説明

オフセット印刷方法及び装置

【課題】印刷精度を向上させる。
【解決手段】ガイドレール2に、版3と印刷対象5を走行可能に設けると共に転写機構部17を設ける。転写機構部17に、ブランケットロール10を昇降可能に設けて、回転角度を計測する回転角度検出器14を設ける。又、版3と印刷対象5の移動位置を検出する位置検出器9を設ける。版3及び印刷対象5の上面と該ブランケットロール10の回転中心Oとの間の同期用半径Rと、回転角度検出器14により計測された回転角度に基づいて求められるブランケットロール10の角速度ωとの積からブランケットロール10の同期用周速を求めて、該同期用周速と、位置検出器9の検出信号に基づいて求められる版3及び印刷対象5の移動速度vとを、ブランケットロール10の外周面を上記版3、印刷対象5の上面に接触させるときから印刷パターンの転写、再転写が終了するときまで同期させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に電極パターン(導電パターン)を印刷により形成させる場合のように、印刷対象に精細な印刷を高い印刷精度で行うために用いるオフセット印刷方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の電極パターンを印刷対象としての基板に形成する場合には、電極幅を、たとえば、10μm程度と微細なものとしたり、基板に複数の電極パターンを重ね合わせる場合の位置ずれを、たとえば、数μmに抑えたりすることが要求されることがあり、この要求を満たす装置として、近年、導電性ペーストを印刷インクとして用いた印刷技術、たとえば、凹版オフセット印刷技術を用いたオフセット印刷装置が提案されてきている。
【0003】
このようなオフセット印刷装置としては、たとえば、水平な架台の上側に、一方向に延びるガイドレールを設けると共に、該ガイドレールに沿って往復動可能な移動テーブル上に、平板状の版と印刷対象とを所定の間隔を空けて保持し、更に、上記ガイドレールの長手方向の途中位置の上方に、該ガイドレールを跨ぐようにブランケットロールを設けた構成のものがある。
【0004】
これにより、予めインキングを施した版と、印刷対象を、上記ガイドレールに沿う移動テーブルの移動に伴って上記ブランケットロールの直下位置を通過させるときに、該版と印刷対象の上面に、回転させた上記ブランケットロールを上方より順に或る転写用印圧と或る再転写用印圧で接触させることで、上記インキングが施された版から上記ブランケットロールの外周面への印刷パターンの転写(受理)処理を行わせた後、該ブランケットロールの外周面から上記印刷対象への印刷パターンの再転写(印刷)処理を行わせることで、オフセット印刷を実施できるようにしてある。
【0005】
ところで、このようなオフセット印刷装置において、高い印刷精度で微細な印刷パターンの印刷を行う場合には、版よりブランケットロールへ転写させる印刷パターンと、該ブランケットロールより印刷対象へ再転写させる印刷パターンの再現性を向上させる必要がある。このため、上記版や上記印刷対象を保持させた移動テーブルの軌道再現性を向上させる必要があり、その手段として、上記ブランケットロールの外周面における上記版や上記印刷対象に接している部分の単位時間当たりの円周移動量として得られる速度(周速)と、上記ブランケットロールに接触する上記版や上記印刷対象の単位時間当たりの移動量として得られる速度(移動速度)とを同期(一致)させることが考えられてきている。
【0006】
このような手段を備えたオフセット印刷装置としては、従来、ブランケットロールを昇降させることにより該ブランケットロールより版又は印刷対象に付与する転写用印圧又は再転写用印圧を設定する印刷圧力調整装置と、該印刷圧力調整装置により転写用印圧又は再転写用印圧を設定されたブランケットロールの周速と版又は印刷対象を保持させた移動テーブルの移動速度とを同期させる制御装置とを備えるようにしたものが提案されてきている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
又、従来のオフセット印刷装置の他の例としては、上記オフセット印刷装置におけるブランケットロールの両端部にピニオンをそれぞれ設けると共に、転写用印圧又は再転写用印圧を版又は印刷対象に作用させるときに上記ピニオンに噛合うラックを移動テーブルに設けるようにして、ブランケットロールの周速と版又は印刷対象を保持させた移動テーブルの移動速度とを同期させるようにしたものが提案されてきている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−185586号公報
【特許文献2】特開2000−168031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、オフセット印刷における転写処理又は再転写処理の際、ブランケットロールより版又は印刷対象に対して転写用印圧又は再転写用印圧を付与するためには、上記ブランケットロールを、上記版又は印刷対象の上面に接触している状態から下向きに付勢して、該ブランケットロールを上記版又は印刷対象の上面に対して上方より押し付ける必要がある。このため、ブランケットロールの外周部にはブランケットが設けてあり、該ブランケットは弾性体であるため、上記転写用印圧又は再転写用印圧の付与に伴い、上記ブランケットの外周面における版又は印刷対象の上面に接触する部分では、上記ブランケットが潰れるように弾性変形する。
【0010】
したがって、上記ブランケットロールの外周面を版又は印刷対象の上面に上方より接触させる方式のオフセット印刷を実施する場合には、上記ブランケットロールの外周面を版又は印刷対象の上面に上方より接触させるとき(接触させる瞬間)と、該ブランケットロールより版又は印刷対象に対して転写用印圧又は再転写用印圧を付与させている状態とでは、上記各印圧の付与に伴ってブランケットに生じる上記弾性変形の潰れ代の分、該ブランケットロールの回転中心から、該ブランケットロールの外周面における上記版又は印刷対象の上面に接触している部分までの距離が変化するというのが実状である。
【0011】
そのために、上記転写処理又は再転写処理を実施するために必要とされるブランケットロールより版又は印刷対象に対して転写用印圧又は再転写用印圧を付与している状態、すなわち、上記ブランケットに上記各印圧の付与に伴う弾性変形の潰れ代が生じている状態のときのブランケットロールの回転中心から該ブランケットロールの外周面における上記版又は印刷対象の上面に接触している部分までの距離を回転半径とした場合の該接触部分の周速を、上記版又は印刷対象の移動速度に同期させるようにしても、上記ブランケットロールの外周面が版又は印刷対象の上面に接触するとき(接触する瞬間)から、該ブランケットロールを下向きに付勢して該ブランケットロールより版又は印刷対象に対して上記転写用印圧又は再転写用印圧が付与されるようになるまでの間は、上記ブランケットの弾性変形の潰れ代が、上記転写用印圧又は再転写用印圧を付与した状態とは相違するため、上記版又は印刷対象の移動速度との同期ずれが生じるというのが実状である。
【0012】
そのために、上記ブランケットロールの外周面が版又は印刷対象の上面に接触するとき(接触する瞬間)から、該ブランケットロールを下向きに付勢して該ブランケットロールより版又は印刷対象に対して上記転写用印圧又は再転写用印圧が付与されるようになるまでの間は、上記同期ずれに起因して、上記版又は印刷対象を保持させた移動テーブルに対し、該版又はブランケットに接触させたブランケットロールより外力が作用してしまい、該移動テーブル(版及び印刷対象)の軌道再現性が低下するという問題が生じてしまう。
【0013】
上記特許文献1に記載されたものは、ブランケットロールの高さ位置を、印刷圧力調整装置により転写用印圧又は再転写用印圧を版又は印刷対象に作用させるための高さ位置に予め配置した状態で、該ブランケットロールの周速と、版又は印刷対象を保持させた移動テーブルの移動速度とを同期させてから、上記版から上記ブランケットロールの外周面への印刷パターンの転写処理と、該ブランケットロール外周面から上記印刷対象への印刷パターンの再転写処理を行うようにするものであり、回転させてあるブランケットロールを、移動している移動テーブルに保持させた版の上面及び印刷対象の上面に上方より接触させるようにするものではない。したがって、上記したようなブランケットロールの外周面を版や印刷対象の上面に上方から接触させる方式のオフセット印刷装置で生じる問題を解決できるものではなく、又、その解決手法を示唆するものでもない。
【0014】
