを、また、前記フランジ部と前記手摺固定ネジとによって前記固定座を狭持し、前記ナット手段及び前記ブラケットを前記壁パネルにそれぞれ固定するステップと、
を備えたことを特徴とするエレベータのかご内手摺装置の取付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−285253(P2008−285253A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130272(P2007−130272)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】