説明

オゾン発生装置

【課題】誘電体管の温度分布をより均一にし、その結果放電電力密度を増大させることが出来、ひいては装置の小型化、あるいは大容量化を実現できるオゾン発生装置を提供する。
【解決手段】気密密閉容器の内部を3つの空間に仕切る、穴が開いた導電金属板であって所定の間隔で設けられた2枚の管板と、この2枚の管板の穴同士を連結するように設けられた金属管と、外壁と金属管内壁とが所定の間隙を有するように金属管内部に挿入された誘電体管と、誘電体管内部に設けられた金属電極とを備え、金属管と金属電極との間に交流電圧を印加して、間隙に流れる酸素を含む原料ガスを放電させてオゾンを発生するオゾン発生装置において、管板に対向する部分の誘電体管の外周表面を覆う厚さの薄い金属材料である放電抑制部材を設け、この放電抑制部材を金属管または管板に電気的に接触させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無声放電を利用してオゾンを発生するオゾン発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理などに用いられているオゾン発生装置は、無声放電を利用したものが多い。無声放電を利用したオゾン発生装置の基本構成は、内面に金属膜が形成された円筒状の誘電体管を円筒状の金属管内に、この金属管内壁と誘電体管外壁とが所定の間隙を有する寸法となるよう挿入した構成になっている。この間隙に酸素を含む原料ガス(空気、あるいは酸素ガスなど)を流して、金属管と誘電体管内面の金属膜の間に高圧の交流電圧を印加し、誘電体管の誘電体を介して間隙に交流電界を発生させることにより原料ガスを放電させ、原料ガス中の酸素をオゾン化することでオゾンを発生させる。このような構造のオゾン発生装置にあって、誘電体管端部付近の沿面放電や金属間の直接放電を防止するために誘電体管端部付近に絶縁物を設けるなどの工夫がなされている。(例えば特許文献1、2、3)
【0003】
一方、特に大量の水処理に用いられるようなオゾン発生装置においては、近年、処理量の増大化に伴い、装置を大型化せずに処理量を増大させることが求められている。このような要求を満足させるためには、装置寸法当たりのオゾン発生量を増大させる必要があり、このためには放電電力密度を上げる必要がある。しかしながら、放電電力密度の増大に伴い、熱的な問題も増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−25203号公報
【特許文献2】特開平7−81904号公報
【特許文献3】特開平10−338503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱的な問題は、冷却の不均一性や、投入電力の不均一性すなわち放電の不均一性など、種々の原因が考えられる場合が多く、放電電力密度が小さい従来のオゾン発生装置では、明確になっていない問題も多かった。
【0006】
このほど、発明者らの詳細な検討により、金属管の端部付近に対向する誘電体管の、冷却の不均一性により発生する熱的な問題が明らかとなった。
【0007】
この発明は上記のような発明者らにより初めて明らかにされた金属管の端部付近の冷却の不均一性の問題を解決するためになされたものである。従来は金属管の端部付近に対向した誘電体管の温度が他の部分よりも高くなり、この部分の温度により放電電力密度の上限が決まっていた。これに対し、本発明では、誘電体管の温度分布を従来よりも均一にし、全体として放電電力密度を増大させることが出来、ひいては装置の小型化、あるいは大容量化を実現できるオゾン発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るオゾン発生装置は、気密密閉容器と、この気密密閉容器の内部を3つの空間に仕切る、穴が開いた導電金属板であって所定の間隔で設けられた2枚の管板と、この2枚の管板の穴同士を連結するように設けられた金属管と、スペーサにより外壁と金属
