説明

エレベータ案内装置の磁石ガイドユニット

【課題】複数種のガイドレールのサイズに合った適切な磁極間寸法を確保できる エレベータ案内装置の磁石ガイドユニットを提供する。
【解決手段】エレベータ用乗りかごを昇降路内に敷設された一対のガイドレールに非接触で案内支持するエレベータ案内装置の磁石ガイドユニットであって、磁石ガイドユニットは、対向して同極を形成する第1,第2の磁極と、これら磁極との間の中央位置で第1,第2の磁極とは異なる極性の第3の磁極とを有して全体としてE字形状を成し、永久磁石を間に2つの電磁石が連結配置され、ガイドレールを囲み、第1,第2の磁極の先端面にスペーサを介装することで、第1,第2の磁極間の寸法を変更可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ案内装置の磁石ガイドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエレベータは、昇降手段によりロープに吊るされた乗りかごを昇降路内に垂直に敷設されたガイドレールに沿って走行させる。乗りかごは、負荷荷重の不均衡や乗客の移動により揺動するが、ガイドレールによって案内することで、これらの揺動を抑制する構成となっている。
【0003】
エレベータの案内装置としては、従来、ガイドレールに接する車輪とサスペンションとで構成されたローラーガイド、もしくはガイドレールに対して摺動して案内するガイドシュー等が用いられている。しかし、このような接触方式の案内装置では、ガイドレールの表面状態や継ぎ目等に起因する振動が車輪もしくは摺動部を介して乗りかご内に伝達したり、ローラーガイドが回転する際に発生する転勤音により、乗客の快適性を損なう一因となっていた。
【0004】
こうした問題点を解決するために、電磁石により構成された案内装置を乗りかごに搭載し、鉄製のガイドレールに対して磁気力を作用させ、非接触で乗りかごを案内する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これは、乗りかごの上下4隅に配置された電磁石がガイドレールを3方向から囲んでおり、ガイドレールと案内装置の間の空隙の大きさ等に応じて制御された電流で電磁石を励磁することで、ガイドレールと案内装置との間の磁気力を制御し、乗りかごをガイドレールに対して非接触に案内することを可能とするものである。
【0005】
また、エレベータの案内装置において問題となる制御性の低下及び消費電力の増大等を解決する手段として、案内装置に永久磁石を備える方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。これは、永久磁石と電磁石を併用することにより、消費電力を抑えつつ、低剛性・長ストロークで乗りかごを支持するエレベータの案内装置を提供するものである。
【0006】
また、永久磁石と電磁石の構成を改善し、電磁石による磁力制御性の向上等が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−178563号公報
【特許文献2】特開2001−19286号公報
【特許文献3】特開2005−350267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した非接触案内装置は、ガイドレールと、それを3方向から囲む電磁石との間の空隙の量が、発生できる磁気力の大きさや電磁石の制御性、消費電力等に大きく影響する。一方で、ガイドレールには、外形寸法が異なる複数のサイズがあり、エレベータの乗りかごの重量や積載量、昇降工程などにより、基準の強度を満足できる適切なガイドレールのサイズが、各仕様ごとに選定されている。そのため、ガイドレールと電磁石との間の空隙の大きさを、ガイドレールのサイズによらず一定量を確保するには、電磁石が3方向から囲むガイドレールの歯厚部分の寸法に応じて、この3方向の電磁石の位置関係(磁極間寸法)を変更する必要がある。
【0009】
