説明

オゾン水製造装置

【課題】高濃度でオゾンを溶解させることができ、しかもオゾンが長時間抜けることもないオゾン水を得ることができるオゾン水製造装置を提供する。
【解決手段】水を圧送する加圧部1と、水にオゾンを注入するオゾン注入部2と、オゾンを注入された水が加圧部1で圧送されることによる加圧で水にオゾンを溶解させる加圧溶解部3と、加圧溶解部3でオゾンを溶解させたオゾン水の圧力を、オゾン水の流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する減圧部4とを備える。そして、加圧部1、オゾン注入部2、加圧溶解部3の各部を連続的に運転させて、減圧部4にオゾン水を連続的に供給し、減圧部4の流出側から気泡の発生のないオゾン水を連続的に吐出させるようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾン水は、各種の分野において殺菌、漂白などに広く利用されている。そしてこのようなオゾン水を製造する装置として、例えば特許文献1などで提案されたものがある。この特許文献1では、水中にパイプからオゾンガスを吹き込み、このオゾン混合水に超音波振動を与えることによって、オゾンの気泡を細かくして水にオゾンを溶解させるようにしたものである。
【特許文献1】特開2004−17042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし上記の特許文献1のものでは、超音波振動で微細化したオゾンの気泡を水に溶解させるようにしているだけであるので、高濃度でオゾンを溶解させることはできないものであり、またオゾンは微細気泡として水中に存在しているだけであるため、短時間で水中からオゾンが抜けてしまい、長時間に亘って高濃度でオゾンが溶解したオゾン水を得ることはできないものである。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高濃度でオゾンを溶解させることができ、しかもオゾンが長時間抜けることもないオゾン水を得ることができるオゾン水製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るオゾン水製造装置は、水を圧送する加圧部1と、水にオゾンを注入するオゾン注入部2と、オゾンを注入された水が加圧部1で圧送されることによる加圧で水にオゾンを溶解させる加圧溶解部3と、加圧溶解部3でオゾンを溶解させたオゾン水の圧力を、オゾン水の流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する減圧部4とを備え、加圧部1、オゾン注入部2、加圧溶解部3の各部を連続的に運転させて、減圧部4にオゾン水を連続的に供給し、減圧部4の流出側から気泡の発生のないオゾン水を連続的に吐出させるようにして成ることを特徴とするものである。
【0006】
この発明によれば、加圧部1による加圧によって水にオゾンを溶解させるため、オゾンを水に効率高く、高濃度に溶解させることができるものであり、またオゾンを高濃度で溶解したオゾン水の圧力を、減圧部4で流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧するものであるため、オゾン水に気泡が発生することを防止して、高濃度でオゾンが溶解したオゾン水をそのまま取り出すことができると共に、オゾンが抜けることなくオゾン濃度を長時間維持することができるものである。
【0007】
また請求項2の発明は、加圧溶解部3で水に溶解しない余剰オゾンを排出する余剰オゾン排出部5を備えて成ることを特徴とするものである。
【0008】
この発明によれば、水に溶解しない余剰オゾンを加圧溶解部3から排出することによって、余剰オゾンが残留することによる加圧溶解部3内のオゾンと水の比率を安定させて圧力変動を防ぐことができ、オゾンの溶解効率を高く維持することができるものである。
【0009】
また請求項3の発明は、余剰オゾン排出部5から余剰オゾンをオゾン注入部2に供給する連結部10を備えて成ることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、加圧溶解部3で水に溶解しない余剰オゾンをオゾン注入部2で再度水に注入することができ、余剰オゾンの無駄がなくなると共に、有害なオゾンが外部に漏れて環境が汚染されることを防ぐことができるものである。
