説明

オゾン発生装置

【課題】高電圧電極管と接地電極管のような二重筒構造の放電空間であっても間隙を容易に均一に維持し、接地電極管内に高電圧電極管を容易に挿入することができ、かつオゾン発生効率を低下させないこと。
【解決手段】外側電極を金属からなる接地電極とし、内側電極を金属からなる高電圧電極とし、これらを同軸状に配置する。接地電極管1の内表面に誘電体の絶縁層3を施し、接地電極管1と高電圧電極管2との間に放電空間5を形成する。放電空間5の距離を維持するためにスペーサ4が高電圧電極管2の表面に固定されている。高電圧電極管2の円周方向上部は、熱膨張係数の異なる2種類の金属を2層に張り合わせた長方形のスペーサ4aを設置する。このスペーサ4aは放電空間距離より、やや板厚を小さくする。一方、高電圧電極管2の円周方向下部のスペーサ4bは、単一金属の放電空間の距離と同じ厚さで長方形のスペーサを設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素又は酸素を含む気体が供給された放電空間において無声放電することで酸素からオゾンを発生させるオゾン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水処理、パルプ漂白処理又は殺菌処理の各分野において、殺菌・脱色・脱臭力を有するオゾンが利用されている。オゾン発生装置として無声放電型のオゾン発生装置がある(例えば、特許文献1参照)。無声放電型のオゾン発生装置では、一定の間隔を空けて配置した一対の電極の片側、もしくは両側を絶縁体(誘電体)で覆い、電極間に交流電圧をかけて放電させる。電極が絶縁体で覆われているため電極に電荷が流れ込むことができず、大きな電流が流れないため、火花放電やコロナ放電のように放電時に音がしない特徴がある。
【0003】
図8、9は無声放電型のオゾン発生装置の構成図であり、図8は断面側視図、図9は管径側断面図である。同図に示すオゾン発生装置は、外筒を構成する接地電極管1と、内筒を構成する高電圧電極管2との二重円筒構造を有している。接地電極管1の内面に誘電体の絶縁層3が形成されており、この接地電極管1の内面と高電圧電極管2の外周面との間に設けられた複数のスペーサ4により1mm前後の微小な放電空間5が形成されている。スペーサ4は、管軸方向の両端に複数個設けられており、図9では管軸方向の両端部に電極管円周方向の4か所に均等配置されている。電極管円周方向の4か所に配置されたスペーサ4a,4bによって高電圧電極管2が接地電極管1に対して同軸位置に維持される。両電極管1、2には4〜10kVの交流電圧を印加する高電圧電源6が接続されている。
【0004】
上記オゾン発生装置の電極管の一端から酸素を含む原料ガス7を供給し、高電圧電源6から両電極管1、2間に4〜10kVの交流電圧を印加して放電空間5において無声放電を生じさせ、他端よりオゾン化ガス8を排出する。原料ガス7としては、乾燥された酸素や空気が用いられている。
【0005】
絶縁層3が施された接地電極管1と高電圧電極管2との間に交流高電圧を印加して微小な放電空間5内に無声放電を生じせしめると、原料ガス中の酸素分子の一部が加速電子に従って酸素原子に変換され、この酸素原子と酸素分子とが結合することにより、オゾンが形成される。
【0006】
酸素分子をオゾン化する微小な放電空間5の距離は、絶縁層3が施された接地電極管1の内径寸法と高電圧電極管2の外形寸法との差によって形成されるものであり、放電空間5の距離の維持と高電圧電極管2の支持とは、高電圧電極管2の両端に複数個設置されたスペーサ4により行なわれている。これらスペーサ4は、高電圧電極管2に溶接等で固定されている。
【特許文献1】特開2006−45037号公報
【特許文献2】特開平4−214003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したようにスペーサ4で放電空間5を維持しているオゾン発生装置は、スペーサ4の厚みと放電空間5の間隔とがほぼ同じであるため、内筒となる高電圧電極管2を外筒となる接地電極管1内に挿入する作業が非常に困難であった。高電圧電極管2を接地電極管1内に無理に挿入しようとすると、高電圧電極管2に溶接固定したスペーサ4が接地電極管1の内面と接触し、スペーサ4が外れてしまう恐れがある。
