説明

エンアミド誘導体の新規合成方法

【課題】エンアミド誘導体の新規合成方法の提供
【解決手段】エンアミド誘導体:


(式中、
R1、R2及びR3は独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルアリール、アリール、複素環、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシル、カルバモイル、−CONR5R6若しくは−COOR5基である;
又は、R1及びR2は一緒に環を形成してもよい;
R4は水素原子、アルキル、アリール、アルキルアリール基である;
Xは酸素原子若しくは脱離基であり、
mは1又は2の整数;
mが1の場合、Xは脱離基;mが2の場合、Xは酸素原子)
:の製造方法であって、
不均一系触媒の存在下でのアシル誘導体(R4CO)Xによるオキシム誘導体:


:の水素化/異性化反応を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不斉の水素化反応に有益であるために、有効薬剤の重要中間体として知られる鏡像異性的に純粋なアミン誘導体の合成に有益な基質として有用なエンアミド誘導体の新規大量調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1等の従来技術にエンアミド前駆体の調製方法がいくつか記載されているが、これらの方法があまり一般的でなく大量製造には適さないことは明らかである。
【0003】
非特許文献1及び2に、無水酢酸/酢酸又は無水酢酸単独の存在下における金属鉄によるオキシム誘導体の還元を含むエンアミド化合物の合成方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、無水カルボン酸の存在下におけるルテニウム触媒によるオキシム誘導体の還元を含むエンアミド化合物の合成方法が記載されている。
【0005】
しかし、これらの方法は、これらの条件下における生成物の分解、生成物の分離を促進する共溶媒の使用、エンアミドが不純で困難な精製を要すること、収率が低いか中程度であること等、いくらか制限がある。
【0006】
従来技術の方法は、エンアミド誘導体の大量製造には好適でなく、従って、不斉の水素化によるキラル体のアミンの商業生産には適用不可能である。
【特許文献1】国際特許WO99/18065号
【特許文献2】アメリカ合衆国特許US4194050号
【非特許文献1】M.Burkら、JOC,1998,63,p6084
【非特許文献2】X.Zhangら、JOC,1999,64(6),p1775
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の方法は、エンアミドを高収率で取得可能であり、生成物の分離が非常に容易であり、生成物の化学純度が良好であり、かつ、再現性があるという点で有利である。
【0008】
本発明の方法は、不斉か又はそうでない水素化反応によるアミン誘導体の大量工業生産に好適であることが明白である。不斉か又はそうでない上記アミン誘導体は、有効医薬調製物の中間体として使用される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スキーム(I)で示す不均一系触媒の存在下における式(III)のアシル誘導体による式(II)の化合物の水素化異性化反応を含むことを特徴とする、式(I)の化合物の新規調製方法に関する。
【0010】
【化1】

