エレベータのガイド装置
【課題】乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる、エレベータのガイド装置を提供すること。
【解決手段】エレベータのガイド装置51は、ガイドレール9に当接して転動するように設けられたコロ57と、コロ57を転動自在に支持する支持体55とを備える。支持体55には、コロ57の外表面と摺動してコロ57に摺動抵抗を付与する摺動受け部65が設けられている。
【解決手段】エレベータのガイド装置51は、ガイドレール9に当接して転動するように設けられたコロ57と、コロ57を転動自在に支持する支持体55とを備える。支持体55には、コロ57の外表面と摺動してコロ57に摺動抵抗を付与する摺動受け部65が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのガイド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、上下に延びる昇降路と、その中を移動可能に設けられた乗りかごとを備えている。主索に吊り下げられた乗りかごは、昇降路に立設されたガイドレールに案内されて昇降する。特許文献1に例示されるように、乗りかごは、樹脂製のシューを介してガイドレールと接触し、振動や騒音を軽減して滑らかに昇降するように案内される。また、そのような軽減効果を得るべく、樹脂製シューには、ガイドレールとの接触により摩擦や摩耗が大きくならないように給油器から液体潤滑油が常時給油されている。
【0003】
しかしながら、潤滑油は、夏季と冬季とでその粘度が変化するため、夏季には過給油状態に注意し、冬季には給油不足状態に注意する必要があり、管理が容易ではなかった。また、過給油状態が生じると、潤滑油がシューの周辺に飛散し昇降路内を汚してしまったり、油受け器に多量の油が溜るので頻繁に廃油処理を行う必要があり非常に手間が掛かったりしていた。一方、給油不足状態が生じると、シューとレールとの間の摩擦が増加し、振動が大きくなるなど不具合が生じてしまう恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−224515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる、エレベータのガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明のエレベータのガイド装置は、レールに当接して転動するように設けられた転動体と、前記転動体を転動自在に支持する支持体とを備え、前記支持体には、前記転動体の外表面と摺動して該転動体に摺動抵抗を付与する摺動受け部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエレベータのガイド装置によれば、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係るガイド装置が適用されるエレベータを示す図である。
【図2】図1のII−II線からみた平面図である。
【図3】実施の形態1に関し転動体及び支持体の構成を示す図である。
【図4】実施の形態2に関する図3と同態様の図である。
【図5】実施の形態3に関する図3と同態様の図である。
【図6】実施の形態4に関する図3とほぼ同態様の図である。
【図7】実施の形態5に関する図2とほぼ同態様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るエレベータのガイド装置の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係るガイド装置が適用されるエレベータを示す図である。エレベータ1は、上下に延びる昇降路3と、その中を移動可能に設けられた乗りかご5とを備えている。主索7に吊り下げられた乗りかご5は、昇降路3内に設けられたガイドレール9に案内されて昇降する。昇降路3の底部のピット床11上にはレール台13が設けられており、ガイドレール9は、レール台13の上に立設されている。
【0011】
ガイド装置51は、ガイドレール9毎に、乗りかご5の上部と下部とに設けられている。図2は、図1のII−II線からみた平面図である。図3は、後述する転動体及び支持体に関し、図2の矢印IIIからみた面を正面にとり、その正面、側面、底面を示す図である。
【0012】
ガイド装置51は、ガイドレール9に当接して転動するように設けられた転動体53と、転動体53を転動自在に支持する支持体55とを備える。本実施の形態では、転動体53は、円柱状回転体として構成されたコロ57である。
【0013】
ガイド装置51は、本実施の形態では、図2に示されるように、ガイドレール9の突条部先端の三面に対応して、その三面を取り囲むように平面視コ字状をなしている。そして、コロ57は、三面の各面に対応するように、三列に配列されており、各列に関し、図3に示されるように、複数のコロ57が上下に並べられて設けられている。同様に、支持体55もまた、三面の各面に対応するように、各列の複数のコロ57を支持するように、三つ設けられている。
【0014】
以下、図3を中心に、一つの列を代表にとってガイド装置の詳細を説明する。まず、支持体55は、ガイドレール側に配置される押え部59とその反対側に配置される受け部61とからなる二分割構造を有している。そして、複数のコロ57は、これら押え部59及び受け部61に挟まれるように支持されている。一例として、押え部59と受け部61とは、複数のコロ57を内蔵させた後、接着剤により接着するか、あるいは、超音波によって溶着することができる。
【0015】