【0008】
一方、高電圧電極管2を接地電極管1内に挿入するために、スペーサ4の寸法を小さくすると、図8のように横置きされたオゾン発生装置では、内筒となる高電圧電極管2が外筒となる接地電極管1に対して電極管の下部側に偏芯した状態で配置され、放電空間5は管上部の空隙と管下部の空隙が不均一になり、オゾン発生特性を低下させる。
【0009】
また、内筒となる高電圧電極管2の挿入を容易にするために、管上部のスペーサ4aを設置せず、管下部のスペーサ4bだけの2点で放電空間5を維持しようとした場合、管上方の放電空間を正確に維持することができず、これについてもオゾン発生特性を低下させる原因になる。
【0010】
他方、スペーサ4を管長手方向に延出して、スペーサ4の管長手方向の断面積が大きすぎると、ガスの流れを阻害するので、圧力損失が増大して、オゾン発生特性を低下させることとなる。
【0011】
また、スペーサにばね部材を使用し、放電空間の間隔を維持する提案がされている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2記載のオゾン発生装置では、ばね部材の自由端部が誘電体に対してほぼ接線方向に向いていて、外部電極の内壁に接している。しかしながら、ガスの流れ方向である電極管長手方向に対し、スペーサとして使用しているばね部材の断面積が大きくなるので、ガスの流れを阻害して圧力損失となり、オゾン発生効率が低下するおそれがある。また、ばね部材は、まっすぐ、折り畳まれたもの、端部を折り曲げられたもの、T形、H形の形状のものであり、ばね材自体が大きく変形することはない。内部電極挿入前、これらのばね部材は中央部1点のみで内部電極に接しており、端部はどこにも接していない。これは、ばね部材の曲げ量を微小にするためであるが、これでは、内部電極挿入時に電極管内部とばね部材が接触し、ばね部材が外れてしまうおそれがある。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高電圧電極管と接地電極管のような二重筒構造の放電空間であっても間隙を容易に均一に維持することができ、かつ接地電極管内に高電圧電極管を容易に挿入することができ、かつオゾン発生効率を低下させない無声放電形のオゾン発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のオゾン発生装置は、接地電極が形成される外側電極管と、前記外側電極管内に挿入して配置され高圧電極が形成される内側電極管と、前記外側電極管及び前記内側電極管の互いの対向面のいずれか一方に形成された誘電体層と、前記外側電極管と前記内側電極管との間であって円周方向の複数個所に配設され放電空間を形成する複数のスペーサと、前記外側電極管と前記内側電極管との間に交流電圧を印加する交流電圧源とを備え、前記複数のスペーサは、両電極管の管軸中心を挟んで一方の側に配置される第1のスペーサと、他方の側に配置される第2のスペーサとからなり、前記第1のスペーサは、熱膨張係数の異なる複数の金属が張り合わされた構造を有し、自由端を確保した状態で前記外側電極管又は前記内側電極管のいずれかに固定され、前記放電空間での放電電流により加熱されて前記自由端が管径方向に変形することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、両電極管の管軸中心を挟んで第1のスペーサと第2のスペーサとが配置され、第1のスペーサは放電空間での放電による熱を受けて自由端が管径方向に変形するので、外側電極管内に内側電極管を挿入し又は取り外す作業時には第1のスペーサが変形していないので第1のスペーサと対向面との間には隙間が形成されている。このため、組み立て又は分解作業時には第1のスペーサの寸法が小さく、外側電極管に対する内側電極管の挿入又は取り外しをスムーズに行うことができる。しかも、組み立て後の運転時には、第1のスペーサは放電電流により加熱されて自由端が管径方向に変形するので、第1のスペーサと対向面との間に形成されていた隙間がなくなり、第1のスペーサが対向する一方の電極管の面を押圧し、第1及び第2のスペーサにより放電空間が維持される。このため、第1のスペーサの変形時の管径方向の寸法と第2のスペーサの管径方向の寸法とを調整することで、運転時には外側電極管と内側電極管とを自動的に同軸位置に位置決めでき、放電空間における電極管長手方向と直交する方向の距離が均一化され、オゾン発生効率の低下を防止できる。
