説明

エンドレス歯付ベルト

【目的】 フィンガー形状カット及びV形状カットの接続部の双方の長所をとりあげて強度向上を図ったエンドレス歯付ベルトを提供する。
【構成】 端部にそれぞれ幅方向へ斜め縁線15a、16aを山形に連ねてなるV形状カット群の舌片部15、16を設けると共に、V形状カット群の舌片部の両側には斜め縁線に連なって本体の幅方向へ両側面まで延びる横縁線15b、16bによって矩形状カットの舌片部17、18を設けて、一方端部及び他方端部のV形状カット群舌片部と矩形状カット舌片部とを交互に組み合わせて溶着又は接合した構成であり、ベルト本体の端部接続部を接続強度に優れたV形状カットを主体にし、矩形舌片部でアイドラプーリによる回転摩擦力の張力をベルト本体の両端の矩形舌片部のみで負担させている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エンドレス歯付ベルトに係り、更に詳しくは、搬送物として特に各種の金銭取扱装置における硬貨等を搬送しつつ計数するような場合に好適なエンドレス歯付ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】図5及び図6は、この種のエンドレス歯付ベルトにおいて、帯状ベルトの一方端部と他方端部とを溶着により接続して無端にする周知の2つの接続形態を示している。図5の接続形態はフィンガー形状カットと呼ばれるもので、接続されるベルト1の一方端部及び他方端部においてそれぞれ長手方向へ平行に矩形状カットの舌片部2a、3aを設け、双方の舌片部2a、3aを交互に組み合わせて溶着接続して無端にする。図6の接続形態はV形状カットと呼ばれ、ベルト1の接続両端部に長手方向へ延びる一方端部のV形状カット群の舌片部4aと他方端部のV形状カット群の舌片部5aとを交互に組み合わせたものである。これらフィンガー形状カット及びV形状カットによる接続部の破断強度を比較すると、ベルト長手方向へ埋め込まれる補強心線の本数、ベルト幅寸法及び舌片部の個数による仕様が同一であるならば、V型における接続部の引張強度はフィンガー型よりもかなり大きく優れていることが知られている。
【0003】各種の金銭取扱装置でエンドレス歯付ベルトを利用し、硬貨やコインの搬送や掻き上げなどを行いつつ計数する場合、駆動中のベルトに適当な張力をもたせるために、ベルト両端部にて背面からアイドラプーリで押圧して局部的な張力を付与することが多い。この場合、図6で示された接続部がV形状カットのベルトでは、V形状の舌片部4a(5a)を形成する斜め縁線に沿ってアイドラプーリが連続的に接触することになる。その結果、ベルトに作用する取付張力が大きい場合、斜め縁部に沿って亀裂の発生率が高く、亀裂が成長すると駆動中にベルトがアイドラプーリから外れて、アイドラプーリはその機能を逸することになる。また、亀裂部分から補強心線が露出などすると、搬送中の硬貨の係数ミスを招き、金銭取扱装置として致命的な誤動作につながる恐れがある。これに対して、図5に示されたフィンガー形状カットのベルトでは、矩形舌片部2a(3a)はベルト長手方向へ平行に延びる縦縁線とこれに直交する横縁線からなる角形である。従って、アイドラプーリが縦縁線に当接しないようにするためには、隣合う縦縁線の間の距離をアイドラプーリの幅よりも大きくすればよい。即ち、横縁線の長さをアイドラプーリの幅よりも大きくして、この横縁線のみにアイドラプーリを接触させるよう対応できる。しかしながら、横縁線を大きくすることは矩形舌片部2a(3a)が小さくなることであるから、このような仕様変更は張力等に対する接続部の強度低下を招き、伸びが生じた場合は使用に耐えなくなるといった不都合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、フィンガー形状カット及びV形状カット群の接続部の双方の長所をとりあげて強度向上を図ったエンドレス歯付ベルトを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係るエンドレス歯付ベルトは、内側に所定ピッチの歯を有する帯状本体の一方端部及び他方端部を接続して無端とし、長手方向に補強心体を埋設したエンドレス歯付ベルトにおいて、端部にそれぞれ幅方向へ斜め縁線を山形に連ねてなるV形状カット群の舌片部を設けると共に、V形状カット群の舌片部の両側には斜め縁線に連なって本体の幅方向へ両側面まで延びる横縁線によって矩形状カットの舌片部を設けて、一方端部及び他方端部のV形状カット群舌片部と矩形状カット舌片部とを交互に組み合わせて溶着又は接合した構成である。
【0006】
【作用】ベルト本体の端部接続部が接続強度に優れたV形状カット群を主体にしている。このV形状カット群に連ねてベルト本体の両側部にそれぞれフィンガー形状カットの変形である矩形舌片部を設けているため、矩形舌片部にアイドラプーリを接触させて、アイドラプーリによる張力をベルト本体の両端の矩形舌片部のみで負担させている。従って、V形状カット群の接続部による強度面での有利性を生かし、使用時はアイドラプーリによる張力に対して矩形舌片部で破断強度を補償する。
【0007】
