説明

エンドグルカナーゼの製造法

【課題】効率的な枯草菌由来の完全長BglCの製造法、及びそれにより得られる新規な完全長BglCを提供する。
【解決手段】枯草菌168株からaprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子の中から選択される8つ以上のプロテアーゼ遺伝子を欠失させた枯草菌変異株を用いて、枯草菌bglC遺伝子を発現させ、完全長BglCを枯草菌細胞外に分泌させる、BglCの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤用酵素として有用な枯草菌由来のエンド−β−1,4−グルカナーゼの製造法、及びそれにより得られる新規なエンド−β−1,4−グルカナーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースは植物細胞壁の主成分であり、衣料、紙、建築材料などに有効利用されるバイオマスの代表的存在である。またバイオマスの有効的な利用方法として、セルロースを分解する酵素であるセルラーゼを用い、糖類やエネルギー物質に変換しようとする試みが、従来から行われている。ゆえにセルラーゼに関する研究は、世界中の研究機関において多岐にわたり行われている。これらの研究対象となるセルラーゼは、一般的に中酸性における最適反応pHを有し、結晶性セルロースを良好に分解できる真菌類や嫌気性細菌由来の酵素が中心となっている。
【0003】
一方、掘越によって好アルカリ性バチルス属細菌由来のアルカリセルラーゼが見出されて以来(例えば特許文献1、非特許文献1参照)、困難とされていたセルラーゼの衣料用重質洗剤への応用が可能となり、好アルカリ性バチルス属細菌の生産するアルカリセルラーゼ(例えば特許文献2〜4参照)が衣料用洗剤へ配合されるに至った。しかし、これらのアルカリセルラーゼは、結晶性セルロースをほとんど分解しない、所謂エンドグルカナーゼであることが判っている。洗剤用酵素が有すべき重要な性質としては、繊維を分解せず(即ち繊維を傷めず)に汚れを落とす性質、あるいはその性質を促進する性質等が挙げられ、かかる性質を有する酵素は非常に有用なアルカリセルラーゼといえる。一方、衣類は何回も洗浄を繰返すことで毛羽立ちや色褪せが生じるため、このような現象を防止するため、結晶性セルロース分解活性を有し、且つアルカリ性領域で作用するセルラーゼの提供も望まれている。
【0004】
更に近年、遺伝子工学の発展に伴い、洗剤用酵素の生産も遺伝子組換えにより大量生産されるようになっている。アルカリセルラーゼについても例外ではなく、既に数多くの遺伝子がクローニング、塩基配列決定され、また実生産に用いられている例も存在する。
【0005】
セルラーゼとは、植物の細胞壁の主成分であるセルロースのβ−1,4グリコシド結合を加水分解する酵素の総称であり、当該セルラーゼに属する代表的な酵素としては、エンドグルカナーゼ、エキソセロビオヒドラーゼ及びβ-D-グルコシダーゼが知られている。
【0006】
これらのセルラーゼのうち、エンド−β−1,4−グルカナーゼ(以下「BglC」と称する)は、セルロースのβ−1,4−グリコシド結合を無作為に加水分解するセルラーゼである。
【0007】
枯草菌由来のBglCは、Mackayらによって1986年に、枯草菌(PAP115株)のBglCタンパク質をコードする遺伝子としてクローニングされ、また当該タンパク質が499アミノ酸からなる(推定分子量55kDa、シグナル配列を除くと52kDa)ことが明らかにされている(非特許文献2)。Wolfらは1995年に、枯草菌168株のBglCをコードする遺伝子(eglS)をクローニングし、それが上記PAP115株のBglCをコードする遺伝子と同一であることを明らかにしている(非特許文献3)。Loらは1988年に、枯草菌及び大腸菌において当該遺伝子を発現させたこと、並びに、発現した52kDaのBglCがその後、細胞外においてC末端側のプロセシングを受け、それぞれ32kDa(以下「不完全長BglC」と称する)及び35.8kDaになることを報告している(非特許文献4)。上記52kDaのBglC(以下「完全長BglC」と称する)については、これまで効率的な製造方法が存在せず、また前躯体と考えられていたこともあり、酵素としての性質についても十分に解明されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭50−28515号公報
【特許文献2】特公昭60−23158号公報
【特許文献3】特公平6−030578号公報
【特許文献4】米国特許第4945053号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Horikoshi&Akiba,Alkalophilic Microorganisms,Springer,Berlin(1982)
【非特許文献2】Mackayら、Nucleic Acid Research,1986,Vol.14(22),page9159−70
【非特許文献3】Wolfら、Microbiology,1995,Vol.141,page281−90