【0011】
また請求項4の発明は、上記の減圧部4を、加圧溶解部3からオゾン水を送り出す流路6に設けられ、オゾン水の圧力を大気圧にまで段階的に減圧する複数の圧力調整弁7で構成して成ることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、圧力調整弁7による圧力調整でオゾン水の圧力を下げることができ、加圧溶解部3における圧力に応じて圧力調整弁7で減圧調整することによって、オゾン水に気泡が発生することを安定して防ぐことができるものである。
【0013】
また請求項5の発明は、上記の減圧部4を、流路断面積と流路長さの少なくとも一方の調整でオゾン水の圧力を大気圧にまで減圧するように形成された、加圧溶解部3からオゾン水を送り出す流路6で構成して成ることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、加圧溶解部3からオゾン水を送り出す流路6の流路断面積と流路長によって、オゾン水の圧力を下げることができ、装置の構造を簡単なものに形成することができるものである。
【0015】
また請求項6の発明は、上記の減圧部4は、一つの流路で形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
この発明によれば、複数の流路を設けて減圧部4を形成する場合のような、装置構成が複雑になることがないものである。
【0017】
また請求項7の発明は、加圧溶解部3からオゾン水を送り出す流路6の圧力損失とこの流路6に付加した延長流路8の圧力損失の和が、加圧部1で圧送される水とオゾンの押し込み圧によって加圧溶解部3内で水とオゾンを加圧するのに必要な圧力となるように、流路6に延長流路8を付加して成ることを特徴とするものある。
【0018】
この発明によれば、流路6に延長流路8を付加することによって、絞り弁を用いる必要なく、加圧部1からの押し込み圧で加圧溶解部3内の圧力を確保することができ、この圧力で水にオゾンを溶解させることができるものである。
【0019】
また本発明は、オゾンを発生させてオゾンをオゾン注入部2から供給するオゾン発生器13と、オゾン水のオゾン溶解濃度を測定すると共に測定結果に基づいてオゾン発生器13によるオゾンの発生を制御する濃度検出制御部9を備えて成ることを特徴とするものである。
【0020】
この発明によれば、オゾン濃度検出制御部9で測定されたオゾン溶解濃度に基づいて、オゾン発生器13によるオゾンの発生をフィードバック制御することによって、必要とされるオゾン濃度に調整しながらオゾン水を生成することができるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、加圧部1による加圧によって水にオゾンを溶解させるようにしたので、オゾンを水に効率高く、高濃度に溶解させることができるものであり、またオゾンを高濃度で溶解したオゾン水の圧力を、減圧部4で流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧するようにしたので、オゾン水に気泡が発生することを防止して、高濃度でオゾンが溶解したオゾン水をそのまま供給することができると共に、オゾンが抜けることなくオゾン濃度を長時間維持することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0023】
図1は本発明の実施の形態の一例を示すものであり、加圧溶解部3の流出側と流入側にそれぞれ配管で形成される流路15,6が接続してある。流入側の流路15は一端を加圧溶解部3に接続してあり、他端は水道配管17a、浴槽等の貯水槽17bなど、任意の水供給源17に接続してある。また流路15の途中には加圧部1が設けてある。加圧部1は、例えば、水供給源17から供給される水を加圧溶解部3に圧送するポンプ18などで形成されるものである。
【0024】
