説明

オゾン混合物の排出方法および排出装置

【課題】例えば酸素同位体の濃縮方法などのオゾンを含む流体を扱うプロセスにおいて、異常が生じてもオゾンの爆発下限値を超えてオゾンが濃縮しないようにし、大型の蒸発器やオゾン分解槽を設ける必要がなく、停電、断水などが起きても、保冷槽に移送したオゾンを含む流体中でのオゾンの濃縮が生じないようにする。
【解決手段】予め液化CClFが貯えられた受液槽10に液化オゾンと液化CFとの混合液体を流入させ、受液槽内で液化CClFと液化オゾンと液化CFとの混合物とし、この混合物を徐々に加熱して気化させて混合気体とし、この混合気体をオゾン分解槽13に導入し、酸素とCClFガスとCFガスとの混合気体を第1の蒸留塔14に送って、酸素を分離したのち、第1の蒸留塔からのCClFガスとCFガスとを第2の蒸留塔15に送って、CClFとCFとに分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オゾンを含む流体を扱うプロセスにおいて、プロセスの異常などに起因するオゾンの濃縮を抑えて爆発の危険性を回避するとともにオゾンの分解に要する設備費用を削減できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、酸素同位体である17Oの濃縮方法として、酸素ガスをオゾナイザーに導入してその一部をオゾンとして酸素とオゾンとの混合気体を得た後、この混合気体から酸素を分離、除去し、ついでこのオゾンに特定波長のレーザー光を照射して17を含むオゾン分子を選択的に光分解して、17を含む酸素とし、この17を他の酸素同位体を含むオゾンから分離する方法がある。
【0003】
この濃縮方法では、オゾナイザーから導出されたオゾンと酸素との混合ガスに希釈ガスとして、テトラフルオロメタン(CF)を添加し冷却した後、蒸留塔に導入し蒸留塔上部に酸素を、下部にオゾンとテトラフルオロメタンとを蒸留、分離する。この時、蒸留塔底部にはオゾンとテトラフルオロメタンとの混合液体が溜まる。
【0004】
この濃縮プロセスにおいて、何らかの異常が発生し、プロセスが停止した場合などには、蒸留塔底部の温度が上昇し、オゾンがテトラフルオロメタンよりも沸点が低いため、テトラフルオロメタンが先に気化し、前記混合液体中でオゾンが濃縮される。オゾンが濃縮されると爆発の危険性が高くなるので、プロセス停止直後に蒸留塔底部に溜まっている前記混合液体をすべて蒸発器に送り込み、気化したガスをオゾン分解槽に送って含まれているオゾンを分解した後、系外に排出するなどの方策が必要となる。
【0005】
しかし、この方法ではオゾンとテトラフルオロメタンとの混合液体を一挙に気化し、ついでオゾンに分解することになるので、蒸発器、オゾン分解槽が大型化し、設備費用が嵩む問題がある。
また、停電、断水などが発生した場合には、前記混合液体を保冷槽に自然流下させて移送し貯留する方策も考えられるが、この方法でも長期の貯留では侵入熱によってテトラフルオロメタンが気化してオゾンが濃縮する危険性がある。
【0006】
また、このようなオゾンの濃縮による危険性については、上述の酸素同位体の濃縮プロセスに限られず、オゾンを含む流体を扱うプロセスのすべてに必然的に付随するものである。
【0007】
オゾン−酸素系におけるオゾンの爆発下限値はガス状態においては14vol%、液体状態では17.6モル%であることが知られている。
オゾンを安全に取り扱うための従来技術として、例えば米国特許第3400024号公報には、オゾン−酸素混合ガスにテトラフルオロメタンなどの不活性ガスをモル比で5%添加することにより、オゾンの爆発下限濃度を14.3vol%から19vol%に引き上げられること、−180℃におけるオゾン−酸素混合液にテトラフルオロメタンを重量比で約1%混合することで前記混合液に部分分解を抑制し安定化できることが開示されている。
【0008】
米国特許第3406117号公報には、オゾン−酸素混合液にトリフルオロメタンを重量比で1〜15%程度混合することによりオゾン濃度が24〜40wt%の安定した均一なオゾン混合液となることが開示されている。
【0009】
特許第3919988号公報には、液体オゾンを製造する装置で冷凍機の温度制御が困難になった場合に、液化容器内に液化窒素を供給して冷却することにより、液体オゾンの温度上昇を防ぎ、装置の爆発を防止する方法が記載されている。
【0010】
特開2005−40668号公報には、オゾンの光化学反応において、反応に影響を及ぼさないクリプトン、キセノン、ラドンのいずれか1種以上の希ガスとオゾンを混合し、オゾンの安定性を保つ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3400024号公報
【特許文献2】米国特許第3406117号公報
【特許文献3】特許第3919988号公報
