説明

エレベータ機能の模擬確認システム

【課題】エレベータの完了検査を検査官や施主が乗りかごに同乗した状態で容易にかつ効率良く行えるようにする。
【解決手段】エレベータの通常運転と地震や火災、浸水、停電のうち少なくともいずれか一つの異常が発生したときに実施する管制運転とにおけるエレベータの各機能を模擬的に確認するシステムであって、異常の発生を感知した感知器が出力する信号と同様の模擬信号を保持する模擬信号保持部と、確認する機能を選択する確認機能選択部と、模擬信号保持部に保持されている模擬信号のうち確認機能選択部において選択された機能に対応する模擬信号をエレベータの運転を制御する運転用制御装置に出力する模擬信号出力部とを有した機能確認用制御装置を、乗りかごの内部のかご操作盤に並設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、エレベータ機能の模擬確認システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの運転中に地震や火災、停電、浸水等が発生すると、運転モードを通常運転から管制運転に切り替えて乗客の安全を図るようになっている。
【0003】
具体的に説明すると、地震が発生したときには地震管制運転を行う。
このとき、強い地震の場合は、乗りかごをその場で直ちに停止させ、地震の揺れが収まってから作業員が安全を確認し、手動操作で最寄階に着床させる。
中程度の地震の場合は、乗りかごを最寄階に着床させるとともにドアを開放して乗客を乗場ホールに降ろし、ドアを閉鎖してエレベータの運転を停止する。エレベータの運転再開は、作業員による安全確認が終了してからとなる。
弱い地震の場合は、乗りかごを最寄階に着床させるとともにドアを開放して乗客を乗場ホールに降ろすが、所定時間後に運転を再開する(下記特許文献1を参照)。
【0004】
また、火災が発生したときには火災管制運転を行い、火災が発生した階床より下方の避難階に乗りかごを着床させてドアを開放し、乗客を乗場ホールに降ろして避難させる(下記特許文献1を参照)。
【0005】
さらに、エレベータに電力を供給する商用電源に停電が発生したときには停電管制運転を行い、制御装置および巻上機を予備電源に接続して乗りかごを低速で昇降させ、最寄階に着床させて乗客を乗場ホールに降ろす(下記特許文献2を参照)。
【0006】
加えて、大雨や洪水によって昇降路の底部や地上階に浸水が発生したときには、浸水が予想される階床への着床を禁止するとともに、乗りかごを安全な階床に上昇させる(下記特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−230778号公報
【特許文献2】特開2006−199422号公報
【特許文献3】特開2005−53634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、新しいエレベータの設置工事が完了したときには、検査官や施主の立ち会いの下で、エレベータが正常に機能するか否かを確認する完了検査が行われる。
このとき、上述した地震管制運転、火災管制運転、停電管制運転、浸水管制運転についても機能確認が行われる。
【0009】
しかしながら、従来の完了検査における管制運転の機能確認は、乗場ホールに設けられているホール操作盤と乗りかご内に設けられているかご操作盤の両方を、二人の作業員がそれぞれ操作することによって行う必要があり、その作業が極めて煩雑である。
特に作業員がホール操作盤を開放して制御装置にアクセスする必要があり、作業に手間が掛かる。
また、機械室を持たないタイプのエレベータでは、機能確認のために昇降路の内部での作業が必要となり、作業員の安全も確保しなければならない。
さらに、検査官や施主が乗りかごに同乗した状態で各管制運転を含めた機能確認を実施できれば、確認作業をスムーズに行えるばかりでなく、エレベータの安全性や品質の高さを検査官および施主に対し強くアピールすることができる。
【0010】
そこで、本発明の実施の形態の目的は、エレベータの完了検査を、検査官や施主が乗りかごに同乗した状態で容易にかつ効率良く行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施の形態は、エレベータの通常運転と地震や火災、浸水、停電のうち少なくともいずれか一つの異常が発生したときに実施する管制運転とにおけるエレベータの各機能を模擬的に確認するシステムであって、
