説明

エレベータ用敷居閉塞体の異物除去装置

【課題】簡便な方法でエレベータの敷居閉塞体の上に落下した異物を除去する。
【解決手段】エレベータのかご扉30のかご外面側下部に取り付けられ、エレベータのかご側の敷居12とエレベータの乗場側の敷居との間の隙間を塞ぐ敷居閉塞体18の上面に接し、エレベータのかご扉30の開閉の際に敷居閉塞体18の上を摺動して敷居閉塞体18の上に位置している異物を除去するブラシ23を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ用敷居閉塞体の異物除去装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、垂直な昇降路の中を乗客や荷物を乗せたかごが上下に移動することによって、乗客や荷物を建物の垂直方向に移動させるものであり、かごには乗降用のかご扉が設けられ、建物の各階には昇降路の開閉を行う乗場側扉が設けられている。そして、エレベータのかごが所定の階に到着すると、かご扉と乗場側扉とが開いて乗客かごに乗降できるように構成されている。かご扉と乗場側扉はいずれもスライド式の扉となっており、各扉はそれぞれかごあるいは乗場の上部に設けられたドアレールから吊り下げられ、かごあるいは乗場の床に設けられた敷居の中に各扉の下端に設けられたスライドシューがスライド可能に嵌まりこむ構成となっている。このような構造のかご扉や乗場側扉では、扉が開くと敷居の溝が露出するので、乗客がこの敷居の溝の中に小さな異物を落とした場合、扉のスライドシューが溝に落下した異物と干渉し、扉の開閉に支障が出る場合があった。このため、扉の下端にブラシを取り付けて扉の開閉の際に扉の下端に敷居の溝に入った異物を除去する敷居清掃装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、エレベータでは、かごが上下方向に移動できるように、かごと乗場との間には隙間が設けられているので、エレベータへの乗降時に乗客がこの隙間の中に物を落としてしまう場合がある。そこで、かごと乗場との隙間を小さくするために、かご扉よりも下側の部分に敷居閉塞体という板状の突起を設け、この隙間に異物が落下しないように構成する場合がある。一方、エレベータにはエレベータが停止階に停止した際に、かご扉と乗場側扉とが略同時に開閉するように、かご扉と乗場側扉とを係合させる係合装置が設けられているので、この部分だけは敷居閉塞体に切り欠きを設ける必要がある。このため、敷居閉塞体の上をスライドする巻き取り式のシャッタを設け、かご扉が開いた際にシャッタを敷居閉塞体の切り欠き部を覆うように引き出し、異物が敷居閉塞体の切り欠き部から昇降路内に落下することを防止する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−64879号公報
【特許文献2】特開2003−54861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、乗客が金属製のボールペンなどの細長い異物を敷居閉塞体の上に落とした場合、そのボールペンが切り欠き部分を跨いだ状態で敷居閉塞体の上に停止することがある。この状態で、エレベータが上下方向に移動すると、切り欠き部分を跨いで停止している金属製のボールペンに係合装置が接触し、エレベータの上下方向の移動に支障が出てしまう場合がある。特許文献2に記載された従来技術では、このような細長い異物はシャッタの巻き取り機構とシャッタ引き出しアームとの間に挟まってしまい、異物によってシャッタの開閉ができなくなり、その結果、扉の開閉に支障がでてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、簡便な方法でエレベータの敷居閉塞体の上に落下した異物を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の敷居閉塞体の異物除去装置は、エレベータのかご扉のかご外面側下部に取り付けられ、エレベータのかご側の敷居とエレベータの乗場側の敷居との間の隙間を塞ぐエレベータ用敷居閉塞体の上面に接し、エレベータのかご扉の開閉の際に敷居閉塞体の上を摺動して敷居閉塞体上の異物を除去する摺動体を備えること、を特徴とする。
【0008】
本発明の敷居閉塞体の異物除去装置において、敷居閉塞体はかご側扉と乗場側扉とを係合させる係合装置のための切り欠きを有し、摺動体は、エレベータのかご扉の開閉の際に少なくとも切り欠き部の上を移動し、切り欠き部を渡るように位置している異物を切り欠き部から他の部分に移動させること、としても好適である。
【0009】