【特許文献4】特開2005−40668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明における課題は、例えば酸素同位体の濃縮方法などのオゾンを含む流体を扱うプロセスにおいて、異常が生じてもオゾンの爆発下限値を超えてオゾンが濃縮しないようにし、大型の蒸発器やオゾン分解槽を設ける必要がなく、停電、断水などが起きても、保冷槽に移送したオゾンを含む流体中でのオゾンの濃縮が生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、オゾン混合物を使用するプロセスにおいてオゾン混合物を系外に安全に排出する方法であって、
予め液化高沸点不活性ガスが貯えられた受液槽に液化オゾンと液化低沸点不活性ガスとの混合液体を流入させ、受液槽内で液化高沸点不活性ガスと液化オゾンと液化低沸点不活性ガスとの混合物とし、この混合物を徐々に加熱して気化させて混合気体とし、この混合気体をオゾン分解槽に導入してオゾンを分解して酸素とし、酸素と高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとの混合気体を第1の蒸留塔に送って、酸素を分離したのちこれを系外に排出し、第1の蒸留塔からの高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとを第2の蒸留塔に送って、高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとに分離することによりオゾン混合物を系外に排出し、
前記低沸点不活性ガスがオゾンより沸点が低い不活性ガスであり、高沸点不活性ガスがオゾンより沸点が高く、かつオゾンの沸点より融点が低い不活性ガスであることを特徴とするオゾン混合物の排出方法である。
【0014】
請求項2にかかる発明は、前記第2の蒸留塔から高沸点不活性ガスを抜き出して液化して液化高沸点不活性ガスとし、これを前記受液槽に返送することを特徴とする請求項1記載のオゾン混合物の排出方法である。
請求項3にかかる発明は、低沸点不活性ガスがテトラフルオロメタン、クリプトン、アルゴンのいずれかであり、高沸点不活性ガスがキセノン、トリフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロトリフルオロメタンのいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載のオゾン混合物の排出方法である。
【0015】
請求項4にかかる発明は、オゾン混合物を使用する装置からオゾン混合物を系外に安全に排出する装置であって、
温度調節機能を備えた受液槽と、オゾン分解槽と、第1の蒸留塔と、第2の蒸留塔を具備し、
前記受液槽は、予め液化高沸点不活性ガスが貯えられ、要時に液化オゾンと液化低沸点不活性ガスとの混合液体を受け入れ、オゾンと液化高沸点不活性ガスと液化低沸点不活性ガスとの混合液を前記温度調節機能により加熱して気化し混合気体とするものであり、
前記オゾン分解槽は、前記受液槽からの混合気体を受け入れて、混合気体中のオゾンを分解して酸素ガスとするものであり、
前記第1の蒸留塔は、オゾン分解槽からの酸素ガスと高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとを受け入れて、酸素ガスと高沸点不活性ガスおよび低沸点不活性ガスとに分離するものであり、
前記第2の蒸留塔は、第1の蒸留塔からの高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとを受け入れて、高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとに分離するものであり、
前記低沸点不活性ガスがオゾンより沸点が低い不活性ガスであり、高沸点不活性ガスがオゾンより沸点が高く、かつオゾンの沸点より融点が低い不活性ガスであることを特徴とするオゾン混合物の排出装置である。
【0016】
請求項5にかかる発明は、前記第2の蒸留塔から高沸点不活性ガスを抜き出して液化して液化高沸点不活性ガスとし、これを前記受液槽に返送する経路をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載のオゾン混合物の排出装置である。
請求項6にかかる発明は、低沸点不活性ガスがテトラフルオロメタン、クリプトン、アルゴンのいずれかであり、高沸点不活性ガスがキセノン、トリフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロトリフルオロメタンのいずれかであることを特徴とする請求項4または5記載のオゾン混合物の排出装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、受液槽内で形成された液化高沸点不活性ガスと液化オゾンと液化低沸点不活性ガスとの混合液が温度調節機能あるいは侵入熱などにより加熱されると、受液槽の気相においてはオゾンより沸点の低い低沸点不活性ガスがオゾンより優先的に気化するため、気相においてオゾンが爆発下限値を越えることがない。
