説明

オゾン流量の測定方法

【課題】混合ガスの組成に依存することなく、混合ガス流における正味のオゾン流量を簡易的かつ高精度に計測可能なオゾン流量測定方法を提供する。
【解決手段】オゾンを含有する混合ガス中のオゾン流量を測定する方法であって、オゾンを含有する第1混合ガス中に含まれるオゾンを全て分解して第2混合ガスを生成する過程と、オゾンの分解熱による第2混合ガスの第1の温度上昇を計測する過程と、第2混合ガスを加熱する過程と、加熱による第2混合ガスの第2の温度上昇を計測する過程と、第1の温度上昇と第2の温度上昇とから、オゾンの分解により発生した熱量を算出する過程と、熱量から第1混合ガス中のオゾン流量を算出する過程と、を備えることを特徴とするオゾン流量の測定方法を採用する。また、付加的に全流量を測定することにより、オゾン流量と全流量からオゾン濃度を測定する方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン流量の測定方法に関するものであり、特に、オゾンの分解熱を利用した熱式のオゾン流量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のオゾン流量を測定する方法としては、酸素ガスを原料としてオゾナイザーによってオゾンを発生させる場合に、上記オゾナイザーの入口よりも上流側で酸素ガスの流量を計測するとともに、当該オゾナイザーの出口よりも下流側でオゾン濃度を計測することにより、正味のオゾン流量を算出する方法が知られている。
【0003】
また、オゾン濃度の測定方法としては、ヨウ化カリウム溶液を用いた滴定によるオゾン濃度の測定方法や、紫外線吸収を用いたオゾン濃度の測定方法、赤外線吸収を用いた方法、質量分析計を用いた方法などが知られている。
【0004】
上記方法以外のオゾン流量を測定する方法としては、流量とガス密度とを同時に測定することが可能なコリオリ流量計を用いる方法が知られている。オゾンを含む2成分混合物からオゾン流量を測定する場合、ガス密度からオゾン濃度を物性推算できるので、上記コリオリ流量計を用いることにより正味のオゾン流量を算出することができる。しかしながら、上記コリオリ流量計は高価であるため、上記コリオリ流量計を用いたオゾン流量の測定方法は、一般的には使用されていない。
【0005】
ところで、特許文献1及び特許文献2では、オゾンを希釈ガス(希ガスあるいはCF等)で希釈したプロセス流体を用いる方法が開示されている。また、オゾンを含む混合ガスとしては、O−CF系、O−O−CF系、O−O−Kr系等が知られている。これらの混合ガスについては、プロセス監視のためにオゾン流量あるいはオゾン濃度を計測する必要性があるが、混合ガスに関する物性データが少なく、上記オゾン流量あるいはオゾン濃度を計測する方法が限られていた。
【0006】
また、オゾン分解反応において、次式に示すように、142.7(kJ/mol)の発熱があることが知られている。
=3/2O+142.7(kJ/mol)
【0007】
しかしながら、オゾンを含む混合ガスの比熱(定圧比熱)が混合ガス組成によって異なるため、上記発熱現象を利用したオゾン流量の測定方法は従来には存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−040668号公報
【特許文献2】特開2006−272090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、オゾンを含む混合ガスの組成に依存することなく、混合ガス流における正味のオゾン流量を簡易かつ高精度に計測可能なオゾン流量の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1に係る発明は、オゾンを含有する混合ガス中のオゾン流量を測定する方法であって、
オゾンを含有する第1混合ガス中に含まれる前記オゾンを全て分解して第2混合ガスを生成する過程と、
前記オゾンの分解熱による前記第2混合ガスの第1の温度上昇を計測する過程と、
前記第2混合ガスを加熱する過程と、
前記加熱による前記第2混合ガスの第2の温度上昇を計測する過程と、
前記第1の温度上昇と前記第2の温度上昇とから、前記オゾンの分解により発生した熱量を算出する過程と、
