説明

オイルフィルタ装置

【課題】吸引式オイルフィルタ装置と、このような吸引式オイルフィルタ装置を有するオイルパンと、加圧式オイルフィルタ装置及び前記吸引式オイルフィルタ装置を有するろ過システムと、を提供する。
【解決手段】吸引式オイルフィルタ装置100は、フィルタハウジング2,5に形成されるオイル入口1及びオイル出口6と、オイル入口1とオイル出口6との間に不完全真空を発生させるオイル出口6に接続可能な吸引式オイルポンプと、オイル入口1とオイル出口6との間に配置される微細ろ過部材4及び超微細ろ過部材3と、を含んで構成される。微細ろ過部材4は、オイル入口1又はオイル出口6に取り付けられ、超微細ろ過部材3は、流れの方向に対して微細ろ過部材4の上流側かつフィルタハウジング2,5の副次流9,10の領域に配置される。このようにして、安価な製造費で、高度のろ過性能を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン及び変速機のオイルをろ過するための吸引式オイルフィルタ装置と、このような吸引式オイルフィルタ装置を有するオイルパンと、加圧式オイルフィルタ装置及び前記吸引式オイルフィルタ装置を共に有するろ過システムと、に関する。
【背景技術】
【0002】
吸引式オイルフィルタ装置は、エンジン及び変速機のオイルをろ過するために用い得るものである。吸引式フィルタ装置のオイル出口には、ポンプが配置される。ポンプは、不完全真空を利用してオイルを吸引し、オイルはろ過部材を通しろ過される。吸引式オイルフィルタ装置は、オイルパンの油だめに直接配置されるのが通常である。ろ過すべき全てのオイルは、この吸引式オイルフィルタ装置を通過する。このような構造には、ごくわずかな付加的な取付け用スペースしか必要としないため、省スペース性があり、また、いかなる接続用配線を付加する必要もない。吸引式オイルフィルタ装置に関連するフィルタハウジングは、通常、上部筐体と下部筐体を有し、2つの筐体間にろ過部材が挟持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、狭い許容範囲を確保する必要があるので、高度の製造技術が要求される。さらに、エンジン又は変速機の十分な潤滑を達成するためには、高粘度オイル及び低温度オイルの少なくとも一方の状態で、最小限のオイル体積流が吸引式オイルフィルタを通過しなければならないので、ろ過部材の使用だけでは、相対的に低いろ過性能しか達成することができない。
【0004】
オイルをより高純度にするために、吸引式オイルフィルタ装置に加えて、加圧式オイルフィルタ装置が設けられてもよい。加圧式オイルフィルタ装置において、ろ過すべきオイルは、ポンプを用いてフィルタ装置内に圧入される。このようなフィルタ装置は、通常、二次流れの中に配置され、例えばバルブを用いて切り替えられ得る。オイル体積流の一部のみ、すなわちオイル体積流の通常50%未満しかこの種の加圧式オイルフィルタ装置を通過しないので、例えばひだ形状などのより高効率なろ過部材が使用される。しかしながら、汚染物質がより多くろ過部材に衝突すれば、より高いろ過性能が得られるので、加圧式オイルフィルタ装置のろ過部材は、比較的頻繁に交換されなければならない。したがって、吸引式オイルフィルタ装置及び加圧式オイルフィルタ装置の両方から形成されるシステムのより高いろ過性能は、吸引式オイルフィルタ装置単体と比較して、多くの場合、より多くの保守努力を必要とすることを意味する。
【0005】
本発明は、吸引式オイルフィルタ装置と、このような吸引式オイルフィルタ装置を有するオイルパンと、加圧式オイルフィルタ装置及び前記吸引式オイルフィルタ装置を有するろ過システムと、を提供することを目的とする。吸引式オイルフィルタ装置は、より簡単に製造可能であり、かつ、加圧式オイルフィルタ装置と協働するときでも、より小さな保守努力しか必要とせず、それにもかかわらず、より高度のろ過性能を達成するものである。
