説明

エレベータ用ガイドレール装置

【課題】簡単で安価な構造によりガイドレールの断面係数を増やして強度を高くすることができ、しかも、展望用エレベータで使用する場合には太陽光の照射によるガイドレールの熱膨張を抑制することができるエレベータ用ガイドレール装置を提供する。
【解決手段】エレベータ用ガイドレール装置において、エレベータ昇降路内に設けられてこのエレベータ昇降路内を昇降する昇降体をガイドするガイドレール4と、ガイドレール4に取付けられ、取付けられることによりガイドレール4の断面係数を増やす金属製のカバー7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ用ガイドレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ昇降路内には、エレベータ昇降路内を昇降する乗りかごやつり合いおもりなどの昇降体をガイドするガイドレールが上下方向に沿って設けられている。このガイドレールは、例えば下記特許文献1、2に記載されたように、断面形状T字型に形成され、一定間隔ごとに支持部材を用いて建物の梁部材やエレベータ昇降路の壁部などに固定されている。
【0003】
ガイドレールは、ガイドする昇降体の荷重などに応じて強度を高くする必要があり、例えば、支持部材の設置間隔を狭くすることや、ガイドレールの材料として降伏点の高い材料を使用することや、ガイドレールのサイズを大きくすることなどにより強度を高めていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-206341号公報
【特許文献2】特開2004-91106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、支持部材の設置間隔を狭くした場合には使用する支持部材の数が多くなり、支持部材を取付ける手間がかかるとともにコストが大幅に高くなる。また、降伏点の高い材料を使用してガイドレールを製造する場合や、ガイドレールのサイズを大きくする場合にも、コストが大幅に高くなる。
【0006】
一方、展望用エレベータでは、太陽光の照射を受けたガイドレールが加熱されて熱膨張する場合があり、この熱膨張や収縮に伴って支持部材とガイドレールとの接触個所で摩擦が生じる。そして、この摩擦に伴って発生する異音がエレベータ利用者に不快感を与えたり、摩擦に伴う摩耗によりガイドレールや支持部材が劣化する。さらに、ガイドレールの設置位置を決める場合には、加熱によるガイドレールの伸長を考慮する必要がある。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的は、支持部材の上下方向の設置間隔を狭めたり、又は、ガイドレールの材料として降伏点の高い材料を使用したり、又は、ガイドレールのサイズを大きくしたりするという高コストな手段を採用することなく、簡単で安価な構造によりガイドレールの強度を高めることができ、しかも、展望用エレベータで使用する場合には太陽光の照射によるガイドレールの熱膨張を抑制することができるエレベータ用ガイドレール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のエレベータ用ガイドレール装置は、エレベータ昇降路内に設けられてこのエレベータ昇降路内を昇降する昇降体をガイドするガイドレールと、前記ガイドレールに取付けられ、取付けられることにより前記ガイドレールの断面係数を増やす金属製のカバーと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態のエレベータ用ガイドレール装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示したエレベータ用ガイドレール装置の側面図である。
【図3】図1に示したエレベータ用ガイドレール装置の水平断面図である。
【図4】第1の実施形態のカバーの取付構造を示す斜視図である。
【図5】第1の実施形態のカバーの取付手順を示す分解平面図である。
【図6】第2の実施形態のエレベータ用ガイドレール装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図1ないし図5に基づいて説明する。
【0011】
エレベータが設置された建屋には、図1及び図2に示すようにエレベータ昇降路1に沿って上下方向に延びる建屋梁2が設けられている。建屋梁2には、一定間隔で配列された複数のレール支持部材3の一端側が溶接で固定されている。これらのレール支持部材3の他端側がエレベータ昇降路1内に突出しており、この他端側先端部には、後述するガイドレール4を取付けるための取付板3aが溶接で固定されている。
【0012】
エレベータ昇降路1内には、エレベータ昇降路1内を昇降する乗りかごやつり合いおもりなどの昇降体(図示せず)をガイドする金属製のガイドレール4が上下方向に沿って設けられている。ガイドレール4は、基部4aとブレード部4bとからなる断面形状T字型に形成され、基部4aが固定クリップ5とボルト6とナット(図示せず)とによりレール支持部材3の取付板3aに固定され、ブレード部4bがエレベータ昇降路1の中央方向に向けられている。ブレード部4bには、エレベータ昇降路1内を昇降する昇降体のガイドシューなどが嵌合される。
