説明

オフセット印刷機のエネルギー管理システム、オフセット印刷機のエネルギー管理方法

【課題】印刷機の運転状態を把握するとともに、消費エネルギーを管理することが可能なオフセット印刷機のエネルギー管理システム等を提供する。
【解決手段】オフセット印刷機100のエネルギー消費状況を管理するエネルギー管理システム1は、オフセット印刷機100のエネルギー消費量を所定の時間間隔で計測する電力量計110、エア流量計120、冷却水流量計130、ガス流量計140と、オフセット印刷機100の版胴23に設けられ、版胴23の回転数をオフセット印刷機100の運転情報として所定の時間間隔で取得するエンコーダ27と、エネルギー消費量と、オフセット印刷機100の運転情報をエネルギー管理画面として表示するPC300とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオフセット印刷機で消費されるエネルギーを管理するためのオフセット印刷機のエネルギー管理システム、オフセット印刷機のエネルギー管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙の印刷を行う印刷装置の一つとして、オフセット印刷機が知られている。オフセット印刷機は、例えば給紙部、印刷部、乾燥部、排紙部等を備える。一般にオフセット印刷では、電気、ガスなどの一次エネルギーをはじめ、圧縮空気や冷却水といった二次エネルギーも多数用いられている。これらは個別に印刷機に取り込まれ、印刷機の各所で消費されている。
【0003】
オフセット印刷機の制御に関わるシステムとして、印刷物の員数を管理するシステムが特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−152771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような印刷機では、実際に印刷を行っているか否かに関わらず、各所でエネルギーがある程度消費されているのが通常である。そのため例えば、印刷を長時間行わず、エネルギーを何ら必要としない状態にあっても、エネルギー消費が行われている状態にある。
【0006】
これを防ぐためには、各部位のON/OFFを個別に行う必要がある。即ち、省エネルギーを実現するためには、印刷機の運転状態により適切に各部位のON/OFFを行うことが必要になる。
【0007】
このためには、印刷機の運転状態とエネルギー消費の関係を把握、管理し、例えば印刷機が運転状態にない時にどのようなエネルギーが消費されているかを見極めることが有効である。例えば印刷機が長時間運転状態にない場合にエネルギーが消費されている箇所があれば、当該箇所をOFFとするようにできる。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、印刷機の運転状態を把握し、エネルギー消費状況を管理することが可能なオフセット印刷機のエネルギー管理システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するための第1の発明は、オフセット印刷機のエネルギー消費状況を管理するオフセット印刷機のエネルギー管理システムであって、オフセット印刷機のエネルギー消費量を所定の時間間隔で計測するエネルギー消費量計測装置と、オフセット印刷機の運転情報を所定の時間間隔で取得する運転情報取得装置と、前記エネルギー消費量計測装置で計測したエネルギー消費量と、前記運転情報取得装置で取得したオフセット印刷機の運転情報をエネルギー管理画面として表示する情報処理装置と、を備えることを特徴とするオフセット印刷機のエネルギー管理システムである。
【0010】
第1の発明のオフセット印刷機のエネルギー管理システムは、オフセット印刷機による印刷物の生産数量を示す生産数量情報を取得する生産数量取得装置を更に備えることが望ましい。
【0011】
前記エネルギー消費量計測装置で計測されるエネルギーの量は、電力量、圧縮空気量、冷却水量、ガス量のうち、少なくともいずれか1つを含む。
【0012】
前記運転情報取得装置は、前記オフセット印刷機の印刷ユニットに設けられた版胴の回転数を、エンコーダにより取得するものである。
【0013】
また、前記生産数量取得装置は、前記オフセット印刷機により印刷された印刷物をスタッカーバンドラーに搬送するためのコンベアにおける、リジェクトのON/OFF信号を取得する。
【0014】
加えて、前記情報処理装置は、前記エネルギー消費量計測装置で計測したエネルギー消費量に応じて、警告を表示することが望ましい。
【0015】
また、前記情報処理装置は、エネルギー管理画面として、オフセット印刷機の運転情報と、エネルギー消費量を、時刻を揃え重ねて表示することが望ましい。
【0016】
