説明

エンジン始動装置

【課題】リングギヤとピニオンギヤとの噛合伝達誤差を低減できるエンジン始動装置の提供を課題とする。
【解決手段】エンジンのクランクシャフト28に連結されるリングギヤ40と、回転軸方向に移動することでリングギヤ40に対して噛合及び離脱可能とされ、噛合時にクランクシャフト28に回転トルクを伝達するピニオンギヤ30と、を備えたエンジン始動装置10において、リングギヤ40を、周縁部全体に歯を有する第1歯車42と、周縁部の間隔を空けた複数の領域Sに歯を有し、第1歯車42と歯位相が略半ピッチずれて一体に形成された第2歯車44と、で構成し、ピニオンギヤ30を、周縁部全体に歯を有し、噛合時に第1歯車42と噛合する第3歯車32と、周縁部全体に歯を有し、第3歯車32と歯位相が略半ピッチずれて一体に形成され、噛合時に第2歯車44と噛合する第4歯車34と、で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン始動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン始動時には、スターターのピニオンギヤをクランクシャフトに連結されたリングギヤに噛合させ、そのクランクシャフトを回転駆動させるが、このとき、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合伝達誤差が起振力となって、クランキング音が発生してしまう問題がある。一方、ギヤ同士の噛合伝達誤差(起振力)を低減させるために、互いに噛合する各ギヤを、周縁部全体に歯が形成された2枚の歯車が歯位相を略半ピッチずらして一体化されたギヤとすることが、従来に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このようなギヤを、クランクシャフトに連結されるリングギヤとスターターのピニオンギヤに使用すると、それらの一体化された2枚の歯車の歯位相は略半ピッチずれているため、ピニオンギヤを、その回転軸方向に移動させようとしても、リングギヤの歯にピニオンギヤの歯が干渉して、移動させることができない。つまり、このような構成のギヤでは、ピニオンギヤを回転軸方向に移動させて、リングギヤに対して噛合及び離脱させることができないため、エンジン始動装置に適用することができない。
【特許文献1】特開2007−107697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、リングギヤとピニオンギヤとの噛合伝達誤差を低減できるエンジン始動装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のエンジン始動装置は、エンジンのクランクシャフトに連結されるリングギヤと、回転軸方向に移動することで前記リングギヤに対して噛合及び離脱可能とされ、噛合時に前記クランクシャフトに回転トルクを伝達するピニオンギヤと、を備えたエンジン始動装置において、前記リングギヤが、周縁部全体に歯を有する第1歯車と、周縁部の間隔を空けた複数の領域に歯を有し、前記第1歯車と歯位相が略半ピッチずれて一体に形成された第2歯車と、で構成され、前記ピニオンギヤが、周縁部全体に歯を有し、前記噛合時に前記第1歯車と噛合する第3歯車と、周縁部全体に歯を有し、前記第3歯車と歯位相が略半ピッチずれて一体に形成され、前記噛合時に前記第2歯車と噛合する第4歯車と、で構成されていることを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、リングギヤが、周縁部全体に歯を有する第1歯車と、周縁部の間隔を空けた複数の領域に歯を有し、第1歯車と歯位相が略半ピッチずれて一体に形成された第2歯車と、で構成され、ピニオンギヤが、周縁部全体に歯を有し、噛合時に第1歯車と噛合する第3歯車と、周縁部全体に歯を有し、第3歯車と歯位相が略半ピッチずれて一体に形成され、噛合時に第2歯車と噛合する第4歯車と、で構成されているので、リングギヤとピニオンギヤとが噛合したときに発生する噛合伝達誤差、即ち起振力を低減させることができる。したがって、その起振力が原因となって発生するクランキング音を低減させることができる。
【0007】