またこの流入側の流路15にはオゾン注入部2が接続してある。オゾン注入部2はオゾンを流路15に供給して注入するためのものであり、オゾン注入配管11にオゾン発生器13と圧力調整弁12を設けて形成してある。オゾン発生器13は圧力調整弁12よりも流路15側に設けられるものであり、オゾン発生器13としては例えば電気放電によって空気中の酸素からオゾンを生成するものを用いることができる。またこのようなオゾン発生器13を用いてオゾン注入部2を形成する他に、オゾンを封入したボンベからオゾンを供給するようにしてオゾン注入部2を形成することもできる。流路15へのオゾン注入部2の接続位置は、加圧溶解部3より上流側の位置であればよく、図1のように加圧部1より上流側の流路15に接続するようにしても、あるいは加圧部1より下流側の流路15に接続するようにしてもいずれでもよい。
【0025】
一方、流出側の流路6は一端を加圧溶解部3に接続し、他端はオゾン水回収槽(図示省略)などに接続して大気に開放してある。この流路6には減圧部4が設けてある。また加圧溶解部3には余剰オゾン排出部5が設けてある。余剰オゾン排出部5は、例えば、加圧溶解部3内の気圧が所定の圧力以上になると開口するガス抜き弁などを備えて形成してあり、この余剰オゾン排出部5は連結部10によってオゾン注入部2に連通接続してある。図の実施の形態では、連結部10は圧力調整弁12とオゾン発生器13の間の位置においてオゾン注入配管11に接続してあるが、圧力調整弁12より流路15の側の位置であればよく、オゾン発生器13よりも流路15の側においてオゾン注入配管11に接続するようにしてもよい。
【0026】
上記のように形成されるオゾン水製造装置にあって、ポンプ18で形成される加圧部1を作動させると、水供給源17から供給される水が流路15を通して加圧溶解部3へ圧送して供給される。このように流路15内を水が流れる際に、オゾン注入部2のオゾン注入配管11内に対して吸引力が作用し、大気中の空気が圧力調整弁12を通してオゾン発生器13に吸引され、オゾン発生器13内で空気中の酸素からオゾンが生成される。このように生成されたオゾンはオゾン注入部2から流路15内に吸引されて水にオゾンが注入される。そしてこのようにオゾンが注入された水を加圧部1で加圧溶解部3へ圧送して送り込むことによって、この圧送による押し込み力で加圧溶解部3内において水とオゾンに圧力が加わって高圧になる。このように加圧溶解部3内で水とオゾンを加圧することによって、水にオゾンを効率高く飽和量以上に溶解させることができるものであり、オゾンが高濃度で溶解したオゾン水を得ることができるものである。
【0027】
また、このように加圧溶解部3内において水とオゾンを加圧して強制的に効率良く溶解させ、高濃度でオゾンが溶解したオゾン水を短時間で生成することができるため、加圧溶解部3内で生成されたオゾン水を流路6を通して送り出しながら、加圧溶解部3内で水にオゾンを溶解させるようにすることができるものである。従って、加圧溶解部3をタンクのような容積の大きなもので形成する必要がなくなるものであり、装置規模を小さくして装置のコストを低減することが可能になるものである。
【0028】
ここで、オゾン注入部2から注入されるオゾンの全量が水に溶解しないと、加圧溶解部3内で水に溶解しない余剰オゾンが生じるが、加圧溶解部3に余剰オゾン排出部5を設け、オゾンの溶解飽和量以上の溶解できない余剰オゾンを加圧溶解部3から排出することによって、余剰オゾンが残留することによる加圧溶解部3内のオゾンと水の比率を安定させて圧力変動を防ぐことができ、オゾンの溶解効率を高く維持することができるものである。
【0029】
また、このように余剰オゾン排出部5から排出された余剰オゾンは連結部10を通してオゾン注入部2に返送し、オゾン注入部2から再度、水に注入するようにしてある。従って、加圧溶解部3で溶解しなかったオゾンを捨てることなく有効利用することができるものであり、しかも有害なオゾンが外部に漏れて環境が汚染されることを防ぐことができるものである。このとき、余剰オゾン排出部5から返送された余剰オゾンだけではオゾン注入部2で注入するガス圧が不足することがあるので、圧力調整弁12を調整して空気を吸入し、オゾン発生器13で不足分のオゾンを生成することによって、所定のガス圧でオゾンを注入することができるようにしてある。
【0030】
そして、上記のように加圧溶解部3で生成されたオゾン水は、流路6を通して送り出されるが、加圧溶解部3内でオゾン水は高圧に加圧された状態にあるので、そのまま大気圧下に送り出されると、急激な圧力低下によって、オゾン水中に気泡が発生するおそれがあり、オゾン溶解量が減少し、またキャビテーションが発生することがある。このために本発明では、流路6に減圧部4を設け、加圧溶解部3内で加圧された状態のオゾン水を流路6を通して送り出す際に、減圧部4で大気圧まで気泡を発生させることなく減圧をした後に吐出するようにしてある。
