説明

オゾン発生装置およびオゾン発生装置の製造方法

【課題】放電ギャップを均一に保つことができ、オゾン発生効率のよいオゾン発生装置を提供する。
【解決手段】接地電極管と、この接地電極管の一方の端部を保持する酸素側管板と、接地電極管の他方の端部を保持するオゾン側管板と、接地電極管の周囲に冷却水を流通させる水室を形成するための水室胴体と、酸素を含む原料ガスを供給するための酸素ヘッダと、生成されたオゾンガスを集合させるオゾンヘッダとを備えたオゾン発生装置において、水室胴体の両側にフランジを形成し、このフランジのうち一方のフランジと酸素側管板とをボルト締結し、他方のフランジとオゾン側管板とをボルト締結するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水処理等に利用するオゾンを発生させるためのオゾン発生装置に関するものであり、特に、放電によってオゾンを発生させるオゾン発生装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放電によってオゾンを発生させるオゾン発生装置の構造には種々あるが、水処理等に利用するオゾン発生装置は、一般に大容量であり、例えばmオーダーの大直径の円筒の容器である缶体の中に、cmオーダーの小直径の円筒の放電管を、多数配置した構成のものが用いられる場合が多い。一つの容器に配置される放電管の本数は通常100本以上で、1000本程度と非常に多数のものもある。放電管としては、例えば、金属製の接地電極管の中に、内面に金属膜が形成されたガラス管を高電圧電極管として挿入し、接地電極管の内面と高電圧電極管の外面との間に放電させるための放電ギャップを形成した構成のものが用いられる。この放電ギャップに酸素を含むガスを流して、高電圧電極管と接地電極管との間に交流高電圧を印加して放電を発生させて酸素を含むガスをオゾン化する。
【0003】
放電によってオゾンを発生させるオゾン発生装置は、投入させた電力のうち、オゾン発生に用いられる電力は約10%にすぎず、残りの約90%は熱となる。オゾン発生が行われる
放電ギャップ内、すなわち放電場は、温度が高くなるほどオゾンの発生効率が低下するため、冷却することが必要である。冷却方法としては、接地電極管外側を水冷により冷却するのが一般的な方法であった。接地電極管の外側に冷却水を流通させるためには、水室を形成する胴体(水室胴体)と接地電極管を固定する管板との間、あるいは接地電極管と管板との間は水漏れを避ける(シールする)必要があり、これらの部材は一般には金属が使用されるため、最も信頼性の高いシール方法として溶接が使われることが多かった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008-518877号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のオゾン発生装置は以上のように構成されているので、水室胴体と管板を溶接するときの溶接歪によって、管板が湾曲してしまうことが多かった。また溶接を実施する人の技量により管板の湾曲度合いが異なるという問題があった。一方、接地電極管は酸素側管板とオゾン側管板との間に設置され、両端が保持されているため、管板が湾曲すると、その影響を受けて接地電極管も1〜数mmオーダーで曲がってしまう問題があった。近年のオゾン発生装置は、高効率高濃度化のため、放電ギャップの寸法が0.4mm以下と非常に
短ギャップになっているため、接地電極管のわずかな曲がりがあっても、ギャップが不均一となり、オゾン発生効率の低下や、さらには高電圧電極管が挿入できなくなるなどの問題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、組立精度が高く、オゾン発生効率の良いオゾン発生装置を提供することを目的とする。