また、リングギヤにおいて、第1歯車に対して歯位相を略半ピッチずらした第2歯車は、周縁部の間隔を空けた複数の領域に(部分的に)歯が形成されているため、第2歯車には第4歯車と噛合しない領域(上記間隔部分)が存在する。したがって、そのときに、ピニオンギヤを回転軸方向に移動させることができ、これにより、ピニオンギヤをリングギヤに対して噛合又は離脱させることができる。つまり、リングギヤの第2歯車を本発明のように構成すると、リングギヤに対するピニオンギヤの噛合及び離脱が支障なく実行でき、エンジン始動装置に適用可能となる。
【0008】
また、請求項2に記載のエンジン始動装置は、請求項1に記載のエンジン始動装置において、前記リングギヤの第1歯車と前記ピニオンギヤの第3歯車のうち、少なくとも前記第1歯車が樹脂材料で形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、リングギヤの第1歯車とピニオンギヤの第3歯車のうち、少なくともリングギヤの第1歯車が樹脂材料で形成されているので、リングギヤとピニオンギヤとが噛合したときに発生する噛合伝達誤差、即ち起振力を更に低減させることができる。したがって、その起振力が原因となって発生するクランキング音を更に低減させることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、リングギヤとピニオンギヤとの噛合伝達誤差を低減できるエンジン始動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。図1はエンジン始動装置10におけるピニオンギヤ30及びリングギヤ40の構成を示す概略側断面図であり、図2(A)はピニオンギヤ30の回転軸方向から見た概略正面図、図2(B)はリングギヤ40の回転軸方向から見た概略正面図である。また、図3はリングギヤ40にピニオンギヤ30が噛合している状態を示す概略斜視図であり、図4はリングギヤ40に対してピニオンギヤ30が噛合又は離脱する様子を示す概略斜視図である。なお、各図において、矢印UPを上方向、矢印FRを前方向とし、ピニオンギヤ30及びリングギヤ40の回転軸方向を前後方向と同方向とする。
【0012】
まず最初に、エンジン始動装置10の概略構成を簡単に説明する。図1で示すように、自動車等のエンジン(図示省略)は、通常、金属製のピニオンギヤ30を回転駆動させるモーター14と、そのピニオンギヤ30を回転軸方向にスライド移動させ、金属製のリングギヤ40に対して噛合及び離脱させるマグネットスイッチ16と、を備えたスターター12によって始動される。
【0013】
モーター14の回転軸14Aには、回転軸方向(前後方向)にスライド移動可能なスライド部22が遊嵌されており、スライド部22の前側にはクラッチ部24を介してピニオンギヤ30が取り付けられている。そして、そのクラッチ部24よりも後側のスライド部22は回転不能に構成されており、クラッチ部24よりも前側のピニオンギヤ30は、モーター14の回転駆動力により回転可能に構成されている。
【0014】
マグネットスイッチ16は、前後方向(回転軸方向)に伸縮可能なプランジャー18を有しており、そのプランジャー18の前端部には、上下方向に延在するドライブレバー20の一端部20Aが接続されている。そして、ドライブレバー20の他端部20Bは、ピニオンギヤ30を回転軸方向(前後方向)にスライド移動させるスライド部22に接続されている。
【0015】
また、ドライブレバー20の中途部20Cは、前後方向(回転軸方向)に延在する支持部材26の前端部に枢支されており、ドライブレバー20の一端部20Aと他端部20Bは、その中途部20Cを中心に、互いに反対方向(前後逆方向)に揺動可能とされている。また、リングギヤ40は、モーター14の回転軸14Aと平行に設けられたクランクシャフト28に、ドライブプレート(フライホイール)(図示省略)を介して取り付けられており、回転軸方向(前方向)にスライド移動したピニオンギヤ30と噛合可能な位置関係に配設されている。
【0016】
以上のような構成のエンジン始動装置10において、次にピニオンギヤ30とリングギヤ40の構成について、図2〜図4も参照して詳細に説明する。なお、ここでは、軽自動車等に搭載する直列3気筒エンジンのエンジン始動装置10を例に採る。また、当然ながら、ピニオンギヤ30は、リングギヤ40よりも小径とされ、その歯数は、例えばリングギヤ40(メイン歯車42)が略100歯に対して、ピニオンギヤ30(メイン歯車32)が略10歯とされている。