前記異常の発生を感知した感知器が出力する信号と同様の模擬信号を保持する模擬信号保持部と、
確認する機能を選択する確認機能選択部と、
前記模擬信号保持部に保持されている模擬信号のうち前記確認機能選択部において選択された機能に対応する模擬信号を前記エレベータの運転を制御する運転用制御装置に出力する模擬信号出力部と、
を有した機能確認用制御装置を備え、
前記機能確認用制御装置は、乗りかごの内部のかご操作盤に並設されることを特徴とする。
【0012】
前記機能確認用制御装置は、前記模擬信号によって模擬的に実行されている管制運転を強制的に終了させて通常運転に復帰させるための復帰信号を前記運転用制御装置に出力することができる。
【0013】
前記かご操作盤は、タッチパネル液晶画面を有しており、
前記確認機能選択部は、確認する機能を選択するためのメニューを前記タッチパネル液晶画面に表示させることができる。
【0014】
前記機能確認用制御装置は、前記かご操作盤に内蔵し、あるいは作業員が携帯する操作盤に内蔵され配線を介して前記かご操作盤に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のエレベータ機能の模擬確認システムの全体構造を示すブロック図。
【図2】通常運転中のかご操作盤の表示を示す図。
【図3】確認する機能を選択する際のかご操作盤の表示を示す図。
【図4】通常運転機能を確認する際のかご操作盤の表示を示す図。
【図5】地震管制運転の機能を確認する際のかご操作盤の表示を示す図。
【図6】火災管制運転の機能を確認する際のかご操作盤の表示を示す図。
【図7】浸水管制運転の機能を確認する際のかご操作盤の表示を示す図。
【図8】停電管制運転の機能を確認する際のかご操作盤の表示を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図8を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
まず最初に図1を参照すると、本発明を適用するエレベータは、巻上機1のトラクションシーブに巻き掛けたメインロープ2により、乗りかご3および釣合錘4を釣瓶状に懸架した構造となっている。
そして、乗りかご3の内部に設けられているかご操作盤5および乗場ホールに設けられているホール操作盤6を乗客が操作すると、エレベータ運転用制御装置10が巻上機1の作動を制御して乗りかご3を昇降させる。
【0018】
エレベータ運転用制御装置10は、地震や火災等が発生していない通常時にエレベータの運転を制御する通常運転制御部11を有している。
また、エレベータ運転用制御装置10は、地震が発生したときに地震管制運転を行う地震管制運転部12、火災が発生したときに火災管制運転を行う火災管制運転部13、昇降路の底部に浸水が発生したときに浸水管制運転を行う浸水管制運転部14、エレベータに電力を供給する商用電源に停電が発生したときに停電管制運転を行う停電管制運転部15をそれぞれ有している。
なお、停電管制運転部15には、停電発生時に商用電源からバッテリ等の予備電源に電源を切り替える電源切替部16が付設されている。
【0019】
地震管制運転部12には、エレベータが設置されている建物の各部分に設けた複数の地震感知器21、緊急地震速報受信手段22、および風速計23が接続されている。
地震感知器21には、地震によって建物の各部分に生じた振動の加速度を表す信号が入力する。
緊急地震速報受信手段22には、気象庁が発表した緊急地震速報が入力する。
風速計23には、エレベータが設置されている建物に吹き付けている風の風速データが入力する。
【0020】
地震管制運転部12は、地震感知器21から入力した地震による振動の加速度が、例えば150ガル以上の「高」レベルの場合は、乗りかごをその場で直ちに停止させるとともに、地震の揺れが収まってから作業員が安全を確認した後、乗りかごを手動操作で最寄階に着床させる高レベルの地震管制運転を行う。
また、加速度が例えば80〜150ガルの「中」レベルの場合は、乗りかごを最寄階に着床させるとともにドアを開放して乗客を乗場ホールに降ろしてから、ドアを閉鎖してエレベータの運転を停止し、かつ作業員による安全確認が終了した後にエレベータの運転を再開する中レベルの地震管制運転を行う。