上記構成により、オフセット印刷機の運転情報と、エネルギー消費量を所定の時間間隔で取得し、これらを情報処理装置にリアルタイムに表示し同時にモニタリングすることができる。従って、不必要なエネルギー消費が一目で理解できるようになり、印刷機の運転状態に応じて、エネルギーの供給を適切にON/OFF、もしくは調整する処理を迅速に行うことができる。
【0017】
また、印刷物の生産数量も併せてエネルギー消費状況の管理を行うこともできる。また、印刷物の生産数量は、エネルギー原単位算出の際に用いることもできる。エネルギー原単位を用いて、印刷機ごとのエネルギー効率を比較することが可能になる。エネルギー消費量は、例えば電力量、圧縮空気量、冷却水量、ガス量のうち、少なくともいずれか1つを含み、これによりオフセット印刷機で使用されるエネルギーに適合したシステムとすることができる。
【0018】
オフセット印刷機の運転情報は、例えば、印刷ユニットに設けられた版胴の回転数であり、これをエンコーダにより取得する。版胴は1回転する毎に印刷物の1枚ぶんの印刷がなされることになるので、オフセット印刷機の運転状況として、特に印刷物の生産に関わる運転情報を正確に得ることができる。また、印刷物の生産数量の計測は、オフセット印刷機により印刷された印刷物をスタッカーバンドラーに搬送するためのコンベアにおける、リジェクトのON/OFF信号を取得することで行う。これを用いて、リジェクト(コンベアから排出)されず、最終的な生産物となる印刷物の数量が把握できるようになる。
【0019】
計測したエネルギー消費量に応じて、警告を発生させる警告発生装置を備えることにより、例えば長期間印刷機が運転していない(印刷していない)状態が続くにも関わらず、エネルギーが消費されている場合に警告を表示し、オペレータに明確に認知させ、注意を促すことができる。また、エネルギー管理画面として、オフセット印刷機の運転情報と、エネルギー消費量を、時刻を揃え重ねて表示することで、印刷機が運転していないにも関わらず、エネルギーが消費されている状況等を容易に認知できるようになる。
【0020】
前述した目的を達するための第2の発明は、オフセット印刷機のエネルギー消費状況を管理するオフセット印刷機のエネルギー管理方法であって、エネルギー消費量計測装置により、オフセット印刷機のエネルギー消費量を所定の時間間隔で計測するエネルギー消費量計測ステップと、運転情報取得装置により、オフセット印刷機の運転情報を所定の時間間隔で取得する運転情報取得ステップと、情報処理装置により、前記エネルギー消費量計測装置で計測したエネルギー消費量と、前記運転情報取得装置で取得したオフセット印刷機の運転情報をエネルギー管理画面として表示する表示ステップと、を備えることを特徴とするオフセット印刷機のエネルギー管理方法である。
【0021】
第2の発明は、第1の発明のエネルギー管理システムにおけるエネルギー管理方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、印刷機の運転状態を把握し、エネルギー消費状況を管理することが可能なオフセット印刷機のエネルギー管理システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】オフセット印刷機の一例を示す図
【図2】オフセット印刷機のエネルギー管理システムの一例を示す図
【図3】電力消費量の測定の一例を示す図
【図4】PCのハードウェア構成の一例を示す図
【図5】オフセット印刷機のエネルギー管理システムにおけるエネルギー管理方法の一例を示す図
【図6】エネルギー管理画面の例を示す図
【図7】エネルギー管理画面の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明のオフセット印刷機のエネルギー管理システムの実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本発明のエネルギー管理システムを適用するオフセット印刷機の例について説明する。
【0025】
図1は、本発明のエネルギー管理システム1を適用するオフセット印刷機100の構成を示す図である。オフセット印刷機100は、ロール紙3への印刷を行うものを例として説明する。図1に示すように、オフセット印刷機1は、給紙部10、印刷部20、乾燥部30、排紙部40、結束部50等により構成される。
【0026】
給紙部10には、例えばロール紙3を取り付けたリールやこれを送り出すためのローラなどの搬送機構や、ロール紙3に適当な張力を与えるためのテンションコントロール装置等が設けられている。
【0027】
印刷部20には、印刷を行う各色ぶんの印刷ユニット21が1または複数設けられている。例えば、Y、M、C、Kの4色の印刷を行う場合は、4つの印刷ユニット21が設けられる。各印刷ユニット21には、版胴23やブランケット胴25等が設けられ、ブランケット胴25の間を通過するロール紙3に、対応する色の印刷が行われる。また、版胴23の版面に水を供給する湿し装置等も設けられている。
【0028】