【0006】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の有利な改良点は、従属請求項の主題事項である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるエンジン又は変速機用の吸引式オイルフィルタ装置は、フィルタハウジングにオイル入口及びオイル出口を有する。オイル出口には、吸引式オイルポンプが接続可能であり、このポンプにより、不完全真空がオイル入口とオイル出口との間に生じる。さらに、吸引式オイルフィルタ装置は微細ろ過部材及び超微細ろ過部材を有し、それら媒体は、オイル入口とオイル出口との間に配置される。本発明による吸引式オイルフィルタ装置は、オイル入口又はオイル出口のいずれか一方に微細ろ過部材を取り付けられるように構成される。微細ろ過部材が、オイル入口に取り付けられる場合には、これはフィルタの内側から外側へ流れる方式のフィルタ装置である。微細ろ過部材がオイル出口に取り付けられる場合には、フィルタの外側から内側へ流れる方式のフィルタ装置が設けられる。本発明によれば、超微細ろ過部材は、両フィルタ装置の形式において、微細ろ過部材の上流側であって、フィルタハウジングの副次的流れの領域に配置される。
【0008】
留意すべき点は、フィルタ部材の内側から外側へ流れる方式を有するフィルタ装置(本明細書では以後、短縮して内外式フィルタ装置という)において、ろ過すべき流体は、フィルタハウジング入口からフィルタポケット内に直接流入し、その後、フィルタポケット層を通過してフィルタハウジング出口方向に向かって流れるということである。したがって、残渣はフィルタポケットの内部に滞留し、ろ過されたオイルはフィルタハウジング出口を通して流出する。もう1つの流れ方式は、外内式フィルタ装置で提供される。ろ過すべき流体は、最初に、フィルタハウジング入口を通してフィルタハウジング内に流入し、その後さらに、ろ過部材を通して外側から内側へとフィルタポケット内に流入する。フィルタポケットにおいてろ過された流体は、フィルタハウジング出口へ向かって流れる。したがって、この構成では、流体中に存在する残渣は、フィルタハウジング内のフィルタポケットの外側に滞留する。内外式フィルタ装置において、フィルタポケットは、フィルタポケットの開口部が、原則としてフィルタハウジングの入口開口部を覆うように位置を合わせて、配置される。したがって、ろ過すべき全ての流体は、最初にフィルタポケット内に確実に流入し、ろ過されないままフィルタハウジング出口に達することはない。一方、これに対応して、外内式フィルタ装置では、フィルタポケット開口部は、フィルタハウジング出口の開口部と一致する。2つの流れ方式は、直接的に可逆性があり、かつ相互に対応する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による吸引式オイルフィルタ装置の製造において、微細ろ過部材は、望ましくは、フィルタハウジングの上部筐体と下部筐体との間に挟持されないので、狭い許容範囲を考慮に入れる必要がない。もっと正確に言えば、このような実施形態において、内外式フィルタ装置はフィルタハウジングのオイル入口に取り付けられるので、フィルタハウジングの製造時、上部筐体と下部筐体のみが相互に接続されていればよい。本発明による吸引式オイルフィルタ装置を有する内外式フィルタ装置のフィルタハウジングへ流入するオイルの流体挙動は、微細ろ過部材がハウジング筐体間に原則水平に配置されるフィルタ装置の挙動と異なる。本発明による吸引式オイルフィルタ装置において、内外式フィルタ装置のオイル入口領域又は外内式フィルタ装置のオイル出口領域では、相対的に低い割合のオイルしか微細ろ過部材を通過することができない。この割合のオイルはいわゆる副次流を形成する。付加的な超微細ろ過部材は、本発明による吸引式オイルフィルタ装置のこの領域に取り付けられる。このろ過部材は、微細ろ過部材よりも高いろ過性能を有している。したがって、オイルは、最初に超微細ろ過部材を通過し、その後副次流の領域において微細ろ過部材を通過する。直列的なろ過という面からは、ろ過部材の配列は、実際には逆に、すなわち、最初に微細ろ過部材を通過し、その後超微細ろ過部材を通過するように選択されなければならない。しかしながら、そのような解決は、相対的に不安定な超微細ろ過部材のために、複雑な支持が必要になるという不利を生ずる。本発明はこの点に、すなわち、ろ過部材の配列が、相対的に少量のオイル容積が通過する副次流領域のためにのみ切り換えられる点に始まる。微細ろ過部材は、流れの方向に対して上流に位置する超微細ろ過部材の支持として用いられるので、超微細ろ過部材のための付加的な保持器を必要としない。
【0010】
