エンジン試験装置及びエンジン試験方法
【課題】エンジン始動時や変速時などのエンジン回転速度の急変時における実車でのエンジン挙動を容易かつ的確に再現することのできるエンジン試験装置及びエンジン試験方法を提供する。
【解決手段】エンジン始動期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジン1に連結せずに動力計6の回転速度を変化させたときの同動力計6の電流指令値を動力計制御装置8の記憶部8aに記憶する。そして、供試エンジン1の初点火信号を基準として記憶部8aに記憶した電流指令値を動力計6に出力することで、供試エンジン1側から見た動力計6等の慣性重量を零として、実車と同様のエンジン回転速度変化を再現するようにした。
【解決手段】エンジン始動期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジン1に連結せずに動力計6の回転速度を変化させたときの同動力計6の電流指令値を動力計制御装置8の記憶部8aに記憶する。そして、供試エンジン1の初点火信号を基準として記憶部8aに記憶した電流指令値を動力計6に出力することで、供試エンジン1側から見た動力計6等の慣性重量を零として、実車と同様のエンジン回転速度変化を再現するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試エンジンに連結される動力計を備えるエンジン試験装置、及び動力計を供試エンジンに連結して行われるエンジン試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載エンジンの性能を検証する試験装置として、図9に示すような、試験対象である供試エンジン50の出力軸にカップリング51を介して動力計52を連結した構成の装置が用いられている。この種の試験装置では、車両駆動系の慣性相当重量や摩擦抵抗、走行抵抗を動力計52の負荷制御により再現し、供試エンジン50の実働負荷評価を行うようにしている。一般に、こうした試験装置の動力計52の制御は、軸トルクメーターで計測した供試エンジン50のトルクと目標トルクとを比較し、計測トルクと目標トルクとが一致するようにするように行われている。
【0003】
一方、従来には、特許文献1に記載のエンジン試験装置が提案されてもいる。この試験装置では、供試エンジン50側の制御を、開度指令によるスロットル開度のフィードフォワード制御とするようにしている。一方、動力計52側の制御は、求められた供試エンジン50のトルク信号を目標トルクとするフィードフォワード制御と、供試エンジン50の回転速度に応じて目標トルクを補正するフィードバック制御とにより行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−075613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、計測トルクと目標トルクとを一致させるべく、トルクによる動力計52のフィードバック制御を行う場合には、供試エンジン50がトルクを発生してから、動力計52の制御に反映されるまでに時間遅れが生じてしまう。この時間遅れは、クラッチなどの機械的な応答遅れ、動力計52及びその制御系の応答遅れ、動力計52を制御するコントローラーの演算遅れ、トルクの計測遅れ等の積み重なりによるものである。そのため、エンジン始動時等のエンジン回転速度の急変化時には、動力計52が実車相当の負荷を再現できなくなる。したがって、図10に示すように、試験では、実車におけるエンジン始動時のエンジン回転速度の立ち上がりを適切に再現できないようになる。
【0006】
一方、上記文献1に記載のエンジン試験装置では、動力計52のトルクをフィードフォワードにより制御しているため、上記のような時間遅れについては、問題とならないものとなっている。しかしながら、フィードフォワードのタイミングについては考慮されておらず、エンジン始動時の回転上昇をアシストしてしまったり、逆に抑え込んでしまったりすることがあり、実車でのエンジン挙動を再現できない虞がある。また上記のような動力計52の制御を行うには、スロットル開度とトルクとの関係を予め綿密に把握しておかなければならず、その関係を表したマップの作成に膨大な時間がかかってしまうものともなっている。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、エンジン始動時や変速時などのエンジン回転速度の急変時における実車でのエンジン挙動を容易かつ的確に再現することのできるエンジン試験装置及びエンジン試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、供試エンジンに連結される動力計を備えるエンジン試験装置としての請求項1に記載の発明は、実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、前記供試エンジンに連結せずに前記動力計の回転速度を変化させたときの同動力計の制御指令値を記憶する記憶手段と、前記期間の開始を示すエンジン出力信号を基準として前記記憶した制御指令値を前記動力計に出力する出力手段と、を備えるようにしている。
【0009】
上記構成では、実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジンに連結せずに動力計の回転速度を変化させたときの制御指令値が記憶手段に記憶される。この記憶される制御指令値は、動力計の慣性補償力に相当する動力を発生するために必要な制御指令値となる。
【0010】
そして上記構成では、エンジン挙動を再現する期間の開始を示すエンジン出力信号の検出に合わせて記憶された制御指令値が動力計に出力される。そのため、供試エンジン側から見た動力計の慣性重量を零とすることができ、実車と同様のエンジン回転速度変化を再現することができる。したがって、上記構成によれば、エンジン始動時や変速時などのエンジン回転の急変時における実車でのエンジン挙動を容易かつ的確に再現することができるようになる。