管内壁とが所定の間隙を有するように金属管内部に保持され、内部に金属電極を備えた誘電体管と、金属管と金属電極との間に交流の高電圧を印加するための交流高圧電源とを備え、3つの空間のうち両端にある空間の一方の空間から、少なくとも上記間隙を通って両端にある空間の他方の空間に酸素を含む原料ガスを流し、誘電体管内部の金属電極を高電位、金属管および管板を接地電位として、上記間隙を流れる原料ガスを放電させてオゾンを発生させるとともに、2枚の管板と金属管外壁、および密閉容器内壁とで区切られた空間に冷却水を流して冷却するように構成されたオゾン発生装置において、管板に対向する部分の誘電体管の外周表面を覆う厚さの薄い金属材料である放電抑制部材を設け、この放電抑制部材を金属管または管板に電気的に接触させたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、管板に対向する部分の誘電体管の外周表面を覆う厚さの薄い金属材料である放電抑制部材を設けたので、管板部に対向する部分の間隙における放電電力が減少する。そのため管板に対向する部分の誘電体管の温度上昇は従来に比較して小さくすることができ、誘電体管の温度分布を従来よりも均一にできる。その結果全体として放電電力密度を増大させることが出来、ひいては装置の小型化、あるいは大容量化を実現できるオゾン発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の概略構成を示す側面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の主要部を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の主要部を示す図2のA−A位置の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2によるオゾン発生装置の主要部を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2によるオゾン発生装置の主要部を示す図4のA−A位置の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3による放電抑制部材を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3による放電抑制部材を貼付した状態の誘電体管の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3によるオゾン発生装置の主要部を示す拡大断面図である。
【図9】本発明の実施の形態4によるオゾン発生装置の主要部を示す拡大断面図である。
【図10】本発明の実施の形態4によるオゾン発生装置の主要部を示す図9のA−A位置の拡大断面図である。
【図11】本発明の実施の形態5によるオゾン発生装置の概略構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1から図3に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の概略構成を示す側面断面図であり、図2は本発明の主要部を示す拡大断面図、図3(a)は図2のA−A位置の断面図、図3(b)は誘電体管に後述の放電抑制部材を貼付した状態を図1の上方向から見た概略図である。なお、図2は管板11に対向する付近であって、金属管4や誘電体管5の中心軸に対して片側のみを示している。
【0012】
図1において、1は円筒状の気密密閉容器、2は原料ガス入口、3はオゾン化ガス出口、11は密閉容器の原料ガス入口側の空間100を仕切る第一の管板、12は密閉容器1のオゾン化ガス出口側の空間200を仕切る第二の管板、4は第一の管板11に開けられた穴と第二の管板12に開けられた穴との間に、両管板11および12に気密を保つように固定接続された金属管で、接地電極となる。金属管4は通常円筒状であるが、断面形状は必ずしも円でなくても良い。また、2枚の管板11および12は導電金属板であって、金属管4と同電位となっている。13は第一の管板11と第二の管板12と金属管4の外壁および密閉容器1の内壁とで区切られた空間で、この空間13内は冷却水で満たされ冷却水が流れる。5は金属管4と同軸状に設けられた誘電体管、6は誘電体管5の内壁に設けられた金属膜、7は金属膜6に給電するための給電素子、8は放電抑制部材、9は高圧碍子、10は交流高圧電源である。金属膜6は金属電極として動作し、誘電体管5の誘電体を介して放電させるため、以下、誘電体管5と金属膜6とをあわせて高圧電極管50と記載することもある。