上記特許文献2に記載されたものは、ブランケットロールの高さ位置を、転写用印圧又は再転写用印圧を版又は印刷対象に作用させる高さ位置に設定したときに、上記ブランケットロールの両端部に設けたピニオンを、移動テーブルに設けたラックに噛合わせることにより、上記ブランケットロールの周速と版又は印刷対象を保持させた移動テーブルの移動速度とを同期させるものである。したがって、上記ブランケットロールの外周面が版の上面又は印刷対象の上面に接触してから、版又は印刷対象に転写用印圧又は再転写用印圧を作用させるまでの間は、上記ブランケットロールの両端部に設けたラックと移動テーブルに設けたピニオンは噛合っていないことから、上記ブランケットロールの周速と版及び印刷対象を保持させた移動テーブルの移動速度とは同期していないことになる。よって、上記ブランケットロールから版又は印刷対象を介して移動テーブルに外力を作用させてしまい、移動テーブル(版及び印刷対象)の軌道再現性を確保することができるものではない。
【0015】
そこで、本発明は、ブランケットロールの外周面における版や印刷対象に接触する部分の周速と版及び印刷対象の移動速度とを、ブランケットロールの外周面が版の上面及び印刷対象の上面に接触するときから転写及び再転写が終了するまで同期させることにより、版及び印刷対象の軌道再現性を向上させて、印刷精度を向上させるようにするオフセット印刷方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、一方向に移動する版の上面に、回転させたブランケットロールの外周面を上方より転写用印圧で接触させて、上記版から上記ブランケットロールへの印刷パターンの転写処理を行った後、上記回転させたブランケットロールの外周面を、上記一方向に移動する印刷対象の上面に上方より再転写用印圧で接触させて、上記ブランケットロールから上記印刷対象へ印刷パターンの再転写処理を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記版の上面と上記ブランケットロールの回転中心との間を版用の同期用半径として、該版用の同期用半径と上記ブランケットロールの角速度との積から求められる同期用周速を、該ブランケットロールの外周面を上記版の上面に接触させるときから上記転写処理が終了するときまで、上記版の移動速度に同期させるようにすると共に、上記印刷対象の上面と上記ブランケットロールの回転中心との間を印刷対象用の同期用半径として、該印刷対象用の同期用半径と上記ブランケットロールの角速度との積から求められる同期用周速を、該ブランケットロールの外周面を上記印刷対象の上面に接触させるときから上記再転写処理が終了するときまで、該印刷対象の移動速度に同期させるようにする構成を有するオフセット印刷方法とする。
【0017】
又、請求項2に対応して、ブランケットロールの同期用周速を、該ブランケットロールの外周面を版の上面に接触させるときから、印刷パターンの転写処理を経て、該ブランケットロールの外周面を上記版の上面から離反させるときまで、該版の移動速度に同期させるようにすると共に、該ブランケットロールの外周面を印刷対象の上面に接触させるときから、印刷パターンの再転写を経て、上記ブランケットロールの外周面を上記印刷対象の上面から離反させるときまで、該印刷対象の移動速度に同期させるようにする構成とする。
【0018】
更に又、請求項3に対応して、一方向に移動する版の上面に、回転させたブランケットロールの外周面を昇降駆動機構により上方より転写用印圧で接触させて、上記版から上記ブランケットロールへの印刷パターンの転写処理を行った後、上記回転させたブランケットロールの外周面を、上記昇降駆動機構により上記一方向に移動する印刷対象の上面に上方より再転写用印圧で接触させて、上記ブランケットロールから上記印刷対象へ印刷パターンの再転写処理を行うことができるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記ブランケットロールの回転角度を計測する回転角度検出器と、上記版と上記印刷対象の移動位置を検出する位置検出器とを備えると共に、上記版の上面とブランケットロールの回転中心との間の版用の同期用半径と、上記回転角度検出器により計測された回転角度に基づいて求められるブランケットロールの角速度との積から同期用周速を求めて、該同期用周速と、上記位置検出器の検出信号に基づいて求められる版の移動速度とを同期させる機能と、上記印刷対象の上面とブランケットロールの回転中心との間の印刷対象用の同期用半径と、上記回転角度検出器により計測された回転角度に基づいて求められるブランケットロールの角速度との積から同期用周速を求めて、該同期用周速と、上記位置検出器の検出信号に基づいて求められる印刷対象の移動速度とを同期させる機能とを有する制御器を備えるようにしたオフセット印刷装置とする。
【0019】
又、請求項4に対応して、上記請求項3において、昇降駆動機構によるブランケットロールの昇降距離を計測する昇降距離センサを設けて、制御器に、各同期用半径を、ブランケットロール退避高さ位置における上記ブランケットロールの回転中心と版の上面及び印刷対象の上面との間の距離と、上記昇降距離センサにより計測された昇降距離とに基づいて求める機能を備えるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のオフセット印刷方法及び装置によれば、一方向に移動する版の上面に、回転させたブランケットロールの外周面を上方より転写用印圧で接触させて、上記版から上記ブランケットロールへの印刷パターンの転写処理を行った後、上記回転させたブランケットロールの外周面を、上記一方向に移動する印刷対象の上面に上方より再転写用印圧で接触させて、上記ブランケットロールから上記印刷対象へ印刷パターンの再転写処理を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記版の上面と上記ブランケットロールの回転中心との間を版用の同期用半径として、該版用の同期用半径と上記ブランケットロールの角速度との積から求められる同期用周速を、該ブランケットロールの外周面を上記版の上面に接触させるときから上記転写処理が終了するときまで、上記版の移動速度に同期させるようにすると共に、上記印刷対象の上面と上記ブランケットロールの回転中心との間を印刷対象用の同期用半径として、該印刷対象用の同期用半径と上記ブランケットロールの角速度との積から求められる同期用周速を、該ブランケットロールの外周面を上記印刷対象の上面に接触させるときから上記再転写処理が終了するときまで、該印刷対象の移動速度に同期させるようにする構成を有するオフセット印刷方法、及び、一方向に移動する版の上面に、回転させたブランケットロールの外周面を昇降駆動機構により上方より転写用印圧で接触させて、上記版から上記ブランケットロールへの印刷パターンの転写処理を行った後、上記回転させたブランケットロールの外周面を、上記昇降駆動機構により上記一方向に移動する印刷対象の上面に上方より再転写用印圧で接触させて、上記ブランケットロールから上記印刷対象へ印刷パターンの再転写処理を行うことができるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記ブランケットロールの回転角度を計測する回転角度検出器と、上記版と上記印刷対象の移動位置を検出する位置検出器とを備えると共に、上記版の上面とブランケットロールの回転中心との間の版用の同期用半径と、上記回転角度検出器により計測された回転角度に基づいて求められるブランケットロールの角速度との積から同期用周速を求めて、該同期用周速と、上記位置検出器の検出信号に基づいて求められる版の移動速度とを同期させる機能と、上記印刷対象の上面とブランケットロールの回転中心との間の印刷対象用の同期用半径と、上記回転角度検出器により計測された回転角度に基づいて求められるブランケットロールの角速度との積から同期用周速を求めて、該同期用周速と、上記位置検出器の検出信号に基づいて求められる印刷対象の移動速度とを同期させる機能とを有する制御器を備えるようにしたオフセット印刷装置としてあるので、ブランケットロールの外周面を上方より上記版の上面に接触させてから、該版に所要の転写用印圧を作用させて、上記ブランケットロールに対する印刷パターンの転写が終了するまでの間、上記ブランケットロールから上記版に、外力を作用させてしまうのを防止することができると共に、ブランケットロールの外周面を上方より上記印刷対象の上面に接触させてから、該印刷対象に所要の再転写用印圧を作用させて、上記ブランケットロールに対する印刷パターンの再転写が終了するまでの間、上記ブランケットロールから上記印刷対象に、外力を作用させてしまうのを防止することができる。よって、上記版及び印刷対象の軌道再現性を確保することができ、印刷精度を向上させることができる。又、上記ブランケットロールと上記版及び印刷対象との間の摩擦による上記ブランケットロールの損傷を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のオフセット印刷方法及び装置の実施の一形態を示す概略側面図である。
【図2】図1のオフセット印刷装置における転写機構部を拡大して示す一部切断側面図である。
【図3】図2のA−A方向矢視図である。
【図4】図3のB−B方向矢視図である。
【図5】図1のオフセット印刷装置に備えられる制御器の制御構成を示す概要図である。
