説明

エンジンの冷却装置

【課題】ポンプ駆動やファン駆動に要するエンジン駆動力の損失を未然に防止できると共に、ラジエータの設置に関する制限を解消して他の装備の設置のために車両上のスペースを効率的に利用できるエンジンの冷却装置を提供する。
【解決手段】エンジン1とラジエータ4との間で電動ポンプ7により冷却水を循環させてエンジン1を冷却すると共に、電動ファン5によりラジエータ4に空気を流通させて冷却水を放熱させる。トラックの荷台上にソーラーパネル3を配設して、発電された電力を電動ポンプ7及び電動ファン5に供給して作動させる。発電電力の不足時には電力不足分を車両の電気システム15から供給される電力により補い、発電電力の過剰時には電力過剰分を電気システム15に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの冷却装置に係り、詳しくは冷却ファン及び冷却水循環用のポンプを駆動するためのエンジンの駆動損失を防止する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のようにディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関は、筒内での燃料の燃焼により発生した圧力をクランク機構などを介して回転力に変換する構造を採っている。筒内での燃料の燃焼は多量の熱を発生するため、エンジン過熱を防止するための対策が必要となる。例えば水冷式エンジンでは、ポンプにより内部に冷却水を循環させて冷却を図る一方、冷却水をエンジン外に配置したラジエータに順次流通させることにより放熱させる冷却システムを構築している。ラジエータでの冷却水の放熱は空気との間の熱交換によりなされるが、走行風が得られない停車時などを考慮して、ラジエータには冷却ファンが付設されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載された技術では、冷却水循環用のポンプ及び冷却ファンをエンジンにより回転駆動している。例えばエンジンを縦置き配置した車両では、エンジン前側でクランク軸と補機類との間に張架されたベルトを利用して冷却ファンを回転駆動する共に、冷却ファンの直前にラジエータを配置している。冷却ファンの回転によりラジエータには前方から後方に空気が流通する一方、ラジエータ内にはポンプによりエンジン側から冷却水が流通し、空気と冷却水との間で良好に熱交換が行われてエンジン冷却に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−189356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、冷却水循環用のポンプ及び冷却ファンをエンジンで駆動しているため、ポンプ及び冷却ファンは常に回転駆動される。これは、車両を走行させるために要求される負荷の他にポンプ駆動及びファン駆動のための負荷を常にエンジンに与えることを意味し、冬期などのようにラジエータでの熱交換をそれほど要しない状況ではエンジン駆動力の損失に直結し、ひいては燃費悪化の要因になる。
加えて、冷却ファンの直前にラジエータを設置する必要があるため、必然的にエンジンとラジエータとの位置関係が限定されてしまう。結果として車両に搭載すべき他の装備のレイアウトが制限を受け、車両上の限られた設置スペースを効率的に利用することができないという問題もある。
【0005】
例えばポンプや冷却ファンを電動化して、モータにより駆動する対策もある。しかしながら、電動ポンプや電動ファンに供給する電力は車載バッテリ、ひいてはエンジン駆動されるオルタネータによる発電電力である。このためオルタネータの駆動負荷が増大し、結果としてポンプ駆動やファン駆動のためにエンジン駆動力に損失が生じる点は相違なく、根本的な問題解決にはつながらない。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ポンプ駆動やファン駆動に要するエンジン駆動力の損失を未然に防止できると共に、ラジエータの設置に関する制限を解消して他の装備の設置のために車両上のスペースを効率的に利用することができるエンジンの冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、車両の動力源であるエンジンとラジエータとの間でポンプにより冷却水を循環させて冷却水によりエンジンを冷却すると共に、ファンによりラジエータに空気を流通させて空気と冷却水との熱交換により冷却水を放熱させるエンジンの冷却装置において、ポンプをモータにより駆動される電動ポンプとして構成してラジエータに設けると共に、ファンをモータにより駆動される電動ポンプとして構成してラジエータに設け、車両の外側面に太陽光の照射を受けて発電するソーラーパネルを配設し、ソーラーパネルにより発電された電力を電動ポンプ及び電動ファンに供給して作動させる発電電力制御手段を備えたものである。