【0031】
ここで、加圧溶解部3内で生成されるのと同じ濃度のオゾン水について、加圧溶解部3内で加圧されている圧力と同じ圧力から大気圧まで減圧する際に、気泡が発生しない減圧度を、予め計算や測定で求めておき、減圧部4をこの予め求めた減圧度で、オゾン水が流入する側から流出する側に向かって、オゾン水の圧力を段階的に、あるいは連続的に、徐々に大気圧まで減圧できるように設定してある。従って、加圧溶解部3内で加圧されたオゾン水を、減圧部4において気泡が発生しない減圧度で徐々に大気圧まで減圧した後に、流路6の先端から吐出することによって、オゾン水に気泡が発生することなくオゾン水を吐出することができるものであり、加圧溶解部3で飽和量以上にオゾンが溶解されたオゾン水を、安定した高濃度の状態のまま送り出して利用することが可能になるものである。
【0032】
図2は、減圧部4の具体的な実施の形態の一例を示すものであり、加圧溶解部3に接続される流路6に、水の流れ方向に沿って複数の圧力調整弁7(7a,7b,7c)を設けることによって、減圧部4を形成するようにしてある。このように減圧部4を複数の圧力調整弁7を備えて形成することによって、気泡が発生しない減圧度でオゾン水の圧力を段階的に徐々に下げることができるものである。
【0033】
各圧力調整弁7a,7b,7cは、オゾン水に気泡発生が生じない減圧度で減圧するように設定されているものであり、この減圧度は予め計算や測定で求めた数値に設定されるものである。例えば、加圧溶解部3から流路6に送り出されたオゾン水の加圧圧力が0.5MPaであるとき、気泡が発生しない減圧量が0.12MPaであると測定によって判明しているとすると、圧力調整弁7aでオゾン水の圧力を0.12MPa減圧して、0.38MPaに落とす。またオゾン水の加圧圧力が0.38MPaであるとき、気泡が発生しない減圧量が0.16MPaであると測定によって判明しているとすると、次の圧力調整弁7bでオゾン水の圧力を0.16MPa減圧して、0.22MPaに落とす。さらにオゾン水の加圧圧力が0.22MPaであるとき、気泡が発生しない減圧量が0.22MPa以上であると測定によって判明しているとすると、次の圧力調整弁7cでオゾン水の圧力を0.22MPa減圧して、加圧圧力を0MPaに落とし、大気圧まで減圧することができるものである。尚、圧力調整弁7による減圧量は、水温、オゾンの溶解濃度、加圧溶解部3内の圧力、流路6の径などに応じて変動するものであり、装置毎に、計算や測定をして、適宜設定されるものである。
【0034】
図3は、減圧部4の具体的な実施の形態の他の一例を示すものであり、加圧溶解部3に接続される流路6を流路断面積が異なる複数の管体20a,20b,20cを備えて形成し、この流路断面積の異なる複数の管体20a,20b,20cで減圧部4が形成されるようにしてある。
【0035】
図3(a)の実施の形態では、流路断面積が異なる、つまり内径の異なる複数の管体20a,20b,20cを一体に連ねるようにしてあり、オゾン水の流れの上流側から下流側へと、徐々に管体20a,20b,20cの径が小さくなるようにしてある。また図3(b)の実施の形態では、内径の異なる複数の管体20a,20b,20cをレジューサ21を介して接続して連ねるようにしてあり、オゾン水の流れの上流側から下流側へと、徐々に管体20a,20b,20cの径が小さくなるようにしてある。さらに図3(c)の実施の形態では、オゾン水の流れの上流側から下流側へと連続的に径が小さくなる管体20a,20b,20cを一体に連ねるようにしてある。
【0036】
この図3のものにあって、各管体20a,20b,20cの内径はφd>φd>φdであるので、各管体20a,20b,20c内のオゾン水の流速はV<V<Vとなり、各管体20a,20b,20c内のオゾン水の圧力はP>P>Pとなる。従って、加圧溶解部3から送り出されるオゾン水の圧力Pを気泡が発生しない減圧度で、図3(a)(b)のものでは段階的に減圧して、また図3(c)のものでは連続的に減圧して、Pの大気圧まで徐々に下げることができるものである。
【0037】