【0011】
なお、出力手段が制御指令値の出力時期を同期するために使用するエンジン出力信号としては、例えば請求項2によるように、点火信号、噴射信号、及び筒内圧信号のいずれかを使用することができる。
【0012】
また記憶手段の記憶する制御指令値は、請求項3によるように、供試エンジンに連結せずに、エンジン回転速度の変化に合わせて動力計を実際に駆動して求めることができる。また記憶手段の記憶する制御指令値は、請求項4によるように、動力計及びプロペラシャフトの慣性重量、エンジン回転加速度、変速機フリクションの少なくとも一つに基づく演算によっても、求めることができる。
【0013】
上記課題を解決するため、動力計を供試エンジンに連結して行われるエンジン試験方法としての請求項5に記載の発明は、実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化を取得するとともに、その期間の開始を示すエンジン出力信号を取得する工程と、取得したエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジンに連結せずに動力計の回転速度を変化させたときの同動力計の制御指令値を取得する工程と、供試エンジンと動力計とを連結した状態で供試エンジンを稼動させるとともに、上記期間の開始を示すエンジン出力信号を基準として取得した制御指令値を動力計に出力する工程と、を備えるようにしている。
【0014】
上記方法では、供試エンジンの試験に際してはまず、実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジンに連結せずに動力計の回転速度を変化させたときの制御指令値が、エンジン挙動再現期間の開始を示す供試エンジンの出力信号と併せて取得される。また上記方法では、供試エンジンに連結せずに、エンジン挙動再現期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて動力計の回転速度を変化させたときの同動力計の制御指令値が取得される。そして動力計と連結した状態で供試エンジンを稼動させるとともに、エンジン挙動再現期間の開始を示すエンジン出力信号の検出の検出を基準として取得した制御指令値が動力計に出力されるようになる。
【0015】
上記2番目の工程において取得される制御指令値は、動力計の慣性補償力に相当する動力を発生するために必要な制御指令値となる。そのため、供試エンジン側から見た動力計の慣性重量を零とすることができ、実車と同様のエンジン回転速度変化を再現することができる。したがって、上記方法によれば、エンジン始動時や変速時などのエンジン回転の急変時における実車でのエンジン挙動を容易かつ的確に再現することができるようになる。
【0016】
なお、制御指令値の出力時期を同期するために使用するエンジン出力信号としては、例えば請求項6によるように、点火信号、噴射信号、及び筒内圧信号のいずれかを使用することができる。
【0017】
またエンジン挙動再現期間の供試エンジン側から見た動力計の慣性重量を零とするために必要な同動力計の制御指令値は、請求項7によるように、供試エンジンに連結せずに、取得したエンジン回転速度の変化に合わせて動力計を実際に駆動することで取得することができる。また請求項8によるように、動力計及びプロペラシャフトの慣性重量、エンジン回転加速度、変速機フリクションの少なくとも一つに基づく演算によることでも取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係るエンジン試験装置の構成を模式的に示す略図。
【図2】同実施の形態の第1工程における試験装置の状態を示す略図。
【図3】同第1工程で取得されるエンジン始動時の点火信号、エンジン回転速度の推移を示すグラフ。
【図4】同実施の形態の第2工程における試験装置の状態を示す略図。
【図5】同第2工程で取得される動力計回転速度、電流指令値の推移を示すグラフ。
【図6】同実施の形態での第3工程の態様を示すグラフ。
【図7】同実施の形態の第4工程における試験装置の状態を示す略図。
【図8】同第4工程での点火信号、電流指令値、エンジン回転速度の推移を示すグラフ。
【図9】従来のエンジン試験装置の構成を模式的に示す略図。
【図10】従来のエンジン試験装置における実車及び試験でのエンジン回転速度の推移を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のエンジン試験装置及びエンジン試験方法を具体化した一実施の形態を、図1〜図8を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態のエンジン試験装置の構成を説明する。同図に示すように、このエンジン試験装置では、試験に供される供試エンジン1は、クラッチ2を介して手動変速機3に接続された状態で配設されている。そして手動変速機3から出されたプロペラシャフト4を、カップリング5を介して動力計(ダイナモメーター)6に接続することで、供試エンジン1と動力計6とが連結されるようになっている。なお、動力計6には、その駆動電流を調整するインバーター9が設けられている。またカップリング5には、同カップリング5に作用する軸トルクを検出する軸トルクメーター5aが設置されている。
【0020】
供試エンジン1は、エンジン制御装置7により制御されている。また動力計6は、動力計制御装置8により制御されている。動力計制御装置8には、軸トルクメーター5aの検出信号が入力されている。そして動力計制御装置8は、動力計6のインバーター9に電流指令値を出力することで、動力計6の制御を行うように構成されている。なお、動力計制御装置8には、試験用のデータが記憶される記憶部8aが設けられている。
【0021】
以上のように構成されたエンジン試験装置では、次の各工程を通じて供試エンジン1の試験を行っている。
