説明

オゾン水生成装置及びオゾン水生成方法

【課題】オゾン水中に溶解するオゾン濃度を高めて安定化させる。
【解決手段】オゾン水生成装置1は、原液を連続して定量移送する原液移送部10と、オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部20と、原液にオゾンガスを混合して気液混合水を生成する気液混合部30と、気液混合水を廃ガスとオゾン水とに分離して貯留する気液分離部40とを備えており、気液混合部30において、原液の流速よりもオゾンガスの流速を速くして気液混合するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原液にオゾンを溶解させたオゾン水を生成する装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水[H2O]にオゾン[O3]を溶解させたオゾン水は、オゾンによる優れた洗浄力や殺菌力を有することから、医療、食品、製造などの各種分野で利用されている。例えば医療の分野において、オゾン水で手や医療器具を洗浄することにより、細菌や微生物を死滅させ、病院での院内感染を防ぐのに役立っている。また、近年では眼科での手術や治療の際にオゾン水を消毒液として使用する例も見られ、この場合、原料水に体液と同濃度の生理食塩水を使用すると、術部や患部への刺激が少なくなることが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、医療の現場には、上記のようにオゾン水を洗浄水や消毒液として使用することができるように、オゾン水を生成して排水する装置が設置されている。しかし、その装置のほとんどは毎分3〜5L程度の大流量のオゾン水を排水するものであり、流れるオゾン水の水量が多いので、特に眼科において患者の眼を直接洗浄する用途には適していなかった。また、このような大流量の装置を使って眼を洗浄する場合には、一旦排水したオゾン水を別の器具に移し変えて使用することになるが、オゾン水は時間の経過とともにオゾン濃度が低下してしまうため、あらかじめ高濃度のオゾン水を生成しておかなければならずコスト的に無駄があった。
【0004】
一方、本出願人は、原液に所定濃度のオゾンを溶解させたオゾン水を小流量で生成することができる装置を開発している。この装置は、原液を連続して定量移送する原液移送部と、オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、原液にオゾンガスを混合して気液混合水を生成する気液混合部と、気液混合水を廃ガスとオゾン水に分離する気液分離部とを備えて構成されている。
【0005】
この装置によると、気液混合部において、エジェクタ内に発生するキャビテーション効果により原液にオゾンガスを溶解させ、更にスタティックミキサ内で乱流攪拌を起こして気液混合水を生成する方法が採用されている。この方法の場合、比較的低圧で少量の原液であっても所定濃度のオゾン水を生成することは可能であるが、オゾン水中に溶解したオゾン濃度の安定性を保つことが難しく、更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−21798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、原液に所定濃度のオゾンを溶解させたオゾン水を小流量で生成することができるオゾン水生成装置において、特に、オゾン水中に溶解するオゾン濃度を高めて安定化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明に係るオゾン水生成装置は、原液にオゾンを溶解させたオゾン水を生成する装置であって、原液を連続して定量移送する原液移送部と、オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、原液移送部から定量移送された原液にオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスを混合して気液混合水を生成する気液混合部と、気液混合部で生成した気液混合水を原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させたオゾン水とに分離して貯留する気液分離部と、を備え、気液混合部において、原液の流速よりもオゾンガスの流速を速くして気液混合することを特徴とする。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明に係るオゾン水生成方法は、原液にオゾンを溶解させたオゾン水を生成する方法であって、連続して定量移送される原液にオゾンを含むオゾンガスを混合して気液混合水を生成する気液混合工程と、気液混合工程で生成した気液混合水を原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させたオゾン水とに分離して貯留する気液分離工程と、を含み、気液混合工程において、原液の流速よりもオゾンガスの流速を速くして気液混合することを特徴とする。