【図6】図1のオフセット印刷装置によりオフセット印刷を行う場合のタイムチャートを示すもので、(イ)はブランケットロールの同期用半径の変化を示す図、(ロ)はブランケットロールの角速度の変化を示す図、(ハ)は版テーブル及び印刷対象テーブルの移動速度(テーブル移動速度)を示す図である。
【図7】図6の各時刻でのブランケットロールと版テーブルの状態を示すもので、(イ)は時刻T0での状態を示す概略図、(ロ)は時刻T1から時刻T2までの間の状態を示す概略図、(ハ)は時刻T2での状態を示す概略図、(ニ)は時刻T2から時刻T3までの間の状態を示す概略図である。
【図8】図6におけるT4以降の各時刻でのブランケットロールと版テーブルの状態を示すもので、(イ)は時刻T4での状態を示す概略図、(ロ)は時刻T5での状態を示す概略図、(ハ)は時刻T6での状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1乃至図8(イ)(ロ)(ハ)は本発明のオフセット印刷方法及び装置の実施の一形態を示すものである。
【0024】
すなわち、先ず、図1乃至図5は本発明のオフセット印刷方法に用いる本発明のオフセット印刷装置を示すもので、水平な架台1の上側に、一方向に延びるガイドレール2、たとえば、2本一組のガイドレール2を設けて、該ガイドレール2上に、凹版等の版3を上面に取り付けて保持させる版テーブル4と、基板等の印刷対象5を上面に取り付けて保持させる印刷対象テーブル6とを、上記ガイドレール2の長手方向(X軸方向)の一端側(図1における左側)より順に並べて配置した状態で、それぞれ個別のガイドブロック7を介してスライド可能に取り付けるようにする。又、上記版テーブル4と上記印刷対象テーブル6には、リニアモータ等のテーブル駆動装置8をそれぞれ設けるようにしてあり、該テーブル駆動装置8により、上記版テーブル4と上記印刷対象テーブル6とを、上記ガイドレール2に沿って個別にそれぞれ走行(移動)できるようにしてある。
【0025】
又、上記架台1上には、上記ガイドレール2と平行に位置検出器としてのリニアスケール9を設けて、該リニアスケール9により、上記版テーブル4及び上記印刷対象テーブル6のガイドレール2の長手方向に沿う位置、すなわち、X軸方向の所要の点を基準とするX軸方向の絶対位置を共に検出できるようにしてある。
【0026】
更に、上記架台1上におけるガイドレール2の長手方向中間部に対応する個所には、上記ガイドレール2の上方にて該ガイドレール2の長手方向と直交する水平方向(Y軸方向)に延びるように配置したブランケットロール10と、該ブランケットロール10を左右方向(ガイドレール2の長手方向と直交する方向)両端に設けた回転軸11a,11bを介して回転自在に保持するロール支持フレーム12と、上記ブランケットロール10を回転駆動するために該ブランケットロール10の一方の回転軸11aに連結した回転駆動装置としての回転用駆動モータ13と、該回転用駆動モータ13により回転駆動される上記ブランケットロール10の回転角度を計測するための回転角度検出器としてのエンコーダ14と、上記ロール支持フレーム12と一体に上記ブランケットロール10を昇降させるための昇降駆動機構15と、該昇降駆動機構15により昇降される上記ブランケットロール10について、或る基準高さ位置、たとえば、ブランケットロール待避高さ位置からの昇降距離を測定するための昇降距離センサ16とを備えた転写機構部17を設ける。
【0027】
更に又、上記ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaと上記版3や印刷対象5の上面高さ位置Zbとの間の鉛直方向距離を、ブランケットロール10の仮想の同期用の半径(以下、単に同期用半径と云う)Rとして設定し、オフセット印刷における転写処理や再転写処理を行う際に、上記同期用半径Rと上記エンコーダ14の計測値に基づいて求められる上記ブランケットロール10の角速度ωとの積として算出される値、すなわち、上記ブランケットの回転中心Oを中心とする上記同期用半径Rの仮想の円周面の周方向移動速度((R・ω)、以下、同期用周速と云う)と、上記リニアスケール9の検出信号に基づいて求められる上記版3を保持させた版テーブル4や上記印刷対象5を保持させた印刷対象テーブル6の移動速度vとを、常に同期(一致)させるように(v=R・ω)した状態で、上記ブランケットロール10を上記版テーブル4上の版3や印刷対象テーブル6上の印刷対象5の上面に上方より接触させる工程と、該版テーブル4上の版3や印刷対象テーブル6上の印刷対象5の上面に接触した状態のブランケットロール10を下向きに付勢して、該ブランケットロール10より版3や印刷対象5に或る転写用印圧や再転写用印圧を付与させる工程を行わせる機能を有する制御器18を備えて、本発明のオフセット印刷装置を構成する。
【0028】
詳述すると、上記転写機構部17には、図1乃至図4に示すように、上記ガイドレール2の長手方向中間部の左右外側に該ガイドレール2の長手方向に所要間隔を隔てて2本ずつ設けた所要高さ寸法を有するコラム19と、上記ガイドレール2の長手方向中間部の所要寸法上方を横切るように配置して上記各コラム19の頂部同士を一体に連結する梁部材20とを備えてなる門型フレーム21を設けるようにしてある。
【0029】
又、上記ロール支持フレーム12は、一対のベアリングハウジング22a,22bを左右方向に延びる取付部材23の左右両端部にそれぞれ一体に連結した構成を有するようにして、該ロール支持フレーム12の各ベアリングハウジング22a,22bに、上記ブランケットロール10の両端に設けた回転軸11a,11bを、ベアリング24を介してそれぞれ回転自在に支持させるようにすると共に、上記ロール支持フレーム12の左右両端部の各ベアリングハウジング22a,22bを、上記2本のコラム19の間に配置して、上記各コラム19に、該各コラム19にそれぞれ設けた上下方向のリニアガイド25を介して上下方向に移動可能に取り付けるようにしてある。
【0030】
更に、上記門型フレーム21の梁部材20における上記ロール支持フレーム12の各ベアリングハウジング22a,22bの上方となる位置に、該各ベアリングハウジング22a,22b、及び、取付部材23を介して上記ロール支持フレーム12と一体に上記ブランケットロール10を昇降させるための昇降駆動機構15として、たとえば、以下に示す如き構成のボールねじ機構15(便宜上、上記昇降駆動機構15と同じ符号が付してある)をそれぞれ設けるようにしてある。
【0031】
該各ボールねじ機構15は、上記梁部材20における上記ロール支持フレーム12の各ベアリングハウジング22a,22bの上方となる位置に、上下方向に所要寸法延びるねじ軸26の上端部寄り部分を、軸受27を介して回転自在に取り付けると共に、上記梁部材20上における上記各軸受27の上方となる位置に、昇降駆動装置としてのサーボモータ等の如き昇降用駆動モータ28を接続したギアボックス29を、支持部材30を介して取り付け、且つ該各ギアボックス29の出力側に、上記各ねじ軸26における各軸受27よりも上方へ突出する突出端部を連結し、更に、上記各ねじ軸26の下部にそれぞれ螺合させるナット部材31を、上記ロール支持フレーム12の取付部材23に設置してなる構成としてある。
【0032】
これにより、上記各ボールねじ機構15における上記各昇降用駆動モータ28の運転により、上記各ギアボックス29を介して上記各ねじ軸26を回転駆動させることで、上記各ナット部材31を介して上記ロール支持フレーム12と一体に、上記ブランケットロール10を昇降させることができるようにしてある。
【0033】
なお、上記各ボールねじ機構15による上記ブランケットロール10の昇降範囲は、その上端側のストロークエンドでは、該ブランケットロール10を前述のブランケットロール退避高さ位置まで引き上げて配置することで、該ブランケットロール10の外周面の下端部の高さ位置を、上記版テーブル4上に保持された版3や上記印刷対象テーブル6上に保持された印刷対象5の上面高さ位置Zbより或る寸法上方に離反させることができるようにしてある。これにより、ブランケットロール10を上記ブランケットロール退避高さ位置まで上昇させた状態では、版3を保持させた状態の版テーブル4や、印刷対象5を保持させた印刷対象テーブル6を、該ブランケットロール10に干渉することなく、その下方を通過させることができるようにしてある。
【0034】
一方、上記各ボールねじ機構15による上記ブランケットロール10の昇降範囲の下端側のストロークエンドでは、上記ブランケットロール10の外周面の下端部が上記版テーブル4上に保持させた版3や印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5の上面高さ位置Zbよりもやや下方に配置されるようになるまで、該ブランケットロール10を下降させることができるように設定してある。これにより、上記各ボールねじ機構15では、ブランケットロール10の外周面の下端部がその直下に配置された版テーブル4上に保持された版3や印刷対象テーブル6上に保持された印刷対象5に接触する状態から、該ブランケットロール10を、下向きに付勢することができるようにしてあり、この付勢により、該ブランケットロール10を上記版テーブル4上に保持された版3や印刷対象テーブル6上に保持された印刷対象5の上面に対し押し付けて、該版3や印刷対象5に対して転写用印圧や再転写用印圧を付与することができるようにしてある。
