説明

エーテルピロリドンカルボン酸含有の水混合金属処理液

本発明の対象は、ベース油または基油、次式(1)で表されるエーテルピロリドンカルボン酸、


[式中、
は、C−C30−アルキル、C−C30−アルケニル、C−C30−アリール、C−C30−アルキルアリールであり、
Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウムであり、
Xは、C−C−アルキレン、または次式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)基である。


(式中、
lは、1〜50の数であり、
m、nは、lとは独立してかつ互いに独立して、0〜50の数であり、
、R、Rは互いに独立して、水素、CH、またはCHCHであり、
Yは、C−C−アルキレンである)]
またはそれの塩10〜50重量%、並びに、VE−水中の組成物の5重量%濃度エマルションがpH7〜11を示すような量のpH調整剤/中和剤を含む、組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化作用および防食作用を示すエーテルピロリドンカルボン酸またはその塩を含有する水混合金属処理液、ならびに水混合金属処理液を製造するための濃厚物に関する。
【背景技術】
【0002】
水混合金属処理液は世界的に金属処理液として大量に調達されており、さらにそのうちでエマルションが大きな割合を占めている。これらのエマルションは、典型的には以下の組成を有する濃厚物から、水と混合することによって調製される。
a) ベース油または基油、たとえば鉱油、合成炭化水素、アルキル化芳香族化合物、脂肪酸エステル、天然油、および合成ポリマーエステル
b) 乳化剤
c) 防食剤
d) pH調整剤/中和剤、たとえば、アミンおよびアルカノールアミン
e) 安定剤、相溶化剤(Phasenvermittler)
f) 極圧添加剤(EP)
g) 耐摩耗添加剤(AW)
h) 消泡剤
i) 殺生物剤
j) 金属イオン、たとえば硬水に対する錯化剤
k) 非鉄金属阻害剤
【0003】
濃厚物中には、基油以外に乳化剤および防食剤が量的に多く含まれている。非イオン系乳化剤の他には、とりわけ、一部防食作用も有するイオン系乳化剤が使用される。その際乳化剤に基本的に要求されていることの一つとは、エマルションの安定化の他には急速な”自発的”エマルション形成であり、これは、水相中に導入される際の濃厚物の急速な分散(Verteilung)(”ブルーミング”)によって示される。
【0004】
一般に、濃厚物と水は、1:5〜1:100の比率、好ましくは1:10〜1:30の比率で混合される。
【0005】
経済的理由、および混合の煩雑さを減じる目的で、添加剤の数またはその量を減らすために複数の機能を有する添加剤が好ましくは使用される。添加剤の数が少ないほど、そしてそれらが互いに相溶性が良好であるほど、安定剤または相溶化剤を使用する必要性が低減される。殺生物剤、消泡剤、および硬水に対する錯化剤のような添加剤の使用を不必要とするか、または少なくとも低減する添加剤も望ましい。生態学的観点から今日では、容易に生分解可能である添加剤も要求されている。
【0006】
非イオン系乳化剤は防食作用を有さない一方で、一般的な教科書(たとえば、Theo Mang, W. Dressel、”Lubricants and Lubrication”, Wiley−VCH, Weinheim, 2008;S. 400ff.(非特許文献1)、またはJ. P. Byers, ”Metalworking fluids”, Taylor and Francis、Boca Raton, 2006;S. 132ff.(非特許文献2)から、防食作用を有するアニオン系乳化剤、たとえば、7〜11の優勢なpH値においてアニオン性の形態で存在する脂肪酸およびナフテン酸、石油スルホネート、またはリン酸モノエステルおよびリン酸ジエステルが知られている。しかしながら、これらの教科書はまた、それらの物質群には多少とも強い硬水不安定性が共通していることを記述している。一般に金属処理液を製造するには飲用水が使用され、そして部分的には何ヵ月間にもわたるそれら液体の使用期間中にその使用水が蒸発し、そして加工された金属工作物が脱塩されることによって金属イオンの数が増えるため、それらの化合物の使用は、特に硬水地域において制限されている。
【0007】
欧州特許出願公開第0501368号明細書(特許文献1)は、卓越した防食剤および乳化剤である、一般に、ある量で硬水安定性がありかつそれほど発泡性でないアルケニルコハク酸セミアミドおよびアルケニルコハク酸イミドを記載している。しかし、特にそのセミアミドはある程度の加水分解不安定性を有するので、乳化剤の使用時間を短縮する。
【0008】
