説明

エンボス同調化粧シート

【課題】紙質基材等の種類を限定しなくても簡便に作製できるエンボス同調化粧シートを提供する。
【解決手段】基材シート1上に印刷層2及び樹脂層4が順に積層されており前記樹脂層に前記印刷層と同調したエンボス模様が賦型されている化粧シートであって、前記印刷層は、色調により区別される吸熱量の異なる2種以上の印刷領域を有し、前記エンボス模様は、エンボス賦型前の化粧シートを加熱し、前記吸熱量の違いにより前記樹脂層に軟化領域と非軟化領域とを形成し、前記樹脂層全面にエンボス版を押圧して前記軟化領域のみにエンボス模様を賦型することにより形成される、ことを特徴とするエンボス同調化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷層(絵柄層)と表面のエンボス模様が同調している、エンボス同調化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧シートとしては、基材シート上に印刷層(絵柄層)、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に積層したものが知られている。かかる化粧シートは、透明性表面保護層側からエンボス模様を賦型することにより更に意匠性を高められる。
【0003】
例えば、絵柄層として木目柄印刷層を採用した場合には、エンボス模様として、これに同調した木目の凹凸模様を賦型することにより、木目柄化粧シートの質感をよりリアルに表現することができる。しかしながら、印刷層と同調したエンボス模様を賦型するには、印刷層の模様とエンボス版の模様が精度よく一致していることが必要であるが、この設定は容易ではない。なぜなら、エンボス加工時に化粧シートを加熱すると吸熱によって化粧シートの寸法が若干変化する場合があるからである。
【0004】
上記寸法変化の問題を改善するための方策が特許文献1に記載されている。具体的には、特許文献1には寸法安定性に優れた紙質基材を用いることが提案されており、詳細には、2枚の薄葉紙を熱可塑性合成樹脂の押出しコート層を介して接着してなる紙質系基材上に隠蔽ベタ印刷層、木目柄印刷層、トップコート層を順次積層し、更に前記トップコート層の表面に木目導管エンボスが施された化粧シートにおいて、前記紙質系基材がエンボス加工時の温度において伸度が2%以下の寸法安定性に優れた構成からなることを特徴とするエンボス同調化粧シートが記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1においても寸法変化率は0%ではなくエンボス版の位置決め精度を高めるにはやはり技量を要する。また、紙質基材の種類が限定されるため、幅広いバリエーションを有する化粧シート全般に適用できないという課題がある。
【0006】
そこで、紙質基材等の種類を限定しなくても簡便に作製できるエンボス同調化粧シートの開発が望まれている。
【特許文献1】特開平8−267696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、紙質基材等の種類を限定しなくても簡便に作製できるエンボス同調化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、印刷層に色調により区別される吸熱量の異なる2種以上の印刷領域を設けて、当該吸熱量の違いを利用してエンボス模様を賦型する領域を制御する場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記のエンボス同調化粧シートに関する。
1.基材シート上に印刷層及び樹脂層が順に積層されており前記樹脂層に前記印刷層と同調したエンボス模様が賦型されている化粧シートであって、
(1)前記印刷層は、色調により区別される吸熱量の異なる2種以上の印刷領域を有し、
(2)前記エンボス模様は、エンボス賦型前の化粧シートを加熱し、前記吸熱量の違いにより前記樹脂層に軟化領域と非軟化領域とを形成し、前記樹脂層全面にエンボス版を押圧して前記軟化領域のみにエンボス模様を賦型することにより形成される、
ことを特徴とするエンボス同調化粧シート。
2.前記吸熱量の異なる2種以上の印刷領域は、「黒色領域と白色領域」、「濃茶色領域と淡黄色領域」、「濃茶色領域と白色領域」、「黒色領域と淡黄色領域」、「黒色領域と無色領域」、又は、「濃茶色領域と無色領域」を有する、上記項1に記載のエンボス同調化粧シート。
3.前記基材シート上に前記印刷層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層が順に積層されている、上記項1又は2に記載のエンボス同調化粧シート。
4.上記項1〜3のいずれかに記載のエンボス同調化粧シートと被着材とを貼着してなる化粧材。
【0010】
以下、本発明のエンボス同調化粧シートについて詳細に説明する。
【0011】
エンボス同調化粧シート
本発明のエンボス同調化粧シートは、基材シート上に印刷層及び樹脂層が順に積層されており前記樹脂層に前記印刷層と同調したエンボス模様が賦型されており、
(1)前記印刷層は、色調により区別される吸熱量の異なる2種以上の印刷領域を有し、
(2)前記エンボス模様は、エンボス賦型前の化粧シートを加熱し、前記吸熱量の違いにより前記樹脂層に軟化領域と非軟化領域とを形成し、前記樹脂層全面にエンボス版を押圧して前記軟化領域のみにエンボス模様を賦型することにより形成されることを特徴とする。
【0012】
上記特徴を有する本発明のエンボス同調化粧シートは、印刷層に色調により区別される吸熱量の異なる2種以上の印刷領域を有する。この印刷領域は、例えば、黒色領域と白色領域であり、これらは色調が異なることにより吸熱量も異なる。そのため、化粧シートを均一に加熱しても吸熱量の相違により樹脂層に温度斑が生じて軟化領域と非軟化領域とが形成される。この軟化領域と非軟化領域とを形成することにより、樹脂層全面にエンボス版を押圧すると軟化領域のみにエンボス模様が賦型される。これにより、エンボス模様を特定の印刷領域に同調させて賦型することができる。このような方法によれば、エンボス版の押圧位置を調整することなく、所望部位にのみエンボス模様を賦型することができる。