図4は、減圧部4の具体的な実施の形態の他の一例を示すものであり、加圧溶解部3に接続される流路6を通してオゾン水を排出する際に、流路6内をオゾン水が流れる際の圧力損失によって、オゾン水に気泡が発生しない減圧速度でオゾン水の圧力を徐々に連続的に低下させ、オゾン水の圧力を大気圧にまで低下させるようにしてある。従って図4(a)の実施の形態では、加圧溶解部3内での圧力がPのオゾン水を、流路6内を通過させる際にP〜Pn−1へと、オゾン水に気泡が発生しない減圧速度で徐々に連続的に圧力を低下させ(P>P>Pn−1)、流路6の終端ではオゾン水の圧力Pが大気圧にまで低下するように、流路6の流路断面積と管路長さLを設定するようにしてあり、このような流路断面積と管路長さLを有する流路6によって減圧部4が形成されるものである。
【0038】
この管路長さLは、次の式から設定することができる。すなわち、
流体の関係式P=λ・(L/d)・(v/2g)
[Pは加圧溶解部3内の圧力、λは管摩擦係数、dは内径、vは流速、gは加速度]
から、L=(P・d・2g)/(λ・v)を導くことができ、この式から計算して流路6の管路長さLを求めることができるものである。このように、流路6の管路長さLを所定長さに形成するだけで減圧部4を形成することができるものであり、装置の構造をより簡単なものに形成することができるものである。このような管路長さLが長い流路6で形成される減圧部4は、例えば図4(b)のような長いホース4aで形成することができる。
【0039】
上記のように本発明では加圧部1によって水とオゾンを加圧溶解部3に圧送し、この際の押し込み圧によって加圧溶解部3内で水とオゾンを加圧してオゾンを溶解させるようにしているが、この押し込み圧を受けて加圧溶解部3内に必要な圧力が発生するようにする必要がある。このように加圧部1からの押し込み圧を受ける圧力を確保するために、加圧溶解部3の流出側の流路6に絞り弁などの絞り部を設けることが考えられるが、このように絞り部を流路6に設けると、加圧溶解部3で生成されたオゾン水を流路6に送り出して排出する際に、絞り部の前後で大きな圧力差が生じ、オゾン水が急激に減圧されることになり、オゾン水に気泡が発生するおそれがある。
【0040】
そこで図5の実施の形態では、流路6の圧力損失を利用して、流路6に絞り部を設ける必要なく、押し込み圧を受ける圧力を確保するようにしている。このとき、上記各実施形態の流路6の長さでは、流路6の圧力損失で押し込み圧を受ける圧力を確保することは難しいので、流路6の加圧溶解部3と反対側の端部に延長流路8を付加するようにしてある。すなわち、流路6の減圧部4も含めた全体の圧力損失を算出し、加圧部1からの押し込み圧によって加圧溶解部3内で水とオゾンを加圧するのに必要な圧力と、この流路6の圧力損失との差を算出し、さらにこの差の圧力損失が生じる管路の長さを上記の式から算出して、この管路長さの延長流路8を流路6に付加するようにしてある。このように、流路6の圧力損失と延長流路8の圧力損失の和が、加圧部1で圧送されるオゾンと水の押し込み圧によって加圧溶解部3内で水とオゾンを加圧するのに必要な圧力となるように、流路6に延長流路8を付加することによって、絞り弁などの絞り部を用いる必要なく、加圧部1からの押し込み圧で加圧溶解部3内の加圧力を確保して、水にオゾンを溶解させることができるものである。
【0041】
図6はオゾン水製造装置の具体的な一例を示すものであり、水は流路15に導入口30から導入される。流路15にはオゾンが導入されるオゾン注入部2が接続してあり、オゾンが注入された水はポンプで形成される加圧部1によって、小容量のタンクで形成される加圧溶解部3に圧送される。このようにオゾンが注入された水が加圧溶解部3に圧送されることによって、加圧溶解部3内で水にオゾンが溶解されたオゾン水が生成される。そしてこのオゾン水は加圧溶解部3から流路6に送り出され、流路6の先端の吐出口31から送り出される。この流路6には減圧部4が設けてあり、加圧溶解部3から送り出されたオゾン水は大気圧まで減圧された後に流路6の端部の吐出口31から吐出され、気泡が発生しない状態でオゾン水を送り出すことができる。図6の実施の形態では、減圧部4は、図3(a)の内径が異なる管体20a,20b,20cを連ねたもので形成してある。
【0042】