【0035】
更に、上記各ボールねじ機構15には、それぞれのナット部材31と取付部材23との取り合い部分に、印圧計測センサとしてのロードセル33を個別に備えるようにしてある。これにより、上記ブランケットロール10より版3や印刷対象5に対して転写用印圧や再転写用印圧を付与するときに、該各印圧の反力が、該ブランケットロール10よりロール支持フレーム12及び取付部材23と上記各ロードセル33とを介して上記各ボールねじ機構15側に伝えられるようにしてあり、この際、上記各印圧と一致するその反力の大きさを上記各ロードセル33で計測することにより、上記ブランケットロール10より版3や印刷対象5に対して付与する上記各印圧を計測することができるようにしてある。
【0036】
更に又、上記ブランケットロール10の昇降距離を計測するための昇降距離センサ16を、たとえば、上記各昇降用駆動モータ28にそれぞれ付設させたエンコーダ16(便宜上、上記昇降距離センサ16と同じ符号が付してある)とするようにしてある。これにより、上記各エンコーダ16によって検出される各昇降用駆動モータ28の回転量の信号を基に、上記各ギアボックス29を介した上記各ねじ軸26の回転量を算出できるようにして、この各ねじ軸26の回転量に応じて、該各ねじ軸26に螺合させた上記各ナット部材31と一体に昇降する上記ブランケットロール10の上記ねじ軸26の長手方向(上下方向)に沿う移動距離、すなわち、ブランケットロール10の昇降距離を計測することができるようにしてある。
【0037】
上記ロール支持フレーム12の一方のべアリングハウジング22aの外側面には、回転用駆動モータ13を接続した減速機32を取り付けると共に、該減速機32の図示しない出力軸に、上記一方のベアリングハウジング22aに支持させたブランケットロール10の一方の回転軸11aを連結するようにしてあり、これにより、上記回転用駆動モータ13の運転により、上記減速機32を介して上記ブランケットロール10を回転駆動させることできるようにしてある。又、上記回転用駆動モータ13には、回転角度検出器としてのエンコーダ14を付設するようにしてあり、これにより、該エンコーダ14によって検出される上記回転用駆動モータ13の回転量の信号を基に、上記ブランケットロール10の回転角度(周方向の或る1個所を基準とする回転角度)を計測することができるようにしてある。
【0038】
上記制御器18は、図5にその制御構成を示す如く、上記架台1上に設けたリニアスケール9より入力される上記版テーブル4と上記印刷対象テーブル6のそれぞれのテーブル位置検出信号を基に、該版テーブル4と印刷対象テーブル6のテーブル駆動装置8にそれぞれ指令を与えて上記各テーブル4,6の位置と移動方向(走行方向)と移動速度(走行速度)vを制御できるようにしたテーブル走行制御部18aを備える。
【0039】
更に、上記制御器18は、上記転写機構部17の制御を行うためのロール回転制御部18bとロール昇降制御部18cを備える。
【0040】
上記ロール回転子制御部18bは、上記ブランケットロール10の回転用駆動モータ13に付設したエンコーダ14より入力される上記ブランケットロール10の回転角度の計測信号を基に、該ブランケットロール10の角速度(回転速度)ωと角度姿勢を求めて検出する機能と、上記回転用駆動モータ13へ指令を与えて上記ブランケットロール10の角速度ωと角度姿勢を制御する機能を備えるようにしてある。
【0041】
上記ロール昇降制御部18cは、上記各昇降用駆動モータ28に付設したエンコーダ16より入力される信号を基に、或る基準高さ位置としての上記ブランケットロール退避高さ位置を基準として、ブランケットロール10の昇降距離を計算して求める機能と、該求められたブランケットロール10の昇降距離を基に、該ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaを検出する機能と、該検出されたブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaの情報を基に、上記各ボールねじ機構15の昇降用駆動モータ28へ指令を与えて該ブランケットロール10の昇降を制御する機能を備えるようにしてある。更に、該ロール昇降制御部18cには、印圧計測センサとしての上記ロードセル33より入力される信号、すなわち、ブランケットロール10を版3や印刷対象5に接触させて転写用印圧や再転写用印圧を付与するときの該各印圧の計測信号を基に、後述するように上記各ボールねじ機構15の昇降用駆動モータ28へ指令を与えて、上記ブランケットロール10の昇降を制御する機能も備えるようにしてある。
【0042】
なお、上記制御器18では、上記テーブル走行制御部18aと上記ロール回転制御部18bと上記ロール昇降制御部18cとを相互に同期制御することができるようにしてあるものとする。
【0043】
なお、本発明のオフセット印刷装置には、オフセット印刷を行う必要上、図1に示すように、上記架台1上におけるガイドレール2の長手方向一端部と対応する位置に、該ガイドレール2の長手方向一端部まで上記版テーブル4を移動させて待機させることができるようにしてあると共に、該版テーブル4上に保持させる版3の交換を行うことができるようにした版テーブル待機エリア34を備える。又、上記架台1上におけるガイドレール2の長手方向他端部と対応する位置には、該ガイドレール2の長手方向他端部まで上記印刷対象テーブル6を移動させて待機させた状態で該印刷対象テーブル6に対して新たな印刷対象5の取り付けと再転写(印刷)処理後の印刷対象5の取外しを行うための印刷対象設置エリア35を備えるようにしてある。更に、上記架台1上における上記転写機構部17、版テーブル待機エリア34、及び、印刷対象設置エリア35のいずれとも干渉しない個所、たとえば、上記架台1上における上記版テーブル待機エリア34と上記転写機構部17との間に、上記版テーブル4上に保持させた版3に対してインキングを行うためのインキング装置36を装備した構成としてある。
【0044】
次に、上記制御器18による具体的な制御内容に即して本発明のオフセット印刷方法について詳述する。
【0045】
すなわち、上記構成としてある本発明のオフセット印刷装置を使用してオフセット印刷を行う場合は、予め、上記転写機構部17におけるボールねじ機構15によりブランケットロール退避高さ位置に配置させた状態のブランケットロール10について、該ブランケットロール10の外周面の下端と、その下方に配置させた版テーブル4上の版3や印刷対象テーブル6上の印刷対象5の上面との間に形成される隙間の寸法を、たとえば、ブロックゲージを用いて精密に計測しておき、図7(イ)に示すように、その計測値Zcに、上記ブランケットロール10の設計データに基づくか、あるいは、ブランケットロール10の製造後に実測することで既知となっているロール半径寸法rを足すことで、上記版テーブル4上に保持させた版3や印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5の上面高さ位置Zbから、上記基準高さ位置Zoとなるブランケットロール退避高さ位置に配置させた状態のブランケットロール10の回転中心Oまでの鉛直方向距離Hを求めて、上記制御器18に記憶させておく。なお、この際、上記版テーブル4上に保持させる版3の上面高さ位置Zbと、印刷対象テーブル6上に保持させる印刷対象5の上面高さ位置Zbが相違している場合は、それぞれの上面高さ位置Zbから、上記基準高さ位置Zoであるブランケットロール退避高さ位置に配置させた状態のブランケットロール10の回転中心Oまでの鉛直方向距離Hを個別に求めておくようにすればよい。
【0046】
又、版テーブル待機エリア34で版テーブル4上に保持させた版3を、該版テーブル4の走行によりインキング装置36へ送って該版3に対するインキングを行った後、該インキングされた版3を保持した版テーブル4を、上記転写機構部17にてブランケットロール退避高さ位置に配置させた状態のブランケットロール10の下方を通して、上記転写機構部17よりも、オフセット印刷時に上記版3を保持した版テーブル4や印刷対象5を保持した印刷対象テーブル6を上記転写機構部17におけるブランケットロール10の下方で走行させる方向(矢印a方向、以下、印刷時テーブル走行方向と云う)の上流側に予め設定してある印刷時の走行開始位置まで移動させておく。一方、印刷対象テーブル6には、印刷対象設置エリア35で新たに印刷を行うべき印刷対象5を載置して保持させておく。
【0047】