これに対して、加速度が例えば40〜80ガルの「低」レベルの場合は、乗りかごを最寄階に着床させるとともにドアを開放して乗客を乗場ホールに降ろすが、所定時間後に運転を再開する低レベルの地震管制運転を行う。
同時に、地震管制運転部12は、高レベル、中レベル、低レベルの地震管制運転に合わせて「地震が発生したのでエレベータを緊急停止します」あるいは「地震が発生したので直ちにエレベータから降りてください」等の案内放送を行う。
【0021】
緊急地震速報受信手段22は、受信した緊急地震速報において予測されている地震の強さに応じ、振動加速度レベルが「高」「中」「低」のいずれであるかを判定して地震管制運転部12に出力する。
【0022】
また地震管制運転部12は、風速計23から入力した風速データに基づき、建物に揺れが発生すると予測される場合に、乗りかごを最寄階に着床させるとともにドアを開放して乗客を乗場ホールに降ろす地震管制運転を行う。
【0023】
火災管制運転部13には、火災感知器24から「火災発生箇所」の情報を含む火災発生信号が入力する。
火災管制運転部13は、火災感知器24から火災発生信号が入力すると、火災が発生した階床より下方の避難階に乗りかごを着床させてドアを開放し、乗客を乗場ホールに降ろすとともに、エレベータの運転を停止する火災管制運転を行う。
同時に火災管制運転部13は、「○○階で火災が発生したのでエレベータから降りて避難してください」等の案内放送を行う。
【0024】
浸水管制運転部14には、エレベータ昇降路の底部および下方の階床の乗場ホールに設けた浸水感知器25から、建物のどの部分が浸水しているかに関する信号が入力する。
浸水管制運転部14は、浸水感知器25から浸水情報が入力すると、浸水が発生した下方の階床への着床を禁止するとともに、乗りかご3を上方の階床へと上昇させて待機させる浸水管制運転を行う。
同時に、浸水管制運転部14は「○○階で浸水が発生したのでエレベータの運転を停止します」等の案内放送を行う。
【0025】
停電管制運転部15には、エレベータに供給されている商用電源が停電したことを表す信号が停電感知器26から入力する。
すると停電管制運転部15は、電源切替部16を作動させて、電力の供給源を商用電源からバッテリ等の予備電源に切り替える。
さらに停電管制運転部15は、乗りかご3が停電により階床の途中で停止している場合は、乗りかご3を低速で昇降させて最寄階に着床させるとともに、ドアを開放して乗客を乗場ホールに降ろす停電管制運転を行う。
同時に停電管制運転部15は「停電が発生しました。予備電源に切り替えて運転を再開するので、最寄階でエレベータから降りて下さい」等の案内放送を行う。
【0026】
一方、エレベータ運転用制御装置10は、通信回線27を介して遠隔監視センター28と接続されている。
これにより、エレベータに地震、火災、浸水、停電等の異常が発生すると、遠隔監視センター28は復旧作業員を現場に向かわせるとともに、乗りかご3内の乗客に連絡して状況を説明する等の対応を取ることができる。
【0027】
次に図1を参照し、エレベータの完了検査においてエレベータの機能確認を行う際に用いる機能確認用制御装置30について説明する。
【0028】
この機能確認用制御装置30は、本実施の形態においては乗りかご3に設けられているかご操作盤5に並設されており、かご操作盤5のタッチパネル付き液晶表示画面に表示する内容を制御して、完了検査時に確認したい機能を選択するためのメニューを表示する。
また、この機能確認用制御装置30は、かご操作盤5から送信された選択メニュー毎の制御信号を機能確認信号処理部31において受信し、地震模擬信号出力部32、火災模擬信号出力部33、浸水模擬信号出力部34、停電模擬信号出力部35の作動をそれぞれ制御する構造となっている。
さらに、この機能確認用制御装置30は、通信回線27を介して遠隔監視センター28に接続され、模擬的な機能確認試験を実施する旨の通報を遠隔監視センターに送信できるようになっている。
【0029】
地震模擬信号出力部32は、エレベータ運転用制御装置10の地震管制運転部12に接続されるとともに、前述した地震感知器21、緊急地震速報受信手段22、風速計23が地震管制運転部12にそれぞれ出力する信号と同一の信号を保持しており、かつ模擬試験を開始するときにそれらの信号を地震管制運転部12に出力する。
