説明

エレベータの乗場表示装置

【課題】既設のボックスに容易に設置することができるエレベータの乗場表示装置を得る。
【解決手段】ボックス1の開口部を塞ぐ化粧板3の裏面には、化粧板3の表面側からの操作により回転可能な主歯車13と、主歯車13の回転により互いに反対方向へボックス1の長手方向に沿って変位される一対の押さえ部材16,17とが支持されている。一対の押さえ部材16,17は、ボックス1の長手方向について対向する一対の対向面5,6に個別に接触する一対の接触部16a,17aと、接触部16a,17aに設けられ、主歯車13に噛み合う一対のラック部16b,17bとを有している。接触部16a,17aが互いに近づく方向への押さえ部材16,17の変位は、固定ねじ24,25で押さえ部材16,17が化粧板3に固定されることにより阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗場に設けられ、エレベータの運行状態を表示するエレベータの乗場表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表示器を交換する改修工事を行う場合、既設のボックスに新規の表示器を装着するために、伸縮可能な取付部材をボックス内に取り付け、この取付部材に表示器を取り付けたエレベータの乗場表示装置が提案されている。これにより、長さが異なるボックスに対しても、同一の取付部材によって表示器を装着することができる。この従来のエレベータの乗場表示装置では、既設のボックス内の長手方向両端部のそれぞれの近傍に一対の留金が取り付けられた後、各留金間の間隔に合わせて長さが調整された取付部材が各留金に取り付けられ、この取付部材に表示器が取り付けられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、既設のボックスに新規の表示器を装着するために、ばね式伸縮ポールをボックスの幅方向について突っ張らせてボックス内に保持し、ボックス内に保持されたばね式伸縮ポールに対して表示器を設けたエレベータの乗場表示装置も提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−131433号公報
【特許文献2】特開2004−244172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示されている従来のエレベータの乗場表示装置では、表示器を取り付ける前に、留金や取付部材をボックス内に取り付けなければならず、表示器の取り付け作業に手間がかかってしまう。
【0006】
また、特許文献2に示されている従来のエレベータの乗場表示装置でも、表示器を取り付ける前に、ばね式伸縮ポールをボックス内に突っ張らせる作業を行わなければならず、表示器の取り付け作業に手間がかかってしまう。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、既設のボックスに容易に設置することができるエレベータの乗場表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベータの乗場表示装置は、ボックスの開口部を塞ぐ化粧板と、化粧板に着脱可能に設けられ、エレベータの運行状態を表示する表示器とを有する表示装置本体、化粧板の裏面に支持され、化粧板の表面側からの操作により回転可能な主歯車、ボックスの内面のうち、ボックスの長手方向について対向する一対の対向面に個別に接触する一対の接触部と、各接触部に設けられ、主歯車に噛み合う一対のラック部とを有し、表示装置本体の裏面にそれぞれ支持され、主歯車の回転により、互いに反対方向へボックスの長手方向に沿って変位される一対の押さえ部材、及び各接触部が互いに近づく方向への各押さえ部材の変位を阻止する変位阻止装置を備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るエレベータの乗場表示装置では、化粧板の表面側からの操作により回転可能な主歯車と、主歯車に噛み合う一対の押さえ部材とが化粧板の裏面に支持され、主歯車の回転により互いに反対方向へ変位される各押さえ部材の接触部が一対の対向面に個別に接触するようになっているので、ボックスの開口部を化粧板で塞いだ状態で、化粧板をボックスに保持させる操作を行うことができる。これにより、ボックス内に留金等の部品を取り付ける作業をなくすことができ、化粧板をボックスに保持させる作業を容易に行うことができる。また、各押さえ部材の変位量が主歯車の回転に応じて決まるので、表示装置本体のボックスに対する位置決めを容易にかつより正確に行うことができる。従って、表示装置本体を既設のボックスに容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータの乗場表示装置を示す正面図である。
【図2】図1のエレベータの乗場表示装置を示す平面図である。