欧州特許出願公開第1354905号明細書(特許文献2)およびそこに引用された文献では、金属処理液中に防食作用を有する乳化剤として使用可能であり、そして非常に良好な硬水安定性を有するエーテルカルボン酸が記載されている。しかし、その防食作用は、場合によりわずかにすぎない。残念なことに、それらの化合物には強い発泡傾向があるため、洗剤および洗浄剤中での使用が示されている。さらにその調製は高い水の消費量、および多量の塩化ナトリウムの発生を伴い、生態学的にも経済的にも不都合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0501368号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1354905号明細書
【特許文献3】米国特許第4304690号明細書
【特許文献4】米国特許第4298708号明細書
【特許文献5】米国特許第4235811号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Theo Mang, W. Dressel、”Lubricants and Lubrication”, Wiley−VCH, Weinheim, 2008;S. 400ff.
【非特許文献2】J. P. Byers, ”Metalworking fluids”, Taylor and Francis、Boca Raton, 2006;S. 132ff.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、水混合金属処理液において使用するために、良好な腐食保護特性を有する、容易に入手可能な、硬水中で安定かつ弱発泡性の乳化剤を見出すことであった。
【0012】
縮合反応においてエーテルアミン類およびイタコン酸類から入手できるエーテルピロリドンカルボン酸が、水混合金属処理液中での乳化剤として際だって適していることが今や見出された。というのも、エーテルピロリドンカルボン酸は非常に良好な硬水安定性であり、そして発泡傾向および腐食保護において公知のエーテルカルボン酸より勝っているからである。さらなる利点とは、エーテルピロリドンカルボン酸が非イオン系乳化剤、防食剤ならびにEP/AW添加剤のような追加的な公知の添加剤のほとんどとの相容性が高く、したがって容易に調合されることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の対象は、ベース油または基油と、次式(1)で表されるエーテルピロリドンカルボン酸、
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、
は、C−C30アルキル、C−C30アルケニル、C−C30アリール、C−C30アルキルアリールであり、
Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウムであり、
Xは、C−Cアルキレン、または次式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)基である。
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、
lは、1〜50の数であり、
m、nは、lと独立してかつ互いに独立して、0〜50の数であり、
、R、Rは互いに独立して、水素、CH、またはCHCHであり、
Yは、C−C−アルキレンである)]
またはその塩10〜50重量%および脱塩水中の前記組成物の5重量%エマルションがpH7〜11を示すような量のpH調整剤/中和剤を含む組成物である。
【0018】
本発明の組成物は、本明細書中において濃厚物とも称される。同様に、金属処理剤と金属処理液の両概念は同義的に使用される。
【0019】
本発明のさらなる対象は、本発明の組成物および水を1:5〜1:100の重量比で含む含水金属処理剤である。本発明の金属処理剤は一般にエマルションの形態で存在する。
【0020】
本発明のさらなる対象は、含水金属処理剤中における、0.1〜10%の濃度での乳化剤および/または防食剤としての、上記の式(1)で表されるエーテルピロリドンカルボン酸の使用である。
【0021】
本発明の組成物は、好ましくは100重量%までのベース油または基油を含む。
【0022】
上記の式(1)の置換基Mは、遊離酸の場合、水素であり、塩の場合、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンである。アンモニウムイオンの場合、好ましくは、以下の本文でpH調整剤/中和剤として記載されるアミンのプロトン化に由来する化合物である。
【0023】
残基Rは好ましくは、線状または分岐状のC−C30アルキル鎖またはアルケニル鎖、たとえば、n−オクチルまたはイソオクチル、n−ノニルまたはイソノニル、n−デシルまたはイソデシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、またはより長鎖の残基である。同様に、Rは、単核または多核であって、そして置換基、特にアルキル鎖を有することのできるC−C30−アリール残基であることができる。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態において、残基R−Oは、イソトリデカノールのような合成アルコール、または商品名Lial(登録商標)またはExxal(登録商標)で市場から入手可能なフィッシャー・トロプシュアルコールから誘導される。
