説明

エレベータの敷居間隙間閉塞装置

【課題】台車や車椅子等の車が円滑にかごへ乗降できるようにしたエレベータの敷居間隙間閉塞装置を提供する。
【解決手段】エレベータのかご側敷居2が、固定部材11とその固定部材11の前端に嵌合する可動部材14とから構成されている。出入口全閉時に可動部材14の踏面16aが固定部材11のうち前下がりに傾斜した踏面13bの上に重合している一方で、戸開動作時に可動部材14が固定部材11の踏面13bに沿って前方にスライド移動し、かご側敷居2と乗場側敷居5の間の隙間Gを閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は出入口開放時にかご側および乗場側の両敷居同士の間の隙間を閉塞するエレベータの敷居間隙間閉塞装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、出入口全閉時に収納されている可動部材をもって出入口開放時にかご側および乗場側の両敷居間の隙間を閉塞する技術が例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、先端にくし形状の歯部が形成された可動部材が出入口全閉時に上記両敷居の下方にそれぞれ収納されていて、出入口開放時に両可動部材を上記両敷居の下方から互いに近接する方向にそれぞれ押し出し、両可動部材の歯部をかみ合わせることで上記隙間を閉塞するようになっている。
【特許文献1】実開平5−69048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、乗客がかごに乗降する際における昇降路内への異物の落下は防止できるものの、上記両敷居と両可動部材との間に段差を生じるため、例えば車椅子や台車等の車がかごに乗降する際に上記段差が障害となって円滑な乗降を妨げるという問題があった。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、上記車のかごへの乗降を円滑に行えるようにしたエレベータの敷居間隙間閉塞装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、エレベータのかご側敷居および乗場側敷居のうち少なくとも一方の敷居が、出入口ドアを案内する固定部材と、その固定部材の前端に戸開閉方向に沿って配設され、他方の敷居と接近・離間する前後方向でスライド移動可能な可動部材と、を備えていて、出入口ドアの戸開動作に連動して可動部材が前方に向かってスライド移動し、出入口開放時にかご側敷居と乗場側敷居との間の隙間を少なくとも狭めるようにしたエレベータの敷居間隙間閉塞装置であることを前提としていて、出入口全閉時に固定部材の踏面の上に可動部材の踏面が重合しているとともに、固定部材の踏面が前下がりに傾斜していて、戸開動作時に固定部材の踏面に沿って可動部材がスライド移動するようになっていることを特徴としている。
【0007】
少なくとも請求項1に記載の発明では、例えば車椅子や台車等の車が固定部材と可動部材との間の段差を上る前に通過する固定部材の踏面が下り勾配になっているため、上記段差を容易に上ることができるようになる。
【0008】
その上で請求項2に記載のように、可動部材の踏面が前下がりに傾斜していると、上記段差を上った後に通過する可動部材の踏面が下り勾配となるため、上記段差を上った後にその段差に再び落ちてしまうことが防止できる。
【0009】
望ましくは請求項3に記載のように、可動部材の前端に戸開閉方向に沿って緩衝体が取り付けられていて、出入口開放時に緩衝体を他方の敷居に突き当てるようになっていると、かご側および乗場側の両敷居間の隙間をより確実に閉塞することができるようになる。
【0010】
具体的には請求項4に記載のように、戸開閉動作時に出入口ドアと係合するカム部を可動部材が備えているとともに、可動部材を後方に常時付勢する付勢手段が可動部材と固定部材との間に介装されていて、戸開動作時に出入口ドアがカム部を押圧することで可動部材が付勢手段の付勢力に抗して前方にスライド移動し、戸閉動作時に付勢手段の付勢力をもって可動部材を後方に引き戻すようになっていると、出入口ドアの戸開閉動作に連動して可動部材がスライド移動するようになる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、例えば車椅子や台車等の車が固定部材と可動部材との間の段差を容易に上ることができるようになるため、上記車のかごへの乗降が円滑に行えるようになるメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明のより具体的な実施の形態を示す図であって、かご側および乗場側の両出入口の概略を示す図である。
【0013】