・第1工程:実車でのエンジン挙動を再現する期間(ここではエンジン始動期間)における実車でのエンジン回転速度の変化を取得するとともに、その期間の開始を示す初点火信号取得する。
・第2工程:取得したエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジン1に連結せずに動力計6の回転速度を変化させたときの同動力計6の電流指令値を取得する。
・第3工程:第1工程で取得したエンジン回転速度と第2工程での動力計回転速度とを吹き上がりポイントで重ね合わせ、初点火信号と電流指令値の指令タイミングとの同期を取る。
・第4工程:動力計6と連結した状態で供試エンジン1を稼動させるとともに、初点火信号を基準として取得した電流指令値を動力計6に出力して供試エンジン1の試験を実施する。
【0022】
以下、各工程の詳細を説明する。
第1工程は、図2に示すように、供試エンジン1単体で行なわれる。第1工程では、単体で供試エンジン1を始動させ、図3に示すような点火信号及びエンジン回転速度の取得が行われる。そして本実施の形態では、供試エンジン1の初点火信号が、エンジン始動期間の開始を示すエンジン出力信号として取得される。
【0023】
第2工程は、図4に示すように、供試エンジン1を切り離した状態で行われる。この第2工程では、図5に示すように、先の第1工程で取得したエンジン回転速度の変化に合わせて動力計6の回転速度を変化させるように、動力計6の回転速度制御が行われる。そしてそうした回転制御下で動力計制御装置8がインバーター9に指令した電流指令値の取得が行われる。ここで取得した電流指令値は、動力計制御装置8の記憶部8aに記憶される。なお、ここで取得される電流指令値は、第1工程で取得したエンジン回転速度の変化に合わせて動力計6の回転速度を変化させたときの、プロペラシャフト4や動力計6等の慣性補償力を動力計6に発生させるために必要な電流指令値に相当するものとなっている。
【0024】
第3工程では、図6に示すように、第1工程で取得したエンジン回転速度と第2工程での動力計回転速度とを吹き上がりポイントで重ね合わせ、第1工程で取得した初点火信号の検出時期t1と第2工程で取得した電流指令値の指令タイミングとの同期を取ることがなされる。
【0025】
第4工程は、図7に示すように、供試エンジン1を、クラッチ2、手動変速機3、プロペラシャフト4及びカップリング5を介して動力計6に連結した状態で行われる。この第4工程では、供試エンジン1を始動させるとともに、動力計制御装置8に供試エンジン1の点火信号を入力させるようにしている。そして図8に示すように、供試エンジン1の初点火信号の検出時期t1を基準として、記憶部8aに記憶した電流指令値をインバーター9に出力する。なお、本実施の形態では、軸トルクメーター5aの検出結果に基づく動力計6のフィードバック制御によって、実車でのフリクションに相当する動力を動力計6に発生させる制御や、クラッチ2等のばね系の共振を抑える制御を併せ行うようにしている。
【0026】
こうした本実施の形態では、第4工程における供試エンジン1の試験に際し、動力計6が、そのときどきの回転速度に応じた同動力計6やプロペラシャフト4等の慣性補償力に相当する動力を発生する。そのため、試験中の供試エンジン1側から見た動力計6等の慣性重量を零とすることができ、実車と同様のエンジン回転速度変化を再現することができる。
【0027】
なお、以上説明した本実施の形態では、動力計制御装置8の記憶部8aが、供試エンジン1に連結せずに動力計6の回転速度を変化させたときの同動力計6の制御指令値(電流指令値)を記憶する記憶手段に相当する構成となっている。また本実施の形態では、動力計制御装置8が、エンジン挙動を再現する期間の開始を示すエンジン出力信号(初点火信号)の検出を基準として記憶した制御指令値(電流指令値)を動力計6(のインバーター9)に出力する出力手段に相当する構成となっている。
【0028】
以上の本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、実車でのエンジン挙動を再現する期間(ここではエンジン始動期間)における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジン1に連結せずに動力計6の回転速度を変化させたときの電流指令値を、動力計制御装置8の記憶部8aに記憶させるようにしている。ここで記憶される電流指令値は、動力計6等の慣性補償力に相当する動力を発生するために必要な電流指令値となる。そして本実施の形態では、エンジン始動期間の開始を示す初点火信号に合わせて記憶された電流指令値を動力計6に出力させている。そのため、供試エンジン1側から見た動力計6等の慣性重量を零とすることができ、実車と同様のエンジン回転速度変化を再現することができる。したがって、本実施の形態によれば、エンジン始動時のエンジン回転の急変時における実車でのエンジン挙動を容易かつ的確に再現することができるようになる。
【0029】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、実測した実車でのエンジン始動時のエンジン回転速度の変化に合わせて動力計6の回転速度を変化させ、そのときの動力計6に対する電流指令値を取得することで、試験時にフィードフォワード制御で動力計6に与える制御指令値を求めるようにしていた。なお、エンジン挙動再現期間の動力計6等の慣性補償力は、演算によっても求めることができる。例えばエンジン挙動再現期間の供試エンジン1の実車での回転速度が既知の場合には、下式(1)により、動力計6等の慣性補償力を求めることができる。なお、下式(1)の「Jd」は、動力計6やプロペラシャフト4等の慣性重量を、「α」は、供試エンジン1の回転加速度(エンジン回転速度の時間微分値)を、それぞれ示している。
【0030】
慣性補償力=Jd×α …(1)
