説明

エレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造

【課題】フック部材に養生マットを掛着して垂設するだけでエレベーターの昇降かごの内側壁面を簡易に養生できる養生構造を提供すること。
【解決手段】エレベーターの昇降かごの内側壁面と略適合した方形状にして、かつその上下端縁部に複数の掛着穴10が設けられた養生マット5と、該養生マット5が取り付けられる内側壁面の上下部に対向させ、かつ着脱自在として取り付けられる複数のフック部材11を含み、該フック部材11が養生すべき昇降かごの内側壁面の上下部に対向させて取り付けられ、これら上下のフック部材11に養生マット5が上下の掛着穴10を介して垂設され、該養生マット5により内側壁面が養生保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの昇降かごの内側壁面を養生マットにより簡易にして、かつ速やかに養生することができるエレベーターの養生構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にエレベーターは、例えば、建築物であるビルオーナーの所有物であり、ビル入居者の使用物である。
【0003】
そこで、エレベーターの設置してあるビル等において建築作業や改築作業等を行う場合、建築資材や工具類等の搬入・搬出、作業員の出入りが階段の上がり下がりであるとすると、作業効率が悪いばかりか、疲労度が増すためにエレベーターを借りて使用することになる。
【0004】
ところで、エレベーターを借用する以上はこれを傷付けたり、汚したりすることは許されないために、これら外傷等からエレベーターの出入口や昇降かご内を養生保護する必要がある。
【0005】
そこで、本発明者等は、先に、エレベーターの養生作業を迅速にして、かつ容易に行うことを目的として、養生パネルを連結材で挟着連結して昇降かごの内側壁面を養生する連結材と養生構造を発明し、特許出願をした(特願2005−116359)。
【0006】
この特許出願に係る発明は、一対の挟着部における一対の挟着片をコ字形に拡開して養生パネルを差し込めばよく、これにより各養生パネルは一対の挟着片のばね性により固定的に挟着連結されるので、養生パネルの連結に蝶番や連結金具を一切必要とせず、簡易にして、かつ従来に比して迅速に養生パネルを連結することができ、その目的を達成し得るものであるが、ばね性を有する一対の挟着片を拡開させて養生パネルを差し込む作業が大変であって、ある程度の熟練を要し、なかなか思うように作業が進ず、作業の迅速性に問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題点は、連結材の挟着片に養生パネルを挟み込むという面倒な作業のため、養生作業を簡単にして、迅速に行うことができないという点である。
【0008】
従って、本発明の目的は、連結材を用いることなく、フック部材に養生マットを掛着して垂設するだけで養生でき、エレベーターの昇降かごの内側壁面の養生保護を簡易にして、かつ迅速に行うことができる養生構造を提供することにある。
【0009】
この目的のため、本発明の請求項1に記載のエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造は、エレベーターの昇降かご3の内側壁面4と略適合した方形状にして、かつその上下端縁部に、複数の掛着穴10が設けられた軽量にして、かつクッション性と難燃性を有する養生マット5と、
前記養生マット5が取り付けられる前記内側壁面4の上下部に対向させ、かつ着脱自在として取り付けられる複数のフック部材11を含み、
前記フック部材11が養生すべき昇降かご3の内側壁面4の上下部に対向させて取り付けられ、これら上下のフック部材11に前記養生マット5が上下の掛着穴10を介して垂設され、該養生マット5により内側壁面4が養生される構成を特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に記載のエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造は、エレベーターの昇降かご3の内側壁面4と略適合した方形状で、その縦方向には、前記内側壁面4に設けられた手すり25の取付けブラケット26が当らないようにするための縦方向溝部27が形成されるとともに、その上下端縁部には複数の掛着穴10が設けられた軽量にして、かつクッション性と難燃性を有する養生マット5と、
前記養生マット5が取り付けられる前記内側壁面4の上下部に対向させ、かつ着脱自在として取り付けられる複数のフック部材11を含み、
前記フック部材11が養生すべき昇降かご3の内側壁面4の上下部に対向させて取り付けられ、これら上下のフック部材11に前記養生マット5が上下の掛着穴10を介して垂設され、該養生マット5により前記手すり25が設けられている内側壁面4が養生される構成を特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に記載のエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造は、養生マット5は、ポリプロピレン発泡体6の表面に不燃性のアルミガラスクロスシート7が接着され、更に、前記アルミガラスクロスシート7の表面に透明のフレミラー防災シート8が重合接着されて構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に記載のエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造は、上下のフック部材11は、昇降かご3の内側壁面4が鉄製の場合には、マグネットテープ等の磁性体14を介して吸着脱自在とされていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項5に記載のエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造は、上下のフック部材11は、昇降