またオゾン発生装置の缶体を組立てる溶接作業者の技量によらず高精度のオゾン発生装置を製作することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、接地電極管と、この接地電極管の一方の端部を保持する酸素側管板と、接地電極管の他方の端部を保持するオゾン側管板と、接地電極管の周囲に冷却水を流通させる水室を形成するための水室胴体と、酸素ガスを供給するための酸素ヘッダと、生成されたオゾンガスを集約させるオゾンヘッダとを備えたオゾン発生装置において、水室胴体の両側にフランジを形成し、このフランジのうち一方のフランジと酸素側管板とをボルト締結し、フランジのうち他方のフランジとオゾン側管板とをボルト締結したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかるオゾン発生装置は、以上のように構成されているため、装置の本体容器である缶体の組み立てによる管板の歪みが少ないことに加え、組み立て工程のばらつきも少なくなって、放電ギャップの均一性が高くなり、その結果オゾン発生効率の良いオゾン発生装置が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の缶体の構造を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の製造方法を説明するフロー図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の動作を説明するための概略構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2によるオゾン発生装置の缶体の構造を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2によるオゾン発生装置の構造のうち図4のDの部分を示す部分拡大断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるオゾン発生装置の製造方法を説明するフロー図である。
【図7】この発明の実施の形態3によるオゾン発生装置の酸素ヘッダの取り付け構造を説明する図である。
【図8】この発明によるオゾン発生装置の動作特性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の本体容器となる缶体の構造を示す断面図である。以下、この発明の実施の形態1を図1に基づいて説明する。図1において、1は接地電極管であり、酸素側管板2とオゾン側管板3とに固定されている。接地電極管1は、例えば内径約20mmのステンレスの管で形成されており、ステンレスからなる酸素側管板2との間は溶接により固定され、ステンレスからなるオゾン側管板3との間は拡管により固定されている。4は内部に冷却水を流通させるためのステンレス製の水室胴体であり、水室胴体筒4aの両端に胴体フランジ4bおよび4cが溶接されている。水室胴体4は、冷却水を導入する冷却水入口41、および冷却水を排出する冷却水出口42を備えている。また、水室胴体4の形状は円筒が好ましい。胴体フランジ4bおよび4cは円周上にボルト貫通用の穴が開けられている。また、酸素側管板2およびオゾン側管板3の外径寸法は、胴体フランジ4bおよび4cの外形寸法とほぼ同一であり、また、胴体フランジ4bおよび4cの円周上のボルト貫通用の穴4d、4eに対峙した位置に、ボルト貫通用の穴2a、3aが開けられている。さらに、酸素側管板2およびオゾン側管板3には、それぞれOリング用の溝が形成されており、Oリング2b、3bを介して、それぞれ胴体フランジ4bおよび4cとの間がシールされている。
【0011】
5は、酸素を含む原料ガスを供給するための酸素ヘッダであり、原料ガスを容器内に導