【0017】
ピニオンギヤ30は、図1〜図4で示すように、周縁部全体に歯を有し、リングギヤ40との噛合時に、そのメイン歯車42(後述)と噛合するメイン歯車32と、周縁部全体に歯を有し、メイン歯車32と歯位相が略半ピッチずれて一体に形成され、リングギヤ40との噛合時に、そのサブ歯車44(後述)と噛合するサブ歯車34と、で構成されている。
【0018】
一方、リングギヤ40は、図1〜図4で示すように、周縁部全体に歯を有するメイン歯車42と、周縁部の間隔を空けた複数(本実施形態では直列3気筒エンジンを例に採っているため、3箇所)の領域S1〜S3のみに部分的に歯を有し、その領域S1〜S3における歯の歯位相がメイン歯車42と略半ピッチずれるようにして一体に形成されたサブ歯車44と、で構成されている。
【0019】
リングギヤ40のサブ歯車44において、歯が形成されている領域S1〜S3は、リングギヤ40に対してピニオンギヤ30が回転(駆動)トルクを伝達する回転角度期間D1〜D3(図5参照)である。つまり、スターター12のピニオンギヤ30が、リングギヤ40に回転(駆動)トルクを伝達し、そのリングギヤ40を回転駆動するのは、特定の回転角度期間D1〜D3だけであり、そのときだけ、サブ歯車34がサブ歯車44に噛合するように、サブ歯車44の歯の有る領域S1〜S3が規定されている。
【0020】
図5はクランクシャフト28の回転角度に対するリングギヤ40の回転速度(実線)とリングギヤ40とのギヤ比を換算した上で算出したピニオンギヤ30の回転速度(波線)を示すグラフである。本実施形態では、軽自動車等に搭載する直列3気筒エンジンを例に採って説明しているため、ピニオンギヤ30がリングギヤ40に対して回転(駆動)トルクを伝達する回転角度期間D、即ちリングギヤ40とのギヤ比を換算して算出したピニオンギヤ30の回転速度とリングギヤ40の回転速度がほぼ重なる回転角度期間Dが、クランクシャフト28が2回転する間に3回ある(D1〜D3)。
【0021】
なお、図2(B)で示すように、この場合、サブ歯車44の歯が形成されている領域S1〜S3の中心角αはそれぞれD1°〜D3°であり、サブ歯車44の歯が形成されていない領域T1〜T3の中心角βはそれぞれ120°−αとなっている。そして、各領域S、Tは交互に(等間隔になるように)3個ずつ形成されている。また、各領域S、Tの中心角α、βは、上記数値に限定されるものではなく、ピニオンギヤ30とリングギヤ40のギヤ比(直径)やスターター12の仕様等によって、適宜設計変更されるものである。
【0022】
以上のような構成のピニオンギヤ30とリングギヤ40を備えたエンジン始動装置10において、次にその作用について説明する。まず、イグニッションスイッチ(図示省略)を操作してスターター12をONにすると、マグネットスイッチ16の接点が閉じ、プランジャー18の前端部が後方向へ移動する。すると、ドライブレバー20の一端部20Aが後方向へ移動し、中途部20Cを中心に、ドライブレバー20の他端部20Bが前方向へ移動する。
【0023】
これにより、ドライブレバー20の他端部20Bが接続されているスライド部22が前方向に移動し、ピニオンギヤ30が回転軸方向前方側へスライド移動してリングギヤ40に噛合するが、このとき、リングギヤ40のサブ歯車44において、歯が形成されていない領域T1〜T3がピニオンギヤ30に対向する回転角度と予めなっていなくても、ピニオンギヤ30のメイン歯車32がリングギヤ40のサブ歯車44にまず噛合し、リングギヤ40を回転させるので、リングギヤ40のサブ歯車44において、歯が形成されていない領域T1〜T3がピニオンギヤ30に対向する回転角度となる。したがって、リングギヤ40に対してピニオンギヤ30を支障なく噛合させることができる(図4参照)。
【0024】
こうして、ピニオンギヤ30がリングギヤ40に噛合すると、モーター14によって回転駆動されているピニオンギヤ30によって、リングギヤ40がピニオンギヤ30とは逆方向に回転する(図3参照)。そして、ピニオンギヤ30から、その回転(駆動)トルクがリングギヤ40に伝達されると、ドライブプレート(フライホイール)(図示省略)を介してクランクシャフト28が回転し、エンジンが始動する。
【0025】