【0025】
さらなる好ましい一実施形態において、残基R−Oは、脂肪族アルコールまたは脂肪族アルコールの混合物由来である。適切な脂肪族アルコールは、たとえば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ココイルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リシニルアルコール、リノレイルアルコール、ベヘニルアルコール、および獣脂アルコールである。特に好ましくは、残基R−Oがオレイルセチルアルコールに由来するものである。
【0026】
さらなる好ましい一実施形態において、残基R−Oは、アルキルフェノール、たとえば、ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデセニルフェノール、ヘキサデセニルフェノール、オクタデセニルフェノール、およびエイコサデセニルフェノール、C22−アルキルフェノール、C24−アルキルフェノール、C28−アルキルフェノールもしくはC30−アルキルフェノール、またはそれの混合物から誘導される。
【0027】
XおよびYは、好ましくは、式−(CHR16k−(式中、R16は、H、CHまたはCHCHを表し、kは2〜6の数を示す)で表される基を示す。R16は好ましくは、Hを示す。kは好ましくは、2〜4の数を示す。特に好ましくは−(CHR16k−は、式−CH−CH−、−CH−CH(CH)−、−(CH−または−CH−CH(CHCH)−の基を示す。全ての単位−(CH16)−中において、R16は、同じ意味を有するかまたは異なる意味を有することができる。
【0028】
lは好ましくは、2〜10の数を示す。
【0029】
mは好ましくは、1〜10の数を示す。さらなる好ましい一実施形態において、mは、0、1、2、または3を示す。
【0030】
nは好ましくは、1〜10の数を示す。さらなる好ましい一実施形態において、mは、0、1、2、または3を表し、nは0を示す。
【0031】
エーテルピロリドンカルボン酸の製造は従来技術から知られており、例1〜3における記載されているのと同様に、イタコン酸を、たとえば、商品名Jeffamine(登録商標)の名前で市場から入手可能な適当なエーテルアミンR−O−X−NHに付加し、またはアルコールもしくはアルコールアルコキシラートから直接アミノ化し、またはアクリルニトリルをアルコールもしくはアルコールアルコキシラートに付加し、その後に水素添加することによって行われる。
【0032】
米国特許第4304690号明細書(特許文献3)、米国特許第4298708号明細書(特許文献4)、および米国特許第4235811号明細書(特許文献5)は、たとえば、エーテルピロリドンカルボン酸の製造、および洗剤におけるその使用、およびポリウレタンフォームを製造するため触媒としてのその使用について記載している。
【0033】
エーテルピロリドンカルボン酸の他に、本発明の組成物は、鉱油、合成炭化水素、アルキル化芳香族化合物、天然油、脂肪酸エステル、合成エステルまたは合成炭化水素ポリマー、およびポリマーエステルからなる群から選択される、少なくとも一つの基油またはベース油を含む。
【0034】
好ましくは8〜10、および特に好ましくは8.5〜9.5である、所望されるpH値を調節するために、本発明の組成物または含水金属処理剤は中和剤を含む。
【0035】
適切な中和剤は、次式(3)で表されるアミンである。
NR (3)
【0036】
[式中、R、RおよびRは互いに独立して、水素、または1〜100個のC原子を有する炭化水素残基を示す。]
【0037】
第一の好ましい実施形態において、Rおよび/またはRおよび/またはRは、互いに独立して、脂肪族残基を示す。この脂肪族残基は、好ましくは1〜24個、特に好ましくは2〜18個、就中3〜6個のC原子を有する。該脂肪族残基は、線状、分岐状または環状であることができる。これは、さらに飽和されているかまたは不飽和であることができる。好ましくは、脂肪族残基は飽和されている。脂肪族残基は、たとえば、ヒドロキシ基、C−C−アルコキシ基、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基、および/またはたとえばフェニル残基のようなC−C20−アリール基などの置換基を有することができる。このC−C20−アリール残基はそれらの側で、場合によっては、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル残基、C−C20−アルキル基、C−C20−アルケニル基、ヒドロキシル基、たとえばメトキシ基のようなC−C−アルコキシ基、アミド基、シアノ基、ニトリル基、および/またはニトロ基で置換されることができる。特に好ましい一実施形態では、Rおよび/またはRおよび/またはRは、互いに独立して、水素、C−C−アルキル残基、C−C−アルケニル残基、またはC−C−シクロアルキル残基を示し、特に1個、2個もしくは3個のC原子を有するアルキル残基を示す。これらの残基は、3個まで置換基を有することができる。特に好ましい脂肪族残基Rおよび/またはRは、水素、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、n−プロピル、イソプロピル、ヒドロキシプロピル、n−ブチル、イソブチル、およびtert.−ブチル、ヒドロキシブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルおよびメチルフェニルである。