入するための原料ガス入口51を備えた酸素ヘッダ筒5aに、フタ側フランジ5bおよび管板側フランジ5cが溶接された構造となっている。酸素ヘッダ5の形状は円筒が好ましい。また、同様に6はオゾンガスを集合させるオゾンヘッダであり、発生したオゾンを取り出すためのオゾン化ガス出口61を備えたオゾンオゾンヘッダ筒6aに、フタ側フランジ6bおよび管板側フランジ6cが溶接された構造となっている。ここで、酸素ヘッダ5の管板側フランジ5cおよびフタ側フランジ5bは、酸素ヘッダ5の内部に位置するよう、内フランジとなっている。酸素ヘッダの管板側フランジ5cには、Oリング溝が形成されOリング5dにより、酸素側管板2との間がシールされている。また、胴体フランジ4bの円周上のボルト貫通用の穴に対峙した位置に止まりのネジ穴5eが形成されている。ネジ穴を止まりとしているのは、ボルト穴から原料ガスが漏れないようにするためである。一方、オゾンヘッダ6の管板側フランジ6cにもOリング溝が形成されるとともに、胴体フランジ4cの円周上のボルト貫通用の穴に対峙した位置にはボルト貫通用の穴6eが形成されており、Oリング6dにより、オゾン側管板3との間がシールされている。
【0012】
7は、酸素ヘッダ5のフタであり、酸素ヘッダ5のフタ側フランジ5bに原料ガスが漏れないよう形成された止まりのネジ穴により、ボルトで締結されている。8はオゾンヘッダ6のフタであり、オゾンヘッダ6のフタ側フランジ6bにボルトで締結されている。この様に、缶体全体は、水室胴体4、酸素ヘッダ5、酸素ヘッダ5のフタ7、オゾンヘッダ6、オゾンヘッダ6のフタ8、および接地電極管1が取り付けられた酸素側管板2とオゾン側管板3で構成される。
【0013】
次に、この缶体の組立方法について説明する。まず水室胴体4を作製する。水室胴体筒4aの両端に胴体フランジ4bおよび4cを溶接したのち、胴体フランジ4bおよび4cの、それぞれ管板に当たる面に対して平面精度を出すための機械加工を行なう。このとき、5面加工機等により胴体フランジ4bおよび4cの平行度、平面度および水室胴体筒4aの軸に対する直角度を指定する。また、ボルト貫通用の穴加工も行なう。このようにすることにより、溶接時に胴体フランジ4bおよび4cに溶接歪による変形が生じても、その後の機械加工により所望の精度が得られることになる。同様に酸素ヘッダ5およびオゾンヘッダ6についても、ヘッダ筒5aおよび6aにそれぞれ管板側フランジ5cおよび6cを溶接したのち、管板に当たる面の平面加工、Oリング溝加工及び穴あけ加工を行なう。また、酸素側管板2およびオゾン側管板3も、単体で機械加工を行なう。単体で機械加工を行なうため、加工精度が期待できる。
【0014】
缶体の主要部の組み立て工程を図2に示す。まず、オゾン側管板3に接地電極管1を挿入する(ST1)。次に、オゾン側管板3に接地電極管1が挿入された状態で、水室胴体4をオゾン側管板3に、例えば位置決めピンを用いて位置を合わせて、オゾンヘッダ6も合わせてボルト締結し、水室胴体4、オゾン側管板3およびオゾンヘッダ6を結合する(ST2)。次に、酸素側管板2を接地電極管1が挿入されるように、また水室胴体4と、例えば位置決めピンを用いて位置を合わせ(ST3)、酸素側管板2と水室胴体4とをボルトで結合する(ST4)。なお、ここでは、接地電極管1を最初にオゾン側管板3に挿入してから組立てる例を示したが、最初にオゾン管板3に接地電極管1を挿入することなく、酸素側管板2と水室胴体4とをボルトで結合した(ST4)あとで、接地電極管1を酸素側管板2またはオゾン側管板3の外側から挿入するようにしても良い。
【0015】
このように、部品単体として十分な加工精度を確保した水室胴体4、オゾン側管板3およびオゾンヘッダ6をボルト締結により組立てるだけなので、管板に変形等が生じることが無い。従来のオゾン発生装置では水室胴体と管板あるいは管板とヘッダとの間は溶接されるため、この溶接時に溶接歪により管板が変形する問題があったが、本発明によれば、そのような問題が発生しない。同様に水室胴体4と酸素側管板2もボルト締結により組立てるだけなので、管板に変形等が生じることが無い。また、組立時には、図示しない位置
決めピン等により位置決めすることにより、ボルト貫通穴にはかなりのクリアランス(ガタ)があったとしても、所望の精度で組立が可能となる。
【0016】
