説明

エンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品

【課題】 低吸水性で寸法安定性、耐薬品性に優れ、成形性、溶着性などの成形加工性にも優れたエンジン冷却水系部品に好適なポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (a)デカンテレフタルアミド単位50〜98モル%及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位50〜2モル%からなる共重合ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、無機充填材(D)を30〜150質量部含有する樹脂組成物であり、該樹脂組成物を射出成形して得た引張試験片(ASTM D638に準拠、1号試験片)が以下の(イ)及び(ロ)を満足することを特徴とするエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物。
(イ)不凍液(LLC)に130℃で24時間浸漬した後の引張強度Tが、少なくとも80Mpaである。
(ロ)不凍液(LLC)に130℃で1000時間浸漬した後の引張強度Tが、Tの80%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジン冷却水系部品などの成形に好適なポリアミド樹脂組成物に関する。更に詳しくはラジエタータンク部品、ウォーターポンプ部品など、エンジンルーム内で冷却水との接触下で使用される用途に好適な耐不凍液(LLC)性、耐塩化カルシウム性、低吸水性、溶着性などに優れたポリアミド樹脂組成物及びそれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品、特にエンジンルーム内で使用される樹脂製部品においては、エンジン性能の高性能化、高出力化に伴うエンジン冷却水の温度上昇やエンジンルーム内の温度上昇などに伴い、使用環境が過酷なものなっている。また、寒冷地域では、融雪剤として塩化カルシウム、塩化亜鉛などの大量の耐道路凍結防止剤が散布され、エンジン部品はこれら薬剤にも晒される。従来のナイロン6やナイロン66では、このような過酷な使用環境下では樹脂の劣化が進行するため、種々の改善策がなされている。
【0003】
例えば、ナイロン66に強化材として特定の表面処理剤で処理した特定の細い繊度のガラス繊維を用いる方法(特許文献1)、ナイロン6T系などの融点300℃以上の高融点ポリアミドを配合する方法(例えば特許文献2、3)、ナイロン66にポリプロピレン系樹脂を配合する方法などがある(特許文献4)。しかしながら、これらの方法では、それぞれ、成形性、流動性、溶着性、低吸水性、耐久性などをすべて満足できるものではなく、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3271328号公報
【特許文献2】特許第3985316号公報
【特許文献3】特開2002−114905公報
【特許文献4】特開2006−291118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より低吸水性で寸法安定性、耐薬品性に優れ、成形性、溶着性などの成形加工性にも優れたエンジン冷却水系部品に好適なポリアミド樹脂組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、10Tナイロンの共重合成分として11ナイロンおよび/又は12ナイロンを特定の割合で共重合したポリアミド(以下、簡略のために単に10T11共重合ポリアミドと略記することがある。)は、低吸水性で寸法安定性、耐薬品性に優れ、しかも半芳香族系ポリアミドでありながら低温成形性、溶着性にも優れたポリアミド樹脂組成物及びその成形体を提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
即ち、本発明によれば、
(1). (a)デカンテレフタルアミド単位50〜98モル%、及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位50〜2モル%からなる共重合ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、無機充填材(D)を30〜150質量部含有する樹脂組成物であり、該樹脂組成物を射出成形して得た引張試験片(ASTM D638に準拠、1号試験片)が以下の(イ)及び(ロ)を満足することを特徴とするエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物。
(イ)不凍液(LLC)に130℃で24時間浸漬した後の引張強度Tが、少なくとも80Mpaである。
(ロ)不凍液(LLC)に130℃で1000時間浸漬した後の引張強度Tが、Tの80%以上である。
(2). 共重合ポリアミド樹脂(A)が、(a)デカンテレフタルアミド単位75〜98モル%、及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位25〜2モル%からなる前記(1)に記載のエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物。
(3). 前記(1)又は(2)のポリアミド樹脂組成物において、さらに共重合ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)を0.1〜10質量部、カルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を有するオレフィン系重合体(C)を0.1〜10質量部含有するエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物。
(4). 共重合ポリアミド樹脂(A)が、(c)前記(a)の構成単位以外のジアミンとジカルボン酸から得られる構成単位、または前記(b)の構成単位以外のアミノカルボン酸もしくはラクタムから得られる構成単位を最大30モル%まで含有する前記(1)〜(3)のいずれかに記載のエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物。
(5). 共重合ポリアミド樹脂(A)のアミノ末端基が60当量/トン未満である前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を用いて得られたエンジン冷却水系部品。
(6). 前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を用いて得られたエンジン冷却水系部品。
(7). エンジン冷却水系部品が、ラジエラータンク部品、冷却液リザーブタンク、ウォーターパイプ、ウォーターインレットパイプ、ウォーターアウトレットパイプ、ウォーターポンプハウジング、ウォーターポンプインペラ、ウォーターバルブなどのウォーターポンプ部品のいずれかである前記(6)に記載のエンジン冷却水系部品。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリアミド系樹脂組成物は、耐不凍液(LLC)性、耐塩化カルシウム性、低吸水性、溶着性などに優れたポリアミド樹脂組成物であり、エンジン冷却水系部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のポリアミド系樹脂組成物について詳述する。
