説明

エンジンの吸気装置

【課題】横置きエンジン本体1の前側に配置する樹脂製吸気マニホールド2の強度を確保するとともに、車両前方から外部荷重が加わったときには、吸気マニホールド2が適切に破壊するようにしてクラッシュストロークを確保する。
【解決手段】吸気マニホールド2は、3つ分割体11〜13を各々の前面側と後面側とで重ね合わせ溶着して形成する。エンジン本体1に近い第1分割体11は、他の分割体12,13に比べて車両前後方向の剛性を高くする。第2分割体12と第3分割体13とによって分岐通路部4の湾曲部分を形成する。中間の第2分割体12に、分岐通路部4の湾曲部分の内側において車両前後方向の前側から後側に延び、車両前方から外部荷重が加わったときに前後の両端部が応力集中点となるリブ構造部12c,12dを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部のエンジンルームに多気筒エンジン本体をクランク軸の軸線方向が車幅方向になるように横置きに配置し、吸気マニホールドを該エンジン本体の車両前後方向の前側に取り付けることは一般に行われている。また、その吸気マニホールドを樹脂製とすることも一般に知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、横置きエンジン本体の前側に、機械的強度が高い中央高強度部と、中央高強度部後側の機械的強度が低いサージタンクと、中央強度部前側の機械的強度が低い分岐通路部とを一体的に備えた樹脂製吸気マニホールドを配置すること、中央高強度部をフランジとステーによりエンジン本体に固定すること、分岐通路部およびサージタンクにより車両衝突時の衝撃力を吸収すること、中央高強度部の上部に狭幅部を設け、これを支点として吸気マニホールドが車両衝突時にエンジン本体側に回動し易くし、クラッシュストロークを大きくすることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、横置きエンジン本体の前側に配置する樹脂製吸気マニホールドに関し、その分岐通路部を半割体同士の接合によって形成すること、その分岐通路部の長手方向に延びる半割体の接合部を脆弱部とし、車両衝突時に吸気マニホールドを脆弱部によって分岐通路部の通路断面積が減少するように破壊させてクラッシュストロークを大きくすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−336528号公報
【特許文献2】特許2699915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、吸気マニホールドは、これを樹脂製とする場合であっても、エンジン本体に堅固にゆるぎなく取り付けられなければならない構造物であるから、脆弱部等のような強度的に弱い部分を設けることは避けたい。すなわち、吸気マニホールド全体の強度を確保してエンジン本体に対する取付安定性を損なわないようにしたい。一方、横置きエンジン本体の前側に配置される吸気マニホールドにあっては、車両前方から外部荷重が加わったときに、その吸気マニホールドが適度に破壊するようにしてクラッシュストロークを確保することが要求される。
【0007】
本発明は、上記吸気マニホールドの強度確保とクラッシュストロークの確保という相反する要求に応えることができるエンジンの吸気装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、吸気マニホールドにリブ構造部を設け、このリブ構造部を、強度向上要素とするとともに、車両前方から外部荷重が加わったときに吸気マニホールドに破壊起点を形成する要素となるようした。
【0009】
すなわち、本発明に係る上記課題を解決する手段は、車両前部のエンジンルームに多気筒エンジン本体がクランク軸の軸線方向を車幅方向に延ばした横置きに配置され、該エンジン本体の車両前後方向の前側に吸気マニホールドが取り付けられているエンジンの吸気装置において、
上記吸気マニホールドは、サージタンク部と、上記エンジン本体の各吸気ポートに連通する複数の分岐通路部と、上記サージタンク部に設けられ上記エンジン本体の前側面に締結されるステー部とを少なくとも有し、上記複数の分岐通路部は、上記サージタンク部から車両前側に凸となるように湾曲して上方に延び、その上端部が上記エンジン本体のシリンダヘッドに接続されるように設けられていて、