以上のように、酸素側管板2およびオゾン側管板3が、それぞれ変形無く平面度を確保した上で、両者の平行度も設計精度以内の状態で組立てることができる。この状態において、接地電極管1とオゾン側管板3との間の拡管を行って溶接により、接地電極管1とオゾン側管板3とを結合する(ST5)。拡管は、一般的なシェルアンドチューブ型熱交換器の加工方法として通常用いられる方法であり、チューブ(本実施の形態においては接地電極管1)が1mm程度伸びる傾向があるが、接地電極管1は、反対側の酸素側管板2には挿入されているだけで、フリーの状態(自由に伸びることが可能)であるので、接地電極管1が曲がる心配は無い。ただし、接地電極管1とオゾン側管板3は溶接により結合しても良い。次に、接地電極管1と酸素側管板2とを溶接により接合する(ST6)。この溶接は、口元のみの溶接であり、入熱量が非常に小さいため、溶接歪もほとんど無く、接地電極管1が曲がる心配が無い。
以上により、接地電極管1が取り付けられた缶体の主要部が出来上がる。
【0017】
ここで、オゾン発生装置の動作原理と絶縁について図3を用いて説明する。図1は、オゾン発生装置の容器である缶体を示す図であったが、図3は、オゾン発生装置として動作させるための高電圧電極管や交流高電圧電源を加えて示している。図3において図1と同一符号は、同一部分を示す。図3において、接地電極管1の内部には、同軸状に高電圧電極管10が挿入される。高電圧電極管10は、ここでは外径約20mmのガラス管の内面に、溶射、蒸着、メッキ、塗布等の方法により金属膜が形成されたものを用いる。ここで、接地電極管1の内径より高電圧電極管10の外径の方が約0.6mm小さく、また、高電圧電極
管10の外側には図示しないスペーサが設けられており、接地電極管1内面と高電圧電極管10外面との間に約0.3mmの放電ギャップ11を形成している。高電圧電極管10のオ
ゾンヘッダ6側は閉塞されており、酸素ヘッダ5から供給される原料ガスは、放電ギャップ11を通ってオゾンヘッダ6へ流れ込む。
【0018】
9は交流高電圧電源であり、給電ライン90を通じて給電部材92により高電圧電極管10の金属膜へ、例えば数kVの交流高電圧を供給している。一方、水室胴体4と酸素側管板2およびオゾン側管板3とはそれぞれ溶接あるいは拡管により、電気的に導通されている。この水室胴体4は接地されており、従って、接地電極管1および酸素側管板2およびオゾン側管板3ともに接地電位となっている。同様に酸素ヘッダ5およびオゾンヘッダ6も酸素側管板2およびオゾン側管板3と電気的に導通されており、接地電位となっている。91は絶縁碍子であり、酸素ヘッダ5が接地電位であることより、高電圧の給電ライン90を酸素ヘッダ5から絶縁するため設けられている。高電圧電極管10の金属膜と接地電極管1との間にガラス、すなわち誘電体が存在するため、印加された交流高電圧により、放電ギャップ11内にいわゆる無声放電が発生して、放電ギャップ11を流れる酸素を含むガスの酸素がオゾン化する。このように、内面に金属膜を形成したガラス管を高電圧電極管10とすることで、ガラス管が、構造体と、無声放電のための誘電体層とを兼ねることになる。誘電体にはガラスのほかセラミックス等も可能であるが、一般にガラスの方が安価である。
【0019】
次に動作について説明する。原料ガスである酸素を原料ガス入口51から供給する。酸素はここでは、図示しない液体酸素タンク、蒸発器、減圧弁等から構成される液体酸素設備から供給されている。酸素原料から放電によってオゾンを生成する際には、微量の窒素も必要なことが一般に知られているため、微量(酸素の1%以内の流量)の窒素も供給する必要がある。一方、PSA(圧力スイング吸着)装置等の酸素製造装置を利用して酸素を作
製してもよい。酸素製造装置により酸素を作製する場合は、一般に微量の窒素を含んだ状態で酸素が作製されるため、別途窒素供給を行う必要はない。原料ガス入口51から供給
された原料ガスである酸素は、放電ギャップ11を通過して、オゾン化ガス出口61からオゾン発生装置外へ排出され、図示しない配管等を経由して、必要な場所へ供給されて利用される。
【0020】