しかしながら、ガイドレールのサイズごとに、この磁極間寸法が異なる非接触案内装置の磁石ガイドユニット(以下、磁石ガイドユニットと言う)を用意していては、類似した部品の点数が増えてしまい、生産性や製造性の効率化が阻害され、コスト増を招く一因となる。あるいは、適用範囲の中で、最大のガイドレールのサイズに合わせて3方向の電磁石を配置した磁石ガイドユニットを用意し、これを他のすべてのサイズのガイドレールに適用することも考えられる。しかし、これでは、小さいサイズのガイドレールに適用した場合、ガイドレールと電磁石との間の空隙量が無駄に大きくなってしまうため、発生できる磁気力が大幅に減少し、制御の不安定化、消費電量の増大を招くなど、現実的ではない。
【0010】
そこで、本発明は、上記した課題に鑑みてなされたもので、一種類の磁石ガイドユニットで、複数種のガイドレールのサイズに合った適切な磁極間寸法を確保できる エレベータ案内装置の磁石ガイドユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態のエレベータ案内装置の磁石ガイドユニットは、エレベータ用乗りかごを昇降路内に敷設された一対のガイドレールに非接触で案内支持するエレベータ案内装置の磁石ガイドユニットであって、前記磁石ガイドユニットは、対向して同極を形成する第1,第2の磁極と、これら磁極との間の中央位置で前記第1,第2の磁極とは異なる極性の第3の磁極とを有して全体としてE字形状を成し、永久磁石を間に2つの電磁石が連結配置され、前記ガイドレールを囲み、前記第1,第2の磁極の先端面にスペーサを介装することで、前記第1,第2の磁極間の寸法を変更可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る磁石ガイドユニットを用いたエレベータ案内装置を搭載した乗りかごが昇降移動するエレベータの概略構成を示す斜視図である。
【図2】磁石ガイドユニットの一例を示した概略図である。
【図3】磁石ユニットの要部の横断面図である。
【図4a】第1の実施形態に係る磁石ユニットにおいて適用範囲の中で最大のサイズのガイドレールを適用したときの横断面図である。
【図4b】第1の実施形態に係る磁石ユニットにおいて適用範囲の中で最小のサイズのガイドレールを適用したときの横断面図である。
【図5】図4bにおける断面 X-Xにおける断面図である。
【図6】第2の実施形態に係る磁石ユニットの横断面図である。
【図7】スペーサの斜視図である。
【図8】第3の実施形態に係るスペーサの斜視図である。
【図9】第4の実施形態に係る磁石ユニットの構成図である。
【図10】第4の実施形態を示す磁石ユニットの組立後の横断面図である。
【図11】第5の実施形態を示す磁石ユニットの組立後の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施の形態に係るエレベータの案内装置の磁石ガイドユニットについて、説明する。
【0015】
図1は、第1の実施形態に係る磁石ガイドユニットを用いたエレベータ案内装置を搭載した乗りかごが昇降移動するエレベータの概略構成を示す斜視図である。エレベータの乗りかご1の上に設置する磁石ガイドユニット2は、強度部材であるかご枠を構成する上梁3の左右両端に固定されている。一方、乗りかご1の下に設置する磁石ガイドユニット2は、かご枠を構成する下梁4の左右両端に設置されたかごセイフティ5の下部に、ぶら下がるように固定されている。
【0016】
図2は、磁石ガイドユニット2の一例を示した概略図である。磁石ガイドユニット2は、永久磁石や電磁石で構成され、磁気力を創出する磁石ユニット6と、磁石ユニット6を支え、乗りかご1に固定するための筐体7と、制御に必要なガイドレール(後述する)と電磁石との間の空隙量を測定するための複数の変位センサ8と、から成る。筐体7は、磁石ユニット6が創出する磁気回路に影響を与えないよう、アルミニウムなど非磁性体の材質で製作する。
【0017】
図3は、磁石ユニット6の要部の横断面図である。磁石ユニット6は、永久磁石9と、電磁石10,11とで構成され、左右対称なE字形の磁路を形成している。電磁石10,10は、平型の鉄芯10aに銅線の電磁コイル10bが巻装されて励磁電流が供給されるもので、一対から成る。電磁石10,10は、それぞれ同極同士が対向するように配置された永久磁石9,9を介して、電磁石11,11に連結されて構成されている。電磁石11,11は、T型の鉄芯11aに銅線の電磁コイル11bが巻装されて励磁電流が供給される。