前記熱量から前記第1混合ガス中のオゾン流量を算出する過程と、を備えることを特徴とするオゾン流量の測定方法である。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のオゾン流量の測定方法であって、前記オゾンの分解が、触媒による方法又は熱分解による方法であることを特徴とするオゾン流量の測定方法である。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のオゾン流量の測定方法であって、前記触媒による方法が、0.2mm以下の間隙を有する焼結構造又は網状構造の触媒を含有する構造体を用いることを特徴とするオゾン流量の測定方法である。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のオゾン流量の測定方法であって、前記第1混合ガス中の前記オゾン以外の成分が、He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn,CF,CHFの中のいずれか1以上であることを特徴とするオゾン流量の測定方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のオゾン流量の測定方法によれば、オゾン分解に伴う発熱により、オゾンが分解して生成した第2混合ガスの温度上昇を測定する過程と、当該第2混合ガスに既知の熱量を与えて当該第2混合ガスの温度上昇を測定する過程とを設けて、両者の温度上昇を比較することにより、オゾン分解に伴う発熱量を算出し、もってオゾン流量を算出する構成となっている。これにより、オゾンを含む混合ガスの組成に依存することなく、混合ガス流における正味のオゾン流量を簡易かつ高精度にオゾン流量を測定することができる。
【0015】
また、本発明のオゾン流量の測定方法によれば、オゾンを含む混合ガス流における正味のオゾン流量を計測することができるため、当該混合ガスの全流量を計測することにより、オゾンを含む混合ガス中のオゾン濃度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に適用可能なオゾン流量測定装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に適用可能なオゾン流量測定装置を示す概略構成図である。
【図3】(a)及び(b)は、本発明の第3の実施形態に適用可能なオゾン流量測定装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した一実施形態である一例であるオゾン流量の測定方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0018】
<第1の実施形態>
先ず、本発明を適用した第1の実施形態であるオゾン流量の測定方法について説明する。
本実施形態のオゾン流量の測定方法は、オゾンを含有する混合ガス中のオゾン流量を測定する方法であって、オゾンを含有する第1混合ガス中に含まれるオゾンを全て分解して第2混合ガスを生成する過程(オゾン分解過程)と、オゾンの分解熱による第2混合ガスの第1の温度上昇を計測する過程(第1計測過程)と、第2混合ガスを加熱する過程(加熱過程)と、前記加熱による第2混合ガスの第2の温度上昇を計測する過程(第2計測過程)と、第1の温度上昇と第2の温度上昇とから、オゾンの分解により発生した熱量を算出する過程(熱量算出過程)と、前記熱量から第1混合ガス中のオゾン流量を算出する過程(オゾン流量算出過程)と、を備えている。
【0019】
また、本実施形態のオゾン流量の測定方法は、図1に示すようなオゾン流量の測定装置(以下、単に「測定装置」という)を用いて行う。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のオゾン流量の測定方法に適用する測定装置1は、第1のオゾン分解セル2と、第2のオゾン分解セル3と、流量計4と、が直列に接続されて概略構成されている。そして、第1のオゾン分解セル2には第1の温度計5が設けられており、第2のオゾン分解セル3には第2の温度計6とヒータ電源7とが設けられている。
【0021】
以下、本実施形態のオゾン流量の測定方法について、測定装置1の構成とともに詳細に説明する。
【0022】
(オゾン分解過程)
先ず、オゾン分解過程では、オゾンを含有する第1混合ガス中に含まれるオゾンを全て分解(完全分解)して第2混合ガスを生成する。
【0023】
オゾンを含有する第1混合ガスは、オゾンと、オゾンと化学反応を起こさないガスとの混合ガスである。上記オゾンと化学反応を起こさないガスとしては、例えば、He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn,CF,CHFの中のいずれか1つのガス又は2以上の混合ガスが挙げられる。
なお、本実施形態において、第1混合ガス中に酸素が含まれていても良い。