押え部59及び受け部61が組み合わされた支持体55には、各コロ57に対応する保持空間63が設けられている。保持空間63は、コロ57が支持体55から抜け落ちないようにコロ57を芯無し態様で保持する空間であり、コロ57は、この保持空間63に収容されて支持されている。
【0016】
また、支持体55には、コロ57の外表面と摺動してコロ57に対して摺動抵抗を付与する摺動受け部65が設けられている。摺動受け部65は、支持体55における保持空間63を画定する部分で構成されている。本実施の形態では、摺動受け部65は、コロ57においてガイドレールと当接する側と逆側の外表面部分が当たる部分であり、受け部61における図3でみて円弧状の凹曲面部である。
【0017】
さらに、本実施の形態では、一例として、摺動受け部65におけるコロ57の軸方向中央広域に、逃がし凹所67が形成されている。すなわち、逃がし凹所67があることによって、コロ57と摺動受け部65との間では、コロ57の軸方向全幅にわたった当接が確保されていない部分が存在するようになっている。これは、円柱状であるコロ57の軸方向全幅にわたって摺動受け部65と当接されるように構成されていると、コロ57の回転が乱れることがありうるので、コロ57が円柱状であっても芯無し態様できれいに回転させるためのものである。
【0018】
支持体55は、レール対向側に、転動体を部分的に突出させる複数の矩形の窓69を有する。これらの窓69は、コロ57毎に対応して設けられている。また、支持体55におけるコロ57を露出させている縁部すなわち窓69を画定している上下の縁部には、コロ57の外表面に沿って鋭角的に延びるリップ部71が形成されている。なお、窓69は、コロ57がガイドレール側に抜け落ちない程度の大きさに設定されている。
【0019】
さらに、各部の材質について説明する。まず、支持体55の材質としては、摩擦抵抗を抑えた樹脂が適しており、より好適には、含油樹脂で構成することができる。具体的には、比較的安価な態様の一例として、ポリエチレンに潤滑油を含浸させたタイプの樹脂を挙げることができる。
【0020】
一方、コロ57の材質としては、含油樹脂による支持体との組合せでは、潤滑油分が十分になくても実用可能なナイロンやポリエチレンを挙げることができる。さらに、対向するガイドレール側に極力、潤滑油分を持ち込みたくない場合には、ほぼ無潤滑下でも摩擦抵抗を減らすことができるものとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはシリコーンを例えば含浸等によって含むような材料を挙げることができる。
【0021】
次に、本実施の形態に係るエレベータのガイド装置の作用について説明する。ガイドレール、転動体及び摺動受け部の摩擦特性の関係は、
ガイドレール及び転動体間の摩擦係数>転動体及び摺動受け部間の摩擦係数
となるように構成される。具体例を挙げるなら、表面が20μm程度の粗さに機械加工されたガイドレール9と、コロ57との接触による摩擦係数は、0.15〜0.2程度になり、一方、コロ57と摺動受け部65との間の摩擦係数は、0.1程度になるように構成されている。
【0022】
このため、ガイドレール、転動体及び摺動受け部の接触態様は、
ガイドレールと転動体との間:転がり接触
転動体と摺動受け部との間:すべり接触
となり、乗りかご5が昇降すると、コロ57は、摺動受け部65に対してはすべりながら、ガイドレール9に対してはすべることなく回転する。よって、ガイドレール9とコロ57との間には液体潤滑油を供給しなくても、コロ57は、ガイドレール9によって摩耗することが殆ど無く機能する。また、このようにガイドレール9との接触態様が低摩擦化・低摩耗化されているので、コロ57が乗りかご5昇降方向と角度をもって走行(横滑り)した場合にも、鳴き音の発生が抑制されている。
【0023】
なお、これに関しては、上述した特許文献1のような固定タイプの樹脂製シューに潤滑剤を含浸させて用い潤滑油を省く態様も想定できるが、むしろ、樹脂製シューの摩耗が増加して早期に交換を要したり、ガイドレールとシューとの間の摩擦が増加して鳴き音を生じたりする問題が起こりうる。また、鋼板を成型したガイドレールや長期間使用して表面が鏡面化したガイドレールの場合は、静止摩擦係数の増加による鳴き音の発生がより顕著になる恐れがある。一方、本実施の形態では、コロがガイドレールと転動態様で当接するので、このような問題も生じない。
【0024】
また、本実施の形態では、コロ57は、摺動受け部65に対してはすべりながら、ガイドレール9に対してはすべることなく回転することから、次のようなダンピング効果が得られる。乗りかご5が停止し利用者が乗降するときには、その重量の変化に起因しコロ57がガイドレール9に対して微小回転することによってコロ57が摺動受け部65に対して僅かにすべり、このすべり抵抗によるダンピング効果を得ることができるので、乗りかご5でふわふわした揺れを生じることを抑え、乗降する利用者に不安感や不快感を与えることがない。
【0025】
なお、これに関しては、本実施の形態との比較例として、ベアリング支持態様のローラをガイドレールに対して当接させた態様を想定できるが、かかる比較例では、乗りかご停止中にはローラとガイドレールとの摩擦が十分に得られず、利用者が乗降するたびに乗りかごがフワフワと揺れることとなり、利用者に不安感等を与えることとなる。本実施の形態は、このような単にローラを設けたものとも異なり、コロは摺動受け部からすべり抵抗を受けるので、上記のような問題を生じることもない。
【0026】