また、図1では、気密密閉容器1内に金属管4と高圧電極管50の対を一対だけ示しているが、大容量のオゾン発生装置では、一つの気密密閉容器1内に金属管4と高圧電極管の対を多数設ける構成となっている。
【0013】
次に動作について説明する。原料ガスは酸素や空気など、オゾンの原料となる酸素を含むガスであり、原料ガスは気密密閉容器1の原料ガス入口2から供給される。誘電体管5は、原料ガスが供給される側の端部が開放し他端は閉鎖された筒状に形成されている。通常、金属電極すなわち金属膜6への給電は、図1のように原料ガス入口側の空間100側から高圧碍子9のような絶縁碍子を通して給電素子7により金属膜6に電気的に接触させて行われる。また、誘電体管5は一方が閉鎖されているため、原料ガスは、誘電体管5と金属管4との間の間隙を通過する。原料ガスは間隙を通過する間に無声放電によりオゾン化され、オゾン化ガス出口3からオゾン処理装置(図示せず)に供給される。誘電体管5を形成する誘電体としては、斯界で周知されているように高比誘電率を有する材料、例えばガラス、セラミックス、石英、ホーローなどが例示される。誘電体管5の外壁と、金属管4の内壁との間には所定の間隙20が形成されており、この間隙20は、例えば適当なスペーサにより0.3mm以下の狭い寸法に保たれている。
【0014】
また、誘電体管5は、原料ガス入口側管板11から原料ガス入口側空間100内に所定の寸法突き出しており、この部分の内壁にも金属膜6が形成されている。この突き出している寸法は、高圧電位となっている誘電体管5の内壁に設けられた金属膜6と、接地電位となっている管板11との間が、誘電体管5の外面を通って沿面放電が生じない距離となる寸法となっている。また、給電素子7を管板11の位置よりも外側、すなわち原料ガス入口側空間の位置に設けるため、管板11に対向する誘電体管5の内壁部にも金属膜6が形成されている構成になっている。このため、管板11に対向する間隙を通過する原料ガスも放電する。一方、この実施の形態1では、第二の管板12、すなわちオゾン化ガス出口側に設けられた管板12に対向する誘電体管5の内壁部には金属膜6は形成されていないため、この部分の間隙では放電が生じない。
【0015】
本実施の形態1では、原料ガス入口2が設けられている空間を仕切る第一の管板11(以後単に管板11とも記載する)に対向する間隙の部分に放電抑制部材8を設けている。図2および図3にこの放電抑制部材8が設けられた部分の詳細断面図を示す。図3に示すように、ほぼ間隙寸法d(dは図2参照)の厚みを有するガラス繊維などで形成された薄い長方形の板状の部材を誘電体管5の表面に沿わせて粘着剤で貼付している。図3(a)に示すように、放電抑制部材8は、誘電体管5の周囲の対称な位置に2枚設けられており、放電抑制部材8が貼付されていない部分は間隙201として原料ガスが流れるようになっている。図3(a)に示す例では、放電抑制部材8の体積を、放電抑制部材8が無い場合の管板11に対向する間隙の容積に対してほぼ50%としている。放電抑制部材8を設けることにより、放電抑制部材8が占める分だけ間隙の容積が減少し、放電できる容積が減少するため、放電抑制部材8を設けた部分での単位長さ(誘電体管の軸方向の)当たりの放電電力が、放電抑制部材8を設けていない場合に比較して減少する。
【0016】
なお、図2では、管板11、12の穴の径と金属管4の内径とを等しくし、管板11、12と金属管4とを突き合わせて接続したが、管板11、12の穴の径と金属管4の外径を等しくして管板11、12の穴に金属管4を挿入して接続しても良い。また、穴を座ぐり穴として、金属管4を管板11、12に一部挿入して接続しても良く、金属板と金属管を接続する方法であればどのような方法でも良い。ただし、接続は電気的にも接続されている必要がある。
【0017】
また、本発明において、「管板に対向する」とは、管板11の幅(厚み)を延長した範囲に含まれる部分を指す。たとえば、図2における放電抑制部材8は、「管板に対向する」間隙部分を埋めるように設けられている。
【0018】