オイルが高粘度及び低温の少なくとも一方であると、オイルは超微細ろ過部材を殆ど通過しない。しかしながら、粘度が低下及び/又は温度が上昇するにつれ、フィルタハウジングの副次流領域において、超微細ろ過部材を通過する流れが生ずるので、より安価な製造費しか必要としないにもかかわらず、吸引式オイルフィルタ装置は全体としてより高度のろ過性能を達成する。本発明による吸引式オイルフィルタ装置の特別な利点は、すでに高度にろ過されたオイルが、一般的に、比較的小さい外形寸法及びそれに対応して小さいろ過部材を有する付加的に用いられる加圧式オイルフィルタ装置を通過することである。このため、本発明による吸引式オイルフィルタ装置が使用された場合には、加圧式オイルフィルタ装置の寿命は延びる。したがって、加圧式オイルフィルタ装置及び吸引式オイルフィルタ装置から形成される本発明によるろ過システムのための保守努力は、従来に比べてより低減される。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、超微細ろ過部材及び微細ろ過部材は、直接相互に接続される。強い乱流があっても、相対的に不安定な超微細ろ過部材は、支持又は同様の必要な手段を伴わず、確実に設けられる。超微細ろ過部材及び微細ろ過部材は、それら媒体の全域で相互に接続されていることが望ましい。これは、極めて確実な実施形態を示すものである。しかしながら、超微細ろ過部材が、複数の点において、例えば、2つの端部及び2つのエッジ(edge)の少なくとも一方において、微細ろ過部材と接続されてさえいれば、それですでに十分である可能性がある。特に安価な製造費は、超微細ろ過部材が一端でのみ微細ろ過部材に直接接続されている実施形態で実現される。この接続は、内外式フィルタ装置のオイル入口に近接している又は外内式フィルタ装置のオイル出口に近接してなされることが望ましい。こうして、フィルタハウジングへのオイル流入により、超微細ろ過部材が微細ろ過部材に対して押し付けられるので、他方の自由端において超微細ろ過部材を固定する必要はもはやない。超微細ろ過装置の信頼性ある位置決めは、基本的に流入オイルによって決定される。したがって、超微細ろ過部材の積層が、内外式フィルタ装置のオイル入口領域のみで又は外内式フィルタ装置のオイル出口領域のみで、微細ろ過部材に取り付けられるという点において、超微細ろ過部材及び微細ろ過部材から形成される組み合わせろ過部材は、極めて容易に製造可能である。さらに、微細ろ過部材により形成されるフィルタポケット内部における2つのろ過部材の固定は、もはや必要とされない。
【0012】
このように、超微細ろ過部材は微細ろ過部材に固定され、微細ろ過部材はフィルタハウジングに固定される。このような固定は、金属製ハウジングにおいては、例えば、圧着によって施されてもよく、樹脂製ハウジングにおいては、例えば、溶着によって施されてもよい。内外式フィルタ装置においては、超微細ろ過部材は、フィルタポケットの内部に取り付けられる。対照的に、外内式フィルタ装置においては、超微細ろ過部材は、フィルタポケットの外部に取り付けられる。
【0013】
他の実施形態によれば、本発明による吸引式オイルフィルタ装置は、超微細ろ過部材から微細ろ過部材までの間隔をオイル入口から徐々に拡大し、その最大間隔が微細ろ過部材の厚さの倍数となるように実施されてもよい。この拡大する間隔により、オイルが、底部側の超微細ろ過部材周囲で流れるようになるので、微細ろ過部材のより多くの領域で、オイルが通過するようになる。この間隔は、少なくとも1つのスペーサーによって確保されることが望ましい。このスペーサーは、極めて可動的な超微細ろ過部材の自由端がオイル流によって微細ろ過部材に対して押し付けられないようにするものである。
【0014】
本発明による吸引式オイルフィルタ装置において、微細ろ過部材が50μmより大きい粒子を分離し、かつ、超微細ろ過部材が20μmより大きい粒子を分離する場合に、優れたろ過性能を達成することが示されている。
【0015】
また、上述されるような圧力フィルタ装置及び吸引式フィルタ装置を有するオイルろ過システムによっても、本目的は達成される。特に、効率的なろ過は、加圧式オイルフィルタ装置が、吸引式オイルフィルタ装置における超微細ろ過部材と同一のろ過性能を有する超微細ろ過部材を有している場合に、達成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面に示される例示的な実施形態に基づいて、本明細書でさらに本発明を説明する。