また、乗りかご5が昇降することで回転するコロ57は、乗りかご5が昇降中は、潤滑油膜で低い摩擦係数となるが、乗りかご5が停止中は潤滑油膜が殆ど形成されないため、摩擦係数が大きくなる特性がある。この油膜は、表面粗さが粗く硬い金属製のガイドレール9側では形成されにくく、そのため、ガイドレール9とコロ57との摩擦係数は、摺動受け部65の摩擦係数よりも常に高い値となり、コロ57がガイドレール9の表面を滑りにくいようになっている。これによっても、コロ57には、摺動受け部65によるすべり抵抗が十分に作用し、上記のダンピング効果をより確かなものとしている。
【0027】
以上のように、本実施の形態に係るエレベータのガイド装置によれば、ガイドレールと転動態様で当接するので、レールとガイド装置との間に液体潤滑油を供給しなくても振動や騒音を抑制することができ、尚且つ、液体潤滑油に依拠しないことで、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。加えて、転動体には外表面への摺動抵抗に起因したダンピング作用が付与されるので、転動体を用いて上記の油汚れ・廃油処理の減少効果を得ていながらも、利用者の乗り降り時にかご床がフワフワと振動することも抑制することが可能となっている。
【0028】
さらに、ベアリングなどを介在させない芯無し態様で支持し且つ保持空間の画定部が摺動受け部として機能するので、転動体を用いておりながら装置の大型化を避けることができ、ひいては、昇降路・エレベータの大型化を避けることができる。また、芯無し態様による支持により、レールと転動体とは転動接触、転動体と摺動受け部とは摺動接触という複雑な関係を含んでおりながら、転動体やその組み立て構成に関して、各部の精度や位置の自由度を保持することができる。また、それによって、ガイド時、ガイドレールに対する転動体の追従性を高めることもできる。
【0029】
また、支持体は、含油樹脂で構成されているので、液体潤滑油を用いなくても、転動体に対して摩擦を抑えた適正な摺動抵抗を与えることができる。さらに、転動体は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはシリコーンを含有する円柱状回転体であるので、液体潤滑油を用いなくても、転動体とガイドレールとの摩擦を適正に低減することができる。
【0030】
また、支持体における転動体を露出させている縁部には、転動体の外表面に沿って鋭角的に延びるリップ部が形成されているので、転動体と支持体との間に異物が混入することを防止することができ、摺動抵抗の長期にわたる安定化を確保することができる。
【0031】
転動体が円柱状回転体であり、支持体は、押え部と受け部とからなる二分割構造を有しており、転動体が押え部及び受け部に挟まれるようにして支持されているので、転動体を、容易に芯無し態様で回転可能に保持できる。
【0032】
実施の形態2.
次に、図4に基づいて、本発明の実施の形態2について説明する。図4は、実施の形態2に関する図3と同態様の図である。本実施の形態2は、以下に説明する部分を除いては、上記実施の形態1と同様であるものとする。本実施の形態の支持体155は、本体部155aと、複数の蓋部155bとを備えている。コロ57は、矢印IVに示されるように、その回転軸方向から本体部155aに挿入されている。すなわち、本体部155aには、個々のコロ57に対応した保持空間63と、その保持空間63への出入りを許容する開口173とが設けられており、各開口173は、対応する蓋部155bによって開放・閉塞される。
【0033】
支持体155には、コロ57の外表面と接触するように軟固体潤滑剤が封入されており、具体的一例として、本実施の形態では、保持空間63にグリース175が封入されている。
【0034】
このような本実施の形態2によっても、実施の形態1と同様、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。また、転動体は、その回転軸方向から支持体に挿入されるので、円柱状回転体を、容易に芯無し態様で回転可能に保持できる。さらに、本実施の形態2によれば、支持体に、転動体の外表面と接触する軟固体潤滑剤が封入されているので、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることが可能でありながら、長期間にわたって潤滑性能やダンピング性能を維持することができる。
【0035】
実施の形態3.
次に、図5に基づいて、本発明の実施の形態3について説明する。図5は、実施の形態3に関する図3と同態様の図である。本実施の形態3は、以下に説明する部分を除いては、上記実施の形態1と同様であるものとする。本実施の形態の支持体255は、ワンピース構造を有しており、レール対向側259に、コロ57を部分的に突出させる窓69を有し、且つ、レール対向側との逆側261を湾曲内側とする弧状に湾曲可能に形成されている。また、窓69を画定している縁部には、後述するコロ57の挿入方向にほぼ沿って延びる挿入口277が設けられている。コロ57は、まず、支持体255を矢印Aに示されるようにレール対向側との逆側261を湾曲内側とする弧状に湾曲させ、それによって、窓69(挿入口277)が僅かに広がった状態で、矢印Bに示されるように、ガイドレール側から保持空間63内へと挿入される。
【0036】
このような本実施の形態3によっても、実施の形態1と同様、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。また、転動体を、容易に芯無し態様で回転可能に保持でき、さらに、弧状に湾曲させた状態で転動体を窓から挿入できるので、支持体をワンピース構造にすることができる。
【0037】
実施の形態4.