誘電体管5の冷却については、金属管4の外壁を流れる冷却水により金属管4が冷却され、その金属管4により間隙20を流れるガスが冷却され、そのガスを介して誘電体管5の冷却が行われる。管板11に対向した誘電体管5の部分は、冷却水に接する管板11からこの管板11に対向した間隙を介して冷却されるので、金属管4から間隙を介して冷却される部分よりも冷却水から遠い位置にあるため、冷却能力が低い。このため、誘電体管5の管板11に対向する部分は、誘電体管5の他の部分よりも温度が上昇し易い。本実施の形態1では、管板11に対向する部分の間隙20は、放電抑制部材8の存在によって、放電できる容積が他の部分よりも小さく、単位長さ当たりの放電電力が少なくなる。このため、冷却能力が低くても誘電体管5の温度上昇が抑えられ、他の部分と同じ、あるいは他の部分よりも少ない温度上昇にできる。放電抑制部材8が無い場合は、誘電体管5のうち、この管板11に対向した部分の温度上昇が他の部分よりも大きいため、この部分の温度が、誘電体管5の許容上限温度以下となる放電電力しか投入できなかった。一方、本実施の形態の放電抑制部材8を設けた場合は、管板11に対向する部分の温度は他の部分と同じか低いため、この部分の温度により放電電力の上限が限られることがない。よって、従来と同じ寸法の高圧電極管50と金属管4を用いた場合、従来に比較して電力を多く投入でき、同じ寸法の高圧電極管50と金属管4であっても、大容量のオゾン発生装置とすることができる。また、より小型で、従来と同じオゾン発生量のオゾン発生装置とすることができる。
【0019】
ここで、放電抑制部材8の挿入量について検討する。放電抑制部材8を設ける目的は、誘電体管5の管板11に対向する部分の温度上昇を抑えるためであり、このため、この部分の放電電力を減少させる必要がある。放電抑制部材8が無い状態では、管板11に対向する間隙全体にわたって放電が発生し、電力が投入される。これに対し、放電抑制部材8を挿入した場合、放電抑制部材8が存在する部分はガスがないため放電は発生しない。従って、管板11に対向する間隙の容積に対して放電抑制部材8が占める体積の割合が大きいほど放電電力の減少割合が大きい。この観点からは、放電抑制部材8が占める体積の割合は大きいほうが良く、管板11に対向する部分の放電抑制部材8の体積を放電抑制部材が無い状態の管板11に対向する間隙の容積に対して20%以上とするのが望ましい。すなわち、放電抑制部材8を設けたことにより、管板に対向する部分における間隙の容積を、放電抑制部材が無い状態の管板に対向する部分の間隙の容積より20%以上減少させることが望ましい。しかし、ガスは、この間隙を通って流れる必要がある。この観点からは、放電抑制部材8はガスの流れに対する圧力損失ができるだけ小さいほうが良く、誘電体管5の軸に垂直な断面において、管板11に対向する間隙の断面積に対して放電抑制部材8が占める断面積の割合が80%以下であれば良い。このように、放電抑制部材の管板に対向する部分の体積を、放電抑制部材が無い状態における管板に対向する間隙の容積の20%以上にするとともに、誘電体管5の軸に垂直な断面において、管板11に対向する間隙の断面積に対して放電抑制部材8が占める断面積の割合が80%以下となるようにすれば、放電電力の減少の効果があり、ガスの流れに対する影響を少なくできる。
【0020】
なお、図3(a)では、放電抑制部材8は周方向に2つに分割して対称に配置したが、分割数はこれに限らず、3や4あるいはそれ以上としても良く、分割数が多いほうが放電電力の投入が周方向で均一になる効果があるが、分割数が少ないほうが組み立てが容易である。また、放電抑制部材8の誘電体管5の軸方向の寸法は、管板11の厚みと同じ寸法のもので説明したが、これに限らず、管板の厚みよりも大きな寸法、すなわち、管板11に対向した部分からはみ出しても良い。反対に、管板11の厚みよりも小さい寸法であっても良い。いずれの場合でも、管板に対向する部分の放電抑制部材の体積が、放電抑制部材が無い状態における管板に対向する間隙の容積の20%以上になっていれば良い。
【0021】
放電抑制部材8には上記したガラス繊維に限らず、例えばテフロン(登録商標)のようなフッ素樹脂やポリエステル、アセテートなどの絶縁性や耐酸化性に富んだ材料を用い、粘着剤には粘着力に富んだものを用いる。また、放電抑制部材8は少し変形可能な材料が良い。変形可能な材料であれば、高圧電極管50を金属管4の内部に挿入する際に、高圧電極管50の外径寸法と金属管4の内径寸法に誤差が生じ、ギャップdが小さい時でも、放電抑制部材8が圧縮されるため、スムーズに高圧電極管50を挿入することが可能となる。
【0022】
実施の形態2.