請求項2の発明は、請求項1において、発電電力制御手段が、ソーラーパネルによる発電電力の過不足を判定し、発電電力が不足と判定したときに、電力不足分を車両の電気システムから供給される電力により補う一方、発電電力が過剰と判定したときに、電力過剰分を車両の電気システムに供給するものである。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように請求項1の発明のエンジンの冷却装置によれば、エンジンとラジエータとの間で電動ポンプにより冷却水を循環させてエンジンを冷却すると共に、電動ファンによりラジエータに空気を流通させて冷却水を放熱させ、車両の外側面に配設したソーラーパネルの発電電力を発電電力制御手段により電動ポンプ及び電動ファンに供給して作動させるようにした。
従って、ポンプ及びモータを電動化することによりポンプやファンの駆動のエンジン駆動力の損失を防止できると共に、電動ファン及び電動ポンプの電力をソーラーパネルにより発電するため、エンジンに付設されたオルタネータに起因するエンジン駆動力の損失も防止でき、ひいてはエンジンの駆動損失による燃費悪化を未然に防止することができる。また、ポンプ及びモータを電動化することによりラジエータの設置位置をエンジンとは関係なく自由に決定できる。結果として、ラジエータの設置に関する制限を解消して他の装備の設置のために車両上のスペースを効率的に利用することができる。
【0008】
請求項2の発明のエンジンの冷却装置によれば、請求項1加えて、ソーラーパネルによる発電電力が不足と判定したときに、電力不足分を車両の電気システムから供給される電力により補う一方、発電電力が過剰と判定したときに、電力過剰分を車両の電気システムに供給するようにした。従って、電力不足時であっても電動ファン及び電動ポンプを正常に作動させてエンジンの冷却水温を最適な温度域に保持し続けることができる。また、電力過剰時には電力過剰分が捨てられる事態を回避して、ソーラーパネルによる発電電力を無駄なく有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態のエンジンの冷却装置を示す概略構成図である。
【図2】エンジンの冷却装置のトラックへの搭載状態を示す平面図である。
【図3】ファン回転速度とラジエータ前面風速との関係を示す特性図である。
【図4】ラジエータ前面風速とラジエータ放熱量との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化したエンジンの冷却装置の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のエンジンの冷却装置を示す概略構成図である。
本実施形態のエンジン1の冷却装置は貨物用トラック(図2に示す)に適用されている。全体として冷却装置は、エンジン1の冷却水を冷却する冷却ユニット2、及び太陽光の照射を受けて発電するソーラーパネル3から構成されている。冷却ユニット2は冷却水を熱交換させるラジエータ4を主体とし、その外面には後述する電動ファン5などの冷却ユニット2の機能に必要な各種機器が配置されている。ラジエータ4の側面には一対の接続口4aが設けられ、これらの接続口4aはそれぞれ冷却管路6を介してエンジン1の一対の接続口1aに接続されている。一般的なエンジンと同じく、両接続口1aはエンジン1内に形成されたウォータジャケットとそれぞれ連通している。
ラジエータ4の一側面には一対の吸込み式の電動ファン5が配設されている。電動ファン5は図示しないモータにより回転駆動され、ラジエータ4の他側面の空気を一側面に向けて吸い込みながらラジエータコア内の冷却水と熱交換させる。但し、電動ファン5はこれに限ることはなく、押込み式にしたり、その数を変更したりしてもよい。
【0011】
ラジエータ4の上面には電動ポンプ7が配設され、この電動ポンプ7によりラジエータ4とエンジン1との間で冷却水が循環する。即ち、冷却水はラジエータ4内を流通した後に一方の冷却管路6を経てエンジン1側に案内されてウォータジャケット内を流通し、その後に他方の冷却管路6を経てラジエータ4に戻されて再び内部を流通する。電動ポンプ7の作動中は以上のような冷却水の循環が行われ、電動ポンプ7が停止すると冷却水の循環も中止されてラジエータ4内及びエンジン1内に冷却水が滞留した状態となる。