本発明で用いられる共重合ポリアミド(A)は、10Tナイロンに相当する(a)成分と11ナイロンおよび/又は12ナイロンに相当する(b)成分を特定の割合で含有するものであり、10Tナイロンの欠点である成形性、耐衝撃性が改良されているのみならず、低吸水性も高度に満足するという特徴を有する。
【0010】
(a)成分は、1,10−デカンジアミン(10)とテレフタル酸(T)を等量モルで共縮重合させることにより得られる10Tナイロンに相当するものであり、具体的には、下記式(I)で表されるものである。
【0011】
【化1】

【0012】
(a)成分は、本発明で用いられる共重合ポリアミド(A)の主成分であり、共重合ポリアミドに優れた耐熱性、低吸水性、耐薬品性、摺動性、などを付与する役割を有する。共重合ポリアミド中の(a)成分の配合割合は、50〜98モル%であり、好ましくは70〜95モル%、さらに好ましくは80〜95モル%である。(a)成分の配合割合が上記下限未満の場合、結晶成分である10Tナイロンが共重合成分により結晶阻害を受け、成形性や高温特性の低下を招くおそれがあり、一方、上記上限を超える場合、加工性や耐衝撃性が著しく低下するため好ましくない。
【0013】
(b)成分は、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、ウンデカンラクタム、又はラウリルラクタムを重縮合させることにより得られる11ナイロン、12ナイロンに相当するものであり、具体的には、下記式(II)、(III)で表されるものである。これらは単独で使用しても良いし、混合物を使用することもできる。
【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
(b)成分は、(a)成分の欠点を改良するためのものであり、共重合ポリアミドの耐衝撃性、加工性、低吸水性の全てを改善する役割を有する。共重合ポリアミド中の(b)成分の配合割合は、50〜2モル%であり、好ましくは30〜5モル%、更に好ましくは20〜5モル%である。(b)成分の配合割合が上記下限未満の場合、共重合ポリアミドの耐衝撃性が向上せず、低吸水化効果も不十分である。上記上限を超える場合、共重合ポリアミドの結晶性が大幅に低下し結晶化速度が遅くなり成形性が悪くなるだけでなく耐衝撃性が劣るおそれがあると共に、10Tナイロンに相当する(a)成分の量が少なくなり、耐熱性や摺動性が不足するおそれがあり、好ましくない。
【0017】
本発明で用いられる共重合ポリアミド(A)は、上記(a)成分及び(b)成分以外に、(c)上記(a)の構成単位以外のジアミンとジカルボン酸の等量モル塩から得られる構成単位、または上記(b)の構成単位以外のアミノカルボン酸もしくはラクタムから得られる構成単位を最大30モル%共重合しても良い。(c)成分としては、共重合ポリアミド(A)に10Tナイロンや11ナイロン、12ナイロンによっては得られない他の特性を付与したり、10Tナイロンや11ナイロン、12ナイロンによって得られる特性をさらに改良する役割を有するものである。
【0018】
(c)に用いる共重合成分は具体的には以下のような共重合成分が挙げられる。アミン
成分としては、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ベンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、1,13−トリデカメチレンジアミン、1,16−ヘキサデカメチレンジアミン、1,18−オクタデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミンのような脂肪族ジアミン、ピペラジン、シクロヘキサンジアミン、ビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタン、ビス−(4,4'−アミノシクロヘキシル)メタン、イソホロンジアミンのような脂環式ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンおよびこれらの水添物等があげられる。ポリアミドの酸成分としては、以下に示す多価カルボン酸、もしくは酸無水物を使用できる。多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボンル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホン酸ナトリウムイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,18−オクタデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸等があげられる。また、ε−カプロラクタムなどのラクタムおよびこれらが開環した構造であるアミノカルボン酸などがあげられる。
【0019】
具体的な(c)成分としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロンM−5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン6T(H))ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)などが挙げられる。
前記構成単位の中でも、好ましい(c)成分の例としては、加工性、低吸水性、耐衝撃性向上のためにポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)やポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカアミド(ナイロン1012)などが挙げられる。共重合ポリアミド中の(c)成分の配合割合は、最大30モル%までであることが好ましく、さらに好ましくは5〜20モル%である。(c)成分の割合が上記上限を超える場合、必須成分である(a)成分や(b)成分の量が少なくなり、本発明で用いられる共重合ポリアミド(A)の本来意図される効果が十分発揮されないおそれがあり、好ましくない。
本発明で用いられる共重合ポリアミド(A)は、特性上大きな差異は無いが、植物由来の原料を用いることが、低炭素社会、環境調和を目指す上で好ましい。具体的には、食用と競合しないヒマシ油由来原料を用いることが好ましく、本発明内の(a)成分中のデカンジアミン、(b)成分中としてアミノウンデカン酸、(c)成分としてセバシン酸は植物由来原料を用いることが好ましい。本発明の好ましい樹脂組成としては、これら植物原料を用い極めて高い植物由来原料比率を示すナイロン10T/11、ナイロンPA10T/1010/11が挙げられる。
【0020】
本発明で用いられる共重合ポリアミド(A)の融点は240〜315℃、好ましくは280〜315℃である。Tmが上記上限を超える場合、共重合ポリアミドを射出成形法などにより成形する際に必要となる加工温度が極めて高くなるため、加工時に分解し、目的の物性や外観が得られない場合がある。逆にTmが上記下限未満の場合、結晶化速度が遅くなり、いずれも成形が困難になる。また、ガラス転移温度(Tg)は70℃〜120℃、好ましくは100℃〜120℃であることが好ましい。Tgが上記上限を超える場合、共重合ポリアミドを射出成形法などにより成形する際に 必要とされる金型温度が高くなり成形が困難になるだけでなく、射出成形の短いサイクルの中では十分に結晶化が進まない場合があり、離型不足等の成形難を引き起こしたり、後の使用において、高温下で結晶化が進行し二次収縮による変形などが問題となる。逆にTgが上記下限未満の場合、物性の大きな低下や、吸水後の物性が維持できないなどの問題が発生する。