本発明の敷居閉塞体の異物除去装置において、摺動体は、その先端が敷居閉塞体に接するブラシまたは弾性体の板であり、ドアシューと共にかご扉に取り付けられていること、としても好適であるし、摺動体は、その先端が敷居閉塞体に接するブラシまたは弾性体の板であり、かご扉のセーフティーシューと共にかご扉に取り付けられていること、としても好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、簡便な方法でエレベータの敷居閉塞体の上に落下した異物を除去することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における敷居閉塞体異物除去装置を示す斜視図である。
【図2】エレベータのかご扉が閉じた状態における本発明の実施形態の敷居閉塞体異物除去装置の位置を示す説明図である。
【図3】エレベータのかご扉が開く際における本発明の実施形態の敷居閉塞体異物除去装置の動作を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態の敷居閉塞体異物除去装置を備えるエレベータのかご扉が開いた状態で敷居閉塞体の上に異物が落下した状態を示す説明図である。
【図5】エレベータのかご扉が閉まる際における本発明の実施形態の敷居閉塞体異物除去装置の動作を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態における敷居閉塞体異物除去装置を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態における敷居閉塞体異物除去装置を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態における敷居閉塞体異物除去装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態の敷居閉塞体の異物除去装置について説明する前に、エレベータのかご及び敷居閉塞体について説明する。図1に示すようにエレベータのかご100は、床板11と、床板11の上に配置され、溝13が形成されている敷居12を備えている。エレベータのかご100のかご扉30は、図示しないドアレールから吊り下げられるように取り付けられ、その戸当たり側と戸袋側の下端には敷居12の溝13の中を自在に移動するドアシュー14が嵌まり込んでいる。図1は戸当たり側を示している。ドアシュー14はかご扉30の戸当たり側の下端にボルト16によって取り付けられている。かご100の床板11のかご前方側には、床板11から下方向に伸びる板状の前垂れ17が取り付けられ、この前垂れ17のかご前方側あるいはかご外面側の表面には、L字型でかご扉の開閉方向に伸びる敷居閉塞体18が取り付けられている。敷居閉塞体18の1つのフランジは前垂れ17からかご前方あるいはかご外面側に向って伸び、図示しないエレベータの乗場側の敷居との隙間を埋めるように構成されている。また、図1に示すように、敷居閉塞体18には図示しない扉係合装置を避けるための切り欠き19が設けられている。
【0013】
敷居閉塞体異物除去装置20は、ドアシュー14の取り付けブラケット15に重ねあわされてボルト16によって共締でかご扉30の下端の戸当たり側に固定される取り付け板21と、取り付け板21からかご前方側あるいはかご外面側に向かって直角に折れ曲がり、その先端が敷居閉塞体18の上面に向って下方向に伸びるアーム22と、アーム22の下端に設けられ、その先端が敷居閉塞体18の表面に接触するブラシ23とを備えている。かご扉30がスライド移動すると敷居閉塞体異物除去装置20はブラシ23の先端を敷居閉塞体18の上面に接触させた状態でかご扉30と共に左右方向にスライド移動する。敷居閉塞体異物除去装置20のアーム22、ブラシ23の幅は敷居閉塞体18の幅よりも狭くなっているため、エレベータの走行中に敷居閉塞体異物除去装置20がエレベータの他の機器に干渉することはない。
【0014】
図2から図5を参照しながらエレベータのかご100のかご扉30の開閉動作と敷居閉塞体異物除去装置20の動作について説明する。図2に示すように、かご扉30はかご100に固定されたドアレール33からハンガ31によって吊り下げられている。ハンガ31の上部にはドアレール33の上を走行する車輪32が回転自在に取り付けられており、かご扉30は図示しない開閉装置によって左右にスライド移動する。かご扉30が閉まっている状態では、かご扉30の戸当り側に配置された敷居閉塞体異物除去装置20は、敷居閉塞体18に設けられている切り欠き19の戸当たり側に位置している。
【0015】