また、ラジエータ4の上面には水温センサ8及び流量センサ9が配置され、水温センサ8はエンジン1側から流入する冷却水の温度(ラジエータ4による冷却前の温度)を検出し、流量センサ9は電動ポンプ7による冷却水の流量を検出する。なお、これらのセンサ8,9の設置場所はラジエータ4側に限定されるものではなく、例えばエンジン1側或いは冷却管路6の途中に設けてもよい。
【0012】
ラジエータ4の下面には発電ユニット11及び制御用コンピュータ12が配設されており、発電ユニット11には上記ソーラーパネル3が接続されている。発電ユニット11にはバッテリ113が内蔵され、このバッテリ13は、エンジン1や車載機器に電力供給する車載バッテリ14とは別個に装備されたものある。
以下の説明では、元々搭載されている車載バッテリ14と区別するために内蔵バッテリ13と称する。発電ユニット11は、内蔵バッテリ13、ソーラーパネル3、上記電動ファン5、電動ポンプ7、及び車載バッテリ14や車載機器を含めた車両全体の電気システム15などの間で電力制御を行い、例えばソーラーパネル3で発電された電力を電動ファン5や電動ポンプ7に供給する。内蔵バッテリ13の主な役割は電動ファン5や電動ポンプ7に供給される電力変動を緩和することにあり、発電電力の増加側への変動時には充電を行い減少側への変動時には放電を行うことにより、常にある程度の電力を蓄電した状態で電力変動の抑制作用を奏する。また、発電ユニット11は内蔵バッテリ13の入出力電流を逐次積算することにより、内蔵バッテリ13のSOC(充電率:State Of Charge)を算出する。これらの処理の詳細については後述する。
【0013】
また、制御用コンピュータ12は、電動ファン5や電動ポンプ7などを適切に作動させるべく発電ユニット11に指令を出力し、その指令に基づき上記のような発電ユニット11による電力制御が実行される。このような制御のために制御用コンピュータ12には上記水温センサ8、流量センサ9などの各種センサ類の検出情報、発電ユニット11からのSOC情報などが入力されるようになっている。
本実施形態においては、以上の発電ユニット11及び制御用コンピュータ12により発電電力制御手段が構成されている。
【0014】
次に、このように構成されたエンジン1の冷却装置のトラックへの搭載状態を図2に基づき説明する。
まず、トラックの概略を説明すると、トラックのフレーム17は、前後方向に延設された左右一対のサイドメンバ17a、及び両サイドメンバ17aを連結する複数本のクロスメンバ17bからなるラダーフレームとして構成されている。このフレーム17上には、図示しないキャビンや密閉構造の箱形状をなす荷台が架装されている。フレーム17の前部にはエンジン1及び変速機18が縦置きで搭載され、エンジン1の駆動力が変速機18からプロペラシャフト19及びホーシング20を介して左右の後輪21に伝達されるようになっている。
【0015】
そして、エンジンにより冷却ファンを駆動する一般的な冷却装置では、冷却ファンの空気をラジエータに流通させるべく、図2中に二点鎖線で示すようにエンジン1の直前にラジエータを配置する必要がある。本実施形態では、ラジエータ4にモータ駆動の電動ファン5が付設されているため、ラジエータ4を主体とした冷却ユニット2の設置位置をエンジン1とは関係なく自由に決定できる。このため、図2に示すように冷却ユニット2は車両のフレーム17の左側部、詳しくは左前輪22の後方で電動ファン5を左側方に向けた姿勢でサイドメンバ17aに沿って配置されている。この冷却ユニット2の位置は、燃料タンクやスペアタイヤなどの他の装備を車両の搭載した上での空きスペースであるため、冷却ユニット2の配置による他の装備の不都合は一切発生しない。
よって、本実施形態によれば、二点鎖線で示した元々のラジエータ4の設置位置も含めた都合のよい位置に他の装備を設置できるようになり、結果として車両上のスペースを冷却ユニット2及び他の装備を設置のために効率的に利用することができる。
【0016】
このようにして配置された冷却ユニット2が上記のように一対の冷却管路6を介してエンジン1側と連結されている。なお、冷却ユニット2の設置位置は上記に限定されるものではなく、車両の装備の搭載状態に応じて任意に変更可能である。
一方、上記ソーラーパネル3は、図2中に二点鎖線で示すようにトラックの荷台上に配設され、電力線(図1に示す)を介して冷却ユニット2の発電ユニット11に接続されている。なお、ソーラーパネル3の配設位置は荷台上に限ることはなく、車両の外側面であれば任意に変更可能であり、例えばキャビン上に配置してもよい。
【0017】
次に、制御用コンピュータ12及び発電ユニット11による電動ファン5や電動ポンプ7の制御について述べる。