【0011】
式中、
R1、R2及びR3は独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルアリール、アリール、複素環、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシル、カルバモイル、−CONR5R6(R5及びR6は独立してアルキル、アリールアルキル、アリール基、又は、R5及びR6は一緒になって環を形成してもよい)、若しくは、−COOR5基(式中、R5はアルキル、シクロアルキル、アルキルアリール又はアリール基)であり、上記アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルアリール及びアリール基は官能基若しくはR5で置換されている若しくは置換されていない;
又は、R1及びR2は一緒になって環(この用語はモノ−、ジ−及びそれ以上の多環構造を含む)を形成してもよく、上記環は官能基若しくはR5で置換されている若しくは置換されていない;
R4は水素原子、アルキル、アリール、アルキルアリール基であり、上記基はハロゲン原子Cl、Br若しくはFで置換されている若しくは置換されていない;
Xは酸素原子若しくは脱離基であり、かつ、
mは1又は2の整数である;
mが1である場合、Xは脱離基である;mが2である場合、Xは酸素原子である。
【0012】
本明細書中において、要求がない場合には以下である:
【0013】
好ましくは、用語「アルキル基」は、官能基又はR5で任意に置換されたメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル基(これらに限定されないが)等の炭素原子1〜20個を有する直鎖又は分岐のアルキル基を意味する。
【0014】
好ましくは、用語「シクロアルキル」は、官能基又はR5で任意に置換されたシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル基(これらに限定されないが)等の炭素原子3〜20個を有するシクロアルキル基を意味する。
【0015】
好ましくは、用語「シクロアルキルアルキル」は、官能基又はR5で任意に置換されたシクロプロピルメチル、シクロヘキシルメチル基(これらに限定されないが)等の炭素原子3〜20個を有するシクロアルキルアルキル基を意味する。
【0016】
好ましくは、用語「アリール」は、官能基若しくはアルキル若しくは縮合アリール基で任意に置換されたフェニル、トリル、キシリル、クメニル、ナフチル基(これらに限定されないが)等の炭素原子6〜20個を有するアリール基を意味する、又は、「アリール」は、官能基若しくはR5若しくはアルキル若しくは縮合アリール基で任意に置換されたフリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピラジル(pyrazyl)、ピリミジニル、インドリル、カルバゾリル、イソキサゾリル(isoxazolyl)、イソチアゾリル(isothiazolyl)基(これらに限定されないが)等の炭素原子6〜20個を有し、一個以上のヘテロ原子O、N若しくはSを含むヘテロアリール基を意味する。
【0017】
好ましくは、用語「アルキルアリール」は、官能基又はR5で任意に置換されたベンジル、フェネチル、ナフチルメチル基(これらに限定されないが)等の炭素原子6〜20個を有するアルキルアリール基を意味する。
【0018】
好ましくは、用語「複素環」は、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジル、イミダゾリジニル、ピペリジル、インドリニル(indolinyl)基(これらに限定されないが)等の炭素原子6〜20個を有し、一個以上のヘテロ原子O、N又はSを含む複素環を意味し、上記複素環は飽和又は不飽和であり、上記複素環は官能基又はR5又は縮合アリール基で任意に置換されている。
【0019】
用語「官能基」は、ハロゲン原子、又は、−OH、−OR5、−CN、−COOR5、−COR5、−CONR5R6、−OCOR5、−NH2、−NHR5、−NR5R6、−NO2、−SH、SR5を含み、R5及びR6が独立してアルキル、アルキルアリール若しくはアリール基であるか、又は、R5及びR6が一緒になって環を形成していてもよい基を意味する。
【0020】
好ましくは、用語「脱離基」は、R5がアルキル、アルキルアリール又はアリール基である−COR5、−CO2R5、−SO2R5、−COCCl3、−SO2F、−SO2CF3、−SO2CH2CF3基の一つを意味する。
【0021】
好ましくは、用語「環」は、下記式の化合物(これらに限定されないが)等の炭素原子4〜30個を有する環構造を意味する:
【0022】
【化2】

【0023】
式中、−R1−R2−は、官能基又は縮合アリール基で任意に置換されたメチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン又はヘキサメチレン結合である。
【0024】
また本発明は、下記式で表わす最も好ましい化合物にも関する:
【0025】
【化3】

【0026】
式中、n1は0〜4の整数、m及びmは各々0〜4の整数、R7及びR8は同一又は異なって水素原子、官能基、アルキル、アリール、シクロアルキル、アルキルアリール基である。
【0027】
【化4】

【0028】
式中、n1及びn2は各々0〜4の整数、Qはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル基であり、上記基は好ましくはα−又はβ−テトラロン−オキシム誘導体、α−又はβ−インダノン−オキシム誘導体等の少なくとも一つの官能基で置換されており又は置換されておらず、官能基で置換されている又は置換されていない。
【0029】
【化5】

【0030】
式中、R3、R7、R8は上記に定義する通りであり、R9、R10は独立して水素原子、官能基、アルキル、アリール、シクロアルキル、アルキルアリール基である。
【0031】
【化6】