【実施例】以下、本発明よるエンドレス歯付ベルトの実施例を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、実施例のエンドレス歯付ベルト10(以下単にベルトと呼ぶ)は、例えばポリウレタンゴム等の弾性材で本体11が帯状に成形され、本体11の内側には使用時に複数のプーリ20〜22(図3参照)に噛合する歯12が所定ピッチで設けられている。また、本体11内部では長手方向に延びる例えばピアノ線等による多数の補強心材13が埋め込まれ、駆動中に本体11の長手方向に作用する張力を補強するようになっている。本体11の一方端部11Aと他方端部11Bを溶着などにより接続して接続部11Cを設けることによって、無端状にされたベルト10がプーリ20〜22に捲回される。捲回されたベルト10全体に好適な張力を付与するため、図3R>3のように、ベルト10の適所に背面に接触して押圧するアイドラプーリ23が配置されている。また、図4で説明されるように、アイドラプーリ23はベルト10の幅一杯の長さをもたず、ベルト10の幅方向の両側部に配置された2個からなって、ベルト10の両側部背面を押圧している。
【0008】一方、接続部11Cにおいて、本体11の一方端部11Aでは、長手方向に沿って斜めに延びる斜め縁線15aを山型に連ねた複数のV形状カットの舌片部(以下V形舌片部と呼ぶ)15が設けられ、他方端部11Bでも斜め縁線16aを山型に連ねた同形で複数のV形舌片部16が設けられ、双方のV形舌片部15、16同士が交互に組み合っている。双方の斜め縁線15a、16aの最もベルト本体側面14、14に近い両側に連なって横縁線15b、16bが、本体側面14、14からほぼ直角に切れ込み、つまり本体11の幅方向へ横断する方向に設けてある。従って、本体11の両側部においては横縁線15b、16bを境界として矩形状カットの舌片部(以下矩形舌片部と呼ぶ)17、18が形成されることになる。
【0009】斜め縁線15a(16a)及び横縁線15b(15b)は共に補強心材13を横切っており、接続部11Cでは補強心材13を包んでポリウレタンゴムなどを溶融することによって溶着接続された構造になっている。
【0010】図3及び図4は、実施例のベルト10の使用形態の一例を示す。無端のベルト10は3つのプーリ20、21、22に捲回され、これらの1つを駆動プーリとして例えば図中の矢印のように反時計回りの方向に回転駆動する。図ではベルト10の背面に所定の間隔をおいて2個横並び一対の係止突起部19を設けた構造が示され、ベルト10の背面に搬送物24を担持して係止突起部19を支えとすることにより、多数の搬送物24を所定部位に順に搬送する態様である。この場合、搬送物24としては、金銭取扱装置では図のような硬貨であったりするが、本発明を達成する意味では硬貨に特に限定されるものではない。また、係止突起部19の形状も搬送物24の種類、形状及び大きさに対応して図示例のものに特定されない。
【0011】ここで、図4に示すように、ベルト10の幅方向の両側部に配置された2個のアイドラプーリ23の大きさについては、前述の矩形舌片部17、18を形成する横縁線15b(16b)の長さをhとした場合、この長さhを越えない範囲であることが好ましい。即ち、アイドラプーリ23の大きさはこの長さが長さhの横縁線15b(16b)を越えて斜め縁線15a(16a)に接触しないということである。この理由は、ベルト10の長手方向に沿って延びる斜め縁線15a(16a)にアイドラプーリ23を接触させないことであり、アイドラプーリ23の回転摩擦力による張力の方向を斜め縁線15a(16a)に一致させることは、斜め縁線15a(16a)に沿って破断が発生し易く不利となるからである。また、これに関連して、アイドラプーリ23の長さを横縁線15b(16b)の長さhよりも寸法x以上短くすることで、アイドラプーリ23による張力はこれに直交する横縁線15b(16b)のみで負担させている。
【0012】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によるエンドレス歯付ベルトは、ベルト本体の端部接続部をフィンガー形状カットよりも接続強度に優れているV形状カットを主体にして設け、このV形状カットに連ねてベルト本体の両側部にそれぞれフィンガー形状カットの変形ともいうべき矩形舌片部を設けた構成となっているので、矩形舌片部にアイドラプーリを接触させて、アイドラプーリによる回転摩擦力の張力をベルト本体の両端の矩形舌片部のみで負担させることで、V形状カットの接続部による強度面での有利性を生かし、しかも使用時はアイドラプーリによる張力に対して破断強度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施例のエンドレス歯付ベルトの接続部の平面図である。
【図2】実施例の接続部の側面図である。
【図3】実施例のエンドレス歯付ベルトの使用形態を示す全体図である。
【図4】使用形態の平面図である。
【図5】従来のフィンガー形状カットによる接続部の平面図である。
【図6】従来のV形状カットによる接続部の平面図である。
【符号の説明】
10 ベルト
11 本体
13 補強心材
15、16 V形状カット舌片部
15a、16a 斜め縁線
15b、16b 横縁線
17、18 矩形状カット舌片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内側に所定ピッチの歯を有する帯状本体の一方端部及び他方端部を接続して無端とし、長手方向に補強心体を埋設したエンドレス歯付ベルトにおいて、端部にそれぞれ幅方向へ斜め縁線を山形に連ねてなるV形状カット群の舌片部を設けると共に、V形状カット群の舌片部の両側には斜め縁線に連なって本体の幅方向へ両側面まで延びる横縁線によって矩形状カットの舌片部を設けて、一方端部及び他方端部のV形状カット群舌片部と矩形状カット舌片部とを交互に組み合わせて溶着又は接合したことを特徴とするエンドレス歯付ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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