説明

オフセット印刷用インキおよび印刷物

【課題】印刷高速化における、版パイリングによる着肉不良の発生を防ぐオフセット印刷用インキの提供。
【解決手段】着色剤、バインダー樹脂、ギルソナイト樹脂、植物油類、石油系溶剤および非イオン系界面活性剤を含有するオフセットインキにおいて、非イオン系界面活性剤が特定のポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸であり、そのHLB値が8〜14であり、かつインキ中に0.05〜3.0重量%含有されることを特徴とするオフセット印刷用インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷用インキ、特に低級紙を使用した高速印刷においても版パイリングの発生が無く、安定した着肉の印刷物を提供するオフセット印刷用インキに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷スピードの高速化が進んでいるが、印刷スピードが高速になるに伴い、インキのタック値が上昇するため、新聞紙・コミック・週刊誌等の紙の強度が弱い低級紙を用いたオフセット印刷では、用紙から紙繊維が脱落しやすい状況にある。
【0003】
用紙から脱落した紙繊維は、ブランケット、インキローラー、水付けローラーに堆積し、インキ転移の阻害や汚れの発生といった問題を引き起こすが、近年顕在化している問題として、版の画線部に用紙繊維が堆積する、版パイリングという現象がある。
【0004】
版パイリングが発生すると、用紙繊維が付着した部分のインキ受理性が低下し、着肉不良を引き起こす。着肉不良が発生すると、印刷品質の低下を引き起こすだけでなく、版の洗浄や版交換など生産性の著しい低下も引き起こす。
【0005】
従来、オフセット印刷用インキにおいて、紙繊維の脱落を防ぐ方法として、主としてタック値の低減が行われてきた。タック値低減の方法として様々な改良がされており、炭酸カルシウム、有機ベントナイト、二酸化珪素等の体質顔料を通常量より多く練りこみ、タック値を下げる検討がされているが、低タック化には効果があるものの、インキの流動性の低下、転移性の劣化による濃度ムラを招くおそれがある。また、体質顔料は一般に硬くて微分散が難しく、インキ中に粗大粒子が残る場合があり、粗大粒子が、印刷機の版、ブランケット厚胴、ガイドロール等に悪影響を与え、版磨耗の促進、堆積することによる画線かすれ、こすれ汚れ等の印刷不良の原因となる。
【0006】
オフセット印刷インキ用ワニス中に含有させる樹脂としては、優れた印刷適性から一般的にロジン変性フェノール樹脂を使用しているが、ワニス化する際に用いられるゲル化剤量を、通常より多く配合することで、ワニスに含まれる樹脂比率を下げ、タック低減を狙った検討が行われてきたが、インキが過度に乳化しやすくなり、水棒絡み、転移性低下、ローラー剥げ等の印刷トラブルが発生する原因となる場合がある。
【0007】
また、ワニスに使用されている樹脂自体を高分子化することにより、ワニス中の樹脂比率を下げ、タック値低減を狙った検討も行われてきた。しかし、特許文献1、2に示されるように、高分子量樹脂の使用では、溶解性・流動性が低下し、転移不良による濃度変動、光沢の低下など、印刷物の品質低下を引き起こす。
【0008】
さらに、特許文献3に示されるようにポリブデン、ポリブタジエンを含有させると、インキ粘度と流動性の調整が困難になる。
【0009】
特許文献4には、非イオン性界面活性剤を使用する方法が開示されているが、ソルビトール付加物についての記載は無く、特許文献5には、特定の界面活性剤を使用する方法が開示されているが、版パイリング防止に関しての記載は無い。また、この他の特許文献、非特許文献においてもある種の界面活性剤が版パイリングを改善させるとの記載は見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−322411号公報
【特許文献2】特開2008−156429号公報
【特許文献3】特開2008−255181号公報
【特許文献4】特許第3895044号
【特許文献5】特許第3895046号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
印刷高速化における、版パイリングによる着肉不良の発生を防ぐオフセット印刷用インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意検討を進めた結果、以下に定める素材をオフセット用印刷インキに効果的に配合することで版パイリング発生を抑制することを見出した。
【0013】
第1の発明は、着色剤、バインダー樹脂、ギルソナイト樹脂、植物油類、石油系溶剤および非イオン系界面活性剤を含有するオフセットインキにおいて、非イオン系界面活性剤が下記一般式(1)で示されるポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸で、非イオン系界面活性剤のHLB値が、8〜14であり、かつ全インキ中に0.05〜3.0重量%含有することを特徴とするオフセット印刷用インキに関するものである。
一般式(1)
【化1】