【0032】
式中、n1、n2、R3及びQは上記に定義する通りであり、R11は水素原子、アルキル、アリール基である。
【0033】
【化7】

【0034】
式中、n1、n2、R3、R7、R8、R9及びQは、上記に定義する通りである。
【0035】
【化8】

【0036】
式中、
R4は水素原子、アルキル、アリール、アルキルアリール基であり、上記基はハロゲン原子Cl、Br又はFで置換されている又は置換されていない;
R7、R8、R9及びR10は同一又は異なって水素原子、官能基、アルキル、アリール基であるが同時に水素原子であることはなく、好ましくは、R7、R8及びR10は水素原子であり、R9はメトキシ基であり、R4はメチル基である。
【0037】
また本発明は、医薬品として重要なアミン又はアミド誘導体を与える不斉か又はそうでない水素化反応において最も好ましい化合物の使用に関する。
【0038】
不均一系触媒はPd、Ir、Pt、Rh、Ni触媒、好ましくはIr又はRh等の金属に基づく。
【0039】
不均一系触媒は、酸化物又は金属の状態で使用され、好適な担体(例えばIr/炭素、Ir/アルミナ、Rh/炭素又はRh/アルミナ)上に支持されていてもよい。
【0040】
本発明の実施方法を以下に説明する。
【0041】
式(II)の化合物は、シン型、アンチ型、又は、両方の混合型で使用可能である。
【0042】
式(III)の化合物は、オキシム1モル等量に対して少なくとも2モル等量使用すべきであり、溶媒と共に反応薬剤として大量に使用してもよい。
【0043】
使用する触媒の量は、オキシム誘導体1モルに対して0.001〜30モル%である。
【0044】
本発明の方法は好適な溶媒中で実施する。
好適な溶媒は、(テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル等であるが、これらに制限されない)エーテル、又は、(ベンゼン、トルエン等であるが、これらに限定されない)芳香族炭化水素、又は、無水カルボン酸、又は、ハロゲン化炭化水素、又は、低分子量カルボン酸、又は、これらの混合物等の非プロトン性非塩基性溶媒である。
【0045】
本発明の方法は−20〜150℃、好ましくは20℃〜120℃の温度範囲で実施する。
【0046】
本発明の水素化は、水素圧力0.5〜20バールで実施する。
【0047】
本発明の方法は、0.5〜24時間の範囲で実施する。
【0048】
本発明の方法は、式(I)の化合物の有機溶液のワークアップ段階、すなわち、有機又は無機塩を含有し、ハロゲン原子、好ましくは塩化物イオンを含有しない水で洗浄する段階を含む。
【0049】
上記有機又は無機塩は、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、アンモニウム、好ましくはリン酸塩から選択可能である。
【0050】
上記洗浄段階により、pHが中性の溶液を取得可能である。分離した生成物はハロゲンイオンを含有しない。上記ハロゲンイオンは、後の不斉の水素化反応中に触媒作用を妨害する可能性があるため、この反応の収率に影響を及ぼす可能性がある。従って、この洗浄段階により、次の不斉の水素化反応にとって良質の出発原料の取得が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
本発明は、以下の実験の詳細からより深く理解可能であろう。
【0052】
実施例:
本発明を次の例により説明するが、これらは本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【実施例1】
【0053】
β−テトラロンからのエンアミド
【0054】
【化9】