【0013】
ガイドレール4の基部4aには、凹凸形状に形成された金属製のカバー7が取付けられている。カバー7は、図3、図4及び図5に示すように2つに分割された分割部材7a、7bを有し、これらの分割部材7a、7bは、基部4aに対して個々に取付け可能に設けられている。図5は基部4aへのカバー7の取付手順を示しており、分割部材7a、7bが基部4aの両側から嵌合され、その後、これらの分割部材7a、7bが締結部材であるボルト8とナット9とにより締結されている。これらのボルト8とナット9とによる分割部材7a、7bの締結は、カバー7の長手方向に沿った複数個所で行われている。なお、一方の分割部材7aにはボルト8が挿通される挿通穴10が形成され、他方の分割部材7bには挿通穴10に挿通されたボルト8が螺合されるナット9が溶接又は圧入により固定されている。カバー7の上下方向の長さ寸法は、上下方向で対向する一対のレール支持部材3の間隔より僅かに小さく設定されている。
【0014】
ガイドレール4に取付けられたカバー7は、少なくとも一部がガイドレール4に接触し、かつ、カバー7とガイドレール4との間には空間11が形成されている。この空間11は、エレベータで使用する各種の信号線を敷設することができるサイズに形成され、カバー7の上下方向の全体に亘って連続している。
【0015】
このような構成において、ガイドレール4に金属製のカバー7を少なくとも一部を接触させて取付けるという簡単で安価な構造により、レール支持部材3の上下方向の設置間隔を狭めたり、又は、ガイドレール4の材料として降伏点の高い材料を使用したり、又は、ガイドレール4のサイズを大きくしたりするという高コストの手段を採用することなく、ガイドレール4の断面係数を増やし、ガイドレール4の強度を高くすることができる。これにより、地震発生時の振動により昇降体からガイドレール4に対して横向きの外力が作用した場合でも、ガイドレール4の変形や破損を防止することができる。
【0016】
また、カバー7は、複数に分割されてガイドレール4の基部4aに対して個々に取付け可能な分割部材7a、7bを有し、これらの分割部材7a、7bをボルト8とナット9とで締結することにより形成されている。このため、カバー7をガイドレール4に対して後付けすることができ、ガイドレール4へのカバー7の取付け作業を容易に行うことができる。さらに、既存のガイドレール4に対してカバー7を取付けることができ、既存のガイドレール4の断面係数を増やし、ガイドレール4の強度を高くすることができる。
【0017】
カバー7とガイドレール4との間には空間11が形成されており、この空間11内に信号線などを敷設することができる。これにより、エレベータ昇降路1内において信号線などの敷設スペースを確保することができる。
【0018】
カバー7を展望用エレベータで使用した場合においては、太陽光がガイドレール4に照射されることをカバー7により遮光することができ、太陽光がガイドレール4に照射されることによるガイドレール4の熱膨張を抑制することができる。これにより、ガイドレール4の熱膨張や収縮に伴うレール支持部材3とガイドレール4との接触個所での摩擦を防止することができ、この摩擦が原因となる異音の発生やガイドレール4とレール支持部材3との摩耗を防止することができる。
【0019】
さらに、カバー7とガイドレール4との間には空間11が形成されているため、カバー7から放熱された熱のガイドレール4への伝わりを抑制することができ、ガイドレール4の熱膨張をより一層抑制することができる。
【0020】
一方、太陽の位置によっては、太陽光がガイドレール4の一部に直接照射され、この太陽光の照射によりガイドレール4が加熱される場合がある。しかし、カバー7とガイドレール4とは少なくとも一部が接触しているため、カバー7をガイドレール4からの放熱部材として利用することができ、ガイドレール4からの放熱用の表面積を増大させてガイドレール4の温度上昇、及び、ガイドレール4の熱膨張を抑制することができる。しかも、カバー7が凹凸形状に形成されているため、放熱に寄与するカバー7の表面積をより一層増大させることができる。
【0021】
また、カバー7を適宜な色に着色することができ、適宜な色に着色したカバー7をガイドレール4に取付けることによりガイドレール4の美観を向上させことができる。
【0022】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図6に基づいて説明する。なお、第1の実施形態で説明した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0023】
第2の実施形態では、ガイドレール4に平板形状に形成された金属製のカバー12が取付けられている。このカバー12は、平行に対向する一対の平板14a、14bと、平板14a、14b間に挟まされて平板14a、14bの間に空間15を形成する一対のスペーサ板16a、16bと、平板14a、14b間に挟まれて平板14a、14b間を補強する複数の補強板17とにより形成されている。空間15は、カバー12の上下方向の
