説明

エレベータの群管理制御システム

【課題】列車等の公共交通機関の発着場が隣接されたビルにおいて、その公共交通機関を利用しない人に対する運転サービスの低減を防いで、公共交通機関への連絡運転を効率的に行う。
【解決手段】特殊呼びボタン14の操作により、連絡号機選定部36は各エレベータの中から特殊呼びに応答させるエレベータを連絡号機として選定する。運転計画作成部37は連絡号機をテーブル33aに記憶された列車の出発時刻に合わせて運転するべく、特殊呼びボタン操作期限、特殊呼びボタン設置階到着期限、連絡階着期限を定めた運転計画を作成する。割当制御部38は運転計画に従って連絡号機を特殊呼びボタン14の設置階に応答させると共にそこから駅に近い連絡階まで移動できるように当該連絡号機に対する呼びの割り当てを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のエレベータを群管理制御するエレベータの群管理システムに係り、特に列車等の公共交通機関と関連付けた運転を行うエレベータの群管理制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車が発着する駅に隣接あるいは直結しているマンションビルなどでは、そのビルに設置された複数台のエレベータのうちの何台かを列車連絡用に運転することがある。例えば、特許文献1では、列車が最も使われる時間帯つまり朝夕の時間帯だけ、列車発着連動運行モードに切り替えて、列車のダイヤ情報に基づいてエレベータを運転制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−200171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、予め設定された時間帯になると、列車を利用する人の有無に関係なく、列車発着連動運行モードに切り替えられる。列車発着連動運行モードでは、乗場呼びの登録階から列車の連絡階まで直通運転となる。このため、その時間帯に列車を利用する人がいないと、ビル全体の輸送効率が悪くなり、他の人に対する運転サービスが低下するといった問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、列車等の公共交通機関の発着場が隣接されたビルにおいて、その公共交通機関を利用しない人に対する運転サービスの低減を防いで、公共交通機関への連絡運転を効率的に行うことのできるエレベータの群管理制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエレベータの群管理制御システムは、公共交通機関の輸送体が予め定められた時刻に発着する発着場に隣接されたビルを対象として、そのビルに設置された複数台のエレベータの運転を群管理制御するエレベータの群管理制御システムにおいて、少なくとも上記輸送体の出発時刻が登録されたテーブル手段と、特定の階の乗場に設置され、通常の乗場呼びとは別の特殊呼びを登録するための特殊呼びボタンと、この特殊呼びボタンの操作に伴い、上記各エレベータの中から上記特殊呼びに応答させるエレベータを上記輸送体に対する連絡号機として選定する連絡号機選定手段と、この連絡号機選定手段によって選定された連絡号機を上記テーブル手段に記憶された上記輸送体の出発時刻に合わせて運転するべく、上記特殊呼びボタンの操作期限、上記特殊呼びボタンの設置階までの到着期限、上記連絡階までの到着期限を定めた運転計画を作成する運転計画作成手段と、この運転計画作成手段によって作成された運転計画に従って上記連絡号機を上記特殊呼びボタンの設置階に応答させると共にそこから上記発着場に近い連絡階まで移動できるように当該連絡号機に対する呼びの割り当てを制御する割当制御手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、列車等の公共交通機関の発着場が隣接されたビルにおいて、その公共交通機関を利用する人が乗場にいるときにのみ連絡運転が行なわれる。これにより、公共交通機関を利用しない人に対する運転サービスの低減を防いで、公共交通機関への連絡運転を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係るエレベータの群管理システムが適用されるビルと公共交通機関との関係を示す図である。
【図2】図2は同実施形態におけるエレベータの乗場の構成を示す図である。
【図3】図3は同実施形態におけるエレベータの群管制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【図4】図4は同実施形態における情報記憶部に設けられた列車連絡テーブルの構成を示す図である。
【図5】図5は同実施形態における各種締切り時刻の算出処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は同実施形態における特殊呼びボタンの有効化処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は同実施形態におけるエレベータの乗場に設置された表示器の表示例を示す図である。
【図8】図8は同実施形態における連絡号機が特殊呼び設置階に応答するまでの割当制御の処理を示すフローチャートである。
【図9】図9は同実施形態における列車連絡階までの割当制御の処理を示すフローチャートである。
【図10】図10は本発明の第2の実施形態に係る列車連絡有効フラグを有する列車連絡テーブルの構成を示す図である。
【図11】図11は本発明の第3の実施形態における情報記憶部に設けられた階床テーブルの構成を示す図である。
【図12】図12は本発明の第4の実施形態に係る運転計画の学習処理の動作を示すフローチャートである。
【図13】図13は本発明の第5の実施形態に係るエレベータの群管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【図14】図14は同実施形態における特殊呼びボタンの利用制限処理を示すフローチャートである。