【0055】
実施例1a:Rh/Cを使用するβ−テトラロンからのエンアミド
100mlの反応器中に、テトラヒドロフラン(43.5ml)及び3,4−ジヒドロ−1H−ナフタレン−2−オンオキシム(7.2g、0.0447モル)を導入する。その後、無水酢酸(13.7g、0.134モル)を20〜25℃で15分間かけて添加する。この懸濁液を1時間撹拌し、5%Rh/C触媒(乾燥触媒)(0.29g、オキシムに対して4重量%)を添加する。この混合物を30℃に加熱し、水素の流動を開始する。水素化は水素圧4バールで15時間継続する。反応終了後、この懸濁液をろ過して触媒を除去し、触媒はTHFで洗浄する。この溶液を水(21ml)及びNaOH 30%(30.4g)の混合物に5℃で1時間かけて添加し、20℃で30分間維持する。水相を捨て、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄する。
【0056】
THFを減圧下で蒸留し、トルエンで置換し、真空下で濃縮して、油状で褐色の残渣N−(3,4−ジヒドロ−ナフタレン−2−イル)アセトアミド(6.14g、74%)を得る。
【0057】
実施例1b:Ir/Cを使用するβ−テトラロンからのエンアミド
100mlの反応器中に、テトラヒドロフラン(43.5ml)及び3,4−ジヒドロ−1H−ナフタレン−2−オンオキシム(7.2g、0.047モル)を導入する。その後、無水酢酸(13.5g、0.134モル)を20〜25℃で15分間かけて添加する。この懸濁液を1時間撹拌し、5%Ir/C触媒(乾燥触媒)(0.29g、オキシムに対して4重量%)を添加する。この混合物を70℃に加熱し、水素の流動を開始する。水素化は水素圧4バールで8〜10時間継続する。反応終了後、この懸濁液をろ過して触媒を除去し、触媒はTHFで洗浄する。この溶液を水(30ml)及びNaOH 30%(42g)の混合物に5℃で1時間かけて添加し、20℃で30分間維持する。水相を捨て、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄する。
【0058】
THFを減圧下で蒸留し、トルエンで置換し、真空下で濃縮して、油状で褐色の残渣N−(3,4−ジヒドロ−ナフタレン−2−イル)アセトアミド(5.5g、66%)を得る。
【0059】
実施例1c:Ir/Cを使用するβ−テトラロンからのエンアミド
3,4−ジヒドロ−1H−ナフタレン−2−オンオキシム5.5g(0.0341モル)をTHF42ml中に溶解した。その後、無水酢酸9.66mlを滴下した。この反応混合物を温度20〜30℃で2時間撹拌する。この反応混合物に5%Ir−炭素触媒0.44gを添加する。その後、水素化を水素圧6バールで75℃において3時間実施する。触媒をろ過した後、ろ液を減圧下で濃縮して乾燥させた。残渣をトルエン120ml中に溶解し、減圧下で濃縮して乾燥させた。この新しい残渣をMTBE 10ml及びヘキサン9mlの混合物中で再結晶させて生成物3.82g(化合物N−(3,4−ジヒドロ−ナフタレン−2−イル)アセトアミド)を得た。
【0060】
粗収率:計量可能/分離収率:59.9−%
化学純度(GC):98.95%
【0061】
構造分析
オキシム:1H NMR(CDCl3):2.7−2.8(t,1H),2.85−2.95(t,1H),3−3.1(m,2H),3.75(s,1H),4.05(s,1H),7.25−7.5(m,4H),9.5(m,OH).
【0062】
酢酸オキシム(oxime acetate):1H NMR(CDCl3):2.2(s,3H),2.65−2.9(m,4H),3.65(s,1H),3.85(s,1H),7.1−7.25(m,4H).
【0063】
エンアミド:1H NMR(CDCl3):2.3(s,3H),2.6−2.75(t,2H),3−3.15(t,2H),7.15−7.35(m,5H),7.75(m,NH).
【0064】
13C NMR(CDCl3):168,134,133,132.5,127,126,125.5,125,27.5,27,24.
【実施例2】
【0065】
6−メトキシ−1−インダノンからのエンアミド
【0066】
【化10】