【0018】
ガイドレール12は、左右一対の電磁石10の磁極10cと、中央に位置する電磁石11の磁極1lcによって、3方向から囲まれるように嵌合している。
【0019】
各永久磁石9,9は、両端部にそれぞれ電磁石10,10、及び11,11を連結したので、両端部の磁極(10c,11c,10c)までの磁路長差は少なく、両磁極に到達するまでの漏洩磁束に大きな差は生じない。
【0020】
上記のように構成した磁石ユニット6では、ガイドレール12を挟んで対向する磁極10c及び磁極10cの磁力線の方向と、磁極11cの磁力線の方向とは互いにほぼ直交し、各磁極10c,10c,11cと、それぞれガイドレール12のガイド面12a,12b,12cとは、空隙(間隔)を有して対向し、各電磁石10,10,11に対する励磁電流制御によって、ガイドレール12に対する磁石ユニット6の吸引力を調整制御することができる。すなわち、
(1)各電磁石10,10,11への励磁電流を、永久磁石9,9の磁束を強める方向に供給したとき、
y方向については、磁極10c,10cと、ガイドレール12のガイド面12a及びガイド面12bとの間の吸引力はほぼ同程度に増加するので、合成力として、y方向に関する吸引力の増分は相殺され吸引力はほとんど変化しない。
x方向については、磁極11cとガイドレール12のガイド面12cとの間の磁束は大となるから吸引力は増大する。
【0021】
(2)各電磁石10,10,11への励磁電流を、永久磁石9,9の磁束を弱める方向に励磁電流を供給したとき、
y方向については、磁極10c,10cと、ガイドレール12のガイド面12a及びガイド面12bとの間の吸引力はほぼ同程度に減少するので、合成力として、y方向に関する吸引力の減少分は相殺され吸引力はほとんど変化しない。
【0022】
x方向については、磁極11cとガイドレール12のガイド面12cとの間の磁束は小となるから吸引力は減少する。
【0023】
(3)一方(例えば、図3中の左側)の電磁石10,11への励磁電流を、永久磁石9の磁束が大となる方向に供給し、他方(例えば、図3中の右側)の電磁石10,11への励磁電流を永久磁石9の磁束が小となる方向に供給したとき、
y方向については、図3中の左側の磁極10c側で磁束が大となり、図3中の右側の10c側では磁束は小となるため、ガイドレール12の左右方向に吸引力の差が生じ、磁石ユニット6はガイドレール12のガイド面12aに吸引されて接近する。
【0024】
x方向については、磁極11cにおける磁束の変化分は相殺され、吸引力はほとんど変化しない。
【0025】
一方(例えば、図3中の左側)の電磁石10,11への励磁電流を、永久磁石9の磁束が小となる方向に供給し、他方(例えば、図3中の右側)の電磁石10,11への励磁電流を永久磁石9の磁束が大となる方向に供給したとき、x方向については変化ないが、y方向については反対に、磁石ユニット6はガイドレール12のガイド面12bに吸引されて接近する。
【0026】
以上の説明のように、上記構成の磁石ユニットによれば、電磁石10,11,10に対する励磁電流制御により、磁石ユニット6のガイドレール12に対するx方向及びy方向の吸引力を個別に制御することができる。
【0027】
一般的に、ガイドレールは、エレベータの大きさ、建造物等に応じて選定され、いくつもの種類が使用されている。例えば、単位長さ当たりの重量で分類すると、24kg/m、30kg/m、37kg/m、50kg/mがある。そして、ガイドレールの形状も全く、同一ではない。
【0028】
図4a,図4bは、第1の実施の形態に係る磁石ユニット6の横断面図を示し、図5は、図4bにおける断面X−Xでの断面図である。図4aは、適用範囲の中で最大のサイズのガイドレール13(歯厚寸法Rm)を適用したときの磁石ユニット6の横断面図である。電磁石10,11は、制御上必要となる、ガイドレール13と磁極10c,11cとの間の空隙量Stが確保できるよう配置されている。
【0029】