【0030】
火災模擬信号出力部33は、エレベータ運転用制御装置10の火災管制運転部13に接続されるとともに、前述した火災感知器24が火災管制運転部13に出力する信号と同一の信号を保持しており、かつ模擬試験を開始するときにそれらの信号を火災管制運転部13に出力する。
【0031】
浸水模擬信号出力部34は、エレベータ運転用制御装置10の浸水管制運転部14に接続されるとともに、前述した浸水感知器25が浸水管制運転部14に出力する信号と同一の信号を保持しており、かつ模擬試験を開始するときにそれらの信号を浸水管制運転部14に出力する。
【0032】
停電模擬信号出力部35は、エレベータ運転用制御装置10の停電管制運転部15に接続されるとともに、前述した停電感知器26が停電管制運転部15に出力する信号と同一の信号を保持しており、かつ模擬試験を開始するときにそれらの信号を停電管制運転部15に出力する。
【0033】
次に図2〜図7を参照し、かご操作盤5のタッチパネル付き液晶表示画面に表示される画面について説明する。
【0034】
図2には、エレベータを通常運転する際に、かご操作盤5のタッチパネル付き液晶表示画面に表示される「通常画面」が示されている。
なお、この「通常画面」は、かご操作盤5に内蔵された表示制御用チップに予め含まれたプログラムの作動によって表示される。
【0035】
図2の「通常画面」には、乗りかご3の昇降方向を示す昇降表示部41、行先階を指定する複数の階床指定ボタン42、ドアを開閉するためのドア開閉ボタン43が表示されている。
これにより、乗りかご3に乗り込んだ乗客が階床指定ボタン42およびドア開閉ボタン43にタッチすると、エレベータ運転用制御装置10の通常運転制御部11は、巻上機1の作動を制御して乗りかご3を昇降させ、かつ乗りかご3に設けられているドア装置の作動を制御してドアを開閉させる。
【0036】
一方、図2に示した「通常画面」における階床指定ボタン42およびドア開閉ボタン43を所定の方法で操作すると、かご操作盤5は機能確認用制御装置30の機能確認信号処理部31に接続される。
すると、かご操作盤5のタッチパネル付き液晶表示画面には、図3に示した「機能確認選択メニュー」画面が表示される。
【0037】
この「確認機能選択メニュー」では、エレベータの完了検査において確認する機能をそれぞれ選択することができる。
「通常運転」ボタン51にタッチすると、図4に示した「機能確認モード/通常画面」がかご操作盤5に表示される。
また「地震管制運転」ボタン52にタッチすると図5に示した「地震管制運転/機能確認モード」画面が、「火災管制運転」ボタン53にタッチすると図6に示した「火災管制運転/機能確認モード」画面が、「浸水管制運転」ボタン54にタッチすると図7に示した「浸水管制運転/機能確認モード」画面が、「停電管制運転」ボタン55にタッチすると図8に示した「停電管制運転/機能確認モード」画面が、それぞれかご操作盤5に表示される。
なお「試験終了/通常運転」ボタン56にタッチすると、図2に示した「通常画面」に戻る。
【0038】
図4に示した「機能確認モード/通常画面」には、昇降表示部41、複数の階床指定ボタン42、およびドア開閉ボタン43が表示されている。
これにより地震管制、火災管制、浸水管制、停電管制の各機能を模擬的に確認する際に、階床指定ボタン42を操作することにより乗りかご3を昇降させ、あるいはドア開閉ボタン43を操作してドアが開閉させることができる。
なお「戻る」ボタン44にタッチすると、図3に示した「機能確認選択メニュー」画面に戻る。
【0039】
図5に示した「地震管制運転/機能確認モード」画面には、「地震/揺れの種類」を選択する複数のボタン57、「模擬試験開始」ボタン58、「試験終了/通常運転」ボタン56、および図3に示した確認機能選択メニューに戻るための「戻る」ボタン59がそれぞれ表示されている。
【0040】
このとき、例えば「高」レベルの地震を選択して「模擬試験開始」ボタン58にタッチすると、図4に示した機能確認モードの通常画面が表示されるので、階床指定ボタン42を操作して乗りかご3を任意に昇降させる。
そして、所定の時間が経過すると、高レベルの地震が発生したときに地震感知器21が出力するのと同様な地震感知信号が、機能確認用制御装置30の地震模擬信号出力部32からエレベータ運転用制御装置10の地震管制運転部12に出力される。