【0015】
上記オゾン発生装置において、前記第1のスペーサは、前記放電空間での放電による熱変形前の厚さが、前記放電空間の距離よりも小さく、前記第2のスペーサは、前記放電空間の距離と同じ厚さを有する単一金属からなり、前記第1のスペーサと同一電極管に固定される構成とすることができる。
【0016】
第2のスペーサは、放電空間の距離と同じ厚さを有していて、かつ熱膨張差による管径方向の変形は実質的にない。したがって、第2のスペーサに対して管軸中心を挟んで他方の側に配置された第1のスペーサだけが放電熱で管径方向に変形して対向する電極管を管径方向に押圧し、外側電極管と内側電極管とを同軸位置に位置決めする。これにより、第2のスペーサの厚さが放電空間の距離となるので、放電空間の距離を高い精度で維持することができる。
【0017】
上記オゾン発生装置において、前記第1のスペーサは、スペーサ中央部又は片端部が前記外側電極管又は前記内側電極管のいずれかに固定される構成とすることができる。スペーサ中央部が固定される構成であれば、両端部が自由端となって加熱によって管径方向に変位する。また、スペーサ片端部が固定される構成であれば、固定端部と反対側の端部が自由端となって放電熱によって管径方向に変位する。
【0018】
第1のスペーサは、熱膨張係数の異なる第1の金属層と第2の金属層とを張り合わせた二重構造を有し、前記第1の金属層が電極管側に固定され、前記第1の金属層の熱膨張係数が大で、前記第2の金属層の熱膨張係数が小である。このようなバイメタル構造にすることで、自由端を管径方向に変位させることができる。
【0019】
上記オゾン発生装置において、前記外側電極管内に前記内側電極管を挿入してなる電極管は、電極管長手方向が水平方向となる横向きに設置され、前記第1のスペーサは、電極管の円周方向における上部に配置され、前記第2のスペーサは、電極管の円周方向における下部に配置された構成とすることができる。
【0020】
上記オゾン発生装置において、前記外側電極管及び前記内側電極管は、筒状をなす金属材からなり、前記外側電極管の内面に前記誘電体層が形成され、前記内側電極管の外周面に前記第1及び第2のスペーサを溶接固定した構成とすることができる。
【0021】
上記オゾン発生装置において、前記外側電極管は、筒状をなす金属材からなり、前記内側電極管は、誘電体からなり一方端が開放した絶縁管と、前記絶縁管の内周面に形成された高圧電極とからなり、前記外側電極管の内周面に前記第1及び第2のスペーサを溶接固定した構成とすることができる。
【0022】
上記オゾン発生装置において、前記外側電極管及び前記内側電極管は、筒状をなす金属材からなり、前記内側電極管の外周面に前記誘電体層が形成され、前記外側電極管の内周面に前記第1及び第2のスペーサを溶接固定した構成とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高電圧電極管と接地電極管のような二重筒構造の放電空間であっても間隙を容易に均一に維持することができ、かつ接地電極管内に高電圧電極管を容易に挿入することができ、かつオゾン発生効率の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施の形態は、無声放電方式で二重円筒型のオゾン発生装置である。全体構成は、図8,9に示すオゾン発生装置と同一であり、放電空間を維持するためのスペーサの構造が異なる。図1は本実施の形態に係るオゾン発生装置を図8におけるA-A線矢視方向から見た断面模式図である。
【0025】
接地電極管1は、低炭素鋼またはステンレス合金鋼の金属材料からなる円筒管であり、その内面表面には絶縁材料であるガラスやセラミックスを鋼材の機械的特性に合わせた下地層の上にオゾン発生装置に適した低誘電率、低誘電損失でかつ温度的に安定した電気特性を持つ絶縁層3が形成されている。