一方、図4bは、例えば、この磁石ユニット6に、適用範囲の中で最小のサイズのガイドレール14(歯厚寸法Rs)を適用したときの横断面図である。ガイドレール14と左右の磁極10c,10cとの間の空隙量は、St+(Rm−Rs)/2に広がる。
【0030】
そこで、左右の磁極10c,10cの表面に、ガイドレール13とガイドレール14との歯厚の寸法の差の1/2(=(Rm−Rs)/2)の厚さを有したスペーサ15を装着させる。スペーサ15の幅方向の面15aには、固定用の穴15bが複数個、例えば2個設けられている。また、左右の磁極10c,10cの表面には、固定用の穴15bに対応したタップ穴(図示しない)が複数個、例えば2個設けられている。スペーサ15は、このタップ穴と締結要素16で、左右の磁極10c,10cの表面に固定される。スペーサ15は電磁石10,11を構成する鉄芯10a,11aと同じ材質であり、鉄などの強磁性体から成る。また、締結要素16も、鉄などの強磁性体であり、固定したときにその頭部が磁極10cの表面に出っ張らないよう、例えば、皿ビスなどを用いる。
【0031】
本実施形態の効果として、スペーサ15を交換するだけで、それぞれのサイズのガイドレールに適用した磁石ユニットを容易に揃えることができる。この場合、ガイドレールのサイズの種類の分だけ、厚さの異なるスペーサ15を用意すればよいため、その他は大幅な部品の共通化が図れる。
【0032】
ちなみに、ガイドレール14と中央の電磁石11の磁極11cとの間の空隙の量Stは、磁石ガイドユニット2を乗りかご1に固定する際、磁石ガイドユニット2の固定位置を前後方向に調整すれば確保できる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施の形態に係るエレベータの案内装置の磁石ガイドユニットについて、説明する。図6は、第2の実施形態に係る磁石ユニット6の横断面図である。図7は、スペーサ17の斜視図である。スペーサ17は、ガイドレール13とガイドレール14との歯厚の寸法の差の1/2(=(Rm−Rs)/2)の厚さを有している。
【0034】
図7に示すように、スペーサ17の、磁極10cに密着する側の幅方向の面l7aには、長手方向に凸状の突起l7b,17bが形成してある。一方、左右の磁極10c,10cの表面には、突起l7b,17bに対応する位置に、凹状の溝10d,10dが形成してある。これら凹状の溝10d,10dがスペーサ17の突起l7b,17bと嵌め合い公差で嵌合することで、スペーサ17を左右の磁極10cの表面に固定する。
【0035】
第1の実施形態では、ネジの山と谷との間に微小の空隙が残存した。しかしながら、第2の実施形態では、スペーサ17の突起l7bと、磁極10cの溝10dとが嵌め合い公差で嵌合するため、空隙がほとんど残存しない。そのため、磁路の欠損が少なく、磁気力が減少することもない。
【0036】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施の形態に係るエレベータの案内装置の磁石ガイドユニットについて、説明する。図8は、第3の実施形態に係るスペーサ18の斜視図である。スペーサ18は、ガイドレール13とガイドレール14との歯厚の寸法の差の1/2(=(Rm−Rs)/2)の厚さを有している。
【0037】
図8に示すように、スペーサ18の、磁極10cに密着する側の幅方向の面18aには、長手方向に複数の中実ピン19,19が打ち込んである。これらの中実ピン19,19は、電磁石10,電磁石11を構成する鉄芯10a,11aと同じ材質の強磁性体から成り、スペーサ18の面18aに加工した穴18b,18bに嵌め合い公差で嵌合している。一方、左右の磁極10c,10cの表面にも、穴18bと同様の穴が形成してあり、中実ピン19が、この穴に嵌め合い公差で嵌合することで、スペーサ18を左右の磁極10c,10cの表面に固定する。
【0038】
本実施形態の効果としては、第1の実施形態及び第2の実施形態で得られる効果に加えて、中実ピンを用いることで加工が容易となるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0039】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施の形態に係るエレベータの案内装置の磁石ガイドユニットについて、説明する。図9、図10は、第4の実施形態に係る磁石ユニット6の横断面図であり、図9は構成図、図10は組立後の横断面図である。