図3に示すように、かご扉30が開くと、かご扉30は戸袋34の中に入り、かご扉30が移動した後にはかご100の乗降口35が現れる。図3に示すように、かご扉30が全開すると、敷居閉塞体異物除去装置20は、敷居閉塞体18の切り欠き19の戸袋側に移動する。この状態で、乗客は図示しない乗場との間でかご100への乗降を行う。
【0016】
図4に示すように、かご100の乗降口35から乗降している乗客が例えば金属製のボールペンのような細長い金属製の異物40を落とすと、その異物40がかご100と乗場との間の敷居閉塞体18の上に落下して、図4に示すように敷居閉塞体18の切り欠き19を渡るような状態となる場合がある。その場合、図5に示すように、かご扉30が閉まりだすと、敷居閉塞体異物除去装置20は、その先端のブラシ23で敷居閉塞体18の上面を擦って異物40を戸当たり側に向って移動させながら、敷居閉塞体18の切り欠き19の戸袋側から戸当たり側に向かって切り欠き部19の上を移動する。これによって、敷居閉塞体18の切り欠き19を渡るような状態となっていた異物40は切り欠き19の領域から排除され、切り欠き19の戸当たり側に移動される。そして、かご扉30が全閉となると、異物40は図5に示す敷居閉塞体18の上のかご扉30の戸当たり側とかご100の戸当たり側面との間の位置41まで移動する。
【0017】
以上説明したように、本実施形態の敷居閉塞体異物除去装置20は、簡便な構造で敷居閉塞体18の切り欠き19を渡る位置に落下した異物40を切り欠き19の領域から排除するので、かご100が移動した際に異物40がかご扉と乗場側扉との係合装置にぶつかることを抑制することができる。また、これにより、異物40によりエレベータが運転中に停止してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0018】
以上説明した実施形態では、敷居閉塞体異物除去装置20は、かご扉30の戸当たり側の下端にドアシュー14の取り付けブラケット15と共にボルト16で取り付けられていることとして説明したが、かご扉30の下端に取り付けられていればドアシュー14の取り付けブラケット15と共にボルト16で共締めするのではなく、敷居閉塞体異物除去装置20の取り付け板21を別途かご扉30の下側に取り付けるようにしてもよい。また、本実施形態では、敷居閉塞体異物除去装置20は、かご扉30の戸当たり側に取り付けることとして説明したが、かご扉30が閉まった際に敷居閉塞体異物除去装置20が敷居閉塞体18の切り欠き19の戸当たり側であり、かご扉30が開いた際に敷居閉塞体異物除去装置20が切り欠き19の戸袋側になるような位置に配置されていれば、戸当たり側に配置されていなくてもよい。
【0019】
本実施形態では敷居閉塞体異物除去装置20のブラシ23は敷居閉塞体18の上に載っている異物40を滑らして移動させるものであることから、敷居閉塞体18をテフロン(登録商標)やシリコンなどの低摩擦材とすることにより効果的に異物40をスライド移動させることができる。また、テフロン(登録商標)等のテープを敷居閉塞体18の上面に貼り付けておいても効果的である。
【0020】
図6を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。図1から図5を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。本実施形態は、図1から図5を参照して説明した実施形態のブラシ23に代えて、アーム22の先端を薄い金属板で構成した当て板25とし、アーム22の根元部分に板ばね24を構成するように薄板を折り曲げた部分を設けたものである。本実施形態では、板ばね24によって当て板25を敷居閉塞体18の上面に押し付け、当て板25の先端を戸当たり方向に折り曲げることによって、当て板25の戸当たり側の先端25aで異物40を戸当たり方向に効果的に移動させることができる。また、当て板25の先端25aが敷居閉塞体18の上面に密着するので、薄い異物40であっても当て板25の先端25aによって容易に戸当たり側に移動させることができる。本実施形態では、当て板25は薄い金属板として説明したが、弾性体であれば金属板に限られず、樹脂製やゴム製の板であってもかまわない。
【0021】
図7に示した本発明の他の実施形態は、敷居閉塞体異物除去装置20の取り付け板21からかご100の前面方向に伸びるブラケット26を設け、このブラケット26に樹脂製の当て板27を取り付けたものである。当て板27の先端は先に図6を参照して説明した実施形態と同様、戸当たり側に曲がり、その先端28によって異物40を効果的に移動させるよう構成されている。