【図15】図15は同実施形態における乗車用カードを利用した場合の特殊呼びボタンの利用制限処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るエレベータの群管理システムが適用されるビルと公共交通機関との関係を示す図である。なお、ここでは公共交通機関として「列車」を例にして説明する。図2は同実施形態におけるエレベータの乗場の構成を示す図である。
【0011】
図1に示すように、今、1F〜30Fの階床を有するマンション等のビル10に3台のエレベータが設置されているものとする。図中の11a,11b,11cは各エレベータの乗りかごであり、図示せぬ駆動機構により昇降内を昇降動作する。
【0012】
また、このビル10の近くに、予め定められた時刻に列車21が発着する駅20が存在するものとする。なお、図1の例では、駅20が歩道を介してビル10に近接している状態を示したが、例えばビル10と駅20が直結されているような環境であってもよい。
【0013】
ここで、図2に示すように、各階の乗場12には、通常の乗場呼びボタン13とは別に特殊呼びボタン14が設置されている。
【0014】
乗場呼びボタン13は、列車21の利用に関係なく、各階を移動するときにエレベータを呼ぶためのボタンである。この乗場呼びボタン13は、各階の乗場12に設置されている。これに対し、特殊呼びボタン14は、列車21の利用を目的としてエレベータを呼ぶためのボタンである。この特殊呼びボタン14は、ビル10の中で駅20に最も近い階床である列車連絡階16を除く、少なくとも1つの特定階17に設置されている。
【0015】
また、特定階17の乗場12には、特殊呼びボタン14の近くに表示器15が設置されている。この表示器15は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等からなり、利用者の見やすい場所に設置されて、特殊呼びボタン14に関する情報を表示する。
【0016】
図1の例では、列車連絡階16は1Fであり、特定階17は30Fとして定められている。つまり、30Fで特殊呼びボタン14で押すと、乗りかご11a,11b,11cのいずれかが連絡号機として応答して、その30Fの乗場12で乗車した利用者を駅20で停車中の列車21が出発する時刻に間に合うように1Fまで運んでくれる。
【0017】
次に、各エレベータを群管理制御するための群管理システの構成について説明する。
図3は同実施形態におけるエレベータの群管制御システムの機能構成を示すブロック図である。なお、図1と同じ部分には同一符号を付してある。
【0018】
エレベータの群管理制御システムは、乗場呼びボタン13、特殊呼びボタン14、表示器15、単体制御装置30a,30b,30c、情報登録装置31、群管理制御装置32を備える。
【0019】
上述したように、乗場呼びボタン13は、通常の乗場呼びを登録するためのボタンである。特殊呼びボタン14は、列車連絡運転のための特殊呼びを登録するためのボタンである。表示器15は、特殊呼びボタン14に関する各種情報を表示する。単体制御装置30a,30b,30cは、群管理制御装置32の下で各エレベータの乗りかご11a,11b,11cの運転を制御する。
【0020】
なお、図3の例では、3台のエレベータを群管理制御する構成が示されているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、他の台数のエレベータを群管理制御する構成であってもよい。
【0021】
情報登録装置31は、連絡対象とする列車21の運転情報(列車名・種別,行先,出発時刻等)を含む各種情報を群管理制御装置32に入力するための装置である。具体的には、この情報登録装置31はパソコン等の端末機器からなり、エレベータの管理者などによって操作される。
【0022】
群管理制御装置32は、コンピュータからなり、例えばビル10の機械室に設置され、各エレベータの運転を統括的に制御している。
【0023】
本実施形態において、この群管理制御装置32には、情報記憶部33と、特殊呼びボタン有効化部34と、予測到着時間算出部35と、連絡号機選定部36と、運転計画作成部37、割当制御部38とを備える。なお、これらの処理部は、実際にはコンピュータのソフトウェアとして実装されている。
【0024】
情報記憶部33には、少なくとも列車21の出発時刻を含む運転情報が登録された列車連絡テーブル33aが設けられている(図4参照)。特殊呼びボタン有効化部34は、特殊呼びボタン14を利用可能な状態とする。
【0025】
予測到着時間算出部35は、特殊呼びボタン14が操作された際に、各エレベータの現在の運転状況(乗りかごの位置、運転方向、走行中/停止中など)から特殊呼びボタン14が設置された特定階17までの到着時間を予測する。連絡号機選定部36は、予測到着時間算出部35によって得られた予測到着時間に基づいて、各エレベータの中で連絡号機を選定する。
【0026】
運転計画作成部37は、連絡号機選定部36によって選定された連絡号機の運転計画を作成する。この運転計画には、「特殊呼びボタン操作期限」、「特殊呼びボタン設置階到着期限」、「列車連絡階到着期限」が含まれる。なお、これらの期限については後述する。
【0027】
割当制御部38は、運転計画作成部37によって作成された運転計画に従って連絡号機を特殊呼びボタン14が設置された特定階17に応答させると共にそこから列車連絡階16まで移動できるように当該連絡号機に対する呼びの割り当てを制御する。
【0028】
このような構成において、まず、情報登録装置31を用いて連絡対象とする列車21の運転情報として、列車21の名称・種別,行先,出発時刻を登録する。なお、このときの登録者は、エレベータの管理者とする。また、登録方法としては、例えば図示せぬ登録画面などを通じて簡易に登録できるものとする。情報登録装置31によって登録された列車21の運転情報は、群管理制御装置32内の情報記憶部33に設けられた列車連絡テーブル33aに記憶される。
【0029】
図4に列車連絡テーブル33aの構成を示す。
列車連絡テーブル33aには、予め連絡対象として指定された列車21に関する運転情報として、名称・種別,行先,出発時刻が登録されている。なお、この運転情報以外の情報、つまり、「特殊呼びボタン操作期限」、「特殊呼びボタン設置階到着期限」、「列車連絡階到着期限」については自動算出されたものであり、これらについては後に図5を用いて説明する。