【0067】
実施例2a:Ir/Cを使用する6−メトキシ−1−インダノンからのエンアミド
1−インダノン−オキシム、メトキシ−6−を出発原料として使用する以外は実施例1bと同様にして反応を実施する。収率は83.8%である。
【0068】
化学純度は98.4%である。
【0069】
実施例2b:Ir/Cを使用する6−メトキシ−1−インダノンからのエンアミド
100mlの反応器中に、テトラヒドロフラン(24ml)及び6−メトキシ−1−インダノン(4.5g、0.0254モル)を導入する。その後、無水酢酸(7.78g、0.0762モル)を20〜25℃で15分間かけて添加する。この懸濁液を1時間撹拌し、5%Ir/C触媒(乾燥触媒)(0.225g、オキシムに対して4重量%)を添加する。この混合物を70〜75℃に加熱し、水素の流動を開始する。水素化は水素圧4バールで1〜2時間継続する。反応終了後、この懸濁液をろ過して触媒を除去し、触媒はTHFで洗浄する。この溶液を水(15ml)及びNaOH 30%(13ml)の混合物に5℃で1時間かけて添加し、20℃で30分間維持する。水相を捨て、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄する。
【0070】
有機層を真空下で50℃において濃縮し、N−(6−メトキシ−3H−インデン−1−イル)アセトアミドの褐色の結晶を得る(3.34g、70%)。
【0071】
実施例2c:Rh/Cを使用する6−メトキシ−1−インダノンからのエンアミド
100mlの反応器中に、テトラヒドロフラン(24ml)及び6−メトキシ−1−インダノンオキシム(4.5g、0.0254モル)を導入する。その後、無水酢酸(7.78g、0.0762モル)を20〜25℃で15分間かけて添加する。この懸濁液を1時間撹拌し、5%Rh/C触媒(乾燥触媒)(0.225g、オキシムに対して4重量%)を添加する。この混合物を30〜35℃に加熱し、水素の流動を開始する。水素化は水素圧4バールで7〜8時間継続する。反応終了後、この懸濁液をろ過して触媒を除去し、触媒はTHFで洗浄する。この溶液を水(15ml)及びNaOH 30%(13ml)の混合物に5℃で1時間かけて添加し、20℃で30分間維持する。水相を捨て、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄する。
【0072】
有機層を真空下で50℃において濃縮し、N−(6−メトキシ−3H−インデン−1−イル)アセトアミドの灰白色の結晶を得る(3.82g、80%)。
【0073】
実施例2d:Rh/Cを使用する6−メトキシ−1−インダノンからのエンアミド
250mlの反応器中に、テトラヒドロフラン(50ml)及び1−インダノン−オキシム、メトキシ−6−(10g、0.056モル)を導入する。その後、無水酢酸(17.3g、0.170モル)を20〜25℃で15分間かけて添加する。この懸濁液を1時間撹拌して5%Rh/C触媒(乾燥触媒)(0.40g、オキシムに対して4重量%)を添加し、テトラヒドロフラン(10ml)で洗浄する。この混合物を30℃に加熱し、水素の流動を開始する。水素化は水素圧4バールで15時間継続する。反応終了後、この懸濁液をろ過して触媒を除去し、触媒はTHFで洗浄する。この溶液を水(29ml)及びNaOH 30%(42.2g)の混合物に5℃で1時間かけて添加し、20℃で30分間維持する。水相を捨て、30%NaOHでpH6に調整したリン酸二水素ナトリウムバッファー(37.8w/w)で有機層を洗浄する。
【0074】
THFを減圧下で蒸留し、トルエンで置換して真空下で濃縮し、油状で褐色の残渣N−(6−メトキシ−3H−インデン−1−イル)アセトアミドを得る(6.6g、57.5%)。
【0075】
構造分析
オキシム:1H NMR 270MHz JEOL(DMSO):2.7−2.95(m,4H),3.75(s,3H),6.9(m,1H),7(m,1H),7.25(d,1H),10.8(s,OH).
【0076】
13C NMR(DMSO):δ 165,162,150,147,137,127,112,67,34,32.
【0077】
酢酸オキシム:1H NMR(CDCl3):2.15(s,3H),2.95(m,4H),3.7(s,3H),6.85−6.95(m,1H),7,1−7.15(m,1H),7.25(m,1H).
【0078】
13C NMR(CDCl3):171,168,158,143,135,126,122,105,56,29,28,19.
【0079】
エンアミド:1H NMR(CDCl3):3(s,3H),3.6(s,3H),4.1(d,2H),7.5−7.6(dd,1H),7.65(m,2H),8.05−8.15 (d,1H),8.45(s,1H).
【0080】
13C NMR(CDCl3):169,158,140,136,134,123,117,110,103,55,35,23.
【実施例3】
【0081】
α−テトラロンからのエンアミド
【0082】
【化11】