【0038】
さらなる好ましい一実施形態において、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に環を形成する。この環は好ましくは、4員又はそれ以上の、たとえば、4員、5員、6員またはそれ以上の環員を有する。その際、好ましいそれ以外の環員は、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子である。これらの環はそれらの側に、たとえばアルキル残基のような置換基を有することができる。適切な環構造は、たとえば、モルホリニル残基、ピロリジニル残基、ピペリジニル残基、イミダゾリル残基およびアゼパニル残基である。
【0039】
さらなる好ましい一実施形態において、R、Rおよび/またはRは互いに独立して、場合によっては置換されたC6-C12アリール基、または5〜12員環を有する、場合によっては置換されたヘテロ芳香族基を示す。
【0040】
さらなる好ましい一実施形態において、R、Rおよび/またはRは互いに独立して、ヘテロ原子が割り込んだアルキル基を示す。特に好ましいヘテロ原子は、イオウ原子および窒素原子である。
【0041】
したがって、R、Rおよび/またはRは互いに独立して、好ましくは、次式(4)で表される残基を示す。
−(R10−O)−R11 (4)
【0042】
[式中、
10は、2〜6個、好ましくは2〜4個のC原子を有するアルキレン基、たとえば、エチレン、プロピレン、ブチレンまたはそれからの混合物を示し、
11は、水素、1〜24個のC原子を有する炭化水素残基、または式−R10−NR1213で表される基を示し、
aは、2〜50、好ましくは3〜25、特に好ましくは4〜10の数を示し、そして
12、R13は互いに独立して、水素、1〜24個、好ましくは2〜18個のC原子を有する脂肪族残基、5〜12個の環員を有するアリール基もしくはヘテロアリール基、1〜50個のポリ(オキシアルキレン)単位を有するポリ(オキシアルキレン)基(ここで、ポリオキシアルキレン単位は、2〜6個のC原子を有するアルキレンオキシド単位から誘導される)を示すか、あるいはR12およびR13は、これらに結合している窒素原子と一緒に、4員、5員、6員もしくはそれ以上の環員を有する環を形成する。]
【0043】
さらに好ましくは、R、Rおよび/またはRは互いに独立して、次式(5)で表される残基を示す。
−[R14−N(R15)]−(R15) (5)
【0044】
[式中、
14は、2〜6個、好ましくは2〜4個のC原子を有するアルキレン基、たとえば、エチレン、プロピレン、またはそれからの混合物を示し、
各R15は、互いに独立して、水素、24個までのC原子、たとえば、2〜20個のC原子を有するアルキル残基またはヒドロキシアルキル残基、ポリオキシアルキレン残基−(R10−O)−R11、またはポリイミノアルキレン残基−[R14−N(R15)]−(R15)(式中、R10、R11、R14およびR15は上述の意味を有し、qおよびpは互いに独立して1〜50を示す)を示し、そして
bは、1〜20、好ましくは2〜10の数、たとえば、3、4、5または6を示す。]上記の式(5)で表される残基は、好ましくは1〜50個、特に2〜20個の窒素原子を含む。
【0045】
特に好ましくは、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミンのような水溶性アルキルアミン、および水溶性である限り、より長い鎖長のモノアルキルアミン、ジアルキルアミンおよびトリアルキルアミンである。アルキル鎖は、本明細書においては分岐状であることができる。同様に、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミンのようなオリゴアミン、それの高級同族体、ならびにそれからの混合物が適している。このグループでさらなる適したアミン類は、これらのオリゴアミンのアルキル化、特にメチル化されたもの、たとえばN,N−ジメチルジエチレンアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、および同様の構造原理のより長い鎖長のおよび/または高級アルキル化アミンである。本発明により特に適ししているのは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジグリコールアミン、トリグリコールアミンのようなアルカノールアミン、および高級同族体、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、プロピルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、およびより長い鎖長のアルキルジエタノールアミンであり、その際、そのアルキル残基は環状および/または分岐状であることができる。