【0030】
また、列車連絡テーブル33aに、例えば列車21が発着するホームの番線や、運行会社の名称など、列車21の各便に関する付加的な情報を追加登録するようにしても良い。さらに、駅20に隣接する駅に発着する主要列車の種別,行先,出発時刻などを追加登録するようにしてもよい。
【0031】
次に、本システムの処理動作について詳しく説明する。
なお、以下の説明で「エレベータ」とは、図1の乗りかご11a,11b,11cのいずれかのことを言う。
【0032】
(a)各種締切り時刻の算出
まず、連絡対象となる列車21に関する各種締切り時刻を算出するための処理について説明する。
【0033】
図5は運転対象となる列車21に関する各種締切り時刻の算出処理を示すフローチャートである。
【0034】
群管理制御装置32に設けられた運転計画作成部37は、情報記憶部33に設けられた列車連絡テーブル33aを参照して、列車21の各便の中で出発時刻が近づいている便があるか否かを判断する(ステップA11)。該当する便があれば(ステップA11のYes)、運転計画作成部37は、その便を締切り時刻の算出対象として選択する(ステップA12)。なお、この締切り時刻を算出するタイミングは、列車21の出発時刻の所定時間前(例えば1時間前)に行うことでもよいし、深夜等のエレベータ休止時間帯に全ての便についてまとめて算出することでもよい。
【0035】
次に、運転計画作成部37は、利用者が列車連絡階16から駅20まで移動して列車21に乗るまでに要する平均的な時間(図1のT3)を考慮した上で、当該便の出発時刻から逆算して、エレベータがいつまでに列車連絡階16に到着すべきかを算出し、これを「列車連絡階到着期限」とする(ステップA13)。
【0036】
この「列車連絡階到着期限」は、朝夕のラッシュ時の時間帯は駅周辺や駅構内が混雑するため、他の時間帯よりも1分〜3分程度早めるなど、建物周辺の環境を考慮して、無理なく列車21に連絡できるように定めことが好ましい。そのために、ラッシュの時間帯とそのラッシュ時間帯に「列車連絡階到着期限」を早める時間を情報登録装置31から登録し、列車連絡テーブル33aに付属情報として記憶できるようにしてもよい。
【0037】
次に、運転計画作成部37は、「列車連絡階到着期限」までにエレベータが列車連絡階16に到着するためには、特殊呼びが登録された特定階17にいつまでに到着すべきかを算出し、これを「特殊呼びボタン設置階到着期限」とする(ステップA14)。
【0038】
この「特殊呼びボタン設置階到着期限」は、「列車連絡階到着期限」として算出された時間から、エレベータが特定階17から列車連絡階16まで移動するのに必要な時間(図1のT2)を差し引いたものである。
【0039】
上記時間T2には、エレベータの走行時間、利用者の乗降に要する時間、扉の開閉に必要な時間、さらに、余裕時間が含まれる。また、上記時間T2は、通常、途中で停止する階床数により大きく変化する。そこで、エレベータを連絡号機として運転する場合には、途中停止階を特殊呼びボタン14が設置された特定階17だけに限定し、他の階を通過すると仮定した時間を用いる。これにより、途中に停止する階床に関する不確実性を低減することができる。
【0040】
なお、複数のエレベータを連絡号機として運転する場合には、途中停止階を特定階17だけに限定せずに、それぞれのエレベータで分担することでも良い。
【0041】
次に、運転計画作成部37は、「特殊呼びボタン設置階到着期限」までにエレベータが特定階17に到着するためには、特殊呼びボタン14の操作をいつまでに行うべきかを算出し、これを「特殊呼びボタン操作期限」とする(ステップA15)。
【0042】
この「特殊呼びボタン操作期限」は、「特殊呼びボタン設置階到着期限」として算出された時間から、エレベータが現在位置から特定階17に移動するのに必要な時間を差し引いたものである。この場合も、上記「設置階到着期限」の算出時と同様に、途中で停止する階床数の影響を受けるとともに、その時点でのエレベータの位置等の影響も受ける。そこで、エレベータを連絡号機として運転する場合には、途中停止階を特定階17に限定し、他の階を通過すると仮定した場合の時間を用いることで、途中に停止する階床に関する不確実性を低減する。
【0043】
また、エレベータの位置は、利用状況により不確定であるため、全ての特定階17に到着するまでに最も時間がかかる配置を想定することで、実際の運転で「特殊呼びボタン設置階到着期限」までに特定階17に到着する可能性を高めることができる。
【0044】
このようにして算出された「列車連絡階到着期限」、「特殊呼びボタン設置階到着期限」、「特殊呼びボタン操作期限」は、運転計画の情報として、列車連絡テーブル33aに当該列車21の便に関連付けて記憶される。
【0045】
(b)特殊呼びボタンの有効化
次に、特殊呼びボタン14を有効化する場合の処理について説明する。
特殊呼びボタン14は、通常の乗場呼びボタン13よりも優先されるため、いつまでも使える状態にあると、乱用される可能性がある。そこで、列車21を利用するときにのみ、特殊呼びボタン14を有効化しておくことが好ましい。
【0046】
図6は特殊呼びボタン14の有効化処理の動作を示すフローチャートである。
【0047】
特殊呼びボタン有効化部34は、運転計画として定められた「特殊呼びボタン操作期限」の所定時間前(例えば5分前)になったときに(ステップB11のYes)、その所定時間の間に限って、特殊呼びボタン14を有効化する(ステップB12)。つまり、特殊呼びボタン14の操作による特殊呼びの登録が可能な状態とする。
【0048】
そのとき、表示器15は、特殊呼びボタン14が使用可能であることを表示すると共に、現在連絡運転の対象となっている列車21の便に関する運行情報を列車連絡テーブル33aから読み込んで表示する(ステップB13)。
【0049】
なお、特殊呼びボタン14が有効化されるよりも前に、次に連絡運転の対象となる列車21の便に関する運行情報だけを事前に表示器15に表示しておくことでもよい。
【0050】
図7に表示器15の表示例を示す。
【0051】
