説明

エンジンの排気ガス浄化装置

【目的】 全体としての浄化性能を高い状態をもってできるだけ長時間維持できるエンジンの排気ガス浄化装置を提供する。
【構成】 プリ触媒5、メイン触媒6を順に設けた第1通路部3、及び第1通路部3にプリ触媒5をバイパスするようにして付設した第2通路部4を有している排気通路2と、第1通路部3と第2通路部4とに対する排気供給調整を行なう開閉弁7、8とを備えているものを前提とする。この前提の下、コントロ−ルユニットUは、水温センサ11により冷間状態であることを判断したときには、走行距離積算値を検出するセンサ12に基づいてメイン触媒6の劣化度合いを判断し、劣化度合いが小さいほど、第1通路部3への排気供給割合を少なくする一方、第2通路部4への排気供給割合を多くするように開閉弁7、8を制御する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エンジンの排気ガス浄化装置に関する。
【0002】
【従来技術】エンジンの排気ガス浄化装置には、特開平4−60108号公報に示すようなものがあるが、このような排気ガス浄化装置は、具体的には、プリ触媒(ヒ−タ触媒)、メイン触媒が上流側から下流側に向って順に設けられる第1通路部、及び該第1通路部にプリ触媒をバイパスするようにして付設される第2通路部を備える排気通路と、前記第1、第2通路部に対する排気供給調整を行う切換弁調整手段と、所定状態か否かを検出する状態検出手段と、該状態検出手段が所定状態であることを検出したとき、排気が前記第1通路部を通るように排気供給を設定する設定手段と、該設定手段に基づき、前記切換弁調整手段を制御する制御手段と、を備えるものとなっている。これにより、温間時には、排気を第2通路部に通してプリ触媒の劣化等を抑制するようにする一方、所定状態である冷間時には、排気を第1通路部に通して、プリ触媒を高い温度の排気に晒させ、プリ触媒の触媒活性等を素早く行おうとしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記エンジンの排気ガス浄化装置においては、冷間時に、排気を一律に第1通路部に通すことから、プリ触媒は、メイン触媒に比して高い温度の排気に晒される機会が多くなり、該プリ触媒は劣化し易い傾向にある。このため、全体としての浄化性能が早い時期に低下しがちである。
【0004】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、全体としての浄化性能を高い状態をもってできるだけ長時間維持できるエンジンの排気ガス浄化装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために本発明にあっては、プリ触媒が上流側に、メイン触媒が下流側に設けられる第1通路部、及び該第1通路部にプリ触媒の上流部及びプリ触媒とメイン触媒との間に連結されプリ触媒をバイパスするようにして付設される第2通路部を備える排気通路と、前記第1、第2通路部に対する排気供給調整を行う切換弁調整手段と、上記メイン触媒の浄化性能が所定の浄化率か否かを検出する状態検出手段と、該状態検出手段が、メイン触媒の浄化性能が所定の浄化率以下であることを検出したとき、排気が前記第1通路部を通るように排気供給を設定する設定手段と、該設定手段に基づき、前記切換弁調整手段を制御する制御手段と、を備えるエンジンの排気ガス浄化装置において、前記メイン触媒の劣化度合いを検出する劣化検出手段と、前記状態検出手段からの信号に基づき、メイン触媒の浄化性能が所定の浄化率以下であると判断されたとき、前記劣化検出手段の検出信号に基づく劣化度合いが小さいと判断されるほど、前記第1通路部への排気供給割合を少なくする一方、前記第2通路部への排気供給割合を多くするように前記設定手段を変更する変更手段と、を備える、構成としてある。
【0006】上述の構成により、所定状態(メイン触媒の浄化性能が所定の浄化率以下であると判断されたとき)のときにおいては、メイン触媒の劣化度合いが小さいと判断されるほど、第1通路部への排気供給割合を少なくする一方、第2通路部への排気供給割合を多くするようにして、できるだけ、高い排気温度に晒されるプリ触媒を用いず、あまり高い排気温度に晒されることがないメイン触媒によって浄化を行なうようにしたことから、所望の高い浄化性能を確保しつつプリ触媒の劣化を抑制できることになる。その一方、経時変化に基づいてメイン触媒が劣化するとしても、そのときには、その劣化に応じ、プリ触媒がメイン触媒の劣化を補うことになり、高い浄化性能を維持できることになる。このため、全体としての浄化性能を高い状態をもって長期に亘って維持できることになる。