上記吸気マニホールドが、複数の樹脂製分割体を各々の車両前後方向の前面側と後面側とで重ね合わせ、その合わせ面を溶着して形成され、
上記複数の樹脂製分割体のうち、上記エンジン本体に最も近い第1分割体は、上記ステー部と、上記サージタンク部におけるエンジン本体側の壁を形成する下側のタンク形成部と、上記複数の分岐通路部の下流端部を形成する上側の通路形成部と、該タンク形成部と通路形成部とを結ぶ連結部とを少なくとも有し、且つ該第1分割体は、他の分割体に比べて車両前後方向に高い剛性を有し、
上記他の分割体には、上記分岐通路部の湾曲部分の内側において車両前後方向の前側から後側に延び、車両前方から外部荷重が加わったときに前後の両端部が応力集中点となるリブ構造部が少なくとも一つ設けられていることを特徴とする。
【0010】
かかるエンジンの吸気装置においては、剛性が高い第1分割体とリブ構造部とが吸気マニホールド全体の強度を高めることに働き、吸気マニホールドをエンジン本体に堅固にゆるぎなく取り付けることができる。よって、車両前方から外部荷重が加わったとしても、それが軽荷重であれば、吸気マニホールドが脆弱に破壊してしまうことが避けられる。また、車両前方から大きな外部荷重が加わったときは、剛性が高い第1分割体がバックアップとなってエンジン本体側に破壊が及ぶことが軽減される一方、また、リブ構造部の両端部への応力集中により、他の分割体に破壊起点が作り出される。よって、該他の分割体を適切に崩壊させていくことができ、クラッシュストロークの確保が図れる。
【0011】
好ましい実施形態では、上記他の分割体として、上記第1分割体の前面側に溶着される第2分割体と、該第2分割体の前面側に溶着される第3分割体とを備え、
上記第2分割体は、上記第1分割体のタンク形成部と共に上記サージタンク部を形成するタンク形成部と、上記複数の分岐通路部の上記下流端部に続く上流側通路の一部を形成する通路形成部とを有するように設けられ、
上記第3分割体は、上記複数の分岐通路部の上記上流側通路の残部を形成するように設けられており、
上記第2分割体に上記リブ構造部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
すなわち、吸気マニホールドを3つの分割体の溶着によって形成するようにし、エンジン本体に最も近い内側の第1分割体と、エンジン本体から最も離れた外側の第3分割体との間に挟まれた中間の第2分割体にリブ構造部を設けるようにしたから、サージタンク部及び分岐通路部の配置ないしは形状の設計自由度を低下させることなく、分岐通路部の湾曲部分の内側にリブ構造部をレイアウトすることが容易になる。
【0013】
吸気マニホールドを3つの分割体で構成する場合、好ましいのは、上記第2分割体は、上記分岐通路部の湾曲部分の内側において上記第1分割体に溶着される内側溶着部と、上記分岐通路部の湾曲部分の内側において上記第3分割体に溶着される外側溶着部とを有し、上記リブ構造部は上記内側溶着部と外側溶着部とに跨るように設けられていることである。
【0014】
従って、リブ構造部自体を第1分割体又は第3分割体に溶着することを要さず、3つの分割体相互の溶着が容易且つ強固になる。
【0015】
好ましい実施形態では、上記リブ構造部として、上側リブ構造部と下側リブ構造部の2つを備え、
上記両リブ構造部は、互いの上記エンジン本体に近い後側の端部間の間隔よりも、互いの上記エンジン本体から離れた前側の端部間の間隔の方が広くなるように設けられていることを特徴とする。
【0016】
従って、破壊起点が上下に配置されることになり、しかも、2つのリブ構造部の延びる方向が異なるから、外部荷重の入力方向の如何によって破壊起点ができたり、できなかったりすることが少なくなり、多様な外部荷重の入力に対応する上で有利になる。
【0017】
好ましい実施形態では、上記エンジン本体の各気筒の燃焼室に燃料を直接噴射するインジェクタに燃料タンクの燃料を分配供給する燃料分配管が、上記第1分割体の連結部と上記エンジン本体との間に配置されていることを特徴とする。
【0018】