【図1】本発明による吸引式オイルフィルタ装置の第1の実施形態の略図である。
【図2】本発明による吸引式オイルフィルタ装置の第2の実施形態の略図である。
【図3】本発明による吸引式オイルフィルタ装置の第3の実施形態の略図である。
【図4】本発明による吸引式オイルフィルタ装置の第4の実施形態の略図である。
【図5】本発明による吸引式オイルフィルタ装置の第5の実施形態の略図である。
【図6】本発明による吸引式オイルフィルタ装置の第6の実施形態の略図である。
【図7】本発明による吸引式オイルフィルタ装置の第3の実施形態における、粒子径の関数としてのろ過効率に関する線図である。
【図8】本発明による吸引式オイルフィルタ装置の第3の実施形態における、オイル体積流の関数としての差圧に関する線図である。
【図9】ろ過システムにおける、本発明による吸引式オイルフィルタ装置の区分に関する略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明による内外式オイルフィルタ装置100の実施形態のうち、長手方向における横断面を示している。本装置は、オイル入口1及びオイル出口6を有し、このうち後者には、吸引式ポンプが取り付け可能である。オイル入口1はフィルタ下部筐体2の一方に設けられ、オイル出口6は、フィルタ上部筐体5のうち、オイル入口1から可能な限り離隔した反対側に設置される。フィルタ下部筐体2及びフィルタ上部筐体5は、それら双方で1つのフィルタハウジングを形成する。吸引式オイルポンプによって生ずる不完全真空のため、ろ過すべきオイルは、オイル入口1を通過してフィルタ装置の内部チャンバー16に流入する。
【0018】
微細ろ過部材4は、フィルタポケットとして提供されるが、参照番号7で参照されるように、そのポケット開口部はオイル入口1の領域に取り付けられる。超微細ろ過部材3は、この微細ろ過部材4に、超微細ろ過部材3の一端及び一方のエッジの少なくとも一方(edge)で取り付けられる。図1に示される実施形態においては、超微細ろ過部材は微細ろ過部材から離隔しており、微細ろ過部材4から超微細ろ過部材までの間隔が、オイル入口から徐々に拡大する。その最大間隔は、微細ろ過部材4の厚さの倍数である。オイル流8はこのようにして、オイル入口1においてフィルタハウジング内に流入し、主流と副次流に分けられる。主流は、矢印13ないし15のように、微細ろ過部材4を通過する一方、副次流は、矢印9及び10のように、超微細ろ過部材3上に生じやすい。超微細ろ過部材3を通過するオイルは、引き続きその後方に位置する微細ろ過部材4を通過し、そして、矢印12のように、微細ろ過部材4からフィルタポケット外周を流れた後、出口6に到達する。また、オイルは、超微細ろ過部材3の周囲をも流れる可能性があり、オイルは、微細ろ過部材4から超微細ろ過部材3までの間にある間隔により、矢印11で示すように、超微細ろ過部材3の後方に到達し得る。したがって、超微細ろ過部材3によって未だろ過されていないオイルが通過する微細ろ過部材4の領域は、拡大する。超微細ろ過部材3と微細ろ過部材4との間の間隔は、実際のオイルの流れによって、超微細ろ過部材3自体がこの位置に移動することで確保されてもよい。これで不十分である場合には、超微細ろ過部材3に、補強繊維が設けられてもよく、あるいは、図2のように、少なくとも1つのスペーサー20によって間隔を維持してもよい。
【0019】
製造上最も単純な実施形態は、図3に示される。この実施形態においては、超微細ろ過部材3は、その媒体全域で微細ろ過部材4を押し付けている。超微細ろ過部材3を通過するオイルの割合は、より低いオイル粘度及びより高いオイル温度の少なくとも一方の場合、より高くなる。超微細ろ過部材3は、小さいねじれ抵抗しか持たないので、その媒体は、通過するオイル体積流8によって微細ろ過部材に押し付けられており、超微細ろ過部材の全域にわたって微細ろ過部材に接触している。
【0020】
超微細ろ過部材3が用いられる場合、吸引式オイルフィルタ装置に生ずる差圧は、微細ろ過部材4のみが提供される吸引式オイルフィルタ装置と比較して、増加する。この差圧増加は、例えば、図2に示すようなスペーサー20によって、2つのろ過部材間の間隔が設けられる場合に、低減され得る。
【0021】