【0083】
実施例3a:Rh/Cを使用するα−テトラロンからのエンアミド
180mlの反応器中に、テトラヒドロフラン(60ml)及び3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オンオキシム(10g、0.062モル)を導入する。その後、無水酢酸(19g、0.186モル)を20〜25℃で15分間かけて添加する。この懸濁液を1時間撹拌し、5%Rh/C触媒(乾燥触媒)(0.4g、オキシムに対して4重量%)を添加する。この混合物を30℃に加熱し、水素の流動を開始する。水素化は水素圧4バールで15〜20時間継続する。反応終了後、この懸濁液をろ過して触媒を除去し、触媒はTHFで洗浄する。この溶液を水(30ml)及びNaOH 30%(42g)の混合物に5℃で1時間かけて添加し、20℃で30分間維持する。水相を捨て、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄する。
【0084】
THFを減圧下で蒸留させ、トルエンで置き換える;懸濁液を5℃で1時間撹拌した後で沈殿をろ過により除去し、冷トルエン10mlで2回洗浄する。
【0085】
結晶を真空下で50℃において乾燥させ、N(3,4−ジヒドロ−1−ナフタレニル)アセトアミドを得る(9.74g、84%)。
【0086】
実施例3b:Ir/Cを使用するα−テトラロンからのエンアミド
180mlの反応器中に、テトラヒドロフラン(60ml)及び3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オンオキシム(10g、0.062モル)を導入する。その後、無水酢酸(19g、0.186モル)を20〜25℃で15分間かけて添加する。この懸濁液を1時間撹拌し、5%Ir/C触媒(乾燥触媒)(0.4g、オキシムに対して4重量%)を添加する。この混合物を70℃に加熱し、水素の流動を開始する。水素化は水素圧4バールで4〜5時間継続する。反応終了後、この懸濁液をろ過して触媒を除去し、触媒はTHFで洗浄する。この溶液を水(30ml)及びNaOH 30%(42g)の混合物に5℃で1時間かけて添加し、20℃で30分間維持する。水相を捨て、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄する。
【0087】
THFを減圧下で蒸留させ、トルエンで置き換える;懸濁液を5℃で1時間撹拌した後で沈殿をろ過により除去し、冷トルエン10mlで2回洗浄する。
【0088】
結晶を真空下で50℃において乾燥させ、N(3,4−ジヒドロ−1−ナフタレニル)アセトアミドを得る(9.18g、79%)。
【0089】
構造分析
オキシム:1H NMR 270MHz JEOL(DMSO):1.65−1.8(m,2H),2.6−2.8(m,4H),7.1−7.3(m,3H),7.8−7.95(d,J=7.5Hz,1H),11.1(s,OH).
【0090】
13C NMR(DMSO):δ 152.5,137,132,129,128,126,123,29,23,21.
【0091】
酢酸オキシム:1H NMR(CDCl3):2.75−3.85(m,2H),3.2(s,3H),3.65−3.75(m,2H),3.75−3.85(m,2H),8.05−8.3(m,3H),9.05−9.1(d,1H).
【0092】
13C NMR(CDCl3):169,162,141,131,128,127.5,127,126,29,26,22,20.
【0093】
エンアミド:1H NMR(CDCl3):2.1(s,3H),2.25−2.45(m,2H),2.65−2.85(m,2H),6.3(t,1H),7.05−7.35(m,4H).
【0094】
13C NMR(CDCl3):169,137,132,127.5,127,126,121,120,28,24,22.5.
【実施例4】
【0095】
2−フェニルシクロヘキサノンからのエンアミド
【0096】
【化12】