(式中、n1、n2、n3、n4、n5およびn6は、それぞれ、独立に、10〜40の整数を示す。さらに、X1、X2、X3、X4、X5およびX6は、それぞれ、独立に、COR1、COR2、COR3、COR4およびHから選ばれる1種類であり、X1、X2、X3、X4、X5およびX6のうちすくなくとも、2つは、Hである。R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数が、4〜20である炭化水素基を示す。)
【0014】
第2の発明は、一般式(1)において、R1、R2、R3およびR4が、C1733であることを特徴とする第1の発明記載のオフセット印刷用インキに関するものである。
【0015】
第3の発明は、第1または第2の発明記載のオフセット印刷用インキに、さらに、平均粒子径2〜15μmであり、かつ、比表面積50〜300m/gである粉末状シリカを0.3〜5.0重量%含有させることを特徴とするオフセット印刷用インキに関するものである。
【0016】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか記載のオフセット印刷用インキで印刷してなる印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
従来では、単にタックを低減させることによって用紙繊維の脱離を防ぎ、版パイリングを抑制していたので、インキ転移不良、ローラー剥げなどのトラブルが発生していたが、本発明によって、インキのタックを低減すること無く、版パイリングが発生しない良好な印刷物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の界面活性剤について説明する。
【0019】
界面活性剤は、構造的には、親水性基と親油性基とを同時に有する両親媒性物質である。界面活性剤には、イオンに解離するイオン系界面活性剤および解離しない非イオン系界面活性剤とがある。
【0020】
イオン系界面活性剤は、水溶液の状態で解離するときの電荷の種類によって陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤に分類できる。
本発明において、非イオン系界面活性剤である一般式(1)で示される特定のポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸を使用した場合に、版パイリングの発生が抑制される。
【0021】
本発明で使用される非イオン系界面活性剤としては、次の一般式(1)で示されるものである。
一般式(1)
【化2】


(式中、n1、n2、n3、n4、n5およびn6は、それぞれ、独立に、10〜40の整数を示す。さらに、X1、X2、X3、X4、X5およびX6は、それぞれ、独立に、COR1、COR2、COR3、COR4およびHから選ばれる1種類であり、X1、X2、X3、X4、X5およびX6のうちすくなくとも、2つは、Hである。R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数が、4〜20である炭化水素基を示す。)
【0022】
一般式(1)で示される非イオン系界面活性剤において、R1〜R4で表される炭素数が4〜20の範囲にある炭化水素基としては、直鎖状または分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基または不飽和脂肪族炭化水素基、あるいは飽和脂肪族炭化水素基または不飽和脂肪族炭化水素基を有する芳香族炭化水素基などがあげられる。さらに、R1〜R4として好ましくはC1733である。
nの数が10〜40の範囲を外れると、版パイリング抑制効果が得られない。
【0023】
本発明で非イオン系界面活性剤のHLB値とは、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値である。HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなる。HLB値を求める式は、下記計算式(1)にて求めることができる。
【0024】
計算式(1)
【数1】

【0025】
すなわち、計算式(1)は、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸のようなアルキルエーテル型の非イオン系界面活性剤において、オキシエチレン基とアルキル基との重量比を計算し、オキシエチレン含有量として求め、計算式(1)に当てはめ計算するものである。オキシエチレン含有量としては、下記計算式(2)で求める。
計算式(2)
【数2】