乾燥部30には、乾燥装置31や脱臭装置33が設けられる。乾燥装置31は、都市ガスを用い加熱した空気を吹き付けて印刷を行ったロール紙3を加熱しインク中の溶剤を蒸発させるもので、これに用いるドライヤー等を備える。脱臭装置33は、乾燥装置31で吹き付けた空気を集気し、触媒等を用いて当該空気に含まれるインク溶剤成分等を取り除くためのもので、そのためのファン等を備える。
【0029】
排紙部40は、印刷後加熱させ乾燥させたロール紙3の折り、断裁等を行い排出するもので、クーリングローラ43、加湿装置45、折り機48等を備える。クーリングローラ43は、乾燥部30で加熱したロール紙3を冷やすためのもので、内部に冷却水が通される。ロール紙3はクーリングローラ43による搬送の際に冷却される。加湿装置45は、乾燥されたロール紙3を、その水分を補うために加湿するもので、例えばスプレー等により水分を吹付ける。折り機48は、ロール紙3の折り、断裁等を行い、折り丁として排出するもので、そのための折り機構、断裁機構等を備える。
【0030】
結束部50は、排出された折り丁を搬送し結束して堆積させるもので、スタッカーバンドラー51やコンベア53等を備える。コンベア53により搬送された折り丁は、スタッカーバンドラー51により結束され堆積される。
【0031】
次に、エネルギー管理システム1の構成について、図2を用いて説明する。エネルギー管理システム1は、電力量計110、エア流量計120、冷却水流量計130、ガス流量計140等のエネルギー消費量計測装置、PLC(Programmable Logic Controller)200、PC300(情報処理装置)等を備える。
【0032】
電力量計110は、オフセット印刷機100に電力を供給する電力線に設けられ、オフセット印刷機100の電力消費量を測定し、パルスとして出力して無線を介してPC300にこれを送信する。電力線は分岐してオフセット印刷機100の各所に電力を供給する。例えばオフセット印刷機100の各ローラを回転させるための主モータ、圧縮空気を生成するためのコンプレッサ、空気の加熱や水の冷却等を行うための熱交換器、印刷用のインクに用いる湿し水循環装置、機内照明等の動力源となる。
【0033】
エア流量計120は、オフセット印刷機100に圧縮空気を供給する供給路に設けられ、オフセット印刷機100の圧縮空気消費量を測定し、パルスとして出力して無線を介してPC300にこれを送信する。当該供給路は分岐してオフセット印刷機100の各所に圧縮空気を供給し、ローラの移動や版胴23等の着脱などに用いるエアシリンダ等の動力源となる。
【0034】
冷却水流量計130は、オフセット印刷機100に冷却水を供給する供給路に設けられ、オフセット印刷機100の冷却水消費量を測定し、パルスとして出力して無線を介してPC300にこれを送信する。当該供給路は分岐してオフセット印刷機100の各所に冷却水を供給し、クーリングローラ43や各種機器の冷却に用いられる。
【0035】
ガス流量計140は、オフセット印刷機100にガスを供給する供給路に設けられ、オフセット印刷機100のガス消費量を測定し、パルスとして出力して無線を介してPC300にこれを送信する。当該供給路は分岐してオフセット印刷機100の各所に都市ガス等のガスを供給し、例えば乾燥装置31で吹き付ける空気を加熱するために用いられる。
【0036】
図3に示すように、電力線は電源から延び、上記したように分岐して主モータ61やコンプレッサ62、熱交換器63、湿し水循環装置64、機内照明65等のオフセット印刷機100の各所へ接続する。そして、電力量計110としては、分岐した電力線の各所に電力量計110−1、110−2、110−3、110−4、110−5、…を設け、各所で消費する電力量を測定する。なお、電力線は更に細かく各所に分岐する場合もあり、その分岐した各電力線に電力量計110を設けるようにしてもよい。
【0037】
このように、本実施形態では電力線の各所への分岐後に電力量計110を設けているが、分岐前の電力線に設けるようにしてもよい。電力線の分岐前に電力量計110を設ける場合、設置する数が少なくなるのでコストの削減につながり、電力線の分岐後に設ける場合、より詳細にエネルギー消費箇所を特定したエネルギー管理が可能になる。これらは目的に応じて適宜定めればよい。
【0038】
これらはエア流量計120、冷却水流量計130、ガス流量計140等でも同様で、各供給路が各装置へと分岐する前にこれらを設けてもよいし、各装置へと分岐した後にこれらを設けてもよい。
【0039】
なお、上記の各計測機器はPC300に各データを無線にてパルス出力として送信するが、これに限ることはなく、例えば有線にて送信してもよい。また、データ出力の形式もこれに限ることはなく、パルス出力でなく別の形式でもよい。
【0040】