この装置にあって、ポンプで形成される加圧部1を連続運転することによって、オゾン注入部2、加圧溶解部3を連続的に運転させて、減圧部4にオゾン水を連続的に供給するようにすることができるものであり、減圧部4の流出側である吐出口31から気泡の発生のないオゾン水を連続的に吐出させて得ることができるものである。また、減圧部4は加圧溶解部3からオゾン水を送り出す流路6の一部として設けられており、そしてこの減圧部4はオゾン水の圧力を流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧するものであるため、減圧部4を例えば内径2〜50mm程度の比較的大きい流路として形成することができるものであり、異物が混入しても減圧部4内が詰まるようなことがないものである。さらにこのような構成の減圧部4を設けることによって、減圧部4を流れるオゾン水のレイノルズ数が臨界レイノルズ数(Re=2320)より小さなレイノズル数である層流状態だけではなく、臨界レイノルズ数より大きなレイノルズ数である乱流状態でも対応することが可能になるものである。さらに、減圧部4をこのように内径の大きな流路として形成することによって、オゾン水の供給量を多くすることができ、減圧部4を一つの流路のみで形成することが可能になるものであり、装置構成を簡単なものに形成することができるものである。そして本装置を利用してオゾン水を製造する場合、水温20℃の水を用いて最大オゾン溶解量0.6g/Lのオゾン水を得ることができるものである。
【0043】
上記のようにして製造されたオゾン水は、例えば、食材や食器などの食品関連の被洗浄物の殺菌、生鮮食料品の殺菌や鮮度維持、トイレ、流し台、洗面台、風呂の除菌や消臭、トイレの尿石防止、洗濯機の被洗濯物および食器洗浄器の被洗浄物の殺菌や漂白、畜産、農業、食品、染色等の各種産業における排水の殺菌、有機物分解、脱臭、脱色など、各種の用途に用いることができるものである。そして本発明では上記のように、加圧部1による加圧によって加圧溶解部3内で水にオゾンを溶解させ、気泡が発生しないように減圧部4で大気圧にまで減圧することによって、オゾン水を製造するようにしているため、オゾンが気泡として外部に漏出することを防ぐことができるものであり、またオゾン水にはオゾンが完全に溶解した状態であるので、急激な温度や圧力の変化がない通常の使用状態では気泡化しにくく、オゾン水からもオゾンが放出されることがないものであり、オゾンによって環境を汚染するようなことがないものである。さらにオゾン水中のオゾンは、殺菌、有機物分解、脱色、漂白などを行なう際に消費される以外は消費や分解がなく、オゾン水による効果を長時間維持することができるものである。
【0044】
図7は本発明の他の実施の形態を示すものであり、減圧部4よりも水の流れの下流側において流路6にオゾン濃度計によって形成される濃度検出部37が設けてある。この濃度検出部37は制御部38に電気的に接続してあり、さらに制御部38はオゾン発生器13に電気的に接続してあり、制御部38によってオゾン発生器13の作動を制御することができるようにしてある。この濃度検出部37と制御部38によって濃度検出制御部9が形成されるものである。その他の構成は図1のものと同じである。
【0045】
このものにあって、上記のように減圧部4で圧力が減圧されたオゾン水が流路6を通過する際に、濃度検出部37によってオゾン水のオゾン溶解濃度が測定されるようになっており、濃度検出部37で測定されたオゾン濃度のデータは制御部38に入力されるようになっている。制御部38はCPUやメモリー等を備えて形成されるものであり、濃度検出部37から入力されたオゾン濃度値に基づいて、オゾン発生器13をオン−オフ制御したり、あるいはオゾン発生器13の印加電圧を変更したりして、オゾン発生器13によるオゾンの発生を制御するようにしてある。すなわち、濃度検出部37で測定されるオゾン濃度が制御部38のメモリーに登録された値より小さいときには、制御部38による制御で、オゾン発生器13をオンさせたり印加電圧を上昇させたりして、オゾン注入部2から水に注入されるオゾン量を増やして、加圧溶解部3で溶解されるオゾンの溶解濃度を高めるようにするものであり、また、濃度検出部37で測定されるオゾン濃度が制御部38のメモリーに登録された値より大きいときには、制御部38による制御で、オゾン発生器13をオフさせたり印加電圧を降下させたりして、オゾン注入部2から水に注入されるオゾン量を減らして、加圧溶解部3で溶解されるオゾンの溶解濃度を低下させるようにするものである。このようにして制御部38のメモリーに登録されたオゾン濃度の値にオゾン水の濃度を調整することができるものである。従って、用途に応じてオゾン水において必要とされるオゾン濃度は異なるが、必要なオゾン濃度のデータを制御部38のメモリーに登録しておくことによって、必要とされるオゾン濃度に調整しながらオゾン水を生成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】同上の一部の一例を示す概略図である。