【0007】
【実施例】以下に、本発明の実施例を添付した図面に基いて説明する。図1において、符号1はエンジン本体で、該エンジン本体1からは排気通路2が外方に向かって延びており、該排気通路2は、第1通路部3と、第2通路部4とを備えている。第1通路部3には、プリ触媒(三元触媒)5と、メイン触媒(三元触媒)6とが、上流側から下流側に向って順に、設けられており、第2通路部4は、第1通路部3にプリ触媒5をバイパスするようにして付設されている。
【0008】前記第1、第2通路部3、4には、図1に示すように、切換弁を構成する開閉弁7、8が設けられている。開閉弁7は、第2通路部4の上流端よりも下流側であってプリ触媒5よりも上流側において位置され、開閉弁8は、第2通路部4の途中に位置されている。この各開閉弁7、8は駆動アクチュエ−タ9、10により駆動されることになっており、この両駆動アクチュエ−タ9、10が切換弁調整手段を構成している。
【0009】図1に示す符号Uは、例えばマイクロコンピュ−タで構成されたコントロールユニットで、既知のように、CPU、ROM、RAM等を具備している。コントロールユニットUには、状態検出手段たるセンサ11からのエンジン冷却水温、劣化検出手段たるセンサ12からの走行距離積算値等を表す各種信号が入力される。他方、コントロールユニットUから前記駆動アクチュエ−タ9、10等に対して制御信号が出力される。
【0010】上記コントロ−ルユニットUは、設定手段、制御手段、変更手段を備えている。上記設定手段は、センサ11が、メイン触媒の浄化性能が所定の浄化率以下であることを検出したとき、排気が前記第1通路部3を通るように排気供給を設定する機能を有している。上記制御手段は、上記設定手段からの信号に基づき、前記駆動アクチュエ−タ9、10を制御する機能を有している。上記変更手段は、前記センサ11に基づき、メイン触媒の浄化性能が所定の浄化率以下であると判断したとき、前記センサ12に基づく劣化度合いが小さいと判断されるほど、前記第1通路部3への排気供給割合を少なくする一方、前記第2通路部4への排気供給割合を多くするように前記設定手段を変更する機能を有している。具体的には、上記コントロールユニットUの制御内容は、次のようになっている。すなわち、本実施例においては、上記コントロールユニットUによる制御は、エンジン温度の低い冷間状態のときに行なわれるようになっており、冷間状態を判断するために冷却水温等が判断条件とされる。そして、温間状態のときには、開閉弁7が閉、開閉弁8が開とされて、排気が第2通路部4のみに流される一方、冷間状態が検出されたときには、開閉弁8が閉、開閉弁7が、メイン触媒6の劣化度合いに対応する走行距離積算値に応じ、その値が小さいほど短い開弁時間をもって開とされ、その開弁時間が終了すると、開閉弁7が閉、開閉弁8が開に切換わり、排気は第2通路部4のみを通るようになっている。
【0011】より具体的には、表1に示すように、走行距離が0(mile)のときには、開閉弁7が閉状態、開閉弁8が開状態とされて、排気は、第2通路部4にのみ流れ、第1通路部3には流れない。しかし、このときには、メイン触媒6は劣化しておらず、フレッシュな状態であるから、排気は、図2に示すように、そのメイン触媒6だけによって高い浄化性能をもって浄化される。尚、図2中、Aは、メイン触媒6が定常状態になるまでの時間である。走行距離がb(例えば30kmile)のときには、開閉弁8が閉とされる一方、開閉弁7は、始動後x秒間(例えば50秒間)開状態とされ、その間、排気は、第1通路部3だけに流される。そして、開閉弁7の開弁時間が終了すると、開閉弁7が閉、開閉弁8が開に切換わる。これにより、図3に示すように、メイン触媒6の劣化に基づく浄化性能の低下が、プリ触媒5により補われることになる。走行距離が前記bよりも大きいc(例えば50kmile)のときには、開閉弁8が閉とされる一方、開閉弁7が、始動後y秒間(例えば200秒間)開状態とされ、その間、排気は、第1通路部3だけに流される。そして、前記同様、開閉弁7の開弁時間が終了すると、開閉弁7が閉、開閉弁8が開に切換わる。