【0097】
実施例4a:Ir/Cを使用する2−フェニルシクロヘキサノンからのエンアミド
100mlの反応器中に、テトラヒドロフラン(24ml)及び2−フェニルシクロヘキサノン(4g、0.0211モル)を導入する。その後、無水酢酸(6.47g、0.0634モル)を20〜25℃で15分間かけて添加する。この懸濁液を1時間撹拌し、5%Ir/C触媒(乾燥触媒)(0.16g、オキシムに対して4重量%)を添加する。この混合物を70℃に加熱し、水素の流動を開始する。水素化は水素圧4バールで2.5〜3時間継続する。反応終了後、この懸濁液をろ過して触媒を除去し、触媒はTHFで洗浄する。この溶液を水(12ml)及びNaOH 30%(10.8ml)の混合物に5℃で1時間かけて添加し、20℃で30分間維持する。水相を捨て、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄する。
【0098】
有機層を真空下で50℃において濃縮し、N−(2−フェニル−シクロヘキサ−1−エニル)アセトアミドの油状の白色の残渣を得る(3.5g、77%)。
【0099】
実施例4b:Rh/Cを使用する2−フェニルシクロヘキサノンからのエンアミド
100mlの反応器中に、テトラヒドロフラン(24ml)及び2−フェニルシクロヘキサノン(4g、0.0211モル)を導入する。その後、無水酢酸(6.47g、0.0634モル)を20〜25℃で15分間かけて添加する。この懸濁液を1時間撹拌し、5%Rh/C触媒(乾燥触媒)(0.16g、オキシムに対して4重量%)を添加する。この混合物を25〜30℃に加熱し、水素の流動を開始する。水素化は水素圧4バールで5〜6時間継続する。反応終了後、この懸濁液をろ過して触媒を除去し、触媒はTHFで洗浄する。この溶液を水(12ml)及びNaOH 30%(10.8ml)の混合物に5℃で1時間かけて添加し、20℃で30分間維持する。水相を捨て、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄する。
【0100】
有機層を真空下で50℃において濃縮し、N−(2−フェニル−シクロヘキサ−1−エニル)アセトアミドの白色の結晶を得る(3.86g、85%)。
【0101】
構造分析
オキシム:1H NMR(DMSO):1.4−1.65(m,2H),1.7−1.8(m,2H),1.9−2.2(m,3H),2.8−2.95(m,1H),4.1−4.5(m,1H),7.1−7.4(m,5H).
【0102】
酢酸オキシム:1H NMR(CDCl3):1.55−1.75(m,4H),1.85−2.1(m,1H),2.15(s,3H),2.17−2.3(m,1H),2.4−2.5(m,1H),2.75−2.87(m,1H),3.85−3.91(t,1H),7.15−7.4(m,5H).
【0103】
13C NMR(CDCl3):195,170,169,138,128,127.5,126,46,31,27,25,22.5,20.
【0104】
エンアミド:1H NMR(CDCl3):1.65−1.8(m,4H),2.3(s, 2H),2.6(s,2H),6.55(s,NH),7.1−7.4(m,5H).
【0105】
13C NMR(CDCl3):167,141,131,128,127.5,126.5,126,31,27.5,24,22.5.
【実施例5】
【0106】
2−メトキシ−7−テトラロンからのエンアミド
【0107】
【化13】