【0024】
第2混合ガスは、上記第1混合ガス中に含まれるオゾンが全て分解して生成されたものである。したがって、第2混合ガスは、オゾンが分解して生成した酸素と、上記オゾンと化学反応を起こさないガスとの混合ガスである。
【0025】
オゾン分解手段である第1のオゾン分解セル2は、オゾン分解作用があり、かつヒータとして使用できる材料から構成されていることが好ましい。具体的には、粉末状のオゾン分解触媒と電気伝導性粉末とを混合した混合粉末を調整したものを筒状セルに封入して構成することができる。また、上記オゾン分解触媒としては、例えば酸化マンガン等が挙げられる。
【0026】
本実施形態では、具体的には、上記第1のオゾン分解セル2を用いて、オゾンの分解を触媒によって行なう。
ここで、第1のオゾン分解セル2によれば、オゾン分解触媒と電気伝導性粉末とのそれぞれの温度特性に合わせて、種々の混合粉末を製作することができるため、測定したい温度領域(室温以下の温度領域、室温付近、あるいは高温度領域)において、オゾン流量を計測することができる。
【0027】
ところで、第1混合ガスとして高濃度オゾンを使用する場合には、オゾンの自己分解による爆発のおそれがあるため、安全に取り扱うための対策が必要となる。一般に可燃性ガスについては、消炎距離、消炎直径が知られており、目の細かい網あるいは焼結体を用いることにより、防爆構造とすることができる。
【0028】
本実施形態において、第1のオゾン分解セル2の上流側にオゾン分解作用の無い石英ガラス粉末などを封入したセルを設けることにより、測定系統を防爆構造とすることができる。一般的に、オゾン−酸素系の消炎直径が知られており、オゾン濃度50%以下では石英ガラス粉末の粒径としては、0.2mm以下が良く、好ましくは0.1mm以下がよい。
【0029】
(第1計測過程)
次に、第1計測過程において、オゾンの分解熱による第2混合ガスの第1の温度上昇を計測する。具体的には、図1に示すように、第1のオゾン分解セル2において、第1混合ガス中のオゾン分解により発生した熱量を、第2混合ガスの温度上昇として第1の温度計(例えば、抵抗式温度計)5を用いて計測する。すなわち、第1のオゾン分解セル2への流入前の第1混合ガスの温度と、第1の温度計5の値との温度差を計測する。
【0030】
(加熱過程)
次に、加熱過程において、第2混合ガスを加熱する。具体的には、図1に示すように、加熱手段である第2のオゾン分解セル3によって第2混合ガスを加熱する。
【0031】
ここで、第2のオゾン分解セル3は、第1のオゾン分解セル2と同じ材料、同じ構造で構成されている。これは、第1及び第2のオゾン分解セル2,3の、熱量に対する温度上昇特性を等しくする必要があるためである。
【0032】
加熱手段は、発生する熱量が既知であれば、特に限定されるものではない。本実施形態では、第1及び第2のオゾン分解セル2,3として、オゾンを分解し、かつ電気ヒータとして利用できる焼結材料を用いているため、第2のオゾン分解セル3にヒータ電源7を設けることにより、既知の熱量を発生するヒータとして用いることができる。
【0033】
(第2計測過程)
次に、第2計測過程において、前記ヒータの加熱による第2混合ガスの第2の温度上昇を計測する。具体的には、上記加熱過程において第2のオゾン分解セル3を用いたヒータ加熱の際に、第1の温度計5と第2の温度計6とが同じ温度になるようにヒータ電力を制御する。そして、第2のオゾン分解セル3に流入する前の温度と、第2の温度計6の値との温度差を計測するとともに、当該ヒータ(第2のオゾン分解セル3及びヒータ電源7)の電力量を計測する。
【0034】
(熱量算出過程)
次に、熱量算出過程において、上記第1の温度上昇と上記第2の温度上昇とから、オゾンの分解により発生した熱量を算出する。具体的には、第2混合ガスの温度上昇に必要な熱量と、ヒータ(第2のオゾン分解セル3及びヒータ電源7)の電力量との関係から、第1混合ガス中のオゾン分解により発生した熱量を算出する。
ここで、第2のオゾン分解セル3は、第1のオゾン分解セル2と同じ材料、同じ構造で構成されているため、第1及び第2のオゾン分解セル2,3の、熱量に対する温度上昇特性は等しくなっている。
【0035】
(オゾン流量算出過程)
最後に、オゾン流量算出過程において、前記熱量から第1混合ガス中のオゾン流量を算出する。具体的には、下記式(1)を用いて、オゾン流量を求めることができる。
=3/2O+142.7(kJ/mol) ・・・(1)
【0036】