すると、地震管制運転部12は、高レベルの地震が発生したことを表す地震感知信号が地震感知器21から入力した場合と全く同様に、高レベルの地震管制運転を開始する。
これに伴い、乗りかご3はその場で直ちに停止するとともに、強い地震が発生したのでエレベータを緊急停止させた旨のアナウンスが乗りかご3の内部に放送される。
これにより、高レベルの地震が発生した場合にエレベータがどの様に機能するかを、完了検査の際に、乗りかご3の内部において模擬的に確認することができる。
なお「試験終了/通常運転」ボタン56にタッチすると、地震管制運転を強制的に終了させて通常運転に戻ることができる。
【0041】
また「中」「低」「長周期」の地震を選択して「模擬試験開始」ボタン58にタッチした場合は、選択された種類の地震が発生したときに地震感知器21が出力するのと同様な地震感知信号が、地震模擬信号出力部32から地震管制運転部12に出力される。
そして、地震管制運転部12は、選択された種類の地震が発生したことを表す地震感知信号が地震感知器21から入力した場合と全く同様に、選択された種類の地震に対応する地震管制運転をそれぞれ開始する。
これにより、選択された種類の地震が発生した場合にエレベータがどの様に機能するかを、完了検査の際に、乗りかご3の内部において模擬的に確認することができる。
【0042】
また「緊急速報」を選択してから「模擬試験開始」ボタン58にタッチすると、図4に示した機能確認モードの通常画面が表示されるので、階床指定ボタン42を操作して乗りかご3を任意に昇降させる。
そして、所定の時間が経過した後に、気象庁が緊急地震速報を発信したときに緊急地震速報受信手段22から地震管制運転部12に入力するのと全く同様な緊急地震速報受信信号が、地震模擬信号出力部32から地震管制運転部12に出力される。
すると、エレベータ運転用制御装置10は、緊急地震速報受信手段22から緊急地震速報受信信号が入力した場合と全く同様の地震管制運転を開始する。
これに伴い、例えば乗りかご3が最寄階に着床してドアが開放し、かつ緊急地震速報を受信したので直ちに乗りかごから降りて下さいという内容のアナウンスが乗りかご3の内部に放送される。
これにより、緊急地震速報を受信した場合にエレベータがどの様に機能するかを、完了検査の際に、乗りかご3の内部において模擬的に確認することができる。
【0043】
さらに「強風」を選択してから「模擬試験開始」ボタン58にタッチすると、図4に示した機能確認モードの通常画面が表示されるので、階床指定ボタン42を操作して乗りかご3を任意に昇降させる。
そして、所定の時間が経過すると、強風が発生したときに風速計23が出力するのと同様な風速信号が、地震模擬信号出力部32から地震管制運転部12に出力される。
すると、地震管制運転部12は、台風等の接近に伴って強風が発生し建物が揺れ始めた場合と全く同様の地震管制運転を開始する。
これに伴い、例えば乗りかご3が最寄階に着床してドアを開放し、かつ強風により建物に揺れが発生しているのでエレベータの運転を休止する旨のアナウンスが乗りかご3の内部に放送される。
これにより、強風が発生した場合にエレベータがどの様に機能するかを、完了検査の際に、乗りかご3の内部において模擬的に確認することができる。
【0044】
図6に示した「火災管制運転/機能確認モード」画面には、模擬的な火災を発生させる階を指定するための複数のボタン61と、模擬試験開始ボタン58、試験終了/通常運転ボタン56、および図3に示した確認機能選択メニューに戻るための「戻る」ボタン59がそれぞれ表示されている。
【0045】
このとき、例えば火災発生階として3階を選択してから模擬試験開始ボタン58にタッチすると、図4に示した機能確認モードの通常画面が表示されるので、階床指定ボタン42を操作して乗りかご3を任意に昇降させる。
そして、所定の時間が経過すると、3階で火災が発生したときに火災感知器24が出力するのと同様の火災感知信号が、機能確認用制御装置30の火災模擬信号出力部33からエレベータ運転用制御装置10の火災管制運転部13に出力される。
すると、エレベータ運転用制御装置10は、3階で火災が発生したことを表す火災感知信号が火災感知器24から入力した場合と全く同様な火災管制運転を開始する。
