説明

エンジン試験装置

【課題】本発明は、様々なサイズのリングギヤの試験に対応でき、エンジン試験測定誤差を抑制することができる、エンジン試験装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るエンジン試験装置100は、駆動部60と、チャック部20と、弾性部材38とを備えている。駆動部60は、主軸50を回転させる。チャック部20は、リングギヤ15を把持し、主軸50に接続され、当該主軸50の回転に伴いリングギヤ15を回転させる。また、チャック部20は、リングギヤ15を把持する爪部21を有する。当該爪部21におけるリングギヤ15と接触する領域は、平坦形状である。また、弾性部材38は、チャック部20に固定されており、爪部21にリングギヤ15を把持する動力を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの回転試験を行うことができるエンジン試験装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
エンジンの生産過程において、燃料を燃焼させることなく、エンジンの回転試験を行うエンジン試験装置が既に存在する。自動車エンジンの動力軸をエンジン外部の当該エンジン試験装置から高速回転させることにより、エンジンの回転性能を検査することができる。
【0003】
エンジンの回転軸に装着されたリングギヤを直接掴んで(直接チャックして)、当該リングギヤを回転させることによりエンジンの回転試験を行うエンジン試験装置に関する先行技術として、たとえば特許文献1が存在する。
【0004】
特許文献1に係る技術では、駆動装置に連動する出力軸に、軸心に沿って移動のみ自在な可動体を外嵌し、当該可動体側に、エンジンの主軸に取付けたリングギヤに外周側から係脱自在な係合具を設けている。当該係合具は、作動部材と、当該作動部材に樹脂部材を介して取付けた爪体とから構成されている。
【0005】
当該特許文献1に係る技術では、回転試験の際に生じる衝撃等を樹脂部材で吸収できるので、エンジン試験の際に発生する音を正しく確認できる、という効果を奏することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−96627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に係る技術では、駆動(試験)装置の爪部は、リングギヤの歯の山谷部分と係合する(噛み合う)形状となっていた。
【0008】
しかしながら、このような形状の爪部を備える駆動装置を採用した場合には、様々なサイズのリングギヤに、駆動装置が対応できないという問題が生じる。つまり、駆動装置で試験できるリングギヤのサイズが特定のものに限られる。
【0009】
また、特許文献1に係る技術では、リングギヤを把持する動力を与える部分(シリンダ装置)は、リングギヤの回転試験を行う回転系とは別に、回転を行わない静止系において設けられている。
【0010】
しかしながら、このようにシリンダ装置を静止系に設けることにより、回転系と静止系とを連結する部材が多々存在することとなる。したがって、当該回転系と静止系を含む駆動装置でエンジンの回転試験を行った場合には、当該連結部材に起因して、トルク試験等が正確に測定できない。つまり、特許文献1に係る技術では、測定誤差が発生するという問題が生じる。
【0011】
そこで、本発明は、様々なサイズのリングギヤの試験に対応でき、トルク試験などのエンジン試験測定誤差を抑制することができる、エンジン試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のエンジン試験装置は、主軸を回転させる駆動部と、エンジンのリングギヤを把持し、前記主軸に接続され、前記主軸の回転と共に回転し、当該回転に伴い把持している前記リングギヤを回転させるチャック部と、弾性部材とを、備えており、前記チャック部は、前記リングギヤを把持する、少なくとも2以上の爪部を、有しており、各前記爪部は、前記リングギヤと接触する面が平坦形状を有しており、前記弾性部材は、前記チャック部に固定されており、前記爪部に前記リングギヤを把持する動力を与えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載のエンジン試験装置は、エンジンのリングギヤを把持し、前記主軸に接続され、前記主軸の回転と共に回転し、当該回転に伴い把持している前記リングギヤを回転させるチャック部と、弾性部材とを、備えている。さらに、前記チャック部は、前記リングギヤを把持する、少なくとも2以上の爪部を、有している。さらに、各前記爪部は、前記リングギヤと接触する面が平坦形状を有している。さらに、前記弾性部材は、前記チャック部に固定されており、前記爪部に前記リングギヤを把持する動力を与える。
【0014】