【0021】
本発明で用いられる共重合ポリアミド(A)において、10Tナイロンに特定量の11ナイロン成分および/又は12ナイロンを共重合することにより、低吸水性だけでなく成形性や低吸水性のバランスに優れた樹脂が得られる。自動車部品の成形においては、280℃以上の高融点、低吸水であることに加え、ハイサイクルな成型も求められている。ポリデカメチレンテレフタルアミド重合体(10T)においては、耐熱性は良好であるものの、成形性及び耐衝撃性に劣る。また、ガラス転移温度が高いことから成型時に高い金型温度が必要となるため、射出成型加工性に難がある。たとえ低温金型で成型できても使用時の結晶化進行による二次収縮が問題となる。上記のような背景より、280℃以上の高融点および低吸水、易成形性を有する樹脂が求められており、本発明における共重合ポリアミドにおいては、10Tナイロンに特定量の11ナイロンおよび/又は12ナイロンを共重合することにより耐衝撃性を改良できるだけでなく、射出成形時の金型温度が低く抑えられ、射出成形の加工性を改善できる。
以上のように、本発明の共重合ポリアミドは、なかでも融点280℃以上の共重合ポリアミドは、自動車エンジンルーム内への展開に必要な融点280℃の優れた耐熱性と易加工性、低吸水性を保持しつつ、さらに優れた耐衝撃性を満足するバランスの取れた具体的な共重合ポリアミド組成である。
【0022】
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)を製造するに際に使用する触媒としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸もしくはその金属塩やアンモニウム塩、エステルが挙げられる。金属塩の金属種としては、具体的には、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモンなどが挙げられる。エステルとしては、エチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステルなどを添加することができる。また、溶融滞留安定性向上の観点から、水酸化ナトリウムを添加することが好ましい。
【0023】
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)の96%濃硫酸中(1g/100mlの濃度)20℃で測定した相対粘度(RV)は0.4〜4.0であり、好ましくは1.0〜3.5、より好ましくは1.5〜3.0である。ポリアミドの相対粘度を一定範囲とする方法としては、分子量を調整する手段が挙げられる。
【0024】
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)は、アミノ基量とカルボキシル基とのモル比を調整して重縮合する方法や末端封止剤を添加する方法によって、ポリアミドの末端基量および分子量を調整することができる。アミノ基量とカルボキシル基とのモル比を一定比率で重縮合する場合には、使用する全ジアミンと全ジカルボン酸のモル比をジアミン/ジカルボン酸=1.00/1.05から1.10/1.00の範囲に調整することが好ましい。
【0025】
末端封止剤を添加する時期としては、原料仕込み時、重合開始時、重合後期、または重合終了時が挙げられる。末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、モノカルボン酸またはモノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などを使用することができる。末端封止剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン等が挙げられる。
【0026】
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)の酸価およびアミン価としては、それぞれ0〜200当量/10g、0〜200当量/10gであることが好ましい。末端官能基が200当量/10g以上であると、溶融滞留時にゲル化や劣化が促進されるだけでなく、使用環境化においても、着色や加水分解等の問題を引き起こす。一方、ガラスファイバーやマレイン酸変性ポリオレフィンなどの反応性化合物をコンパウンドする際は、反応性および反応基に合わせ、酸価および/又はアミン価を5〜100当量/10gとすることが好ましい。
なお、以下に述べるグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)やカルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を有するオレフィン系重合体(C)を配合する場合は、酸価および/又はアミン価は60当量/10g未満とすることが滞留安定性の点で好ましい。
【0027】
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)は、従来公知の方法で製造することができるが、例えば、(a)成分の原料モノマーであるデカンジアミン、テレフタル酸、及び(b)成分である11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム及びこれら混合物からなる群より選ばれた原料モノマー、並びに必要により(c)前記(a)の構成単位以外のジアミンとジカルボン酸の等量モル塩、または前記(b)の構成単位以外のアミノカルボン酸もしくはラクタムから得られる原料モノマーを共縮合反応させることによって容易に合成することができる。共縮重合反応の順序は特に限定されず、全ての原料モノマーを一度に反応させてもよいし、一部の原料モノマーを先に反応させ、続いて残りの原料モノマーを反応させてもよい。また、重合方法は特に限定されないが、原料仕込からポリマー作製までを連続的な工程で進めても良いし、一度オリゴマーを作製した後、別工程で押出し機などにより重合を進める、もしくはオリゴマーを固相重合により高分子量化するなどの方法を用いても良い。原料モノマーの仕込み比率を調整することにより、合成される共重合ポリアミド中の各構成単位の割合を制御することができる。
【0028】
本発明で用いることができるグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)としては、グリシジル基含有アクリル系単量体及びスチレン系単量体を含有する単量体混合物を重合して得られるもの、或いはグリシジル基含有アクリル系単量体、スチレン系単量体及びその他のビニル系単量体を含有する単量体混合物を重合して得られるものである。グリシジル基含有アクリル系単量体として、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルやシクロヘキセンオキシド構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルグリシジルエーテル等が挙げられる。グリシジル基含有アクリル系単量体として好ましいものは、反応性の高い(メタ)アクリル酸グリシジルである。スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等が用いられる。
【0029】