一方、液相においては、オゾンが気化する条件においても、液化高沸点不活性ガスが液相に多く残るため液相中のオゾン濃度が爆発下限値を越えることがない。
【0018】
また、系外に排出するオゾン混合液を瞬時に処理するための大型の蒸発器、オゾン分解槽を設ける必要がなく、その処理を都合のよい時に長時間かけて行うことができるので、処理設備を小型化でき、安価にすることができる。
さらに、高沸点不活性ガスおよび低沸点不活性ガスをすべて回収再使用できるので、地球温暖化ガス排出量を最低レベルに抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のオゾン混合物の排出装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】具体例における結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
はじめに、本発明において用いられる低沸点不活性ガスおよび高沸点不活性ガスについて説明する。
ここでの低沸点不活性ガスとは、オゾンより沸点が低い不活性ガスであり、具体的にはテトラフルオロメタン(CF)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)のいずれか1種または2種以上の混合物である。
また、高沸点不活性ガスとは、オゾンより沸点が高く、かつオゾンの沸点より融点が低い不活性ガスであり、具体的にはキセノン(Xe)、トリフルオロメタン(CHF)、ブロモトリフルオロメタン(CBrF)、ジクロロフルオロメタン(CHClF)、クロロジフルオロメタン(CHClF)、ジクロロジフルオロメタン(CCl)、クロロトリフルオロメタン(CClF)のいずれか1種または2種以上の混合物である。
表1に、オゾンおよびこれらの不活性ガスの沸点と融点を示す。
【0021】
【表1】

【0022】
図1は、この発明の排出装置の一例を示すもので、ここでは酸素同位体17Oの濃縮の際のオゾン混合物の排出方法について説明し、図中破線にて囲った部分が本発明の対象部分である。
また、この例では、低沸点不活性ガスとしてテトラフルオロメタン(CF)を、高沸点不活性ガスとしてクロロトリフルオロメタン(CClF)を用いた形態を説明する。
高純酸素ガスが管1からオゾナイザー2に導入され、例えば無声放電によって、その一部がオゾンガスに変換される。オゾンと酸素との混合ガスには、管3からのテトラフルオロメタンが添加されたのち、熱交換器4に送られ、冷却されて蒸留塔5に送られる。蒸留塔5では、酸素ガスがその塔頂から排出され、塔底にはオゾンとテトラフルオロメタンとの混合液体が溜まる。この混合液体中のオゾン濃度は通常10容量%程度、テトラフルオロメタン濃度は90容量%程度である。
【0023】
蒸留塔5の下部からオゾンとテトラフルオロメタンとの混合ガスが抜き出され、光セル6に送られる。光セル6では特定波長のレーザ光が照射され、17Oを含むオゾンが選択的に光分解され、17Oを含む酸素ガスとなる。
光セル6から導出されたオゾンと酸素とテトラフルオロメタンとの混合ガスは、熱交換器7に送られて冷却され、蒸留塔8に導入される。
【0024】
蒸留塔8では、その塔頂から17Oを含む酸素ガスが導出され、17Oが濃縮された酸素ガスが得られ、その塔底からはオゾンとテトラフルオロメタンとの混合ガスが導出される。オゾンとテトラフルオロメタンとの混合ガスは、別途処理され、テトラフルオロメタンは回収され、再使用され、オゾンは酸素に分解されて廃棄される。
【0025】
この17O濃縮工程において、上述の緊急事態等が発生した場合には、蒸留塔5の塔底に溜まっているオゾンとテトラフルオロメタンとの混合液体を緊急開放弁9を開放してその全量を受液槽10に流下させる。
受液槽10には、温度150K程度に保った液化クロロトリフルオロメタンガスが予め貯留されている。受液槽10に流下したオゾンとテトラフルオロメタンとの混合液化ガスは液化クロロトリフルオロメタンガスと混合し、三成分の混合液となって貯留される。
この三成分の混合液中のオゾン濃度は通常5容量%程度、テトラフルオロメタン濃度は45容量%程度、クロロトリフルオロメタン濃度は、50容量%程度とされる。
【0026】
受液槽10には、温度調節部が備えられていて、これを動作させて受液槽10内の混合液を徐々に加温する。これにより三成分のうち、最も低沸点のテトラフルオロメタンが優先的に気化するが、液相中にはオゾンとクロロトリフルオロメタンとが残存し、オゾンが濃縮してその爆発下限値を超えることがない。