【図3】図1の表示装置本体がボックスに装着されているときのボックス内の状態を示す正面図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】図3のV-V線に沿った断面図である。
【図6】図3のVI-VI線に沿った断面図である。
【図7】図5の化粧板に対する押さえ部材の固定状態を示す拡大図である。
【図8】図1の化粧板を示す正面図である。
【図9】図3の各接触部間の間隔が最小になっているときの各主歯車、中間歯車及び各押さえ部材を示す正面図である。
【図10】図9の各接触部間の間隔が最大になっているときの各主歯車、中間歯車及び各押さえ部材を示す正面図である。
【図11】この発明の実施の形態2によるエレベータの乗場表示装置の構成を示す要部正面図である。
【図12】この発明の実施の形態2によるエレベータの乗場表示装置の化粧板を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータの乗場表示装置を示す正面図である。また、図2は、図1のエレベータの乗場表示装置を示す平面図である。図において、乗場の壁面には、ボックス1が埋設されている。ボックス1には、乗場へ開放された開口部1aが設けられている。ボックス1の形状は、上下方向についての寸法が水平方向についての寸法よりも大きい直方体状とされている。ボックス1には、表示装置本体2が装着されている。ボックス1の開口部1aは、表示装置本体2により塞がれている。
【0012】
表示装置本体2は、開口部1aを塞ぐ長方形状の化粧板3と、化粧板3に着脱可能に取り付けられ、エレベータの運行状態を表示する新規の表示器4とを有している。この例では、かごの位置、かごの移動方向及び操作釦の操作状態がエレベータの運行状態として表示器4に表示される。
【0013】
図3は、図1の表示装置本体2がボックス1に装着されているときのボックス1内の状態を示す正面図である。また、図4は図3のIV-IV線に沿った断面図、図5は図3のV-V線に沿った断面図、図6は図3のVI-VI線に沿った断面図である。図において、ボックス1の内面は、ボックス1の長手方向について対向する一対の長手方向対向面5,6と、ボックス1の幅方向について対向する一対の幅方向対向面7,8と、ボックス1の奥行き方向に対して垂直な背面9(図4、図5及び図6)とを有している。
【0014】
化粧板3の裏面には、固定金具(支持部材)10が固定されている。固定金具10は、表示装置本体2がボックス1に装着されることによりボックス1内に配置される。また、固定金具10は、化粧板3の裏面に対向する受け板部11と、受け板部11にそれぞれ設けられ、化粧板3の幅方向について互いに対向する一対のガイド部12とを有している。
【0015】
表示装置本体2がボックス1に装着されている状態では、各ガイド部12はボックス1の長手方向に沿って配置されている。また、各ガイド部12は、化粧板3の裏面に例えばねじ留め等によって取り付けられる取付部12aと、取付部12a及び受け板部11間に固定された側板部12bとを有している。従って、化粧板3の裏面と受け板部11との間の空間は、化粧板3の幅方向について各側板部12bにより挟まれている。
【0016】
受け板部11には、一対の主歯車13と、各主歯車13間に配置され、各主歯車13に噛み合う共通の中間歯車14とがそれぞれ回転自在に取り付けられている。これにより、各主歯車13及び中間歯車14は、化粧板3の裏面に支持されている。各主歯車13及び中間歯車14は、化粧板3の裏面と受け板部11との間に配置されている。
【0017】
各主歯車13は、各ガイド部12に沿った方向について互いに間隔を置いて配置されている。各主歯車13は、表示装置本体2がボックス1に装着されることにより、ボックス1の長手方向について互いに間隔を置いて配置される。各主歯車13の中心間距離は、各ガイド部12の長さよりも短くなっている。また、各主歯車13は、中間歯車14の回転により、中間歯車14とは逆方向へそれぞれ回転される。従って、各主歯車13は、同一方向へ回転される。各主歯車13の外径は同一とされている。
【0018】
中間歯車14は、化粧板3の長手方向及び幅方向のそれぞれについて化粧板3のほぼ中央に配置されている。中間歯車14の外径は、各主歯車13の外径よりも小さくされている。また、中間歯車14の中心には、各主歯車13及び中間歯車14を回転させるための操作具が挿入される嵌合穴15が設けられている。この例では、嵌合穴15として六角穴が用いられ、嵌合穴15に挿入される操作具として六角レンチが用いられている。
【0019】
化粧板3の裏面には、上下の長手方向対向面5,6に個別に接触する一対の板状の接触部16a,17aと、各接触部16a,17aに設けられ、各主歯車13に噛み合う一対のラック部16b,17bとを有する一対の押さえ部材16,17が変位可能に支持されている。一方の押さえ部材16は一方の接触部16a及び一方のラック部16bを有し、他方の押さえ部材17は他方の接触部17a及び他方のラック部17bを有している。