次に、図6に基づいて、本発明の実施の形態4について説明する。図6は、実施の形態4に関する図3と同態様の図である。本実施の形態4は、以下に説明する部分を除いては、上記実施の形態1と同様であるものとする。本実施の形態の支持体355は、本体部355aと、突片部355bとを備えている。個々のコロ57に対応した保持空間63は、左右両側方(コロ57の回転軸両端側)と後方(ガイドレール9と逆側)とを本体部355aによって画定され、上方及び下方を突片部355bによって画定される。また、個々の保持空間63内には、グリース175が充填されている。
【0038】
突片部355bは、ガイドレール9に向けて延び且つコロ57を上下いずれかから支持しており、本実施の形態では、上下に並んだ隣り合う保持空間63を区切るように機能している。突片部355bの先端部には、実施の形態1と同様、リップ部71が設けられている。突片部355bの左右両側の側面379は、その外側に位置する本体部355aの対応部分とは、切り込み381により分離して形成されている。これにより、突片部355bの先端は、上下方向に湾曲可能に形成されている。このような突片部355bの存在に起因し、コロ57は次のようにして挿入される。まず、突片部355bの先端を、矢印Aに示されるように湾曲させ、挿入対象の保持空間63を広げておいて、ガイドレール側からコロ57を保持空間63へと挿入する。
【0039】
このような本実施の形態4によっても、実施の形態1と同様、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。また、転動体を、容易に芯無し態様で回転可能に保持でき、突片部の湾曲で保持空間の入口を広げられるので、支持体をワンピース構造にすることができる。さらに、支持体全体を湾曲させなくても、目的の部分だけ湾曲させれば済むので、コロ挿入が大掛かりにならない。また、支持体全体を湾曲させなくても済むので、グリース注入・及びその後のグリース保持もより簡単且つ確実である。さらに、突片部そのものを湾曲させるので、保持空間への挿入経路が大きくとれ、よって、挿入を阻害することなくリップも設けられる。
【0040】
実施の形態5.
次に、図7に基づいて、本発明の実施の形態5について説明する。図7の(a)は、実施の形態5に関する図2と同態様の図であり、図7の(b)は、(a)のVII−VII線にそってコロの支持態様を示す図である。本実施の形態5は、以下に説明する部分を除いては、上記実施の形態1と同様であるものとする。
【0041】
本実施の形態5の支持体455は、押え部459と受け部461とからなる二分割構造を有している。なお、押え部459及び受け部461は、実施の形態1の押え部59及び受け部61と同様な材質でよい。押え部459は、平面視コ字状をなしており、受け部461は、平面視、押え部459の外側においてコ字状をなしている。各コロ57は、押え部459に設けられた上下に並ぶ保持空間63に抜け落ちないように挿入されている。コロ57は、保持空間63で転動自在であり、且つ、受け部461の内側面である摺動受け部65によって、摺動抵抗を受けている点は、上記実施の形態と同様である。
【0042】
このような本実施の形態5によっても、実施の形態1と同様、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。さらに加えて、ガイドレールの3面に対して転動体を機能させる構成に関し、3面分全体でみて二つのパーツで構成することができ、3面分の転動体を一体的に配設・除去することができ、さらに、3面分全体でみて支持体の組み立て・分解が容易にできる利点もある。
【0043】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0044】
例えば、転動体の形態は、円柱状に限定されず、球体で実施することも可能である。また、グリースの有無やリップ部の有無は、上記実施の形態の例で限定させるものではなく、前述した実施の形態それぞれで、それらの有無を適宜改変することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
51 ガイド装置、53 転動体、55,155,255,355,455 支持体、57 コロ、59,459 押え部、61,461 受け部、63 保持空間、65 摺動受け部、69 窓、71 リップ部、175 グリース、355b 突片部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのガイド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、上下に延びる昇降路と、その中を移動可能に設けられた乗りかごとを備えている。主索に吊り下げられた乗りかごは、昇降路に立設されたガイドレールに案内されて昇降する。特許文献1に例示されるように、乗りかごは、樹脂製のシューを介してガイドレールと接触し、振動や騒音を軽減して滑らかに昇降するように案内される。また、そのような軽減効果を得るべく、樹脂製シューには、ガイドレールとの接触により摩擦や摩耗が大きくならないように給油器から液体潤滑油が常時給油されている。
【0003】