また、オフセット印刷機100の運転状況を示す運転情報がオフセット印刷機100よりPLC200に送信される。これは、例えば版胴23に設けたエンコーダ27(運転情報取得装置)により版胴23の回転数を測定しPLC200にパルス出力として有線にて送信するものである。版胴23が1回転する毎にロール紙3に印刷物の1枚ぶんの印刷がなされることになるので、オフセット印刷機100の運転状況として、特に印刷物の生産に関わる運転情報を正確に得ることができる。
【0041】
さらに、印刷物の生産数量を示す生産数量情報がPLC200(生産数量取得装置)により取得される。これは、例えばコンベア53に設けた、リジェクトボタンによるリジェクトが行われているか否かを示すリジェクトON/OFF信号をPLC200が検出し、PC300に送信するものである。排紙部40から折り丁が排紙されている状況で、コンベア53のリジェクトを行った場合にはコンベア53から折り丁が排出され、スタッカーバンドラー51で結束が行われない(最終的な印刷物が生産されない)。リジェクトが行われない場合、折り丁が結束され、最終的な印刷物が生産される。生産数量もまた、エネルギー消費状況の管理に用いることができる。加えて、例えばエネルギー原単位の算出の際に用いることもできる。
【0042】
PLC200は、オフセット印刷機100に設けられ、制御部、入力部(入力回路)、出力部(出力回路)、通信部等を備える。PLC200は、オフセット印刷機100の各装置からの信号を処理し、オフセット印刷機100を制御する。また、版胴23の回転数をオフセット印刷機100の運転情報として、リジェクトのON/OFFの信号を印刷物の生産数量情報としてPC300に有線にて送信する。
【0043】
電力消費量、圧縮空気消費量、冷却水消費量、ガス消費量等のエネルギー消費量情報、オフセット印刷機100の運転情報や印刷物の生産数量情報のデータは、所定の時間間隔の、同じタイミングで計測、送信等が行われる。本実施形態では1時間毎に行うが、1分程度にまで時間間隔は短くすることができる。また、有線によるエネルギー消費量情報のデータ送信等を行うことにより、時間間隔をそれ以下に短くすることもできる。
【0044】
図4に示すように、PC300は、制御部301、記憶部302、メディア入出力部303、周辺機器I/F部304、通信部305、入力部306、表示部307等がバス308により接続されて構成される。
【0045】
制御部301は、CPU、ROM、RAM等により構成される。CPUは、記憶部302、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス308を介して接続された各部を駆動制御する。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持する。RAMは、ロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部301が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0046】
記憶部302は、ハードディスクドライブであり、制御部301が実行するプログラムや、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティング・システム)等が格納されている。これらのプログラムコードは、制御部301により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて実行される。
【0047】
メディア入出力部303(ドライブ装置)は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、MOドライブ等のメディア入出力装置であり、データの入出力を行う。周辺機器I/F(インタフェース)部304は、周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部304を介して周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F部304は、USB等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
【0048】
通信部305は、通信制御装置、通信ポート等を有し、ネットワーク等との通信を媒介する通信インタフェースであり、通信制御を行う。入力部306は、例えば、キーボード、マウス等のポインティング・デバイス、テンキー等の入力装置であり、入力されたデータを制御部301へ出力する。
【0049】
表示部307は、例えば液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路(ビデオアダプタ等)で構成され、制御部301の制御により入力された表示情報をディスプレイ装置上に表示させる。バス308は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0050】