図4および図5は本発明の実施の形態2の構成を示す図である。図4は、実施の形態2による主要部を示す拡大断面図であり、図5は図4のA−A部の断面図である。なお、図4は図2と同様、管板11に対向する付近であって、金属管4や誘電体管5の中心軸に対して片側のみを示している。
【0023】
前記、実施の形態1では、放電抑制部材8は間隙の寸法dとほぼ同じ厚みのものを周方向に分散配置したが、本実施の形態2では、図5に示すように、誘電体管5の全周にわたって、間隙の寸法dよりも薄い厚みの放電抑制部材8を設けた。
【0024】
本実施の形態2で使用する放電抑制部材8の材料は、実施の形態1で示したガラス繊維、テフロン(登録商標)、ポリエステル、アセテートなどの絶縁性材料に限らず、SUSや銅にNIやZnメッキを施した耐酸化性に優れた金属材料であっても良い。
【0025】
本実施の形態2では、放電抑制部材8で管板11に対向する間隙部分の誘電体管5の周方向のほぼ100%を覆い、寸法を狭められた間隙202が形成された状態になっている。間隙が狭くなった部分では、軸方向の単位長当たりの放電電力が、放電抑制部材8が無い、すなわち間隙の寸法がdのままの部分の単位長当たりの放電電力に比較して減少する。このため、放電抑制部材8が存在する部分、すなわち管板に対向する部分における誘電体管5の温度上昇が抑えられる。
【0026】
本実施の形態2においても、実施の形態1と同様、放電抑制部材8が無い状態における管板11に対向する間隙の容積に対して放電抑制部材8が占める体積の割合が大きいほど、すなわち放電抑制部材8の厚みが厚いほど放電電力の減少割合が大きい。この観点からは、放電抑制部材8が占める体積の割合は大きいほうが良い。この観点から、管板11に対向する部分の放電抑制部材8の体積を、放電抑制部材が無い状態の管板11に対向する間隙の容積に対して20%以上とするのが望ましい。すなわち、放電抑制部材8を設けたことにより、間隙の管板に対向する間隙の容積を、放電抑制部材が無い場合の管板に対向する間隙の容積より20%以上減少させることが望ましい。しかし、ガスは、この間隙を通って流れる必要がある。この観点からは、放電抑制部材8はガスの流れに対する圧力損失ができるだけ小さいほうが良い。この観点からは、管板11に対向する間隙の断面積に対して放電抑制部材8が占める断面積の割合が80%以下であれば良い。このように、管板11に対向する部分の放電抑制部材8の体積を放電抑制部材が無い状態の管板11に対向する間隙の容積に対して20%以上にするとともに、管板11部に対向する間隙の断面積に対して放電抑制部材8が占める断面積の割合が80%以下となるようにすれば、放電電力の減少の効果があり、ガスの流れに対する影響を少なくできる。
【0027】
本実施の形態2においても、実施の形態1と同様、放電抑制部材8の誘電体管5の軸方向の寸法すなわち幅は、管板の厚みよりも大きな寸法であって、管板11に対向した部分からはみ出しても良く、反対に、管板11の厚みよりも小さい寸法であっても良い。いずれの場合であっても、管板11に対向する部分の放電抑制部材8の体積を放電抑制部材が無い状態の管板11に対向する間隙の容積に対して20%以上となっていれば良い。
【0028】
また、実施の形態1と実施の形態2を合わせたような構成、すなわち、厚みが間隙の寸法dよりも薄い放電抑制部材8を誘電体管5の周囲に分散配置した構成としても良い。この場合であっても、管板11に対向する部分の放電抑制部材8の体積を放電抑制部材が無い状態の管板11に対向する間隙の容積に対して20%以上にするとともに、誘電体管5の軸に垂直な断面において、管板11に対向する間隙の断面積に対して放電抑制部材8が占める断面積の割合が80%以下となるようにすれば、放電電力の減少の効果があり、ガスの流れに対する影響を少なくできることは言うまでもない。
【0029】
実施の形態3
図6から図8は、本発明の実施の形態3の構成を示す図である。図6は、本実施の形態3による放電抑制部材80を示す図である。また、図7は放電抑制部材80が高圧電極管50に取り付けられた状態を示す概略側面図であり、図8は図6の放電抑制部材が設けられた場合の、管板11に対向する付近の拡大断面図である。なお、図8は図2や図4と同様、管板11に対向する付近であって、金属管4や誘電体管5の中心軸の片側のみを示している。
【0030】