【0010】
本発明では、原液の流速よりもオゾンガスの流速を速くして気液混合する構造の一例として、気液混合部において、オゾンガスを噴射する噴射口が原液の移送通路の流れ方向に沿って複数個設けられている構造を採用することができる。また、この構造を採用した場合、気液混合部において、原液の移送通路がコイル状に形成され、コイルの中心のガス管から移送通路に通じる噴射口が設けられていても良い。
【0011】
原液の移送通路については特に限定されないが、例えば原液の移送通路が螺旋形ホースからなり、螺旋形ホース内を流れる気液混合水に渦流を発生させる構造を採用することができる。また、この構造の場合、螺旋形ホースの内部に複数個の微小ボールを数珠状に連結したボールチェーンが収容されていても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、原液の流速よりもオゾンガスの流速を速くして気液混合するようにしたことにより、オゾンガスが原液を微細な粒子に切り裂いてオゾンを溶解させ、しかも生成された気液混合水に新たなオゾンガスが接触しながら流れるので、高濃度で安定したオゾン濃度のオゾン水を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のオゾン水生成装置の機能を示すブロック図。
【図2】オゾン水生成装置の内部構造を示す正面図。
【図3】オゾン水生成装置の内部構造を示す背面図。
【図4】原液の容器に取り付ける排水キャップの構成を示す説明図。
【図5】気液混合方法の原理を示す模式図。
【図6】気液混合部の構成を示す拡大図。
【図7】オゾンガス発生部における水分離器の構造を示す説明図。
【図8】気液分離部において排水チューブからの排水量が少ない状態を示す説明図。
【図9】気液分離部において圧力のバランスが取れた状態を示す説明図。
【図10】廃ガス処理部における水分離器の構造を示す説明図。
【図11】オゾン水生成装置について取付板を取り外す前の状態を示す説明図。
【図12】オゾン水生成装置について取付板を取り外した後の状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
------ 装置の概略 ------------------------------------------------------------
図1は本発明のオゾン水生成装置の機能ブロック図、図2は同装置の正面図、図3は同装置の背面図である。本実施形態のオゾン水生成装置は、原液に所定濃度のオゾンガスを溶解させたオゾン水を生成する装置であり、特に眼科での手術や治療の際に患者の眼を直接洗浄できるように、毎分約150〜200ml程度の少量のオゾン水を滴下した状態で供給する小型の装置にしたことが特徴である。図示したように、このオゾン水生成装置1は、ケースの内部に原液移送部10と、オゾンガス発生部20と、気液混合部30と、気液分離部40と、廃ガス処理部50を備えて構成されている。以下、各部の構成と動作を詳細に説明する。なお、図において実線の矢印は液体の流れを表わし、点線の矢印は気体の流れを表わしている。
【0016】
------ 原液移送部 ------------------------------------------------------------
図1において、原液移送部10は、オゾン水の原料となる原液を連続的に定量移送する手段であり、本実施形態では容器11とポンプ12を備えて構成されている。原液は水道水(水圧約0.2〜0.5MPa)のように加圧した状態で供給されるものでなく、容器からの自由落下により供給される小流量のものを使用する。なお、以下の実施形態においては、原液の一例として塩化ナトリウムを0.9%含有する生理食塩水を使用した例を挙げて説明するが、原液の種類はこれに限られない。例えば生理食塩水に代えて精製水、蒸留水、リンゲル液、あるいは眼灌流洗浄液(例えばオキシグルタチオン溶液)等を使用することもできる。
【0017】
