説明

エレベーター用ロープ巻き取り補助具

【課題】、旧ロープを床面に直接置くことなくロープの交換を行うことができ、旧ロープを同一径で巻き取って簡単に結束することができるエレベーター用ロープ巻き取り補助具を提供する。
【解決手段】本ロープ巻き取り補助具は、環状を呈する底面板1と、底面板1の外周部から起立するように底面板1に設けられた円周壁2と、底面板1に設けられたロープ浮かせ5とを備える。円周壁2には、その一部に、上方に開口する開口部6が形成されている。また、ロープ浮かせ5は、円周壁2の開口部6に近接して配置されるとともに、その一部が、開口部6の最深部6aよりも高い位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーター用ロープを交換する際に使用される巻き取り補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーターでは、主ロープや調速機ロープ等、種々のロープが用いられている。従来では、それまで使用していたロープ(以下、「旧ロープ」ともいう)を新しいロープ(以下、「新ロープ」ともいう)に交換する場合、作業者は、昇降路のピット床面に旧ロープを環状に配置して巻き取り、結束して昇降路外に搬出していた。
【0003】
下記特許文献1には、調速機ロープを交換する際に、旧ロープをピット床面に直接置くことなくコイル状に巻き取るための器具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−239563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のように、旧ロープをピット床面で巻き取る場合は、旧ロープが広がらないように足で押さえ付け、形を整えながら作業を行わなければならず、熟練を要するといった問題があった。なお、旧ロープを巻き取る際に旧ロープの一部が飛び出てしまったり、複数の旧ロープを巻き取った際に同一径にならなかったりすると、その後の運搬作業や収納処理の面で旧ロープ(廃ロープ)の取り扱いが困難になってしまう。
【0006】
また、旧ロープを昇降路のピット底面に直接置いて巻き取り作業を行うと、巻き取った旧ロープを結束する際に、旧ロープの下に紐を通すことが困難になるといった問題もあった。更に、ピット床面が、旧ロープから染み出た油等によって汚れてしまうといった問題もあった。
【0007】
特許文献1記載のものでは、その器具の構造から、巻き取り作業中に器具が転倒する或いは傾く等、安定性に欠けるといった問題があった。なお、昇降路のピットにはエレベーターを動作させるための機器が設置されていることもあり、上記巻き取り器具が転倒すると、これらの機器を損傷させてしまう恐れがあった。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、旧ロープを床面に直接置くことなくロープの交換を行うことができ、旧ロープを同一径で巻き取って簡単に結束することができるエレベーター用ロープ巻き取り補助具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るエレベーター用ロープ巻き取り補助具は、環状を呈する底面板と、底面板の外周部から起立するように底面板に設けられ、その一部に、上方に開口する開口部が形成された円周壁と、底面板に設けられ、円周壁の開口部に近接して配置されるとともに、その一部が、開口部の最深部よりも高い位置に配置されたロープ浮かせと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るエレベーター用ロープ巻き取り補助具であれば、旧ロープを床面に直接置くことなくロープの交換を行うことができ、更に、旧ロープを同一径で巻き取って簡単に結束することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態におけるエレベーター用ロープ巻き取り補助具の構成を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態におけるエレベーター用ロープ巻き取り補助具の側面を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態におけるエレベーター用ロープ巻き取り補助具の他の側面を示す図である。
【図4】図1に示すエレベーター用ロープ巻き取り補助具の使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態におけるエレベーター用ロープ巻き取り補助具の構成を示す斜視図、図2及び図3はその側面を示す図である。図2は図1におけるA矢視を、図3は図1におけるB矢視を示している。また、図4は図1に示すエレベーター用ロープ巻き取り補助具の使用方法を説明するための図である。
【0014】
エレベーターでは、主ロープや調速機ロープ等、種々のロープが用いられている。本ロープ巻き取り補助具は、エレベーターの改修工事等において、ロープの交換を行う際に作業者によって使用されるものである。本ロープ巻き取り補助具は、エレベーター昇降路のピット床面等に置いて使用される。
【0015】
具体的に、本ロープ巻き取り補助具は、図1乃至図3に示すように、底面板1、円周壁2、ガイド3、持ち手4、ロープ浮かせ5により、その要部が構成される。
底面板1は、環状を呈する板状部材からなる。底面板1は、ロープの交換時、その上面に旧ロープが載置される部分を構成する。
【0016】
円周壁2は、ロープの交換時に、巻き取られる旧ロープの径を一定にする(所定の範囲に収める)ためのものであり、例えば、短い筒状を呈するように配置された板状部材から構成される。具体的に、円周壁2は、底面板1の外周部から起立するように底面板1に設けられ、底面板1の周囲を取り囲むように配置される。円周壁2には、対向する2箇所に、上方に開口する開口部(スリット)6が形成されている。開口部6は、例えば、上下方向に直線状に形成される。本実施の形態では、その最深部6aが、底面板1の上面と面一となる場合を一例として示している。
【0017】
ガイド3は、円周壁2と同様に、ロープの交換時に、巻き取られる旧ロープの径を一定にするために備えられたものであり、円周壁2とともに堰を構成する。ガイド3は、例えば、円周壁2に設けられた板状部材からなり、円周壁2の上端から更に上方に延びるように配置されている。なお、図1乃至図3に示すように、1枚の板状部材から円周壁2とガイド3とを成形し、円周壁2及びガイド3を一体的に構成しても良い。
【0018】