かご3の内側壁面4が樹脂等の非鉄製の場合には、吸着脱可能な粘着テープ16を介して吸着脱自在とされていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項6に記載のエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造は、フック部材11は、共通の取付け基板部15にフック部13が間隔を有して横一列に設けられて構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1および2に記載の発明によれば、フック部材11が養生すべき昇降かご3の内側壁面4の上下部に対向させて取り付けられ、これら上下のフック部材11に養生マット5が上下の掛着穴10を介して垂設されるだけで、手すり25が設けられている内側壁面4であっても、養生マット5により養生されるものであるから、熟練を要することなく、素人であっても簡易にして、かつ速やかにエレベーターの昇降かご3の内側壁面4を養生マット5により養生することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、養生マット5は、軽量にして、クッション性と難燃性を有するものであるから、運搬等の取り扱いにおいて楽であり、養生内側壁面4に対して衝撃を緩和し、防災上においても安心・安全に養生作業を行うことができる。
【0017】
請求項4および5に記載の発明によれば、養生壁面4が鉄製、非鉄製のいずれをも問わず、フック部材11の着脱が可能で、しかも養生壁面4にのり、傷等何らの跡も残すことなくフック部材11を取り除くことができ、また、繰り返し同じフック部材11の再使用ができるので、経済的である。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、フック部材11の取り付け位置決めが簡単で、一度で複数のフック部材の着脱を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態についてその作用と共に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係るエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造の一例での一部横断の概略平面図で、乗場ドア1と昇降かご3のドア2の開成状態で、昇降かご3の養生内側壁面のうち、主要な側壁面4を養生マット5により養生している状態を示す。
【0021】
養生マット5は、図2および図3に示されているように、エレベーターの昇降かご3の内側壁面4と略適合した方形状で、基材であるポリプロピレン発泡体6の表面に不燃性のアルミガラスクロスシート7が接着され、更に、該アルミガラスクロスシート7の表面に透明のフレミラー防災シート8が重合接着されて構成され、全体が軽量にして、かつクッション性と難燃性を有するマットとされている。
【0022】
養生マット5には、その上下端縁部に、それぞれに鳩目金具9を付けた複数の掛着穴10が等間隔で設けられている。
【0023】
一方、養生内側壁面4の上下端部には、図4および図5に示されているように、それぞれ複数のフック部材11が等間隔で上下対称にして、かつ着脱自在として取り付けられる。
【0024】
フック部材11は、好ましくは、プラスチック等の硬質合成樹脂による一体成型品として得られ、取り付基板部12とフック部13を含み、取り付基板部12の裏面には、図6に斜線で示されているように、マグネットテープ等の磁性体14が設けられ、内側壁面4が鉄製の場合には、この磁性体14を介してフック部材11が吸着脱自在とされている。
【0025】
そして、フック部材11は、磁性体14を介して内側壁面4の上下端部に相対向させて対称形に取り付けられる。即ち、上部のフック部材11はそのフック部13を上向きとし、下部のフック部材11はそのフック部13を上向きとして、それぞれ等間隔で横一列に取り付けられる。
【0026】
このようにして、フック部材11が取り付けられた状態において、養生マット5は、その各掛着穴10を介して各フック部材11のフック部13に掛着されて垂設され、これにより内側壁面4は養生マット5により養生保護される。
【0027】
なお、フック部材11は、図7に示されているように、共通の取り付基板部15に間隔を有してフック部13が横一列に設けられて構成され、この取付け基板部15を内側壁面4の上下端部に着脱自在として取り付ければ、取り付けの位置決めが簡単で、一度で複数のフック部13の着脱を行うことができる。
【0028】
養生内側壁面4がステンレス製や樹脂製の非鉄製の場合には、磁性体14による取り付けはできないため、各フック部材11は、取付け基板部12(または15)の裏面に接着された着脱自在な粘着テープ16を介して取り付けられる。
【0029】
着脱自在な粘着テープ16としては、例えば、ナイスタック(登録商標 ドイツ製)や特許第3712710号に係る粘着テープが用いられる。
【0030】
両粘着テープとも、テープが引っ張られると、テープ幅が次第に狭くなって粘着面積が小さくなり、その結果、剥がれるという構成になっており、ナイスタック(登録商標 ドイツ製)の場合は、図8に示されているように、赤いライン17で区切られたタブ18を摘んで引っ張ると、テープ体19は想像線で示されているように、伸張しながらテープ幅が次第に狭くなって接着面積が小さくなり、結果、フック部材11は剥がされるという構成になっている。
【0031】
また、特許第3712710号に係る粘着テープ16は、図9から図11に示されているように、テープ状のゴム製基材20と、この基材20の表裏両面に設けられた粘着剤層21、22と、一方の粘着剤層21または、両方の粘着剤層21、22の上面長手方向に接着されたナイロン等の合成繊維の糸状体、または網目状体である剥離補助部材23を含み、非粘着面の摘み部24を摘んで引っ張ると、ゴム製基材20が剥離補助部材23と共に引っ張られて、ゴム製基材20が剥離補助部材23により伸長して、テープ幅が次第に狭くなって粘着面積が小さくなり、結果、フック部材11は剥がされるという構成になっている。