一方、エンジンが始動し(クランクシャフト28が回転し)、スターター12がOFFになると、モーター14の回転が停止するとともに、マグネットスイッチ16の接点が開き、プランジャー18の前端部が前方向へ移動して、ドライブレバー20の一端部20Aが前方向へ移動し、中途部20Cを中心に、ドライブレバー20の他端部20Bが後方向へ移動する。
【0026】
これにより、ドライブレバー20の他端部20Bが接続されているスライド部22が後方向に移動し、ピニオンギヤ30が回転軸方向後方側へスライド移動してリングギヤ40から離脱するが、このときも、リングギヤ40のサブ歯車44において、歯が形成されていない領域T1〜T3がピニオンギヤ30に対向する回転角度と予めなっていなくても、リングギヤ40の回転に伴って、リングギヤ40のサブ歯車44において、歯が形成されていない領域T1〜T3がピニオンギヤ30に対向する回転角度となる。したがって、リングギヤ40に対してピニオンギヤ30を支障なく離脱させることができる(図4参照)。
【0027】
なお、ピニオンギヤ30がリングギヤ40から離脱すると、当然ながらクランクシャフト28の回転駆動力はピニオンギヤ30に伝達されない。また、図3、図4ではリングギヤ40のサブ歯車44の形状を基準にしてピニオンギヤ30を描いているため、相対的にピニオンギヤ30の位置が異なって表現されているが、これは、サブ歯車44において、歯が形成されていない領域T1〜T3のときに、ピニオンギヤ30が回転軸方向(図4で示す矢印方向)にスライド移動することを解りやすく表現するためである。
【0028】
さて、リングギヤ40にピニオンギヤ30が噛合しているときで、ピニオンギヤ30からリングギヤ40に回転(駆動)トルクが作用している回転角度期間D1〜D3のときには、メイン歯車32とメイン歯車42とが噛合し、かつサブ歯車34とサブ歯車44とが噛合している。そして、そのメイン歯車32、42とサブ歯車34、44とは互いに歯位相が略半ピッチずれている。したがって、リングギヤ40とピニオンギヤ30との噛合時に、その噛合伝達誤差が相殺され、それによる起振力を低減させることができる。よって、その起振力が原因となって発生するクランキング音を低減させることができる。
【0029】
一方、メイン歯車32、42のみで噛合する回転角度期間、即ちメイン歯車32とメイン歯車42とが噛合し、サブ歯車34とサブ歯車44とが噛合しない回転角度期間(D1〜D3を除いた期間)においては、リングギヤ40とピニオンギヤ30の噛合伝達誤差が相殺されないが、リングギヤ40にピニオンギヤ30から回転(駆動)トルクが作用しないため、発生する噛合伝達誤差は小さく、それによる起振力も小さい。したがって、その起振力が原因となって発生するクランキング音も小さくなり、この場合、問題にはならない。
【0030】
また、上記したように、ピニオンギヤ30のサブ歯車34がリングギヤ40のサブ歯車44に噛合する領域S1〜S3では、ピニオンギヤ30を回転軸方向にスライド移動させることができず、リングギヤ40に対してピニオンギヤ30を噛合及び離脱させることができないが、ピニオンギヤ30のサブ歯車34がリングギヤ40のサブ歯車44と噛合しない領域T1〜T3では、ピニオンギヤ30を回転軸方向へスライド移動させることができるため、リングギヤ40に対してピニオンギヤ30を噛合及び離脱させることができる。
【0031】
つまり、リングギヤ40のサブ歯車44を、上記のように部分的に歯が有る構成にすれば、リングギヤ40に対するピニオンギヤ30の噛合及び離脱が支障なく実行でき、歯位相が略半ピッチずれた2重歯車とされたギヤでもエンジン始動装置10に適用可能となる。また、ピニオンギヤ30及びリングギヤ40は、通常、メイン歯車32、42もサブ歯車34、44も金属材料で形成されるが、メイン歯車32、42のうち、少なくともメイン歯車42は樹脂材料で形成してもよい。
【0032】
このように、メイン歯車32、42のうち、少なくともメイン歯車42を樹脂材料で形成すれば、噛合伝達誤差が相殺されない領域T1〜T3で発生する起振力をも低減させることが可能となるため、ピニオンギヤ30とリングギヤ40とが噛合したときに発生するクランキング音を更に低減させることができる。なお、リングギヤ40のメイン歯車42を樹脂製にしても、ピニオンギヤ30からリングギヤ40に回転(駆動)トルクが作用する回転角度期間D1〜D3では、金属製のサブ歯車34が金属製のサブ歯車44に噛合するため、回転(駆動)トルク伝達時におけるリングギヤ40の耐久強度は確保される。