また、エンジン挙動再現期間の供試エンジン1の実車での回転速度が既知でない場合には、筒内圧等から供試エンジン1の発生トルク(図示トルク)を求め、その値から供試エンジン1の回転加速度を求めることができ、下式(2)から動力計6等の慣性補償力を求めることができる。なお、下式(2)の「Ti」は、供試エンジン1の図示トルクを、「Tfe」は、エンジンフリクションを、「Je」は、供試エンジン1の慣性重量をそれぞれ示している。
【0031】
慣性補償力=Jd×(Ti−Tfe)/Je …(2)
そして、こうして求められた慣性補償力に相当する動力を発生するための動力計6の制御指令値を求め、初点火信号等に同期してその求めた制御指令値を動力計6に与えるようにすれば、実車でのエンジン挙動を適切に再現することができる。
【0032】
一方、自動変速機や無段変速機の搭載車を模擬する場合には、変速機フリクションについても考慮する必要がある。こうした場合に、試験中の供試エンジン1側から見た動力計6等の慣性重量を零とするために必要な動力計6の駆動力に変速機フリクションを差し引いたものが動力計6の理論駆動力となる。理論駆動力は、下式(3)により求めることができる。なお、下式(3)の「Jd」は、動力計6やプロペラシャフト4等の慣性重量を、「α」は、供試エンジン1の単体時(図2の状態)の回転加速度を、「Tf」は、変速機フリクションを、それぞれ示している。
【0033】
動力計理論駆動力=Jd×α−Tf …(3)
エンジン挙動再現期間の供試エンジン1の回転速度が既知でない場合には、供試エンジン1と動力計6とを切り離した状態でのエンジン回転速度を取得する。そして、その回転速度を目標とするように動力計6を回転制御したときの電流指令値をフィードフォワード制御で与えるとともに、動力計6の発生動力に変速機フリクションを追加することで、実車でのエンジン挙動を適切に再現することができる。一方、自動変速機や無断変速機の搭載車のエンジン回転速度が既知の場合には、その回転速度を目標に動力計6を回転制御したときの電流指令値を取得する。この場合、取得した制御指令値が変速機フリクションを含む動力計理論駆動力に相当する値となるため、その値をフィードフォワードで動力計6に与えるようにすれば良い。このように本発明のエンジン試験装置及びエンジン試験方法は、自動変速機や無段変速機の搭載車のエンジン挙動の再現にも用いることが可能である。
【0034】
なお、上記実施の形態は、更に以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、動力計6の発生動力をその駆動電流の調整により制御するようにしていたが、同様の制御は、駆動電圧の調整により行うこともできる。その場合には、電流指令値に代えて電圧指令値を制御指令値として用いることになる。
【0035】
・上記実施の形態では、エンジン挙動再現期間の開始を示すエンジン出力信号として、初点火信号を用いるようにしていたが、供試エンジン1の噴射信号や筒内圧信号なども同様の信号として用いることが可能である。
【0036】
・上記実施の形態では、エンジン始動時のエンジン挙動を再現するように試験を行う場合を説明したが、同様の手法は、変速時におけるエンジン挙動の再現にも用いることができる。この場合、エンジン挙動再現期間の開始を示すエンジン出力信号としては、シフト信号の変化後の最初の点火信号、噴射信号、筒内圧信号などを用いることができる。
【0037】
・本発明のエンジン試験装置及びエンジン試験方法は、例えば図9に示したような変速機やクラッチを介在させずに供試エンジンと動力計とを連結した構成のエンジン試験装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…供試エンジン、2…クラッチ、3…手動変速機、4…プロペラシャフト、5…カップリング、5a…軸トルクメーター、6…動力計、7…エンジン制御装置、8…動力計制御装置、8a…記憶部、9…インバーター、50…供試エンジン、51…カップリング、52…動力計。
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試エンジンに連結される動力計を備えるエンジン試験装置、及び動力計を供試エンジンに連結して行われるエンジン試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載エンジンの性能を検証する試験装置として、図9に示すような、試験対象である供試エンジン50の出力軸にカップリング51を介して動力計52を連結した構成の装置が用いられている。この種の試験装置では、車両駆動系の慣性相当重量や摩擦抵抗、走行抵抗を動力計52の負荷制御により再現し、供試エンジン50の実働負荷評価を行うようにしている。一般に、こうした試験装置の動力計52の制御は、軸トルクメーターで計測した供試エンジン50のトルクと目標トルクとを比較し、計測トルクと目標トルクとが一致するようにするように行われている。
【0003】
一方、従来には、特許文献1に記載のエンジン試験装置が提案されてもいる。この試験装置では、供試エンジン50側の制御を、開度指令によるスロットル開度のフィードフォワード制御とするようにしている。一方、動力計52側の制御は、求められた供試エンジン50のトルク信号を目標トルクとするフィードフォワード制御と、供試エンジン50の回転速度に応じて目標トルクを補正するフィードバック制御とにより行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−075613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、計測トルクと目標トルクとを一致させるべく、トルクによる動力計52のフィードバック制御を行う場合には、供試エンジン50がトルクを発生してから、動力計52の制御に反映されるまでに時間遅れが生じてしまう。この時間遅れは、クラッチなどの機械的な応答遅れ、動力計52及びその制御系の応答遅れ、動力計52を制御するコントローラーの演算遅れ、トルクの計測遅れ等の積み重なりによるものである。そのため、エンジン始動時等のエンジン回転速度の急変化時には、動力計52が実車相当の負荷を再現できなくなる。したがって、図10に示すように、試験では、実車におけるエンジン始動時のエンジン回転速度の立ち上がりを適切に再現できないようになる。