【非特許文献4】Loら、Applied Environmental Microbiology,September,1988,page2287−92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、効率的な枯草菌由来の完全長BglCの製造法、及びそれにより得られる新規な完全長BglCの提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来技術に鑑み、完全長BglCの製造方法及びそれにより得られた完全長BglCに関して本発明者らが鋭意研究を行った結果、特定のプロテアーゼを欠失する枯草菌株を用いて組換え生産した場合に、上記完全長BglCが効率的に発現され、バイオマスである粉砕パルプに対する高い糖化活性を有し、更に当該完全長BglCが不完全長のBglCと比較し有利な性質を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(13)に係るものである。
(1) 枯草菌168株からaprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子の中から選択される8つ以上のプロテアーゼ遺伝子を欠失させた枯草菌変異株を用い、枯草菌bglC遺伝子を発現させ、完全長BglCを枯草菌細胞外に分泌させることを特徴とする、BglCの製造法。
(2) 前記8つ以上のプロテアーゼ遺伝子が、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子であるか、又は、aprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子である、上記(1)記載の製造法。
(3) 前記枯草菌変異株が、枯草菌BglCをコードする枯草菌bglC遺伝子がプラスミドにより導入されている、上記(1)又は(2)記載の製造法。
(4) 前記枯草菌bglC遺伝子が、シグナル配列を含む前駆体遺伝子として導入されていることを特徴とする、上記(1)から(3)のいずれかに記載の製造法。
(5) 前記シグナル配列が、バチルス属細菌由来のアルカリセルラーゼのシグナル配列である、上記(4)に記載の製造法。
(6) 前記バチルス属細菌由来のアルカリセルラーゼのシグナル配列が、バチルス属細菌KSM−S237株(FERM BP−7875)又はバチルス属細菌KSM−64株(FERM BP−2886)由来のアルカリセルラーゼのシグナル配列である、上記(5)に記載の製造法。
(7) 前記完全長BglCが、52kDaの分子量を有するBglCである、上記(1)から(6)のいずれかに記載の製造法。
(8) 前記シグナル配列を含む前駆体遺伝子が、配列番号16で示される塩基配列、又は当該塩基配列のいずれかと70%以上の同一性を有する塩基配列を有する、上記(4)から(7)のいずれかに記載の製造法。
(9) 枯草菌168株からaprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子の中から選択される8つ以上のプロテアーゼ遺伝子を欠失させ、枯草菌bglC遺伝子を、プラスミドにより導入してなる枯草菌変異株。
(10) 前記枯草菌bglC遺伝子が、転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域と作動可能に連結されている、上記(9)記載の枯草菌変異株。
(11) 枯草菌168株から欠失させる8つ以上のプロテアーゼ遺伝子が、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子であるか、又は、aprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子である、上記(9)又は(10)に記載の枯草菌変異株。
(12) 上記(1)から(8)記載の製造法により得られる完全長BglC。
(13) 以下の酵素学的性質を有する、完全長BglC:
作用:セルロースに作用して還元糖を生成する活性を有する。
基質特異性:カルボキシメチルセルース、セロトリオシド、粉砕パルプを分解し、還元糖を生成する。
最適反応pH:pH5付近(酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液)。
最適反応温度:約50℃(0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0))。
温度安定性:30℃〜60℃(50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で20分間反応)。
分子量:約52kDa(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法)。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、衣料用洗剤、繊維処理剤として有用な完全長BglCを効率的に生産することが可能となる。また、当該完全長BglCは他の細菌由来のセルラーゼよりも糖化活性が高く、また不完全長BglCと比較し、温度安定性が高く、更に粉砕パルプに対する高い糖化活性を有するため、セルロースの糖化用酵素として有用であり、バイオマスからのバイオエタノールの製造や洗浄用酵素として応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】PCR断片を用いた2重交差法による標的遺伝子の欠失方法を示す図。
【図2】bglC遺伝子のクローニングを示す図。
【図3】本発明のBglCのCMC分解活性に及ぼすpHの影響を示す図。
【図4】本発明のBglCのCMC分解活性に及ぼす温度の影響を示す図。
【図5】本発明のBglCの安定性に及ぼす温度の影響を示す図。
【図6】168Dce株及びDpr9Dce株におけるBglCタンパク質の発現を示すSDS−PAGEを示す図。