【0013】
以下、本発明のエンボス同調化粧シートの各層について説明する。
【0014】
≪基材シート≫
基材シートは、その表面(おもて面)には印刷層が積層される。
【0015】
基材シートとしては、例えば、熱可塑性樹脂により形成されたものが好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0016】
基材シートには、必要に応じて、着色剤、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0017】
基材シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には50〜250μmが好ましい。
【0018】
基材シートは、必要に応じて、印刷層を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従って実施すれば良い。また、必要に応じて、基材シートの裏面にコロナ放電処理を施したり、裏面プライマー層を形成したりしてもよい。
【0019】
≪印刷層≫
印刷層は、化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与するものであり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0020】
本発明では、印刷層は色調により区別される吸熱量の異なる2種以上の印刷領域を有するように形成する。ここで、吸熱量の異なる2種以上の印刷領域を例示すると、例えば、「黒色領域と白色領域」、「濃茶色領域と淡黄色領域」、「濃茶色領域と白色領域」、「黒色領域と淡黄色領域」、「黒色領域と無色領域」、「濃茶色領域と無色領域」が挙げられる。上記石目模様であれば、例えば、「黒色領域と白色領域」に分けて印刷層を構成できる。また、木目模様であれば、「濃茶色領域と淡黄色領域」に分けて印刷層を構成できる。このような2種以上の印刷領域は色調により区別され、更に色調の違いにより吸熱量も異なる。
【0021】
なお、本明細書における吸熱量は、化粧シートに一定量の熱線を一定時間照射した際の温度上昇率を意味する。好ましい吸熱量の違いとしては、化粧シートを加熱して(黒色や濃茶色等の)エンボス模様を賦型したい領域が130〜190℃になったときに、(白色や淡黄色等の)エンボス模様を賦型したくない領域の温度がそれよりも50℃以上低いことが好ましい。上記130〜190℃はエンボス模様が賦型可能な温度であり、130〜190℃の軟化領域とそれよりも50℃以上低い非軟化領域とが形成されることにより、エンボスが賦型される領域と賦型されない領域とを分けることができる。
【0022】
吸熱量の違いが大きいほど、吸熱量の違いを利用して樹脂層の温度上昇の違いを制御し易く、それ故にエンボス模様を賦型する領域を制御し易い。一般に、濃色領域、淡色領域、無色領域の順に吸熱量が減少することを利用して印刷領域を区分すればよい。
【0023】
上記2種以上の印刷領域が形成される限り印刷層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。
【0024】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等がさらに配合してもよい。
【0025】
結着材樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。
【0026】
より具体的には、例えば、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等を使用できる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂変性又は混合樹脂、その他の樹脂も使用できる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上で使用できる。
【0027】
印刷層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。
【0028】
上記以外にも、例えば、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法などを用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0029】
印刷層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1〜15μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜10μm程度である。
【0030】
≪接着剤層≫
接着剤層は、印刷層と樹脂層との間に介在させてもよい。本発明では、樹脂層として、後記の透明性樹脂層及び透明性表面保護層を好適に使用できる。以下、印刷層上に接着剤層を介して樹脂層(透明性樹脂層及び透明性表面保護層)を積層する態様を説明する。
【0031】
接着剤層で使用する接着剤は、絵柄層又は透明性樹脂層を構成する成分等に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等を含む各種接着剤を使用できる。また、反応硬化タイプのほか、ホットメルトタイプ、電離放射線硬化タイプ、紫外線硬化タイプ等の接着剤でもよい。
【0032】
接着剤層は、印刷層が認識できる限り、透明でも半透明でもよい。
【0033】
なお、本発明では、必要に応じ、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。
【0034】
接着剤層の厚みは、透明性保護層、使用する接着剤の種類等によって異なるが、一般的には0.1〜30μm程度とすれば良い。
【0035】
≪透明性樹脂層≫
透明性樹脂層は透明である限り着色されていてもよく、印刷層が視認できる範囲内で半透明であってもよい。
【0036】