しかしながら、潤滑油は、夏季と冬季とでその粘度が変化するため、夏季には過給油状態に注意し、冬季には給油不足状態に注意する必要があり、管理が容易ではなかった。また、過給油状態が生じると、潤滑油がシューの周辺に飛散し昇降路内を汚してしまったり、油受け器に多量の油が溜るので頻繁に廃油処理を行う必要があり非常に手間が掛かったりしていた。一方、給油不足状態が生じると、シューとレールとの間の摩擦が増加し、振動が大きくなるなど不具合が生じてしまう恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−224515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる、エレベータのガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明のエレベータのガイド装置は、レールに当接して転動するように設けられた転動体と、前記転動体を転動自在に支持する支持体とを備え、前記支持体には、前記転動体の外表面と摺動して該転動体に摺動抵抗を付与する摺動受け部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエレベータのガイド装置によれば、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係るガイド装置が適用されるエレベータを示す図である。
【図2】図1のII−II線からみた平面図である。
【図3】実施の形態1に関し転動体及び支持体の構成を示す図である。
【図4】実施の形態2に関する図3と同態様の図である。
【図5】実施の形態3に関する図3と同態様の図である。
【図6】実施の形態4に関する図3とほぼ同態様の図である。
【図7】実施の形態5に関する図2とほぼ同態様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るエレベータのガイド装置の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係るガイド装置が適用されるエレベータを示す図である。エレベータ1は、上下に延びる昇降路3と、その中を移動可能に設けられた乗りかご5とを備えている。主索7に吊り下げられた乗りかご5は、昇降路3内に設けられたガイドレール9に案内されて昇降する。昇降路3の底部のピット床11上にはレール台13が設けられており、ガイドレール9は、レール台13の上に立設されている。
【0011】
ガイド装置51は、ガイドレール9毎に、乗りかご5の上部と下部とに設けられている。図2は、図1のII−II線からみた平面図である。図3は、後述する転動体及び支持体に関し、図2の矢印IIIからみた面を正面にとり、その正面、側面、底面を示す図である。
【0012】
ガイド装置51は、ガイドレール9に当接して転動するように設けられた転動体53と、転動体53を転動自在に支持する支持体55とを備える。本実施の形態では、転動体53は、円柱状回転体として構成されたコロ57である。
【0013】
ガイド装置51は、本実施の形態では、図2に示されるように、ガイドレール9の突条部先端の三面に対応して、その三面を取り囲むように平面視コ字状をなしている。そして、コロ57は、三面の各面に対応するように、三列に配列されており、各列に関し、図3に示されるように、複数のコロ57が上下に並べられて設けられている。同様に、支持体55もまた、三面の各面に対応するように、各列の複数のコロ57を支持するように、三つ設けられている。
【0014】
以下、図3を中心に、一つの列を代表にとってガイド装置の詳細を説明する。まず、支持体55は、ガイドレール側に配置される押え部59とその反対側に配置される受け部61とからなる二分割構造を有している。そして、複数のコロ57は、これら押え部59及び受け部61に挟まれるように支持されている。一例として、押え部59と受け部61とは、複数のコロ57を内蔵させた後、接着剤により接着するか、あるいは、超音波によって溶着することができる。
【0015】
押え部59及び受け部61が組み合わされた支持体55には、各コロ57に対応する保持空間63が設けられている。保持空間63は、コロ57が支持体55から抜け落ちないようにコロ57を芯無し態様で保持する空間であり、コロ57は、この保持空間63に収容されて支持されている。
【0016】
また、支持体55には、コロ57の外表面と摺動してコロ57に対して摺動抵抗を付与する摺動受け部65が設けられている。摺動受け部65は、支持体55における保持空間63を画定する部分で構成されている。本実施の形態では、摺動受け部65は、コロ57においてガイドレールと当接する側と逆側の外表面部分が当たる部分であり、受け部61における図3でみて円弧状の凹曲面部である。
【0017】
さらに、本実施の形態では、一例として、摺動受け部65におけるコロ57の軸方向中央広域に、逃がし凹所67が形成されている。すなわち、逃がし凹所67があることによって、コロ57と摺動受け部65との間では、コロ57の軸方向全幅にわたった当接が確保されていない部分が存在するようになっている。これは、円柱状であるコロ57の軸方向全幅にわたって摺動受け部65と当接されるように構成されていると、コロ57の回転が乱れることがありうるので、コロ57が円柱状であっても芯無し態様できれいに回転させるためのものである。
【0018】
支持体55は、レール対向側に、転動体を部分的に突出させる複数の矩形の窓69を有する。これらの窓69は、コロ57毎に対応して設けられている。また、支持体55におけるコロ57を露出させている縁部すなわち窓69を画定している上下の縁部には、コロ57の外表面に沿って鋭角的に延びるリップ部71が形成されている。なお、窓69は、コロ57がガイドレール側に抜け落ちない程度の大きさに設定されている。
【0019】
さらに、各部の材質について説明する。まず、支持体55の材質としては、摩擦抵抗を抑えた樹脂が適しており、より好適には、含油樹脂で構成することができる。具体的には、比較的安価な態様の一例として、ポリエチレンに潤滑油を含浸させたタイプの樹脂を挙げることができる。
【0020】
一方、コロ57の材質としては、含油樹脂による支持体との組合せでは、潤滑油分が十分になくても実用可能なナイロンやポリエチレンを挙げることができる。さらに、対向するガイドレール側に極力、潤滑油分を持ち込みたくない場合には、ほぼ無潤滑下でも摩擦抵抗を減らすことができるものとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはシリコーンを例えば含浸等によって含むような材料を挙げることができる。