【0026】
高電圧電極管2は、低炭素鋼またはステンレス合金鋼の金属材料からなる円筒管であり、その両端部には、溶接あるいはシボリ加工により形成した蓋が設けられている。この高電圧電極管2の蓋には、不図示の高電圧給電用端子が設けられている。
【0027】
横置きされた接地電極管1の内面と高電圧電極管2の外周面との間には上部スペーサ4a及び下部スペーサ4bが配置され、1mm前後の微小な放電空間5を形成している。上部スペーサ4a及び下部スペーサ4bは、外形が長方形をなしており、放電空間5の距離を維持するために、高電圧電極管2の両端部および中央部に円周方向の各位置に溶接により固定されている。なお、図8では高電圧電極管2の中央部に配置したスペーサは図示していない。
【0028】
横置きされた電極管(接地電極管1及びそこに挿入された高電圧電極管2)において、管軸中心を挟んで一方の側となる上側に2つの上部スペーサ4aが配置され、他方の側となる下側に2つの下部スペーサ4bが配置されている。
【0029】
上部スペーサ4aは、熱膨張係数の異なる2種類の金属層11,12を張り合わせて構成される。高電圧電極管2に固定される1層目の金属層11は、熱膨張係数が14〜16×10−6/℃のSUS304またはSUS316のステンレス合金で構成することができる。2層目の金属層12は、熱膨張係数が3〜6×10−6/℃の低膨張金属インバー、コバールの鉄−ニッケル合金で構成することができる。これらの金属層11、12を重ね合わせ、冷間または加熱圧延によって接合された2層の板材とする。上部スペーサ4aは、この2層の板材をスペーサとなる様に一定形状に切断、加工して作製される。また、上部スペーサ4aは、放電空間5よりも薄い厚さの板厚に加工し、高電圧電極管2の外周面の上部にスポット溶接機により溶接固定される。上部スペーサ4aの溶接方向は、高電圧電極管2に接する側を熱膨張係数の大きいステンレス合金側の金属層11とする。金属層11の溶接位置は、長方形の中央部であり、上部スペーサ4aの長辺方向の両端部が自由端を形成する。
【0030】
ここで使用されるスペーサ材は、放電やオゾンに耐えられるものでなければならない。従って、1層目の金属層11の金属材料は、前記に上げたステンレス合金以外に、熱膨張係数が10×10−6/℃以上の耐熱合金であれば良く、ニッケルおよびニッケルを含むモネル、インコネル、ハステロイ、およびクロム合金でも良い。また2層目の金属層12の金属材料は、熱膨張係数が3〜6×10−6/℃の低膨張金属で1層目の金属層11と同様にニッケル、クロムまたはコバルトを含む耐熱性のある金属合金が良い。
【0031】
下部スペーサ4bは、接地電極管1と高電圧電極管2との間に形成される放電空間5が均一な間隔となる必要であることから、放電空間5の距離と同じ厚さを有している。下側のスペーサ4bは、単一金属のSUS304またはSUS316のステンレス合金の板厚を放電空間5の距離と同じ厚さに加工して作製される。下部スペーサ4bは高電圧電極管2の外周面であって管軸中心を挟んで上部スペーサ4aと対向する位置にスポット溶接機により溶接固定される。
【0032】
このように、高電圧電極管2表面であって円周方向の下部に設置された下部スペーサ4bが放電空間5と同じ厚さである一方、高電圧電極管2表面であって円周方向の上部に設置された上部スペーサ4aが放電空間5よりも板厚が薄くされている。このため、接地電極管1内に高電圧電極管2を挿入する場合、接地電極管1と上部スペーサ4aとの間に隙間が生じる。その結果、高電圧電極管2の挿入が容易に行えることとなる。この隙間の距離は、0.05〜0.3mmであった。
【0033】