このように、リングギヤと接触する部分の爪部形状が平坦形状であるので、リングギヤの歯の凹凸部分と爪部との噛み合いを無視することが出来る。したがって、様々なサイズのリングギヤの試験に対応できるエンジン試験装置を提供することができる。
【0015】
さらに、爪部にリングギヤを把持する動力を与える弾性部材は、チャック部と共に、主軸の回転に伴い回転する。このように、リングギヤを把持する動力を与える部材が静止系に存在しないので、チャック部が存在する回転系と静止系とを接続する部材を省略することができる。そして、当該部材の省略により、エンジンのトルク試験などのエンジン試験測定誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】エンジン試験装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図2】エンジン試験装置のチャック部付近の具体的構成を示す斜視図である。
【図3】エンジン試験装置のチャック部付近の具体的構成を示す側面図である。
【図4】爪部およびレバー部付近の具体的構成を示す拡大断面図である。
【図5】弾性部材付近の具体的構成を示す拡大断面図である。
【図6】チャック部(爪部)がリングギヤを把持する動作を説明するための断面図である。
【図7】主軸の回転軸方向から見た、チャック部(爪部)がリングギヤを把持する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0018】
<実施の形態>
図1は、本発明に係るエンジン試験装置100の概略構成を模式的に示す図である。図1に示すように、当該エンジン試験装置100は、駆動部60、主軸50およびチャック部20を備えている。なお、図1では図示を省略しているが、エンジン試験装置100は、バネなどの弾性部材38、把持力伝達部40およびレバー部30なども備えている。これらの部材38,40は、図2,3,4において図示されている。
【0019】
駆動部60では動力が発生し、当該動力により主軸50が回転する。当該回転の回転軸は、当該主軸50と一致する。
【0020】
また、チャック部20は、図1に示すように、エンジン10に配設されているリングギヤ15を直接把持する。ここで、チャック部20は、少なくとも2以上の爪部21を備えている。なお、当該爪部21によるリングギヤ15の把持方向(第一の方向と称する)は、平面形状が円形であるリングギヤ15の当該円形の中心に向かう方向である。
【0021】
当該チャック部20は、上記主軸50に接続されている。これより、主軸50が回転すると、当該主軸50と共にチャック部20自身も回転する。当該チャック部20の回転により、当該チャック部20に把持されているリングギヤ15も回転する。なお、リングギヤ15は、シャフト11を介してエンジン10と接続されており、当該シャフト11がリングギヤ15の回転軸となる。
【0022】
上記図1に示すエンジン試験装置100では、エンジン10において燃料を燃焼させることなく、エンジンの性能試験(より具体的に、リングギヤ15の回転に関連した各性能試験)を実施される。
【0023】
図2は、エンジン試験装置100のチャック部20付近の具体的構成を示す斜視図である。また、図3は、エンジン試験装置100のチャック部20付近の具体的構成を示す側面図である。また、図4は、図2のA−A断面の構成を模式的に示す図である。さらに、図5は、図2のB−B断面の構成を模式的に示す図である。
【0024】
図4では、爪部21、レバー部30および把持力伝達部40の具体的断面構成が示されている。また、図5では、チャック部20(より具体的に、爪部支持部22)の一部構成および、弾性部材38および把持力伝達部40の具体的断面構成が示されている。
【0025】
図2に示すように、チャック部20は、少なくとも2以上の爪部21(図2の構成例では、爪部21は3つ配設されている)と、爪部支持部22とから、構成されている。爪部支持部22は、主軸50に接続されており、各爪部21を支持している。各爪部21は、爪部支持部22に対して可動であり、当該可動により、チャック部20におけるリングギヤ15の着脱が可能となる。ここで、各爪部21は、リングギヤ15の周縁部分において把持する。
【0026】
各爪部21は、円周方向において等間隔で、爪部支持部22に配設されている。図2の構成例では、爪部21は3つであり、当該爪部21は、円周方向において120°間隔で、爪部支持部22に配設されている。爪部支持部22に対して各爪部21が当該円周の中心方向(第一の方向)に可動することにより、リングギヤ15は各爪部21により把持される(具体的に、各爪部21は、リングギヤ15の円周縁を把持する)。これに対して、爪部支持部22に対して各爪部21が当該円周の法線方向に可動することにより、各爪部21によるリングギヤ15の把持が解除される。
【0027】