【0021】
次に、本実施の形態に係るエレベータのガイド装置の作用について説明する。ガイドレール、転動体及び摺動受け部の摩擦特性の関係は、
ガイドレール及び転動体間の摩擦係数>転動体及び摺動受け部間の摩擦係数
となるように構成される。具体例を挙げるなら、表面が20μm程度の粗さに機械加工されたガイドレール9と、コロ57との接触による摩擦係数は、0.15〜0.2程度になり、一方、コロ57と摺動受け部65との間の摩擦係数は、0.1程度になるように構成されている。
【0022】
このため、ガイドレール、転動体及び摺動受け部の接触態様は、
ガイドレールと転動体との間:転がり接触
転動体と摺動受け部との間:すべり接触
となり、乗りかご5が昇降すると、コロ57は、摺動受け部65に対してはすべりながら、ガイドレール9に対してはすべることなく回転する。よって、ガイドレール9とコロ57との間には液体潤滑油を供給しなくても、コロ57は、ガイドレール9によって摩耗することが殆ど無く機能する。また、このようにガイドレール9との接触態様が低摩擦化・低摩耗化されているので、コロ57が乗りかご5昇降方向と角度をもって走行(横滑り)した場合にも、鳴き音の発生が抑制されている。
【0023】
なお、これに関しては、上述した特許文献1のような固定タイプの樹脂製シューに潤滑剤を含浸させて用い潤滑油を省く態様も想定できるが、むしろ、樹脂製シューの摩耗が増加して早期に交換を要したり、ガイドレールとシューとの間の摩擦が増加して鳴き音を生じたりする問題が起こりうる。また、鋼板を成型したガイドレールや長期間使用して表面が鏡面化したガイドレールの場合は、静止摩擦係数の増加による鳴き音の発生がより顕著になる恐れがある。一方、本実施の形態では、コロがガイドレールと転動態様で当接するので、このような問題も生じない。
【0024】
また、本実施の形態では、コロ57は、摺動受け部65に対してはすべりながら、ガイドレール9に対してはすべることなく回転することから、次のようなダンピング効果が得られる。乗りかご5が停止し利用者が乗降するときには、その重量の変化に起因しコロ57がガイドレール9に対して微小回転することによってコロ57が摺動受け部65に対して僅かにすべり、このすべり抵抗によるダンピング効果を得ることができるので、乗りかご5でふわふわした揺れを生じることを抑え、乗降する利用者に不安感や不快感を与えることがない。
【0025】
なお、これに関しては、本実施の形態との比較例として、ベアリング支持態様のローラをガイドレールに対して当接させた態様を想定できるが、かかる比較例では、乗りかご停止中にはローラとガイドレールとの摩擦が十分に得られず、利用者が乗降するたびに乗りかごがフワフワと揺れることとなり、利用者に不安感等を与えることとなる。本実施の形態は、このような単にローラを設けたものとも異なり、コロは摺動受け部からすべり抵抗を受けるので、上記のような問題を生じることもない。
【0026】
また、乗りかご5が昇降することで回転するコロ57は、乗りかご5が昇降中は、潤滑油膜で低い摩擦係数となるが、乗りかご5が停止中は潤滑油膜が殆ど形成されないため、摩擦係数が大きくなる特性がある。この油膜は、表面粗さが粗く硬い金属製のガイドレール9側では形成されにくく、そのため、ガイドレール9とコロ57との摩擦係数は、摺動受け部65の摩擦係数よりも常に高い値となり、コロ57がガイドレール9の表面を滑りにくいようになっている。これによっても、コロ57には、摺動受け部65によるすべり抵抗が十分に作用し、上記のダンピング効果をより確かなものとしている。
【0027】
以上のように、本実施の形態に係るエレベータのガイド装置によれば、ガイドレールと転動態様で当接するので、レールとガイド装置との間に液体潤滑油を供給しなくても振動や騒音を抑制することができ、尚且つ、液体潤滑油に依拠しないことで、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。加えて、転動体には外表面への摺動抵抗に起因したダンピング作用が付与されるので、転動体を用いて上記の油汚れ・廃油処理の減少効果を得ていながらも、利用者の乗り降り時にかご床がフワフワと振動することも抑制することが可能となっている。
【0028】
さらに、ベアリングなどを介在させない芯無し態様で支持し且つ保持空間の画定部が摺動受け部として機能するので、転動体を用いておりながら装置の大型化を避けることができ、ひいては、昇降路・エレベータの大型化を避けることができる。また、芯無し態様による支持により、レールと転動体とは転動接触、転動体と摺動受け部とは摺動接触という複雑な関係を含んでおりながら、転動体やその組み立て構成に関して、各部の精度や位置の自由度を保持することができる。また、それによって、ガイド時、ガイドレールに対する転動体の追従性を高めることもできる。
【0029】
また、支持体は、含油樹脂で構成されているので、液体潤滑油を用いなくても、転動体に対して摩擦を抑えた適正な摺動抵抗を与えることができる。さらに、転動体は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはシリコーンを含有する円柱状回転体であるので、液体潤滑油を用いなくても、転動体とガイドレールとの摩擦を適正に低減することができる。
【0030】
また、支持体における転動体を露出させている縁部には、転動体の外表面に沿って鋭角的に延びるリップ部が形成されているので、転動体と支持体との間に異物が混入することを防止することができ、摺動抵抗の長期にわたる安定化を確保することができる。
【0031】
転動体が円柱状回転体であり、支持体は、押え部と受け部とからなる二分割構造を有しており、転動体が押え部及び受け部に挟まれるようにして支持されているので、転動体を、容易に芯無し態様で回転可能に保持できる。
【0032】
実施の形態2.