表示器15には、特殊呼びボタン14が有効であることと、列車21の便名や行先、出発時刻を含む運行情報と、いつまでに特殊呼びボタン14を操作すれば間に合うかを意味する「特殊呼びボタン操作期限」が表示される。利用者は、この表示器15に表示された「特殊呼びボタン操作期限」を参照すれば、エレベータホールにいつまでに来れば、目的の列車21に乗車できるのかが分かる。
【0052】
ここで、特殊呼びボタン14が操作されると(ステップB14のYes)、その特殊呼びボタン14が点灯して割当制御部38に特殊呼びが登録される(ステップB15)。この特殊呼びには、特殊呼びボタン14が操作された階床と、連絡運転用の呼びであることを示す種別情報が含まれる。
【0053】
特殊呼びが登録されると、各エレベータの中で連絡号機が選定される。なお、この連絡号機の選定に関する処理については、後に図8を参照して説明する。連絡号機選定部36によって選定された連絡号機が特殊呼びに応答すると(ステップB16のYes)、割当制御部38は、その特殊呼びを消去する(ステップB17)。
【0054】
一方、特殊呼びボタン有効化部34は、「特殊呼びボタン操作期限」が過ぎたか否かを判断する(ステップB18)。操作期限前であれば(ステップS18のNo)、ステップB14に戻って、再び特殊呼びボタン14の操作を受け付ける。
【0055】
「特殊呼びボタン操作期限」が過ぎた場合には(ステップS18のYes)、特殊呼びボタン有効化部34は特殊呼びボタン14を無効化する(ステップB19)。特殊呼びボタン14が無効化された状態では、特殊呼びボタン14を押下しても点灯せず、特殊呼びの登録はなされない。
【0056】
(c)特殊呼び設置階までの割当制御
次に、連絡号機が特殊呼び設置階に応答するまでの割当制御について説明する。
上述した特殊呼びボタン14の操作により特殊呼びが登録された場合、「特殊呼びボタン設置階到着期限」までに連絡号機を応答させる必要がある。
【0057】
図8は連絡号機が特殊呼び設置階に応答するまでの割当制御の処理を示すフローチャートである。
【0058】
特殊呼びボタン14の操作により特殊呼びが登録されると(ステップC11)、連絡号機選定部36は、予測到着時間算出部35によって算出された各エレベータの予測到着時間に基づいて最も早く応答可能なエレベータを連絡号機として選定する(ステップC12)。なお、連絡号機が1台の場合には、複数の特殊呼びに応えることができるので、ステップC12では、既に連絡号機となっている乗りかごが選定される場合もある。
【0059】
ここで、「特殊呼びボタン設置階到着期限」までに十分な時間の余裕がある場合には、連絡号機は、通常の乗場呼びに応答しながら、特殊呼びが登録された階に向かうことができる(ステップC14のYes)。連絡号機が全ての特殊呼びに応答すると(ステップC13のYes)、列車連絡階16へ移動する(ステップC20)。
【0060】
一方、連絡号機が全ての特殊呼びに応答する前に、「特殊呼びボタン設置階到着期限」までの残り時間が予め設定された第1の時間(例えば2分)を下回ると(ステップC14のNo)、割当制御部38は、その連絡号機に割当てられた特殊呼び以外の通常の乗場呼びを別の号機(乗りかご)に割当変更する。さらに、割当制御部38は、新たな乗場呼びを当該連絡号機に割り当てないように制限して、特殊呼びにできるだけ早く応答させるように制御する(ステップC15)。
【0061】
また、連絡号機が割当てられた全ての特殊呼びに応答する前に、「特殊呼びボタン設置階到着期限」までの残り時間がさらに少なくなり、予め設定された第2の時間(例えば1分)を下回ると(ステップC17のNo)、割当制御部38は、列車連絡階16以外のかご呼びをキャンセルして、特殊呼びにさらに早く応答させるように制御する(ステップC18)。
【0062】
なお、かご呼びをキャンセルするときは、乗りかご内の図示せぬスピーカを通じて、かご呼びがキャンセルされた利用者に対して、途中の階で別の乗りかごへの乗換えをアナウンスすることが好ましい。
【0063】
このようにして、連絡号機が割当てられた全ての特殊呼びに応え終えると(ステップC19のYes)、連絡号機は列車連絡階16へ移動する(ステップC20)。
【0064】
(d)列車連絡階までの割当制御
次に、連絡号機が列車連絡階16まで移動するまでの割当制御について説明する。
特殊呼びに応答した連絡号機は、そこから列車連絡階16へ向かう。その際、「列車連絡階到着期限」までに時間の余裕があれば、途中で列車連絡階16以外の乗場呼びに応答する。
【0065】
なお、特殊呼びボタン14が設置された特定階17で、新たな特殊呼びが登録された場合には、連絡号機選定部36が時間の余裕を検討した上で、特殊呼びに応え終えた連絡号機に、さらに特殊呼びを割当てる場合がある。その場合は、図8のフローチャートに示した処理に戻る。
【0066】
図9は列車連絡階までの割当制御の処理を示すフローチャートである。
【0067】
連絡号機が列車連絡階16に到着すると(ステップD11のYes)、連絡運転用の設定が解除され、他の号機(乗りかご)と同様の通常の運転に戻る(ステップD18)。
【0068】
一方、連絡号機が列車連絡階16に到着する前に、「列車連絡階到着期限」までの残り時間が予め設定された第1の時間(例えば2分)を下回った場合は(ステップD12のYes)、割当制御部38は、その連絡号機に割当てられた特殊呼び以外の通常の乗場呼びを別の号機(乗りかご)に割当変更する。さらに、割当制御部38は、新たな乗場呼びを当該連絡号機に割り当てないように制限して、列車連絡階16にできるだけ早く到着させるように制御する(ステップD13)。
【0069】
また、連絡号機が列車連絡階16に到着する前に、「列車連絡階到着期限」までの残り時間がさらに少なくなり、予め設定された第2の時間(例えば1分)を下回ると(ステップD15のNo)、割当制御部38は、列車連絡階16よりも手前の階のかご呼びをキャンセルして、列車連絡階16にさらに早く到着させるように制御する(ステップD16)。
【0070】
このようにして連絡号機が列車連絡階16に到着すると(ステップD17)、連絡運転用の設定を解除して、連絡号機としての運転動作を終了する(ステップD18)。
【0071】