また、図4から分かるように、各爪部21は、把持部21aと、連接部21bと、第一の係合部21cとを備えている。図2,3,4から視認できるように、把持部21aは、リングギヤ15と接触する面は、平坦形状を有している。
【0028】
また、把持部21aと連接部21bとは、断面形状がL字となるように、連接されている。つまり、連接部21bは、把持部21aと連接されており、把持部21aに対してリングギヤの把持方向(図4の上下方向)である上記第一の方向に延設されている。
【0029】
また、図4に示すように、連接部21bには、第一の係合部21cとなる凹部が形成されている。当該第一の係合部21cは、連接部21bにおいて、後述する把持力伝達部40を構成する平坦部40aに面する側に形成されている。
【0030】
また、図2,3,5から分かるように、爪部支持部22と後述する把持力伝達部40との間には、複数の弾性部材38が配設されている。各弾性部材38は、主軸50の軸方向と平行な方向に配設されている。各弾性部材38は、チャック部20に固定されている。したがって、各弾性部材38は、チャック部20と共に主軸50の回転に伴い回転する。また、各弾性部材38は、各爪部21にリングギヤ15を把持する動力を与える。
【0031】
図2,3で図示されている把持力伝達部40は、図4,5に示すように、平坦部40aと連接部40bとから成る。平坦部40aは、平面視外形が円板である。また、図2,3,5に示すように、チャック部20(より具体的には、爪部支持部33)と把持力伝達部40(より具体的には、平坦部40a)との間に、各弾性部材38が配設される。そして、爪部支持部22の端面に弾性部材38の一方端が固定され、当該弾性部材38の他方端は平坦部40aに固定される。
【0032】
ここで、チャック部20の爪部支持部22は弾性部材38の固定端となり、弾性部材38の弾性力に従い、弾性方向(図3,4,5の左右方向)に把持力伝達部40が移動する。つまり、弾性部材38の伸縮方向に移動するのは、把持力伝達部40であり、チャック部20は、弾性部材38の伸縮方向には移動しない。また、弾性部材38は、チャック部20に固定されるので、主軸50の回転により、チャック部20と共に弾性部材38も回転する。
【0033】
また、図4,5に示すように、断面形状がL字状となるように、当該平坦部40aと連接部40bとが連接されている。なお、連接部40bは、主軸50の方向と平行な方向に延びている。また、図4,5に示すように、当該連接部40bには、第二の係合部40cとなる溝が掘られている。当該第二の係合部40cは、主軸の非対面側の連接部40bに形成されている。
【0034】
なお上記の通り、爪部21は、第一の方向(リングギヤ15を把持する方向であり、図4の上下方向)に可動する。これに対して、把持力伝達部40は、上記把持の方向である第一の方向と垂直な方向(図3,4,5における左右方向であり、第二の方向と称する)に可動する。
【0035】
本願明細書では、図3乃至6における左右方向を第二の方向と称する。また、図4,6における上下方向を第一の方向と称する。より具体的に、第一の方向は、装着されるリングギヤ15の中心に向かう方向および当該中心から放射状に拡がる方向である。また、第二の方向は、弾性部材38が伸びる方向および縮まる方向である。
【0036】
また、図2,3,4に示すように、エンジン試験装置100は、レバー部30と錘35を備えている。
【0037】
レバー部30は、爪部21の各々に対応して、個別に配設される。したがって、図2の構成では、爪部21は3個であるので、レバー部30も3個であり、各レバー30と爪部21とは一対一に対応している。なお、レバー部30は、下記回動可能に、爪部支持部22に支持されている。
【0038】
また、図3,4に示すように、各レバー部30は、回転軸31と二つの凸部32,33を有している。当該回転軸31の軸方向は、上記第一の方向および上記第二の方向の共に垂直な方向である。つまり、レバー部30は、図4の紙面上において時計回り、反時計回りに回動する。また、レバー部30の外周に設けられた第一の凸部32は、爪部21に設けられた第一の係合部21cと係合する。また、レバー部30の外周に設けられた第二の凸部33は、把持力伝達部40に設けられた第二の係合部40cと係合する。
【0039】
レバー部30は、爪部21および把持力伝達部40と係合している。したがって、図4に示すように、爪部21の第一の方向の運動、把持力伝達部40の第二の方向の運動、および回転軸31を軸としたレバー部30の回転運動は、各々連動する。
【0040】
また、各レバー部30には、錘35が各々配設されている。図4から分かるように、レバー部30の爪部21および把持力伝達部40と対面する側(爪部21および把持力伝達部40と係合している係合面)には、各凸部32,33が設けられている。一方、各レバー部30の当該係合面とは反対の面には、錘35が夫々配設されている。