これにより、第1分割体を燃料分配管の保護に利用することができ、外部荷重による燃料分配管の破壊防止に有利になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、剛性が高い第1分割体とリブ構造部とによって吸気マニホールド全体の強度を高めることができ、該吸気マニホールドをエンジン本体に堅固にゆるぎなく取り付ける上で有利になるとともに、車両前方から大きな外部荷重が加わったときは、第1分割体をバックアップとしてエンジン本体側に破壊が及ぶことを抑えながら、リブ構造部の両端部への応力集中を利用して、他の分割体に破壊起点を作り出し、該他の分割体を適切に崩壊させることができ、クラッシュストロークの確保が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの吸気装置の側面図である。
【図2】同エンジンの吸気装置の正面図である。
【図3】図2のA−A線における拡大断面図である。
【図4】同吸気装置の吸気マニホールドの背面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るエンジンの吸気装置の側面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態に係るエンジンの吸気装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1に示す本発明の実施形態に係るエンジンの吸気装置において、1は多気筒エンジン本体、2は樹脂製吸気マニホールドである。エンジン本体1は、車両前部のエンジンルームに図2に示すクランク軸の軸線方向Dを車幅方向に延ばした横置きにして配置されている。このエンジン本体1の車両前後方向の前側に吸気マニホールド2が取り付けられている。
【0023】
吸気マニホールド2は、図2にも示すように、サージタンク部3と、エンジン本体1の図3に示す各吸気ポート10に連通する複数(4本)の分岐通路部4と、ステー部5とを有する。分岐通路部4は、サージタンク部3から車両前側に凸となるように湾曲して上方に延び、その上端部がエンジン本体1のシリンダヘッド6に、樹脂製バルブハウジング7を介して接続されるように設けられている。図3に示すように、バルブハウジング7はエンジン燃焼室に渦流を生成するためのスワールコントロールバルブ8を内蔵したものである。ステー部5は、サージタンク部3より下方に突出し、エンジン本体1のシリンダブロック9の前側面に締結されている。
【0024】
吸気マニホールド2は、図1及び図3に示すように、互いに別体となるように成形された3つの樹脂製分割体11〜13を各々の車両前後方向の前面側と後面側とで重ね合わせ、その合わせ面を溶着して形成されている。
【0025】
エンジン本体1に最も近い内側の第1分割体11は、サージタンク部3におけるエンジン本体1側の壁を形成する下側のタンク形成部11aと、各分岐通路部4の下流端通路4dを形成する上側の通路形成部11bと、4つの通路形成部11bを結ぶように設けられた共通の締結フランジ11cと、タンク形成部11aと締結フランジ11cとを結ぶ連結部11dと、サージタンク部3に吸気を導入する共通吸気通路部11e(図2,図4参照)と、タンク形成部11aより下方へ突出したステー部5とを有する。
【0026】
図4に示すように、第1分割体11のタンク形成部11aの表面には、その面剛性を高めるための補強リブ14が縦横に設けられている。連結部11dは、上下方向に延びるフレーム状のものであって、クランク軸の軸線方向に間隔をおいて3本設けられている。各フレーム状連結部11dは、上下方向に延び且つ後方に開口したコ字状断面のフレームに複数の横板が上下に間隔をおいて設けられたものであり、横板はフレームの相対する側板同士を連結している。このフレーム状連結部11dは、タンク形成部11aのリブ14で補強された部位と締結フランジ11cとを連結している。締結フランジ11cの片側の端部は共通吸気通路部11eに結合されている。共通吸気通路部11eの端部にはスロットルバルブを内蔵するスロットルボディ(図示省略)が締結される。
【0027】
第1分割体11は、締結フランジ11cが、バルブハウジング7と共にシリンダヘッド6にボルトにて締結され、また、上述の如くステー部5がシリンダブロック9に締結されている。この第1分割体11においては、タンク形成部11aの周辺フランジ、通路形成部11bの前面側の周辺フランジ、並びにフレーム状連結部11dの前面側が、第2分割体12に対する溶着部に形成されている。