前記実施の形態1では、放電抑制部材8は絶縁材料からなる長方形状のものを用いたが、実施の形態3では放電抑制部材80は図6(a)に示すように、金属などの導電性の材料からなる長方形状の粘着部81と接触部82とから構成される。粘着部81は幅2mmから10mm程度、厚さ0.02mmから0.05mm程度で構成され、長さは高圧電極管50の円周の長さと等しくする。接触部82は厚さ0.02mmから0.05mmで、幅0.5mmから3mm、長さは8mmから15mm程度で構成され、図6(a)のA−A部断面図である図6(b)および(c)で示されるように、1回から2回折り曲げて、長さを3mmから7mm程度に調整する。接触部82を折り曲げることで、厚さを0.04mmから0.20mm程度に調整する。(図8のd=0.20mmの場合)
【0031】
本実施の形態3では、放電抑制部材80を金属材料で構成し、管板11あるいは金属管4に接触させ、放電抑制部材80が接地電位になるよう構成している。放電抑制部材80を金属部分に接触させるため、接触部82が折り曲げられた構造となっており、接触部82の厚さが0.04mmから0.20mm程度に調整できるようにしている。誘電体管5の外径と金属管4や管板11の穴の内径との差が0.10mm程度変化しても、接触部82を金属管4あるいは管板11の穴の内径部に接触させることができる。このようにして、金属製の放電抑制部材80全体が接地電位となるため、放電抑制部材80が存在する間隙の管板11に対向した部分では電界が生じないため、この部分で放電が生じない。
【0032】
なお、本実施の形態3の放電抑制部材80にはバネ性を有し、耐酸化性の強い材料が望
まれる。例えばSUSなどの金属や、SUSなどの金属にNiやZnなどのメッキを施したものを用い、粘着剤には粘着力に富んだものを用いる。
【0033】
また、図7は放電抑制部材80が取り付けられた高圧電極管50を一方向から見た側面図であるが、放電抑制部材80は、全周にわたって設けられている。このように、実施の形態3では円周方向全てに粘着部81が貼り付けられているが、上述のように粘着部81の厚さは0.02mmから0.05mm程度であり、原料ガスは接触部82がない部分を通過することができ、放電抑制部材80によって原料ガスの流れに対して生じる圧力損失は流れにほとんど影響しないほど小さい。
【0034】
この実施の形態3で示す放電抑制部材の構成は、高圧電極管50と金属管4との間隙を保つためのスペーサとしても用いることができ、管板11に対向する位置以外の、高圧電極管50と金属管4との間に数か所配置してスペーサとして用いても良い。
【0035】
以上のように、本実施の形態3では、接地電位である管板11あるいは金属管4に接触するような金属製の放電抑制部材80を用いたので、管板11に対向した間隙での放電が減少、あるいは発生せず、この部分の誘電体管5の温度上昇が抑えられるとともに、ガスの流れへの影響も少ない。
【0036】
実施の形態4
図9及び図10は、本発明の実施の形態4による構成を示す図である。図9は、実施の形態4による主要部を示す拡大断面図であり、図10は図9のA−A部の断面図である。なお、図9は、図2、図4および図8と同様、管板11に対向する付近であって、金属管4や誘電体管5の中心軸の片側のみを示している。
【0037】
本実施の形態4では、管板11に対向する誘電体管5の表面に所定の幅、例えば管板11の厚み程度の幅の金属膜あるいは金属板である金属材料84を、誘電体管5の表面周囲全体に形成あるいは貼付し、その金属材料84に導電リード85を接続したものを放電抑制部材83としている。この導電リード85が、管板11あるいは金属管4の金属部と接触することで、放電抑制部材83は接地電位となり、間隙の管板11に対向した部分では電界が生じないため、この部分で放電が生じない。
【0038】
金属材料84が金属薄膜の場合は、NiやZnなどの、酸化しても導電性のある金属メッキで構成される。また金属材料84が金属薄板の場合は、SUSなどの耐酸化性の強い金属や
、銅などの金属にNiやZnなどのメッキを施した金属を用いて構成する。
【0039】
本実施の形態4では、放電抑制部材83は、金属膜あるいは金属板である金属材料84と細い導電リード85で構成されているため、放電抑制部材83によって原料ガスの流れに対して圧力損失はほとんど生じず、流れにほとんど影響しない。
【0040】
以上のように、本実施の形態4では、金属製の放電抑制部材83を用いたので、管板11に対向した間隙で放電が発生せず、この部分の誘電体管5の温度上昇が抑えられるとともに、ガスの流れへの影響もほとんど無い。
【0041】
実施の形態5.