電動ファン5及び電動ポンプ7の制御は、ラジエータ4を流通する空気流量及び冷却水流量の調整によりラジエータ4での熱交換、ひいては冷却水温度の最適化を目的として行われ、これにより常にエンジン1を最適な温度域で運転させている。このため、本実施形態では冷却水温を指標として電動ファン5の回転速度及び電動ポンプ7による冷却水流量を制御している。例えば、冷却水温に対する電動ファン5の回転速度及び電動ポンプ7による冷却水流量をマップに設定して、予め制御用コンピュータ12に記憶させておく。全体的な傾向として、電動ファン5の回転速度及び電動ポンプ7による冷却水流量は、最適な冷却水の温度域では現在の冷却水温を保持可能な程度の値に設定され、最適な温度域外では冷却水温の低下に伴って低下側に設定され(共に停止も含む)、冷却水温の上昇に伴って増加側に設定される。
電動ファン5の回転速度についてより具体的に述べると、ファン回転速度とラジエータ前面風速との間には図3の関係が成立し、ラジエータ前面風速とラジエータ放熱量との間には図4に示す関係が成立している。そこで、冷却水温に対して最適なラジエータ4の放熱量を求めた上で、図4の特性図に基づきラジエータ4の放熱量からラジエータ前面風速を求め、さらに図3の特性図に基づきラジエータ前面風速からファン回転速度を求める。なお、ラジエータ前面風速とラジエータ放熱量との関係はラジエータ4内を流通する冷却水流量に依存するため、ラジエータ前面風速を求める際にはその時点の冷却水流量も考慮する。このようにして各冷却水温に対応するファン回転速度を求めた上でマップを作成すればよい。
【0018】
実際のエンジン1の運転中には、水温センサ8により検出された現在の冷却水温に基づき、制御用コンピュータ12がマップから電動ファン5の回転速度及び電動ポンプ7による冷却水流量を読み出し、それぞれの値に基づく電動ファン5及び電動ポンプ7の駆動指令を発電ユニット11に出力する。入力された指令に基づき発電ユニット11は、ソーラーパネル3からの発電電力を電動ファン5及び電動ポンプ7に供給して作動させ、指令に基づく回転速度に電動ファン5を回転制御すると共に、指令に基づく冷却水流量を目標値として流量センサ9により検出された実際の冷却水流量をフィードバック制御する。
これらの電動ファン5及び電動ポンプ7の制御により、冷却水温が最適温度域よりも低下したときには、電動ファン5の回転速度及び電動ポンプ7による冷却水流量が共に低下することでラジエータ4での熱交換量が減少し、一方、最適温度域よりも冷却水温が上昇したときには、電動ファン5の回転速度及び電動ポンプ7による冷却水流量が共に増加することでラジエータ4での熱交換量が増加する。結果として、常にエンジン1の運転にとって最適な温度域に冷却水温が保持される。
なお、これらの電動ファン5及び電動ポンプ7の制御は一例であり、これに限ることはなく任意に変更可能である。
【0019】
以上のように本実施形態では、冷却ファンや冷却水循環用のポンプをエンジン1で駆動する特許文献1の技術とは異なり、電動ファン5及び電動ポンプ7として電動化している。従って、ポンプやファンを駆動するための負荷はエンジン1に作用せず、これによるエンジン駆動力の損失は発生しない。
また、電動ファン5及び電動ポンプ7に供給すべき電力をソーラーパネル3により発電しているため、エンジン1に付設されたオルタネータの駆動負荷も増大せず、これによるエンジン駆動力の損失も発生しない。よって、ポンプ駆動や段駆動のためのエンジン駆動力の損失を未然に防止して、これによる燃費悪化を回避することができる。
【0020】
ところで、周知のようにソーラーパネル3による発電は日照変化の影響を受ける。例えば昼間はソーラーパネル3への照射量が大であるため発電量が増加し、夜間はソーラーパネル3への照射量が小であるため発電量が低下、若しくは0となる。しかし、これに応じて昼間では、エンジン温度の上昇を抑制するために電動ファン5及び電動ポンプ7の消費電力が増加傾向となり、逆に夜間では、エンジン温度がそれほど上昇しないことから電動ファン5及び電動ポンプ7の消費電力が低下傾向となるため、全体として電力発電量と電力消費量とは都合よく同方向に変化する。
しかしながら、エンジン冷却水温の上昇は日照変化だけでなく、外気温やエンジン負荷(車両の走行条件に関わる)などの要因にも影響されるため、ソーラーパネル3の発電に余剰電力が生じる場合も、電力不足に陥る場合も発生する。なお、電力変動の抑制を主目的とした内蔵バッテリ13は小容量であることから、単体で上記電力の過不足を吸収することは不可能である。
【0021】
そこで、本実施形態では、このような電力の過不足を車載バッテリ14、エンジン1に付設されたオルタネータ或いは車載機器などを含めた車両全体の電気システム15を利用して解消する対策を講じており、以下、当該対策について詳述する。