PC300は、以上の構成により、電力量計110等の各エネルギー消費量計測装置やPLC200からの信号を受信して保存、計算処理等を行い、オフセット印刷機100のエネルギー消費量や、オフセット印刷機100の運転情報を、エネルギー管理画面としてリアルタイムに表示する。また、印刷物の生産数量情報を基に、エネルギー消費量とあわせて、印刷物1枚当りの消費エネルギーであるエネルギー原単位を算出する。エネルギー原単位を用いて、印刷機ごとのエネルギー効率を比較することが可能になる。
【0051】
次に、図5を用いてオフセット印刷機100のエネルギー管理システム1におけるエネルギー管理方法について説明する。
【0052】
まず、電力量計110、エア流量計120、冷却水流量計130、ガス流量計140より、電力消費量、圧縮空気消費量、冷却水消費量、ガス消費量(エネルギー消費量)のデータを計測し、パルス信号として無線によりPC300に送信する。また、PLC200は、オフセット印刷機100のエンコーダ27より版胴23の回転数をオフセット印刷機100の運転情報として取得するとともに、コンベア53のリジェクト信号を生産数量情報として取得し、これらのデータをPC300に送信する(ステップS101)。
【0053】
PC300は、これらのエネルギー消費量、運転情報のデータを受信して、制御部301により計算、表示処理を行い、エネルギー消費量、運転情報をエネルギー管理画面として表示部307に表示する(ステップS102)。さらに、生産数量情報を受信して、印刷物の生産数量を基に、エネルギー消費量とあわせて、印刷物1枚当りの消費エネルギーであるエネルギー原単位を算出する。
【0054】
オペレータは、表示部307に表示されたエネルギー管理画面を見てエネルギーの消費状況を把握、管理する(ステップS103)。
【0055】
図6、7は、PC300の表示部307に表示されるエネルギー管理画面の例である。
【0056】
図6(a)は、エネルギー消費量を表示するエネルギー管理画面500の例で、エネルギー消費量として電力消費量を表示するものである。エネルギー管理画面500は、表示切り替えボタン501、エネルギー消費量グラフ503、凡例505等を有する。表示切り替えボタン501は、表示するエネルギーの種類を切り替えるためのもので、画面上でクリックを行うことにより選択されたエネルギーについてエネルギー消費量の表示を行う。エネルギー消費量グラフ503は、各エネルギーについて、横軸を時刻とし、縦軸にエネルギー消費量を示すもので、例えば、計測箇所(前述の主モータ61、コンプレッサ62、熱交換器63、湿し水循環装置64、機内照明65等)ごとに表示パターンを変えた積み上げ棒グラフとして表示する。
【0057】
図6(b)は、オフセット印刷機100の運転情報を示すエネルギー管理画面600の例で、運転情報として版胴23の回転数を表示するものである。エネルギー管理画面600は、運転状況グラフ601、凡例603等を有する。運転状況グラフ601は、横軸を時刻とし、縦軸に版胴23の回転数を示すもので、例えば、折れ線グラフとして版胴23の回転数の時間変化が示される。
【0058】
エネルギー管理画面としては、例えば図6(a)に示すエネルギー消費量と図6(b)に示すオフセット印刷機100の運転情報を切り替えボタン(不図示)により切り替えるものであってもよいが、同一の画面で示すものであってもよい。同一の画面で表示することで、エネルギー消費量と印刷機運転情報が一度に把握できる。同様に、図6(a)では電力、圧縮空気等、表示するエネルギーを表示切り替えボタン501で切り替えるようにしているが、全てのエネルギーについて同じ画面に表示するものであってもよい。
【0059】
また、エネルギー管理画面として、オフセット印刷機100のエネルギー消費量と運転情報を時刻を揃え重ねて表示することも可能で、図7は、これらを重ねて表示するエネルギー管理画面700の例である。
【0060】
エネルギー管理画面700は、エネルギー管理画面500と同様にエネルギー消費量が表示され、表示切り替えボタン701、エネルギー消費量グラフ703、凡例705等を有する。そして、エネルギー消費量グラフ703では、エネルギー消費量とオフセット印刷機100の運転情報(版胴23の回転数)が、時刻を揃えて重ね表示される。
【0061】
エネルギー管理画面700として、オフセット印刷機100の運転情報と、エネルギー消費量を、時刻を揃え重ねて表示することで、オフセット印刷機100が運転していないにも関わらず、エネルギーが消費されている状況等を容易に認知できるようになる。
【0062】
例えばエネルギー管理画面700において、2時、13時では、オフセット印刷機100による印刷がほぼ行われていない状態にも関わらず、電力が消費されていることが分かる。エネルギー管理画面を監視することにより、このような状況を迅速に把握し、例えば不要な箇所で電力のOFFを行うなど、各部位の電力のON/OFFの適当な管理を行うことができる。このような管理は、PC300やPLC200による制御により自動化することも可能である。