図11は、この発明の実施の形態5によるオゾン発生装置を示す概略構成図である。図1と同一符号は同一部分または相当する部分を示す。図1に示す実施の形態1では、オゾン化ガス出口側の空間200を仕切る管板12に対向する位置の高圧電極管50には導電膜6が形成されず、管板12に対向する部分の間隙では放電が生じない構成になっていたため、この部分に放電抑制部材8を設ける必要はなかった。しかし、より大容量のオゾン
発生装置においては、図11のように、高圧電極管を直列に2本(高圧電極管50および51)設置し、オゾン化ガス出口側の空間200を仕切る管板12に対向する位置の高圧電極管51に導電膜6を形成してこの部分の間隙でも放電が生じる構成になっている。このため、オゾン化ガス出口側の管板12に対向する間隙部分にも放電抑制部材8を設けることにより、この部分での放電エネルギーを減少させることで、高圧電極管51の誘電体管5の管板12に対向する部分の温度上昇が抑制される効果がある。
【0042】
また、以上の実施の形態1〜5では、高圧電極管として誘電体管の内壁に金属電極となる金属膜を形成したものを用いたが、誘電体管の内部に金属棒のような導電体を設けて金属電極とし、この導電体と金属管4の間に高電圧を印加する構成であっても良い。この場合は、導電体と誘電体管内壁の間の間隙でも放電が生じるため、両端部とも開放した誘電体管を用いてこの間隙にも原料ガスを流す構成にしても良く、またこの間隙に間隙の間隔を保つスペーサの役目をするクッション材を挿入しても良い。
【0043】
このように、この発明は、誘電体管外壁と金属管内壁とが所定の間隙を有するように金属管内部に誘電体管を保持し、誘電体管内部には金属電極を設けて、金属電極と金属管の間に交流高電圧を印加して、少なくとも誘電体管外壁と金属管内壁との間隙部分に流れる酸素を含む原料ガスを放電させることで酸素をオゾン化するものにおいて、管板に対向する間隙部分に放電抑制部材を設ける構成であれば良い。このような構成によれば、管板に対向する部分の誘電体管の温度上昇を従来に比較して小さくすることができ、誘電体管の温度分布を従来よりも均一にできる。その結果全体として放電電力密度を増大させることが出来、ひいては装置の小型化、あるいは大容量化を実現できるオゾン発生装置を提供することができる。
【0044】
以上の実施の形態1から5、すなわち本発明は、特に電力密度が大きくできる効果がある。すなわち、放電する部分全体における平均的な電力密度が0.2W〜0.7W/cmといった、高放電電力密度で特に効果があり、本発明によれば、このような高放電電力密度で放電させる場合でも安定な動作ができるオゾン発生装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、オゾンによる水処理などに用いるオゾンを製造するオゾン製造の分野において利用される。
【符号の説明】
【0046】
1 気密密閉容器
2 原料ガス入口
3 オゾン化ガス出口
4 金属管
5 誘電体管
6 金属膜(金属電極)
8、80、83 放電抑制部材
81 粘着部
82 接触部
84 金属材料
85 導電リード
10 交流高圧電源、
11 第一の管板(原料ガス入口側の管板)
12 第二の管板(オゾン化ガス出口側の管板)
13 2枚の管板と金属管外壁、および密閉容器内壁とで区切られた空間
20 間隙
50、51 高圧電極管
100 原料ガス入口側の空間
200 オゾン化ガス出口側の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密密閉容器と、
穴が開いた導電金属板であって、気密密閉容器の内部を3つの空間に仕切るように設けられた2枚の管板と、
この2枚の管板の上記穴同士を連結するように設けられた金属管と、
外壁と上記金属管内壁とが所定の間隙を有するように上記金属管内部に保持され、内部に金属電極を備えた誘電体管と、
上記金属管と上記金属電極との間に交流の高電圧を印加するための交流高圧電源とを備え、
上記3つの空間のうち両端にある空間の一方の空間から、少なくとも上記間隙を通って両端にある空間の他方の空間に酸素を含む原料ガスを流し、上記誘電体管内部の金属電極を高電位、上記金属管および上記管板を接地電位として、上記間隙を流れる原料ガスを放電させてオゾンを発生させるとともに、上記2枚の管板と上記金属管外壁、および密閉容器内壁とで区切られた空間に冷却水を流して冷却するように構成されたオゾン発生装置において、
上記管板に対向する部分の誘電体管の外周表面を覆う厚さの薄い金属材料である放電抑制部材を設け、この放電抑制部材を上記金属管または上記管板に電気的に接触させたことを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項2】
上記放電抑制部材には、上記金属管または上記管板に電気的に接触させる導電リードを接続したことを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生装置。
【請求項3】
上記放電抑制部材は、上記誘電体管の外周の長さと同じ長さの導電性材料の粘着部と、この粘着部から伸びる複数の導電性材料の接触部とを有し、該接触部が上記管板または上記金属管に電気的に接触することを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生装置。
【請求項4】
放電の平均的な電力密度が0.2〜0.7W/cmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のオゾン発生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−41267(P2012−41267A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226560(P2011−226560)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2009−121056(P2009−121056)の分割
【原出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】