さらなる適したアルカノールアミンは、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミンのようなジアルキルエタノールアミン、およびより長い鎖長のジアルキルエタノールアミンであり、その際、そのアルキル残基は分岐状または環状であることができる。さらに本発明の趣旨においては、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、および高級同族体、ならびに相当するモノメチルプロパノールアミンおよびジメチルプロパノールアミン、およびより長い鎖長のモノアルキルアミノアルコールおよびジアルキルアミノアルコールを使用することもできる。とりわけ、2−アミノ−2−メチルプロパノール(AMP)、2−アミノプロパンジオール、2−アミノ−2−エチルプロパンジオール、2−アミノブタンジオール、および他の2−アミノアルカノール類、アミノアルキルアミンアルコール類、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンのような特殊アミンが適しており、さらにはメチルグリコールアミン、メチルジグリコールアミン、および高級同族体、ジ(メチルグリコール)アミン、ジ(メチルジグリコール)アミン、およびそれらの高級同族体、ならびに対応するトリアミン、およびポリアルキレングリコールアミン(たとえば、Jeffamine(登録商標))のような末端閉鎖型の代表物も適している。慣用的にそして本発明の趣旨において、所望されるpH値に調節するために上述のアミンの混合物が使用される。
【0046】
さらなる適した中和剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物、たとえば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、および酸化カルシウムなどである。
【0047】
それらの中和剤は、7〜11のpH値に調節するに必要な量で使用される。このために必要な量は好ましくは、中和剤に応じて、本発明の組成物中、1〜30%、好ましくは5〜15%であり、含水金属処理液中、0.01〜6%、好ましくは0.1〜1.5%(重量パーセント)である。
【0048】
本発明の組成物は、基油、エーテルピロリドンカルボン酸またはそれの塩、およびpH調整剤/中和剤の他に、さらに乳化剤、好ましくは非イオン系乳化剤を含むことができる。適した乳化剤は、たとえば、脂肪族アルコールエトキシラート、脂肪酸エトキシラート、脂肪酸アミドエトキシラートである。それに適した脂肪酸は、カプリル酸、ラウリル酸、ミリスチル酸、ココイル酸、パルミチル酸、ステアリル酸、オレイル酸、リシニル酸、リノレイル酸、ベヘニル酸、およびリシノール酸、ならびにそれの混合物であって、それらから適した脂肪族アルコールおよび脂肪族アミドを調製することができる。エトキシ化度は、一般に、官能基(OH、COOH、NH)1個当たり、エチレンオキシド1〜10、好ましくは2〜6モルのエチレンオキシドである。同様に適しているのが、ヒマシ油のエトキシラート、およびそれのエステルである。
【0049】
典型的には、本発明の組成物中に非イオン系乳化剤1〜50%、好ましくは5〜25%、特に好ましくは10〜20%、および含水金属処理剤中に非イオン系乳化剤0.01〜10%、好ましくは0.05〜2.5%、特に好ましくは0.1〜2%(総重量に基づく重量パーセント)を含有する。
【0050】
本発明によれば、導入部で言及したアニオン系乳化剤、たとえば、石油スルホネート、脂肪酸、アルケニルコハク酸セミアミド、アルケニルコハク酸セミイミド、ならびに本発明の組成物の、または含水金属処理剤中のエーテルカルボン酸を含むこともできるが、ただし、一般に、不利な特性が本質的な影響を及ぼさない量でだけ含むことができる。したがってこれらの添加剤はまた、相乗的な方法で腐食保護に貢献することもできる。これらのアニオン系乳化剤は、存在する中和剤によってアニオンの形態に変換される塩として、またはそれの遊離酸の形態で添加することができる。
【0051】
本発明のさらなる一実施形態において、本発明の組成物または含水金属処理剤は、さらなる防食剤、特に水溶性防食剤を含むことができる。適した防食剤は、たとえば、ベンゼンスルホン酸アミドカプロン酸、トルエンスルホン酸アミドカプロン酸、ベンゼンスルホン酸(N−メチル)アミドカプロン酸、トルエンスルホン酸(N−メチル)アミドカプロン酸(全て下記式(6))、アルカノイルアミドカルボン酸、特にイソノナノイルアミドカプロン酸(下記式(7))、およびトリアジン−2,4,6−トリス(アミノヘキサン酸)(下記式(8))、あるいは下記式(6)〜(8)で表される化合物のアルカリ塩、アルカリ土類塩およびアミン塩である。
【0052】
a) トルエンスルホンアミドカプロン酸またはベンゼンスルホンアミドカプロン酸(式(6))
【0053】
【化3】

【0054】
[式中、R、R=HまたはCHである。]
【0055】
b) イソノナノイルアミドカプロン酸(式(7))
【0056】
【化4】

【0057】
c) トリアジン−トリスアミノヘキサン酸(式(8))
【0058】
【化5】

【0059】
さらなる公知の、かつ適した防食剤は、線状または分岐状のカルボン酸、たとえば、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−イソデカン酸、および別のカルボン酸、ジカルボン酸、たとえばコハク酸、アジピン酸、マレイン酸、クエン酸、ならびに鎖が分岐状または環状であることもできる、より長い鎖長のジカルボン酸、たとえば、デカンジ酸、ウンデカンジ酸またはドデカンジ酸、およびポリカルボン酸である。同様に適した防食剤は、アルカンスルホン酸アミド、アルカンスルホンアミドカルボン酸およびフタル酸セミアミドである。さらには、上記に挙げた化合物の塩を使用することもできる。本発明により同様に使用できる広く普及した防食剤は、ホウ酸およびその塩である。
【0060】
さらなる適した防食剤は、カルボン酸アミド、特にカルボン酸アルカノールアミドである。特にこの場合重要なのは、脂肪酸のアルカノールアミド、たとえば、トール油脂肪酸モノエタノールアミド、トール油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ならびにオレイン酸、リノレン酸、ステアリン酸、ならびにその他の公知の脂肪酸の、モノエタノールアミドおよびジエタノールアミドである。その際、これらのアルカノールアミドは、油脂および油、たとえば、トール油、ナタネ油、魚油、オリーブ油、一般的な植物油、ヒマワリ油、またはヒマシ油から直接製造することができる。
【0061】
これらの防食剤は、本発明による組成物の構成成分であることができるが、含水金属処理剤を調製する際に水相に混合することもできる。本発明の組成物中の防食剤の濃度は、好ましくは1〜20%、好ましくは1〜10%、特に好ましくは2〜5%であることができる。水相中では、0.1〜10%、好ましくは0.1〜5%、特に好ましくは0.5〜2%添加される。含水金属処理剤中では、典型的に0.01〜4%、好ましくは0.01〜1%、特に好ましくは0.01〜0.5%(総重量に基づく重量パーセント)である。
【0062】
さらに本発明の組成物および含水金属処理剤は、可溶化剤、EP/AW添加剤、たとえば、クロロパラフィン、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルおよびリン酸トリエステル、脂肪酸エステル、ポリマーエステル、ならびに硫化油、脂肪およびオレフィン、殺生物剤、消泡剤、非鉄金属阻害剤、ならびに錯化剤を含有できる。好ましい実施形態において、添加剤の低い発泡傾向および良好な硬水安定性のために、消泡剤または錯化剤は必要ではない。本発明の組成物中におけるこれらの添加剤の濃度は、一般に、5%未満、好ましくは0.1〜2.5%、特に0.1〜1%である。含水金属処理剤中においては、添加剤の使用濃度は、濃厚物について述べられた量の1〜20%に相当する(総重量に基づく重量パーセント)。
【0063】
本発明の組成物からの含水金属処理剤の製造は、好ましくは加熱せずに、20〜60℃の温度で適した撹拌装置または混合装置によって行われる。その際、濃厚物の水相に対する比率は、1:20〜1:100、好ましくは1:10〜1:30である。
【0064】
添加剤の混合による濃厚物の製造は、任意のいかなる順序で行うこともできるが、好ましくは、鉱油、合成炭化水素、天然油、脂肪酸エステル、合成エステルまたは合成炭化水素ポリマーからなる群から選択される基油が供給され、引き続いて中和剤が添加され、それからゲル相または高い粘度が生じないよう適した順序で添加剤が計量添加される。中和剤は、全部または一部が水酸化物または酸化物である場合、これらは一般に最後になって初めて添加される。本発明のエーテルピロリドンカルボン酸は、どの順でも混合工程に加えることができるが、好ましくは、基油およびアミンベースの中和剤の後に加えられる。混合の最後に、混濁を取り除くために適した可溶化剤を添加する必要がある場合がある。
【実施例】
【0065】
例1〜3: N−置換5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸を製造するための一般的な指示
【0066】
標準撹拌装置中に、1当量のアミンを仕込み、そして撹拌下で50℃に加熱する。次に1当量のイタコン酸を少量ずつ加え、その反応混合物をゆっくりと180℃に加熱する。反応が進行する間に、1当量の反応水が留去される。得られた生成物は、酸価(SZ)およびアミド−窒素(AN)によって特徴づける。
【0067】
例1
1−[2−(2−ドデシルオキシ−1−メチル−エトキシ)−1−メチル−エチル]−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸
【0068】
2−(2−ドデシルオキシ−1−メチル-エトキシ)−1−メチル−エチルアミン302gおよびイタコン酸130gから、SZ=136mgKOH/gおよびAN=3.1%を有する1−[2−(2−ドデシルオキシ−1−メチル−エトキシ)−1−メチル−エチル]−5−オキソピロリジン−3−カルボン酸(下記式(9))410gが得られた。
【0069】
【化6】

【0070】
例2
5−オキソ−1−[3−(2,5,8−トリメチル−デシルオキシ)−プロピル]−ピロリジン−3−カルボン酸
【0071】
3−(2,5,8−トリメチル−デシルオキシ)−プロピルアミン257gおよびイタコン酸130gから、SZ=151mgKOH/gおよびAN=3.8%を有する5−オキソ−1−[3−(2,5,8−トリメチル−デシルオキシ)−プロピル]−ピロリジン−3−カルボン酸(下記式(10)365gが得られた。
【0072】
【化7】

【0073】
例3
5−オキソ−[2−(パラ−ノニルフェノキシ−(トリデシル−オキシプロピル))−1−メチル−エチル−]ピロリジン−3−カルボン酸
【0074】
パラ−ノニルフェノキシ−(トリデシル−オキシプロピル)−アミン255gおよびイタコン酸32.5gから、SZ=47.1mgKOH/gおよびAN=1.2%を有する5−オキソ−[パラ−ノニルフェノキシ−(トリデシル−オキシプロピル)−]ピロリジン−3−カルボン酸(下記式(11))275gが得られた。
【0075】
【化8】

【0076】
例4〜10:水混合可能濃厚物の組成および含水金属処理剤(エマルション)使用技術的データ
【0077】
例4〜10の本発明の含水金属処理剤の組成:

【0078】
清澄化させるために、濃厚物に可溶化剤を混合しなければならなかった。すなわち、100%濃厚物に、3%トール油脂肪酸およびEO/OH(Genapol O 020)2モルでエトキシ化された3%オレイルアルコールを加えた。比較しやすくするために、濃厚物は理想的な物理特性に最適化しなかった。
【0079】
結果を表1に示す。例4〜7は、従来技術を示している。
【0080】
【表1】

【0081】
例4〜10は、本発明の組成物からの含水金属処理剤が発泡挙動において従来技術に匹敵することを示している(例4の低い発泡高さは、消泡作用を及ぼす石灰石けんの分離析出に起因する)。エマルション品質(乳濁<乳白色<透明)は、同一の使用濃度において同等である(例10)か、または明らかにより良好であり(例8および9)、硬水中で悪影響を受けない。腐食保護は、使用濃度が低い場合でさえも付与され、そして例4および5に比べて非常に向上されている。
【0082】
したがって、本発明の組成物からの含水金属処理剤は、従来技術からの全ての例に比べて優れたエマルション品質、使用範囲、およびより長い寿命を有するものである。
【0083】
Oleth−5=ポリオキシエチレン(5)−オレイルエーテル
DEA=ジエタノールアミン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース油または基油、次式(1)で表されるエーテルピロリドンカルボン酸、
【化1】

[式中、
は、C−C30−アルキル、C−C30−アルケニル、C−C30−アリール、C−C30−アルキルアリールであり、
Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウムであり、
Xは、C−C−アルキレン、または次式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)基である。
【化2】

(式中、
lは、1〜50の数であり、
m、nは、lとは独立してかつ互いに独立して、0〜50の数であり、
、R、Rは互いに独立して、水素、CH、またはCHCHであり、
Yは、C−C−アルキレンである)]
またはそれの塩10〜50重量%、並びに、VE−水中の組成物の5重量%濃度エマルションがpH7〜11を示すような量のpH調整剤/中和剤を含む、組成物。
【請求項2】
がC−C22−アルキル基またはアルケニル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
XおよびYが互いに独立して、−(CHR16k−(式中、k=2、3または4であり、そしてR16=H、CHまたは−CHCHである)から選択される、請求項1および/または2に記載の組成物。
【請求項4】
lが2〜10の数である、請求項1および/または2に記載の組成物。
【請求項5】
mおよびnが互いに独立して、1〜10の数である、請求項1、2および/または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記中和剤が、
a) 次式(3)で表されるアミン
NR (3)
(式中、R、RおよびRは互いに独立して、H、または1〜100個の炭素原子を有する炭化水素残基を示す。)、
b) アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物、
からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物に基づいて1〜50重量%の非イオン系乳化剤が含まれる、請求項1〜6のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物に基づいて1〜20重量%の防食剤が含まれる、請求項1〜7のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物に対して0.1〜5重量%の極圧(EP)添加剤および/または耐摩耗(AW)添加剤が含まれる、請求項1〜8のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項10】
前記ベース油または基油が100重量%まで含まれる、請求項1〜9のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つに記載の組成物を水と1:5〜1:100の重量比で混合することによって得られる含水金属処理液。
【請求項12】
次式(1)で表されるエーテルピロリドンカルボン酸、
【化3】

[式中、
は、C−C30−アルキル、C−C30−アルケニル、C−C30−アリール、C−C30−アルキルアリールであり、
Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウムであり、
Xは、C−C−アルキレン、または次式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)基である。
【化4】

(式中、
lは、1〜50の数であり、
m、nは、lとは独立してかつ互いに独立して、0〜50の数であり、
、R、Rは互いに独立して、水素、CH、またはCHCHであり、
Yは、C−C−アルキレンである)]
またはそれの塩0.1〜10重量%の、含水金属処理液中における防食剤としての使用であって、該含水金属処理液は、ベース油または基油および中和剤を、該含水金属処理液のpHが7〜11であるように含有する、上記の使用。

【公表番号】特表2012−530817(P2012−530817A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516535(P2012−516535)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003061
【国際公開番号】WO2010/149250
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】