【0033】
また、上記樹脂材料としては、例えばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのプラスチック材料が挙げられる。
【0034】
以上、説明したように、ピニオンギヤ30とリングギヤ40のそれぞれを、歯位相を略半ピッチずらしたメイン歯車32、42とサブ歯車34、44の組として一体に形成した(2重歯車とした)ので、ピニオンギヤ30とリングギヤ40の噛合伝達誤差、即ち起振力を低減させることができ、それが原因となって発生するクランキング音を低減させることができる。
【0035】
また、リングギヤ40では、メイン歯車42に対して歯位相を略半ピッチずらしたサブ歯車44の歯を、ピニオンギヤ30から回転(駆動)トルクが作用する領域S1〜S3のみに存在させ、歯を存在させない領域T1〜T3を形成するようにしたので、その領域T1〜T3では、ピニオンギヤ30の回転軸方向への移動、即ちリングギヤ40に対するピニオンギヤ30の噛合及び離脱動作が可能となる。したがって、このような2重歯車とされたギヤでもエンジン始動装置10に適用可能となる。
【0036】
また、上記実施形態では、軽自動車等に搭載する直列3気筒エンジンのエンジン始動装置10を例に採って説明したため、リングギヤ40のサブ歯車44において、歯が有る領域S1〜S3は、ピニオンギヤ30から回転(駆動)トルクが伝達される回転角度期間D1〜D3に対応して、等間隔に3箇所とされている。つまり、リングギヤ40のサブ歯車44に形成する歯の有る領域Sは、エンジンの種類によって、例えば4箇所になるなど、適宜設計変更されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】エンジン始動装置におけるピニオンギヤ及びリングギヤの構成を示す概略側断面図
【図2】(A)ピニオンギヤの回転軸方向から見た概略正面図、(B)リングギヤの回転軸方向から見た概略正面図
【図3】リングギヤにピニオンギヤが噛合している状態を示す概略斜視図
【図4】リングギヤに対してピニオンギヤが噛合又は離脱する様子を示す概略斜視図
【図5】クランクシャフトの回転角度に対するリングギヤの回転速度とリングギヤとのギヤ比を換算した上で算出したピニオンギヤの回転速度を示すグラフ
【符号の説明】
【0038】
10 エンジン始動装置
12 スターター
14 モーター
16 マグネットスイッチ
18 プランジャー
20 ドライブレバー
22 スライド部
24 クラッチ部
26 支持部材
28 クランクシャフト
30 ピニオンギヤ
32 メイン歯車(第3歯車)
34 サブ歯車(第4歯車)
40 リングギヤ
42 メイン歯車(第1歯車)
44 サブ歯車(第2歯車)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランクシャフトに連結されるリングギヤと、
回転軸方向に移動することで前記リングギヤに対して噛合及び離脱可能とされ、噛合時に前記クランクシャフトに回転トルクを伝達するピニオンギヤと、
を備えたエンジン始動装置において、
前記リングギヤが、
周縁部全体に歯を有する第1歯車と、
周縁部の間隔を空けた複数の領域に歯を有し、前記第1歯車と歯位相が略半ピッチずれて一体に形成された第2歯車と、
で構成され、
前記ピニオンギヤが、
周縁部全体に歯を有し、前記噛合時に前記第1歯車と噛合する第3歯車と、
周縁部全体に歯を有し、前記第3歯車と歯位相が略半ピッチずれて一体に形成され、前記噛合時に前記第2歯車と噛合する第4歯車と、
で構成されていることを特徴とするエンジン始動装置。
【請求項2】
前記リングギヤの第1歯車と前記ピニオンギヤの第3歯車のうち、少なくとも前記第1歯車が樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−24665(P2009−24665A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190847(P2007−190847)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)