次に、以上のように構成された本実施の形態に係るオゾン発生装置の動作について説明する。接地電極管1に高電圧電極管2を挿入した電極間に、高電圧電源6より交流高電圧を印加すると、放電空間5で無声放電が開始され、一部放電電流が上部スペーサ4aを通して流れ、この電流が上部スペーサ4aを加熱し温度が上昇する。この温度上昇により、上部スペーサ4aを構成する2層の金属層11,12の膨張係数差により、2層の金属層11,12間に膨張差が生じ、この膨張差により2層金属板である上部スペーサ4aが、図2に示すように管径方向に変形(湾曲)する。金属層11の中央部が溶接固定されているので、両端部の自由端が管径方向へ変化する。この変形した管径方向の距離は、0.05〜0.3mm以上であり、接地電極管1の内面に上部スペーサ4aの自由端部が接することとなる。上部スペーサ4aの管径方向への湾曲する変位量は、張り合わされる金属材料の熱膨張係数、板厚、スペーサに長さおよび巾および高電圧電極管に設置する接地部と湾曲するスペーサ端部の距離によって、放電空間の距離によって設計し、決定される。
【0034】
両電極間の高電圧印加を止め、放電空間5での放電が停止されると、上部スペーサ4aに流れる電流も無くなることから、温度が低下し、上部スペーサ4aの変形が戻り、高電圧電極管2の上部スペーサ4aと接地電極管1との間に隙間が生じ、高電圧電極管2を接地電極管1から容易に取り出すことができる。
【0035】
このように、本実施の形態によれば、高電圧電極管2の円周方向に設置される複数のスペーサの内、上部スペーサ4aの熱変形前の厚さを放電空間5の距離より薄いものを設置したので、スペーサを高電圧電極管2に溶接等で固着したときは、上部スペーサ4aが伸びた状態であり、接地電極管1に高電圧電極管2の挿入時に、上部スペーサ4aの高さは所定の放電空間5の距離より小さくなることから、高電圧電極管2の円周上部の上部スペーサ4aが接地電極管1内と接触することがなく、接地電極管1への高電圧電極管2の挿入が容易に行える。
【0036】
また、オゾン発生のため、接地電極管1と高電圧電極管2の間に高電圧を印加し、放電空間5で放電が生じると、上部スペーサ4aは、熱膨張係数の異なる2枚の金属の張り合わせた板であることから、バイメタル効果により湾曲し、接地電極管1内面に接触する。これにより、円環状をなす放電空間5の距離が均一に維持され、かつ高電圧電極管2が保持される。放電を停止すると、スペーサ4の温度は低下し、上部スペーサ4aの湾曲は戻り、接地電極管1から離脱し、高電圧電極管2をスムーズに取り出すことができる。
【0037】
なお、上部スペーサ4aだけでなく、下部スペーサ4bを上部スペーサ4aと同様のバイメタル構成としても良い。上部及び下部の区別をすることなく、すべてのスペーサ又は任意の一部のスペーサを上記バイメタル構成とすることで、接地電極管1への高電圧電極管2の挿入が容易に行える効果を得ることができる。
【0038】
また本実施の形態によれば、スペーサ4を高電圧電極管2に設置することにより、接地電極管1と高電圧電極管2との中心円精度が向上し、円周内の放電空間5での絶縁層3を介した無声放電が安定しかつ均一に行なわれる。
【0039】
また、スペーサ4a,4bを小さいサイズに抑えることができるので、放電空間5におけるガスの流れを阻害することがなく、放電空間5を均一に維持できることから、安定してオゾン発生効率を改善できる。
【0040】
なお、図1に示す上部スペーサ4aは、1層目の金属層11の中央部を溶接固定していたが、1層目の金属層11と2層目の金属層12との膨張差によって変形可能な自由端が確保されれば溶接個所は限定されない。
【0041】
例えば、図3(a)に示すように、1層目の金属層11の片方の端部を溶接固定しても良い。この場合、図3(b)に示すように自由端は溶接固定されていない反対側の端部となる。このように、1層目の金属層11の片方の端部を溶接固定しても、上部スペーサ4aの変位により高電圧電極管2を接地電極管1と同軸位置に移動させることができる。
【0042】
本発明は、図4及び図5に示す二重筒型のオゾン発生装置にも適用可能である。
図4は、高電圧電極が形成される内部電極管がガラス管で構成されたオゾン発生装置の構成例を示す図である。接地電極管21はSUS金属管を加工して作製する。また、一端が開放したガラス管の内面に導電性の高圧電極23を形成(例えば、アルミニウムを蒸着)して絶縁管24を作製する。この絶縁管24を接地電極管21内に挿入し、スペーサ4で放電空間5を形成する。上部スペーサ4a及び下部スペーサ4bは、接地電極管21の内面に溶接固定される。なお、高電圧電源6は、高圧電極23に対して給電電極25を介して交流電圧を印加する。