図2に示すように、生理食塩水はプラスチック等の容器11に充填された市販品を使用し、付属のキャップを排水キャップ13に付け替えてセットする。図4に拡大して示すように、排水キャップ13は、キャップ本体の天板13aに排水口13bを開口した2段式のノズル13cを設けたものである。ノズル13cには排水口13bを横断する溝13dが形成され、溝13dに十文字形の仕切板13eが嵌め込まれている。この排水キャップ13を容器11の口に装着して逆さまにセットすると、排水口13bの断面が非円形(本例では半円形)に仕切られるので、落下する液体の表面張力が作用しにくくなり、容器11内の生理食塩水が仕切板13eを伝ってスムーズに流れ出るようになっている。なお、仕切板13eは生理食塩水で錆びないようにステンレス製であり、その先端をノズル13cの端面からわずかに突出させることにより流れ具合を良くしてある。
【0018】
図2において、容器11から流れ出た生理食塩水は、ノズル13cに接続された食塩水用のホース14を通ってポンプ12に供給される。ポンプ12はゴム製のチューブ12aの弾性力を利用して液体を移送するチューブポンプである。このチューブポンプを起動すると、ギヤードモータ(図示略)によって回転するローラ12bがチューブ12aを押し潰しながら公転する。そして、押し潰されたチューブ12aが弾性力で復元する際にホース14から生理食塩水を吸入し、ローラ12bの回転に伴ってチューブ12a内の生理食塩水が一定量ずつ連続して送り出されるようになっている。なお、チューブ12aのサイズやギヤードモータの回転数を変更することで移送流量を調節することができ、本実施形態では移送流量を毎分200mlに設定した生理食塩水が気液混合部30へ連続して定量移送される。
【0019】
------ オゾンガス発生部 ------------------------------------------------------
図1において、オゾンガス発生部20は、オゾンと酸素の混合ガス(以下「オゾンガス」という)を発生させる手段であり、本実施形態では酸素ボンベ21と、電磁弁22と、オゾン発生器23と、水分離器24と、排水電磁弁25と、逆止弁26を備えて構成されている。
【0020】
図3に示すように、オゾン発生器23は、酸素を原料ガスに利用して放電によりオゾンガスを発生させるもので、その給気口が電磁弁22を介して酸素ボンベ21に接続されている。このオゾン発生器23によると、酸素ボンベ21から供給された原料ガスが放電管23a内を通過する際に、放電管23aに高周波高電圧を印加することで無数の放電が生じ、原料ガス中にオゾンが発生するようになっている。その発生原理は、放電管23a内を通過する酸素分子[O2]が放電により酸素原子[O]に分解され、分解された酸素原子同士が分子に戻ろうとした時に、酸素原子[O]と分解されていない酸素分子[O2]とが結合してオゾン分子[O3]が生成されるというものである。なお、酸素ボンベ21からの原料ガスの供給量は電磁弁22に装着した流量計と圧力計によって調節され、本実施形態では流量を毎分250ml、圧力を0.05MPaに設定してある。
【0021】
また、オゾン発生器23の排気口には、水分離器24を介してオゾンガス用のホース27が接続されている。このホース27の先端には逆止弁26が設けられており、発生したオゾンガスが逆止弁26を通じて気液混合部30に供給され、オゾンガスがオゾン発生器23に逆流しないように構成されている。なお、水分離器24と排水電磁弁25の機能については後に詳しく説明する。
【0022】
------ 気液混合部 ------------------------------------------------------------
図1において、気液混合部30は、原液移送部10から移送されてきた原液にオゾンガス発生部20で発生させたオゾンガスを混合して気液混合水を生成する手段であり、本実施形態では加速器31と混合器32を備えて構成されている。
【0023】
ここで、気液を混合する方法としては、図5(a)のようにエジェクタとスタティックミキサを使用して高圧水流により混合する方法が知られている。これは高い圧力を利用して原液の高速水流を作り、エジェクタ内に発生するキャビテーション効果によりオゾンガスを溶解させ、更にスタティックミキサ内で乱流攪拌を起こして高濃度の気液混合水を生成する方法である。この方法の場合、チューブポンプで移送されるような低い圧力で少量の水流に対しても一定のオゾン濃度の気液混合水を生成することは可能であるが、オゾン濃度の安定性を保つことは難しい。
【0024】
そこで、本発明では水の圧力を主としたエジェクタではなく、図5(b)のように高い圧力のオゾンガスを利用して、水流を加速させて原液とオゾンガスを混合した後、これを螺旋形ホースに供給する方法を採用している。螺旋形ホースはフッ素樹脂製のホースを連続する螺旋状波形に成形したものであり、ホース内を流れる気液混合水に渦流を発生させる。この方法において重要な点は、螺旋形ホース内を流れる原液の流速よりもオゾンガスの流速の方が速いことである。オゾンガスが原液より高速であると、オゾンガスが原液を微細な粒子に切り裂いてオゾンを溶解させ、しかも生成した気液混合水に新たなオゾンガスが接触しながら進むのでオゾン濃度が高くなる。なお、オゾン濃度を安定させるためには、原液とオゾンガスの相対速度があまり変化しないようにする。