その他のビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の炭素数が1〜22のアルキル基(アルキル基は直鎖、分岐鎖でもよい)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジアルキルアミド、酢酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アリルエーテル類等の芳香族系ビニル系単量体、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンモノマーも使用可能である。これらは、一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0030】
本発明で用いることができるグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)は、スチレン系重合体単位、グリシジル基含有アクリル系重合体単位及びその他のビニル系重合体単位が各々99〜30質量%、1〜30質量%及び0〜45質量%が好ましく、95〜50質量%、5〜20質量%及び0〜40質量%がより好ましく、93〜60質量%、7〜15質量%及び0〜30質量%が更に好ましい。
スチレン系重合体単位の含有量が30質量%未満では、共重合ポリアミド(A)との混和性が劣り、ゲル化しやすくなる傾向があり、組成物の剛性を低下させる恐れがある。また、グリシジル基含有アクリル系重合体単位の含有量が30質量%を超えるとゲル化しやすくなる。
具体例としてスチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、スチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸メチル、スチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などを例示することが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明で用いることができるグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)は、1分子鎖当りグリシジル基を平均で2〜4個含有することが好ましい。1分子鎖当りグリシジル基数が2未満では増粘が不十分となり、1分子鎖当りグリシジル基数が4を超えると組成物のゲル化などが起こりやすくなり組成物の滞留安定性が劣るようになる。
グリシジル基の濃度をエポキシ価で示すと、300〜1,200当量/10gであることが好ましく、より好ましくは400〜1,000当量/10gであり、さらに好ましくは500〜1,000当量/10gである。
エポキシ価が300当量/10g未満であると、ポリアミド樹脂との反応性が不足して増粘効果が不十分になることがある。一方、1,200当量/10gを超えるとゲル化等が発生し、成形品外観、成形性に悪影響をおよぼすことがある。
【0032】
グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の質量平均分子量は、500〜20,000であることが好ましく、より好ましくは700〜10,000、さらに好ましくは1000〜10,000である。質量平均分子量が500未満であると、未反応の反応基アクリル系共重合体が、成形品表面にブリードアウトし成形品表面の汚染をひきおこすことがある。一方、20,000を超えるとポリアミド樹脂との相溶性が悪くなり、相分離及びゲル化等が発生し成形品外観に悪影響をおよぼすことがある。
【0033】
グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の添加量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部がより好ましい。最適添加量はエポキシ価により変化し、エポキシ価が高ければ添加量は少なくてよく、エポキシ価が低ければ添加量を多くする必要がある。前記エポキシ価の範囲であれば添加量0.1質量部未満であると添加効果が低く、10質量部を超えると部分的にゲル化等が発生し成形品外観、成形性に悪影響をおよぼしたり、押出し機内での短い時間では充分な反応が進行せず、残存したエポキシ基が成形機中で反応して粘度が変化し成形が安定しなかったりする。
【0034】
本発明で用いることができるカルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を有するオレフィン系重合体(C)(以下、単に変性オレフィン系重合体(C)と略記することがある。)とは、カルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を有する単量体を共重合やグラフト重合などによってポリマー分子鎖中に含ませたα−オレフィンの重合体または共重合体である。
オレフィン系重合体の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテンなどのホモポリマー、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、イソブチレンなどのα−オレフィン、1,4−ヘキサジエンジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1´−プロベニル)−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種を通常の金属触媒、あるいはメタロセン系高性能触媒を用いてラジカル重合して得られるポリオレフィンを挙げることができる。
【0035】
また、ジエン系エラストマとしてはビニル系芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるA−B型またはA−B−A´型のブロック共重合弾性体であり、末端ブロックAおよびA´は同一でも異なってもよく、かつ芳香族部分が単環でも多環でもよいビニル系芳香族炭化水素から誘導された熱可塑性単独重合体または共重合体が挙げられ、かかるビニル系芳香族炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルビニルキシレン、ビニルナフタレンおよびそれらの混合物などが挙げられる。中間重合体ブロックBは共役ジエン系炭化水素からなり、例えば1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンおよびそれらの混合物から誘導された重合体などが挙げられる。本発明では、上記ブロック共重合体の中間重合体ブロックBが水添処理を受けたものも含まれる。
【0036】
ポリオレフィン共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、未水添または水添ポリブタジエン、未水添または水添スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体、未水添または水添スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体などが挙げられる。
【0037】
カルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を導入する方法は、特に制限なく、共重合せしめたり、未変性ポリオレフィンにラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。これらの官能基含有成分の導入量は、共重合の場合は、変性ポリオレフィン中のオレフィンモノマー全体に対して0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜12モル%の範囲内、グラフトの場合は、変性ポリオレフィン質量に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜6質量%の範囲内が適当である。