【0043】
図5は高電圧電極が形成される内部電極管をセラミックまたはガラスで構成されたオゾン発生装置の構成例を示す図である。接地電極管21はSUS金属管を加工して作製する。高電圧電極管22の表面にセラミック又はガラスからなる絶縁層26を形成し、この高電圧電極管22を接地電極管21内に挿入し、スペーサ4で放電空間5を形成する。図1で示されるオゾン発生装置と同様に、上部スペーサ4a、下部スペーサ4bは、接地電極管21の内面に溶接固定される。
【0044】
図4及び図5に示すように構成されたオゾン発生装置において、少なくとも上部スペーサ4aを放電空間5の距離よりも小さい厚さを有するバイメタル構造とし、放電電流にて加熱して管径方向へ湾曲させる。
【0045】
本発明者は、上述した二重筒型のオゾン発生装置における放電空間の位置ズレとオゾン発生濃度との関係について検証した。以下に検証内容について説明する。
【0046】
図6は放電空間比とオゾン発生濃度との関係を示す図であり、図7は放電空間の距離比a:bを示す図である。図7に示すように、放電空間5は、接地電極管1の内径と高電圧電極管2の外径およびスペーサ4により、その放電空間の距離が決定される。管軸中心を挟んで上部の放電空間5aの距離をaとし、下部の放電空間5bの距離をbとしている。
【0047】
放電空間5のオゾン発生条件の最適な距離0.2mmから1mmの範囲(実際のオゾン発生装置では、酸素0.3mm、空気0.5mmである)において、上部の放電空間5aと下部の放電空間5bとの距離比a:bを1:1で、オゾン発生濃度を100%とした(オゾン発生装置の注入電力および酸素または空気のガス量一定とする)。放電空間5aと5bの距離を変えた結果、オゾン発生濃度は、図6に示す様にa:bの比率が1:1よりaまたはbが増加すると、すなわち高電圧電極管2の中心位置が接地電極管1の中心位置からズレて放電空間5の距離のaまたはbが広く、または狭くなると、オゾンの発生濃度が低下することが判る。なお、冷却方式やガス空気、酸素および流量、注入電力条件により、発生濃度が異なるため%表示とした。
【0048】
このオゾン発生濃度の低下原因として、以下のことが考察される。
ガス流量の偏流で、放電空間が広い場合には、多くのガスが流れ、より多くのガスが流れるため、放電空間でのガスの放電滞留時間が短く、そのため酸素の解離やオゾン生成が低下し、これにともないオゾン発生濃度の低下も示す。狭い放電空間では、ガスの流れが悪く、生成効率が低下する。
【0049】
一方、放電空間が広がることにより、他方の狭い放電空間の接地電極管と高電圧電極管とに印加される高周波電源からの電圧分担に差が生じ、発生効率が高い条件とする放電空間5の距離よりも広いと放電密度が小さくなり、オゾンの生成効率が低下する。
【0050】
他方、狭いと放電の集中が生じ、放電空間内でのオゾンの効率的な生成が妨げられる。更に放電空間が狭くなると、パッシェンの法則により、放電しない部分が生じ、放電空間内での均一なオゾン発生ができなくなる。
【0051】
従って、接地電極管の中心に対し、高電圧電極管もその中心に位置し、放電空間が均一である場合には、オゾン濃度は、最も高く、発生効率も良い。図6に示す様に、電極管の位置がズレ、すなわち放電空間の距離が偏ると、オゾン発生濃度の高い最適な放電空間の距離からズレが生じ、更には有効な放電面積が低下し、オゾン発生濃度並びに発生効率が低下する。
【0052】
よって、高いオゾン発生濃度および発生効率を維持するには、接地電極管1と高電圧電極管2の放電空間5の距離は、円周方向の全周に渡って均等であることが必要である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】一実施の形態に係るオゾン発生装置を図8のA-A線矢視方向から見た断面模式図
【図2】図1に示すオゾン発生装置において上部スペーサが変形した状態を示す図
【図3】(a)スペーサの片側を溶接固定した変形例において加熱前の電極管の部分断面図、(b)同変形例において加熱後の電極管の部分断面図
【図4】ガラス管型のオゾン発生装置の構成図
【図5】セラミック管型のオゾン発生装置の構成図