上記樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。上記の中でも、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。より好ましくは、立体規則性を有するポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂を用いる場合は、溶融ポリオレフィン系樹脂を押し出し法により透明性樹脂層を形成することが望ましい。
【0037】
透明性樹脂層には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0038】
透明性樹脂層の厚みは特に限定されないが、一般的には10〜150μm程度とすれば良い。
【0039】
≪透明性表面保護層≫
透明性樹脂層の上には、透明性表面保護層が形成されている。透明性表面保護層は限定的ではないが、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。実質的には、これらの樹脂から形成されているものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂により透明性表面保護層を形成する場合には、化粧シートの耐摩性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高め易い。
【0040】
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0041】
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0042】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250〜100000程度が好ましい。
【0043】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0045】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
【0046】
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常190〜380nmが好ましい。
【0047】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましい。
【0048】
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
【0049】
透明性表面保護層は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、溶剤等を含んでもよい。
【0050】
透明性表面保護層は、例えば、透明性ポリプロピレン系樹脂層の上に電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。電離放射線硬化型樹脂の場合には、電子線照射により樹脂硬化する。
【0051】
透明性表面保護層の厚さは特に限定されず、最終製品の特性に応じて適宜設定できるが、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μm程度である。
【0052】
≪エンボス加工≫
化粧シートは、透明性表面保護層側からエンボス加工が施される。
【0053】
エンボス加工は、化粧シートに木目模様等の所望のテクスチャーを付与するために行う。本発明では、印刷層と同調したエンボス模様を賦型するために、印刷層に吸熱量の異なる2種以上の印刷領域を形成している。
【0054】
化粧シートを加熱ドラム及び赤外線輻射ヒーターで加熱すると、印刷層の吸熱量の違いにより印刷層上の樹脂層の温度上昇に違いが生じる。これにより、樹脂層に軟化領域と非軟化領域が形成される。通常はシートの軟化領域が130〜190℃の範囲になるように調整すればよい。例えば、黒色領域と白色領域であれば黒色領域の方が吸熱量が大きいため、黒色領域に接している樹脂層部分が先に温度上昇して軟化領域となる。
【0055】
その後は、所望の形の凹凸模様を有するエンボス板で樹脂層全面を加圧・賦形し、冷却固定することにより軟化領域にのみテクスチャーが賦型される。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式エンボス機で行える。
【0056】
エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。
【0057】
エンボス加工を施した場合には、必要に応じて、エンボス凹部にワイピング加工によりインキを充填してもよい。例えば、エンボス凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する。充填するインキ(ワイピングインキ)としては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。特に木目導管溝凹凸に対してワイピング加工を行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することにより商品価値を高めることができる。
【0058】
本発明では、透明性表面保護層中に他の成分が含まれていても良い。例えば、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤、光安定剤、ツヤ調整剤、ブロッキング防止剤、滑剤等の添加剤を配合できる。
【0059】
化粧材
本発明のエンボス同調化粧シートは、各種被着材と接合することにより、化粧材とできる。被着材の材質は特に限定されず、例えば、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の材質が挙げられる。
【0060】
具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(ガラス繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス材料などが挙げられる。
【0061】