官能基含有成分の導入量が上記の範囲を下回る場合は、増粘が不十分になり、上記の範囲を上回る場合は、溶融粘度の安定性が損なわれる恐れがある。
【0038】
本発明で特に有用な変性ポリオレフィン系重合体(C)の具体例としては無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、(“g”はグラフトを表わす、以下同じ)、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/2,5−ノルボルナジエン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/イソプレン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、などを挙げることができる。
これらの中で、ポリアミド中のアミンとの反応性が高いカルボン酸無水物基を有する重合体、共重合体が好ましい。
【0039】
また、高度架橋によりゲル等が発生しない範囲であれば、上記グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)、変性オレフィン系重合体(C)以外の化合物も任意に添加することができる。
上記グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)以外の化合物が持つ官能基は、溶融押出時にアミノ基あるいはカルボキシル基と反応するものであればいかなるものでも良い。また、1分子中に異なった種類の官能基を持つことも差し支えない。例えば、グリシジル基、カルボキシル基、カルボン酸金属塩、エステル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボジイミド基等の官能基、さらにはラクトン、ラクチド、ラクタム等ポリエステル末端と開環付加する官能基が挙げられる。このうち、好ましい官能基としては、反応の速さの観点から、グリシジル基あるいはカルボジイミド基が挙げられる。
【0040】
本発明で用いられる無機充填材(D)としては、強度や剛性および耐熱性等の物性を最も効果的に改良するものであり、具体的にはガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ジルコニヤ繊維等の繊維状のもの、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等のウイスカー類、針状ワラストナイト、ミルドフィバー等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
特にガラス繊維、炭素繊維などが好ましく用いられる。これらの繊維状強化材は、有機シラン系化合物、有機チタン系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ系化合物等のカップリング剤で予め処理をしてあるものが好ましく、カルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基と反応しやすいものが特に好ましい。カップリング剤で処理してあるガラス繊維を配合したポリアミド系樹脂組成物では優れた機械的特性や外観特性の優れた成形品が得られるので好ましい。また 他の繊維状強化材においても、カップリング剤が未処理の場合は後添加して使用することが出来る。
【0041】
ガラス繊維としては、繊維長1〜20mm程度に切断されたチョップドストランド状ものもが好ましく使用できる。ガラス繊維の断面形状としては、円形断面及び非円形断面のガラス繊維を用いることができる。ガラス繊維の断面形状としては、物性面より非円形断面のガラス繊維が好ましい。非円形断面のガラス繊維としては、繊維長の長さ方向に対して垂直な断面において略楕円系、略長円系、略繭形系であるものをも含み、偏平度が1.5〜8であることが好ましい。ここで偏平度とは、ガラス繊維の長手方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径としたときの、長径/短径の比である。ガラス繊維の太さは特に限定されるものではないが、短径が1〜20μm、長径2〜100μm程度である。繊維状強化材の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド(A)100質量部に対して20〜150質量部を添加することが可能であるが、配合量が50質量%を超えると溶融時の伸びが無くなりエアー吹き付け時に穴が開く場合がある。また20質量%未満では強化材の効果が充分発揮できない場合がある。
【0042】
本発明のポリアミド樹脂組成物を射出成形して得た引張試験片(ASTM D638に準拠、1号試験片)は、以下の(イ)及び(ロ)を満足する。
(イ)不凍液(LLC)に130℃で24時間浸漬した後の引張強度Tが、少なくとも80Mpaである。
(ロ)不凍液(LLC)に130℃で1000時間浸漬した後の引張強度Tが、Tの80%以上である。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、適度の芳香族環を含有するとともにアミド基含有量が適度に含有する特定組成の半芳香族系ポリアミド樹脂を主体としているため、耐熱性、低吸水性、耐薬品性をバランスよく保有し、(イ)及び(ロ)を満足することができる。
【0043】
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、上記のもの以外に、従来のポリアミド用の各種添加剤を使用することができる。添加剤としては、充填材、安定剤、衝撃改良材、難燃剤、離型剤、摺動性改良材、着色剤、可塑剤、結晶核剤、本発明で用いられる共重合ポリアミド(A)とは異なるポリアミド、ポリアミド以外の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0044】
充填材(フィラー)としては、目的別には強化用フィラーや導電性フィラー、磁性フィラー、難燃フィラー、熱伝導フィラーなどが挙げられ、具体的にはガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、シリカ、タルク、カオリン、ワラストナイト、マイカ、アルミナ、ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、赤燐、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。これら充填材は、1種のみの単独使用だけではなく、数種を組み合わせて用いても良い。充填材の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド100質量部に対して250質量部以下、好ましくは20〜150質量部の充填材を添加することが可能である。また、繊維状強化材、充填材はポリアミド樹脂との親和性を向上させるため、カップリング剤処理したもの、またはカップリング剤と併用することが好ましく、カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤のいずれを使用しても良いが、その中でも、特にアミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤が好ましい。