【図6】放電空間比とオゾン発生濃度との関係を示す図
【図7】放電空間の距離比a:bを示す図
【図8】無声放電型のオゾン発生装置の断面側視図
【図9】無声放電型のオゾン発生装置の管径側断面図
【符号の説明】
【0054】
1 接地電極管
2 高電圧電極管
3 絶縁層
4a 上部スペーサ
4b 下部スペーサ
5 放電空間
6 高電圧電源
7 原料ガス
8 オゾン化ガス
11 金属層(第1の層)
12 金属層(第2の層)
13 溶接部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地電極が形成される外側電極管と、前記外側電極管内に挿入して配置され高圧電極が形成される内側電極管と、前記外側電極管及び前記内側電極管の互いの対向面のいずれか一方に形成された誘電体層と、前記外側電極管と前記内側電極管との間であって円周方向の複数個所に配設され放電空間を形成する複数のスペーサと、前記外側電極管と前記内側電極管との間に交流電圧を印加する交流電圧源とを備え、
前記複数のスペーサは、両電極管の管軸中心を挟んで一方の側に配置される第1のスペーサと、他方の側に配置される第2のスペーサとからなり、
前記第1のスペーサは、熱膨張係数の異なる複数の金属が張り合わされた構造を有し、自由端を確保した状態で前記外側電極管又は前記内側電極管のいずれかに固定され、前記放電空間での放電電流により加熱されて前記自由端が管径方向に変形する、
ことを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項2】
前記第1のスペーサは、前記放電空間での放電による熱変形前の厚さが、前記放電空間の距離よりも小さく、
前記第2のスペーサは、前記放電空間の距離と同じ厚さを有する単一金属からなり、前記第1のスペーサと同一電極管に固定されたことを特徴とする請求項1記載のオゾン発生装置。
【請求項3】
前記第1のスペーサは、スペーサ中央部又は片端部が前記外側電極管又は前記内側電極管のいずれかに固定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のオゾン発生装置。
【請求項4】
前記第1のスペーサは、熱膨張係数の異なる第1の金属層と第2の金属層とを張り合わせた二重構造を有し、前記第1の金属層が電極管側に固定され、前記第1の金属層の熱膨張係数が大で、前記第2の金属層の熱膨張係数が小であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項5】
前記外側電極管内に前記内側電極管を挿入してなる電極管は、電極管長手方向が水平方向となる横向きに設置され、
前記第1のスペーサは、電極管の円周方向における上部に配置され、前記第2のスペーサは、電極管の円周方向における下部に配置された、
ことを特徴とする請求項2記載のオゾン発生装置。
【請求項6】
前記外側電極管及び前記内側電極管は、筒状をなす金属材からなり、前記外側電極管の内面に前記誘電体層が形成され、前記内側電極管の外周面に前記第1及び第2のスペーサを溶接固定したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項7】
前記外側電極管は、筒状をなす金属材からなり、
前記内側電極管は、誘電体からなり一方端が開放した絶縁管と、前記絶縁管の内周面に形成された高圧電極とからなり、
前記外側電極管の内周面に前記第1及び第2のスペーサを溶接固定したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項8】
前記外側電極管及び前記内側電極管は、筒状をなす金属材からなり、前記内側電極管の外周面に前記誘電体層が形成され、前記外側電極管の内周面に前記第1及び第2のスペーサを溶接固定したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のオゾン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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