【図3】同上の一部の他の一例を示すものであり、(a)(b)(c)はそれぞれ概略図である。
【図4】同上の一部の他の一例を示すものであり、(a)は概略図、(b)は斜視図である。
【図5】同上の一部の他の一例を示す概略図である。
【図6】(a)(b)は本発明の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施の形態の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0047】
1 加圧部
2 オゾン注入部
3 加圧溶解部
4 減圧部
5 余剰オゾン排出部
6 流路
7 圧力調整弁
8 延長流路
9 濃度検出制御部
10 連結部
11 オゾン注入配管
12 圧力調整弁
13 オゾン発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を圧送する加圧部と、水にオゾンを注入するオゾン注入部と、オゾンを注入された水が加圧部で圧送されることによる加圧で水にオゾンを溶解させる加圧溶解部と、加圧溶解部でオゾンを溶解させたオゾン水の圧力を、オゾン水の流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する減圧部とを備え、加圧部、オゾン注入部、加圧溶解部の各部を連続的に運転させて、減圧部にオゾン水を連続的に供給し、減圧部の流出側から気泡の発生のないオゾン水を連続的に吐出させるようにして成ることを特徴とするオゾン水製造装置。
【請求項2】
加圧溶解部で水に溶解しない余剰オゾンを排出する余剰オゾン排出部を備えて成ることを特徴とする請求項1に記載のオゾン水製造装置。
【請求項3】
余剰オゾン排出部から余剰オゾンをオゾン注入部に供給する連結部を備えて成ることを特徴とする請求項2に記載のオゾン水製造装置。
【請求項4】
減圧部を、加圧溶解部からオゾン水を送り出す流路に設けられ、オゾン水の圧力を大気圧にまで段階的に減圧する複数の圧力調整弁で構成して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオゾン水製造装置。
【請求項5】
減圧部を、流路断面積と流路長さの少なくとも一方の調整でオゾン水の圧力を大気圧にまで減圧するように形成された、加圧溶解部からオゾン水を送り出す流路で構成して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオゾン水製造装置。
【請求項6】
減圧部は、一つの流路で形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のオゾン水製造装置。
【請求項7】
加圧溶解部からオゾン水を送り出す流路の圧力損失とこの流路に付加した延長流路の圧力損失の和が、加圧部で圧送される水とオゾンの押し込み圧によって加圧溶解部内で水とオゾンを加圧するのに必要な圧力となるように、流路に延長流路を付加して成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のオゾン水製造装置。
【請求項8】
オゾンを発生させてオゾンをオゾン注入部から供給するオゾン発生器と、オゾン水のオゾン溶解濃度を測定すると共に測定結果に基づいてオゾン発生器によるオゾンの発生を制御する濃度検出制御部を備えて成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のオゾン水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−195813(P2009−195813A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39208(P2008−39208)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】