このように、特殊呼びボタン14の操作により、各エレベータのいずれかが連絡号機として割り当られて列車21へ連絡運転する。したがって、時間帯で連絡運転に切り替える方式と違って、列車21を利用する人がいるときのみ連絡運転が行われるので、列車21を利用しない人に対する運転サービスの低下を防ぐことができる。
【0072】
また、連絡運転中であっても、「列車連絡階到着期限」までに時間の余裕がある間は他の乗場呼びにも通常通り応答するので、連絡号機にて列車21を利用しない人に対する運転サービスも行うことができる。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0074】
列車21のすべての便を連絡運転の対象として登録しておくこと、各便の時間間隔が短い場合に特殊呼びが有効な状態が連続してしまう可能性がある。そこで、第2の実施形態では、例えば「通勤快速」や「特別快速」といったように、連絡運転の対象とする便を任意に設定可能とするものである。
【0075】
すなわち、エレベータの管理者が情報登録装置31を通じて全ての便の情報を登録した後、その中で連絡運転の対象とする便を設定する。具体的には、所定の操作により図示せぬ設定画面を表示し、その設定画面上で連絡運転の対象とする便を任意に選択する。
【0076】
これにより、図10に示すように、列車連絡テーブル33aには、連絡運転の対象とする便に列車連絡有効フラグが設定される。特殊呼びボタン有効化部34では、この列車連絡有効フラグが「有効」となっているものを対象にして、図6に示したような特殊呼びボタン14の有効化処理を実行する。
【0077】
このように、連絡運転の対象とする便を限定することで、列車21を利用しない人のサービス低下を極力抑えられる利点がある。特に、列車21の便数が多い場合には、その中である程度主要な便に限定しておくことで、特殊呼びボタン14が頻繁に使われることを防ぐことができる。
【0078】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0079】
第3の実施形態では、特殊呼びボタン14を有効化する階床を任意に設定可能としたものである。すなわち、特殊呼びボタン14が設置されている特定階17が多数存在する場合には、各階で同じ便に対して特殊呼びボタン14が操作される可能性が高くなる。その場合、連絡号機の停止階床数が多くなるため、列車連絡階16に到着するまでに時間がかかってしまう。
【0080】
例えば、50階建てのマンションで、1階を列車連絡階とし、2階から50階までの49階床全ての特殊呼びボタン14が同じ便に対して操作されたとすると、1階床停止する毎に所要時間が15秒増加すると仮定すれば、最上階から途中どの階にも停止しない場合と比べ、全体で約12分多く必要とする。したがって、列車連絡階16の到着時刻で定時性を確保するためには、途中で多くの階に停止する可能性をふまえて、「特殊呼びボタン操作期限」をより早めておく必要がある。
【0081】
そこで、エレベータの管理者が情報登録装置31を通じて特殊呼びボタン14を有効化する階床を任意に設定できるようにしておく。具体的には、所定の操作により図示せぬ設定画面を表示し、その設定画面上で有効化の対象とする階床を任意に選択する。
【0082】
なお、特殊呼びボタン14を有効化する階床としては、例えば列車21を利用する人が多いテナントなどが入っている階床、一定の階床数毎、特別料金を支払った階床、列車連絡階16までに所定の時間以上がかかる階床などが挙げられる。
【0083】
情報登録装置31を通じて有効化設定された階床の情報は、図11に示すような階床テーブル33bに記憶される。この階床テーブル33bは、例えば情報記憶部33に設けられる。
【0084】
特殊呼びボタン有効化部34は、この階床テーブル33bを参照して、特殊呼びボタン14を有効化する階床か否かを判断し、有効化する階床であれば、図6に示したような特殊呼びボタン14の有効化処理を実行する。
【0085】
このように、特殊呼びボタン14が設置されている特定階17が多い場合でも、その中で有効とする階床を限定することにより、連絡号機の停止階床数を削減して、できるだけ早く列車連絡階16に到着させることができる。例えば50階建てのマンションで、特殊呼びボタン14を3階床ごとに1か所だけ有効にすると、全ての有効な特殊呼びボタン14が押されても、所要時間の増加は4分程度に抑えられる。
【0086】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0087】
第4の実施形態では、連絡号機が列車連絡階16に実際に到着した時間を学習し、運転計画を最適化するようにしたものである。
【0088】
なお、装置構成については、図3に示した構成と同様であるため、ここでは運転計画の学習処理の動作についてのみ説明する。
【0089】
図12は本発明の第4の実施形態に係る運転計画の学習処理の動作を示すフローチャートである。
【0090】
運転計画作成部37は、連絡号機が列車連絡階16に到着すると(ステップE11のYes)、その到着した時刻を記録する(ステップE12)。同時に、運転計画作成部37は、時間の余裕が足りないことなどにより、特殊呼び以外の乗場呼びの割当変更や新規割当制限、列車連絡階16以外のかご呼びのキャンセルなどの運転計画変更を行った頻度を記録しておく(ステップE13)。
【0091】
ここで、連絡号機の実際の到着時刻が運転計画で定められた「列車連絡階到着期限」の時刻よりも遅かった場合には(ステップE14のNo)、エレベータの利用者を列車21の出発時刻までに連絡するという目的を果たしていないことになる。そこで、運転計画作成部37は、列車連絡テーブル33aの当該列車21の便に対する「特殊呼びボタン操作期限」を予め設定された時間(例えば1分)だけ早くして、次回以降の列車連絡階16への到着を早めるように調整する(ステップE16)。
【0092】
また、連絡号機の運転計画変更が予め設定された回数以上の高い頻度で行われた場合には(ステップE15のYes)、列車利用者を優遇し過ぎており、非利用者のサービスを低下させている可能性が高いことになる。このような場合、運転計画作成部37は、列車連絡テーブル33aの当該列車21の便に対する「特殊呼びボタン操作期限」を予め設定された時間(例えば1分)だけ早くする(ステップE16)。これにより、運転計画変更の頻度を下げ、列車21を利用しない人にたいする運転サービスを維持することができる。