【0025】
また、上記の方法よりも更に高濃度で安定した混合方法として、図5(c)に示す方法を採用しても良い。この方法は、絞られた通路で原液を加速させ、螺旋形ホースの内部に複数個の微小ボールを数珠状に連結したボールチェーンを収容し、オゾンガスが流れるガス管からホース内にオゾンガスを分散して噴射するものである。この方法によると、ホース内を流れる原液がボールチェーンに衝突して回転しながら進み、その原液の流れに沿って順次オゾンガスが噴射されてオゾン濃度が次第に濃くなっていくので、より一層高濃度で安定した気液混合水が生成される。
【0026】
本実施形態の気液混合部30は、図6に示すように加速器31と混合器32を備えて構成されている。加速器31は、水平方向に延びる吸入口31aがチューブポンプのチューブ12a(図2を参照)に接続されており、テーパ状に絞られた通路で原液を加速させて吐出する。混合器32は加速器31の吐出口31bに接続され、円筒部32aの外周に螺旋形ホース33をコイル状に巻き付けてなる移送通路を有し、その通路内に数珠状のボールチェーン34を収容したものである。ボールチェーン34の素材は生理食塩水に対する耐食性を持たせるためにSUS316やSUS304等のステンレス鋼で成形されているのが好ましい。また、円筒部32aの中心にはオゾンガスを供給するガス管35が設置されていて、ガス管35から螺旋形ホース33の移送通路内へと貫通する噴射口35a,35a,…が移送通路の各段に対応して1個ずつ開設されている。
【0027】
この混合器32によると、加速器31から吐出された生理食塩水はボールチェーン34に衝突して渦流となり、螺旋形ホース33内を大きく旋回しながら流れ落ちていく。このとき、生理食塩水の流れに沿って、ガス管35に供給した高圧のオゾンガスが複数の噴射口35a,35a,…からそれぞれ生理食塩水に向かって噴射される。したがって、生理食塩水が流れ落ちるのにつれて次第にオゾン濃度が濃くなっていき、高濃度で安定した気液混合水が生成される。そして、加速器31と混合器32を通じて生成された気液混合水は、混合器32の排水口32bから気液分離部40に供給される。
【0028】
------ 気液分離部 ------------------------------------------------------------
図1において、気液分離部40は、気液混合部30で生成された気液混合水を、原液に溶解しない酸素と残留オゾンの混合ガス(以下「廃ガス」という)と、原液にオゾンが溶解したオゾン水とに分離する手段であり、本実施形態では気液分離槽41と、気液分離管42と、水量調節器43を備えて構成されている。
【0029】
図2に示すように、気液分離槽41は、円筒形の容器を寝かせた状態で設置したものであり、その給水口41aが混合器32に接続されている。混合器32から給水口41aを通って供給された気液混合水は、内部の分離室41bに一時的に貯留される。ここで、分離室41bに貯留した気液混合水はこの室内空間で廃ガスとオゾン水に分離され、廃ガスは分離室41bの天面に開口した排気口41cから流出し、オゾン水は分離室41bの底面に開口した排水口41dから流出するようになっている。
【0030】
気液分離管42は、気液分離槽41よりも容積の小さな細長管型の容器からなり、この容器を起立した姿勢でかつ容器中央部が気液分離槽41の分離室41bと同一高さになるように設置されている。その理由は、気液分離管42が気液分離槽41より低い位置にあると落差によってオゾン水の流れが速くなって気泡が発生しやすくなり、逆に高い位置にあるとオゾン水が溜まる速度が遅くなるからである。
【0031】
また、気液分離管42の側面上方には廃ガス用のホース45が接続され、側面下方にはオゾン水用のホース46が接続されている。したがって、気液分離槽41から流出した廃ガスはホース45を通って気液分離管42の管部42aの上方から流入し、これとは別に気液分離槽41から流出したオゾン水がホース46を通って気液分離管42の管部42aの下方から流入することにより、管部42a内に廃ガスとオゾン水が分離した状態で貯留される。そして、管部42aの天面に開口した排気口42bから廃ガスが流出し、管部42aの底面に開口した排水口42cからオゾン水のみが排水チューブ44を通じて装置1の外部に提供される。また、気液分離管42の排水口42cは下方に向かって次第に断面積が狭くなる漏斗状に形成されているため、管部42a内の水位が上昇するにつれて底部で気泡が取り除かれ、気泡のないオゾン水(オゾン濃度2〜10ppm)が排水チューブ44から排水されるようになっている。なお、オゾン水の排水量は水量調節器43によって毎分約150〜200ml程度に調節され、装置の外部に滴下した状態で提供することができる。