【0006】
一方、上記文献1に記載のエンジン試験装置では、動力計52のトルクをフィードフォワードにより制御しているため、上記のような時間遅れについては、問題とならないものとなっている。しかしながら、フィードフォワードのタイミングについては考慮されておらず、エンジン始動時の回転上昇をアシストしてしまったり、逆に抑え込んでしまったりすることがあり、実車でのエンジン挙動を再現できない虞がある。また上記のような動力計52の制御を行うには、スロットル開度とトルクとの関係を予め綿密に把握しておかなければならず、その関係を表したマップの作成に膨大な時間がかかってしまうものともなっている。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、エンジン始動時や変速時などのエンジン回転速度の急変時における実車でのエンジン挙動を容易かつ的確に再現することのできるエンジン試験装置及びエンジン試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、供試エンジンに連結される動力計を備えるエンジン試験装置としての請求項1に記載の発明は、実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、前記供試エンジンに連結せずに前記動力計の回転速度を変化させたときの同動力計の制御指令値を記憶する記憶手段と、前記期間の開始を示すエンジン出力信号を基準として前記記憶した制御指令値を前記動力計に出力する出力手段と、を備えるようにしている。
【0009】
上記構成では、実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジンに連結せずに動力計の回転速度を変化させたときの制御指令値が記憶手段に記憶される。この記憶される制御指令値は、動力計の慣性補償力に相当する動力を発生するために必要な制御指令値となる。
【0010】
そして上記構成では、エンジン挙動を再現する期間の開始を示すエンジン出力信号の検出に合わせて記憶された制御指令値が動力計に出力される。そのため、供試エンジン側から見た動力計の慣性重量を零とすることができ、実車と同様のエンジン回転速度変化を再現することができる。したがって、上記構成によれば、エンジン始動時や変速時などのエンジン回転の急変時における実車でのエンジン挙動を容易かつ的確に再現することができるようになる。
【0011】
なお、出力手段が制御指令値の出力時期を同期するために使用するエンジン出力信号としては、例えば請求項2によるように、点火信号、噴射信号、及び筒内圧信号のいずれかを使用することができる。
【0012】
また記憶手段の記憶する制御指令値は、請求項3によるように、供試エンジンに連結せずに、エンジン回転速度の変化に合わせて動力計を実際に駆動して求めることができる。また記憶手段の記憶する制御指令値は、請求項4によるように、動力計及びプロペラシャフトの慣性重量、エンジン回転加速度、変速機フリクションの少なくとも一つに基づく演算によっても、求めることができる。
【0013】
上記課題を解決するため、動力計を供試エンジンに連結して行われるエンジン試験方法としての請求項5に記載の発明は、実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化を取得するとともに、その期間の開始を示すエンジン出力信号を取得する工程と、取得したエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジンに連結せずに動力計の回転速度を変化させたときの同動力計の制御指令値を取得する工程と、供試エンジンと動力計とを連結した状態で供試エンジンを稼動させるとともに、上記期間の開始を示すエンジン出力信号を基準として取得した制御指令値を動力計に出力する工程と、を備えるようにしている。
【0014】
上記方法では、供試エンジンの試験に際してはまず、実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジンに連結せずに動力計の回転速度を変化させたときの制御指令値が、エンジン挙動再現期間の開始を示す供試エンジンの出力信号と併せて取得される。また上記方法では、供試エンジンに連結せずに、エンジン挙動再現期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて動力計の回転速度を変化させたときの同動力計の制御指令値が取得される。そして動力計と連結した状態で供試エンジンを稼動させるとともに、エンジン挙動再現期間の開始を示すエンジン出力信号の検出の検出を基準として取得した制御指令値が動力計に出力されるようになる。
【0015】
上記2番目の工程において取得される制御指令値は、動力計の慣性補償力に相当する動力を発生するために必要な制御指令値となる。そのため、供試エンジン側から見た動力計の慣性重量を零とすることができ、実車と同様のエンジン回転速度変化を再現することができる。したがって、上記方法によれば、エンジン始動時や変速時などのエンジン回転の急変時における実車でのエンジン挙動を容易かつ的確に再現することができるようになる。
【0016】
なお、制御指令値の出力時期を同期するために使用するエンジン出力信号としては、例えば請求項6によるように、点火信号、噴射信号、及び筒内圧信号のいずれかを使用することができる。
【0017】
またエンジン挙動再現期間の供試エンジン側から見た動力計の慣性重量を零とするために必要な同動力計の制御指令値は、請求項7によるように、供試エンジンに連結せずに、取得したエンジン回転速度の変化に合わせて動力計を実際に駆動することで取得することができる。また請求項8によるように、動力計及びプロペラシャフトの慣性重量、エンジン回転加速度、変速機フリクションの少なくとも一つに基づく演算によることでも取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係るエンジン試験装置の構成を模式的に示す略図。