【0093】
なお、上記ステップE15において、例えば列車連絡階16に1回到着するごとに、乗場呼びの割当てを3回以上変更または制限するか、あるいは、かご呼びを1回以上キャンセルした場合に高い頻度であると判定することでも良い。
【0094】
一方、連絡号機の到着が「列車連絡階到着期限」の時刻よりも予め設定された時間(例えば3分)以上早く、かつ、連絡号機の運転計画変更が行われていない場合には(ステップE17のYes)、現在設定されている「特殊呼びボタン操作期限」が早すぎる可能性がある。
【0095】
このような場合には、運転計画作成部37は、列車連絡テーブル33aの当該列車21の便に対する「特殊呼びボタン操作期限」を予め設定された時間(例えば1分)だけ遅くする(ステップE19)。その際、特殊呼びボタン14が全ての有効階で操作されても、連絡号機が列車連絡階16に「列車連絡階到着期限」以前に到着できることを予測到着時間算出部35にて確認した上で時間調整を行うものとする(ステップE18)。
【0096】
なお、「特殊呼びボタン操作期限」を変更するときは、「特殊呼びボタン設置階到着期限」を連動して変更するものとする。これにより、「特殊呼びボタン操作期限」を変更したことによる影響を、連絡号機が特殊呼びに応答するまでの期間と、特殊呼びに応答した後の期間に適切に配分することできる。この場合、「特殊呼びボタン設置階到着期限」については、「特殊呼びボタン操作期限」を変更した量の半分だけ変更するようにしてもよい。
【0097】
このように、運転計画を連絡号機の実際の到着時刻に応じて調整することで、連絡運転の効率を上げることができ、また、それに伴い列車21を利用しない人に対する運転サービスの低下を軽減することができる。
【0098】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0099】
第5の実施形態では、特殊呼びボタン14の乱用を防止するため、ICカードを用いて利用制限をかけるようにしたものである。
【0100】
図13は本発明の第5の実施形態に係るエレベータの群管理システムの機能構成を示すブロック図である。なお、上記第1の実施形態における図3の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明を省略するものとする。
【0101】
図1の構成と異なる点は、ICカード18、ICカード読取器19、利用情報記憶部39が追加されていることである。
【0102】
ICカード18は、特殊呼びボタン14の利用が許可された利用者に配布されている。このICカード18には、利用者を認証するための認証情報が記録されている。ICカード読取器19は、特殊呼びボタン14の近くに設置され、ICカード18に記録された認証情報を読み取って群管理制御装置32に転送する。
【0103】
利用情報記憶部39は、群管理制御装置32内に設けられており、予め登録された各利用者の認証情報を記憶している。特殊呼びボタン有効化部34は、ICカード読取器19によって読み取ったICカード18の認証情報と利用情報記憶部39に記憶された認証情報とを比較して、両者が一致した場合にのみ特殊呼びボタン14を有効化する。
【0104】
以下に、第5の実施形態としての処理動作について説明する。
【0105】
図14は第5の実施形態における特殊呼びボタンの利用制限処理を示すフローチャートである。
【0106】
「特殊呼びボタン操作期限」の所定時間前(例えば5分前)から「特殊呼びボタン操作期限」までの間に(ステップF11のYes)、利用者が持つICカード18を乗場12に設置されたICカード読取器19に近づけるか接触させると(ステップF12のYes)、そのICカード18の情報が読み取られて群管理制御装置32に転送される。
【0107】
ここで、群管理制御装置32に設けられた特殊呼びボタン有効化部34は、ICカード読取器19によって読み取られたICカード18の認証情報が利用情報記憶部39に記憶されているか否かを判断する(ステップF13)。同じ認証情報が利用情報記憶部39に記憶されている場合には(ステップF13のYes)、特殊呼びボタン有効化部34は、正規の利用者であると判断し、当該乗場12に設置された特殊呼びボタン14を例えば10秒間のみ有効化する(ステップF14)。その際、特殊呼びボタン14の操作を許可するだけでなく、特殊呼びボタン14が操作されたものとして、特殊呼びを自動登録するようにしてもよい。
【0108】
このように、ICカード18を用いて特殊呼びボタン14を有効化することで、許可さていない人が特殊呼びボタン14を勝手に操作することを防ぐことができる。
【0109】
なお、上記実施形態では、ICカード18を例にしたが、例えば磁気カードや携帯電話などであっても良く、要はその利用者を認証できる情報を記録できる媒体であれば、どのような形態であってもよい。
【0110】
また、ICカード18として、列車の交通機関で発行されている乗車用カードを利用することも可能である。この乗車用カードには、各カードに固有の識別情報の他に、利用した駅、時間等を含む利用履歴情報が記録されている。各駅の改札には、カード読取り機が設置されており、そこを通すたびにカード上の利用履歴情報が自動更新されるようになっている。この乗車用カードの自動更新機能を利用することにより、特殊呼びボタン14の利用を制限することができる。
【0111】
以下に、その方法について詳しく説明する。
なお、図13の構成において、ICカード18は列車の交通機関が発行する一般的な乗車用カードであり、ICカード読取器19はこの乗車用カードに記録されている利用履歴情報を読取り可能なものであるとする。
【0112】
図15は乗車用カードを利用した場合の特殊呼びボタンの利用制限処理を示すフローチャートである。
【0113】