【図7】プロテアーゼ単一欠失株、並びにプロテアーゼ多重欠失株におけるBglCタンパク質の発現を示すSDS−PAGEを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明の製造法は、枯草菌168株からaprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprAの中から選択される8つ以上のプロテアーゼ遺伝子を欠失させた枯草菌変異株を用い、枯草菌bglC遺伝子を発現させ、完全長BglCを枯草菌細胞外に分泌させるものである。
【0016】
枯草菌bglC遺伝子とは、枯草菌のエンド−β−1,4−グルカナーゼをコードする遺伝子のことを指し、当該遺伝子は上記したとおり既にクローニング及び塩基配列決定がなされている(非特許文献2及び3)。本発明においては、枯草菌bglC遺伝子の具体的態様は、配列番号16で示される塩基配列、又は当該塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を有し、BglC活性を有するタンパク質をコードする枯草菌bglC遺伝子である。
【0017】
本願発明において、完全長BglCとは、枯草菌の細胞内外においてプロテアーゼによりC末端側のプロセシングを受けて33kDaとなった状態の枯草菌BglC(本願において不完全長BglCと称する)とは相異なる、プロセシングを受けない状態の、52kDaの分子量を有する、完全長の枯草菌BglCのことを指す。
【0018】
上記製造法において用いられる枯草菌変異株は、枯草菌168株を元株として用い、更にその元株から所定のプロテアーゼ遺伝子を欠失させて作製した変異株である。
【0019】
枯草菌168株とは、枯草菌Bacillus subtilis Marburg No.168として公知の枯草菌株であり、通常、遺伝子組換えタンパク質生産の際の野生株として用いられている。また枯草菌168株の全塩基配列及び遺伝子は既に報告されており、またインターネット公開されている(Nature,390,249−256,1997及びBSORF Bacillus subtilis Genome Database[http://bacillus.genome.jp/];GenBank:AL009126.2[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/38680335])。当業者は、これらの情報源から得た枯草菌168株のゲノム情報に基づいて、各種遺伝子操作を行うことができる。
【0020】
本願発明に係る枯草菌変異株は、aprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprAの中から選択される8つ以上のプロテアーゼ遺伝子を欠失している。更に、完全長BglCタンパク質のプロセシングを抑止し、当該完全長BglCタンパク質の細胞外分泌による製造を効率的に行う観点から、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子であるか、又は、aprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子を欠失させるのが好ましい。なお、これらのプロテアーゼ遺伝子を欠失した枯草菌変異株は、特開2006−174707号に記載の方法により作製することができる。
【0021】
本願発明に係る枯草菌BglCは、BglCタンパク質を細胞外分泌させるために、そのN末端側にシグナル配列を有することが必要である。当該シグナル配列は、完全長BglCタンパク質の細胞外分泌を容易にするものであれば特に限定されず、枯草菌BglC固有のシグナル配列の他、例えばバチルス属細菌KSM−S237株(FERM BP−7875、特開2000−210081号公報)又はバチルス属細菌KSM−64株(FERM BP−2886、特開平4−190793号公報)由来のアルカリセルラーゼのシグナル配列が、BglCタンパク質と連結していることが好ましい。従って、枯草菌bglC遺伝子は、シグナル配列を含む前駆体遺伝子として存在しているのが好ましく、かかる前駆体遺伝子としては、例えば配列番号16で示される、枯草菌KSM−S237由来のセルラーゼのシグナル配列をコードする遺伝子が連結した遺伝子が挙げられる。
【0022】
本発明において、アミノ酸配列及び塩基配列の同一性は、Lipman−Pearson法(Science,227,1435,(1985))によって計算される。より具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
【0023】
前記完全長bglC遺伝子中にバチルス属細菌由来のアルカリセルラーゼのシグナル配列を連結する手段は特に限定されず、操作の簡便性の観点から、既に報告された方法(Mol.Gen.Genet.,223,268(1990)等)に基づき実施できる。
【0024】
上記の枯草菌変異株を用いて枯草菌BglCタンパク質を製造する場合、上記の枯草菌bglC遺伝子の上流に、当該遺伝子の転写、翻訳、分泌を制御する制御領域を、適切な形で結合させるのが望ましい。かかる制御領域としては、プロモーター及び転写開始点を含む転写開始制御領域、リボソーム結合部位及び開始コドンを含む翻訳開始領域並びに分泌シグナルペプチド領域から選ばれる1以上の領域などが挙げられる。特に転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域が結合されていることが好ましく、更に分泌シグナルペプチド領域がバチルス(Bacillus)属細菌のセルラーゼ遺伝子由来のものであり、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域が当該セルラーゼ遺伝子の開始コドンから始まる長さ0.6〜1kbの上流領域であるものが、bglC遺伝子と作動可能に連結されていることが望ましい。