【0063】
また、PC300によりエネルギー消費量に応じてエネルギー管理画面に警告を表示させることも可能で、例えば運転情報により長期間印刷機が運転していない(例えば版胴23の回転数が0)状態が続くにも関わらず、エネルギーが消費されている場合にエネルギー管理画面に警告を表示し、オペレータに明確に認知させ、注意を促すことができる。警告の表示は、これを示すメッセージをエネルギー管理画面に表示させてもよいし、色等、エネルギー管理画面の表示状態を変更するものであってもよい。
【0064】
さらに、印刷物の生産数量をエネルギー管理画面として表示することも可能で、例えば図6(b)と同様の形式で、縦軸を印刷物の生産数量とすればよい。さらに、印刷物の生産数量は、図7と同様、エネルギー消費量と時刻を揃え重ねて表示してもよい。また、PC300にてエネルギー消費量を生産数量で除算する計算処理を行い、エネルギー消費効率(エネルギー原単位)として算出し、これをエネルギー管理画面に表示させてもよい。例えば電力消費量を、生産数量で除算して、図6(b)と同様の形式で、縦軸をエネルギー消費効率として表示すればよい。
【0065】
加えて、PC300以外の別のPCをPC300とネットワークを介して接続し、エネルギー管理画面をPC300の他、上記別のPCにも表示させるようにしてもよい。複数のPCでエネルギー管理画面を表示させることで、施設内の複数の箇所、複数のオペレータによりエネルギー管理を行うことができ、より確実なエネルギー管理が可能になる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、オフセット印刷機100の運転情報と、エネルギー消費量を所定の時間間隔で取得し、これらをPC300に表示させ同時にモニタリングすることができる。従って、不必要なエネルギー消費が一目で理解できるようになり、オフセット印刷機100の運転状態に応じて、エネルギーの供給を適切にON/OFF、もしくは調整する処理を迅速に行うことができる。
【0067】
また、印刷物の生産数量を計測することで、これも併せてエネルギー消費状況の管理を行うことができる。印刷物の生産数量は、エネルギー原単位算出の際に用いることもできる。エネルギー原単位を用いて、印刷機ごとのエネルギー効率を比較することが可能になる。エネルギー消費量は、例えば電力量、圧縮空気量、冷却水量、ガス量のうち、少なくともいずれか1つを含むもので、これによりオフセット印刷機100で使用されるエネルギーに適合したシステムとすることができる。
【0068】
オフセット印刷機100の運転情報は、例えば、印刷ユニット21に設けられた版胴23の回転数であり、これをエンコーダ27により取得する。版胴23は1回転する毎に印刷物の1枚ぶんの印刷がなされることになるので、オフセット印刷機100の運転状況として、特に印刷物を生産しているか否かに関わる運転情報を正確に得ることができる。また、印刷物の生産数量の計測は、オフセット印刷機100により印刷された印刷物をスタッカーバンドラー51に搬送するためのコンベア53における、リジェクトのON/OFF信号を取得することで行う。これを用いて、リジェクト(コンベア53から排出)されず、最終的な生産物となる印刷物の数量が把握できるようになる。
【0069】
計測したエネルギー消費量に応じて、エネルギー管理画面に警告を表示させることもできる。例えば長期間オフセット印刷機100が運転していない(印刷していない)状態が続くにも関わらず、エネルギーが消費されている場合に警告を表示し、オペレータに明確に認知させ、注意を促すことができる。また、エネルギー管理画面として、オフセット印刷機100の運転情報と、エネルギー消費量を、時刻を揃え重ねて表示することで、オフセット印刷機100が運転していないにも関わらず、エネルギーが消費されている状況等を容易に認知できるようになる。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係るオフセット印刷機のエネルギー管理システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0071】
1………エネルギー管理システム
3………ロール紙
10………給紙部
20………印刷部
21………印刷ユニット
23………版胴
25………ブランケット胴
30………乾燥部
40………排紙部
50………結束部
51………スタッカーバンドラー
53………コンベア
100………オフセット印刷機
110………電力量計
120………エア流量計
130………冷却水流量計
140………ガス流量計
200………PLC
300………PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット印刷機のエネルギー消費状況を管理するオフセット印刷機のエネルギー管理システムであって、