本実施の形態では、90度毎にガイド3を配置した場合を一例として示している。なお、対向する位置に配置されたガイド3a及び3bと、3c及び3dとは、それぞれ同じ構成を有している。ガイド3a(及び、ガイド3b)は、開口部6の一側と他側とに配置された一対の板状部材から構成される。即ち、図1乃至図3に示すものでは、開口部6は、円周壁2とガイド3aとの双方に渡って形成されており、ガイド3aの上端で開口している。また、ガイド3c(及び、ガイド3d)は、ガイド3a及び3bの中間位置に配置されている。
【0019】
持ち手4は、作業者が本ロープ巻き取り補助具を運搬する際に持つ部分を構成する。本実施の形態では、開口部6を、その最深部6aが底面板1の上面と面一となる位置まで形成しているため、補強の役割も兼ねて、持ち手4を円周壁2だけでなく、ガイド3a(又は、ガイド3b)にも固定している場合を示している。具体的に、持ち手4は、その一端側が開口部6の一側に配置された円周壁2及びガイド3aに、他端側が開口部6の他側に配置された円周壁2及びガイド3aに固定され、開口部6を跨ぐように取り付けられている。
【0020】
ロープ浮かせ5は、旧ロープが底面板1上に巻き取られた際に、その一部を底面板1の上面から浮かして、結束用のバインド線(紐等)を通し易くするためのものである。具体的に、ロープ浮かせ5は、底面板1の上面に凸状に設けられ、開口部6に近接した位置に配置されている。また、ロープ浮かせ5は、底面板1の上面から突出するその上端部が、開口部6の最深部6aよりも高い位置となるように配置されている。
【0021】
本実施の形態では、一対の円柱状の棒状部材によって上記ロープ浮かせ5を構成した場合を一例として示している。具体的に、上記棒状部材は、棒状部材間の延長線上に開口部6の一部が位置するように、底面板1の上面上で平行に配置されている。また、両棒状部材は、その長手が底面板1の半径方向を向くように、底面板1の外周部から内周部に渡って配置されている。なお、上記棒状部材の形状は、円柱でなくても構わない。
【0022】
上記構成を有するロープ巻き取り補助具を使用して、それまで使用していたロープを新しいロープに交換する場合、作業者は、図4に示すように、ロープ巻き取り補助具を昇降路のピット底面等に置き、旧ロープ7を底面板1の上面上で環状に配置していく。なお、旧ロープ7を巻き取る(環状に配置する)と、旧ロープ7には、外側に膨らむ力が作用する。本ロープ巻き取り補助具では、この外側に膨らむ力を、巻き取り初期は円周壁2で、巻き取りが進んだ後はガイド3で押さえ、旧ロープ7が広がらないようにしている。また、旧ロープ7は、円周壁2及びガイド3に案内され、ある範囲の径(同一径)で巻き取られる。
【0023】
旧ロープ7の巻き取り作業が完了すると、作業者は、バインド線を開口部6の最深部6a付近から内側に挿入し、底面板1の内周部側から引き出して旧ロープ7を結束する。この時、バインド線は、底面板1上に巻き取られた旧ロープ7と底面板1とによって上下が、また、ロープ浮かせ5を構成する一対の棒状部材によって左右が挟まれた空間を通過する。このため、作業者は、バインド線によって旧ロープ7を結束する際に、旧ロープ7を持ち上げたりする必要がない。
そして、エレベーターの主ロープを交換する時のように、多数のロープの交換を行う場合は、結束した旧ロープ7を本ロープ巻き取り補助具から外した後、次の旧ロープ7の巻き取り作業を開始する。
【0024】
上記構成を有するロープ巻き取り補助具を使用することにより、旧ロープを同一径できれいに巻き取って、簡単に結束することができるようになる。即ち、本ロープ巻き取り補助具を使用すれば、従来のように、旧ロープが広がらないように足で押さえ付けたりする必要もなく、熟練者でなくても簡単に旧ロープを巻き取ることができる。また、複数の旧ロープを巻き取る場合でも、その巻き取り径を揃えることができ、その後の運搬作業や収納処理を容易に行うことができる。
【0025】
また、上記構成のロープ巻き取り補助具を使用すれば、ロープの交換時に、旧ロープを床面に直接置く必要がない。このため、昇降路のピット床面が汚れることはなく、その後の清掃作業を簡略化することができる。また、本ロープ巻き取り補助具は、安定した構造で転倒する恐れはなく、且つ、バインド線による旧ロープの結束作業も容易に行うことができる。このため、ロープの交換に要する時間と労力とを大幅に低減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 底面板
2 円周壁
3、3a、3b、3c、3d ガイド
4 持ち手
5 ロープ浮かせ
6 開口部
6a 最深部
7 旧ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状を呈する底面板と、
前記底面板の外周部から起立するように前記底面板に設けられ、その一部に、上方に開口する開口部が形成された円周壁と、
前記底面板に設けられ、前記円周壁の前記開口部に近接して配置されるとともに、その一部が、前記開口部の最深部よりも高い位置に配置されたロープ浮かせと、
を備えたことを特徴とするエレベーター用ロープ巻き取り補助具。
【請求項2】
前記円周壁に設けられ、前記円周壁の上方に延びるように配置されたガイドと、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベーター用ロープ巻き取り補助具。
【請求項3】
前記円周壁に設けられた持ち手と、
を更に備え、
前記開口部は、前記ガイドの上端で開口するように、前記円周壁と前記ガイドとの双方に渡って形成され、
前記持ち手は、その一端側が前記開口部の一側に、他端側が前記開口部の他側に配置されて、前記開口部を跨ぐように取り付けられた
ことを特徴とする請求項2に記載のエレベーター用ロープ巻き取り補助具。
【請求項4】
前記ロープ浮かせは、一対の棒状部材から構成されるとともに、前記棒状部材間の延長線上に前記開口部の一部が位置し、且つ、前記底面板の外周部から内周部に渡って配置されたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のエレベーター用ロープ巻き取り補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−126516(P2012−126516A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279596(P2010−279596)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】