更に、上記制御器18には、オフセット印刷における転写処理時に上記ブランケットロール10より版テーブル4上の版3に対して付与させるべき転写用印圧と、再転写処理時に上記ブランケットロール10より印刷対象テーブル6上の印刷対象5に対して付与させるべき再転写用印圧に関する設定値を入力して記憶させておくようにする。
【0048】
この状態で、先ず、図6(ハ)及び図7(イ)に示す如く、時刻T0で、上記制御器18のテーブル走行制御部18aの機能により、テーブル駆動装置8に指令を与えて、上記印刷時走行開始位置に配置してある上記インキングされた版3を保持させた版テーブル4について、印刷時テーブル走行方向aへの一定の移動速度vでの走行を開始させると共に、上記制御器18のロール回転制御部18bの機能により、上記転写機構部17の上記回転用駆動モータ13に指令を与えて、上記ブランケットロール10の回転を開始させる。このとき、上記制御器18では、上記テーブル走行制御部18aと上記ロール回転制御部18bとの同期制御により、上記各昇降用駆動モータ28に付設したエンコーダ16より入力される信号に基づいて求められる図6(イ)に示す如きブランケットロール10における同期用半径Rと、上記ブランケットロール10の回転用駆動モータ13に付設したエンコーダ14より入力される信号を基に求められる図6(ロ)に示す如き上記ブランケットロール10の角速度ωとの積で算出される同期用周速(R・ω)を、図6(ハ)に示すように一定としてある上記版テーブル4の移動速度vに一致させるようにするために、上記ブランケットロール10の角速度ωを、ω=v/Rで求められる値に常に一致させる制御を開始するようにする。
【0049】
なお、上記時刻T0では、図6(イ)及び図7(イ)に示すように、上記ブランケットロール10はブランケットロール退避高さ位置に配置されているため、ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaは、上述したように設定してあるブランケットロール10の基準高さ位置Zoに一致している。よって、この時刻T0での上記ブランケットロール10の同期用半径Rは、上記制御器18に予め記憶させてある版テーブル4上の版3の上面高さ位置Zbから上記基準高さ位置Zoまでの鉛直方向距離Hと一致している。したがって、上記時刻T0では、制御器18は、上記ブランケットロール10の角速度ωを、ω=v/R=v/Hで求められる値に制御するようにする。
【0050】
次に、制御器18は、図6(イ)に示す如く、時刻T1で、上記ロール昇降制御部18cの機能により、各昇降用駆動モータ28による上記ブランケットロール10の上記基準高さ位置Zoからの下降を開始させる。
【0051】
これにより、図7(ロ)に示すように、上記ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaが上記基準高さ位置Zoから下降するようになることから、該ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaの上記基準高さ位置Zoからの移動量を昇降移動量zとすると、上記ブランケットロール10の同期用半径Rは、上記版テーブル4上の版3の上面高さ位置Zbから上記基準高さ位置Zoまでの鉛直方向距離Hから上記昇降移動量zを引くことで求められるようになる(R=H−z)。よって、上記ブランケットロール10の同期用半径Rの値は徐々に小さくなる。
【0052】
この状態のときにも、上記制御器18は、上記ブランケットロール10の同期用半径Rと角速度ωとの積で算出される同期用周速(R・ω)を、上記版テーブル4の移動速度vに一致させる制御を継続しているため、該制御器18により、上記ブランケットロール10の角速度ωが、ω=v/R=v/(H−z)で求められる値に一致するように制御される。
【0053】
よって、図6(イ)に示すように、上記時刻T1の後、上記ブランケットロール10の下降に伴って同期用半径Rが小さくなると、図6(ロ)に示すように、該ブランケットロール10の角速度ωは、ω=v/Rの条件を満たすように徐々に増加されるようになる。なお、上記ブランケットロール10の下降速度を一定として該ブランケットロール10の同期用半径Rが線形で変化する場合、該同期用半径Rに反比例する上記ブランケットロール10の角速度ωの変化は線形とならないが、図6(ロ)では図示する便宜上、上記ブランケットロール10の角速度ωの変化についても線形で示してある。
【0054】
その後、上記ブランケットロール10の下降を継続して行うことで、図6(イ)(ロ)(ハ)に示す時刻T2にて図7(ハ)に示すように、該ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaの上記基準高さ位置Zoからの昇降移動量zが、上述したブランケットロール10をブランケットロール退避高さ位置に配置させた状態のときにその外周面の下端と版テーブル4上の版3の上面高さ位置との間に形成させてあった隙間の計測値Zcと一致するようになると、上記ブランケットロール10の同期用半径Rが該ブランケットロールの半径rに一致する(R=H−z=(r+Zc)−Zc=r)。よって、上記ブランケットロール10の外周面の下端部が、上記版テーブル4上に保持させてある版3の印刷時テーブル走行方向a先端側の端縁部に上方より接触するようになる。
【0055】
なお、上記のようにブランケットロール10の下降は制御によって行わせるものであり、よって上記時刻T0から、上記下降させるブランケットロール10の昇降移動量zが上記計測値Zcと一致するようになる時刻T2までの経過時間は予め分かっている。このため、上記一定の移動速度vで移動する上記版テーブル4の時刻T0から時刻T2までの移動距離を予め求めて、該移動距離分、上記版テーブル4上に保持させてある版3の印刷時テーブル走行方向a先端側の端縁部がブランケットロール10の直下位置より印刷時テーブル走行方向aの上流側へ離れる位置に、上記版テーブル4の印刷時走行開始位置を設定するようにすることで、上記ブランケットロール10の外周面の下端部を、上記版テーブル4上に保持させてある版3の印刷時テーブル走行方向a先端側の端縁部に対して上方から接触させる制御を制御器18により行うようにしてある。
【0056】
上記時刻T2の時点においても、上記制御器18は、上記ブランケットロール10の同期用半径Rと角速度ωとの積で算出される同期用周速(R・ω)を、上記版テーブル4の移動速度vに一致させる制御を継続している。このため、上記時刻T2では、ブランケットロール10の角速度ωは、制御器18により、ω=v/R=v/rで求められる値に一致するように制御される。よって、時刻T2では、上記ブランケットロール10の上記のように制御された角速度ωによる同期用周速(R・ω)と、該ブランケットロール10の外周面の周速(r・ω)が一致することから、該時刻T2で、ブランケットロール10の外周面の下端部が上記版テーブル4上の版3の上面に上方より接触するとき(接触する瞬間)には、ブランケットロール10の外周面の周速と、上記版テーブル4の移動速度vに一致する版3の移動速度が確実に同期された状態となる。
【0057】
その後、上記制御器18は、上記ブランケットロール10より版テーブル4上の版3に対して転写用印圧を付与するために、ロール昇降制御部18cの機能により、各昇降用駆動モータ28により上記ブランケットロール10を版テーブル4上の版3の上面に接触した状態より下向きに付勢するようにする。この下向きの付勢により、上記ブランケットロール10では外周部に設けてあるブランケット(図示せず)の周方向下端部が、上記版テーブル4上の版3の上面に対して上方より押し付けられて潰されるように弾性変形させられることに伴い、該ブランケットロール10の回転中心Oの位置が、図6(イ)及び図7(ニ)に示すように、更に下降させられるようになる。
【0058】
このため、図7(ニ)に示すように、上記ブランケットロール10にて、上記版テーブル4上の版3の上面に対して上方より押し付けられる上記ブランケットが潰れ代Δzで潰されるように弾性変形した状態では、上記ブランケットロール10の昇降移動量zが、上記ブランケットロール退避高さ位置に配置させた状態のブランケットロール10の外周面の下端と版テーブル4上の版3の上面高さ位置Zbとの間に形成させてあった隙間の計測値Zcと、上記ブランケットロール10におけるブランケットの潰れ代Δzの和と等しくなる。よって、このときの上記ブランケットロール10の同期用半径Rは、前述したH=r+Zcの関係に基づいて、R=H−z=(r+Zc)−(Zc+Δz)=r−Δzで算出される。よって、上記ブランケットロール10の同期用半径Rは、上記ブランケットロール10の半径rより上記ブランケットの潰れ代Δzを引いた値、すなわち、該ブランケットロール10の回転中心Oから、該ブランケットロール10の外周面の下端部にて、上記潰れ代Δzでブランケットが弾性変形した状態で上記版テーブル4上の版3に接触している部分までの寸法(r−Δz)になる。
【0059】