図1に示すようにエレベータのかごに形成されたかご側出入口1の下縁部にはかご側敷居2が戸開閉方向に沿って配設されていて、そのかご側敷居2がかご側出入口1を開閉する出入口ドアたるかご側ドア3のガイドシュー3aを案内している。一方、乗場に形成された乗場側出入口4の下縁部には乗場側敷居5がかご側敷居2に対向して配置されていて、その乗場側敷居5が乗場側出入口4を開閉する乗場側ドア6のガイドシュー6aを案内している。なお、乗場側敷居5およびかご側敷居2はそれぞれブラケット7をもって固定されている。
【0014】
乗場側ドア6の裏面側には係合プレート8が設けられているとともに、かご側ドア3の裏面側に係合プレート8を受容可能な断面略コの字状の係合ブロック9が設けられている。係合プレート8および係合ブロック9はそれぞれかごの走行方向に沿って取り付けられていて、かごが乗場に着床したときに係合プレート8が係合ブロック9に受容されて両者が係合することで、かご側ドア3と乗場側ドア6とが連動し、かごに設けられたドア駆動装置10の駆動力をもって各ドア3,6が両出入口1,4を開閉することとなる。
【0015】
ここで、かご側敷居2と乗場側敷居5との間には、かご走行時における乗場側敷居5と係合ブロック9との干渉およびかご側敷居2と係合プレート8との干渉を避けるために、いわゆるランニングクリアランスとして所定の隙間Gが設けられている。
【0016】
図2はかご側敷居2および乗場側敷居5のうち戸開方向側端部の概略を示す斜視図である。
【0017】
かご側敷居2は図2に示すようにかご側ドア3を案内する敷居溝12が形成された固定部材11と、その固定部材11の前端に戸開閉方向に沿って配設された可動部材14と、から構成されていて、可動部材14は乗場側敷居5に接近する前方向および乗場側敷居5から離間する後方向にスライド移動可能となっている。
【0018】
図3は図2におけるA−A断面図であって、図3の(a)は可動部材14が後方に位置する状態を示す図、図3の(b)は可動部材14が前方に位置する状態を示す図である。
【0019】
詳細には図2のほか図3の(a)に示すように、固定部材11にはその敷居溝12の前方側に突出部13が形成されていて、その突出部13の前端面には戸開閉方向に沿った溝部13aが形成されている。
【0020】
一方、可動部材14は断面略E形状であって、その可動部材14が固定部材11の突出部13に嵌合している。すなわち、可動部材14の中間リブ15が突出部13の溝部13aに嵌合しているとともに、可動部材14のうち上壁部16の踏面16aが突出部13の踏面13bの上に重合している一方で、可動部材14の下壁部17が突出部13の下方に重合している。
【0021】
可動部材14の踏面16aは前下がりに傾斜しているとともに、固定部材11の踏面13bが可動部材14の踏面16aに対してさらに前下がりに傾斜している。すなわち、上壁部16がその先端に向かって肉薄となるテーパ状に形成されている。なお、突出部13の溝部13aおよび突出部13の下面も固定部材11の踏面13bと同様に前下がりに傾斜して形成されている。
【0022】
突出部13にはその溝部13aと敷居溝12の間を貫通する挿通孔13cが形成されていて、その挿通孔13cを挿通して敷居溝12内へ突出するカム部15aが中間リブ15の先端から突設されている。カム部15aの戸閉方向側端面15bは戸開方向で後方に傾斜していて、戸開動作時にかご側ドア3がガイドシュー3aを介してカム部15aの戸閉方向側端面15bと係合して押圧することで、図3の(b)に示すように可動部材14が固定部材11の踏面13bに沿って前方にスライド移動することとなる。
【0023】
ここで、可動部材14が前方に位置する状態、すなわち出入口開放状態において、互いに重合する固定部材11の踏面13bと可動部材14の踏面16aとの間に僅かながら段差が生じている。
【0024】
また、可動部材14と固定部材11は付勢手段たるリターンスプリング18をもって連結されていて、可動部材14が後方に常時付勢されている。
【0025】
さらに、可動部材14の先端面上部にはゴム系弾性材から形成された緩衝体19が戸開閉方向に沿って取り付けられていて、可動部材14が乗場側敷居5の先端に当接したときの衝撃を緩和して異音の発生を防止するようになっている。
【0026】
したがって本実施の形態では、かごが乗場に着床して戸開動作すると、かご側ドア3がガイドシュー3aを介して可動部材14のカム部15aを押圧することで、リターンスプリング14の付勢力に抗して可動部材14が固定部材11の踏面13bに沿って前方にスライド移動し、緩衝体19が乗場側敷居5の先端に突き当たることで隙間Gを閉塞することとなる。
【0027】
このとき、例えば据付誤差等により可動部材14のストローク量が隙間Gよりも大きい場合には緩衝体19が弾性変形することでその誤差を吸収する。
【0028】
