説明

エレベータの安全装置

【課題】簡易な構造で垂下した状態にある紐状の異物、及び敷居に位置した紐状の異物のそれぞれを検出することのできるエレベータの安全装置の提供。
【解決手段】閉扉時の異物検出に応じてエレベータドア4の閉扉動作の停止、或いは停止反転させるエレベータの安全装置において、エレベータドア4の戸当り鉛直面4aからエレベータドア4の下端水平面4bにかけて一体で配置される感圧センサ17を設け、戸当り鉛直面4aに位置する感圧センサ17で垂下した状態にある紐状の異物を検出すると共に、下端水平面4bに位置する感圧センサ17で敷居6に位置した紐状の異物を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータドアが閉扉時に戸当り部やエレベータドアの下端に挟み込んだ紐状の異物を検出するのに好適なエレベータの安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータの安全装置として、エレベータドアには戸当り鉛直面より突出可能なセイフティシューが設けられており、このセイフティシューを押した場合等によるセイフティシューの後退に応じて、エレベータドアの閉扉動作の停止、或いは停止反転させることがよく知られている。
【0003】
しかし、前述のセイフティシューのみでは、例えばエレベータドアと敷居との間に挟まった縄跳びの紐等の紐状の異物の検出ができないことから、従来、セイセフティシューとは別に一方のエレベータドアの下端にテープスイッチを設け、紐状の異物を検出可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、エレベータドアの閉端部角にテープスイッチを設置すると共に、エレベータドアの下端にマイクロスイッチを設置し、垂下した状態にある紐状の異物、及び敷居に位置した紐状の異物のそれぞれを検出可能にしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実開昭62−71175号公報
【特許文献2】特開平5−246667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1記載のものでは、ドア下端部に垂下した状態にある紐状の異物を検出することについて考慮されていない。一方、前述した特許文献2記載のものでは、垂下した状態にある紐状の異物、及び敷居に位置した紐状の異物のそれぞれを検出するために、テープスイッチ及びマイクロスイッチのそれぞれを設ける必要があり、構造が複雑となって生産性に劣ると共に、コストの向上を招くという問題がある。
【0006】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、簡易な構造で垂下した状態にある紐状の異物、及び敷居に位置した紐状の異物のそれぞれを検出することのできるエレベータの安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、上端に設けられるドアハンガにより懸架されると共に、下端が敷居により案内されるエレベータドアに設けられ、閉扉時に異物を検出して異物検出信号を出力する異物検出手段と、前記異物検出信号に応じて前記エレベータドアの閉扉動作の停止、或いは停止反転させるドア制御手段と、前記異物検出信号に応じて乗かごの始動を阻止する阻止手段とを備えたエレベータの安全装置において、前記異物検出手段は、感圧センサを有して成ると共に、前記感圧センサは、前記エレベータドアの戸当り鉛直面から前記エレベータドアの下端水平面にかけて一体で配置されることを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、戸当り鉛直面に位置する感圧センサで垂下した状態にある紐状の異物を検出すると共に、下端水平面に位置する感圧センサで敷居に位置した紐状の異物を検出する。このように1つの感圧センサで垂下した状態にある紐状の異物、及び敷居上に位置した紐状の異物のそれぞれを検出することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構造で垂下した状態にある紐状の異物、及び敷居に位置した紐状の異物のそれぞれを検出することができることから、生産性の向上及びコストの低減を図りつつ、エレベータドアによる異物の挟み込みを確実に検出して安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るエレベータの安全装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明のエレベータの安全装置の一実施形態を示す正面図、図2は乗かご及び乗場出入口の平面図、図3はエレベータドアの戸当り部を示す要部拡大平面図、図4は感圧センサの正面拡大図、図5は紐状の異物を検出した状態を示す感圧センサの正面拡大図である。
【0012】
エレベータは図1に示すように、乗かご1のかご出入口上部に設置されるドアハンガケース2と、ドアハンガケース2に延設されるドアレール3と、ドアレール3に案内されると共にかごドア4を懸架するドアハンガ5と、かごドア4の下端を案内するかご敷居6と、乗かご1上に設置され、エレベータの統括制御を行う図示しない制御部とテールコードを介して接続される機器ボックス7と、図2に示すように、乗場敷居8と三方枠9により形成される乗場出入口に設置され、かごドア4と対向可能な乗場ドア10とを備えている。
【0013】
そして、エレベータの安全装置として、かごドア4に設けられ前進、後退可能な一対のリンク11、12により支持され、かごドア4の戸当り鉛直面4aより突出可能なセイフティシュー13と、セイフティシュー13の後退に応じて異物検出信号を配線14、機器ボックス7を介して制御部に出力するスイッチ15と、かごドア4の戸当り鉛直面4aからかごドア4の下端水平面4bにかけて一体で配置され、異物検出に応じて検出信号を配線16、機器ボックス7を介して制御部に出力する感圧センサ17とが設けられている。尚、前述した閉扉時に異物を検出して異物検出信号を出力する異物検出手段は、セイフティシュー13、スイッチ15及び感圧センサ17から成ると共に、異物検出信号に応じてエレベータドアの閉扉動作の停止、或いは停止反転させるドア制御手段、及び異物検出信号に応じて乗かご1の始動を阻止する阻止手段のそれぞれは、制御部から成っている。