【0020】
各ラック部16b,17bは、ボックス1の長手方向に沿って配置されている。また、各ラック部16b,17bには、各主歯車13に噛み合う複数の歯がラック部16b,17bの長さ方向に沿って設けられている。各ラック部16b,17bは、中間歯車14から離して配置されている。
【0021】
一方のラック部16bは一方のガイド部12と各主歯車13との間に通され、他方のラック部17bは他方のガイド部12と各主歯車13との間に通されている。一方のラック部16bは各主歯車13の回転により一方のガイド部12に沿って案内され、他方のラック部17bは各主歯車13の回転により他方のガイド部12に沿って案内される。これにより、各押さえ部材16,17は、各主歯車13の回転により、互いに反対方向へボックス1の長手方向に沿って変位される。
【0022】
一方の接触部16aは、一方の押さえ部材16の変位により、上方に位置する長手方向対向面5に接離する。一方の接触部16aが長手方向対向面5に接触している状態では、接触部16aと長手方向対向面5との間に所定の摩擦力が発生する。他方の接触部17aは、他方の押さえ部材17の変位により、下方に位置する長手方向対向面6に接離する。他方の接触部17aが長手方向対向面6に接触している状態では、接触部17aと長手方向対向面6との間に所定の摩擦力が発生する。表示装置本体2は、各接触部16a,17aが各長手方向対向面5,6に接触した状態でボックス1に保持される。
【0023】
上方の長手方向対向面5にはボックス1の長手方向に沿って下方へ突出するスタッド18が設けられ、下方の長手方向対向面6にはボックス1の長手方向に沿って上方へ突出するスタッド19が設けられている。
【0024】
一方の接触部16aには、上方のスタッド18が緩く通されるスタッド通し穴20が設けられている。他方の接触部17aには、下方のスタッド19が緩く通されるスタッド通し穴21が設けられている。各スタッド通し穴20,21は、各接触部16a,17aを貫通している。この例では、図6に示すように、各スタッド通し穴20,21の断面形状が矩形状とされている。
【0025】
一方のラック部16bには、複数のねじ穴22がラック部16bの長さ方向へ等間隔に設けられている。他方のラック部17bには、複数のねじ穴23がラック部17bの長さ方向へ等間隔に設けられている。
【0026】
一方の押さえ部材16は、ねじ穴22に螺合された固定ねじ(変位阻止装置)24によって化粧板3に固定される。他方の押さえ部材17は、ねじ穴23に螺合された固定ねじ(変位阻止装置)25によって化粧板3に固定される。各接触部16a,17aが互いに近づく方向への各押さえ部材16,17の変位は、各押さえ部材16,17が固定ねじ24,25で化粧板3に固定されることにより阻止される。
【0027】
図7は、図5の化粧板3に対する押さえ部材16の固定状態を示す拡大図である。また、図8は、図1の化粧板3を示す正面図である。化粧板3には、一方の固定ねじ24が通されるねじ通し穴26と、他方の固定ねじ25が通されるねじ通し穴27と、各主歯車13及び中間歯車14を回転させるための操作具が挿入される操作用貫通孔28とが設けられている。各ねじ通し穴26,27及び操作用貫通孔28は、表示器4が化粧板3に取り付けられることにより、表示器4によって隠れるようになっている。
【0028】
一方のねじ通し穴26は各ねじ穴22が変位される範囲に応じた位置に配置され、他方のねじ通し穴27は各ねじ穴23が変位される範囲に応じた位置に配置されている。また、各ねじ通し穴26,27は、各押さえ部材16,17が変位される方向に沿った長穴とされている。各ねじ通し穴26,27の長さ方向の寸法は、各ねじ穴22,23の間隔よりも大きくされている。化粧板3の表面における各ねじ通し穴26,27の位置には、各ねじ通し穴26,27の開口部が形成された底面を持つ座ぐり(凹部)26a,27aが設けられている。一方の固定ねじ25の頭部は座ぐり26a内に収まり、他方の固定ねじ26の頭部は座ぐり27a内に収まっている。
【0029】
一方の押さえ部材16は、一方のねじ通し穴26に通された固定ねじ24が一方のねじ穴22に締め付けられることにより化粧板3の裏面に固定される。他方の押さえ部材17は、他方のねじ通し穴27に通された固定ねじ25が他方のねじ穴23に締め付けられることにより化粧板3の裏面に固定される。
【0030】
操作用貫通孔28は、化粧板3の厚さ方向について中間歯車14と重なる位置に配置されている。各主歯車13及び中間歯車14を回転させるための操作具は、操作用貫通孔28を通して化粧板3の表面側から裏面側へ達し、嵌合穴15に嵌められる。これにより、各主歯車13及び中間歯車14は、化粧板3の表面側からの操作により回転可能になっている。