【0032】
------ 廃ガス処理部 ----------------------------------------------------------
図1において、廃ガス処理部50は、気液分離部40で分離された廃ガスに含まれる残留オゾンを酸素に分解して排気する手段であり、本実施形態では排ガス電磁弁51と、水分離器52と、排水電磁弁53と、オゾン分解器54を備えて構成されている。
【0033】
図3に示すように、排ガス電磁弁51は、廃ガスの排気量を調節するためのステンレス製の開閉弁であり、気液分離管42に塩化ビニル製の廃ガス用のホース55を介して接続されている。また、排ガス電磁弁51には水分離器52を介してオゾン分解器54が接続されている。なお、排ガス電磁弁51と水分離器52と排水電磁弁53の機能については後に詳しく説明する。
【0034】
オゾン分解器54は、活性炭を利用してオゾンを分解するもので、その給気側が水分離器52を介して排ガス電磁弁51に接続されている。オゾン分解器54の内部には、給気側と排気側にそれぞれフィルタ54a,54aが設けられており、これらのフィルタ間にオゾン分解触媒として破砕状の活性炭54bが充填されている。したがって、給気した廃ガスはフィルタ54aを通って活性炭54bの隙間を抜けていくが、このとき廃ガス中の残留オゾンが活性炭54bに吸着されて反応し、オゾン分子[O3]が酸素分子[O2]に分解される。また、オゾンガス特有の臭気もこの活性炭54bによって脱臭される。そして、分解された酸素は、オゾン分解器54の排気側に接続された酸素用のホース56を通って外気に開放される。なお、フィルタ54aの外側には空隙部54cが設けられているが、これは給気した廃ガスと活性炭52bを通して分解した酸素とを瞬時に広がりやすくするためのスペースである。
【0035】
以上がオゾン水生成装置1における各部の構成であるが、次に各部どうしの関係について説明する。
【0036】
------ オゾンガス発生部と気液混合部との関係 ----------------------------------
オゾンガス発生部20と気液混合部30は上述した通りに構成されているが、オゾン発生器23に水分が入るとオゾンガスの発生量が著しく低下してしまう。本装置によればオゾン発生器23の排気口側に逆止弁26が設けられており、混合器32で処理するオゾンガスの逆流を防止するようになっている。ところが、混合器32の排水口32bや気液分離管42の排水口42cで水が詰まった場合、あるいは酸素ボンベ21の圧力が低下した場合等には、逆止弁26を通ってその廃水が逆流することも考えられる。そこで本装置では、万が一廃水が逆流した場合でも、その水分がオゾン発生器23に流入しないように構成されている。
【0037】
すなわち、図7に示すように、オゾンガス発生部20には、オゾン発生器23と逆止弁26の間に水分離器24と排水電磁弁25が設けられている。水分離器24は細長管型の容器からなり、側面上方に開口した給気口24aにオゾン発生器23が接続され、給気口24aより低い位置に開口した排気口24bに、逆止弁26を介して混合器32が接続されている。また、水分離器24の底面には排水口24cが開設されており、この排水口24cを開閉する排水電磁弁25が装着されている。さらに、水分離器24の管内には、底部に溜まった廃水の液面を検出するために、棒状本体の先端に電極を有する水位センサ24dが設置されている。なお、水位センサ24dによる液面の検出位置は、少なくとも排気口24bよりも低い位置であれば特に限定されない。
【0038】
以上の構成によれば、上記のような原因で廃水が混合器32から逆止弁26を通って逆流した場合、その水分は排気口24bから水分離器24内に流れ込む。このとき、排水電磁弁25は閉じていて、管内の底部に廃水が貯留される。そして、管内に溜まった廃水が図のように予め設定した基準水位まで到達すると、液面に触れた水位センサ24dの電極間に微小電流が流れて水位を検出し、コントローラ61(図3を参照)に内蔵されたリレー回路により排水電磁弁25が開くように制御される。これにより、水分離器24内に溜まった廃水が排水口24cから排水電磁弁25を通って装置外部に排出される。なお、装置の運転中に水位センサ24dが動作した場合には、警報を出力するか、あるいは運転をいったん停止して、水分離器24内の廃水をすべて排出してから運転を開始するように制御される。