【0040】
磁石ユニット6は、中央の電磁石11を構成するT型の鉄芯11aの中央で、小ユニット6A,6Bに分割できる。これらの小ユニット6A,6Bからなる磁石ユニット6の電磁石10,11は、適用範囲の中で最小のサイズのガイドレール14(歯厚寸法Rs)を適用したとき、制御上必要となる、ガイドレール14と磁極10c,11cとの間の空隙量Stが確保できるよう配置されている。
【0041】
一方、例えば、この磁石ユニット6に、適用範囲の中で最大のサイズのガイドレール13(歯厚寸法Rm)を適用したとき、ガイドレール13と左右の磁極10c,10cとの間の空隙量は、St−(Rm−Rs)/2に狭まる。
【0042】
そこで、小ユニット6Aと小ユニット6Bとの間に、ガイドレール13とガイドレール14との歯厚の寸法の差(=Rm−Rs)の厚さを有したスペーサ20を介挿する。小ユニット6Aと小ユニット6Bの結合面、及びスペーサ20の面には、中実ピン19を挿入するための穴が複数加工されている。これらの穴と、中実ピン19とが嵌め合い公差で嵌合することで、小ユニット6Aと小ユニット6B、及びスペーサ20を剛に結合している。
【0043】
本実施形態によれば、ガイドレールのサイズの違いによる、ガイドレールと磁極との間の空隙量の調整機構を、中央のT型の鉄芯に備えたものであり、この調整機構を磁極の先端に備えた、第1の実施形態乃至第3の実施形態と同様の効果が奏される。
【0044】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施の形態に係るエレベータの案内装置の磁石ガイドユニットについて、説明する。図11は、第5の実施形態に係る磁石ユニット6の横断面図である。
【0045】
磁石ユニット6の電磁石10,11は、適用範囲の中で最小のサイズのガイドレール14(歯厚寸法Rs)を適用したとき、制御上必要となる、ガイドレール14と磁極10c,11cとの間の空隙量Stが確保できるよう配置されている。一方、例えば、この磁石ユニット6に、適用範囲の中で最大のサイズのガイドレール13(歯厚寸法Rm)を適用したとき、ガイドレール13と左右の磁極10c,10cとの間の空隙量は、St−(Rm−Rs)/2に狭まる。
【0046】
そこで、左右の磁極10c,10cを、ガイドレール13と14との歯厚の寸法の差の1/2(=(Rm−Rs)/2)の厚さの分だけ磁極先端部10eを短縮した鉄芯で構成する必要がある。ここで、全てのサイズのガイドレールに対応出来るためには、磁極先端部10eを短縮する前の鉄芯10aは、銅線の電磁コイル10bを挿入したときの、電磁コイル10bの端面から突き出した鉄芯10aの出代の長さをLとしたとき、L>(Rm−Rs)/2でなければならない。そこで、出代の長さLは、例えば、16.6mm乃至30mmが好適である。
【0047】
本実施形態によれば、平型の鉄芯10aを共通の素材として用意しておけば、ガイドレールのサイズの種類の分だけ、出代の長さLが異なる鉄芯を揃えておけばよいため、生産性や製造性の効率化が図れる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1…乗りかご、2…磁石ガイドユニット、3…かご枠の上梁、4…かご枠の下梁、5…かごセイフティ、6・・・磁石ユニット、7…筐体、8…変位センサ、9…永久磁石、10…電磁石、10a…平型の鉄芯、10b…電磁コイル、10c…磁極、10d…溝、10e…磁極先端部(削り落とし部)、11…電磁石、11a…T型の鉄芯、11b…電磁コイル、11c…磁極、12…ガイドレール、13…適用範囲の中で最大のサイズのガイドレール、14…適用範囲の中で最小のサイズのガイドレール、15…スペーサ、15a…幅方向の面、15b…固定用穴、16…締結要素、17…スペーサ、17a…幅方向の面、17b…突起、18…スペーサ、18a…幅方向の面、18b…ピン嵌合用穴、19…中実ピン、20…スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ用乗りかごを昇降路内に敷設された一対のガイドレールに非接触で案内支持するエレベータ案内装置の磁石ガイドユニットであって、