【0045】
安定剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などの有機系酸化防止剤や熱安定剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系等の光安定剤や紫外線吸収剤、金属不活性化剤、銅化合物などが挙げられる。銅化合物としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、塩化第二銅、臭化第二銅、ヨウ化第二銅、燐酸第二銅、ピロリン酸第二銅、硫化銅、硝酸銅、酢酸銅などの有機カルボン酸の銅塩などを用いることができる。さらに銅化合物以外の構成成分としては、ハロゲン化アルカリ金属化合物を含有することが好ましく、ハロゲン化アルカリ金属化合物としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムなどが挙げられる。これら添加剤は、1種のみの単独使用だけではなく、数種を組み合わせて用いても良い。安定剤の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド100質量部に対して0〜5質量部を添加することが可能である。
【0046】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲においてポリアミド以外の熱可塑性樹脂を添加しても良い。ポリアミド以外のポリマーとしては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリサルホン(PSU)、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、相溶性が悪い場合は、反応性化合物やブロックポリマー等の相溶化剤を添加するか、ポリアミド以外のポリマーを変性(特に酸変性が好ましい)することが重要である。これら熱可塑性樹脂は、溶融混練により、溶融状態でブレンドすることも可能であるが、熱可塑性樹脂を繊維状、粒子状にし、本発明で用いられる共重合ポリアミド(A)に分散しても良い。熱可塑性樹脂の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド100質量部に対して0〜50質量部を添加することが可能である。
【0047】
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤とアンチモンの組み合わせが良く、ハロゲン系難燃剤としては、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体、臭素化スチレン無水マレイン酸重合体、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモビフェニル、臭素化ポリカーボネート、パークロロシクロペンタデカン及び臭素化架橋芳香族重合体等が好ましく、アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等が好ましい。中でも、熱安定性の面よりジブロムポリスチレンと三酸化アンチモンとの組み合わせが好ましい。また、非ハロゲン系難燃剤としては、メラミンシアヌレート、赤リン、ホスフィン酸の金属塩、含窒素リン酸系の化合物が挙げられる。特に、フォスフィン酸金属塩と含窒素リン酸系化合物との組み合わせが好ましく、含窒素リン酸系化合物としては、メラミンまたは、メラム、メロンのようなメラミンの縮合物とポリリン酸の反応性生物またはそれらの混合物を含む。その際、金型等の金属腐食防止として、ハイドロタルサイト系化合物の添加が好ましい。難燃剤の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド100質量部に対して0〜50質量部を添加することが可能である。
【0048】
離型剤としては、長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、アマイド系化合物、ポリエチレンワックス、シリコン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。長鎖脂肪酸としては、特に炭素数12以上が好ましく、例えばステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などが挙げられ、部分的もしくは全カルボン酸が、モノグリコールやポリグリコールによりエステル化されていてもよく、または金属塩を形成していても良い。アマイド系化合物としては、エチレンビステレフタルアミド、メチレンビスステアリルアミドなどが挙げられる。これら離型剤は、単独であるいは混合物として用いても良い。離型材の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド100質量部に対して0〜5質量部を添加することが可能である。
【0049】
摺動性改良材としては、高分子量ポリエチレン、酸変性高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン、シリコン樹脂、シリコンオイル、亜鉛、グラファイト、鉱物油等が挙げられる。樹脂摺動性改良材は本発明の特性を損なわない範囲、例えば0.05〜3質量部の範囲で添加することができる。
【0050】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に制限はなく、当業者に周知のいずれの方法も可能であり、単軸押出機、2軸押出機、加圧ニーダ、バンバリーミキサ等が使用することができる。なかでも2軸押出機を使用することが好ましい。
なお、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)及び変性オレフィン系重合体(C)は、重合終了後のポリアミド樹脂に対し添加することができる。例えば重合終了後の重合機内に添加する、あるいは重合機を出た直後の溶融状態のポリアミド樹脂に直接添加剤を混合混練する方法及び固体化(たとえば粉末、ペレット状など)したポリアミド樹脂に添加剤を加え、次いで溶融混練する方法などが適用できる。
前者の方法においてはポリアミド樹脂が溶融状態にあるので、添加剤の添加によりそのまま高溶融粘度化されるが、後者の方法においては添加剤を均一に分散混合されたポリアミド樹脂は高溶融粘度化のために加熱再溶融される。
【0051】
2軸押出機の条件は、ポリアミド樹脂の種類、添加剤種類・量など種々の要因により異なり一義的に決められない。ポリアミド樹脂の融点は170〜320℃範囲であり、その加工温度は融点+25℃前後で温度設定をすればよい。反応時間は10分間以内、例えば1分から数分間で充分目的とする溶融粘度に到達すると考えてよい。
スクリュー構成は練りの優れるニーデングディスクを数箇所組み込むことが好ましい。この様に反応基含有アクリル系共重合体を混合溶融して作成した高溶融粘度ポリアミド樹脂は、均一で溶融状態における粘度安定性が高く、特に押出成形、ブロー成形に適した流動特性を有している。
【0052】
本発明のポリアミド樹脂組成物では、耐熱安定性を向上させるために耐熱剤を添加することが有用である。120℃以上の高温環境下で有効な長期熱老化性防止剤としては、銅化合物、例えば酢酸銅、ヨウ化銅、塩化銅、臭化銅、のようなハロゲン化銅などが使用することが好ましい。銅化合物の添加量は強化ポリアミド系樹脂組成物100質量部に対して0.005〜0.5質量部が好ましく、より好ましくは0.01〜0.5質量部である。