【0025】
上記枯草菌bglC遺伝子に作動可能に連結させるプロモーターとしては、導入された枯草菌bglC遺伝子を枯草菌細胞内で発現させることが可能なプロモーターであれば特に限定されず、例えばバチルス属細菌KSM−S237株(FERM BP−7875、特開2000−210081号公報)又はバチルス属細菌KSM−64株(FERM BP−2886、特開平4−190793号公報)由来のアルカリセルラーゼS237とSP64のプロモーター、枯草菌spoVG遺伝子とリボソームRNAオペロンrrnOのプロモーター等が挙げられる。
【0026】
本発明において上記の枯草菌bglC遺伝子、好ましくはシグナル配列を含む前駆体遺伝子、又はさらにプロモーター等を作動可能に連結させたそれらの遺伝子は、ゲノム中に存在しても、プラスミド中に存在してもよいが、プラスミド中に存在することが好ましい。
【0027】
上記遺伝子をプラスミド中に存在させる場合には、上記枯草菌bglC遺伝子にシグナルペプチドをコードする遺伝子やプロモーター等を作動可能に連結させた後、得られたDNA断片を、適切なベクターに挿入した発現プラスミドを構築し、当該発現プラスミドを一般的な形質転換法によって宿主に導入して形質転換するのが好ましい。当該発現プラスミドとしては、枯草菌体内で自立複製可能なベクターが好適であり、例えばシャトルベクターpHY300PLK等が挙げられるが、特に限定されない。
【0028】
一方、上記遺伝子をゲノム中に存在させる場合には、当該DNA断片に宿主ゲノムとの適当な相同領域を結合したDNA断片を用い、宿主ゲノムに直接組み込むことによって本発明の枯草菌を得ることができる。なお、枯草菌はゲノムにbglC遺伝子を有するが9種のプロテアーゼを欠失させてもSDS電気泳動ではBglCを確認できないため、本来のゲノムに存在するbglC遺伝子は発現がないか、極めて少ないと考えられる。よって、ゲノム上の本来のbglC遺伝子を発現させるためには、bglC遺伝子の上流に、宿主の枯草菌が本来有するものとは異なる制御領域又は制御領域及びシグナル配列を導入した枯草菌を得るのが好ましい。
【0029】
上記で得られた枯草菌形質転換体を、適切な培地において培養し、枯草菌bglC遺伝子を発現させて枯草菌BglCタンパク質を産生させ、更に当該タンパク質を細胞外へ分泌させることを特徴とする。枯草菌bglC遺伝子を発現させる際、当該遺伝子に連結したプロモーターの性質に応じて、当該培地の組成を適宜調節するのが好ましい。特に発現誘導型プロモーターを用いる場合には、そのプロモーター活性を向上させる誘導物質を適切なタイミングで培地中に添加するのが好ましい。
【0030】
上記の枯草菌変異株は、例えば同化性の炭素源、窒素源、その他の必須成分を含む培地に接種して培養して行うことができる。培養方法は、原則的には一般的な微生物の培養方法であってよく、通常、液体培養による振盪培養、通気撹拌培養等の好気的条件下で実施するのが好ましい。
【0031】
培養終了後、培養液を遠心分離し、得られる上清又は菌体から、硫安沈殿やクロマトグラフィなどを適宜組み合わせ、常法に従い、目的のBglCタンパク質を抽出・精製することにより得ることができる。
【0032】
上記により得られた完全長BglCは、セルロースに作用してその鎖を切断する活性を有し、しかも不完全長BglCと比較し糖化活性が高い。ゆえに、セルロースの糖化用酵素として有用であり、例えばバイオマスからバイオエタノールを工業的に製造するための酵素として利用することができる。
【0033】
上記により得られた完全長BglCは、以下の酵素学的性質を有する。
作用:セルロースに作用して還元糖を生成する活性を有する。また当該活性は、不完全長BglCと比較し42〜132%高い(表4)。
基質特異性:カルボキシメチルセルース、セロトリオシド、粉砕パルプを分解し、還元糖を生成する(表2から表4)。
最適反応pH:50mMの各緩衝液[酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0及びpH5.0)、リン酸緩衝液(pH6.0、pH7.0及びpH8.0)、並びにグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.0及びpH10.0)]中で酵素反応を行った結果、少なくともpH4〜10で作用し、最適pHは約5である。
最適反応温度:0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中で、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、及び80℃で反応を行った場合、最適反応温度は約50℃である。
温度安定性:50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で50mMのリン酸緩衝液(pH7)中で、20℃、40℃、50℃、60℃、70℃、及び80℃で20分間反応を行った場合、30℃〜60℃の温度範囲において、100%の酵素活性を示す。また、不完全長BglCと比較し、約20℃高い。
分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法による推定分子量は、約52kDaである。
【0034】