【図2】同実施の形態の第1工程における試験装置の状態を示す略図。
【図3】同第1工程で取得されるエンジン始動時の点火信号、エンジン回転速度の推移を示すグラフ。
【図4】同実施の形態の第2工程における試験装置の状態を示す略図。
【図5】同第2工程で取得される動力計回転速度、電流指令値の推移を示すグラフ。
【図6】同実施の形態での第3工程の態様を示すグラフ。
【図7】同実施の形態の第4工程における試験装置の状態を示す略図。
【図8】同第4工程での点火信号、電流指令値、エンジン回転速度の推移を示すグラフ。
【図9】従来のエンジン試験装置の構成を模式的に示す略図。
【図10】従来のエンジン試験装置における実車及び試験でのエンジン回転速度の推移を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のエンジン試験装置及びエンジン試験方法を具体化した一実施の形態を、図1〜図8を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態のエンジン試験装置の構成を説明する。同図に示すように、このエンジン試験装置では、試験に供される供試エンジン1は、クラッチ2を介して手動変速機3に接続された状態で配設されている。そして手動変速機3から出されたプロペラシャフト4を、カップリング5を介して動力計(ダイナモメーター)6に接続することで、供試エンジン1と動力計6とが連結されるようになっている。なお、動力計6には、その駆動電流を調整するインバーター9が設けられている。またカップリング5には、同カップリング5に作用する軸トルクを検出する軸トルクメーター5aが設置されている。
【0020】
供試エンジン1は、エンジン制御装置7により制御されている。また動力計6は、動力計制御装置8により制御されている。動力計制御装置8には、軸トルクメーター5aの検出信号が入力されている。そして動力計制御装置8は、動力計6のインバーター9に電流指令値を出力することで、動力計6の制御を行うように構成されている。なお、動力計制御装置8には、試験用のデータが記憶される記憶部8aが設けられている。
【0021】
以上のように構成されたエンジン試験装置では、次の各工程を通じて供試エンジン1の試験を行っている。
・第1工程:実車でのエンジン挙動を再現する期間(ここではエンジン始動期間)における実車でのエンジン回転速度の変化を取得するとともに、その期間の開始を示す初点火信号取得する。
・第2工程:取得したエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジン1に連結せずに動力計6の回転速度を変化させたときの同動力計6の電流指令値を取得する。
・第3工程:第1工程で取得したエンジン回転速度と第2工程での動力計回転速度とを吹き上がりポイントで重ね合わせ、初点火信号と電流指令値の指令タイミングとの同期を取る。
・第4工程:動力計6と連結した状態で供試エンジン1を稼動させるとともに、初点火信号を基準として取得した電流指令値を動力計6に出力して供試エンジン1の試験を実施する。
【0022】
以下、各工程の詳細を説明する。
第1工程は、図2に示すように、供試エンジン1単体で行なわれる。第1工程では、単体で供試エンジン1を始動させ、図3に示すような点火信号及びエンジン回転速度の取得が行われる。そして本実施の形態では、供試エンジン1の初点火信号が、エンジン始動期間の開始を示すエンジン出力信号として取得される。
【0023】
第2工程は、図4に示すように、供試エンジン1を切り離した状態で行われる。この第2工程では、図5に示すように、先の第1工程で取得したエンジン回転速度の変化に合わせて動力計6の回転速度を変化させるように、動力計6の回転速度制御が行われる。そしてそうした回転制御下で動力計制御装置8がインバーター9に指令した電流指令値の取得が行われる。ここで取得した電流指令値は、動力計制御装置8の記憶部8aに記憶される。なお、ここで取得される電流指令値は、第1工程で取得したエンジン回転速度の変化に合わせて動力計6の回転速度を変化させたときの、プロペラシャフト4や動力計6等の慣性補償力を動力計6に発生させるために必要な電流指令値に相当するものとなっている。
【0024】
第3工程では、図6に示すように、第1工程で取得したエンジン回転速度と第2工程での動力計回転速度とを吹き上がりポイントで重ね合わせ、第1工程で取得した初点火信号の検出時期t1と第2工程で取得した電流指令値の指令タイミングとの同期を取ることがなされる。
【0025】
第4工程は、図7に示すように、供試エンジン1を、クラッチ2、手動変速機3、プロペラシャフト4及びカップリング5を介して動力計6に連結した状態で行われる。この第4工程では、供試エンジン1を始動させるとともに、動力計制御装置8に供試エンジン1の点火信号を入力させるようにしている。そして図8に示すように、供試エンジン1の初点火信号の検出時期t1を基準として、記憶部8aに記憶した電流指令値をインバーター9に出力する。なお、本実施の形態では、軸トルクメーター5aの検出結果に基づく動力計6のフィードバック制御によって、実車でのフリクションに相当する動力を動力計6に発生させる制御や、クラッチ2等のばね系の共振を抑える制御を併せ行うようにしている。
【0026】
こうした本実施の形態では、第4工程における供試エンジン1の試験に際し、動力計6が、そのときどきの回転速度に応じた同動力計6やプロペラシャフト4等の慣性補償力に相当する動力を発生する。そのため、試験中の供試エンジン1側から見た動力計6等の慣性重量を零とすることができ、実車と同様のエンジン回転速度変化を再現することができる。
【0027】