【0022】
図8を参照して本発明の他の実施形態について説明する。図1から図7を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。図1から図7を参照して説明した実施形態は、敷居閉塞体異物除去装置20をかご扉30に直接取り付けるようにしたものであるが、本実施形態では、敷居閉塞体異物除去装置20をかご扉30の戸当たり側に設けられたセーフティーシュー36の下端に取り付けるようにしたものである。図8に示すように、セーフティーシュー36は、かご扉30のかご前面側あるいはかご外面側にピン38の周りに回転自在に取り付けられたアーム37によってかご扉30のかご前面側あるいはかご外面側に支持され、かご扉30の戸当たり側から出入りするように取り付けられている。そして、かご扉30の閉動作中に乗客などがセーフティーシュー36に接触するとセーフティーシュー36が押されてかご扉30側に移動し、検出スイッチ39がオンとなる。検出スイッチ39がオンとなると、かご扉30の開閉装置はかご扉30の閉動作を停止してかご扉30の開動作を行う。図8に示すように、セーフティーシュー36は略かご扉30の全高さにわたって設けられており、その下端はかご扉30の下端と略同様の高さとなっている。敷居閉塞体異物除去装置20は図1に記載したように先端にブラシ23を取り付けたものでもよいし、図6、図7を参照して説明したように当て板25、27を取り付けたものとしてもよい。本実施形態は図1から図7を参照して説明した実施形態と同様の効果を奏する。
【0023】
また、図6、図7に示したような当て板25,27を用いた敷居閉塞体異物除去装置20をセーフティーシュー36に取り付けた場合に、異物40が重いもので移動できないような場合、当て板25,27の先端25a,28が異物40に引っかかることによってセーフティーシュー36がかご扉30の側に移動し、検出スイッチ39がオンとなって、かご扉30の開閉装置は閉まりかけたかご扉30を全開させるので、敷居閉塞体18の上の異物40を容易に拾い上げることができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0024】
11 床板、12 敷居、13 溝、14 ドアシュー、15,26 ブラケット、16 ボルト、18 敷居閉塞体、20 敷居閉塞体異物除去装置、21 取り付け板、22,37 アーム、23 ブラシ、25,27 当て板、25a,28 先端、30 かご扉、31 ハンガ、32 車輪、33 ドアレール、34 戸袋、35 乗降口、36 セーフティーシュー、38 ピン、39 検出スイッチ、40 異物、41 位置、100 かご。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご扉のかご外面側下部に取り付けられ、エレベータのかご側の敷居とエレベータの乗場側の敷居との間の隙間を塞ぐエレベータ用敷居閉塞体の上面に接し、エレベータのかご扉の開閉の際に敷居閉塞体の上を摺動して敷居閉塞体上の異物を除去する摺動体を備えること、
を特徴とする敷居閉塞体の異物除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の敷居閉塞体の異物除去装置であって、
敷居閉塞体はかご側扉と乗場側扉とを係合させる係合装置のための切り欠きを有し、
摺動体は、エレベータのかご扉の開閉の際に少なくとも切り欠き部の上を移動し、切り欠き部を渡るように位置している異物を切り欠き部から他の部分に移動させること、
を特徴とする敷居閉塞体の異物除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載の敷居閉塞体の異物除去装置であって、
摺動体は、その先端が敷居閉塞体に接するブラシまたは弾性体の板であり、
ドアシューと共にかご扉に取り付けられていること、
を特徴とする敷居閉塞体の異物除去装置。
【請求項4】
請求項2に記載の敷居閉塞体の異物除去装置であって、
摺動体は、その先端が敷居閉塞体に接するブラシまたは弾性体の板であり、
かご扉のセーフティーシューと共にかご扉に取り付けられていること、
を特徴とする敷居閉塞体の異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−171748(P2012−171748A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35529(P2011−35529)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】