【0028】
中間の第2分割体12は、図3に示すように、第1分割体11のタンク形成部11aと共にサージタンク部3を形成するタンク形成部12aと、各分岐通路部4の下流端通路4dに続く上流側通路の一部を形成する通路形成部12bと、分岐通路部4の湾曲部分内側の上下2つのリブ構造部12c,12dと、第1分割体11の各フレーム状連結部11cに対応する位置でタンク形成部12aと通路形成部12bの下流側の端部とを結ぶ3つのプレート状連結部12eとを有する。
【0029】
第2分割体12のタンク形成部12aは、サージタンク部3の前面側の壁を形成するように設けられている。通路形成部12bは、各分岐通路部4のサージタンク部3に開口した上流端通路4aと、湾曲した中間通路4bのエンジン本体1側の壁と、上記下流端通路4dに続く下流側通路4cとを形成するように設けられている。
【0030】
リブ構造部12c,12d各々は、クランク軸の軸線方向Dに広がったプレート状のものであって、分岐通路部4の湾曲部分内側において車両前後方向の前側から後側に延びており、4つの通路形成部12bを結ぶように、且つ3つのプレート状連結部12eを結ぶように設けられている。上側リブ構造部12cと下側リブ構造部12dとは、互いのエンジン本体1に近い後側の端部間の間隔よりも、互いのエンジン本体1から離れた前側の端部間の間隔の方が広くなるように設けられている。本実施形態では、両リブ構造部12c,12dは、互いの後側端部の間隔が略零になっていて、前方に向かって互いの間隔が上下に広がるように延びている。
【0031】
第2分割体12は、共通吸気通路部11eが存する側の端部に、軽減孔16を有する端プレート部12fを備えている。この端プレート部12fは、上側リブ構造部12cより下側に設けられている。
【0032】
第2分割体12は、タンク形成部12aの周辺フランジ、各通路形成部12bの下流側の端部フランジ、並びにプレート状連結部12eが、それぞれ第1分割体11のタンク形成部11aの周辺フランジ、通路形成部11bの前面側の周辺フランジ、並びにフレーム状連結部11cの前面側に溶着される溶着部となっている。また、第2分割体12は、通路形成部12bの前面側において相隣る通路形成部12bを結ぶように広がった連結壁及び4本の通路形成部12bを囲む周辺フランジを有し、この連結壁及び周辺フランジが第3分割体13に対する溶着部を形成している。
【0033】
そうして、リブ構造部12c,12dは、第1分割体11に対する溶着部を構成するタンク形成部12aの周辺フランジ及び3本のプレート状連結部12eと、第3分割体13に対する溶着部を構成する連結壁及び周辺フランジとに跨るように設けられている。中央のプレート状連結部12eと、共通吸気通路部11eとは反対側に配置されたプレート状連結部12eとの間では、リブ構造部12c,12dの後端は他の部材に結合されることなく露出している。
【0034】
エンジン本体1から最も離れた外側の第3分割体13は、図3に示すように、各分岐通路部4の下流端通路4dに続く上流側通路の残部、すなわち、各分岐通路部4の前面側の壁を形成する通路形成部13aを有する。そして、第3分割体13には、相隣る通路形成部13aを結ぶように広がった連結壁13b及び4本の通路壁形成部13aを囲むように設けられた周辺フランジを有し、この連結壁13b及び周辺フランジが第2分割体12の連結壁及び周辺フランジに対する溶着部を形成している。
【0035】
また、エンジン本体1のシリンダヘッド6と第1分割体11のフレーム状連結部11cとの間には、エンジン本体1の各気筒の燃焼室に燃料を直接噴射するインジェクタに燃料タンクの燃料を分配供給する燃料分配管17が、クランク軸の軸線方向Dに延びるように配置されている。
【0036】
上記エンジンの吸気装置においては、第1分割体11は、タンク形成部11aの表面に補強リブ14が縦横に設けられていること、このリブ14による補強部にステー部5が設けられていること、4つの通路形成部11bを結ぶ共通の締結フランジ11cが設けられていること、並びにタンク形成部11aのリブ14による補強部と締結フランジ11cとがフレーム状連結部11dによって連結されていることにより、他の分割体12,13よりも車両前後方向の剛性が高くなっている。