この状態のときにも、上記制御器18は、上記ブランケットロール10の同期用半径Rと角速度ωとの積で算出される同期用周速(R・ω)を、上記版テーブル4の移動速度vに一致させる制御を継続しているため、該制御器18により、上記ブランケットロール10の角速度ωが、ω=v/R=v/(r−Δz)で求められる値に一致するように制御される。
【0060】
よって、上記のようにブランケットロール10を下向きに付勢して版テーブル4上の版3の上面に対して押し付けた状態では、上記ブランケットの潰れ代Δzの変化に関わらず、上記ブランケットロール10の外周面における上記版テーブル4上の版3に接触している部分の周速(同期用周速)が、上記版テーブル4の移動速度vに一致する上記版3の移動速度に常に同期された状態となる。
【0061】
上記のようにしてブランケットロール10を下向きに付勢した状態で版テーブル4上の版3に対して押し付けると、上記ブランケットの潰れ代Δzの増加に伴い、上記ロードセル33より入力される信号を基に上記制御器18で検出される上記ブランケットロール10の上記版3に対する接触圧力Pが次第に増加する。
【0062】
そのため、上記制御器18は、図6(イ)に示す時刻T3で、上記ロードセル33より入力される信号を基に検出される上記ブランケットロール10の上記版3に対する接触圧力Pが、予め該制御器18に記憶させてある転写用印圧の設定値に一致するようになると、上記ロール昇降制御部18cの機能により、各昇降用駆動モータ28を停止させて、ブランケットロール10の下降を停止させる。
【0063】
これにより、上記ブランケットロール10は、該ブランケットロール10より上記版3に対して所定の転写用印圧を付与し、且つ該ブランケットロール10の外周面における上記版テーブル4上の版3に接触している部分の周速(同期用周速)が上記版3の移動速度である版テーブル4の移動速度vに同期した状態となる。
【0064】
よって、上記制御器18は、図6(イ)に示すように、上記時刻T3から版3からブランケットロール10に対する印刷パターンの転写処理が終了する時刻T4まで、上記転写用印圧が一定になるよう上記ブランケットロール10の同期用半径Rを一定に保持すると共に、図6(ロ)に示すように上記ブランケットロール10の角速度ωを一定に保持することで、ブランケットロール10における版3に接触している部分の周速(同期用周速)と版3の移動速度の同期状態を維持するようにして、上記版3からブランケットロール10への印刷パターンの転写処理を行なわせるようにする。
【0065】
その後、上記時刻T4の時点で、転写処理が終了すると、上記制御器18は、ロール昇降制御部18cにより、上記各昇降用駆動モータ28を上記ブランケットロール10の下降時とは逆方向へ駆動して、図6(イ)及び図8(イ)に示すように、上記ブランケットロール10の上昇を開始させる。
【0066】
上記のようにして時刻T4でブランケットロール10の上昇を開始させると、上記ブランケットロール10の回転中心Oのブランケットロール10の回転中心Oの位置が、徐々に上昇するため、図6(イ)に示すように、該ブランケットロール10の同期用半径Rが徐々に増大する。
【0067】
この際、上記ブランケットロール10における外周面の下端部で上記ブランケットが上記版テーブル4上の版3に対し押し付けられて該ブランケットに潰れ代Δzが存在する間は、図7(ニ)に示したと同様に、上記基準高さ位置Zoを基準とする上記ブランケットロール10の昇降移動量zが、ブランケットロール退避高さ位置に配置させた状態のブランケットロール10の外周面の下端と版テーブル4上の版3の上面高さ位置Zbとの間の隙間の計測値Zcと、上記ブランケットの潰れ代Δzの和と等しくなる。よって、このときの上記ブランケットロール10の同期用半径Rは、図7(ニ)の場合と同様に、R=H−z=(r+Zc)−(Zc+Δz)=r−Δzとなる。よって、この場合も、上記ブランケットロール10の同期用半径Rは、r−Δz、すなわち、該ブランケットロール10の回転中心Oから、該ブランケットロール10の外周面の下端部にて、上記潰れ代Δzでブランケットが弾性変形した状態で上記版テーブル4上の版3に接触している部分までの寸法に等しくなる。
【0068】
この状態のときにも、上記制御器18は、上記ブランケットロール10の同期用半径Rと角速度ωとの積で算出される同期用周速(R・ω)を、上記版テーブル4の移動速度vに一致させる制御を継続していることから、該制御器18により、上記ブランケットロール10の角速度ωが、ω=v/R=v/(r−Δz)で求められる値に一致するように制御される。これにより、上記ブランケットの潰れ代Δzの変化に関わらず、上記ブランケットロール10の外周面における上記版テーブル4上の版3に接触している部分の周速(同期用周速)が、上記版テーブル4の移動速度vに一致する上記版3の移動速度に常に同期された状態となる。
【0069】
その後、図6(イ)における時刻T5で図8(ロ)に示すように、上記ブランケットロール10が版テーブル4上の版3の上面より離反するときの直前で、該ブランケットロール10の外周面の下端部が、ブランケットの弾性変形が解消された状態で版テーブル4上の版3の上面に単に接触している状態になると、上記ブランケットロール10の同期用半径Rは、該ブランケットロール10の半径rに一致する。
【0070】
上記時刻T5の時点においても、上記制御器18は、上記ブランケットロール10の同期用半径Rと角速度ωとの積で算出される同期用周速(R・ω)を、上記版テーブル4の移動速度vに一致させる制御を継続しているため、上記時刻T5では、ブランケットロール10の角速度ωは、上記制御器18により、ω=v/R=v/rで求められる値に一致するように制御される。
【0071】
よって、上記時刻T5では、上記のように制御されたブランケットロール10の角速度ωに基づいて定まる同期用周速(R・ω)が該ブランケットロール10の外周面の周速(r・ω)に一致することから、該時刻T5で、ブランケットロール10の外周面の下端部が上記版テーブル4上の版3の上面より上方へ離反するとき(離反する瞬間)にも、ブランケットロール10の外周面の周速と、上記版テーブル4の移動速度vに一致する版3の移動速度が確実に同期された状態となる。
【0072】
上記時刻T5でブランケットロール10が版テーブル4上の版3から離反した後は、上記制御器18は、ロール昇降制御部18cの機能により、上記ブランケットロール10を上昇させて、図6(イ)における時刻T6で、図8(ハ)に示すように、ブランケットロール10を初期状態位置であるブランケットロール退避高さ位置まで戻すようにする。
【0073】
この際、上記制御器18では、上記ロール回転制御部18bの機能により、図6(イ)(ロ)に示す如く、上記ブランケットロール10の角速度ωを、上記ブランケットロール10の上昇に伴う該ブランケットロール10の同期用半径Rの変化に応じて、時刻T1から時刻T2までの間と同様に、ω=v/Rとなるように変化させるようにしてもよいが、上記時刻T5でブランケットロール10が版テーブル4上の版3より離反した後の任意の時点で、上記ブランケットロール10の回転駆動を停止させ、この回転停止状態のブランケットロール10を、上記ブランケットロール待機高さ位置まで戻すようにしてもよい。
【0074】
しかる後、上記のようにして上記版テーブル4上の版3からブランケットロール10への印刷パターンの転写処理に伴う工程が終了すると、上記制御器18は、印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5に対して、図6(イ)(ロ)(ハ)乃至図8(イ)(ロ)(ハ)に示した如き上記版テーブル4上に保持させた版3に対して行った工程と同様の工程を、転写処理を再転写処理に、版3を印刷対象5に、版テーブル4を印刷対象テーブル6に、転写用印圧を再転写用印圧にそれぞれ置き換えて実施することで、上記ブランケットロール10より印刷対象テーブル6上の印刷対象5に対する印刷パターンの再転写(印刷)処理を行うようにする。
【0075】
このように、本発明のオフセット印刷方法及び装置によれば、オフセット印刷における転写処理を実施する際には、ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaと版テーブル4上に保持させた版3の上面高さ位置Zbとの間の鉛直方向距離であるブランケットロール10の版3用の同期用半径Rと、該ブランケットロール10の角速度ωとの積から求められる該ブランケットロール10の同期用周速を、上記版テーブル4の移動速度vに一致する版3の移動速度と同期させた状態で、上記ブランケットロール10の外周面を上記版テーブル4上に保持させた版3の上面に対して上方より接触させる工程と、該版3の上面に接触したブランケットロール10を下向きに付勢して、該ブランケットロール10のブランケットを潰すように弾性変形させて上記版3に対する接触圧力を所定の転写用印圧まで増加さてせる工程とを行うようにしてあるので、上記ブランケットロール10の外周面を上記版テーブル4上に保持させた版3の上面に対して上方より接触させるとき(接触させる瞬間)、及び、該版3の上面に接触したブランケットロール10を下向きに付勢して上記版3に対し所定の転写用印圧を付与するときに、該ブランケットロール10の外周部における上記版3に接している部分の周速を、版テーブル4と一緒に移動する版3の移動速度と常に同期(一致)させることができる。