なお、図1に示すように、本実施形態の測定装置1には流量計4が設けられている。この流量計4を用いることにより、測定装置1に流通するガスの流量を一定に保つことができる。また、本実施形態のオゾン流量の測定方法では、混合ガスの流量の値そのものは把握していなくてよい。また、測定装置1においてガスの流量を一定に保つため、コントロールバルブを上流に設置し、流量計のシグナルをコントロールバルブへ伝達して流量を一定にしてもよい。
【0037】
また、本実施形態に用いる測定装置1において、第1及び第2の温度計5,6を用いてブリッジ回路を構成することにより、より高精度にオゾン流量を計測することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のオゾン流量の測定方法によれば、オゾン分解に伴う発熱により、オゾンが分解して生成した第2混合ガスの温度上昇を測定する過程(第1計測過程)と、当該第2混合ガスに既知の熱量を与えて当該第2混合ガスの温度上昇を測定する過程(第2計測過程)とを設けて、両者の温度上昇を比較することにより、オゾン分解に伴う発熱量を算出し、もってオゾン流量を算出する構成となっている。これにより、オゾンを含有する第1混合ガスの組成に依存することなく、混合ガス流における正味のオゾン流量を簡易かつ高精度にオゾン流量を測定することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、第1及び第2のオゾン分解セル2,3の材質として、オゾンを分解し、かつ電気ヒータとして利用できる焼結材料を用いることにより、測定部品からの熱分散を抑制することができるため、より高精度に温度上昇を計測することができる。
【0040】
さらに、本実施形態によれば、測定装置1において高濃度オゾンを使用する場合、安全に取り扱うための対策として、目の細かい網あるいは焼結体を用いた防爆構造を採用することにより、オゾン流量の測定を安全に行うことができる。
【0041】
更にまた、本実施形態のオゾン流量の測定方法によれば、第1混合ガス中のオゾン以外の成分が、He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn等の希ガスや、CF,CHF等に限られているため、オゾンの分解による混合ガス成分間で反応するおそれがない。したがって、オゾン流量を正確に計測することができる。
【0042】
なお、本実施形態のオゾン流量の測定方法では、オゾン分解過程及び第1計測過程において、オゾンが全て分解したときのガス組成について温度上昇をした場合を仮定しているが、オゾン分解途中の混合ガス組成による温度上昇(組成の違いによる混合ガス比熱の違い)を考慮して、オゾンの分解により発生した熱量及び第1混合ガス中のオゾン流量を算出するようにしても良い。これにより、より高精度にオゾン流量を計測することができる。
【0043】
本実施形態のオゾン流量の測定方法は、オゾン流量計として使用することができる。また、流量は大流量ではないことが好ましい。
【0044】
<第2の実施形態>
次に、本発明を適用した第2の実施形態について説明する。
本実施形態のオゾン流量の測定方法は、第1実施形態のオゾン流量の測定方法がオゾン分解過程において触媒を用いる方法によって第1混合ガス中に含まれるオゾンを全て分解(完全分解)するのに対して、熱分解による方法によりオゾンを完全分解する構成となっている。したがって、オゾン分解過程及び第1計測過程以外については、説明を省略するものとする。
【0045】
また、本実施形態のオゾン流量の測定方法は、図2に示す測定装置を用いて行う。
図2に示すように、本実施形態のオゾン流量の測定方法に適用する測定装置21は、第1のオゾン分解セル22および第2のオゾン分解セル23の構成が第1実施形態の測定装置1の構成と異なるものである。したがって、本実施形態の測定装置21については、第1の実施形態と同一の構成部分については同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0046】
本実施形態の第1のオゾン分解セル22は、窒化シリコン、炭化シリコンなどの焼結体から構成されている。また、オゾン分解セル22は、図2に示すように、ヒータ電源28が設けられて焼結セラミックヒータとして用いることができる。
第2のオゾン分解セル23は、第1実施形態と同様に、第1のオゾン分解セル22と同じ材質、同じ構造とする。
なお、上記焼結体は消炎効果があるため、第1のオゾン分解セル22の上流側にオゾン分解作用の無い石英ガラス製の焼結体セルを設けることにより、測定装置21を防爆構造とすることができる。
【0047】
(オゾン分解過程)