ここで、交流高電圧電源9により、交流高電圧が供給されると、高電圧電極管10と接地電極管1との間に高電圧が印加された状態となり、放電ギャップ11において無声放電が発生し、供給された酸素の一部がオゾンとなり、オゾンを含むガスがオゾン化ガス出口61から排出される。ここで、冷却水入口41より冷却水を供給し、冷却水出口42より排出することにより水室胴体4内に冷却水を流して、放電ギャップ11において放電によって発生する熱を、接地電極管1を通して排熱し、冷却することができる。しかし、放電ギャップ11内においても、接地電極管1に近い側は冷却され易いものの、高電圧電極管10に近い側は冷却され難い傾向にある。また、この例のように、高電圧電極管10を誘電体で構成する場合には、誘電損失により発熱が生じ、誘電体自身で温度上昇する。また、高電圧電極管10に形成された金属膜が有する抵抗によって、金属膜でもわずかながら発熱が生じる。これらにより、放電ギャップ11の中でも高電圧電極管10に近い側は接地電極管1に近い側よりも高温になりやすい。
【0021】
一般に、オゾン発生において、温度が高いほどオゾン発生効率が下がることは広く知られている。上述のように、オゾンの発生は0.3mmあるいはそれ以下の極狭い放電ギャッ
プを通して行なわれる。この極狭い放電ギャップが不均一であると、ギャップが広いところは、冷却が不十分でギャップ空間の温度が高めになりオゾン発生効率が低下するのに加えて、酸素ガスが多く流れるためオゾン濃度が上がらない。従って、ギャップのバラツキが大きいほど平均的なオゾン発生効率も低下する。つまり、周方向においても、流れ方向においてもギャップは均一であることが好ましい。このような観点に立ったとき、本実施の形態1によれば、接地電極管1が曲がる心配が無く、真直ぐな状態で保たれるため、均一なギャップが形成しやすくなり、結果的にオゾン発生効率の高いオゾン発生装置が得られる効果がある。
【0022】
次に絶縁距離について説明する。前述の通り、高電圧電極管10には、例えば数kVの
交流高電圧が印加され、酸素側管板2および酸素ヘッダ5は接地電位である。一方、高電圧電極管10の内面にはほぼ端部まで高電圧が印加された場合高電圧となる金属膜が形成されている。このため、図3に示す、高電圧電極管10と酸素ヘッダ筒5a壁までの距離Aについて、絶縁距離として数cm程度は必要となる。また、高電圧電極管10の端部から酸素側管板までの距離Bについては、沿面放電などの放電を生じさせないため、数cm以上の絶縁距離が必要である。ここで接地電極管1が多数配置されている場合を考えたとき、最外周に配置される接地電極管1と水室胴体4との間に大きな隙間があると、冷却水がすり抜けてしまい冷却効果が低下する。従って、図3においてCで示す最外周の接地電極管1と水室胴体4との間隔は、接地電極管1同士の間隔、例えば1cm程度と同等にして
おく必要がある。なお、図3においては、図の複雑化を避けるため、接地電極管1は間引いて図示しているが、実際には上述のように、接地電極管1同士の間隔が例えば1cmとな
るように狭い間隔の同一ピッチで密に配置されている。
【0023】
このとき図3のAの絶縁距離を確保するため、水室胴体4の内径よりも酸素ヘッダ筒5aの内径の方が大きい構造としている。酸素ヘッダの管板側フランジ5cは、オゾン側の
ような外フランジでもよいが、図1や図3で示すように酸素ヘッダ5の管板側フランジ5cを内フランジとするのが好ましい。このように、酸素ヘッダ5の管板側フランジ5cを内フランジとすることにより、オゾンヘッダ6のような外フランジとするよりも、酸素ヘッダ5の管板側フランジ5cの直径を小さく出来、装置全体の小型・軽量化が可能となる。
【0024】
なお、本実施の形態においては、例えば酸素ヘッダ側において、Oリング溝は、酸素側管板2および酸素ヘッダの管板側フランジ5cに設けた例を示したが、これに限らず、Oリング溝を、例えば、胴体フランジ4dの酸素側管板2側および酸素側管板2の酸素ヘッダ側に設けても良い。こうすると、例えば、オゾン側を下、酸素側を上にして立てた状態で組立てる場合は、Oリング溝が上に開放された向きとなるため、Oリングを置くだけで、Oリングが落ちないように押える必要が無いため、組立てやすい。
【0025】
実施の形態2.