また、得られた完全長BglCのアミノ酸を解析した結果、配列番号17に示す配列であり、公知の推定アミノ酸配列どおりであった。
【実施例】
【0035】
以下の実施例におけるDNA断片増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、Pyrobest DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)と付属の試薬類を用いた、GeneAmp PCR System(アプライドバイオシステムズ社製)によるDNA増幅により行った。PCR反応液は、適宜希釈した鋳型DNAを1μL、センス及びアンチセンスプライマーを各々20pmol、及びPyrobest DNAポリメラーゼを2.5U添加し、更に総反応液量を50μLとすることにより調製した。PCR反応条件は、98℃で10秒間、55℃で30秒間及び72℃で1〜5分間(目的増幅産物に応じて調整。目安は1kbあたり1分間)の3段階の温度変化を30サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応、とした。
【0036】
また、以下の実施例において、遺伝子の上流及び下流とは、複製開始点からの位置を指すのではなく、上流とは各操作・工程において対象となる遺伝子の開始コドンの5’側に続く領域を指し、一方下流とは各操作・工程において対象となる遺伝子の終止コドンの3’側に続く領域を指すものとする。
【0037】
枯草菌の形質転換は、コンピテントセル法(J.Bacteriol.93,1925(1967))により行った。すなわち、枯草菌株をSPI培地(0.20%硫酸アンモニウム、1.40%リン酸水素二カリウム、0.60%リン酸二水素カリウム、0.10%クエン酸三ナトリウム二水和物、0.50%グルコース、0.02%カザミノ酸(Difco社製)、5mM硫酸マグネシウム、0.25μM塩化マンガン、50μg/mLトリプトファン)中で、37℃で、生育度(OD600)の値が約1となるまで振盪培養し、振盪培養後、培養液の一部を9倍量のSPII培地(0.20%硫酸アンモニウム、1.40%リン酸水素二カリウム、0.60%リン酸二水素カリウム、0.10%クエン酸三ナトリウム二水和物、0.50%グルコース、0.01%カザミノ酸(Difco社製)、5mM硫酸マグネシウム、0.40μM塩化マンガン、5μg/mLトリプトファン)に接種し、更に生育度(OD600)の値が約0.4となるまで振盪培養することにより、枯草菌株のコンピテントセルを調製した。
【0038】
次いで調製したコンピテントセル懸濁液(SPII培地における培養液)100μLに、各種DNA断片を含む溶液(SOE−PCRの反応液等)を5μL添加し、37℃で1時間振盪培養後、適切な薬剤を含むLB寒天培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、1.5%寒天)に全量を塗沫した。37℃での静置培養の後、生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体のゲノムを抽出し、これを鋳型とするPCRを行い、目的とするゲノム構造の改変がなされたことを確認した。
【0039】
目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の宿主微生物への導入は、コンピテントセル形質転換法(J.Bacteriol.93,1925(1967))、エレクトロポレーション法(FEMS Microbiol.Lett.55,135(1990))、プロトプラスト形質転換法(Mol.Gen.Genet.168,111(1979))のいずれかによって行った。
【0040】
組換え微生物によるタンパク質生産用の培養には、LB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl)、2×YT培地(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、0.5%NaCl)、2×L−マルトース培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4−5水和物)、あるいはCSL発酵培地(2%酵母エキス、0.5%コーンスティープリカー(CSL)、0.05%塩化マグネシウム七水和物、0.6%尿素、0.2%L−トリプトファン、10%グルコース、0.15%リン酸二水素ナトリウム、0.35%リン酸水素二ナトリウム、pH7.2)を用いた。
【0041】
(実施例1)bglC遺伝子欠失株の構築
図1に示したように、枯草菌168株及びDpr9株(特開2006−174707号)ゲノム中のbglC遺伝子(Nature,390,249−256,1997、JAFAN:Japan Functional Analysis Network for Bacillus subtilis(BSORF DB、http://bacillus.genome.ad.jp/))を薬剤耐性遺伝子(エリスロマイシン耐性遺伝子)に置換して欠失株を作製した。枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表1に示したbglCFW及びbglC/EmRのプライマーセットを用いて、ゲノム中のbglC遺伝子の上流に隣接する1.0kb断片(A)をPCRにより増幅した。また、上記ゲノムDNAを鋳型とし、bglC/EmF及びbglCRVのプライマーセットを用いて、ゲノム中のbglC遺伝子の下流に隣接する1.0kb断片(B)をPCRにより増幅した。更に、プラスミドpMutin3(Microbiology,144,3097−3104,1998)鋳型とし、表1に示したemf2及びemr2のプライマーセットを用いて、1.3kbのエリスロマイシン(Em)耐性遺伝子領域(C)をPCRにより調製した。