銅化合物は、またヨウ化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウムのようなハロゲン化アルカリとの併用も効果的である。またその他の耐熱剤としては、抗酸化剤や酸化防止剤としてリン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト化合物、チオエーテル系化合物等も公知の範囲で使用することが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は、以下の方法によって測定したものである。
【0054】
(1)原料、原料の調整法及び測定法
[相対粘度]
ポリアミド樹脂0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度計を用いて20℃で測定した。
[融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)]
105℃で15時間減圧乾燥したポリアミドをアルミニウム製パン(TA Instruments社製、品番900793.901)に10mg計量し、アルミニウム製蓋(TA Instruments社製、品番900794.901)で密封状態にして、測定試料を調製した後、示差走査熱量計DSCQ100(TA INSTRUMENTS製)を用いて室温から20℃/分で昇温し、350℃で3分間保持した後に測定試料パンを取出し、液体窒素に漬け込み、急冷させた。その後、液体窒素からサンプルを取出し、室温で30分間放置した後、再び、示差走査熱量計DSCQ100(TA INSTRUMENTS製)を用いて室温から20℃/分で昇温し、350℃で3分間保持した。その際の融解による吸熱のピーク温度を融点(Tm)とした。また、ガラス転移温度(Tg)は、2度目の昇温過程でガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
【0055】
〔ポリアミド10T11の合成(A-1)〕
デカメチレンジアミン8.26kg、テレフタル酸7.97kg、11−アミノウンデカン酸6.43kg、触媒としてジ亜リン酸ナトリウム9g、末端調整剤として酢酸40gおよびイオン交換水17.52kgを50リットルのオートクレーブに仕込み、常圧から0.05MPaまでN2で加圧し、放圧させ、常圧に戻した。この操作を3回行い、N2置換を行った後、攪拌下135℃、0.3MPaにて均一溶解させた。その後、溶解液を送液ポンプにより、連続的に供給し、加熱配管で240℃まで昇温させ、1時間、熱を加えた。その後、加圧反応缶に反応混合物が供給され、290℃に加熱され、缶内圧を3MPaで維持するように、水の一部を留出させ、低次縮合物を得た。その後、この低次縮合物を、溶融状態を維持したまま直接二軸押出し機(スクリュー径37mm、L/D=60)に供給し、樹脂温度を330℃、3箇所のベントから水を抜きながら溶融下で重縮合を進め、共重合ポリアミドを得た。得られた共重合ポリアミドは、10T/11=60/40(モル比)の組成で融点250℃、相対粘度2.6、ガラス転移温度75℃であった。
【0056】
〔ポリアミド10T11の合成(A-2)〕
デカメチレンジアミンの量を11.01kgに変更し、テレフタル酸の量を10.62kgに変更し、11−アミノウンデカン酸の量を3.22kgに変更した以外は合成例(A-1)と同様にして、共重合ポリアミドを合成した。得られた共重合ポリアミドは、10T/11=80/20(モル比)の組成で融点289℃、相対粘度2.6、ガラス転移温度93℃であった。
〔ポリアミド10T11の合成(A-3)〕
デカメチレンジアミンの量を12.38kgに変更し、テレフタル酸の量を11.95kgに変更し、11−アミノウンデカン酸の量を1.61kgに変更した以外は合成例(A-1)と同様にして、共重合ポリアミドを合成した。得られた共重合ポリアミドは、10T/11=90/10(モル比)の組成で融点302℃、相対粘度2.8、ガラス転移温度104℃であった。
〔ポリアミド10T12の合成(A-4)〕
11−アミノウンデカン酸3.22kgをウンデカンラクタム2.93kgに変更した以外は合成例(A-1)と同様にして、共重合ポリアミドを合成した。得られた共重合ポリアミドは、10T/12=80/20(モル比)の組成で融点288℃、相対粘度2.4、ガラス転移温度92℃であった。
【0057】
〔ポリアミド6T66の合成〕
WO06/112300号公報の実施例2に記載された方法に従い、テレフタル酸単位とアジピン酸単位、および1,6−ヘキサメチレンジアミン単位(テレフタル酸単位:アジピン酸単位のモル比が45:55)からなる共重合ポリアミドの合成を行った。得られた共重合ポリアミド樹脂の相対粘度は2.0、融点は295℃であった。
[ポリアミド66]
東レ社製 アミラン CM3007 相対粘度2.5
【0058】
〔スチレン系重合体(B-1)の製造〕
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器のオイルジャケット温度を、200℃に保った。一方、スチレン(以下、Stという。)89質量部、グリシジルメタクリレート(以下、GMAという。)11質量部、キシレン15質量部及び重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド(以下、DTBPという。)0.5質量部からなる単量体混合液を原料タンクに仕込んだ。一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給し、反応器の内容液質量が約580gで一定になるように反応液を反応器の出口から連続的に抜き出した。その時の反応器内温は、約210℃に保たれた。反応器内部の温度が安定してから36分経過した後から、抜き出した反応液を減圧度30kPa、温度250℃に保った薄膜蒸発機により連続的に揮発成分除去処理して、揮発成分をほとんど含まない重合体(B-1)を回収した。
得られた重合体(B-1)は、GPC分析(ポリスチレン換算値)によると質量平均分子量8500、数平均分子量3300であった。エポキシ価は670当量/10g、エポキシ価数(1分子当りの平均エポキシ基の数)は2.2であった。
【0059】
〔オレフィン系重合体(C)〕
無水マレイン酸変性エチレン・ブテン-1共重合体(三井化学社製、タフマーMH7020)
【0060】
[繊維状強化材]
ガラス繊維:日本電気硝子社製T-275H(カップリング剤:アミノシラン化合物)
[その他 添加剤]
安定剤1:臭化第二銅(ナカライテスク社製、試薬)
安定剤2:ヨウ化カリウム(ナカライテスク社製、試薬)
離型剤:モンタン酸エステルワックス(クラリアントジャパン社製、WE40)
【0061】
(2)[実施例、比較例のポリアミド系樹脂組成物の製造法]
上記した各原料を表1に示した配合比率(その他の添加剤は組成物に対して下記の含有率)に従い計量して、35φ二軸押出機(東芝機械社製)でシリンダ温度は、ポリアミドの融点+30℃に設定し、スクリュー回転数100rpmにて溶融混錬した。ガラス繊維以外の原料はあらかじめ混合しメインホッパーから投入し、ガラス繊維はベント口からサイドフィードで投入した。押出機から吐出されたストランドは水槽で冷却してストランドカッターでペレット化し、125℃にて5時間乾燥後、各種評価に供した。
その他の添加剤(安定剤1:0.04質量%、安定剤2:0.15質量%、離型剤:0.4質量%)。