図4は本発明の実施の形態2によるオゾン発生装置の容器となる缶体の構造を示す断面図である。また、図5は実施の形態2によるオゾン発生装置の要部である、図4の破線の円形Dで示した範囲の拡大断面図である。図4および図5において、図1と同一符号は同一または相当する部分を示す。以下、この発明の実施の形態2を図4および図5に基づいて説明する。図5の拡大断面図で示すように、酸素側管板2には、接地電極管1を通す穴の周囲にOリング溝21が形成されている。また、22は直径約25mmのOリングであり、接地電極管1と酸素管板2との間をシールしている。また、23は、複数の接地電極管1の各々に装着されたOリング22を共通に押えるためのOリング押え板であり、図示しない複数のボルトにより、酸素側管板2へ固定されている。こうすることで、Oリングがはずれることもなく、冷却水あるいは酸素ガスの圧力にも十分耐えられる構造となっている。また、他の構成要素は図1と同一であるため、説明を省略する。
【0026】
本実施の形態2のオゾン発生装置は以上のように構成されているため、酸素側管板2から接地電極管1へかかる力が、実施の形態1の構成に比較してさらに低減される。従って、より接地電極管1の曲がる可能性が低減でき、オゾン発生効率のさらに高いオゾン発生装置を得る効果がある。また、酸素ヘッダ5の管板側フランジ5cの内フランジの効果等は実施の形態1と同様である。さらに、酸素側管板2の平面度が非常に高いため、多数配置されている接地電極管1のOリング22を押えるためにOリング押え板23は分割する必要が無く、1枚構成でも十分機能する。1枚で、多数の接地電極管1の全てのOリング22を押えるような構成としたことにより、製作および組立が容易となる。
【0027】
図4の構造の缶体の主要部の組み立て工程を、図6に示す。図6において、ST1〜ST5の工程は、図2のST1〜ST5の工程と同じである。本実施の形態2においては、接地電極管1とオゾン側管板3とを拡管または溶接により結合(ST5)した後、接地電極管1の酸素側管板2側の端部よりOリング22を挿入し、Oリング押え板23により酸素側管板2に形成されたOリング溝21にOリングを押えて、酸素側管板2と接地電極管1との間をシールする(ST7)。以上により、接地電極管1が取り付けられた缶体の主要部が出来上がる。
【0028】
実施の形態3.
図7は本発明の実施の形態3によるオゾン発生装置の酸素ヘッダの取り付け構造を示す図である。図7は、酸素ヘッダの管板側フランジ5cをオゾン側管板3の側から見た図であり、わかりやすいように各ノズル(ガスや冷却水の出入口など)やオゾン側の各種フランジ部材は省略している。図7において、52は管板締結ボルト、53はヘッダ締結ボルトであり、それぞれ円周上に交互に配置されている。管板締結ボルト52の位置では、酸素ヘッダの管板側フランジ5cには何も加工が施されておらず、酸素側管板2にネジが切られている。従って、管板締結ボルト52は酸素管板2と水室胴体フランジ4bとを締結し、酸素ヘッダの管板側フランジ5cは締結していない。一方、ヘッダ締結ボルト53の位置では、酸素管板2にはボルト径より若干大きい貫通穴が開けられており、酸素ヘッダの管板側フランジ5cにはネジが切られている。従って、ヘッダ締結ボルト53は、酸素側管板2を介して酸素ヘッダの管板側フランジ5cと水室胴体フランジ4bとを締結している。
【0029】
このような構成とすることにより、管板締結ボルト52により水室胴体4に酸素側管板2を締結した状態、すなわち酸素ヘッダ5を含まずに酸素側管板2、水室胴体4、オゾン側管板3およびオゾンヘッダ6の構造体を形成することが出来る。前述の通り、この状態で両管板が精度良く組立てられており、接地電極管1が取り付けられる。このとき、酸素側管板2と接地電極管1との間は、溶接(実施の形態1)あるいはOリング(実施の形態2)あるいはその他の方法で取り付けられるが、酸素ヘッダ5が無いため作業が大変やりやすいという効果がある。一方オゾン側も作業はあるが、オゾンヘッダの長さが短く、邪魔にならないためオゾンヘッダ6が付いていても特に問題はない。
【0030】