なお、以上説明した本実施の形態では、動力計制御装置8の記憶部8aが、供試エンジン1に連結せずに動力計6の回転速度を変化させたときの同動力計6の制御指令値(電流指令値)を記憶する記憶手段に相当する構成となっている。また本実施の形態では、動力計制御装置8が、エンジン挙動を再現する期間の開始を示すエンジン出力信号(初点火信号)の検出を基準として記憶した制御指令値(電流指令値)を動力計6(のインバーター9)に出力する出力手段に相当する構成となっている。
【0028】
以上の本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、実車でのエンジン挙動を再現する期間(ここではエンジン始動期間)における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、供試エンジン1に連結せずに動力計6の回転速度を変化させたときの電流指令値を、動力計制御装置8の記憶部8aに記憶させるようにしている。ここで記憶される電流指令値は、動力計6等の慣性補償力に相当する動力を発生するために必要な電流指令値となる。そして本実施の形態では、エンジン始動期間の開始を示す初点火信号に合わせて記憶された電流指令値を動力計6に出力させている。そのため、供試エンジン1側から見た動力計6等の慣性重量を零とすることができ、実車と同様のエンジン回転速度変化を再現することができる。したがって、本実施の形態によれば、エンジン始動時のエンジン回転の急変時における実車でのエンジン挙動を容易かつ的確に再現することができるようになる。
【0029】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、実測した実車でのエンジン始動時のエンジン回転速度の変化に合わせて動力計6の回転速度を変化させ、そのときの動力計6に対する電流指令値を取得することで、試験時にフィードフォワード制御で動力計6に与える制御指令値を求めるようにしていた。なお、エンジン挙動再現期間の動力計6等の慣性補償力は、演算によっても求めることができる。例えばエンジン挙動再現期間の供試エンジン1の実車での回転速度が既知の場合には、下式(1)により、動力計6等の慣性補償力を求めることができる。なお、下式(1)の「Jd」は、動力計6やプロペラシャフト4等の慣性重量を、「α」は、供試エンジン1の回転加速度(エンジン回転速度の時間微分値)を、それぞれ示している。
【0030】
慣性補償力=Jd×α …(1)
また、エンジン挙動再現期間の供試エンジン1の実車での回転速度が既知でない場合には、筒内圧等から供試エンジン1の発生トルク(図示トルク)を求め、その値から供試エンジン1の回転加速度を求めることができ、下式(2)から動力計6等の慣性補償力を求めることができる。なお、下式(2)の「Ti」は、供試エンジン1の図示トルクを、「Tfe」は、エンジンフリクションを、「Je」は、供試エンジン1の慣性重量をそれぞれ示している。
【0031】
慣性補償力=Jd×(Ti−Tfe)/Je …(2)
そして、こうして求められた慣性補償力に相当する動力を発生するための動力計6の制御指令値を求め、初点火信号等に同期してその求めた制御指令値を動力計6に与えるようにすれば、実車でのエンジン挙動を適切に再現することができる。
【0032】
一方、自動変速機や無段変速機の搭載車を模擬する場合には、変速機フリクションについても考慮する必要がある。こうした場合に、試験中の供試エンジン1側から見た動力計6等の慣性重量を零とするために必要な動力計6の駆動力に変速機フリクションを差し引いたものが動力計6の理論駆動力となる。理論駆動力は、下式(3)により求めることができる。なお、下式(3)の「Jd」は、動力計6やプロペラシャフト4等の慣性重量を、「α」は、供試エンジン1の単体時(図2の状態)の回転加速度を、「Tf」は、変速機フリクションを、それぞれ示している。
【0033】
動力計理論駆動力=Jd×α−Tf …(3)
エンジン挙動再現期間の供試エンジン1の回転速度が既知でない場合には、供試エンジン1と動力計6とを切り離した状態でのエンジン回転速度を取得する。そして、その回転速度を目標とするように動力計6を回転制御したときの電流指令値をフィードフォワード制御で与えるとともに、動力計6の発生動力に変速機フリクションを追加することで、実車でのエンジン挙動を適切に再現することができる。一方、自動変速機や無断変速機の搭載車のエンジン回転速度が既知の場合には、その回転速度を目標に動力計6を回転制御したときの電流指令値を取得する。この場合、取得した制御指令値が変速機フリクションを含む動力計理論駆動力に相当する値となるため、その値をフィードフォワードで動力計6に与えるようにすれば良い。このように本発明のエンジン試験装置及びエンジン試験方法は、自動変速機や無段変速機の搭載車のエンジン挙動の再現にも用いることが可能である。
【0034】
なお、上記実施の形態は、更に以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、動力計6の発生動力をその駆動電流の調整により制御するようにしていたが、同様の制御は、駆動電圧の調整により行うこともできる。その場合には、電流指令値に代えて電圧指令値を制御指令値として用いることになる。
【0035】
・上記実施の形態では、エンジン挙動再現期間の開始を示すエンジン出力信号として、初点火信号を用いるようにしていたが、供試エンジン1の噴射信号や筒内圧信号なども同様の信号として用いることが可能である。
【0036】
・上記実施の形態では、エンジン始動時のエンジン挙動を再現するように試験を行う場合を説明したが、同様の手法は、変速時におけるエンジン挙動の再現にも用いることができる。この場合、エンジン挙動再現期間の開始を示すエンジン出力信号としては、シフト信号の変化後の最初の点火信号、噴射信号、筒内圧信号などを用いることができる。
【0037】