ついで、オゾンが気化し、さらにクロロトリフルオロメタンが気化するが、気相においてもオゾン以外にテトラフルオロメタンとクロロトリフルオロメタンが存在するので、やはり爆発下限値を超えることはない。
【0027】
受液槽10から気化した三成分のガスは、熱交換器12に送られ、さらにオゾン分解槽13に送られる。オゾン分解槽13には、酸化マンガン、金属銅などのオゾン分解触媒が備えられ、ここで気化ガス中のオゾンが酸素に分解される。オゾン分解槽13からのガスは、第1の蒸留塔14に送られ、酸素が塔頂から排出され、塔底にはテトラフルオロメタンとクロロトリフルオロメタンの混合液化ガスが濃縮され、この混合液化ガスは第2の蒸留塔15に送られて、その塔底にクロロトリフルオロメタンが、塔頂にはテトラフルオロメタンが分離され、クロロトリフルオロメタンは熱交換器17に送られて液化され、受液槽10に戻されて再使用され、テトラフルオロメタンは管3に送られて再利用されるようになっている。
【0028】
なお、受液槽10から気化したガスが排出される末期には、受液槽10内のオゾンガス濃度が低下し、第1の蒸留塔14の運転ができなくなる場合があり、この場合にはその運転を安定させるため、受液槽10に窒素ガスを管16から導入することが好ましい。この窒素は第1の蒸留塔14の塔頂部に分離されて排出される。
【0029】
緊急事態が停電を伴うものである場合であって、緊急時用発電装置が装備されていなかったり、これが動作しなかったりした場合には、受液槽10の温度調節部、各蒸留塔などの動作が停止する。
この場合には、侵入熱によって、受液槽10内の混合液の温度を140K以下に保つことができなる事態が生じ、液化ガスの蒸発量が増加する。
しかし、テトラフルオロメタンとオゾンとの混合ガスが優先的に気化するので、液相および気相においてオゾンが濃縮してその爆発下限値を越えることはない。
気化したガスはオゾン分解槽13を経て大気放出される。
【0030】
以下、具体例を示す。
図1に示す装置において、受液槽10として、容量約300リットルで内部にクロロトリフルオロメタン約100リットルを140Kに保って貯留したものを用いた。
緊急時を想定して、蒸留塔5の塔底に溜まっているオゾンとテトラフルオロメタンとの混合液体約100リットルを緊急開放弁9を開放して受液槽10に流下させた。この混合液体中のオゾン濃度は10容量%、テトラフルオロメタン濃度は90容量%であった。
【0031】
受液槽10の温度調節部を動作させ、槽内の温度を上昇させ、槽内で気化したガスを熱交換器12に送り、温度調節後、オゾン分解槽13に送り、混合ガス中のオゾンを分解した。オゾン分解槽13には酸化マンガンを担持したオゾン分解触媒を充填したものを使用した。
オゾン分解槽13からのガスを第1の蒸留塔14に送り、酸素ガスとテトラフルオロメタンおよびクロロトリフルオロメタンの混合液体とに分離し、このテトラフルオロメタンとクロロトリフルオロメタンの混合液体をさらに第2の蒸留塔15にて、テトラフルオロメタンとクロロトリフルオロメタンとに分離し、それぞれを再利用するために別途貯留槽に送った。
【0032】
処理の後期には、分離回収したクロロトリフルオロメタンを受液槽10に戻しながら、処理を行い、当初の液相中のオゾン濃度約5容量%から順次低下し、気相のオゾン濃度が希薄になり第1の蒸留塔14の運転に支障が出ないように、受液槽10に窒素ガスをオゾン濃度低下分に相当する量を管16から加えることで、テトラフルオロメタンおよびクロロトリフルオロメタンの回収を終了した。
【0033】
第1の蒸留塔14には約3Nm/時間の流量でガスを送り、約1日で受液槽10に流下させた混合液の処理を終了した。
この処理に際して、受液槽10中の液相のオゾン濃度を連続的に測定した結果を図2に示す。
図2に示すように、受液槽10中のオゾン濃度は、初期状態でクロロトリフルオロメタンにより希釈されるうえに、テトラフルオロメタンの蒸発によるオゾン濃縮もわずかである。
【0034】
図2には、従来方法である蒸留塔5の塔底に溜まった液体をそのまま排出した場合の液相中のオゾン濃度の推定結果を併せて示した。この結果から、オゾン−テトラフルオロメタン混合ガスの爆発下限に突入していることがわかり、クロロトリフルオロメタンを使用した効果が明らかである。
【0035】
このように、受液槽10に侵入熱などがあってもオゾンが濃縮することは本質的になく、オゾン分解槽13などの起動も都合のよいときに行える。受液槽10に三成分の混合液を保管中に電力の供給がなくなって、受液槽10の温度を140K以下に保てなくなって、液化ガスの蒸発量が多くなったとしても、オゾンとテトラフルオロメタンとの混合ガスが優先的に気化するので、気化ガスをオゾン分解槽13を通過させた後、大気放出することで、受液槽10内に液体のオゾンが濃縮することがない。
【0036】
また、従来方法では、系外に排出するオゾン混合液を瞬時に処理するための大型の蒸発器、オゾン分解槽を設ける必要があったのに対し、本発明では、その処理を都合のよい時に長時間かけて行うことができるので、処理設備を小型化でき、安価にすることができる。