【0041】
具体的に、当該係合面は、円弧を形成しており、当該円弧上に各凸部32,33が設けられている。当該係合面において、第一の凸部32は、第二の凸部33と90°離れた位置に配設されている。また、レバー30の係合面に対向する部分は、平坦形状であり、当該平坦形状面に、錘35が配設される。
【0042】
ここで、各レバー部30に設けられる各錘35の重量は、当該レバー部30に対応している爪部21の重量以上である。つまり、図4に示すように、爪部21、レバー部30および錘35は、1セットであるが、当該1セットにおいて、錘35の重量(Mg)は爪部21の重量(Ml)以上である(Mg≧Ml)。
【0043】
次に、エンジン試験装置100の動作について説明する。
【0044】
まず、リングギヤ15の把持の動作について説明する。
【0045】
図3を参照し、通常状態では、弾性部材38の弾性力により、把持力伝達部40を図面右方向(第二の方向)に押す力が働く。ここで、上記の通り、爪部支持部20は弾性部材38の固定端であり、エンジン試験装置100に対して不動である。上記力が把持力伝達部40に働くと、レバー部30は、反時計回りに回転し、結果として爪部21は、図4の下方向(第一の方向)に移動した状態となる。
【0046】
当該状態において、リングギヤ15をチャック部20に装着する場合には、図3に示された部材55を、図3の左側に押す力を印加する。これにより、部材55と係合する把持力伝達部40(具体的には、平坦部40a)も図4の左方向に移動する。つまり、弾性部材38を縮める力を、把持力伝達部40に与える。
【0047】
すると、図4において、把持力伝達部40は図面左側(第二の方向)に働くと、レバー部30は、時計回りに回転し、結果として爪部21は、図4の上方向(第一の方向)に移動した状態となる。当該状態における、爪部21、レバー部30および把持力伝達部40の位置を、図6では点線の輪郭で示している。
【0048】
当該状態において、リングギヤ15をチャック部20における把持の位置まで移動させる。そして、部材55に印加していた力を解放する。すると、弾性部材38の弾性力により、把持力伝達部40が図4の図面右方向(第二の方向)に移動し、レバー部30は反時計回りに回転し、結果として爪部21は、図4の下方向(第一の方向)に移動する。以上により、リングギヤ15は、爪部21により把持される。
【0049】
当該把持の状態における、爪部21、レバー部30および把持力伝達部40の位置を、図6では実線の輪郭で示している。また、当該把持の状態を、シャフト11の配設方向から見た図が、図7である。図7に示すように、リングギヤ15は、3点の爪部21により把持されている。
【0050】
なお、様々な径のリングギヤ15を把持でき、しかも当該リングギヤを強固に把持できるように、弾性部材38の弾性力および把持力伝達部40−レバー部30−爪部21の可動範囲を設計する必要がある。ここで、弾性力があまりに強すぎると、大きな径のリングギヤ15を把持すると、リングギヤ15に機械的損傷を及ぼす可能性がある。したがって、エンジン試験装置100が把持できる最大径のリングギヤ15を把持したとしても、当該リングギヤ15が機械的損傷を受けない程度に、弾性部材38の弾性力の最大値を考慮する必要がある。
【0051】
また、回転試験中に、爪部21において、当該爪部21が把持しているリングギヤ15がすべることは望ましくない。そこで、回転試験中における、爪部21における様々なサイズのリングギヤ15の滑りが生じないように、弾性部材38の弾性力を選択する必要がある。
【0052】
次に、当該リングギヤ15は爪部21により把持されている状態おいて、図1に示した駆動部60を駆動させる。すると、主軸50が回転し、当該主軸50に接続されているチャック部20も主軸50を軸として回転する。チャック部20が回転するので、爪部21により把持されているリングギヤ15も回転し、エンジン10で燃料を燃焼させることなく、エンジン10における回転動作に起因した各種性能試験が実施することができる。
【0053】
なお、爪部支持部22には、爪部21が支持されているだけでなく、弾性部材38やレバー部30(錘35も含む)も固定・支持されている。さらに、第二の方向に移動可能な把持力伝達部40には、当該弾性部材38の他方端が固着されている。したがって、主軸50が回転すると、リングギヤ15やチャック部20だけでなく、弾性部材38、レバー部30(錘35も含む)および把持力伝達部40なども、主軸50を軸方向として回転する。
【0054】
エンジン試験装置100における回転運動試験が終了すると、上記のように、部材55に力を印加し、爪部21によりリングギヤ15の把持を解消させる(図6の点線輪郭の状態参照)。これにより、リングギヤ15をエンジン試験装置100から取り外すことができる。
【0055】