内外式フィルタ装置のさらなる実施形態が、図4に示される。図1ないし図3に示される実施形態とは対照的に、微細ろ過部材4は、フィルタハウジングの下部筐体2と上部筐体5との間であってその片側に挟持される。超微細ろ過部材3は、フィルタハウジングの吸気領域にのみ配置されるのではなく、微細ろ過部材4により形成されるフィルタポケット21の端部領域まで伸びている。また一方、超微細ろ過部材3は、副次流領域にも配置される。図4に示される実施形態では、微細ろ過部材4は、さらにスペーサー22によってその定位置に支持される。
【0022】
外内式フィルタ装置は、図5及び図6で示される。ろ過すべき流体は、オイル入口1を通ってフィルタハウジング内に流入し、そして、矢印23で示すように、直接微細ろ過部材4に到達してフィルタポケット内に浸透するか、又は、矢印24又は25で示すように、フィルタポケット外部に沿って流れる。その流体は、矢印26のように、超微細ろ過部材3を通して出口6の領域に浸透し、その後微細ろ過部材4を通してフィルタポケット内に流入し、そこから出口6に到達する。
【0023】
図6に示される実施形態(図4に示される実施形態と類似)では、超微細ろ過部材3は、オイル出口の領域にのみ配置されるのではなく、フィルタポケットの端部領域にまで伸びている。加えて、微細ろ過部材4は、下部筐体2と上部筐体5との間に挟持され、スペーサー27を用いることで、相互に所定の間隔が保たれている。
【0024】
図7が示すのは、1つの微細ろ過部材のみを有する吸引式オイルフィルタ装置のろ過効率(破線40参照)と、微細ろ過部材及び超微細ろ過部材を有する本発明の吸引式オイルフィルタ装置のろ過効率(実線41参照)と、が示される線図である。縦座標には、流体循環を60分間継続した後の粒子低減率が百分率で表示されている。横座標には、マイクロメーター単位の粒子径が表示されている。曲線40と41を比較すると、微細ろ過部材及び超微細ろ過部材を有する本発明による吸引式オイルフィルタ装置において、はるかに高い粒子低減率が達成されていることがわかる。例えば、20μm径の粒子は、60分間のオイル循環時間が経過した後、本発明による吸引式オイルフィルタ装置によっておよそ62%ろ過されている。微細ろ過部材のみを備える吸引式オイルフィルタ装置では、曲線40が示すように、同一時間で20μm径の粒子のおよそ40%しかろ過することができない。
【0025】
付加的な超微細ろ過部材を有する本発明による吸引式オイルフィルタ装置を用いることによって、吸引式オイルフィルタ装置の差圧は、増加する。図8には、体積流の関数としての差圧を示す曲線が表されており、微細ろ過部材のみを用いた吸引式オイルフィルタ装置に関するもの(破線)と、微細ろ過部材及び超微細ろ過部材を用いた本発明による吸引式オイルフィルタ装置に関するもの(実線)と、が表されている。曲線50は、オイルが高い粘度を有する摂氏−26度のオイル温度での、本発明による吸引式オイルフィルタ装置についての曲線を示している。曲線51は、同じく摂氏−26度の温度での、微細ろ過部材のみを備える吸引式オイルフィルタ装置についての曲線を示している。例えば、毎分14リットルの体積流において、標準的な吸引式オイルフィルタ装置の差圧は6.3×10-2MPaであるが、本発明による吸引式オイルフィルタ装置では、差圧は8.0×10-2MPaに到達する。本発明による吸引式オイルフィルタ装置の差圧は、このような低温において相対的により高い絶対値を有するが、絶対水準での差圧としては未だ低いものである。このため、このような事情は容認され得るものである。その他の曲線52及び53は、摂氏−18度のオイル温度、曲線54及び55は、摂氏−4度のオイル温度、曲線56及び57は、摂氏+10度のオイル温度、そして曲線58及び59は、摂氏+24度のオイル温度にそれぞれ対応するものである。オイル温度の上昇に伴い、差圧の絶対水準は低下するが、本発明による吸引式オイルフィルタ装置において計測される値と、微細ろ過部材のみを有する吸引式オイルフィルタ装置において計測される値と、の間の差も減少する。摂氏+24度のオイル温度では、毎分14リットルの体積流における差圧は、約0.25×10-2MPaでしかない。2つの曲線58と59との間の値の差は、0.02×10-2MPaでしかなく、したがって無視できるほど小さい。これは、本発明による吸引式オイルフィルタ装置がより高いオイル温度で使用される場合に、まだ僅かな差圧しか存在しないことを示すものである。