【0037】
第2分割体12のリブ構造部12c,12dは、分岐通路部4の湾曲部分の内側において車両前後方向の前側から後側に延びていることから、車両前後方向の外部荷重に対して突張り要素となり、また、4つの分岐通路部4の湾曲部分を結ぶように、また、3つのプレート状連結部12eないしフレーム状連結部11dを結ぶように、クランク軸の軸線方向Dに広がっていることから、車両横方向の外部荷重を分岐通路部4間で伝え、また、連結部11d,12e間で伝えることになり、吸気マニホールド2全体の強度を高める。従って、リブ構造部12c,12dは、エンジン本体1に対する吸気マニホールド2の取付安定性を高めることに働き、車両前方や側方から外部荷重が加わっても、それが軽荷重であれば、吸気マニホールド2が脆弱に破壊してしまうことが避けられる。
【0038】
一方、リブ構造部12c,12dは、上述の如くクランク軸の軸線方向Dに広がり且つ車両前後方向の前側から後側に延びたプレート状でものであるから、車両前方から外部荷重が加わったときは、このリブ構造部12c,12dの両端部が応力集中点となる。
【0039】
従って、車両前方から加わる外部荷重Fが大きいときは、上下のリブ構造部12c,12dいずれかの前端部位が破壊起点となって分岐通路部4の湾曲部分に亀裂を生じ、該分岐通路部4が崩壊していき、或いは上下のリブ構造部12c,12dいずれかの後端部位が破壊起点となって該リブ構造部が倒れ、分岐通路部4の湾曲部分が崩壊していく。
【0040】
この場合、第1分割体11は上述の如くその剛性が高いことから、車両前方から加わる外部荷重が過大なものにならない限り破壊せず、燃料分配管17は第1分割体11によって保護される。
【0041】
また、上記実施形態では、分岐通路部4の湾曲部分の内側に上下の2つのリブ構造部12c,12dを設けたから、破壊起点が上下に配置されることになり、しかも、上下のリブ構造部12c,12dは、互いの後側の端部間の間隔よりも、互いの前側の端部間の間隔の方が広くなるように設けられているから、すなわち、2つのリブ構造部12c,12dの延びる方向が異なるから、外部荷重の入力方向の如何によって破壊起点ができたり、できなかったりすることが少なくなる。
【0042】
このように、上記エンジンの吸気装置によれば、車両前方からの比較的大きな外部荷重に対して、第1分割体11をバックアップとして燃料分配管17を保護しつつ、リブ構造部12c,12dの両端部への応力集中を利用して、第2及び第3の分割体12,13に破壊起点を作り出し、分岐通路部4を崩壊させていくことができ、クラッシュストロークの確保に有利になる。
【0043】
また、上記実施形態では、吸気マニホールド2を3つの分割体11〜13に分け、エンジン本体1に近い内側の第1分割体11と、エンジン本体1から離れた外側の第3分割体13との間に挟まれた中間の第2分割体12にリブ構造部12c,12dを設けるようにしたから、サージタンク部3及び分岐通路部4の配置ないしは形状の設計自由度を低下させることなく、分岐通路部4の湾曲部分の内側にリブ構造部12c,12dをレイアウトすることが容易になる。
【0044】
上記実施形態では、上下のリブ構造部12c,12dの後端部を近接させたが、図5に示すように、上下のリブ構造部12c,12dの後端部を上下に離して、この両リブ構造部12c,12dの上下間隔が前方に行くに従って漸次拡大するようにしてもよい。或いは図6に示すように、上下のリブ構造部12c,12dを平行にして前後方向に延ばすようにしてもよい。
【0045】
なお、本発明は、リブ構造部を上下2つ配置することに限定するものではなく、リブ構造部は一つにしてもよく、或いは上下に間隔をおいて3つのリブ構造部を設けるようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では吸気マニホールド2を3つの分割体によって形成したが、第2分割体12と第3分割体13とを一体成形した一つの分割体とし、2つの分割体によって吸気マニホールドを形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 エンジン本体
2 吸気マニホールド
3 サージタンク部