【0108】
Rh/Cを使用する2−メトキシ−7−テトラロンからのエンアミド
100mlの反応器中に、テトラヒドロフラン(24ml)及び2−メトキシ−7−テトラロン(4.5g、0.0235モル)を導入する。その後、無水酢酸(7.21g、0.0706モル)を20〜25℃で15分間かけて添加する。この懸濁液を1時間撹拌し、5%Rh/C触媒(乾燥触媒)(0.18g、オキシムに対して4重量%)を添加する。この混合物を30〜35℃に加熱し、水素の流動を開始する。水素化は水素圧4バールで4〜5時間継続する。反応終了後、この懸濁液をろ過して触媒を除去し、触媒はTHFで洗浄する。この溶液を水(14ml)及びNaOH 30%(12ml)の混合物に5℃で1時間かけて添加し、20℃で30分間維持する。水相を捨て、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄する。
【0109】
有機層を真空下で50℃において濃縮し、N−(7−メトキシ−3,4−ジヒドロ−ナフタレン−2−イル)アセトアミドの灰色の結晶を得る(4.21g、82.5%)。
【0110】
構造分析
オキシム:1H NMR(CDCl3):2.7−2.8(t,1H),2.85−2.95(t,1H),3.45(s,2H),3.75(s,3H),6.65(m,2H),7.1(m,1H),10.05(s,OH)
【0111】
酢酸オキシム:非分離
【0112】
エンアミド:1H NMR(CDCl3):2.1(s,3H),2.35−2.45(t,2H),2.7−2.85(t,2H),3.75(s,3H),6.6(m,2H),6.95(m,1H),7.1(s,1H),7.35(m,NH)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるエンアミド誘導体:
【化1】

(式中、
R1、R2及びR3は独立して水素原子、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルアリール、アリール、複素環、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシル、カルバモイル、−CONR5R6(式中、R5及びR6は独立してアルキル、アリールアルキル若しくはアリール基、又は、R5及びR6は一緒になって環を形成してもよい)、若しくは、−COOR5基(式中、R5はアルキル、アルキルアリール、シクロアルキル又はアリール基)であり、
前記アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルアリール及びアリール基は官能基若しくはR5で置換されている若しくは置換されていない;
又は、R1及びR2は一緒になって環(この用語はモノ−、ジ−及びそれ以上の多環構造を含む)を形成してもよく、前記環は官能基若しくはR5で置換されている若しくは置換されていない;
R4は水素原子、アルキル、アリール、アルキルアリール基であり、前記基はハロゲン原子Cl、Br若しくはFで置換されている若しくは置換されていない;
Xは酸素原子若しくは脱離基であり、かつ、
mは1又は2の整数である;
mが1である場合、Xは脱離基である;mが2である場合、Xは酸素原子である)
:の製造方法であって、
不均一系触媒の存在下における式(III)(R4CO)X(式中、R4、m及びXは上記に定義する通りである)のアシル誘導体による式(II)のオキシム誘導体:
【化2】

(式中、R1、R2及びR3は上記に定義する通りである):の水素化/異性化反応を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
式(III)の誘導体を、オキシム1モルに対して少なくとも2倍量使用し、溶媒と共に反応薬剤として大量に使用してもよい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項3】
不均一系触媒はPd、Ir、Pt、Rh、Ni触媒、好ましくはIr又はRh等の金属に基づく
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
不均一系触媒は、酸化物又は金属の状態で使用し、好適な担体上に支持されていてもよく、かつ、オキシム誘導体に対して0.001〜30モル%使用する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
好適な溶媒中で実施する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
水素圧力0.5〜20バール℃で実施する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
−20〜150℃、好ましくは20℃〜120℃の温度範囲で実施する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の化合物の有機溶液のワークアップ段階、すなわち、有機又は無機塩を含有し、ハロゲン原子、好ましくは塩化物イオンを含有しない水で洗浄する段階を更に含む
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
有機又は無機塩は、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、アンモニウム、好ましくはリン酸塩から選択される
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(IIE)のエンアミド誘導体:
【化3】

:(式中、
R4は水素原子、アルキル、アリール、アルキルアリール基であり、前記基はハロゲン原子Cl、Br又はFで置換されている又は置換されていない;
R7、R8、R9及びR10は同一又は異なって水素原子、官能基、アルキル、アリール基であるが同時に水素原子であることはなく、好ましくは、R7、R8及びR10は水素原子であり、R9はメトキシ基であり、R4はメチル基である)。
【請求項11】
請求項10に記載の式(IIE)の化合物の、医薬品として重要なアミン又はアミド誘導体を与える不斉か又はそうでない水素化反応における使用。

【公表番号】特表2007−517017(P2007−517017A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546407(P2006−546407)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004363
【国際公開番号】WO2005/063687
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(506120219)
【Fターム(参考)】