「特殊呼びボタン操作期限」の所定時間前(例えば5分前)から「特殊呼びボタン操作期限」までの間に(ステップG11のYes)、利用者が乗場12に設置されたICカード読取器19にICカード18を近づけるか接触させると(ステップG12のYes)、そのICカード18の情報が読み取られて群管理制御装置32に転送される。ここでは、ICカード18が乗車用カードであり、そこに記録されている利用履歴情報(利用した駅、時間等)が読み取れられて群管理制御装置32に転送されることになる。
【0114】
群管理制御装置32に設けられた特殊呼びボタン有効化部34は、ICカード読取器19によって読み取ったICカード18の利用履歴情報と同じ情報が利用情報記憶部39に記憶されているか否かを判断する(ステップG13)。
【0115】
ここで、利用情報記憶部39には、エレベータの乗場12にて利用者が特殊呼びボタン14を操作するときに読み取ったICカード18の利用履歴情報が逐次登録されるようになっている。したがって、同じ情報が既に利用情報記憶部39に存在するということは、利用者が特殊呼びボタン14を使ってエレベータに乗ったにも関わらず、その後で列車21に乗っていないことを意味する。言い換えれば、単に列車連絡階16である1階に早く行くために特殊呼びボタン14を利用したことになる。特殊呼びボタン14の列車21に乗っていれば、ICカード18の利用履歴情報が改札にて自動更新されるので、利用情報記憶部39に登録されている前回の利用履歴情報とは違ったものになるはずである。
【0116】
そこで、ICカード18の利用履歴情報と同じ情報が利用情報記憶部39に存在する場合、つまり、前回登録時と同じ利用履歴情報が利用情報記憶部39に記憶されている場合には(ステップG13のYes)、特殊呼びボタン有効化部34は、その利用者が列車連絡で特殊呼びボタン14を使っていないものと判断し、特殊呼びボタン14の利用を禁止する。
【0117】
一方、ICカード18の利用履歴情報と同じ情報が利用情報記憶部39に存在しない場合には(ステップG13のNo)、特殊呼びボタン有効化部34は、別の利用者あるいは同じ利用者が列車21を一度利用した後で来たものと判断し、特殊呼びボタン14を例えば10秒間に限定して有効化する(ステップG14)。その際、特殊呼びボタン14の操作を許可するだけでなく、特殊呼びボタン14が操作されたものとして、特殊呼びを自動登録するようにしてもよい。
【0118】
また、特殊呼びボタン有効化部34は、そのときに読み取った利用履歴情報を利用情報記憶部39に再登録して、同じICカード18を用いて特殊呼びボタン14を連続使用できようにする(ステップG15)。
【0119】
利用履歴情報の登録動作は、特殊呼びボタン14を有効化した後、その特殊呼びボタン14が実際に操作されたときに行うようにしてもよい。また、ICカード18の識別番号を含めて登録すれば、ICカード18を持つ利用者を識別番号から特定でき、各利用者毎に特殊呼びボタン14の使用を管理することができる。
【0120】
このように、列車21の乗車用カードを利用すれば、ビル10内で実際に列車21に乗る人だけを対象にしてエレベータを連絡運転することができる。さらに、乗車用カードに記録されている利用履歴情報を用いて特殊呼びボタン14の利用を制限できるので、列車21を利用しない人に対する運転サービスの低下を防ぐことができる。
【0121】
なお、上記各実施形態では、公共交通機関の輸送体として列車を例にして説明したが、本発明は列車に限らず、定時性を有する公共交通機関であれば、バスやモノレール、船、旅客機などであっても良い。ただし、その公共交通機関とビルとの間隔が離れていると、時間的な誤差が大きくなるため、エレベータを正確に連絡運転することは難しくなる。そのため、例えばバスであれば、バスの停留場がビルのすぐに近くにあるなど、ビルに近接した公共交通機関であることが好ましい。
【0122】
また、公共交通機関としても、予め定められた時刻に正確に発着するものを対象とすることが好ましい。
【0123】
また、上記各実施形態では、輸送体である列車の出発時刻に合わせてエレベータを連絡運転するものとしたが、到着時刻に合わせることでもよい。ただし、列車が到着してから出発するまでの間隔が長いと、連絡運転としての効果が小さくなるため、出発時刻に合わせることの方が好ましい。
【0124】
要するに、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0125】
10…ビル、11a,11b,11c…乗りかご、12…乗場、13…乗場呼びボタン、14…特殊呼びボタン、15…表示器、16…列車連絡階、17…特定階、18…ICカード、19…ICカード読取器、20…駅、21…列車、30a,30b,30c…単体制御装置、31…情報登録装置、32…群管理制御装置、33…情報記憶部、33a…列車連絡テーブル、33b…階床テーブル、34…特殊呼びボタン有効化部、35…予測到着時間算出部、36…連絡号機選定部、37…運転計画作成部、38…割当制御部、39…利用情報記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公共交通機関の輸送体が予め定められた時刻に発着する発着場に隣接されたビルを対象として、そのビルに設置された複数台のエレベータの運転を群管理制御するエレベータの群管理制御システムにおいて、
少なくとも上記輸送体の出発時刻が登録されたテーブル手段と、
特定の階の乗場に設置され、通常の乗場呼びとは別の特殊呼びを登録するための特殊呼びボタンと、
この特殊呼びボタンの操作に伴い、上記各エレベータの中から上記特殊呼びに応答させるエレベータを上記輸送体に対する連絡号機として選定する連絡号機選定手段と、
この連絡号機選定手段によって選定された連絡号機を上記テーブル手段に記憶された上記輸送体の出発時刻に合わせて運転するべく、上記特殊呼びボタンの操作期限、上記特殊呼びボタンの設置階までの到着期限、上記連絡階までの到着期限を定めた運転計画を作成する運転計画作成手段と、
この運転計画作成手段によって作成された運転計画に従って上記連絡号機を上記特殊呼びボタンの設置階に応答させると共にそこから上記発着場に近い連絡階まで移動できるように当該連絡号機に対する呼びの割り当てを制御する割当制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの群管理制御システム。