【0031】
図9は、図3の各接触部16a,17a間の間隔が最小になっているときの各主歯車13、中間歯車14及び各押さえ部材16,17を示す正面図である。また、図10は、図9の各接触部16a,17a間の間隔が最大になっているときの各主歯車13、中間歯車14及び各押さえ部材16,17を示す正面図である。図9及び図10に示すように、各押さえ部材16,17が互いに反対方向へ変位されることにより、各接触部16a,17a間の間隔が調整される。各接触部16a,17a間の間隔の調整範囲は、各押さえ部材16,17の長さに応じて決まる。
【0032】
次に、表示装置本体2を既設のボックス1に装着するときの手順について説明する。化粧板3の裏面には、固定金具10、各主歯車13、中間歯車14及び各押さえ部材16,17をあらかじめ取り付けておく。また、表示器4は、化粧板3から外しておく。
【0033】
まず、各主歯車13を回しながら各押さえ部材16,17を変位させて各接触部16a,17a間の間隔を小さくしておく。この後、化粧板3の裏面をボックス1内に向けた状態でボックス1の開口部1aを化粧板3で塞ぐ。このとき、各押さえ部材16,17は、化粧板3に支持された状態でボックス1内に配置される。
【0034】
この後、六角レンチを操作用貫通孔28から挿入しながら、六角レンチを嵌合穴15に嵌める。この後、六角レンチを操作して中間歯車14及び各主歯車13を回し、各接触部16a,17aが互いに離れる方向へ各押さえ部材16,17を変位させる。
【0035】
この後、六角レンチを操作しながら各押さえ部材16,17をさらに変位させると、各接触部16a,17aが上下の長手方向対向面5,6に接触する。このとき、上方のスタッド18がスタッド通し穴20に挿入され、下方のスタッド19がスタッド通し穴21に挿入される。
【0036】
この後、各接触部16a,17aが各長手方向対向面5,6に接触する方向へ六角レンチの操作により力を加えた状態で、ねじ通し穴26,27のそれぞれを通して見えるねじ穴22,23に固定ねじ24,25をそれぞれ螺合して締め付ける。これにより、各押さえ部材16,17が化粧板3の裏面に固定され、化粧板3がボックス1に保持される。
【0037】
この後、化粧板3に表示器4を取り付ける。これにより、ボックス1に対する表示装置本体2の装着が完了する。
【0038】
このようなエレベータの乗場表示装置では、化粧板3の表面側からの操作により回転可能な主歯車13と、主歯車13に噛み合う一対の押さえ部材16,17とが化粧板3の裏面に支持され、主歯車13の回転により互いに反対方向へ変位される各押さえ部材16,17の接触部16a,17aが長手方向対向面5,6に個別に接触するようになっているので、ボックス1の開口部1aを化粧板3で塞いだ状態で、化粧板3をボックス1に保持させる操作を行うことができる。これにより、ボックス1内に留金等の部品を取り付ける作業をなくすことができ、化粧板3をボックス1に保持させる作業を容易に行うことができる。また、各押さえ部材16,17の変位量が主歯車13の回転に応じて決まるので、表示装置本体2のボックス1に対する位置決めを容易にかつより正確に行うことができる。従って、表示装置本体2を既設のボックス1に容易に設置することができる。
【0039】
また、ボックス1の長手方向に沿って突出するスタッド18,19が長手方向対向面5,6に設けられ、スタッド18,19が通されるスタッド通し穴20,21が接触部16a,17aに設けられているので、接触部16a,17aが長手方向対向面5,6に沿ってずれた場合であっても、接触部16a,17aがスタッド18,19に引っかかることにより、表示装置本体2がボックス1から外れることを防止することができる。
【0040】
また、化粧板3の裏面に固定金具10が固定されているので、各主歯車13、中間歯車14及び各押さえ部材16,17を表示装置本体2の裏面に簡単な構成で支持することができる。
【0041】
また、化粧板3には、各主歯車13を回転させるための操作具が挿入される操作用貫通孔28が設けられているので、ボックス1の開口部1aを化粧板3で塞いだ状態で各主歯車13を回転させる操作を容易に行うことができる。また、化粧板3の裏面に支持されている部品の一部が化粧板3の表面側に突出しない構造とすることができるので、部品の一部が化粧板3から突出することによる表示器4の構造の制約をなくすことができる。
【0042】
また、化粧板3の裏面には、ボックス1の長手方向について互いに間隔を置いて配置された一対の主歯車13と、各主歯車13に噛み合い、各ラック部16b,17bから離して配置された共通の中間歯車14とが回転自在に支持されているので、各ラック部16b,17bの配置される方向を各主歯車13によって規制することができ、各ラック部16b,17bをボックス1の長手方向へ安定して変位させることができる。
【0043】
実施の形態2.