前記磁石ガイドユニットは、対向して同極を形成する第1,第2の磁極と、これら磁極との間の中央位置で前記第1,第2の磁極とは異なる極性の第3の磁極とを有して全体としてE字形状を成し、永久磁石を間に2つの電磁石が連結配置され、
前記ガイドレールを囲み、前記第1,第2の磁極の先端面にスペーサを介装することで、前記第1,第2の磁極間の寸法を変更可能とすることを特徴とするエレベータ案内装置の磁石ガイドユニット。
【請求項2】
前記第1,第2の磁極の先端面にタップ穴を形成し、前記スペーサは締結要素によって前記第1,第2の磁極の先端面に取着することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ案内装置の磁石ガイドユニット。
【請求項3】
前記スペーサは前記第1,第2の磁極と密着する面に長手方向に凸状の突起を形成し、前記第1,第2の磁極の先端面に凹状の溝を形成し、前記スペーサの突起と前記第1,第2の磁極の溝との嵌め合い公差の嵌合で、前記スペーサを前記第1,第2の磁極の先端面に介装することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ案内装置の磁石ガイドユニット。
【請求項4】
前記スペーサは前記第1,第2の磁極と密着する面に長手方向に中実のピンを複数有し、前記第1,第2の磁極の先端面に前記中実ピンを挿入する穴を形成し、前記中実ピンと前記第1,第2の磁極の穴との嵌め合い公差の嵌合で、前記スペーサを前記第1,第2の磁極の先端面に介装することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ案内装置の磁石ガイドユニット。
【請求項5】
エレベータ用乗りかごを昇降路内に敷設された一対のガイドレールに非接触で案内支持するエレベータ案内装置の磁石ガイドユニットであって、
前記磁石ガイドユニットは、対向して同極を形成する第1,第2の磁極と、これら磁極との間の中央位置で前記第1,第2の磁極とは異なる極性の第3の磁極とを有して全体としてE字形状を成し、永久磁石を間に2つの電磁石が連結配置され、
前記第3の磁極を有する電磁石は、前記ガイドレールを挟んで左右対称な小ユニットに分割可能な構造であり、
前記分割した小ユニットの結合面の間にスペーサを介装させて前記小ユニットを連結することで、前記第1,第2の磁極間の寸法を変更可能とすることを特徴とするエレベータ案内装置の磁石ガイドユニット。
【請求項6】
前記スペーサは、前記磁極と同じ材質の強磁性体から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のエレベータ案内装置の磁石ガイドユニット。
【請求項7】
エレベータ用乗りかごを昇降路内に敷設された一対のガイドレールに非接触で案内支持するエレベータ案内装置の磁石ガイドユニットであって、
前記磁石ガイドユニットは、対向して同極を形成する第1,第2の磁極と、これら磁極との間の中央位置で前記第1,第2の磁極とは異なる極性の第3の磁極とを有して全体としてE字形状を成し、永久磁石を間に2つの電磁石が連結配置され、
前記第1,第2の磁極先端部から突き出した鉄芯の出代の長さが、16.6mm乃至30mmの範囲内であることを特徴とするエレベータ案内装置の磁石ガイドユニット。
【請求項8】
前記磁石ガイドユニットは、前記乗りかごの上下4隅に配設されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のエレベータ案内装置の磁石ガイドユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−6694(P2012−6694A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142872(P2010−142872)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】