これにより、図4に示すように、メイン触媒6の劣化に基づく浄化性能の低下が、図3に示す場合よりも一層、プリ触媒5により補われることになる。尚、A<x<yである。このように、冷間状態においては、メイン触媒6の劣化度合い(走行距離)が小さいと判断されるほど、第1通路部3への排気供給時間を少なくする一方、第2通路部4への排気供給時間を多くするようにして、できるだけ、高い排気温度に晒されるプリ触媒5を用いず、あまり高い排気温度に晒されることがないメイン触媒6によって浄化を行なうようにしたことから、所望の高い浄化性能を確保しつつプリ触媒5の劣化を抑制できることになる。その一方、経時変化に基づいてメイン触媒6が劣化するとしても、そのときには、その劣化に応じ、プリ触媒5がメイン触媒6の劣化を補うことになり、高い浄化性能を維持できることになる。このため、全体としての浄化性能を高い状態をもって長期に亘って維持できることになる。
【0012】以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、以下の変形例を包含する。
■コントロールユニットUが制御する所定状態には、アイドル状態を含むこと。
■プリ触媒5、メイン触媒6をそれぞれ複数設けること。
■第1通路部3、第2通路部4に対する排気供給調整を1つの切換弁で行うこと。
■開閉弁8の切換を、開閉弁7の切換(開から閉)と同時に行う必要は必ずしもなく、開閉弁7の切換に対して多少相前後してもよいこと。特に、メイン触媒6の活性を図るために、開閉弁7が閉に切換わる少し前に、開閉弁8を開とすることが好しい。
■開閉弁7、8により、絞り調整をすること。
【0013】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、全体としての浄化性能を高い状態をもって長時間維持できるエンジンの排気ガス浄化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係るエンジンの排気ガス浄化装置の全体構成図。
【図2】走行距離が0(mile)である制御時のメイン触媒とプリ触媒の浄化性能を示す図。
【図3】走行距離がb(mile)である制御時のメイン触媒とプリ触媒の浄化性能を示す図。
【図4】走行距離がc(mile)である制御時のメイン触媒とプリ触媒の浄化性能を示す図。
【符号の説明】
1 エンジン本体
2 排気通路
3 第1通路部
4 第2通路部
5 プリ触媒
6 メイン触媒
7 開閉弁
8 開閉弁
9 駆動アクチュエ−タ
10 駆動アクチュエ−タ
11 センサ
12 センサ
U コントロ−ルユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 プリ触媒が上流側に、メイン触媒が下流側に設けられる第1通路部、及び該第1通路部にプリ触媒の上流部及びプリ触媒とメイン触媒との間に連結されプリ触媒をバイパスするようにして付設される第2通路部を備える排気通路と、前記第1、第2通路部に対する排気供給調整を行う切換弁調整手段と、上記メイン触媒の浄化性能が所定の浄化率か否かを検出する状態検出手段と、該状態検出手段が、メイン触媒の浄化性能が所定の浄化率以下であることを検出したとき、排気が前記第1通路部を通るように排気供給を設定する設定手段と、該設定手段に基づき、前記切換弁調整手段を制御する制御手段と、を備えるエンジンの排気ガス浄化装置において、前記メイン触媒の劣化度合いを検出する劣化検出手段と、前記状態検出手段からの信号に基づき、メイン触媒の浄化性能が所定の浄化率以下であると判断されたとき、前記劣化検出手段の検出信号に基づく劣化度合いが小さいと判断されるほど、前記第1通路部への排気供給割合を少なくする一方、前記第2通路部への排気供給割合を多くするように前記設定手段を変更する変更手段と、を備える、ことを特徴とするエンジンの排気ガス浄化装置。
【請求項2】 請求項1において、前記メイン触媒の浄化性能が所定の浄化率以下であることが、エンジンの温度が低い冷間状態とされる、ことを特徴とするエンジンの排気ガス浄化装置。
【請求項3】 請求項1又は2において、前記劣化検出手段が、走行距離の積算値を検出する走行距離積算値検出手段とされている、ことを特徴とするエンジンの排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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