なお、本実施の形態のような構成にせず、全てのボルトを上記ヘッダ締結ボルトと同じ構成にして、酸素ヘッダ5と酸素側管板2を水室胴体4の胴体フランジ4bに全てヘッダ締結ボルトで同時に取り付ける構造の場合は、酸素ヘッダ5が固定されたままで、溶接あるいはOリング挿入あるいはその他の作業を行なうことになるので、作業性に問題がある。この構造であって、酸素ヘッダ5を溶接あるいはOリング挿入の後から取り付けようとすると、一旦酸素側管板2と水室胴体の胴体フランジ4bとの締結を外さないといけない。そのとき、せっかく精度良く組立てた酸素側管板2を一旦緩めることになり、位置ずれが発生する可能性があるとともに、作業が増えることになる。
【0031】
よって、本実施の形態3に示すような構造とすることにより、精度良く組立てた酸素側管板2を水室胴体フランジ4bからはずすことなく、あとから酸素ヘッダ5のみを取り付けることが可能となり、大変作業性の良いオゾン発生装置が得られる効果がある。
【0032】
なお、本実施の形態においては、管板締結ボルト52およびヘッダ締結ボルト53は、それぞれ円周上に交互に配置され、個数が1:1となる例を示したが、必ずしも1:1の個数でなくても良い。例えば、管板締結ボルト52は、組立途中の強度や位置精度が確保できる範囲で個数を減らしても良い。
【0033】
実施の形態4.
本実施の形態4では、この発明によるオゾン発生装置の効果について説明する。図8は、放電ギャップの寸法が異なる場合のオゾン発生装置の性能を示したものである。縦軸は、それぞれの放電ギャップの寸法におけるオゾン発生量の最大値を100%で示し、この最大値に対し、オゾン発生量がどの程度ばらつくかにより、オゾン発生装置の性能を表すものである。この最大値は、放電ギャップ長が放電管全体にわたって均一である場合に得られるオゾン発生量に相当する。
【0034】
既に述べたように製作時の歪みにより接地電極管が曲がるため、放電ギャップ長を完全に均一にすることは出来ない。特に放電ギャップの寸法が0.4mm以下となると製作時のばらつきで放電ギャップ長のばらつきが大きくなり、オゾン発生装置の性能ばらつきの程度が大きくなる。図8の実線は本発明の構成によるオゾン発生装置の性能ばらつきを、破線は従来の構成によるオゾン発生装置の性能ばらつきを示す。これからわかるように、従来構成の場合は放電ギャップの寸法が0.3mm以下になると性能ばらつきが大きくなり、装置全体としてのオゾン発生効率が低下するが、本発明の構成では0.2mmギャップにおいても性能ばらつきを小さく抑える事が出来、装置全体としてのオゾン発生効率を向上できる。よって、本発明の構成を取ることにより、特に、すなわち放電ギャップの寸法が0.3mm以下で、オゾン発生効率の高い安定した製品を供給できる効果が大きい。
【0035】
ここで、放電ギャップの寸法とは、設計上の寸法であり、接地電極管の内径と高電圧電極管の外径の差から求まる寸法である。すなわち、接地電極管の内直径と高電圧電極管の外直径の差の2分の1が、放電ギャップの寸法に相当する。
【0036】
なお、上記実施の形態1ないし4においては、原料ガスとして酸素を用いる場合で説明したが、原料ガスは空気の場合でも良く、オゾン発生効率の向上という同様の効果を有する。
【符号の説明】
【0037】
1:接地電極管 2:酸素側管板
3:オゾン側管板 4:水室胴体
4a:水室胴体筒 4b、4c:胴体フランジ
5:酸素ヘッダ 5a:酸素ヘッダ筒
5b:フタ側フランジ 5c:管板側フランジ
51:原料ガス入口 6:オゾンヘッダ
6a:オゾンヘッダ筒 6b:フタ側フランジ
6c:管板側フランジ 61:オゾン化ガス出口
7:酸素ヘッダのフタ 8:オゾンヘッダのフタ
9:交流高電圧電源 10:高電圧電極管
11:放電ギャップ 21:Oリング溝
22:Oリング 23:Oリング押え板
41:冷却水入口 42:冷却水出口