【0039】
------ 気液分離部と廃ガス処理部との関係 --------------------------------------
気液分離部40と廃ガス処理部50は上述した通りに構成されているが、内径の小さな排水チューブ44(内径φ2)から一定量のオゾン水を排出することは、気液分離管42と排水チューブ44の内部に溜まったオゾン水の自重に頼るだけでは難しい。そこで本装置では、気液分離槽41、気液分離管42、排水チューブ44及び排ガス電磁弁51について、これらの間の圧力バランスを利用して排水チューブ44から一定量の洗浄水を排出する構造を採用している。
【0040】
すなわち、図8に示すように排水チューブ44から排出されるオゾン水の流量が少ないと、気液分離槽41の分離室41bと気液分離管42の管部42aにそれぞれオゾン水が満たされる。このとき、排ガス電磁弁51を閉じて廃ガスの排気を停止することにより、管内の廃ガスの圧力が高くなる。したがって、気液分離管42内のオゾン水が廃ガスの圧力によって押し出され、排水チューブ44から排出されるオゾン水の流量が増加する。
【0041】
一方、図9に示すように圧力のバランスが取れた状態においては、気液分離管42の管部42aの内容積に比べて気液分離槽41の分離室41bの内容積の方が大きいので、気液分離管42内の水面の高さは変動しにくくなる。このとき、気液分離槽41では、廃ガスの大部分が排気口41cからホース45を通って気液分離管42の管部42aの上方に抜け出るとともに、オゾン水と微細な気泡が排水口41dからホース46を通って気液分離管42の管部42aの下方に流れ出る。ここで、気液分離管42の下方には大きな気泡がないため、管部42a内の水位の変動が少なく、安定した水量のオゾン水が排水チューブ44から排出される。
【0042】
このように、本装置によれば、気液分離部40と廃ガス処理部50との間の圧力バランスを利用することによって、排水チューブ44から常に一定量(毎分150〜200ml)のオゾン水を提供することができる。
【0043】
また、オゾン分解器54に水分が浸入すると、活性炭が濡れて残留オゾンの分解効率が悪くなってしまう。本装置によると気液分離管42の排気口42bが常時開口されているため、気液分離管42の管部42a内に貯留されたオゾン水が満水になった場合、そのオゾン水が排気口4bから外部に流れ出てオゾン分解器54に流れ込む恐れがある。そこで本装置では、気液分離管42が満水になった場合でも、その水分がオゾン分解器54に浸入しないように構成されている。
【0044】
すなわち、図10に示すように、廃ガス処理部50には、排ガス電磁弁51とオゾン分解器54の間に水分離器52と排水電磁弁53が設けられている。水分離器52は細長管型の容器からなり、側面上方に開口した給気口52aに排ガス電磁弁51を介して気液分離管42が接続され、給気口52aより高い位置に開口した排気口52bにオゾン分解器54が接続されている。また、水分離器52の底面には排水口52cが開設されており、この排水口52cを開閉する排水電磁弁53が装着されている。さらに、水分離器52の管内には、底部に溜まったオゾン水の水位を3段階(水位L1、L2、L3)で検出できるように、棒状本体の先端に電極を有する2個の水位センサ(下部水位センサ52dと上部水位センサ52e)が設置されている。なお、給気口52aと上部水位センサ52eの間には、水分離器52の上方の空間を完全に仕切る仕切板52fが設置されており、この仕切板52fは給気口52aから流れ込んだオゾン水が、水位センサに直接触れないようにする機能と、排気口52bから流れ出ないように阻止する機能を備えている。
【0045】
以上の構成により、気液分離管42の管内がオゾン水で満水になった場合、その水分は排ガス電磁弁51から給気口52aを通って水分離器52の内部に流れ込み、仕切板52fに衝突して管内の底部へと誘導される。これに対して、廃ガスは仕切板52fに衝突し、水位センサの両脇の隙間を抜けて排気口52bからオゾン分解器54へと排気される。また、水分離器52内に溜まったオゾン水の水量に応じて、排ガス電磁弁51と排水電磁弁53はコントローラ61のリレー回路により次のように制御される。なお、以下では説明の便宜上、下部水位センサ52dを「センサA」、上部水位センサ52eを「センサB」、排ガス電磁弁51を「電磁弁A」、排水電磁弁53を「電磁弁B」と呼ぶことにする。
【0046】
水分離器52内のオゾン水が図のように水位L1の時、センサAとセンサBは共に水面を検出せずOFFのままである。このとき、電磁弁Aは開の状態、電磁弁Bは閉の状態に制御される。したがって、給気口52aから流入したオゾン水が水分離器52の底部に溜まっていく。