先ず、オゾン分解過程では、オゾンを含有する第1混合ガス中に含まれるオゾンを熱分解によって完全分解して第2混合ガスを生成する。具体的には、上記第1のオゾン分解セル22を200℃以上の温度に維持し、第1混合ガスを流通させてこの第1混合ガスに含まれるオゾンを100%分解する。
【0048】
(第1計測過程)
次に、第1計測過程において、第1のオゾン分解セル22を200℃以上の温度に維持し、第1混合ガスを流通させた際の、生成した第2混合ガスのオゾンの分解熱による温度上昇(第1の温度上昇)を計測する。具体的には、図2に示すように、第1のオゾン分解セル22において、第1混合ガス中のオゾン分解により発生した熱量を、第1の温度計25を用いて計測する。すなわち、第1のオゾン分解セル22への流入前の第1混合ガスの温度と、第1の温度計25の値との温度差を計測する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のオゾン流量の測定方法によれば、第1混合ガスに含まれるオゾンを熱分解することで、オゾン流量の測定に必要なオゾン分解による熱量を発生させることができ、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0050】
また、第1のオゾン分解セル22において、温度上昇を測定するのではなく、ヒータ電流を減少させて温度一定になるように制御し、減少した電力からオゾン流量を測定しても良い。
具体的には、オゾン分解セル22において、あらかじめ一定温度(例えば100℃)になるようにヒータ電流をフィードバック制御しておく。そこへオゾンを含む混合ガスを流通させるとオゾン分解により発生した熱量分だけヒータ電流が減少する。これを電力として換算することにより、オゾン流量を測定することができる。
【0051】
<第3の実施形態>
次に、本発明を適用した第3の実施形態について説明する。
本実施形態のオゾン流量の測定方法は、第1実施形態のオゾン流量の測定方法をより高精度に行うものである。具体的には、図1に示す測定装置1に代えて、図3(a)及び図3(b)に示す測定装置を用いてオゾン流量を測定する。したがって、オゾン流量の測定方法の各過程については、説明を省略するものとする。
【0052】
上述したように、本実施形態のオゾン流量の測定方法は、図3(a)及び図3(b)に示す測定装置を用いて行う。図3(a)及び図3(b)に示すように、本実施形態のオゾン流量の測定方法に適用する測定装置31は、ロータリーバルブ39を設けることにより、第1のオゾン分解セル2および第2のオゾン分解セル3の間の流路を切り替え可能に構成されている。したがって、本実施形態の測定装置31については、第1の実施形態と同一の構成部分については同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0053】
本実施形態の第1のオゾン分解セル2には、図3に示すように、ヒータ電源38が設けられている。これにより、第1及び第2のオゾン分解セル2,3は、それぞれ温度計5,6とヒータ電源38,7とを備えた同一の構造および同一の寸法に構成され、オゾン分解過程及び加熱過程の両方に適用可能とされている。
【0054】
しかしながら、第1及び第2のオゾン分解セル2,3は、同一の構造及び寸法とした場合であっても、個体間で僅かに特性の違いが生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、測定装置31に設けられたロータリーバルブ39を用いて当該装置内のガス流路を切り替え可能とすることで、第1及び第2のオゾン分解セル2,3の個体差による測定値のずれを補正するものである。
【0055】
具体的には、先ず、ロータリーバルブ39を図3(a)に示す向きに回転させて、ガス流路を第1のオゾン分解セル2から第2のオゾン分解セル3への方向とする。これにより、第1のオゾン分解セル2においてオゾン分解過程及び第1計測過程が行われた後、第2のオゾン分解セル3において加熱過程及び第2計測過程が行われる。
【0056】
次に、図3(b)に示すように、ロータリーバルブ39を逆時計周りに60°回転させて、ガス流路を第2のオゾン分解セル3から第1のオゾン分解セル2への方向に切り替える。これにより、第2のオゾン分解セル3においてオゾン分解過程及び第1計測過程が行われた後、第1のオゾン分解セル2において加熱過程及び第2計測過程が行われる。
【0057】