さらに、高沸点不活性ガスおよび低沸点不活性ガスをすべて回収再使用できるので、地球温暖化ガス排出量を最低レベルに抑えることができる。
【符号の説明】
【0037】
10・・受液槽、13・・オゾン分解槽、14・・第1の蒸留塔、15・・第2の蒸留塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン混合物を使用するプロセスにおいてオゾン混合物を系外に安全に排出する方法であって、
予め液化高沸点不活性ガスが貯えられた受液槽に液化オゾンと液化低沸点不活性ガスとの混合液体を流入させ、受液槽内で液化高沸点不活性ガスと液化オゾンと液化低沸点不活性ガスとの混合物とし、この混合物を徐々に加熱して気化させて混合気体とし、この混合気体をオゾン分解槽に導入してオゾンを分解して酸素とし、酸素と高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとの混合気体を第1の蒸留塔に送って、酸素を分離したのちこれを系外に排出し、第1の蒸留塔からの高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとを第2の蒸留塔に送って、高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとに分離することによりオゾン混合物を系外に排出し、
前記低沸点不活性ガスがオゾンより沸点が低い不活性ガスであり、高沸点不活性ガスがオゾンより沸点が高く、かつオゾンの沸点より融点が低い不活性ガスであることを特徴とするオゾン混合物の排出方法。
【請求項2】
前記第2の蒸留塔から高沸点不活性ガスを抜き出して液化して液化高沸点不活性ガスとし、これを前記受液槽に返送することを特徴とする請求項1記載のオゾン混合物の排出方法。
【請求項3】
低沸点不活性ガスがテトラフルオロメタン、クリプトン、アルゴンのいずれかであり、高沸点不活性ガスがキセノン、トリフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロトリフルオロメタンのいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載のオゾン混合物の排出方法。
【請求項4】
オゾン混合物を使用する装置からオゾン混合物を系外に安全に排出する装置であって、 温度調節機能を備えた受液槽と、オゾン分解槽と、第1の蒸留塔と、第2の蒸留塔を具備し、
前記受液槽は、予め液化高沸点不活性ガスが貯えられ、要時に液化オゾンと液化低沸点不活性ガスとの混合液体を受け入れ、オゾンと液化高沸点不活性ガスと液化低沸点不活性ガスとの混合液を前記温度調節機能により加熱して気化し混合気体とするものであり、
前記オゾン分解槽は、前記受液槽からの混合気体を受け入れて、混合気体中のオゾンを分解して酸素ガスとするものであり、
前記第1の蒸留塔は、オゾン分解槽からの酸素ガスと高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとを受け入れて、酸素ガスと高沸点不活性ガスおよび低沸点不活性ガスとに分離するものであり、
前記第2の蒸留塔は、第1の蒸留塔からの高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとを受け入れて、高沸点不活性ガスと低沸点不活性ガスとに分離するものであり、
前記低沸点不活性ガスがオゾンより沸点が低い不活性ガスであり、高沸点不活性ガスがオゾンより沸点が高く、かつオゾンの沸点より融点が低い不活性ガスであることを特徴とするオゾン混合物の排出装置。
【請求項5】
前記第2の蒸留塔から高沸点不活性ガスを抜き出して液化して液化高沸点不活性ガスとし、これを前記受液槽に返送する経路をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載のオゾン混合物の排出装置。
【請求項6】
低沸点不活性ガスがテトラフルオロメタン、クリプトン、アルゴンのいずれかであり、高沸点不活性ガスがキセノン、トリフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロトリフルオロメタンのいずれかであることを特徴とする請求項4または5記載のオゾン混合物の排出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−194495(P2010−194495A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44727(P2009−44727)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】