52:管板締結ボルト 53:ヘッダ締結ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地電極管と、この接地電極管の一方の端部を保持する酸素側管板と、前記接地電極管の他方の端部を保持するオゾン側管板と、前記接地電極管の周囲に冷却水を流通させる水室を形成するための水室胴体と、酸素を含む原料ガスを供給するための酸素ヘッダと、生成されたオゾンガスを集合させるオゾンヘッダとを備えたオゾン発生装置において、前記水室胴体の両側にフランジを形成し、このフランジのうち一方のフランジと前記酸素側管板とをボルト締結し、他方のフランジとオゾン側管板とをボルト締結したことを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項2】
酸素ヘッダにフランジを形成するとともに、前記酸素ヘッダのフランジと酸素側管板と水室胴体のフランジとをボルト締結したことを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生装置。
【請求項3】
酸素ヘッダおよび水室胴体は円筒形状であり、かつ前記酸素ヘッダのフランジは、前記酸素ヘッダの内部に位置する内フランジであって、前記酸素ヘッダの内径は前記水室胴体の内径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のオゾン発生装置。
【請求項4】
水室胴体に形成されたフランジと酸素側管板とを締結するための管板締結ボルトと、前記酸素側管板を介して前記水室胴体に形成されたフランジと酸素ヘッダに形成された内フランジとを締結するヘッダ締結ボルトと、を有することを特徴とする請求項3に記載のオゾン発生装置。
【請求項5】
接地電極管とオゾン側管板とのシールを拡管または溶接により行ない、前記接地電極管と酸素側管板とのシールを溶接により行なうことを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項に記載のオゾン発生装置。
【請求項6】
接地電極管とオゾン側管板とのシールを拡管または溶接により行ない、前記接地電極管と前記酸素側管板とのシールをOリングにより行なうことを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項に記載のオゾン発生装置。
【請求項7】
複数の接地電極管の各々に装着されたOリングを共通に押えるためのOリング押え板を設けたことを特徴とする請求項6に記載のオゾン発生装置。
【請求項8】
接地電極管内部に高電圧電極管を挿入して形成される放電管において、前記接地電極管の内面と前記高電圧電極管の外面との間に保持される放電ギャップの寸法が0.3mm以下であることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項に記載のオゾン発生装置。
【請求項9】
請求項1に記載のオゾン発生装置の製造方法であって、
オゾン側管板に接地電極を挿入する工程と、
前記オゾン側管板に水室胴体を位置合わせし、前記水室胴体と前記オゾン側管板とオゾンヘッダとをボルトにより締結する工程と、
酸素側管板に前記接地電極管を挿入するとともに、前記酸素側管板と前記水室胴体とを位置合わせする工程と、
前記酸素側管板と前記水室胴体とをボルトにより結合する工程と、
を備えたことを特徴とするオゾン発生装置の製造方法。
【請求項10】
拡管または溶接により、前記接地電極管と前記オゾン側管板とを接合する工程と、
接地電極管と酸素側管板とを溶接により接合する工程とを備えたことを特徴とする請求項9に記載のオゾン発生装置の製造方法。
【請求項11】
拡管または溶接により、前記接地電極管と前記オゾン側管板とを接合する工程と、
接地電極管の酸素側管板側の端部よりOリングを挿入し、Oリング押え板により前記酸素側管板に形成されたOリング溝にOリングを押える工程とを備えたことを特徴とする請求項9に記載のオゾン発生装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−126614(P2012−126614A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280429(P2010−280429)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】