これに伴い、乗りかご3は火災発生階である3階には着床せずに3階より低い階床である1階に直行するとともに、ドアが開放し、かつ3階で火災が発生したので直ちに避難して下さいという内容のアナウンスが乗りかご3の内部に放送される。
これにより、火災が発生した場合にエレベータがどの様に機能するかを、完了検査の際に、乗りかご3の内部において模擬的に確認することができる。
なお「試験終了/通常運転」ボタン56にタッチすると、火災管制運転を強制的に終了させて通常運転に戻ることができる。
【0046】
図7に示した「浸水管制運転/機能確認モード」画面には、模擬的な浸水を発生させる階を指定するためのボタン62,63と、模擬試験開始ボタン58、試験終了/通常運転ボタン56、および図3に示した確認機能選択メニューに戻るための戻るボタン59がそれぞれ表示されている。
【0047】
このとき、例えば浸水発生階としてB1階(地下1階)を選択してから模擬試験開始ボタン58にタッチすると、図4に示した機能確認モードの通常画面が表示されるので、階床指定ボタン42を操作して乗りかご3を任意に昇降させる。
そして、所定の時間が経過すると、B1階に浸水が発生したときに浸水感知器25が出力するのと同様の浸水感知信号が、機能確認用制御装置30の浸水模擬信号出力部34からエレベータ運転用制御装置10の浸水管制運転部14に出力される。
すると、エレベータ運転用制御装置10は、B1階に浸水が発生したことを表す浸水感知信号が浸水感知器25から入力した場合と全く同様な浸水管制運転を開始する。
これに伴い、乗りかご3は浸水発生階であるB1階には向かわず、2階より上の階床に着床して停止し、B1階に浸水が発生したのでエレベータの運転を休止する旨のアナウンスが乗りかご3の内部に放送される。
これにより、浸水が発生した場合にエレベータがどの様に機能するかを、完了検査の際に、乗りかご3の内部において模擬的に確認することができる。
なお「試験終了/通常運転」ボタン56にタッチすると、浸水管制運転を強制的に終了させて通常運転に戻ることができる。
【0048】
図8に示した「停電管制運転/機能確認モード」画面には、模擬試験開始ボタン58、試験終了/通常運転ボタン56、および図3に示した確認機能選択メニューに戻るための戻るボタン59のみが表示されている。
【0049】
これにより、模擬試験開始ボタン58にタッチすると、図4に示した機能確認モードの通常画面が表示されるので、階床指定ボタン42を操作して乗りかご3を任意に昇降させる。
そして、所定の時間が経過すると、エレベータに電力を供給している商用電源に停電が発生したときに停電管制運転部15から電源切替部16に入力するのと同様の電源切替信号が、機能確認用制御装置30の停電模擬信号出力部35からエレベータ運転用制御装置10の停電管制運転部15に出力される。
すると、エレベータ運転用制御装置10は、商用電源に停電が発生したことを表す停電感知信号が停電感知器26から入力した場合と全く同様な停電管制運転を開始し、電源切替部16を作動させて電力の供給源を商用電源から予備電源に切り替える。
これに伴い、乗りかご3は昇降の途中で停止するとともに、停電が発生したので予備電源に切り替えて運転を再開するから最寄階でエレベータから降りて下さいという旨のアナウンスが乗りかご3の内部に放送される。
これにより、停電が発生した場合にエレベータがどの様に機能するかを、完了検査の際に、乗りかご3の内部において模擬的に確認することができる。
そして「試験終了/通常運転」ボタン56にタッチすると、停電管制運転を強制的に終了させて通常運転に戻すことができる。
【0050】
すなわち、本発明の実施の形態におけるエレベータ機能の模擬確認システム100は、地震や火災、浸水、停電等の異常が発生したときにエレベータがどのように機能するかを、乗りかご3の内部に設けられている操作盤5を操作することによって模擬的に確認できるようにしたものである。
これにより、エレベータの完了検査の際に、検査官や施主を乗りかご3に同乗させた状態で各管制運転を含めた機能確認を実施することができるから、確認作業をスムーズに行えるばかりでなく、エレベータの安全性や品質の高さを検査官および施主に対し強くアピールすることができる。
【0051】