4 分岐通路部
4d 下流端通路(下流端部)
5 ステー部
6 シリンダヘッド
9 シリンダブロック
10 吸気ポート
11 第1分割体
11a タンク形成部
11b 通路形成部
11c 締結フランジ
11d 連結部
11e 共通吸気通路部
12 第2分割体
12a タンク形成部
12b 通路形成部
12c リブ構造部
12d リブ構造部
13 第3分割体
13a 通路形成部
13b 連結壁
14 補強リブ
17 燃料分配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部のエンジンルームに多気筒エンジン本体がクランク軸の軸線方向を車幅方向に延ばした横置きに配置され、該エンジン本体の車両前後方向の前側に吸気マニホールドが取り付けられているエンジンの吸気装置において、
上記吸気マニホールドは、サージタンク部と、上記エンジン本体の各吸気ポートに連通する複数の分岐通路部と、上記サージタンク部に設けられ上記エンジン本体の前側面に締結されるステー部とを少なくとも有し、上記複数の分岐通路部は、上記サージタンク部から車両前側に凸となるように湾曲して上方に延び、その上端部が上記エンジン本体のシリンダヘッドに接続されるように設けられていて、
上記吸気マニホールドが、複数の樹脂製分割体を各々の車両前後方向の前面側と後面側とで重ね合わせ、その合わせ面を溶着して形成され、
上記複数の樹脂製分割体のうち、上記エンジン本体に最も近い第1分割体は、上記ステー部と、上記サージタンク部におけるエンジン本体側の壁を形成する下側のタンク形成部と、上記複数の分岐通路部の下流端部を形成する上側の通路形成部と、該タンク形成部と通路形成部とを結ぶ連結部とを少なくとも有し、且つ該第1分割体は、他の分割体に比べて車両前後方向に高い剛性を有し、
上記他の分割体には、上記分岐通路部の湾曲部分の内側において車両前後方向の前側から後側に延び、車両前方から外部荷重が加わったときに前後の両端部が応力集中点となるリブ構造部が少なくとも一つ設けられていることを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記他の分割体として、上記第1分割体の前面側に溶着される第2分割体と、該第2分割体の前面側に溶着される第3分割体とを備え、
上記第2分割体は、上記第1分割体のタンク形成部と共に上記サージタンク部を形成するタンク形成部と、上記複数の分岐通路部の上記下流端部に続く上流側通路の一部を形成する通路形成部とを有するように設けられ、
上記第3分割体は、上記複数の分岐通路部の上記上流側通路の残部を形成するように設けられており、
上記第2分割体に上記リブ構造部が設けられていることを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記第2分割体は、上記分岐通路部の湾曲部分の内側において上記第1分割体に溶着される内側溶着部と、上記分岐通路部の湾曲部分の内側において上記第3分割体に溶着される外側溶着部とを有し、上記リブ構造部は上記内側溶着部と外側溶着部とに跨るように設けられていることを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記リブ構造部として、上側リブ構造部と下側リブ構造部の2つを備え、
上記両リブ構造部は、互いの上記エンジン本体に近い後側の端部間の間隔よりも、互いの上記エンジン本体から離れた前側の端部間の間隔の方が広くなるように設けられていることを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
上記エンジン本体の各気筒の燃焼室に燃料を直接噴射するインジェクタに燃料タンクの燃料を分配供給する燃料分配管が、上記第1分割体の連結部と上記エンジン本体との間に配置されていることを特徴とするエンジンの吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−285916(P2010−285916A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139386(P2009−139386)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)