【0042】
【表1】

【0043】
次に、得られた1.0kb断片(A)、1.0kb断片(B)及びEm耐性遺伝子領域(C)の3断片を混合して鋳型として、表1に示すbglCFW2及びbglCRV2のプライマーセットを用いたSOE(splicing by overlap extension)−PCR法(Gene,77,61,1989)によって、3断片が(A)、(C)、(B)の順で含まれる3.3kbのDNA断片(D)を得た。
【0044】
更に、得られたDNA断片(D)を用いて、コンピテントセル形質転換法により168株の形質転換を行った。形質転換後、エリスロマイシン(2μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。
【0045】
得られた形質転換体のゲノムDNAを抽出し、PCRによってbglC遺伝子がEm耐性遺伝子で置換されていることを確認した。以上の操作により、168株のbglC遺伝子欠失株(ΔbglC::Em株)を構築し、168Dceと命名した。
【0046】
また、Dpr9株(特開2006−174707号)を元株とし、以上と同様の操作を行いbglC遺伝子欠失株を構築し、Dpr9Dceと命名した。
【0047】
(実施例2)bglC過剰発現プラスミドの構築
プラスミドの構築は、In−FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech社)を用いて行なった(図2)。プロトコールに従って設計したプライマー(表1)を用いて、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−S237株(FERM BP−7875)由来のアルカリセルラーゼ遺伝子(特開2000−210081号)のプロモーターとシグナル配列の断片を、pHYS237(Biosci.Biotechnol.Biochem.,64(11):2281−9,2000)を鋳型にして、並びに、枯草菌セルラーゼ遺伝子bglCを、枯草菌ゲノムDNAを鋳型にして、それぞれPSF_infu(EcI)とPS237Rのプライマーセット、及びbglC−sig/PSFとbglC_infu(SaI)のプライマーセットを用いて増幅した。得られた増幅産物を、制限酵素EcoRI及びSalI消化により線状化したpHY300PLK及びIn−Fusion酵素を適当量で混合して30分間反応を行ない、S237セルラーゼのプロモーター配列及びシグナル配列にbglCの構造遺伝子が連結したプラスミドを構築し、それをpHPS−bglCと命名した。更に、当該プラスミドを大腸菌HB101コンピテントセル(TaKaRa)に導入し、形質転換した。
【0048】
また、同様の操作により、SP64セルラーゼのプロモーター配列及びシグナル配列をbglCの構造遺伝子に連結させた発現プラスミドを構築し、このプラスミドをpHPS64−bglCと命名した。また、枯草菌由来のbglS遺伝子を用いて同様の操作を行い、発現プラスミドpHPS−bglSを構築した。
【0049】
CMC及びトリパンブルーを添加したLB寒天培地を用い、テトラサイクリン耐性により大腸菌形質転換体を選抜した。また、当該形質転換体がハロー形成をすることが判明した。形質転換体より精製したプラスミドを用いて制限酵素処理あるいはPCRを行い、形質転換が適切に行われていることを確認した。
【0050】
(実施例3)枯草菌宿主へのプラスミド導入及び得られた形質転換体の培養
以上のように構築したプラスミドpHPS−bglC及び pHPS64−bglCを、プロトプラスト形質転換法によってそれぞれ宿主菌株168Dce及びDpr9Dceに導入した。これにより得られた組換え菌株を、10 mLのLB培地で30℃で一晩振盪培養し、更にこの培養液0.05mLを50mLの2×L−マルトース培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4−5水和物、15ppmテトラサイクリン)に接種し、30℃にて3日間振盪培養を行った。遠心分離によって菌体を除いた培養液上清中セルラーゼの活性測定を行なった。
【0051】
(実施例4)培養上清のCMC分解活性
カルボキシメチルセルロース(CMC:日本製紙社製)が1.0%(w/v)、及び酢酸緩衝液が50mMとなるように90μLの混合液を調製し、適当な濃度に希釈した酵素溶液10μLを添加し、50℃で15分間反応した。DNS溶液100μLを添加して反応を停止させた後、100℃で5分間熱処理した。冷却後、反応液100μLの吸光度(535nm)をマイクロプレートリーダー(Molecular Devices社製)で測定した。なお、基質溶液90μLにDNS溶液を100μL添加後、酵素溶液10μLを加え、同様の操作を行ったものを対照とした。上記条件下で、1分間に1μmolのD−グルコース相当の還元糖を遊離する酵素量を、1ユニット(U)とした。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
(実施例5)培養上清のp−ニトロフェニル−β−D−セロトシオシド分解活性