【0014】
また、前述した感圧センサ17は図4に示すように、受け部材18を介してかごドア4に取付けられ、かごドア4の戸当り鉛直面4aから下端水平面4bに亘る位置に半径部17aを有すると共に、この半径部17aには、感圧センサ17を押圧する押圧部材19が設けられている。そして、押圧部材19は、感圧センサ17との対向面に形成され感圧センサ17を押圧する複数の突起19aを備えると共に、戸当り鉛直面4aと略面一となる鉛直面を有する鉛直部材19b、及び下端水平面4bと略面一となる水平面を有する水平部材19cに2分割されて構成されている。尚、感圧センサ17の半径部17aの径は、異物検出性能に影響の無い値に設定されている。
【0015】
さらに、実際の構造では、感圧センサ17、受け部材18及び押圧部材19の全体は図示しないゴムで覆われている。また、感圧センサ17をかごドア4に支持する受け部材18は、感圧センサ17の鉛直部がかごドア4の戸当り鉛直面から概ね1〜2mm程度突出し、かつ、感圧センサ17の水平部がかごドア4の下端水平面4bにあって敷居6と概ね1〜3mm程度の間隔を有するように固定穴18aを介してかごドア4に固定されている。
【0016】
本実施形態のエレベータの安全装置にあっては、図5に示すように紐状の異物20がかご敷居6上にあり、かごドア4の閉扉に応じて押圧部材19とかご敷居6との間に異物20が巻き込まれると、押圧部材19が変形することにより突起19aが矢印F方向に変位して感圧センサ17に圧力を与える。これに応じて感圧センサ17は検出信号を配線16、機器ボックス7を介して制御部に出力し、制御部はかごドア4を停止反転させる。また、垂下した紐状の異物がかごドア4下方にあって挟まれると、閉扉に応じて異物が感圧センサ17を押圧することにより、感圧センサ17は検出信号を配線16、機器ボックス7を介して制御部に出力し、制御部はかごドア4を停止反転させる。
【0017】
本実施形態によれば、簡易な構造、すなわちかごドア4の戸当り鉛直面4aから下端水平面4bにかけて一体で配置された1つの感圧センサ17で垂下した状態にある紐状の異物、及び敷居6に位置した紐状の異物のそれぞれを検出することができることから、生産性の向上及びコストの低減を図りつつ、エレベータドアによる異物の挟み込みを確実に検出して安全性を確保することができる。
【0018】
尚、本実施形態ではセイフティシュー13が一方のかごドア4にのみ取付けられているものを例として説明したが、両方のかごドアにセイフティシューが取付けられたエレベータ、或いは片開きタイプのエレベータにあっても同等の構造とすることができることは明らかである。また、片開きタイプのエレベータに本発明の安全装置を適用する場合、感圧センサをエレベータドア、及びエレベータドアと当接する戸当り部にそれぞれ配設することにより確実な異物の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のエレベータの安全装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】乗かご及び乗場出入口の平面図である。
【図3】エレベータドアの戸当り部を示す要部拡大平面図である。
【図4】感圧センサの正面拡大図である。
【図5】紐状の異物を検出した状態を示す感圧センサの正面拡大図である。
【符号の説明】
【0020】
1 乗かご
4 かごドア
4a 戸当り鉛直面
4b 下端水平面
6 かご敷居
7 機器ボックス
10 乗場ドア
13 セイフティシュー
15 スイッチ
17 感圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に設けられるドアハンガにより懸架されると共に、下端が敷居により案内されるエレベータドアに設けられ、閉扉時に異物を検出して異物検出信号を出力する異物検出手段と、前記異物検出信号に応じて前記エレベータドアの閉扉動作の停止、或いは停止反転させるドア制御手段と、前記異物検出信号に応じて乗かごの始動を阻止する阻止手段とを備えたエレベータの安全装置において、
前記異物検出手段は、感圧センサを有して成ると共に、前記感圧センサは、前記エレベータドアの戸当り鉛直面から前記エレベータドアの下端水平面にかけて一体で配置されることを特徴とするエレベータの安全装置。
【請求項2】
前記感圧センサは、前記戸当り鉛直面から前記下端水平面に亘る位置に半径部を有すると共に、前記半径部に、前記感圧センサを押圧する押圧部材を設けたことを特徴とした請求項1記載のエレベータの安全装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記感圧センサとの対向面に形成される少なくとも1つの突起を有し、前記感圧センサを1点、乃至数点で押圧することを特徴とする請求項2記載のエレベータの安全装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記戸当り鉛直面と略面一となる鉛直面を有する鉛直部材、及び前記下端水平面と略面一となる水平面を有する水平部材に2分割されることを特徴とする請求項2記載のエレベータの安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−131389(P2007−131389A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324973(P2005−324973)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】