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットは、射出成形機でそれぞれの評価試料を成形し、特性を評価した。
【0062】
(3)[ポリアミド樹脂組成物の評価法]
[評価サンプルの成形]
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダ温度は、樹脂の融点+20℃に設定した。金型は縦100mm、横100mm、厚み3mmtの平板作成用金型を使用した。金型温度は130℃に設定し射出速度50mm/秒、保圧30MPa、射出・保圧時間10秒、冷却時間15秒で成形した。
【0063】
[95%RH吸水率]
上記縦100mm、横100mm、厚み3mmの平板を用い、80℃・95%RH環境下にて静置し質量の経時変化をトレースして、質量の変化がなくなった時点で平衡吸水とみなして、質量を測定し、以下の式より求めた。
95%RH吸水率(%)=(95%RH吸水時の質量−乾燥時質量)/乾燥時質量×100
【0064】
[耐塩化カルシウム性評価法]
引張試験テストピース(ISOダンベル試験片)を80℃、95%RH環境下に12時間放置→成形片表面に2.5%塩化カルシウム溶液を塗布→100℃のオーブンで2時間処理→室温で10時間放置する、の処理を1サイクルとし、処理サイクルと成形片表面のクラックの発生までのサイクル回数を調べた。
【0065】
[耐不凍液性評価法]
引張試験テストピース(Iダンベル試験片)を130℃の不凍液(トヨタ純正Long Life Coolant)に24時間及び1000時間浸漬し、それぞれの強度T24及びT1000を求めた。
【0066】
[成形性評価法]
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダ温度は樹脂の融点+20℃、金型温度は120℃に設定し、フィルムゲートを有する縦100mm、横100mm、厚み1mmtの平板作成用金型を使用し、射出成形を実施した。射出速度50mm/sec、保圧30MPa、射出時間10秒、冷却時間10秒で成型を行い、成形性の良悪は以下のような評価を行った。
○:問題なく成型品が得られる。
△:時々スプルーが金型に残る。
×:離型性が不十分であり、成型品が金型に貼り付いたり変形する。
【0067】
[溶着性の評価法]
日本製鋼所社製成形機(J350E)と直径100cmで肉厚3mmの中空体をダイスライド法で溶着成形用金型を用い、シリンダ温度は樹脂の融点+30℃、金型温度は120℃に設定にて成形した。得られた中空体を水圧試験により接着部の破断強度を測定した。また、破断面の破壊状態を観察し、母材破壊の有無を調べた。
評価結果は表1に示した。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から明らかなように、実施例1〜6のポリアミド樹脂組成物は、低吸水性、耐不凍液性、対塩化カルシウム性に優れるとともに、120℃の金型温度でも安定な成形が可能で、溶着性にも優れ、成形加工性に優れる成形材料であることが理解できる。
比較例1の従来の半芳香族ポリアミド樹脂であるポリアミド6T66では、吸水性が比較的に高く、耐不凍液性に劣り、成形加工性にも劣る。比較例2のポリアミド66は、成形加工性が優れる以外は、高吸水性で耐不凍液性、対塩化カルシウム性が著しく劣る。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明で得られるポリアミド樹脂組成物は、高温のエンジン冷却水との接触、高温度のエンジンルームという環境下においても材料特性の低下が少なく、耐融雪塩性、耐不凍液性、低吸水性、成形性、溶着性に優れる。このため、自動車エンジン部品、特にラジエタータンクのトップおよびベースなどのラジエラータンク部品、冷却液リザーブタンク、ウォーターパイプ、ウォーターインレットパイプ、ウォーターアウトレットパイプ、ウォーターポンプハウジング、ウォーターポンプインペラ、バルブなどのウォーターポンプ部品など自動車エンジンルーム内で冷却水との接触下で使用されるエンジン冷却水系部品や、エアインテークパイプ等の吸気系部品用途に好適に使用される。また、本発明はエンジン冷却水系部品と同様の機能を要求される部材、例えば、床暖房用温水パイプや道路融雪用散水パイプその他の樹脂部品に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)デカンテレフタルアミド単位50〜98モル%、及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位50〜2モル%からなる共重合ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、無機充填材(D)を30〜150質量部含有する樹脂組成物であり、該樹脂組成物を射出成形して得た引張試験片(ASTM D638に準拠、1号試験片)が以下の(イ)及び(ロ)を満足することを特徴とするエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物。
(イ)不凍液(LLC)に130℃で24時間浸漬した後の引張強度Tが、少なくとも80Mpaである。
(ロ)不凍液(LLC)に130℃で1000時間浸漬した後の引張強度Tが、Tの80%以上である。
【請求項2】
共重合ポリアミド樹脂(A)が、(a)デカンテレフタルアミド単位75〜98モル%、及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位25〜2モル%からなる請求項1に記載のエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2のポリアミド樹脂組成物において、さらに共重合ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)を0.1〜10質量部、カルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を有するオレフィン系重合体(C)を0.1〜10質量部含有するエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
共重合ポリアミド樹脂(A)が、(c)前記(a)の構成単位以外のジアミンとジカルボン酸から得られる構成単位、または前記(b)の構成単位以外のアミノカルボン酸もしくはラクタムから得られる構成単位を最大30モル%まで含有する請求項1〜3のいずれかに記載のエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
共重合ポリアミド樹脂(A)のアミノ末端基が60当量/トン未満である請求項1〜4のいずれかに記載のエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を用いて得られたエンジン冷却水系部品。
【請求項7】
エンジン冷却水系部品が、ラジエラータンク部品、冷却液リザーブタンク、ウォーターパイプ、ウォーターインレットパイプ、ウォーターアウトレットパイプ、ウォーターポンプハウジング、ウォーターポンプインペラ、ウォーターバルブなどのウォーターポンプ部品のいずれかである請求項6に記載のエンジン冷却水系部品。

【公開番号】特開2012−136621(P2012−136621A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289504(P2010−289504)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】