1/7.5M リン酸緩衝液(pH7.4、和光純薬工業社製)で適宜希釈したサンプル溶液50μLに、0.4mM p−ニトロフェニル−β−D−セロトリオシド(生化学工業社製)を50μL加えて混和し、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社製)を用いて、30℃、420nmにおける吸光度(OD420)変化を10分間にわたり測定した。S237セルラーゼの活性を100%とした相対活性を表3に示す。BglCはS237由来のセルラーゼより約25%活性が高いことが明らかとなった。
【0054】
【表3】

【0055】
(実施例6)培養上清のセルロース糖化活性
セルロース{Avicel PH101(Fluka社製)、Cellulose Powder (Fuluka社製)及び粉砕パルプ}を用い、セルロース糖化反応を行った。なお粉砕パルプは、粉末状パルプ(日本製紙ケミカル社製「W−400G」、400メッシュパス90以上、セルロース含有量99質量%、水分含量1質量%)を媒体撹拌式ミル(アトライタ、三井鉱山(株)製、「MA1D−X」、容器全容量:5.5L)に500g投入し、媒体として、直径10mm、材質ジルコニア、ジルコニアボール:11kgをアトライタに充填(充填率59%)して、回転数307rpmの条件で、2時間粉砕処理することにより粉砕パルプを調製した。
【0056】
<糖化反応>:
150mgの上記セルロースを、3mLの酵素反応液(最終濃度0.1M酢酸緩衝液(pH5)、蓋つきスクリュー管(No.5、φ27×55mm;マルエム製))に懸濁し、適量の酵素を添加し、50℃で振盪撹拌(150rpm、タイテック製恒温振盪機「BR−15CF」)しながら所定の時間反応させた。反応終了後、遠心分離(4℃、12,000rpm、5分間)によって沈殿物と上清液を分離し、上清液中に遊離した還元糖をDNS法によって定量した。また、対照として酵素無添加の反応液についても同様の操作を行った。
【0057】
<糖化率測定(DNS法)>:
DNS溶液200μLに上清液2μLを添加し、100℃で5分間熱処理した。冷却後、反応液100μLの吸光度(535nm)をマイクロプレートリーダー(Molecular Devices社製)で測定した。上清液に遊離した還元糖量をDNS法(「生物化学実験法」還元糖の定量法、学会出版センター)によってグルコース換算により定量した。糖化率(%)は、「遊離還元糖量×0.9÷反応前のホロセルロース量×100」で算出した。各セルロース基質に対するBglCの糖化活性を表4に示す。
【0058】
【表4】

【0059】
Dpr9Dce株において発現したBglCは、168Dce株で発現した酵素より糖化活性が高く、特に粉砕パルプに対する活性は2.3倍高かった。
【0060】
(実施例7)BglCと他の細菌由来のエンドグルカナーゼとの糖化活性比較
粉砕パルプを用いて、BglCと、他の細菌由来のエンドグルカナーゼ(枯草菌BglS及び枯草菌KSM−N145株由来のEgI−145(特開2005−287441号))との、糖化活性の比較を行なった。結果を表5に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
<BglCの酵素学的性質>:
(実施例8)BglCの最適反応pH
50mMの各緩衝液[酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0及びpH5.0)、リン酸緩衝液(pH6.0、pH7.0及びpH8.0)、並びにグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.0及びpH10.0)]を使用した以外は、実施例4と同様の方法に従い、試験を行った。結果を表6及び図3に示す。
【0063】
(実施例9)BglCの最適反応温度
反応温度を30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、及び80℃で反応させた以外は、実施例4と同様の方法に従い、試験を行った。結果を表6及び図4に示す。
【0064】
(実施例10)BglCの温度安定性
50mMのリン酸緩衝液(pH7)中、20℃、40℃、50℃、60℃、70℃、及び80℃で20分間処理した後は、実施例4と同様の方法に従い、試験を行った。結果を表6及び図5に示す。
【0065】
【表6】

【0066】
実施例8から10において、野生株及びプロテアーゼ欠失株の両方において発現したBglCを用いて測定を行なった結果、プロテアーゼ欠失株にて発現したBglCが野生株で発現した酵素よりも温度安定性が高いことが判明した。
【0067】
本発明の製造法により得られた完全長BglCの酵素学的性質を、以下に示す。
作用:セルロースに作用して還元糖を生成する活性を有し、当該活性が、枯草菌168株により産生されるBglCと比較し42〜132%高い。
基質特異性:カルボキシメチルセルース、セロトリオシド、粉砕パルプを分解し、還元糖を生成する。
最適反応pH:少なくともpH4〜10で作用し、最適pHは約5である。
最適反応温度:0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)で反応を行った場合、最適反応温度は約50℃である。
温度安定性:50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で反応を行った場合、30℃〜60℃の温度範囲において、100%の酵素活性を示す。
分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法による推定分子量は、約52kDaである。
【0068】
(実施例11)BglCのSDS−PAGEによる解析