以上のように、本実施の形態に係るエンジン試験装置100では、リングギヤ15を直接チャックするチャック部20の爪部21は、平坦形状を有する。つまり、爪部21の把持部21aにおけるリングギヤ15と接触する面は、平坦形状である。
【0056】
したがって、当該爪部21を有するチャック部20は、様々サイズのリングギヤ15を把持することができる。
【0057】
つまり、仮に爪部21の把持部21aにおけるリングギヤ15と接触する面に凹凸形状が形成されており、把持部21aとリングギヤ15の歯とを噛み合せる構成を採用したとする。この場合には、リングギヤ15のサイズが異なると、歯のピッチ・大きさ等も変化するので、チャック部20が把持することができるリングギヤ15の種類が限定されてしまう。
【0058】
しかしながら、本発明では、爪部21の把持部21aにおけるリングギヤ15と接触する面は、平坦形状であるので、リングギヤ15の歯との噛み合い等を考慮する必要がなくなる。したがって、本発明に係るチャック部20は、様々な種類・サイズのリングギヤ15を把持することが可能となる。
【0059】
なお、図2,7では、爪部21が3点である形態を図示しているが、爪部21の個数は、少なくとも2以上であれば、他の点数であっても良い。また、隣接する爪部21間の間隔は、均等であることが望ましい。
【0060】
また、上記形状の爪部21を用いてリングギヤ15を把持し、回転試験を行うことができるようにするためには、当該回転試験中においても爪部21に一定の把持力を持たせることが必要である。
【0061】
そこで、本実施の形態に係るエンジン装置100では、チャック部20に固定されており、爪部21にリングギヤ15を把持する動力を与える弾性部材38を、備えている。
【0062】
したがって、当該弾性部材38の弾性力により、回転試験中においても、爪部21に対してリングギヤ15を把持する一定の動力を印加し続けることが可能となる。また、弾性部材38は、チャック部20に固定されている。したがって、チャック部20と共に弾性部材38も回転する。このように、把持力を印加する弾性部材38も回転系に属することから、エンジン10のトルク測定などを精度良く測ることができる。
【0063】
つまり、上記でも説明したように、把持力を印加するシリンダ装置が静止系に設けられた構成の場合には、チャック部が属する回転系と当該静止系とを連結する部材が多々存在することとなる。したがって、当該回転系と静止系を含む駆動装置でエンジンの回転試験を行った場合には、当該連結部材に起因して、トルク試験等において測定誤差が発生する。
【0064】
これに対して、本実施の形態に係るエンジン試験装置100では、把持力を与える弾性部材38は、チャック部20と同じ回転系に属する。したがって、上記のような多数の連結部材等が不要となる。よって、エンジン10の回転試験において、誤差を抑制した測定が可能となる。
【0065】
また、本実施の形態に係るエンジン試験装置100では、チャック部20は、爪部21と爪部支持部22とを有する。爪部支持部22は、把持の方向である第一の方向への移動が可能なように、爪部21を支持する。
【0066】
したがって、チャック部20による様々なサイズのリングギヤ15の把持が、容易に実施できる。
【0067】
また、本実施の形態に係るエンジン試験装置100は、チャック部20に対して回動可能に支持されるレバー部30と、第一の方向と異なる第二の方向に移動可能な把持力伝達部40とを、備えている。そして、弾性部材38の弾性力に従い、把持力伝達部40−レバー部30−爪部21が連動して可動する。
【0068】
したがって、チャック部20に固定され当該チャック部20と共に回転する弾性部材38の弾性力を、把持力伝達部40およびレバー部30を介して、爪部21に伝達することができる。
【0069】
また、本実施の形態に係るエンジン試験装置100では、爪部21は第一の係合部21cを有し、把持力伝達部40は第二の係合部40cを有している。そして、レバー部30は、第一の係合部21cおよび第二の係合部40cと係合し、回動可能である。
【0070】
したがって、爪部支持部21bと把持力伝達部40との間に配設された弾性部材38は、以下のような簡単な連動機構にて、爪部21にリングギヤ15を把持する動力を与えることができる。つまり、当該弾性部材38は、弾性力に従い把持力伝達部40を第二の方向に可動させる。これにより、レバー部30が回転し、当該回転により、爪部21を第一の方向に可動させることができる。
【0071】
また、本実施の形態に係るエンジン試験装置100では、各レバー部30には、錘が各々設けられている。
【0072】
したがって、エンジン10に対する回転試験の際に、爪部21によりリングギヤ15の把持力が低下することを抑制できる。しかも、レバー部30に、単に錘35を設けるだけである。したがって、極めて簡単な構成により、当該把持力低下抑制の効果を図ることができる。