【0032】
図12から図14に示されている実施例は、エレベーターの昇降かご3の内側壁面4に手すり25が設けられている場合、この手すり25の取付けブラケット26を避けるために、養生マット5の縦方向に縦長溝部27が形成され、これにより手すり25が設けられている内側壁面4が養マット5により養生し得るようにしたものである。
【0033】
このようにして各内側壁面4は、養生マット5の垂設により養生保護されるが、床面には、特に図示しないが、クッション性シートが敷かれ、かつその上にベニヤ板が設けられる。
【0034】
また、天井には、特に図示しないが、照明の明かり取りと、放熱の都合上から、プラスチック製の穴明きパネルが設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造の一例での一部横断の概略平面図である。
【図2】養生マットの一例を示す一部省略の正面図である。
【図3】養生マットの一例での一部省略の拡大縦断面図である。
【図4】昇降かごの内側壁面にフック部材を取り付けた状態を示す一部省略の正面図である。
【図5】フック部材の取り付け態様の一例を示す一部省略の拡大縦断面図である。
【図6】フック部材の磁性体部分を示す説明図である。
【図7】フック部材の他例を示す一部省略の正面図である。
【図8】フック部材の取り付け態様の他例である着脱自在な粘着テープを示す正面図である。
【図9】着脱自在な粘着テープの他例を示す一部省略の平面図である。
【図10】図9の10−10線に沿った拡大断面図である。
【図11】図9の11−11線に沿った部分拡大断面図である。
【図12】養生マットの他例を示す一部省略の正面図である。
【図13】手すりを有する内側壁面の養生状態を示す一部断面の平面図である。
【図14】図13における手すりの取付けブラケットと養生マットの縦方向溝部との関係を示す一部省略の部分断面図である。
【符号の説明】
【0036】
3 昇降かご
4 内側壁面
5 養生マット
6 リプロピレン発泡体
7 アルミガラスクロスシート
8 フレミラー防災シート
9 鳩目金具
10 掛着穴
11 フック部材
13 フック部
14 磁性体
15 共通の取付け基板部
16 着脱自在な粘着テープ
27 縦方向溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの昇降かご(3)の内側壁面(4)と略適合した方形状にして、かつその上下端縁部に、複数の掛着穴(10)が設けられた軽量にして、かつクッション性と難燃性を有する養生マット(5)と、
前記養生マット(5)が取り付けられる前記内側壁面(4)の上下部に対向させ、かつ着脱自在として取り付けられる複数のフック部材(11)を含み、
前記フック部材(11)が養生すべき昇降かご(3)の内側壁面(4)の上下部に対向させて取り付けられ、これら上下のフック部材(11)に前記養生マット(5)が上下の掛着穴(10)を介して垂設され、該養生マット(5)により内側壁面(4)が養生される構成を特徴とするエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造。
【請求項2】
エレベーターの昇降かご(3)の内側壁面(4)と略適合した方形状で、その縦方向には、前記内側壁面(4)に設けられた手すり(25)の取付けブラケット(26)が当らないようにするための縦方向溝部(27)が形成されるとともに、その上下端縁部には複数の掛着穴(10)が設けられた軽量にして、かつクッション性と難燃性を有する養生マット(5)と、
前記養生マット(5)が取り付けられる前記内側壁面(4)の上下部に対向させ、かつ着脱自在として取り付けられる複数のフック部材(11)を含み、
前記フック部材(11)が養生すべき昇降かご(3)の内側壁面(4)の上下部に対向させて取り付けられ、これら上下のフック部材(11)に前記養生マット(5)が上下の掛着穴(10)を介して垂設され、該養生マット(5)により前記手すり(25)が設けられている内側壁面(4)が養生される構成を特徴とするエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造。
【請求項3】
前記養生マット(5)は、ポリプロピレン発泡体(6)の表面に不燃性のアルミガラスクロスシート(7)が接着され、更に、前記アルミガラスクロスシート(7)の表面に透明のフレミラー防災シート(8)が重合接着されて構成されている請求項1または2いずれか1項のエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造。
【請求項4】
前記上下のフック部材(11)は、前記昇降かご(3)の内側壁面(4)が鉄製の場合には、マグネットテープ等の磁性体(14)を介して吸着脱自在とされている請求項1または2いずれか1項のエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造。
【請求項5】
前記上下のフック部材(11)は、前記昇降かご(3)の内側壁面(4)が樹脂等の非鉄製の場合には、吸着脱可能な粘着テープ(16)を介して吸着脱自在とされている請求項1または2いずれか1項のエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造。
【請求項6】
前記フック部材(11)は、共通の取付け基板部(15)にフック部(13)が間隔を有して横一列に設けられて構成されている請求項1または2いずれか1項のエレベーターの昇降かご内側壁面の養生構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−24404(P2008−24404A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197700(P2006−197700)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(392023038)宝養生資材株式会社 (18)
【Fターム(参考)】