特に、本発明の実施の形態におけるエレベータ機能の模擬確認システム100は、地震や火災、浸水、停電等の異常が発生したときに地震感知器21、緊急地震速報受信手段22、風速計23、火災感知器24、浸水感知器25、停電感知器26からエレベータ運転用制御装置10の各管制運転部にそれぞれ入力する信号と同様な信号を、機能確認用制御装置30の各模擬信号出力部からエレベータ運転用制御装置10の各管制運転部に出力する構造である。
これにより、各感知器からの信号が各管制運転部にそれぞれ入力したときに、エレベータ運転用制御装置10がどのように機能するかを、実際にエレベータを運転しながら検証することができる。
したがって、単に巻上機1の運転を制御して各管制運転をシミュレートする場合とは異なり、エレベータ機能の品質を確実に検証することができる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施の形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、かご操作盤5に機能確認用制御装置30を並設している。
これに対し、機能確認用制御装置30を内蔵した携帯型の試験装置を作業員が持ち運べるようにするとともに、この携帯型の試験装置をかご操作盤5に接続し、かつこの携帯型の試験装置に選択メニューを表示させながら、検査官や施主が乗りかごに同乗した状態で模擬試験を実施することもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 巻上機
2 メインロープ
3 乗りかご
4 釣合錘
5 かご操作盤
6 ホール操作盤
10 エレベータ運転用制御装置
11 通常運転制御部
12 地震管制運転部
13 火災管制運転部
14 浸水管制運転部
15 停電管制運転部
16 電源切替部
21 地震感知器
22 緊急地震速報受信手段
23 風速計
24 火災感知器
25 浸水感知器
26 停電感知器
27 通信回線
28 遠隔監視センター
30 機能確認用制御装置
31 機能確認信号処理部
32 地震模擬信号出力部
33 火災模擬信号出力部
34 浸水模擬信号出力部
35 停電模擬信号出力部
100 エレベータ機能の模擬確認システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの通常運転と地震や火災、浸水、停電のうち少なくともいずれか一つの異常が発生したときに実施する管制運転とにおけるエレベータの各機能を模擬的に確認するシステムであって、
前記異常の発生を感知した感知器が出力する信号と同様の模擬信号を保持する模擬信号保持部と、
確認する機能を選択する確認機能選択部と、
前記模擬信号保持部に保持されている模擬信号のうち前記確認機能選択部において選択された機能に対応する模擬信号を前記エレベータの運転を制御する運転用制御装置に出力する模擬信号出力部と、
を有した機能確認用制御装置を備え、
前記機能確認用制御装置は、乗りかごの内部のかご操作盤に並設されていることを特徴とするエレベータ機能の模擬確認システム。
【請求項2】
前記機能確認用制御装置は、前記模擬信号によって模擬的に実行されている管制運転を強制的に終了させて通常運転に復帰させるための復帰信号を前記運転用制御装置に出力することを特徴とする請求項1に記載したエレベータ機能の模擬確認システム。
【請求項3】
前記かご操作盤は、タッチパネル液晶画面を有しており、
前記確認機能選択部は、確認する機能を選択するためのメニューを前記タッチパネル液晶画面に表示させることを特徴とする請求項1または2に記載したエレベータ機能の模擬確認システム。
【請求項4】
前記機能確認用制御装置は、前記かご操作盤に内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載したエレベータ機能の模擬確認システム。
【請求項5】
前記機能確認用制御装置は、作業員が携帯する操作盤に内蔵されており、作業員が前記かご操作盤に配線を介して接続する構造であることを特徴とする請求項1に記載したエレベータ機能の模擬確認システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−201504(P2012−201504A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70930(P2011−70930)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】