なお、戸閉動作時にはガイドシュー3aとカム部15aとの係合が解除され、リターンスプリング18の付勢力をもって可動部材14を後方に引き戻すようになっている。
【0029】
すなわち、本実施の形態によれば、可動部材14の上壁部16がその先端に向かって肉薄となるテーパ状に形成されているため、出入口開放時における固定部材11の踏面13bと可動部材14の踏面16aとの間の段差が小さくなる上に、例えば台車や車椅子等の車がかごから降りる際に、上記段差を乗り越える前に通過する固定部材11の踏面13bが下り勾配となっているため、上記段差を容易に乗り越えることが可能となり、上記車のかごへの乗降が円滑に行えるようになる。
【0030】
また、可動部材14の踏面16aが前下がりに傾斜しているため、上記段差を乗り越えた後に再び上記段差に落ちてしまうことが防止され、上記車のかごへの乗降がより円滑に行えるようになるメリットがある。
【0031】
さらに、可動部材14の先端面に取り付けた緩衝体19が出入口開放時に乗場側敷居5に突き当たるため、例えば据付誤差等によって各階床における隙間Gがそれぞれ異なっていても、緩衝体19が弾性変形することでその誤差を吸収することができるメリットがある上に、可動部材14の先端が乗場側敷居5に突き当たったときの異音の発生を防止することができるメリットがある。
【0032】
なお、本実施の形態ではかご側敷居2を固定部材11と可動部材14から構成するようにしたが、乗場側敷居5を固定部材11と可動部材14とから構成するようにしてもよいことは言うまでもなく、かご側敷居2と乗場側敷居5の両者を固定部材11と可動部材14とから構成することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であってかご側および乗場側の両出入口を示す概略図。
【図2】図1におけるかご側および乗場側の両敷居の概略を示す斜視図。
【図3】図2におけるA−A断面図であって、同図(a)は可動部材が後方に位置する状態を示す図、同図(b)は可動部材が前方に位置する状態を示す図。
【符号の説明】
【0034】
2…かご側敷居
3…かご側ドア(出入口ドア)
5…乗場側敷居
11…固定部材
13b…踏面
14…可動部材
15a…カム部
16a…踏面
18…リターンスプリング(付勢手段)
19…緩衝体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご側敷居および乗場側敷居のうち少なくとも一方の敷居が、出入口ドアを案内する固定部材と、その固定部材の前端に戸開閉方向に沿って配設され、他方の敷居と接近・離間する前後方向でスライド移動可能な可動部材と、を備えていて、出入口ドアの戸開動作に連動して可動部材が前方に向かってスライド移動し、出入口開放時にかご側敷居と乗場側敷居との間の隙間を少なくとも狭めるようにしたエレベータの敷居間隙間閉塞装置であって、
出入口全閉時に固定部材の踏面の上に可動部材の踏面が重合しているとともに、固定部材の踏面が前下がりに傾斜していて、戸開動作時に固定部材の踏面に沿って可動部材がスライド移動するようになっていることを特徴とするエレベータの敷居間隙間閉塞装置。
【請求項2】
可動部材の踏面が前下がりに傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの敷居間隙間閉塞装置。
【請求項3】
可動部材の前端に戸開閉方向に沿って緩衝体が取り付けられていて、出入口開放時に緩衝体を他方の敷居に突き当てるようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータの敷居間隙間閉塞装置。
【請求項4】
戸開閉動作時に出入口ドアと係合するカム部を可動部材が備えているとともに、可動部材を後方に常時付勢する付勢手段が可動部材と固定部材との間に介装されていて、戸開動作時に出入口ドアがカム部を押圧することで可動部材が付勢手段の付勢力に抗して前方にスライド移動し、戸閉動作時に付勢手段の付勢力をもって可動部材を後方に引き戻すようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレベータの敷居間隙間閉塞装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−114979(P2008−114979A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299766(P2006−299766)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000228246)日本オーチス・エレベータ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】