・本発明のエンジン試験装置及びエンジン試験方法は、例えば図9に示したような変速機やクラッチを介在させずに供試エンジンと動力計とを連結した構成のエンジン試験装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…供試エンジン、2…クラッチ、3…手動変速機、4…プロペラシャフト、5…カップリング、5a…軸トルクメーター、6…動力計、7…エンジン制御装置、8…動力計制御装置、8a…記憶部、9…インバーター、50…供試エンジン、51…カップリング、52…動力計。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試エンジンに連結される動力計を備えるエンジン試験装置において、
実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、前記供試エンジンに連結せずに前記動力計の回転速度を変化させたときの同動力計の制御指令値を記憶する記憶手段と、
前記期間の開始を示すエンジン出力信号を基準として前記記憶した制御指令値を前記動力計に出力する出力手段と、
を備えることを特徴とするエンジン試験装置。
【請求項2】
前記出力手段は、前記エンジン出力信号として、点火信号、噴射信号、及び筒内圧信号のいずれかを使用する
請求項1に記載のエンジン試験装置。
【請求項3】
前記制御指令値は、前記供試エンジンに連結せずに、前記エンジン回転速度の変化に合わせて前記動力計を実際に駆動して求められる
請求項1又は2に記載のエンジン試験装置。
【請求項4】
前記制御指令値は、前記動力計及びプロペラシャフトの慣性重量、供試エンジンの回転加速度、変速機フリクションの少なくとも一つに基づく演算により求められる
請求項1又は2に記載のエンジン試験装置。
【請求項5】
動力計を供試エンジンに連結して行われるエンジン試験方法において、
実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化を取得するとともに、その期間の開始を示すエンジン出力信号を取得する工程と、
取得したエンジン回転速度の変化に合わせて、前記供試エンジンに連結せずに前記動力計の回転速度を変化させたときの同動力計の制御指令値を取得する工程と、
前記動力計と連結した状態で前記供試エンジンを稼動させるとともに、前記期間の開始を示す前記エンジン出力信号を基準として前記取得した制御指令値を前記動力計に出力する工程と、
を備えるエンジン試験方法。
【請求項6】
前記エンジン出力信号として、点火信号、噴射信号、及び筒内圧信号のいずれかを使用する
請求項5に記載のエンジン試験方法。
【請求項7】
前記制御指令値は、前記供試エンジンに連結せずに、前記取得したエンジン回転速度の変化に合わせて前記動力計を実際に駆動して取得される
請求項5又は6に記載のエンジン試験方法。
【請求項8】
前記制御指令値は、前記動力計及びプロペラシャフトの慣性重量、供試エンジンの回転加速度、変速機フリクションの少なくとも一つに基づく演算により取得される
請求項5又は6に記載のエンジン試験方法。
【請求項1】
供試エンジンに連結される動力計を備えるエンジン試験装置において、
実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化に合わせて、前記供試エンジンに連結せずに前記動力計の回転速度を変化させたときの同動力計の制御指令値を記憶する記憶手段と、
前記期間の開始を示すエンジン出力信号を基準として前記記憶した制御指令値を前記動力計に出力する出力手段と、
を備えることを特徴とするエンジン試験装置。
【請求項2】
前記出力手段は、前記エンジン出力信号として、点火信号、噴射信号、及び筒内圧信号のいずれかを使用する
請求項1に記載のエンジン試験装置。
【請求項3】
前記制御指令値は、前記供試エンジンに連結せずに、前記エンジン回転速度の変化に合わせて前記動力計を実際に駆動して求められる
請求項1又は2に記載のエンジン試験装置。
【請求項4】
前記制御指令値は、前記動力計及びプロペラシャフトの慣性重量、供試エンジンの回転加速度、変速機フリクションの少なくとも一つに基づく演算により求められる
請求項1又は2に記載のエンジン試験装置。
【請求項5】
動力計を供試エンジンに連結して行われるエンジン試験方法において、
実車でのエンジン挙動を再現する期間における実車でのエンジン回転速度の変化を取得するとともに、その期間の開始を示すエンジン出力信号を取得する工程と、
取得したエンジン回転速度の変化に合わせて、前記供試エンジンに連結せずに前記動力計の回転速度を変化させたときの同動力計の制御指令値を取得する工程と、
前記動力計と連結した状態で前記供試エンジンを稼動させるとともに、前記期間の開始を示す前記エンジン出力信号を基準として前記取得した制御指令値を前記動力計に出力する工程と、
を備えるエンジン試験方法。
【請求項6】
前記エンジン出力信号として、点火信号、噴射信号、及び筒内圧信号のいずれかを使用する
請求項5に記載のエンジン試験方法。
【請求項7】
前記制御指令値は、前記供試エンジンに連結せずに、前記取得したエンジン回転速度の変化に合わせて前記動力計を実際に駆動して取得される
請求項5又は6に記載のエンジン試験方法。
【請求項8】
前記制御指令値は、前記動力計及びプロペラシャフトの慣性重量、供試エンジンの回転加速度、変速機フリクションの少なくとも一つに基づく演算により取得される
請求項5又は6に記載のエンジン試験方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−194117(P2012−194117A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59603(P2011−59603)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
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