【0026】
本発明で使用される非イオン系界面活性剤では、HLB値8〜14であり、かつ、全インキ中に0.05〜3.0重量%配合されていることが特徴である。さらに、HLB9〜12であり、かつ、全インキ中に0.1〜2.0重量%配合されていることが好ましい。HLB8未満では、パイリングを抑制する効果が低く、HLB14を上回る場合は、インキの過剰乳化のため、印刷機でのローラー間での円滑な転移性を確保出来なくなる。同様に、配合量が0.05重量%未満であれば、版パイリングを抑制する効果が低く、3.0重量%を上回る場合は、インキの過剰乳化のため、印刷機でのローラー間での円滑な転移性を確保出来なくなる。
【0027】
本発明で使用されるシリカの粒子径は、走査型電子顕微鏡により1000個測定し、算出した平均直径である。また、比表面積は、試料約50mgを精秤し、200℃で15分間脱気した後、混合ガス(N70%、He30%)を用いてBET比表面積測定装置にて比表面積を算出した値である。
【0028】
本発明で使用されるシリカは、平均粒子径2〜15μmであり、かつ、比表面積50〜300m/gであることが特徴である。さらに、平均粒子径3〜10μmで、比表面積80〜250m/gであることが好ましい。平均粒子径2μmを下回る場合では、インキ化時の再凝集のおそれがあり、15μmを上回る場合では、乳化制御が困難となり、汚れ防止効果が得られないおそれがある。また、配合量は0.3〜5.0重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜3.0重量%である。配合量が0.3重量%を下回る場合は、インキの乳化抑制が困難であり、汚れ防止効果が得られず、5.0重量%を上回る場合では、インキの流動性の低下、転移性の劣化による濃度ムラを招くおそれがある。
【0029】
本発明で使用される着色剤としては、一般的な無機顔料及び有機顔料を示すことができる。無機顔料としては黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉等を示す事ができる。有機顔料としては、アゾ系として、C系(βナフトール系)、2B系および6B系(βオキシナフトエ系)などの溶性アゾ顔料、βナフトール系、βオキシナフトエ酸アニリド系、モノアゾイエロー系、ジスアゾイエロー系、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料、アセト酢酸アリリド系などの縮合アゾ顔料、フタロシアニン系として、銅フタロシアニン(αブルー、βブルー、εブルー)、塩素、臭素などのハロゲン化銅フタロシアン、金属フリーのフタロシアニン顔料、多環顔料としてペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系顔料を挙げることができる。顔料の添加量は、印刷インキ組成物の全量に対して5〜30重量%である。
【0030】
本発明で使用されるバインダー樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂の他、石油樹脂、アルキド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂変性アルキッド樹脂、ロジンエステル等が挙げられる。ロジン変性フェノール樹脂は、樹脂酸であるロジン、アルキルフェノールとホルマリンの縮合体であるレゾール並びに多価アルコールを反応する事によって得られ、必要に応じてマレイン酸等の第3成分が添加される事もある。石油樹脂は、ビニルトルエン、インデン、クロマンを主成分として、これらのモノマーをカチオン重合して得られたものや、シクロペンタジェンをディールス・アルダー反応によって重合して得られたものがあり、必要に応じてマレイン酸や乾性油、ポリオールが添加される事もある。アルキド樹脂は、グリセリン等の多価アルコールと無水フタル酸等の有機多塩基酸との縮合で作られた骨格に,高級脂肪酸等を結合させた高分子化合物であり、ロジンや石油樹脂を加えることで、ロジン変性アルキド樹脂、石油樹脂変性アルキド樹脂を得ることが可能である。ロジンエステルは、ロジンとグリセリン等のポリオールとをエステル結合で重合した樹脂である。バインダー樹脂の添加量は印刷インキ組成物の全量に対して3〜50重量%である。
【0031】
本発明で使用されるギルソナイト樹脂は、顔料との濡れ性を向上させ、分散効果を高めるために使用される。本発明におけるギルソナイト樹脂は、軟化点120℃〜125℃であり、天然アスファルタムから抽出された脂肪族系炭化水素からなる樹脂で、芳香族系炭化水素、灰分、軽質留分を実質的に含まない。ギルソナイト樹脂の添加量は0.5〜20.0重量%が良く、1.0〜15.0重量%が好ましい。
【0032】
なお、一般的にギルソナイト樹脂は、バインダー樹脂とは異なるものであり、すなわちバインダーとして機能しないため、本発明において、ギルソナイト樹脂は、バインダー樹脂には含めないものとする。
【0033】
本発明における植物油類とは植物油及び植物油由来の化合物であり、グリセリンと脂肪酸とのトリグリセリドにおいて、少なくとも1つの脂肪酸が炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する脂肪酸であるトリグリセリドと、それらのトリグリセリドから飽和または不飽和アルコールとをエステル反応させてなる脂肪酸モノエステル、あるいは植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類が挙げられ、再生植物油も可能である。
【0034】
本発明に関する植物油として代表的ものは、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。これらの植物油を重合したものも挙げられる。植物油の添加量は印刷インキ組成物の全量に対して1〜70重量%配合される。