金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料(金属鋼板)が挙げられる。
【0062】
木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。
【0063】
プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0064】
このような被着体の形状は特に限定されず、通常はフローリング等への設置を考慮して平板とすればよい。
【0065】
被着材と接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナーを用いてサネ加工、V字形状の条溝付与、四辺の面取り等を施してもよい。
【発明の効果】
【0066】
本発明のエンボス同調化粧シートは、印刷層に色調により区別される吸熱量の異なる2種以上の印刷領域を有する。この印刷領域は、例えば、黒色領域と白色領域であり、これらは色調が異なることにより吸熱量も異なる。そのため、化粧シートを均一に加熱しても吸熱量の相違により樹脂層に温度斑が生じて軟化領域と非軟化領域とが形成される。この軟化領域と非軟化領域とを形成することにより、樹脂層全面にエンボス版を押圧すると軟化領域のみにエンボス模様が賦型される。これにより、エンボス模様を特定の印刷領域に同調させて賦型することができる。このような方法によれば、エンボス版の押圧位置を調整することなく、所望部位にのみエンボス模様を賦型することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下に実験例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0068】
実施例1〜2
(エンボス同調化粧シートの作製)
0.06mm厚の着色ポリプロピレン(基材シート)に印刷層(2μm)を印刷により形成した。次いで印刷層の上に0.08mm厚の透明性ポリプロピレン系樹脂フィルムを、ウレタン系ドライラミネート用接着剤を用いて接着した。次いで透明性樹脂層の上に電子線硬化型透明性表面保護層(15μm)を形成した。次いで化粧シートを加熱して透明性表面保護層側から全面にエンボス版を押圧した。
【0069】
各実施例における印刷層は次の通りとした。各領域のL*a*b*表色系を併記する。
(実施例1)
石目柄とし、白色領域(L:24.20、a:+0.28、b:+1.01)、黒色領域(L:36.20、a:+0.41、b:+0.80)、グレー色(L:58.56、a:-0.04、b:+0.39)領域から構成した。
(実施例2)
図1で示される通り、木目柄(濃茶色領域 L:25.22、a:+2.54、b:+2.97)及び淡色四角枠から構成した。
【0070】
淡色四角枠は、次の通りとした。
【0071】
実施例2−1:アイボリー領域(L:70.89、a:+7.17、b:+23.01)
実施例2−2:白色領域(L:85.00、a:-1.67、b:+0.86)
実施例2−3:黄白色領域(L:84.45、a:-0.32、b:+8.97)
実施例2−4:ベージュ領域(L:75.67、a:+3.80、b:+17.12)
実施例2−5:黄土色領域(L:60.68、a:+10.19、b:+28.56)
実施例2−6:オレンジ色領域(L:60.01、a:+14.99、b:+31.35)
(考 察)
実施例1では、3領域は何れも吸熱量が異なるため、化粧シートを加熱することにより、黒色領域、又は黒色領域及びグレー色領域に選択的にエンボス模様を賦型することができ、これによりエンボス同調化粧シートが得られた。
【0072】
実施例2では、2−1〜2−6の全ての態様において、濃茶色領域の方が吸熱量が大きく木目柄に選択的にエンボス模様を賦型することができた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施例2で用いた印刷層の上面図である。木目柄と矢印部分で示す淡色四角枠が印刷されている。
【図2】本発明のエンボス同調化粧シートの模式図(一例)である。印刷層2に同調したエンボス模様(凹凸)が賦型されている。
【符号の説明】
【0074】
1.基材シート
2.印刷層
3.透明性接着剤層
4.樹脂層(透明性表面保護層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に印刷層及び樹脂層が順に積層されており前記樹脂層に前記印刷層と同調したエンボス模様が賦型されている化粧シートであって、
(1)前記印刷層は、色調により区別される吸熱量の異なる2種以上の印刷領域を有し、
(2)前記エンボス模様は、エンボス賦型前の化粧シートを加熱し、前記吸熱量の違いにより前記樹脂層に軟化領域と非軟化領域とを形成し、前記樹脂層全面にエンボス版を押圧して前記軟化領域のみにエンボス模様を賦型することにより形成される、
ことを特徴とするエンボス同調化粧シート。
【請求項2】
前記吸熱量の異なる2種以上の印刷領域は、「黒色領域と白色領域」、「濃茶色領域と淡黄色領域」、「濃茶色領域と白色領域」、「黒色領域と淡黄色領域」、「黒色領域と無色領域」、又は、「濃茶色領域と無色領域」を有する、請求項1に記載のエンボス同調化粧シート。
【請求項3】
前記基材シート上に前記印刷層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層が順に積層されている、請求項1又は2に記載のエンボス同調化粧シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のエンボス同調化粧シートと被着材とを貼着してなる化粧材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−76365(P2010−76365A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250017(P2008−250017)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】