オフセット印刷機のエネルギー消費量を所定の時間間隔で計測するエネルギー消費量計測装置と、
オフセット印刷機の運転情報を所定の時間間隔で取得する運転情報取得装置と、
前記エネルギー消費量計測装置で計測したエネルギー消費量と、前記運転情報取得装置で取得したオフセット印刷機の運転情報をエネルギー管理画面として表示する情報処理装置と、
を備えることを特徴とするオフセット印刷機のエネルギー管理システム。
【請求項2】
オフセット印刷機による印刷物の生産数量を示す生産数量情報を取得する生産数量取得装置を更に備えることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷機のエネルギー管理システム。
【請求項3】
前記エネルギー消費量計測装置で計測されるエネルギーの量は、電力量、圧縮空気量、冷却水量、ガス量のうち、少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷機のエネルギー管理システム。
【請求項4】
前記運転情報取得装置は、前記オフセット印刷機の印刷ユニットに設けられた版胴の回転数を、エンコーダにより取得するものであることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷機のエネルギー管理システム。
【請求項5】
前記生産数量取得装置は、前記オフセット印刷機により印刷された印刷物をスタッカーバンドラーに搬送するためのコンベアにおける、リジェクトのON/OFF信号を取得することを特徴とする請求項2記載のオフセット印刷機のエネルギー管理システム。
【請求項6】
前記情報処理装置は、エネルギー消費量計測装置で計測したエネルギー消費量に応じて、警告を表示することを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷機のエネルギー管理システム。
【請求項7】
前記情報処理装置は、エネルギー管理画面として、オフセット印刷機の運転情報と、エネルギー消費量を、時刻を揃え重ねて表示することを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷機のエネルギー管理システム。
【請求項8】
オフセット印刷機のエネルギー消費状況を管理するオフセット印刷機のエネルギー管理方法であって、
エネルギー消費量計測装置により、オフセット印刷機のエネルギー消費量を所定の時間間隔で計測するエネルギー消費量計測ステップと、
運転情報取得装置により、オフセット印刷機の運転情報を所定の時間間隔で取得する運転情報取得ステップと、
情報処理装置により、前記エネルギー消費量計測装置で計測したエネルギー消費量と、前記運転情報取得装置で取得したオフセット印刷機の運転情報をエネルギー管理画面として表示する表示ステップと、
を備えることを特徴とするオフセット印刷機のエネルギー管理方法。
【請求項9】
生産数量取得装置により、オフセット印刷機による印刷物の生産数量を示す生産数量情報を取得する生産数量取得ステップを更に備えることを特徴とする請求項8記載のオフセット印刷機のエネルギー管理方法。
【請求項10】
前記エネルギー消費量計測ステップで計測されるエネルギーの量は、電力量、圧縮空気量、冷却水量、ガス量のうち、少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項8記載のオフセット印刷機のエネルギー管理方法。
【請求項11】
前記運転情報取得ステップでは、前記オフセット印刷機の印刷ユニットに設けられる版胴の回転数を、エンコーダにより取得することを特徴とする請求項8記載のオフセット印刷機のエネルギー管理方法。
【請求項12】
前記生産数量取得ステップでは、前記オフセット印刷機により印刷された印刷物をスタッカーバンドラーに搬送するためのコンベアにおける、リジェクトのON/OFF信号を取得することを特徴とする請求項9記載のオフセット印刷機のエネルギー管理方法。
【請求項13】
前記エネルギー消費量計測ステップで計測したエネルギー消費量に応じて、情報処理装置により、警告を表示させる警告表示ステップを更に備えることを特徴とする請求項8記載のオフセット印刷機のエネルギー管理方法。
【請求項14】
前記表示ステップでは、エネルギー管理画面として、オフセット印刷機の運転情報と、エネルギー消費量を、時刻を揃え重ねて表示することを特徴とする請求項8記載のオフセット印刷機のエネルギー管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−207045(P2011−207045A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77004(P2010−77004)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】