次に、図4に基づいて、本発明の実施の形態2について説明する。図4は、実施の形態2に関する図3と同態様の図である。本実施の形態2は、以下に説明する部分を除いては、上記実施の形態1と同様であるものとする。本実施の形態の支持体155は、本体部155aと、複数の蓋部155bとを備えている。コロ57は、矢印IVに示されるように、その回転軸方向から本体部155aに挿入されている。すなわち、本体部155aには、個々のコロ57に対応した保持空間63と、その保持空間63への出入りを許容する開口173とが設けられており、各開口173は、対応する蓋部155bによって開放・閉塞される。
【0033】
支持体155には、コロ57の外表面と接触するように軟固体潤滑剤が封入されており、具体的一例として、本実施の形態では、保持空間63にグリース175が封入されている。
【0034】
このような本実施の形態2によっても、実施の形態1と同様、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。また、転動体は、その回転軸方向から支持体に挿入されるので、円柱状回転体を、容易に芯無し態様で回転可能に保持できる。さらに、本実施の形態2によれば、支持体に、転動体の外表面と接触する軟固体潤滑剤が封入されているので、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることが可能でありながら、長期間にわたって潤滑性能やダンピング性能を維持することができる。
【0035】
実施の形態3.
次に、図5に基づいて、本発明の実施の形態3について説明する。図5は、実施の形態3に関する図3と同態様の図である。本実施の形態3は、以下に説明する部分を除いては、上記実施の形態1と同様であるものとする。本実施の形態の支持体255は、ワンピース構造を有しており、レール対向側259に、コロ57を部分的に突出させる窓69を有し、且つ、レール対向側との逆側261を湾曲内側とする弧状に湾曲可能に形成されている。また、窓69を画定している縁部には、後述するコロ57の挿入方向にほぼ沿って延びる挿入口277が設けられている。コロ57は、まず、支持体255を矢印Aに示されるようにレール対向側との逆側261を湾曲内側とする弧状に湾曲させ、それによって、窓69(挿入口277)が僅かに広がった状態で、矢印Bに示されるように、ガイドレール側から保持空間63内へと挿入される。
【0036】
このような本実施の形態3によっても、実施の形態1と同様、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。また、転動体を、容易に芯無し態様で回転可能に保持でき、さらに、弧状に湾曲させた状態で転動体を窓から挿入できるので、支持体をワンピース構造にすることができる。
【0037】
実施の形態4.
次に、図6に基づいて、本発明の実施の形態4について説明する。図6は、実施の形態4に関する図3と同態様の図である。本実施の形態4は、以下に説明する部分を除いては、上記実施の形態1と同様であるものとする。本実施の形態の支持体355は、本体部355aと、突片部355bとを備えている。個々のコロ57に対応した保持空間63は、左右両側方(コロ57の回転軸両端側)と後方(ガイドレール9と逆側)とを本体部355aによって画定され、上方及び下方を突片部355bによって画定される。また、個々の保持空間63内には、グリース175が充填されている。
【0038】
突片部355bは、ガイドレール9に向けて延び且つコロ57を上下いずれかから支持しており、本実施の形態では、上下に並んだ隣り合う保持空間63を区切るように機能している。突片部355bの先端部には、実施の形態1と同様、リップ部71が設けられている。突片部355bの左右両側の側面379は、その外側に位置する本体部355aの対応部分とは、切り込み381により分離して形成されている。これにより、突片部355bの先端は、上下方向に湾曲可能に形成されている。このような突片部355bの存在に起因し、コロ57は次のようにして挿入される。まず、突片部355bの先端を、矢印Aに示されるように湾曲させ、挿入対象の保持空間63を広げておいて、ガイドレール側からコロ57を保持空間63へと挿入する。
【0039】
このような本実施の形態4によっても、実施の形態1と同様、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。また、転動体を、容易に芯無し態様で回転可能に保持でき、突片部の湾曲で保持空間の入口を広げられるので、支持体をワンピース構造にすることができる。さらに、支持体全体を湾曲させなくても、目的の部分だけ湾曲させれば済むので、コロ挿入が大掛かりにならない。また、支持体全体を湾曲させなくても済むので、グリース注入・及びその後のグリース保持もより簡単且つ確実である。さらに、突片部そのものを湾曲させるので、保持空間への挿入経路が大きくとれ、よって、挿入を阻害することなくリップも設けられる。
【0040】
実施の形態5.