実施例3で得られた培養上清中のBglCを、SDS−PAGEを用いて解析した。図6に示すように、野生株では33kDaの不完全長BglCが発現されるのに対し、プロテアーゼ9重欠失株では52kDaの完全長BglCが発現した。この結果から、野生株から得られたBglCはプロテアーゼにより分解されているが、本願発明の製造法により得られたBglCはプロテアーゼによる分解を受けず、完全長が維持されることが明らかとなった。
【0069】
次に、aprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprAから選択されるプロテアーゼのいずれか1つを欠失する単一欠失株、並びにそれらを複数欠失するプロテアーゼ多重欠失株を用いて、BglCの発現を、SDS−PAGEにより解析した。結果を図7に示す。いずれの単一欠失株においてもBglCの分解が観察されたが、8重欠失株以上ではBglCの分解が完全に抑えられ、完全長BglCが観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枯草菌168株からaprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子の中から選択される8つ以上のプロテアーゼ遺伝子を欠失させた枯草菌変異株を用い、枯草菌bglC遺伝子を発現させ、完全長BglCを枯草菌細胞外に分泌させることを特徴とする、BglCの製造法。
【請求項2】
前記8つ以上のプロテアーゼ遺伝子が、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子であるか、又は、aprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子である、請求項1記載の製造法。
【請求項3】
前記枯草菌変異株が、枯草菌BglCをコードする枯草菌bglC遺伝子がプラスミドにより導入されている、請求項1又は2記載の製造法。
【請求項4】
前記枯草菌bglC遺伝子が、シグナル配列を含む前駆体遺伝子として導入されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載の製造法。
【請求項5】
前記シグナル配列が、バチルス属細菌由来のアルカリセルラーゼのシグナル配列である、請求項4記載の製造法。
【請求項6】
前記バチルス属細菌由来のアルカリセルラーゼのシグナル配列が、バチルス属細菌KSM−S237株(FERM BP−7875)又はバチルス属細菌KSM−64株(FERM BP−2886)由来のアルカリセルラーゼのシグナル配列である、請求項5記載の製造法。
【請求項7】
前記完全長BglCが、52kDaの分子量を有するBglCである、請求項1から6のいずれか1項記載の製造法。
【請求項8】
前記シグナル配列を含む前駆体遺伝子が、配列番号16で示される塩基配列、又は当該塩基配列のいずれかと70%以上の同一性を有する塩基配列を有する、請求項4から7のいずれか1項記載の製造法。
【請求項9】
枯草菌168株からaprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子の中から選択される8つ以上のプロテアーゼ遺伝子を欠失させ、枯草菌bglC遺伝子を、プラスミドにより導入してなる枯草菌変異株。
【請求項10】
前記枯草菌bglC遺伝子が、転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域と作動可能に連結されている、請求項10記載の枯草菌変異株。
【請求項11】
枯草菌168株から欠失させる8つ以上のプロテアーゼ遺伝子が、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子であるか、又は、aprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprA遺伝子である、請求項9又は10記載の枯草菌変異株。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか1項記載の製造法により得られる完全長BglC。
【請求項13】
以下の酵素学的性質を有する、完全長BglC:
作用:セルロースに作用して還元糖を生成する活性を有する。
基質特異性:カルボキシメチルセルース、セロトリオシド、粉砕パルプを分解し、還元糖を生成する。
最適反応pH:pH5付近(酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液)。
最適反応温度:約50℃(0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0))。
温度安定性:30℃〜60℃(50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で20分間反応)。
分子量:約52kDa(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法)。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−115219(P2012−115219A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269294(P2010−269294)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「バイオマスエネルギー先導技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】