【0076】
又、ブランケットロール10の同期用周速を、上記版テーブル4の移動速度vに一致する版3の移動速度と同期させた状態で、上記ブランケットロール10より版3に上記所定の転写用印圧を付与した状態で該版3より上記ブランケットロール10に対して印刷パターンの転写を行う工程と、該転写が終了した後にブランケットロール10を上昇させて上記ブランケットの弾性変形を解消させる工程と、上記ブランケットロール10の外周面を上記版テーブル4上の版3の上面より離反させる工程とを行うようにしてあるので、該各工程の間も、該ブランケットロール10の外周部における上記版3に接している部分の周速を、版テーブル4と一緒に移動する版3の移動速度と常に同期(一致)させることができる。
【0077】
したがって、上記ブランケットロール10を上記版3に対し上方より接触させてから離反させるまでの間に、上記ブランケットの潰れ代Δzの増減に伴って上記ブランケットロール10の同期用半径Rが変化するときにも、該ブランケットロール10から上記版3を介して版テーブル4に外力を作用させてしまうのを防止することができる。
【0078】
又、オフセット印刷における再転写処理を実施する際には、ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaと印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5の上面高さ位置Zbとの間の鉛直方向距離であるブランケットロール10の印刷対象5用の同期用半径Rと、該ブランケットロール10の角速度ωとの積から求められる該ブランケットロール10の同期用周速を、上記印刷対象テーブル6の移動速度vに一致する印刷対象5の移動速度と同期させた状態で、上記ブランケットロール10の外周面を上記印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5の上面に対して上方より接触させる工程と、該印刷対象5の上面に接触したブランケットロール10を下向きに付勢して、該ブランケットロール10のブランケットを潰すように弾性変形させて上記印刷対象5に対する接触圧力を所定の再転写用印圧まで増加させる工程を行うようにしてあるので、上記ブランケットロール10の外周面を上記印刷対象テーブル4上に保持させた印刷対象5の上面に対して上方より接触させるとき(接触させる瞬間)、及び、、該印刷対象5の上面に接触したブランケットロール10を下向きに付勢して上記印刷対象5に対し所定の再転写用印圧を付与するときに、該ブランケットロール10の外周部における上記印刷対象5に接している部分の周速を、印刷対象テーブル6と一緒に移動する印刷対象5の移動速度と常に同期(一致)させることができる。
【0079】
更に、ブランケットロール10の同期用周速を、上記印刷対象テーブル6の移動速度vに一致する印刷対象5の移動速度と同期させた状態で、上記ブランケットロール10より印刷対象5に上記所定の再転写用印圧を付与した状態で該ブランケットロール10より印刷対象5に対する印刷パターンの再転写を行う工程と、該再転写が終了した後にブランケットロール10を上昇させて上記ブランケットの弾性変形を解消させる工程と、上記ブランケットロール10の外周面を上記印刷対象テーブル6上の印刷対象5の上面より離反させる工程とを行うようにしてあるので、該各工程の間も、該ブランケットロール10の外周部における上記印刷対象5に接している部分の周速を、印刷対象テーブル6と一緒に移動する印刷対象5の移動速度と常に同期(一致)させることができる。
【0080】
したがって、上記ブランケットロール10を上記印刷対象5に対し上方より接触させてから離反させるまでの間に、上記ブランケットの潰れ代Δzの増減に伴って上記ブランケットロール10の同期用半径Rが変化するときにも、該ブランケットロール10から上記印刷対象5を介して印刷対象テーブル6に外力を作用させてしまうのを防止することができる。
【0081】
よって、上記版テーブル4及び印刷対象テーブル6の軌道再現性を確保することができ、印刷精度を向上させることができる。
【0082】
又、上記ブランケットロール10を版3及び印刷対象5に接触させるときに、該ブランケットロール10と版3及び印刷対象5との間に、対応する各テーブル4,6の走行方向に沿う方向へずれを生じさせるような外力が作用しなくなることに伴い、上記ブランケットロール10の摩耗を低減させることができる。
【0083】
更に、上記制御器18では、ロードセル33より入力される信号を基にブランケットロール10より版テーブル4上の版3や印刷対象テーブル6上の印刷対象に対して付与される接触圧力を計測して、上記ブランケットロール10を版3や印刷対象5に接触させた状態から下向きに付勢する下降を、上記接触圧力が転写処理や再転写処理の際に必要とされる転写用印圧や再転写用印圧となるまで行わせるようにしてあるため、上記転写用印圧や再転写用印圧の変更に容易に対応することができる。しかも、このように転写用印圧や再転写用印圧を変更しても、上記ブランケットロール10の外周部における上記版3や印刷対象5に接している部分の周速を、対応する各テーブル4,6と一緒に移動する版3や印刷対象5の移動速度と同期(一致)させることに何ら支障が生じることはない。
【0084】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、たとえば、ブランケットロール10の昇降駆動機構15としては、ブランケットロール10を、或る高さ位置に設定するブランケットロール退避高さ位置から、該ブランケットロール10を版テーブル4上に保持させた版3や印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5の上面に上方より接触させると共に、該ブランケットロール10を下方へ付勢して該ブランケットロール10より上記版3や印刷対象5に対し転写用印圧や再転写用印圧を作用させる高さ位置まで昇降させることができれば、ボールねじ機構以外のいかなる形式の昇降駆動機構を採用してもよい。
【0085】
又、昇降距離センサ16は、ブランケットロール10の昇降距離を検出することができれば、昇降用駆動モータ28に付設したエンコーダ16に限られるものではなく、たとえば、転写機構部17の門型フレーム21のコラム19と、上記ロール支持フレーム12の各ベアリングハウジング11a,11bとの間に上下方向にリニアスケールを設けて、該リニアスケールを昇降距離センサとして用いるようにしてもよい。
【0086】
上記実施の形態では、転写用印圧及び再転写用印圧を計測する印圧計測センサとして、ボールねじ機構15のナット部材31とロール支持フレーム12側に取り付けた取付部材23との間に介装させたロードセル33を用いる場合について説明したが、これに限られるものではなく、上記転写用印圧及び再転写用印圧を計測することができるようにしてあれば、任意の印圧計測センサを用いるようにしてよく、又、該印圧計測センサの設置個所は適宜変更してもよい。
【0087】
更に、上記実施の形態では、ブランケットロール10の角速度ωを制御することにより、ブランケットロール10の周速と、版テーブル4及び印刷対象テーブル6の移動速度vとを同期させる場合について説明したが、これに限られるものではなく、版テーブル4及び印刷対象テーブル6の移動速度vを制御するようにしたり、ブランケットロール10の角速度ωと版テーブル4及び印刷対象テーブル6の移動速度vの双方を共に制御するようにしてもよい。
【0088】
又、上記実施の形態では、ブランケットロール10より版3や印刷対象5に所定の転写用印圧や再転写用印圧を付与した後、ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaを一定にした状態で転写処理や再転写処理を行うものとして説明したが、該転写処理や再転写処理の間、上記転写用印圧や再転写用印圧が一定になるように制御するようにしてもよい。この場合、上記各印圧を一定に制御することに伴って、該転写処理や再転写処理の間、昇降移動量zを制御器18により変化させる必要が生じる場合は、その変化に応じた上記ブランケットロール10の同期用半径Rの変化に応じて、該同期用半径Rとブランケットロール10の角速度ωとの積で求まるブランケットロール10の同期用周速が、上記版3や印刷対象3の移動速度と同期するように、上記ブランケットロール10の角速度ωを制御するようにすればよい。
【0089】