そして、図3(a)に示す方向で算出したオゾン分解による熱量と、図3(b)に示す方向で算出したオゾン分解による熱量と、を比較して第1及び第2のオゾン分解セル2,3の個体差による測定値のずれを補正する。これにより、オゾン流量をより高精度に測定することが可能となる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のオゾン流量の測定方法によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、第1の実施形態のオゾン流量の測定方法よりも高精度な測定が可能となる。
【0059】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば第1〜3の実施形態に示した方法を用いて、オゾン流量に代えてオゾン濃度を測定することができる。具体的には、オゾン濃度は、被測定ガスの組成あるいは全流量を測定することにより算定することができる。
【0060】
ここで、被測定ガスのガス組成は、例えば図1に示す測定装置1の流量計4の出口においてガスを少量サンプリングし、質量分析計等を用いて計測することができる。なお、上記質量分析による方法は、被測定ガスに酸素及びオゾンが含まれている場合には、オゾンが分解して生成した酸素と初めから含まれていた酸素とを区別することができないという問題がある。従って、上記質量分析による方法の場合には、第1混合ガスがオゾン−希ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn)あるいはオゾン−CF系等の酸素を含まない被測定ガスについて好適である。
【0061】
一方、混合ガスの全流量測定によるオゾン濃度の測定は、例えば図1に示す測定装置1の流量計4として、石鹸膜流量計あるいはタービン流量計を用いることにより実施することができる。これらの流量計は体積流量を測定するものであることから、結果としてオゾン体積濃度を算出することができる。なお、室温、大気圧近辺では、多くのガスが理想気体として扱ってもよいことを前提としている。また、石鹸膜流量計あるいはタービン流量計は校正用流量計として用いて、窒素用マスフロメーターなどの簡易的な流量計を用いることもできる。
【0062】
以上説明したように、本発明のオゾン流量の測定方法によれば、オゾンを含む混合ガス流における正味のオゾン流量を計測することができるため、当該混合ガスの全流量を計測することにより、オゾンを含む混合ガス中のオゾン濃度を測定することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,21,31・・・オゾン流量の測定装置
2・・・第1のオゾン分解セル
3・・・第2のオゾン分解セル
4・・・流量計
5,6・・・温度計
7,28・・・ヒータ電源
29・・・ロータリーバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンを含有する混合ガス中のオゾン流量を測定する方法であって、
オゾンを含有する第1混合ガス中に含まれる前記オゾンを全て分解して第2混合ガスを生成する過程と、
前記オゾンの分解熱による前記第2混合ガスの第1の温度上昇を計測する過程と、
前記第2混合ガスを加熱する過程と、
前記加熱による前記第2混合ガスの第2の温度上昇を計測する過程と、
前記第1の温度上昇と前記第2の温度上昇とから、前記オゾンの分解により発生した熱量を算出する過程と、
前記熱量から前記第1混合ガス中のオゾン流量を算出する過程と、を備えることを特徴とするオゾン流量の測定方法。
【請求項2】
前記オゾンの分解が、触媒による方法又は熱分解による方法であることを特徴とする請求項1に記載のオゾン流量の測定方法。
【請求項3】
前記触媒による方法が、0.2mm以下の間隙を有する焼結構造又は網状構造の触媒を含有する構造体を用いることを特徴とする請求項2に記載のオゾン流量の測定方法。
【請求項4】
前記第1混合ガス中の前記オゾン以外の成分が、He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn,CF,CHFの中のいずれか1以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のオゾン流量の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−27426(P2011−27426A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170218(P2009−170218)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】