【0047】
オゾン水が水位L2(下限)まで溜まると、センサAが水面を検出してONになるが、センサBはまだ水面を検出せずOFFのままである。ここでは、電磁弁Aと電磁弁Bは前の状態を維持するように制御される。つまり電磁弁Aが開の状態、電磁弁Bが閉の状態のままある。したがって、オゾン水は水分離器52の底部に更に溜まっていく。
【0048】
続いて、オゾン水が水位L2を超えて水位L3(上限)まで到達すると、センサBが水面を検出してONになる。このとき、電磁弁Aと電磁弁Bが同時に切り換えられる。つまり電磁弁Aが開から閉の状態になり、電磁弁Bが閉から開の状態になる。したがって、給気口52aからのオゾン水の流入が遮断され、水分離器52に溜まったオゾン水が排水口52cから電磁弁Bを通って装置外部に排出される。なお、電磁弁Bが開いている間、電磁弁Aは閉じているため、気液分離管42の管内の圧力が高くなる。これにより、気液分離管42の廃水口42cから排水されるオゾン水の水量が増加するので、気液分離管42の満水は解消される。
【0049】
また、上記の排水処理により水分離器52内のオゾン水が水位L3(上限)より少なくなると、センサBが水面を検出しなくなりOFFになる。ここでは、電磁弁Aと電磁弁Bは前の状態を維持するように制御される。つまり電磁弁Aが閉の状態、電磁弁Bが開の状態のままである。したがって、水分離器52内のオゾン水が更に減っていく。
【0050】
そして、オゾン水が水位L2(下限)よりも少なくなった瞬間に、センサAが水面を検出しなくなりOFFになる。このとき、電磁弁Aと電磁弁Bが同時に切り換えられる。つまり電磁弁Bが開から閉に切り換わり、電磁弁Aが閉から開に切り換わる。したがって、排水口52cから電磁弁Bを通って排出されるオゾン水が停止し、代わって電磁弁Aから給気口52aを通って廃ガスが流入し始める。ここで、完全に排水し終わる前に電磁弁Bを閉じて排水を停止する理由は、水分離器52の底部に少量のオゾン水を残すことにより、廃ガスが排水口52cから電磁弁Bを通って装置外部に漏れないようにするためである。なお、本実施形態ではオゾン水が水位L2を下回った瞬間に電磁弁Bを閉じて電磁弁Aを開放するようにしたが、このタイミングに代えて、電磁弁Aを閉じた後所定時間経過後に排水処理が完了したものとみなして電磁弁Aを開放するようにしても良い。
【0051】
このように、排ガス電磁弁51と水分離器52と排水電磁弁53により上記の一連の動作が繰り返され、水分離器52内のオゾン水が水位L3(上限)まで到達するといったん排水されるため、排気口52bからオゾン分解器54に流れ出ないように阻止される。したがって、気液分離管42の管内のオゾン水が満水になって溢れ出ても、その水分がオゾン分解器54に浸入することはないので、そのまま装置の運転を続けることができる。
【0052】
------ その他 ----------------------------------------------------------------
この装置にはフットスイッチ(図示略)が設けられており、フットスイッチのペダルを踏んで電源のON/OFFを切り換えることができる。電源をONすると、図3に示すコントローラ61に内蔵されたリレー回路により、ポンプ12を起動した後に酸素ボンベ21を開いてオゾン発生器23が運転を動作するように制御される。これにより、電源投入時には先に生理食塩水が移送されてからオゾンガスが発生するため、オゾンガスのみが排水チューブ44から室内に排気されないようになっている。一方、電源をOFFすると、コントローラ61によって最初にポンプ12の運転を停止し、その後にオゾン発生器23からのオゾンガスの発生が止まり、最後に酸素ボンベ21が閉じて酸素の供給を停止するように制御される。したがって、電源切断時には配管内に溜まった液体が酸素ボンベ21からのガス圧によって排水チューブ44からすべて押し出されるので、配管内に不要な液体が残らないようになっている。なお、コントローラ61とAC電源とはトロイダルトランス62によって電気的に絶縁されている。
【0053】
また、この装置を使用した後には、オゾンガスや生理食塩水に接触した部分を滅菌消毒するために加熱処理を行う必要があるが、本実施形態によれば加熱処理を行う部分だけを簡単に取り外すことができる。すなわち、図11に示すように、加速器31と、混合器32と、気液分離槽41と、気液分離管42のすべての部品が一枚の取付板63に装着されており、この取付板63の左右両側に一対のステンレス製の取手64,64が取り付け固定されている。また、混合器32にはねじ込み式の継手65を介してオゾンガス用のホース27が接続され、気液分離管42には同じく継手65を介して廃ガス用のホース55が接続されている。