更に又、上記実施の形態では、制御器18に、或る高さ位置に設定したブランケットロール退避高さ位置を基準高さ位置Hとして記憶させ、この基準高さ位置Hを基準として、ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaと、版テーブル4上に保持させた版3及び印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5の上面高さ位置Zbとの間の鉛直方向距離であるブランケットロール10の同期用半径Rを求める場合について説明したが、ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaと、版テーブル4上に保持させた版3及び印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5の上面高さ位置Zbとの間の鉛直方向距離としての上記同期用半径Rを求めることができれば、たとえば、上記ロール支持フレーム12における上記各テーブル4,6の印刷時テーブル走行方向aの上流側に臨む上記フレーム12側部の所要個所に、下方を通る上記版テーブル4上に保持させた版3の上面や上記印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5の上面までの距離を計測する距離センサとしてのレーザセンサを設けて、該レーザセンサにより計測された、上記ブランケットロール退避高さ位置における上記ブランケットロール10の回転中心Oと版テーブル4上に保持させた版3の上面及び印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5の上面高さ位置Zbとの間の鉛直方向距離をブランケットロール10の同期用半径Rとして、上記制御器18に入力するようにして、上記制御器18による制御を行うようにしてもよく、上記ブランケットロール10の回転中心Oの高さ位置Zaと、版テーブル4上に保持させた版3及び印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5の上面高さ位置Zbを計測するための計測手段や、基準とする高さ位置は、オフセット印刷装置の装置構成に応じて自在に変更してよい。
【0090】
又、上記実施の形態では、制御器18に、転写用印圧と再転写用印圧を記憶させておき、版テーブル4上の版3の上面や印刷対象テーブル6上の印刷対象5の上面に接触させたブランケットロール10を下向きに付勢して、ブランケットロール10より上記版3や印刷対象5に対して上記制御器18に記憶させてある転写用印圧や最転写用印圧が付与されるようになるときに、昇降用駆動モータ28を停止させるものとして説明したが、予め、ブランケットロール10の外周面が上記版3の上面及び上記印刷対象5の上面に接触した状態から上記ブランケットロール10が上記版3及び上記印刷対象5に転写用印圧及び再転写印圧を作用させるのに要するブランケットの潰れ代Δzに対応するブランケットロール10の昇降距離を上記制御器18に記憶させておき、該制御器18にて、上記各昇降用駆動モータ28の運転により上記ブランケットロール10を所定のブランケットロール退避高さ位置より、該ブランケットロールの退避高さ位置と、所要の転写用印圧及び所要の再転写印圧を作用させるのに要するブランケットの潰れ代Δzに対応するブランケットロール10の昇降距離を足した寸法分だけ下降させる制御を行うことで、上記版テーブル4上に保持させた版3の上面や印刷対象テーブル6上に保持させた印刷対象5の上面に対し、上記ブランケットロール10を接触させると共に、該ブランケットロール10を下向きに付勢して該ブランケットロール10より上記版3や印刷対象5に対して上記転写用印圧や再転写用印圧を付与させるようにする制御を行うようにしてもよい。この場合は、ロードセル33を省略した構成としてもよい。
【0091】
更に又、ブランケットロール10の回転角度を検出するためのエンコーダ14は、回転用駆動モータ13に付設せずに、図3に二点鎖線で示すように、上記ブランケットロール10の両端部の回転軸11a,11bのうち、減速機32を介して回転用駆動モータ13を接続した方の回転軸11aとは反対側の回転軸11bに直結した構成としてようにしてもよい。かかる構成とすれば、上記減速機32内の図示してないギアのバックラッシや動力伝達系の撓みによる影響を受けることなく、上記ブランケットロール10の回転角度を検出することができるようになるため、該ブランケットロール10の周速と、版テーブル4及び印刷対象テーブル6の移動速度vとのより高精度な同期を図ることができ、印刷精度を更に向上させることができる。同様に、昇降用駆動モータ28に付設するエンコーダ16は、各ねじ軸26の下端部に直結するようにしてもよい。
【0092】
又、インキング装置34は版テーブル4に保持された版3へ適正なインキングが行えるようにしてあれば、任意の形式のインキング装置を用いてよい。
【0093】
更に、本発明のオフセット印刷方法及び印刷装置は、基板以外のいかなる印刷対象5にオフセット印刷を行う場合に適用してもよい。
【0094】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0095】
3 版
5 印刷対象
9 リニアスケール(位置検出器)
10 ブランケットロール
14 エンコーダ(回転角度検出器)
15 ボールねじ機構(昇降駆動機構)
16 エンコーダ(昇降距離センサ)
18 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に移動する版の上面に、回転させたブランケットロールの外周面を上方より転写用印圧で接触させて、上記版から上記ブランケットロールへの印刷パターンの転写処理を行った後、上記回転させたブランケットロールの外周面を、上記一方向に移動する印刷対象の上面に上方より再転写用印圧で接触させて、上記ブランケットロールから上記印刷対象へ印刷パターンの再転写処理を行わせるようにするオフセット印刷方法において、上記版の上面と上記ブランケットロールの回転中心との間を版用の同期用半径として、該版用の同期用半径と上記ブランケットロールの角速度との積から求められる同期用周速を、該ブランケットロールの外周面を上記版の上面に接触させるときから上記転写処理が終了するときまで、上記版の移動速度に同期させるようにすると共に、上記印刷対象の上面と上記ブランケットロールの回転中心との間を印刷対象用の同期用半径として、該印刷対象用の同期用半径と上記ブランケットロールの角速度との積から求められる同期用周速を、該ブランケットロールの外周面を上記印刷対象の上面に接触させるときから上記再転写処理が終了するときまで、該印刷対象の移動速度に同期させるようにすることを特徴とするオフセット印刷方法。
【請求項2】
ブランケットロールの同期用周速を、該ブランケットロールの外周面を版の上面に接触させるときから、印刷パターンの転写処理を経て、該ブランケットロールの外周面を上記版の上面から離反させるときまで、該版の移動速度に同期させるようにすると共に、該ブランケットロールの外周面を印刷対象の上面に接触させるときから、印刷パターンの再転写を経て、上記ブランケットロールの外周面を上記印刷対象の上面から離反させるときまで、該印刷対象の移動速度に同期させるようにする請求項1記載のオフセット印刷方法。
【請求項3】
一方向に移動する版の上面に、回転させたブランケットロールの外周面を昇降駆動機構により上方より転写用印圧で接触させて、上記版から上記ブランケットロールへの印刷パターンの転写処理を行った後、上記回転させたブランケットロールの外周面を、上記昇降駆動機構により上記一方向に移動する印刷対象の上面に上方より再転写用印圧で接触させて、上記ブランケットロールから上記印刷対象へ印刷パターンの再転写処理を行うことができるようにしてあるオフセット印刷装置において、上記ブランケットロールの回転角度を計測する回転角度検出器と、上記版と上記印刷対象の移動位置を検出する位置検出器とを備えると共に、上記版の上面とブランケットロールの回転中心との間の版用の同期用半径と、上記回転角度検出器により計測された回転角度に基づいて求められるブランケットロールの角速度との積から同期用周速を求めて、該同期用周速と、上記位置検出器の検出信号に基づいて求められる版の移動速度とを同期させる機能と、上記印刷対象の上面とブランケットロールの回転中心との間の印刷対象用の同期用半径と、上記回転角度検出器により計測された回転角度に基づいて求められるブランケットロールの角速度との積から同期用周速を求めて、該同期用周速と、上記位置検出器の検出信号に基づいて求められる印刷対象の移動速度とを同期させる機能とを有する制御器を備えるようにした構成を有することを特徴とするオフセット印刷装置。
【請求項4】
昇降駆動機構によるブランケットロールの昇降距離を計測する昇降距離センサを設けて、制御器に、各同期用半径を、ブランケットロール退避高さ位置における上記ブランケットロールの回転中心と版の上面及び印刷対象の上面との間の距離と、上記昇降距離センサにより計測された昇降距離とに基づいて求める機能を備えるようにした請求項3記載のオフセット印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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