【請求項2】
上記特殊呼びボタンの操作によって上記特殊呼びが登録された際に、上記各エレベータの現在の運転状況から上記特殊呼びボタンの設置階までの到着時間を予測する予測到着時間算出手段を備え、
上記連絡号機選定手段は、上記予測到着時間算出手段によって算出された予測到着時間に基づいて、最も早く上記特定の階床に到着可能なエレベータを上記輸送体の連絡号機として選定することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項3】
上記割当制御手段は、上記運転計画によって定められた上記特殊呼びボタンの設置階までの到着期限に対する残り時間が予め設定された第1の時間を下回った場合に、上記特殊呼び以外の通常の乗場呼びを他のエレベータに割当変更すると共に新規の乗場呼びの割り当てを制限することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項4】
上記割当制御手段は、上記運転計画によって定められた上記特殊呼びボタンの設置階までの到着期限に対する残り時間が上記第1の時間よりも短い第2の時間を下回った場合に、上記連絡階以外の行先階が指定されたかご呼びをキャンセルすることを特徴とする請求項3記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項5】
上記割当制御手段は、上記運転計画によって定められた上記連絡階までの到着期限に対する残り時間が予め設定された第1の時間を下回った場合に、上記特殊呼び以外の通常の乗場呼びを他のエレベータに割当変更すると共に新規の乗場呼びの割り当てを制限することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項6】
上記割当制御手段は、上記運転計画によって定められた上記連絡階までの到着期限に対する残り時間が上記第1の時間よりも短い第2の時間を下回った場合に、上記連絡階以外の行先階が指定されたかご呼びをキャンセルすることを特徴とする請求項5記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項7】
上記運転計画作成手段は、上記運転計画によって定められた上記連絡階までの到着期限と実際に上記連絡号機が上記連絡階に到着した時刻とを比較して、その比較結果に応じて上記特殊呼びボタンの操作期限を調整することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項8】
上記運転計画によって定められた上記特殊呼びボタンの操作期限より前の一定の期間だけ上記特殊呼びボタンを有効化する特殊呼びボタン有効化手段を備え、
上記連絡号機選定手段は、上記特殊ボタン有効化手段によって上記特殊呼びボタンが有効化されている場合のみ、上記連絡号機の選定を行うことを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項9】
上記テーブル手段に記憶された上記輸送体の各便に対して連絡運転の有効/無効を設定する設定手段を備え、
上記特殊呼びボタン有効化手段は、上記設定手段によって有効設定された便の出発時刻が近づいた場合にのみ上記特殊呼びボタンを有効化することを特徴とする請求項8記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項10】
上記特殊呼びボタンを有効化する階床を設定する設定手段を備え、
上記特殊呼びボタン有効化手段は、上記設定手段によって有効設定されて階床に限定して、上記特殊呼びボタンを有効化することを特徴とする請求項8記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項11】
上記特殊ボタン有効化手段によって上記特殊呼びボタンが有効化されている場合に、上記運転計画によって定められた上記特殊呼びボタンの操作期限と共に現在連絡運転の対象となっている上記輸送体の運転情報を表示する表示手段を具備したことを特徴とする請求項8記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項12】
利用者を認証するための認証情報が記録された記録媒体と、
予め各利用者の認証情報が登録された記憶手段と、
上記特殊呼びボタンの設置階に設置され、上記記録媒体から認証情報を読み取る情報読取り手段とを備え、
上記特殊ボタン有効化手段は、上記情報読取り手段によって上記記録媒体から読み取った認証情報が上記記憶手段に登録された認証情報と一致する場合に、上記特殊ボタンの使用が許可された利用者であると判断し、当該階床に設置された上記特殊呼びボタンを予め設定された時間だけ有効化することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項13】
上記輸送体の利用履歴報が記録された記録媒体と、
上記特殊呼びボタンの設置階に設置され、上記記録媒体から利用履歴情報を読み取る情報読取り手段と、
この情報読取り手段によって読み取った利用履歴情報が登録される記憶手段とを備え、
上記特殊ボタン有効化手段は、上記情報読取り手段によって上記記録媒体から読み取った利用履歴情報が上記記憶手段に登録された利用履歴情報と異なる場合に、上記輸送体を利用する前であると判断し、当該階床に設置された上記特殊呼びボタンを予め設定された時間だけ有効化すると共に、その利用履歴情報を上記記憶手段に再登録することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理制御システム。
【請求項14】
上記公共交通機関の輸送体とは列車のことであり、上記ビルは上記列車の発着場である駅に隣接していることを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−208777(P2010−208777A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55511(P2009−55511)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】