【0054】
したがって、使用後に電源を切断して装置本体のカバーを取り外した後、図12のように継手65を回してホース27とホース55を取り外せば、取付板63が装置本体から切り離されるため、一対の取手64,64を持って取付板63ごと持ち運ぶことが可能になる。よって、滅菌消毒のために個々の部品の分解作業を行わなくても済み、メンテナンスを簡単に実施できるという利点がある。なお、装置本体側に残されたポンプ12については、カセット12cをひねって脱着し、内部のチューブ12aと外部の食塩水用のホース14を取り外してそれぞれを滅菌消毒することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…オゾン水生成装置
10…原液移送部
11…容器
12…ポンプ
13…排水キャップ
14…食塩水用ホース
20…オゾンガス発生部
21…酸素ボンベ
22…電磁弁
23…オゾン発生器
24…水分離器
25…排水電磁弁
26…逆止弁
27…オゾンガス用ホース
30…気液混合部
31…加速器
32…混合器
33…螺旋形ホース
34…ボールチェーン
35…ガス管
40…気液分離部
41…気液分離槽
42…気液分離管
43…水量調節器
44…排水チューブ
45…廃ガス用ホース
46…オゾン水用ホース
50…廃ガス処理部
51…排ガス電磁弁
52…水分離器
53…排水電磁弁
54…オゾン分解器
55…廃ガス用ホース
61…コントローラ
62…トロイダルトランス
63…取付板
64…取手
65…継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液にオゾンを溶解させたオゾン水を生成する装置であって、
原液を連続して定量移送する原液移送部と、
オゾンを含むオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部と、
原液移送部から定量移送された原液にオゾンガス発生部で発生させたオゾンガスを混合して気液混合水を生成する気液混合部と、
気液混合部で生成した気液混合水を原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させたオゾン水とに分離して貯留する気液分離部と、を備え、
気液混合部において、原液の流速よりもオゾンガスの流速を速くして気液混合することを特徴とするオゾン水生成装置。
【請求項2】
気液混合部において、オゾンガスを噴射する噴射口が原液の移送通路の流れ方向に沿って複数個設けられていることを特徴とする請求項1に記載のオゾン水生成装置。
【請求項3】
気液混合部において、原液の移送通路がコイル状に形成され、コイルの中心のガス管から移送通路に通じる噴射口が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のオゾン水生成装置。
【請求項4】
原液の移送通路が螺旋形ホースからなり、螺旋形ホース内を流れる気液混合水に渦流を発生させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のオゾン水生成装置。
【請求項5】
螺旋形ホースの内部に複数個の微小ボールを数珠状に連結したボールチェーンが収容されていることを特徴とする請求項4に記載のオゾン水生成装置。
【請求項6】
原液にオゾンを溶解させたオゾン水を生成する方法であって、
連続して定量移送される原液にオゾンを含むオゾンガスを混合して気液混合水を生成する気液混合工程と、
気液混合工程で生成した気液混合水を原液に溶解しない廃ガスと原液にオゾンを溶解させたオゾン水とに分離して貯留する気液分離工程と、を含み、
気液混合工程において、原液の流速よりもオゾンガスの流速を速くして気液混合することを特徴とするオゾン水生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−221180(P2010−221180A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73500(P2009−73500)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【特許番号】特許第4360501号(P4360501)
【特許公報発行日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(591264496)日本▲まき▼線工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】