全体に亘って連続して形成され、上下両側が開放されている。また、空間15は、補強板17により複数に分割され、個々の空間15はエレベータで使用する各種の信号線を敷設することができるサイズに形成されている。
【0024】
ガイドレール4へのカバー12の取付けは、ガイドレール4の基部4aとレール支持部材3の取付板3aとでカバー12を挟み、カバー12をガイドレール4と共に固定クリップ5とボルト6とナット13とによりレール支持部材3に締付けることにより行われている。カバー12の上下方向の長さ寸法は、ガイドレール4の上下方向の長さ寸法と略同じ
に設定されている。
【0025】
一方の平板14aは基部4aの背面に面接触させて設けられ、他方の平板14bはレール支持部材3の取付板3aに面接触させて設けられている。
【0026】
このような構成において、ガイドレール4に金属製のカバー12をその少なくとも一部である一方の平板14aを接触させて取付けるという簡単で安価な構造により、レール支持部材3の上下方向の設置間隔を狭めたり、又は、ガイドレール4の材料として降伏点の高い材料を使用したり、又は、ガイドレール4のサイズを大きくしたりするという高コストの手段を採用することなく、ガイドレール4の断面係数を増やし、ガイドレール4の強度を高くすることができる。これにより、地震発生時の振動により昇降体からガイドレール4に対して横向きの外力が作用した場合でも、ガイドレール4の変形や破損を防止することができる。
【0027】
カバー12内には、上下両側が開放された空間15が形成されており、この空間15内に信号線などを敷設することができる。これにより、エレベータ昇降路1内において信号線などの敷設スペースを確保することができる。
【0028】
カバー12を展望用エレベータで使用した場合においては、太陽光がガイドレール4に照射されることをカバー12により遮光することができ、太陽光がガイドレール4に照射されることによるガイドレール4の熱膨張を抑制することができる。これにより、ガイドレール4の熱膨張や収縮に伴うレール支持部材3とガイドレール4との接触個所での摩擦を防止することができ、この摩擦が原因となる異音の発生やガイドレール4とレール支持部材3との摩耗を防止することができる。
【0029】
さらに、カバー12内には上下方向の両端が開放された空間15が形成されているため、カバー12から放熱された熱のガイドレール4への伝わりを抑制することができ、ガイドレール4の熱膨張をより一層抑制することができる。
【0030】
一方、太陽の位置によっては、太陽光がガイドレール4の一部に直接照射され、この太陽光の照射によりガイドレール4が加熱される場合がある。しかし、カバー12の平板14aとガイドレール4とが接触しているため、カバー12をガイドレール4からの放熱部材として利用することができ、ガイドレール4からの放熱用の表面積を増大させてガイドレール4の温度上昇、及び、ガイドレール4の熱膨張を抑制することができる。
【0031】
また、カバー12を適宜な色に着色することができ、適宜な色に着色したカバー12をガイドレール4に取付けることによりガイドレール4の美観を向上させことができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変更は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 エレベータ昇降路
4 ガイドレール
7 カバー
7a、7b 分割部材
8 ボルト(締結部材)
9 ナット(締結部材)
11 空間
12 カバー
15 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ昇降路内に設けられてこのエレベータ昇降路内を昇降する昇降体をガイドするガイドレールと、
前記ガイドレールに取付けられ、取付けられることにより前記ガイドレールの断面係数を増やす金属製のカバーと、
を備えることを特徴とするエレベータ用ガイドレール装置。
【請求項2】
前記カバーと前記ガイドレールとの間に空間が形成されていることを特徴とする請求項1記載のエレベータ用ガイドレール装置。
【請求項3】
前記カバーには上下方向の両側が開放された空間が形成されていることを特徴とする請求項1記載のエレベータ用ガイドレール装置。
【請求項4】
前記カバーと前記ガイドレールとは、少なくとも一部が接触していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のエレベータ用ガイドレール装置。
【請求項5】
前記カバーは、複数に分割されて前記ガイドレールに対して個々に取付け可能な分割部材を有し、これらの分割部材が締結部材で締結されていることを特徴とする請求項1、2又は4のいずれか一項に記載のエレベータ用ガイドレール装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−153495(P2012−153495A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14843(P2011−14843)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】