【0073】
つまり、チャック部20が回転すると、爪部21に遠心力が働き、爪部21による把持力が減じられる。そこで、本発明では、レバー部30に錘35が配設されており、当該レバー部30および錘35についてチャック部30の回転に伴い回転する。したがって、錘35に対しても遠心力が働く。当該錘35に働く遠心力により、図4,6においてレバー部30は、反時計回りに回ろうとする力が増加する。当該力の増加は、爪部21の第一の方向(把持の方向であり、図4,6の下方向)への力増加に変換される。つまり、たとえ、チャック部20が回転したとしても、錘35の配設により(極めて簡単な構成のより)、爪部21の把持力が減じられることを抑制することができる。
【0074】
ここで、上記とは異なり、レバー部30自身に錘35としての機能を持たせても良い。
【0075】
さらに、本実施の形態に係るエンジン試験装置100では、各レバー部30に設けられる各錘35の重量は、当該レバー部30に対応している爪部21の重量以上である。
【0076】
したがって、エンジン10に対する回転試験の際に爪部21に働く遠心力以上の遠心力を、錘35が配設されているレバー部30に働かせることができる。よって、たとえ回転試験を実施したとしても、爪部21によるリングギヤを把持する力が減じられることを完全に防止できる。
【符号の説明】
【0077】
10 エンジン
11 シャフト
15 リングギヤ
20 チャック部
21 爪部
21a 把持部
21b 連接部
21c 第一の係合部
22 爪部支持部
30 レバー部
31 回転軸
32 第一の凸部
33 第二の凸部
35 錘
38 弾性部材
40 把持力伝達部
40a 平坦部
40b 連接部
40c 第二の係合部
50 主軸
60 駆動部
100 エンジン試験装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸を回転させる駆動部と、
エンジンのリングギヤを把持し、前記主軸に接続され、前記主軸の回転と共に回転し、当該回転に伴い把持している前記リングギヤを回転させるチャック部と、
弾性部材とを、備えており、
前記チャック部は、
前記リングギヤを把持する、少なくとも2以上の爪部を、有しており、
各前記爪部は、
前記リングギヤと接触する面が平坦形状を有しており、
前記弾性部材は、
前記チャック部に固定されており、前記爪部に前記リングギヤを把持する動力を与える、
ことを特徴とするエンジン試験装置。
【請求項2】
前記チャック部は、
前記把持の方向である第一の方向に移動可能に、前記爪部を支持する爪部支持部を、さらに有している、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン試験装置。
【請求項3】
前記チャック部に対して、回動可能に支持されるレバー部と、
前記弾性部材と接続され、前記第一の方向と異なる第二の方向に移動可能な把持力伝達部とを、さらに備えており、
前記弾性部材の弾性力に従い、前記把持力伝達部、前記レバー部および前記爪部が連動して可動することにより、前記弾性部材は、前記爪部に前記把持の動力を与える、
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジン試験装置。
【請求項4】
前記爪部は、
第一の係合部を、有しており、
前記把持力伝達部は、
第二の係合部を、有しており、
前記レバー部は、
前記第一の方向および前記第二の方向の両方に垂直な方向に回転軸を有し、前記第一の係合部および前記第二の係合部と係合し、
前記弾性部材は、
前記爪部支持部と前記把持力伝達部との間に配設され、弾性力に従い前記把持力伝達部を前記第二の方向に可動せしめ、前記把持力伝達部の可動を通じて、前記レバー部が前記回転軸で回転することにより、前記爪部を前記第一の方向に可動させる前記把持の動力を与える、
ことを特徴とする請求項3に記載のエンジン試験装置。
【請求項5】
前記レバー部は、
前記爪部の各々に対応して、個別に配設される、
ことを特徴とする請求項4に記載のエンジン試験装置。
【請求項6】
各前記レバー部には、
錘が各々設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載のエンジン試験装置。
【請求項7】
各前記レバー部に設けられる各錘の重量は、
当該レバー部に対応している前記爪部の重量以上である、
ことを特徴とする請求項6に記載のエンジン試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−173232(P2012−173232A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37897(P2011−37897)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】