【0026】
その一方、本発明による吸引式オイルフィルタ装置が使用される場合に、ろ過性能が向上し、それ故、付加的な加圧式オイルフィルタ装置の寿命が著しく増大し得ることは、より重要である。関連する吸引式オイルフィルタ装置同様、加圧式オイルフィルタ装置にも同じろ過効果を有する超微細ろ過部材が使用されれば、加圧式オイルフィルタ装置の耐用年数を35%まで向上させることができる。したがって、図9に示すように、加圧式オイルフィルタ装置120及びオイルパン110内の吸引式オイルフィルタ装置100を有するろ過システム130の保守費用は、著しく低減され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン又は変速機のための吸引式オイルフィルタ装置であって、
フィルタハウジングに形成されるオイル入口及びオイル出口と、
前記オイル入口と前記オイル出口との間に不完全真空を発生させる前記オイル出口に接続可能な、吸引式オイルポンプと、
前記オイル入口と前記オイル出口との間に配置される微細ろ過部材及び超微細ろ過部材と、を含んで構成され、
前記微細ろ過部材は、前記オイル入口又は前記オイル出口のいずれか一方に取り付けられ、前記超微細ろ過部材は、流れ方向に対して前記微細ろ過部材の上流側かつ前記フィルタハウジングの副次流領域に配置される、吸引式オイルフィルタ装置。
【請求項2】
前記超微細ろ過部材及び前記微細ろ過部材は、直接相互に接続される、請求項1に記載の吸引式オイルフィルタ装置。
【請求項3】
前記超微細ろ過部材及び前記微細ろ過部材は、両部材の全域で相互に接続される、請求項2に記載の吸引式オイルフィルタ装置。
【請求項4】
前記超微細ろ過部材は、前記微細ろ過部材と複数の点で接続される、請求項2に記載の吸引式オイルフィルタ装置。
【請求項5】
前記超微細ろ過部材は、前記微細ろ過部材と一端でのみ直接接続される、請求項2に記載の吸引式オイルフィルタ装置。
【請求項6】
前記超微細ろ過部材から前記微細ろ過部材までの間隔は、前記オイル入口から始まって徐々に広がり、その最大間隔が、前記微細ろ過部材の厚さの倍数である、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の吸引式オイルフィルタ装置。
【請求項7】
前記間隔は、少なくとも1つのスペーサーによって得られる、請求項6に記載の吸引式オイルフィルタ装置。
【請求項8】
前記微細ろ過部材は、50μmより大きい径を有する粒子を分離し、前記微細ろ過部材は、20μmより大きい径を有する粒子を分離する、請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の吸引式オイルフィルタ装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の吸引式オイルフィルタ装置、
を含んで構成されるオイルパン。
【請求項10】
加圧式オイルフィルタ装置と、
請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の吸引式オイルフィルタ装置と、
を含んで構成されるオイルろ過システム。
【請求項11】
前記加圧式オイルフィルタ装置は、前記吸引式オイルフィルタ装置内の前記超微細ろ過部材と同じろ過性能を有する超微細ろ過部材を含む、請求項10に記載のオイルろ過システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−243468(P2009−243468A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−56130(P2009−56130)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(503375784)イーベーエスフィルトランクンストシュトッフメタルエルツォイクニッセ ゲーエムベーハー (11)
【氏名又は名称原語表記】IBS Filtran Kunststoff Metallerzeugnisse GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 19, 51597 Morsbach, GERMANY
【Fターム(参考)】