実施の形態1では、化粧板3の裏面に各押さえ部材16,17を固定ねじ24,25で固定することにより、各接触部16a,17aが互いに近づく方向への各押さえ部材16,17の変位が阻止されるようになっているが、各接触部16a,17aが互いに離れる方向への各押さえ部材16,17の変位を許容し、各接触部16a,17aが互いに近づく方向への各押さえ部材16,17の変位を阻止するラチェット装置を化粧板3の裏面に設けてもよい。
【0044】
即ち、図11は、この発明の実施の形態2によるエレベータの乗場表示装置の構成を示す要部正面図である。図において、化粧板3の裏面には、一方の主歯車13の外周部に接触するラチェット装置(変位阻止装置)31が設けられている。ラチェット装置31は、主歯車13の正方向(図11では、時計回りの方向)への回転を許容することにより、各接触部16a,17aが互いに離れる方向への各押さえ部材16,17の変位を許容し、主歯車13の逆方向(図11では、反時計回りの方向)への回転を阻止することにより、各接触部16a,17aが互いに近づく方向への各押さえ部材16,17の変位を阻止する
【0045】
ラチェット装置31は、主歯車13の外周部の歯に係合する係合位置と主歯車13との係合が外れる解除位置との間で変位可能な爪32と、係合位置へ変位される方向へ爪32を付勢するばね(付勢体)33とを有している。
【0046】
爪32は、受け板部11に設けられたピン34を中心に回動されることにより係合位置と解除位置との間を変位される。係合位置にあるときの爪32は、主歯車13が正方向へ回転される方向への力を受けると、ばね33の付勢力に逆らって主歯車13の歯に押されながら解除位置へ変位され、主歯車13が逆方向へ回転される方向への力を受けると、主歯車13の歯とピン34との間で突っ張って係合位置に保持される。これにより、ラチェット装置31は、主歯車13の正方向への回転を許容し、主歯車13の逆方向への回転を阻止する。
【0047】
受け板部11には、ばね受け部材35が固定されている。ばね33の一端部は爪32に接続され、ばね33の他端部はばね受け部材35に接続されている。ばね33は、爪32とばね受け部材35との間で縮められている。爪32は、ばね33の弾性反発力(付勢力)により主歯車13の外周部に押し当てられている。
【0048】
図12は、この発明の実施の形態2によるエレベータの乗場表示装置の化粧板を示す正面図である。化粧板3には、実施の形態1と同様の操作用貫通孔28と、ラチェット装置31による各押さえ部材16,17の変位の阻止を解除するための解除用貫通孔36とが設けられる。
【0049】
解除用貫通孔36は、化粧板3の厚さ方向について爪32と重なる位置に配置されている。解除用貫通孔36には、爪32を係合位置から解除位置へ強制的に変位させるための解除具(例えばドライバ等)が挿入される。爪32と主歯車13との係合が解除具によって解除されることにより、各接触部16a,17aが互いに近づく方向への各押さえ部材16,17の変位が許容される。
【0050】
なお、実施の形態2では、各ねじ穴22,23及び各ねじ通し穴26,27は存在していない。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0051】
このようなエレベータの乗場表示装置では、各接触部16a,17aが互いに近づく方向への各押さえ部材16,17の変位がラチェット装置により阻止されるので、各接触部16a,17aが互いに近づく方向への各押さえ部材16,17の変位を自動的に阻止することができ、化粧板3に各押さえ部材16,17を固定ねじで固定する作業をなくすことができる。これにより、表示装置本体2をボックス1に設置する作業をさらに容易にすることができる。
【0052】
なお、上記の例では、ばね33の付勢力により主歯車13の外周部に爪32が押し当てられた状態で爪32が係合位置に保持されるようになっているが、爪32が係合位置を行き過ぎることを防止するために、爪32の変位を規制するストッパを固定金具10に設けてもよい。
【0053】
また、各上記実施の形態では、化粧板3の裏面に固定された固定金具10に各主歯車13及び中間歯車14が取り付けられているが、各主歯車13及び中間歯車14を化粧板3の裏面に直接取り付けてもよい。この場合、中間歯車14は、その軸を化粧板3の表面側へ突出させて化粧板3に取り付けられる。また、化粧板3の表面側へ突出した中間歯車14の軸が回されることにより各主歯車13及び中間歯車14が回転される。