次に、図7に基づいて、本発明の実施の形態5について説明する。図7の(a)は、実施の形態5に関する図2と同態様の図であり、図7の(b)は、(a)のVII−VII線にそってコロの支持態様を示す図である。本実施の形態5は、以下に説明する部分を除いては、上記実施の形態1と同様であるものとする。
【0041】
本実施の形態5の支持体455は、押え部459と受け部461とからなる二分割構造を有している。なお、押え部459及び受け部461は、実施の形態1の押え部59及び受け部61と同様な材質でよい。押え部459は、平面視コ字状をなしており、受け部461は、平面視、押え部459の外側においてコ字状をなしている。各コロ57は、押え部459に設けられた上下に並ぶ保持空間63に抜け落ちないように挿入されている。コロ57は、保持空間63で転動自在であり、且つ、受け部461の内側面である摺動受け部65によって、摺動抵抗を受けている点は、上記実施の形態と同様である。
【0042】
このような本実施の形態5によっても、実施の形態1と同様、乗りかごガイドに伴う振動や騒音を抑制しながらも、昇降路内の油汚れや廃油処理を減少させることができる。さらに加えて、ガイドレールの3面に対して転動体を機能させる構成に関し、3面分全体でみて二つのパーツで構成することができ、3面分の転動体を一体的に配設・除去することができ、さらに、3面分全体でみて支持体の組み立て・分解が容易にできる利点もある。
【0043】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0044】
例えば、転動体の形態は、円柱状に限定されず、球体で実施することも可能である。また、グリースの有無やリップ部の有無は、上記実施の形態の例で限定させるものではなく、前述した実施の形態それぞれで、それらの有無を適宜改変することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
51 ガイド装置、53 転動体、55,155,255,355,455 支持体、57 コロ、59,459 押え部、61,461 受け部、63 保持空間、65 摺動受け部、69 窓、71 リップ部、175 グリース、355b 突片部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに当接して転動するように設けられた転動体と、
前記転動体を転動自在に支持する支持体とを備え、
前記支持体には、前記転動体の外表面と摺動して該転動体に摺動抵抗を付与する摺動受け部が設けられている
エレベータのガイド装置。
【請求項2】
前記支持体は、前記転動体が抜け落ちないように該転動体を芯無し態様で保持する保持空間を有しており、
前記摺動受け部は、前記支持体における、前記保持空間を画定する部分で構成されている
請求項1のエレベータのガイド装置。
【請求項3】
前記支持体は、含油樹脂で構成されている請求項1又は2のエレベータのガイド装置。
【請求項4】
前記支持体には、前記転動体の外表面と接触する軟固体潤滑剤が封入されている請求項1乃至3の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項5】
前記転動体は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはシリコーンを含有する円柱状回転体である請求項1乃至4の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項6】
前記支持体における前記転動体を露出させている縁部には、該転動体の外表面に沿って鋭角的に延びるリップ部が形成されている請求項1乃至5の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項7】
前記転動体は、円柱状回転体であり、
前記支持体は、押え部と受け部とからなる二分割構造を有しており、
前記転動体は、前記押え部及び前記受け部に挟まれるようにして支持されている
請求項1乃至6の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項8】
前記転動体は、円柱状回転体であり、
前記転動体は、その回転軸方向から前記支持体に挿入されている
請求項1乃至6の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項9】
前記支持体は、レール対向側に、前記転動体を部分的に突出させる窓を有し、且つ、前記レール対向側との逆側を湾曲内側とする弧状に湾曲可能に形成されている
請求項1乃至6の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項10】
前記支持体は、レールに向けて延び且つ前記転動体を上下いずれかから支持する突片部を有し、
前記突片部の先端は、上下方向に湾曲可能に形成されている
請求項1乃至6の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項11】
前記支持体は、押え部と受け部とからなる二分割構造を有しており、
前記押え部は、平面視コ字状をなしており、
前記受け部は、平面視、前記押え部の外側においてコ字状をなしている
請求項1乃至6の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項1】
レールに当接して転動するように設けられた転動体と、
前記転動体を転動自在に支持する支持体とを備え、
前記支持体には、前記転動体の外表面と摺動して該転動体に摺動抵抗を付与する摺動受け部が設けられている
エレベータのガイド装置。
【請求項2】
前記支持体は、前記転動体が抜け落ちないように該転動体を芯無し態様で保持する保持空間を有しており、
前記摺動受け部は、前記支持体における、前記保持空間を画定する部分で構成されている
請求項1のエレベータのガイド装置。
【請求項3】
前記支持体は、含油樹脂で構成されている請求項1又は2のエレベータのガイド装置。
【請求項4】
前記支持体には、前記転動体の外表面と接触する軟固体潤滑剤が封入されている請求項1乃至3の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項5】
前記転動体は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはシリコーンを含有する円柱状回転体である請求項1乃至4の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項6】
前記支持体における前記転動体を露出させている縁部には、該転動体の外表面に沿って鋭角的に延びるリップ部が形成されている請求項1乃至5の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項7】
前記転動体は、円柱状回転体であり、
前記支持体は、押え部と受け部とからなる二分割構造を有しており、
前記転動体は、前記押え部及び前記受け部に挟まれるようにして支持されている
請求項1乃至6の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項8】
前記転動体は、円柱状回転体であり、
前記転動体は、その回転軸方向から前記支持体に挿入されている
請求項1乃至6の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項9】
前記支持体は、レール対向側に、前記転動体を部分的に突出させる窓を有し、且つ、前記レール対向側との逆側を湾曲内側とする弧状に湾曲可能に形成されている
請求項1乃至6の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項10】
前記支持体は、レールに向けて延び且つ前記転動体を上下いずれかから支持する突片部を有し、
前記突片部の先端は、上下方向に湾曲可能に形成されている
請求項1乃至6の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【請求項11】
前記支持体は、押え部と受け部とからなる二分割構造を有しており、
前記押え部は、平面視コ字状をなしており、
前記受け部は、平面視、前記押え部の外側においてコ字状をなしている
請求項1乃至6の何れか一項のエレベータのガイド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−180164(P2012−180164A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43786(P2011−43786)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
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