発電ユニット11は内蔵バッテリ13のSOCを逐次算出して制御用コンピュータ12に出力しており、制御用コンピュータ12では入力されたSOCに基づきソーラーパネル3の発電電力の過不足を常に監視している。具体的には、制御用コンピュータ12はSOCを予め設定された不足判定値及び過剰判定値(不足判定値<過剰判定値)と比較し、SOCが不足判定値未満のときには発電電力の不足判定を下し、SOCが過剰判定値以上のときには発電電力の過剰判定を下す。
【0022】
例えば不足判定値としては、内蔵バッテリ13からの放電電力のみで電動ファン5及び電動ポンプ7を最大能力で5分間作動可能なSOCが設定されている。電動ファン5や電動ポンプ7の作動に対してソーラーパネル3の発電電力が不足気味になると、不足分は内蔵バッテリ13により補われてSOCが次第に低下するため、SOCに基づきソーラーパネル3の発電電力の不足を判定できるのである。また、過剰判定値としては、内蔵バッテリ13が過充電による劣化の虞がない上限値、例えば90%が設定されている。これ以上の内蔵バッテリ13への充電が不能になって発電電力の無駄が生じるため、発電電力の過剰を判定できるのである。但し、発電電力の過不足の判定は上記に限ることはなく、任意に変更可能である。
従って、例えばソーラーパネル3への照射量が小である夜間では、発電電力の不足判定が下される場合がある。このとき制御用コンピュータ12は、電力不足分を電気システム15の車載バッテリ14或いはオルタネータからの電力供給により補うように発電ユニット11に対して指令する。この指令を受けて発電ユニット11では車載バッテリ14から電力を供給されて電動ファン5及び電動ポンプ7の作動に利用する。これにより電動ファン5及び電動ポンプ7は正常に作動し、エンジン1の冷却水温を最適な温度域に保持し続けることができる。
【0023】
また、例えばソーラーパネル3への照射量が大である昼間では、発電電力の過剰判定が下される場合がある。このとき制御用コンピュータ12は、電力過剰分を車両の電気システム15に供給するように発電ユニット11に対して指令する。この指令を受けて発電ユニット11では、電動ファン5及び電動ポンプ7を作動させた上で、例えば過剰分の電力を車載バッテリ14に充電したり、或いは作動中の車載機器に供給したりする。これにより、電力過剰分が利用されずに捨てられる事態を回避して、ソーラーパネル3による発電電力を無駄なく有効利用することができる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではエンジン1のみを動力源とした貨物用トラックに具体化したが、車種や車両の動力源はこれに限定されるものではない。例えばバスなどの他の車両に適用してもよいし、動力源としてエンジン1に加えてモータを備えたハイブリッド車に適用してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 エンジン
3 ソーラーパネル
3 ラジエータ
5 電動ファン
6 電動ポンプ
11 発電ユニット(発電電力制御手段)
12 制御用コンピュータ(発電電力制御手段)
15 電気システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力源であるエンジンとラジエータとの間でポンプにより冷却水を循環させて該冷却水によりエンジンを冷却すると共に、ファンにより上記ラジエータに空気を流通させて該空気と上記冷却水との熱交換により冷却水を放熱させるエンジンの冷却装置において、
上記ポンプをモータにより駆動される電動ポンプとして構成して上記ラジエータに設けると共に、上記ファンをモータにより駆動される電動ポンプとして構成して上記ラジエータに設け、上記車両の外側面に太陽光の照射を受けて発電するソーラーパネルを配設し、該ソーラーパネルにより発電された電力を上記電動ポンプ及び上記電動ファンに供給して作動させる発電電力制御手段を備えたことを特徴とするエンジンの冷却装置。
【請求項2】
上記発電電力制御手段は、上記ソーラーパネルによる発電電力の過不足を判定し、発電電力が不足と判定したときに、該電力不足分を上記車両の電気システムから供給される電力により補う一方、上記発電電力が過剰と判定したときに、該電力過剰分を上記車両の電気システムに供給することを特徴とする請求項1記載のエンジンの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100785(P2013−100785A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245560(P2011−245560)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland