説明

エーロゲルを含む複合材料

【解決課題】熱伝導率が小さくて機械的強度の大きいエーロゲルを基材とする複合材料を提供すること及び3未満の比誘電率およびさらにこれに伴う小さい散逸係数を有する複合材料を提供すること。
【解決手段】10〜95容量%のエーロゲル粒子および少なくとも1種の無機マトリックス物質を含む複合材料であって、該エーロゲル粒子の平均粒径が0.1μmよりも大きく0.5mm未満であり、該無機マトリックス物質がフィロシリケートであり且つ該エーロゲル粒子と結合して複合材料全体に連続相として広がるマトリックスを形成することを特徴とする複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は10〜95容量%のエーロゲル粒子および無機マトリックス物質としてフィロシリケートを含む複合材料、その調製法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの非孔質無機固体は、その固体物質を通してよく熱を伝えるので、熱伝導率が比較的大きい。熱伝導率を小さくするために、たとえばバーミキュル石を基材とする多孔質固体を用いることが多い。多孔質の物体には、容易に熱を伝え得る固体の骨組だけが残っており、一方細孔中の空気は固体物体と比べると熱を通しにくい。
【0003】
しかし、応力は骨組を介してのみ伝えることができるので、固体中の細孔は、概して機械的安定性の劣化をもたらす。したがって、多孔質ではあるが、なお機械的に安定な物質が比較的大きい熱伝導率をも有する。
【0004】
しかし、多くの用途には、良好な機械的強度、すなわちすぐれた圧縮および曲げ強度とともに、極めて小さい熱伝導率が望ましい。第1に、成形品は加工する必要があり、第2に成形品は、高温においてさえも、破壊や亀裂を生じることなく機械的負荷に耐えることができなければならない。
【0005】
エーロゲル、とくに多孔度が60%を上回り、密度が0.6g/cm3を下回るエーロゲルは、密度が極めて小さく、多孔度が大きくかつ細孔径が小さいので、熱伝導率が極めて小さく、したがって欧州特許出願公開第0 171 722号明細書に述べられているように断熱材としての用途がある。空気分子の平均自由行程よりも小さい細孔径は、マクロ細孔中の空気よりも細孔中の空気が低い熱伝導率を生じるので、とくに重要である。したがって、エーロゲルの熱伝導率は、たとえば泡またはバーミキュル石を基材とする物質のように多孔度値は同様であるが、細孔径が大きい他の物質よりもさらに小さい。
【0006】
しかし、高多孔度は、エーロゲルに乾燥させるゲルのみならずまた乾燥したエーロゲル自体双方の機械的安定性をも比較的小さくする。
エーロゲルは低密度であるので、その密度によって1〜2という異常に小さい比誘電率を有する。したがって、エーロゲルは、また、たとえば高周波用の電子的用途に用いるように予定される(S.C.W.Hrubeshら、J.Mater.Res.Vol.8,No7、1736−1741)。
【0007】
前述のエーロゲルの機械的欠点のほかに、散逸係数が大きい場合には電子的用途にとっても極めて不都合である。
もっとも広い意味、すなわち「分散媒として空気を含有するゲル」という意味でのエーロゲルは適当なゲルを乾燥することによって生成する。この意味における「エーロゲル」という用語は、狭い意味でのエーロゲル、キセロゲルおよびクリオゲルを包含する。乾燥ゲルは、臨界温度を上回る温度において、臨界圧力を上回る圧力から始めてゲルの液体除去する場合には狭い意味のエーロゲルと呼ぶ。対照的に、ゲルの液体を臨界未満で、たとえば液−気境界相を生成させながら除去する場合には、得られたゲルはキセロゲルと呼ぶことも多い。本発明によるゲルは分散媒として空気を含有するゲルという意味におけるエーロゲルであることを注意しなければならない。
【0008】
多くの用途において、適当な機械的安定性を有する成形品にエーロゲルを用いることが必要である。
欧州特許出願公開第0 340 707号明細書は、少なくとも1種の有機および/または無機結合剤で相互に結合された少なくとも50容量%のシリカエーロゲル粒子を含む密度が0.1〜0.4g/cm3の断熱材を開示している。この比較的粗い粒度は、この断熱材からつくった成形品がエーロゲル物質の不均質分布を有する結果をもたらす。このことは、フィルムまたはシートの厚さである成形品の最小の典型的な寸法がエーロゲル粒子の典型的な直径よりもはるかに大きくない場合にとくにあてはまる。とくに周辺においては、結合剤の割合を増すことが必要であろうし、このことは成形品、とくに表面における熱伝導率や誘電特性に悪影響を及ぼすと思われる。
【0009】
とくに電子的用途は、前記のエーロゲル粒子を用いてはつくることができないとりわけ薄い層(0.01〜2.0mm)を必要とする。
さらに、この断熱材でつくった成形品では、直径が0.5〜5mmの機械的安定性の低い領域および構成するエーロゲル物質が表面に現われるであろうし、また機械的負荷をかけると、表面のエーロゲルの破壊によって、ついには直径または深さ最大5mmの表面不整を生じるかもしれない。
【0010】
さらに、欧州特許出願公開第0 340 707号明細書に示されている方法では、エーロゲル粒子は、機械的強度が小さいために、混合中のせん断プロセスによって容易に破壊する場合があるので、小量の液体しか含まないこの種の断熱材を調製することは容易なことではない。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 171 722号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 340 707号公報
【非特許文献1】S.C.W.Hrubeshら、J.Mater.Res.Vol.8,No7、1736−1741
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明の目的は、熱伝導率が小さくて機械的強度の大きいエーロゲルを基材とする複合材料を提供することにある。
本発明の別の目的は、3未満の比誘電率およびさらにこれに伴う小さい散逸係数を有する複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、10〜95容量%のエーロゲル粒子および少なくとも1種の無機マトリックス物質を含み、さらに該エーロゲル粒子の粒径が0.5mm未満で、該無機マトリックス物質が、燃焼させる場合もさせない場合もあるフィロシリケートである複合材料によって達成された。
【0013】
このマトリックス物質は、エーロゲル粒子を結合して、複合材料全体に連続相として広がるマトリックスを形成する。
フィロシリケートは、カオリン、クレーまたはベントナイトのような天然に存在するフィロシリケート、マガジ石(magadiite)もしくはケニア石(kenyaite)のような合成フィロシリケート、またはこれらの混合物であることができる。
【0014】
できるだけ少量のアルカリ金属を含有し、同時に、成形性のすぐれたフィロシリケートが好ましい。相応するクレーまたはアルカリ金属を含まない(ナトリウムのない)合成フィロシリケート、たとえばマガジ石がとくに好ましい。
【0015】
用途によっては、複合材料および/またはその中のフィロシリケートを燃焼させると有利になることがある。この燃焼温度は、結晶水を追い出すように選択される(550℃を上回る温度)。この場合には、二層シリケートカオリンを、たとえばメタカオリンに変える。これによって断熱材としての用途に望ましい多孔度が生じる。
【0016】
さらに複合材料は、たとえばセッコウ、石灰および/またはセメントのような無機結合剤を含有することもでき、この場合に無機結合剤の比率は、フィロシリケートの比率に基づいて50重量%未満が好ましい。
【0017】
無機結合剤、たとえばセメント、石灰、セッコウまたは適当なこれらの混合物は、フィロシリケートとともにエーロゲルから成形品をつくる場合のすぐれた基礎を構成する。水硬性は強度の大きい極めて微細な構造物をもたらす。フィロシリケート、無機結合剤およびエーロゲルの組合せが、たとえば建築分野における用途にまさしく望ましいような成形品特性を付与する。
【0018】
フィロシリケートと無機結合剤との混合物は注形用にも適する。フィロシリケートはこのような水性混合物の流動的特性を調節する。
組成物中10容量%を著しく下回るエーロゲル粒子含量においては、エーロゲル粒子の比率が低いために、組成物の有利な性質は大幅に失われるであろう。この種の組成物は、もはや低密度および低熱伝導率を有しないであろう。比誘電率は、成形品が、たとえば高周波用には不適と思われる値に上がるであろう。
【0019】
95容量%よりも著しく大きいエーロゲル含量は、エーロゲル粒子相互の適切な結合ならびに適当な機械的圧縮および曲げ強度を得るには小さ過ぎる5容量%未満というマトリックス物質含有量をもたらすであろう。
【0020】
エーロゲル粒子の比率は20〜90容量%の範囲が好ましい。
新規複合材料に適当なエーロゲルは、ゾル−ゲル法(C.J.Brinker.G.W.Scherer.Sol−GelScience.1990,第2および3章)に適切なたとえばケイ素もしくはアルミニウム化合物のような金属酸化物を基材とするもの、またはメラミン−ホルムアルデヒド縮合物(米国特許第5086 085号)もしくはレゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物(米国特許第4873 218号)のようなゾル−ゲル法に適切な有機物質を基材とするものである。該エーロゲルは前記物質の混合物を基材とすることもできる。ケイ素化合物を含むエーロゲル、とくにSiO2エーロゲルが好ましく、SiO2キセロゲルがとりわけ極めて好ましい。熱伝導率への放熱の寄与を減らすためには、エーロゲルはたとえばカーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄もしくは二酸化ジルコニウムまたはこれら混合物のようなIR不透明化剤を含むことができる。
【0021】
好ましい態様では、エーロゲル粒子は疎水性表面基を有する。永久疎水化に適する基は、式−Si(R)3の三置換シリル基、好ましくはトリアルキルおよび/またはトリアリールシリル基であり、式中各Rはそれぞれ独立して未反応有機基、たとえばC1−C18アルキルまたはC6−C14アリール、好ましくはC1−C6アルキルまたはフェニル、とくにメチル、エチル、シクロヘキシルまたはフェニル、これらはさらに官能基で置換させることもできる。トリメチルシリル基はエーロゲルの永久疎水化にとくに有利である。これらの基は国際出願公開94/25149号に記載されているように、またはエーロゲルと、たとえばクロロトリアルキルシランもしくはヘキサアルキルジシラザンのような活性化トリアルキルシラン誘導体(R.Iler.TheChemistry of Silica.Wiley& Sons.1979参照)との気相反応によって得ることができる。このようにして調製した疎水性表面基は、OH基と比べて散逸係数および比誘電率をさらに低下させる。親水性表面基を有するエーロゲル粒子は、大気中の湿度によって水分を吸収する可能性があり、その結果比誘電率および散逸係数は大気の湿度とともに変動する場合がある。これは電子的用途には好ましくないことが多い。疎水性表面基を有するエーロゲル粒子の使用は、水を吸着しないのでこの変動は防げる。
【0022】
上記基の選択は、典型的な適用温度にもよる。
本発明によれば、エーロゲル粒子の粒径は0.5mm未満、好ましくは0.2mm未満である。電子的用途の場合には、該粒径はさらに著しく小さくなる場合があるが、好ましくは0.1μmを上回る。たとえば磨砕によるエーロゲル粒子の調製法は、エーロゲル粒子が必ずしも球形を有する必要はないので、この粒径は個々のエーロゲル粒子の平均直径を指す。
【0023】
同じエーロゲルの比率における小さなエーロゲル粒子の使用は、負荷下の応力の局部的蓄積が減少するので破壊および亀裂の生成に関してすぐれた機械的安定性を与える。
さらに、小さいエーロゲル粒子は組成物中に均一な分布を示し、したがって複合材料はすべての部位、とくに表においてほぼ均一な熱伝導率および比誘電率を示す。
【0024】
エーロゲルは、その物質および細孔表面の表面基の種類によって、親水性または疎水性であることができる。親水性エーロゲルが、極性物質、とくに気状または液状の水と接触する場合には、作用の持続および物質の物理的条件によってぜい弱化することがあり、好ましくない場合には親水性エーロゲルが圧潰することさえある。この細孔構造の変化、とくに圧潰は断熱効率の激烈な劣化を生じることがある。たとえば温度変化および典型的に水分を含む製造プロセスによる外気の水分の凝縮の結果として複合材料中のあり得る湿気(水分としての)の存在を考えた場合には疎水性エーロゲルが好ましい。複合材料から典型的につくった成形品に期待される長い有効寿命の間の、水分および/または外気の悪影響下における複合材料の断熱効率の劣化を防ぐために、わずかに酸性の環境においてさえも長い間疎水性を持続するエーロゲルがとくに好ましい。
【0025】
疎水性表面基を有するエーロゲル粒子を用いる場合には、疎水性エーロゲルは均一で極めて微細な分布を示すので、極めて小さい粒径が疎水性セラミック物質をもたらす。
複合材料中のとくに高比率のエーロゲル粒子は二つのモードのある粒度分布を用いることによって達成することができる。
【0026】
エーロゲルの熱伝導率は、多孔度が増すにつれて低下し、また密度が小さくなるにつれて下がることも事実である。このために、多孔度が60%を上回り、密度が0.6g/cm3を下回るエーロゲルが好ましい。密度が0.4g/cm3を下回るエーロゲルがとくに好ましい。
【0027】
熱伝導率への放熱の寄与を減らすために、複合材料は、たとえばカーボンブラック、二酸化チタン、二酸化鉄または二酸化ジルコニウムもしくはこれらの混合物のようなIR不透明化剤を包含することができ、これは高温における適用にとくに有利である。
【0028】
亀裂および破壊強度に関連して、複合材料が繊維を含有するならば、それが有利な場合もある。繊維は、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンもしくはメラミン・ホルムアルデヒド繊維のような有機繊維および/または、たとえばガラス繊維、鉱物もしくはSiC繊維のような無機繊維および/または炭素繊維であることができる。成形品をアニーリングする場合には有機繊維は使用することはできない。
【0029】
乾燥後に得られる複合材料の引火性の格付けは、エーロゲルの引火性の格付け、無機マトリックス物質の引火性の格付けおよび、もしも使用するときには繊維物質の引火性の格付けによって決定される。複合材料の考えられる最良の引火性の格付け(低引火性または不燃焼性)を得るには、繊維が不燃性物質、たとえば鉱物、ガラスまたはSiC繊維より成るものでなくてはならない。
【0030】
添加する繊維によって生じる熱伝導率の増大を避けるために
a)繊維の容量比率は0.1ないし30%、好ましくは1ないし10%でなければならず、また
b)繊維物質の熱伝導率は好ましくは1W/mKを下回る必要がある。
【0031】
繊維直径および/または繊維物質の適当な選択によって、熱伝導率への放熱の寄与を減らすことができ、また機械的強度の増大を得ることができる。このためには、繊維の直径が好ましくは0.1〜30μmの範囲にある必要がある。炭素繊維または炭素含有繊維を用いる場合には、熱伝導率への放熱の寄与をとくに減少させることができる。
【0032】
機械的強度が、複合材料中の繊維の長さおよび分布によって影響を受ける場合もある。長さが0.5〜10cmの繊維の使用が好ましい。シート状の成形品の場合には繊維より成る布を使用することもできる。
【0033】
複合材料は、たとえばチローゼ、デンプン、ポリビニルアルコールおよび/またはワックスエマルションのような他の補助物質を含有することもできる。これらの物質は複合材料の製造中、押出助剤として用いられる。従来技術では、これらの物質はセラミック物体の成形に工業的に用いられる。
【0034】
複合材料の比誘電率は、とくに電子的用途の場合には好ましくは3未満である必要がある。このような複合材料は、複合材料のキャパシタンスが無視できるほど依然として小さいので、1GHzを上回る周波数範囲の用途に適している。
【0035】
該材料を、シート状構造物、たとえばシートとして用いる場合には、たとえば耐摩耗性を増大させ、表面を防湿層にし、または表面が容易に汚れないように、表面の性状を向上させるために、該材料は、少なくとも1面に少なくとも1種の被覆層を積層することができる。被覆層は、複合材料からつくった物品の機械的安定性を向上させることもできる。被覆層を両面に用いる場合には、該層は同一でも異なるものでもよい。
【0036】
適当な被覆層はすべて当業者には公知の物質である。該層は非孔質であり、したがって防湿層として効果的であることができ、実例は熱線を反射するプラスチックフィルム、金属箔または金属化プラスチックフィルムである。物質中への空気の進入を可能にし、したがって良好な遮音を与える多孔性被覆層を用いることもでき、実例は多孔性フィルム、紙、布およびウェブである。マトリックス物質自体を被覆層として用いることもできる。
【0037】
被覆層自体も多数の層を含むことができ、また結合剤または別の接着剤を用いて固着させることもできる。
複合材料の表面は、表面層中に少なくとも1種の適当な物質を導入することによって封止や強化を行うこともできる。
【0038】
本発明の別の目的は新規複合材料の調製法を提供することにある。
この目的は、
a)混合装置中で、エーロゲル粒子は、フィロシリケート、水、ならびに必要ならば繊維、結合剤および/または補助物質を混合し、
b)こうして得た混合物を成形プロセスにかけ、
c)こうして得た物体を乾燥し、
d)必要ならば、乾燥した物体を素地加工(green machining)し、さらに
e)加工および/または乾燥した物体を、必要ならば250〜1200℃の範囲の温度で熱処理する
ことを含む方法によって達成される。
【0039】
工程a)において、混合装置内で固体成分を事前に充填し、その後液体成分を添加するのが好ましい。
固体成分の当初の乾量に約50%の水分を有するワックスエマルションを添加するのがとくに好ましい。必要な水分のそれ以上の部分は水ガラスを加えることによって得ることができる。必要な程度まで、補足的水分を混合物に加えることができる。
【0040】
混合物の機械的性状を改善するために混合水分を用いることができる。混合物の特有の流動学的挙動は、エーロゲル粒子の性質およびフィロシリケートの性質と相互に作用する繊維、結合剤および/または補助物質の種類、量および組合せによっても決定される。
【0041】
この混合物は、混合物にせん断力が働らくミキサーで配合するのが好ましい。
このせん断力はフィロシリケートをできるだけ完全に個々の小さな板状体に広げるという目的を有する。
【0042】
次の成形プロセス、好ましくは押出プロセス中、せん断力および直角に作用する成形力によってフィロシリケートの小さな板状体を整列させることができる。この整列は機械的強度を増大させる。断熱材としての用途の場合には、この整列が熱伝導率を下げるのにも有効である。さらに、同じ物理的性状を得るために、フィロシリケートに対する要求が少なくなる。
【0043】
多くの場合に、過度に顕著な整列は望ましくない。か焼フィロシリケートで未焼フィロシリケートのすべてまたは一部を取り替えることによって、整列を抑えることができる。
可塑性の点から、フィロシリケートを、押出すこができるようにフィロシリケートに水を混合することができる。混合物の良好な成形性が得られるように含水量を調節する必要がある。エーロゲルの水分を吸収する能力によっては含水量を高めなければならない。
【0044】
しかし、成形法は当業者には公知の他の方法を用いて行うこともできる。したがって、混合物が100〜2000mPasの範囲の粘度を有するのが好ましい場合には、混合物を型の中に注入することもできる。
【0045】
成形プロセスで得られた物品は乾燥し、さらに、必要があれば素地加工にかける、すなわち所要のサイズにトリミングする。
用途によっては、乾燥物品に熱処理、すなわち燃焼またはか焼を行うことができる。燃焼により、材料から押出助剤を除去することができる。燃焼温度は500〜1000℃の範囲が好ましい。
【0046】
エーロゲルの構造を破壊しないように好ましくは1000℃という温度を超えてはならない燃焼の後の強度は、エーロゲル含量が多いにもかかわらず、以後の操作または適用において処理するのに十分なほど依然として大きい。
【0047】
新規複合材料は熱伝導率が小さいために、断熱用成形品として適当である。最終の成形品が有機成分を含まない場合には、約500℃を上回る温度においてさえも断熱用として使用することができる。用途により、物品をシート、ストリップまたは不規則形状の物体として設計することができる。
【0048】
新規複合材料は、さらに、また、電子分野において、好ましくは1MHzを上回る周波数の用途の成形品またはコーティングとしても好結果を収めることが立証された。エーロゲルの比率が上がるにつれて、成形品の比誘電率は低下し、また物品はGHz回路の基板として用いることができる。比誘電率が小さいので、これによって回路の高度の集成が可能になる。電子分野における用途としては、フィロシリケート単独より成り、せいぜい少量の無機結合剤を含む複合材料の使用は、セメント、石灰および/またはセッコウを基材とするこの種の結合剤がフィロシリケートよりもはるかに急激に比誘電率を増すので、好ましい。たとえばマガジ石またはケニア石のような合成フィロシリケートの使用は、アルカリ金属を包含しないように、合成フィロシリケートをつくることができるのでとくに有利である。
【0049】
下記の実施例によって本発明を詳細に説明するが、すべての実験において、国際出願公開94/25149号で公開された方法と同様にトリメチルクロロシランから調製した、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を基材とし、密度が0.17g/cm3で、熱伝導率が30mW/mKの疎水性エーロゲルを使用した。
【実施例1】
【0050】
下記成分をミキサー中で乾燥状態で混合する。
500mlの粒径が0.1mm未満のエーロゲル
450gのSAVCクレー(R3、AGS Minerals)
50gのベントナイトG100
20gのチローゼFL6000x
混合物が均質に見えるまで、すなわち個々の成分が肉眼で識別できなくなるまで混合を続ける。次に混合物を下記液体で湿潤させる。
【0051】
225mlの水
25mlのMobilcerX
25mlのBaykiesol
最終混合物を脱ガスした後、押出して成形片をつくる。この成形片を乾燥した後、有機成分を除去するために500℃の高温処理にかける。
【0052】
得られた複合材料の成形片は密度が0.8g/cm3、比誘電率が2.7である。
【実施例2】
【0053】
下記成分をミキサー中で乾燥状態で混合する。
1000mlのエーロゲル
250gのベントナイトG100
40gのチローゼFL6000x
混合物が均質に見えるまで、すなわち個々の成分が肉眼で識別できなくなるまで混合を続ける。次に混合物を下記液体で湿潤させる。
【0054】
200mlの水
50mlのMobilcerX
50mlのBaykiesol
最終混合物を脱ガスした後、押出して成形片をつくる。この成形片を乾燥した後、有機成分を除去するために600℃の高温処理にかける。
【0055】
得られた成形片は密度が0.55g/cm3である。
【実施例3】
【0056】
下記成分をミキサー中で、乾燥状態で混合する。
500mlのエーロゲル
450gのクレーMF35
50gのベントナイトG100
20gのチローゼFL6000x
混合物が均質に見えるまで、すなわち個々の成分が肉眼で識別できなくなるまで混合を続ける。次に混合物を下記液体で湿潤させる。
【0057】
225mlの水
25mlのMobilcerX
25mlのBaykiesol
最終混合物を脱ガスした後押出して成形片をつくる。この成形片を乾燥した後、有機成分を除去するために500℃の高温処理にかける。
【0058】
得られた成形片は密度が0.8g/cm3である。
【実施例4】
【0059】
下記成分をミキサー中で乾燥状態で混合する。
1000mlのエーロゲル
250gのベントナイトG100
40gのチローゼFL6000x
混合物が均質に見えるまで、すなわち個々の成分が肉眼で識別できなくなるまで混合を続ける。次に混合物を下記液体で湿潤させる。
【0060】
200mlの水
50mlのMobilcerX
50mlのBaykiesol
最終混合物を脱ガスした後、押出して成形片をつくる。この成形片を乾燥した後、有機成分を除去するために630℃の高温処理にかける。
【0061】
得られた成形片は密度が0.55g/cm3である。
【実施例5】
【0062】
1000mlのエーロゲル
200gのケイ酸カルシウム(ポートランド石)
20gのα型半水セッコウ
50gのSAVCクレー
40gのチローゼFL6000x
275mlの水
を容器の中で、撹拌装置を用いて、混合物が均質に見えるまで、すなわち個々の成分が肉眼で識別できなくなるまで混合する。
【0063】
この混合物を型の中に注入し、そこに48時間放置した後、取り出す。過剰の水分を除くために、成形品を50℃で乾燥する。乾燥した成形品は、密度が0.65g/cm3、熱伝導率が0.25W/mK(Netzsch装置を用いレーザーフラッシュ法により測定)、曲げ強度(DIN40685/IEC672;Part2により測定)が35N/mm2である。
【実施例6】
【0064】
下記成分をミキサー中で乾燥状態で混合する。
500gのエーロゲル
450gのSAVCクレー
50gのベントナイトG100
50gのチローゼFL6000x
合物が均質に見えるまで、すなわち個々の成分が肉眼で識別できなくなるまで混合を続ける。次に混合物を下記液体で湿潤させる。
【0065】
225mlの水
25mlのMobilcerX
25mlのBaykiesol
最終混合物を乾燥後、ジョー破砕機で1.5mmよりも小さく微粉砕する。得られた粉末を4枚刃のビーターを有するAlpineクロスビーターミルに2回通して磨砕する。粉末の平均粒径は0.1mm未満である。
【0066】
この粉末を、角度40゜、回転速度20rpmのEirichパン粗砕機で粗砕する。粗砕化には0.2%濃度のチローゼC600溶液を使用する。この顆粒を0.1mm以上かつ0.8mm以下の粒度にふるい分け、DORSTTPA−6中で2.5%の水分に乾燥圧縮して、曲げ試験片4.5×4.5×50mmおよび直径50×7mmの円板を得る。
【0067】
得られた成形片は密度が1.0g/cm3、熱伝導率が400mW/mKであり、曲げ強度は35N/mm2よりも大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜95容量%のエーロゲル粒子および少なくとも1種の無機マトリックス物質を含む複合材料であって、該エーロゲル粒子の粒径が0.1μmよりも大きく0.5mm未満であり、該無機マトリックス物質がフィロシリケートであり且つ該エーロゲル粒子と結合して複合材料全体に連続相として広がるマトリックスを形成することを特徴とする複合材料。
【請求項2】
該フィロシリケートがカオリン、クレー及びベントナイトから選択される天然フィロシリケート又はマガジ石及びケニア石から選択される合成フィロシリケート、又はこれらの混合物である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
該複合材料がセメント、石灰および/またはセッコウを含有する請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
該エーロゲルがSiOエーロゲルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
該エーロゲル粒子が疎水性表面基を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
該エーロゲル粒子の粒径が0.2mm未満である請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
該エーロゲル粒子が60%を上回る多孔度および0.6g/cm3を下回る密度を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項8】
該複合材料が0.1〜30容量%の繊維を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項9】
該複合材料が押出助剤として用いられる補助物質をも含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項10】
該補助物質がチローゼ、デンプン、ポリビニルアルコールおよび/またはワックスエマルジョンから選択される、請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
該複合材料がシート状の形状を有し、且つ少なくとも一面に少なくとも1種の被覆層を積層する請求項1〜10のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項12】
該複合材料が3未満の比誘電率を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の複合材料。

【公開番号】特開2007−211251(P2007−211251A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108831(P2007−108831)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【分割の表示】特願平8−516578の分割
【原出願日】平成7年11月22日(1995.11.22)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】