【0054】
また、各上記実施の形態では、一対の主歯車13及び中間歯車14が化粧板3の裏面に支持されているが、化粧板3の裏面に支持される歯車を1つの主歯車13のみとしてもよい。この場合、化粧板3の裏面には、ボックス1の長手方向に沿って各ラック部16b,17bを独立して案内するガイドが設けられる。また、操作具が挿入される嵌合穴15は、主歯車13に設けられる。
【0055】
また、各上記実施の形態では、長手方向対向面5,6にスタッド18,19が設けられ、スタッド18,19が通されるスタッド通し穴20,21が接触部16a,17aに設けられているが、接触部16a,17aと長手方向対向面5,6との間の摩擦力が所定の大きさ以上に保たれるのであれば、スタッド18,19及びスタッド通し穴20,21はなくてもよい。また、接触部16a,17aと長手方向対向面5,6との間の摩擦力を確保するために、接触部16a,17a及び長手方向対向面5,6の少なくともいずれか一方に摩擦材を設けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ボックス、2 表示装置本体、3 化粧板、4 表示器、5,6 長手方向対向面(一対の対向面)、10 固定金具(支持部材)、13 主歯車、14 中間歯車、16,17 一対の押さえ部材、16a,17a 一対の接触部、16b,17b 一対のラック部、18,19 スタッド、20,21 スタッド通し穴、24,25 固定ねじ(変位阻止装置)、28 操作用貫通孔、31 ラチェット装置、32 爪、33 ばね(付勢体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックスの開口部を塞ぐ化粧板と、上記化粧板に着脱可能に設けられ、エレベータの運行状態を表示する表示器とを有する表示装置本体、
上記化粧板の裏面に支持され、上記化粧板の表面側からの操作により回転可能な主歯車、
上記ボックスの内面のうち、上記ボックスの長手方向について対向する一対の対向面に個別に接触する一対の接触部と、各上記接触部に設けられ、上記主歯車に噛み合う一対のラック部とを有し、上記表示装置本体の裏面にそれぞれ支持され、上記主歯車の回転により、互いに反対方向へ上記ボックスの長手方向に沿って変位される一対の押さえ部材、及び
各上記接触部が互いに近づく方向への各上記押さえ部材の変位を阻止する変位阻止装置
を備えていることを特徴とするエレベータの乗場表示装置。
【請求項2】
各上記対向面には、上記ボックスの長手方向に沿って突出するスタッドが設けられ、
各上記接触部には、上記スタッドが通されるスタッド通し穴が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの乗場表示装置。
【請求項3】
上記変位阻止装置は、上記主歯車に係合する係合位置と上記主歯車との係合が外れる解除位置との間で変位可能な爪と、上記係合位置へ変位される方向へ上記爪を付勢する付勢体とを有するラチェット装置であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータの乗場表示装置。
【請求項4】
上記主歯車が取り付けられ、上記化粧板の裏面に固定された支持部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエレベータの乗場表示装置。
【請求項5】
上記化粧板には、上記主歯車を回転させるための操作具が挿入される操作用貫通孔が設けられていることを特徴する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエレベータの乗場表示装置。
【請求項6】
上記化粧板の裏面には、上記ボックスの長手方向について互いに間隔を置いて配置された一対の上記主歯車と、各上記主歯車に噛み合い、各上記ラック部から離して配置された共通の中間歯車とが回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のエレベータの乗場表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−79628(P2011−79628A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232670(P2009−232670)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】