【0035】
脂肪酸モノエステルは上記植物油とモノアルコールとをエステル交換したものや植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステルである。モノアルコールの代表的なものは、メタノール、エタノール、n−又はiso−プロパノール、n,sec又はte t−ブタノール、ヘプチノール、2−エチルヘキサノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール等の飽和アルコール、オレイルアルコール、ドデセノール、フイセテリアルコール、ゾンマリルアルコール、ガドレイルアルコール、11−イコセノール、11−ドコセノール、15−テトラコセノール等の不飽和脂肪族系アルコールが挙げられる。
【0036】
エーテル類として代表的なものは、ジ−n−オクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジへプチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジデシルエーテル、ノニルへキシルエーテル、ノニルヘプチルエーテル、ノニルオクチルエーテル等が挙げられる。
【0037】
本発明に使用される再生植物油は、以上挙げた植物油等で再生処理可能であるものであれば適用可能である。本発明において、再生される植物油(再生植物油)は、飲食物の製造などに用いた植物油として、飲食店や学校給食、惣菜屋などで天ぷらなどの製造に使用した植物油を回収したものが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、使用後の植物油で再生可能なものであれば適用可能である。
【0038】
また、本発明における植物油の再生処理の方法としては、ろ過、静置による沈澱、活性白土による脱色といった方法が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではなく、適用可能である。
【0039】
本発明に使用される石油系溶剤は、一般的にアロマフリー溶剤と称される芳香族炭化水素が1重量%未満である石油系溶剤を併用する事が出来る。アロマフリー溶剤の初留点は240℃以上かつ300℃以下が望ましい。240℃を下回る初留点では、印刷機のローラー上において溶剤が蒸発し易く、タックの上昇を招く。300℃を超える初留点では、オフセット輪転印刷における熱風乾燥工程で乾燥しにくくなり、乾燥不良を誘発するおそれが生じる。
【0040】
本発明の印刷インキ組成物を製造するには、従来公知の方法で実施する事が出来る。一例としてバインダー樹脂、植物油成分、石油系溶剤、必要に応じてゲル化剤を加えて、180℃1時間のクッキング条件でワニスを製造する。次いで、例えば、前記のワニスに顔料、石油系溶剤、植物油類、顔料分散剤または顔料分散樹脂を加え、ビーズミルや3本ロール等で分散する事により印刷インキ用ベースを得る事が出来る。次いで、植物油類、石油系溶剤、その他の添加剤を加え、所定粘度に調整し印刷インキ組成物を得る事が出来る。インキの種類としては、オフセット輪転印刷機用インキ、浸透型オフセット輪転印刷機用インキ、枚葉印刷機用インキが主なものであるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。本発明において、「部」「% 」は、特に断らない限り、それぞれ「重量部」「重量%」である。
【0042】
(フェノール樹脂の製造)
コンデンサー、温度計、及び攪拌機を装着した四つ口フラスコにパラノニルフェノール660部と92重量%パラホルムアルデヒド200部を仕込み、キシレン溶媒中で、水酸化カルシウムを触媒に用いて90℃、3時間反応させ、水分除去し、キシレン溶解フェノール樹脂を得た。
【0043】
(ロジン変性フェノール樹脂の製造)
コンデンサー、温度計、及び攪拌機を装着した四つ口フラスコにガムロジン360部を仕込み、上記キシレン溶解フェノール樹脂の固形分240部を200℃で滴下し、2時間反応させた。さらに、グリセリン40部を添加し、250℃、20時間反応させ、重量平均分子量6.3万、酸価21のロジン変性フェノール樹脂を得た。
【0044】
(ロジン変性フェノール樹脂ゲルワニスの製造)
コンデンサー、温度計、及び攪拌機を装着した四つ口フラスコに上記ロジン変性フェノール樹脂36.0部、大豆油63.0部、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1.0部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を仕込み、180℃ に昇温させ、同温で60分間攪拌し、放冷しロジン変性フェノール樹脂ゲルワニス(ワニス1)を得た。
【0045】
(ギルソナイト樹脂ワニスの製造)
コンデンサー、温度計、及び攪拌機を装着した四つ口フラスコにER−125レジン(アメリカンギルソナイト社製)を40.0部、大豆油60.0部を仕込み、140℃に昇温させ、同温で60分間攪拌し、ギルソナイト樹脂ワニスを得た。
【0046】
得られたワニスを下記表1の配合で三本ロール及びハイスピードミキサーを用いて粘度6.0〜7.5Pa・sの実施例1〜15、比較例1〜6を得た。
【0047】
【表1】

【0048】
<性能評価試験>
実施例および比較例を用いて、下記の印刷機、印刷条件にて、1時間印刷後の版パイリングの発生状況と印刷時の汚れの発生状況を評価した。
版パイリングが発生した場合は×、発生しない場合は○とした。
印刷時の汚れ状況は、印刷時に水量の調整無く、汚れの発生が無い場合は◎、水量調整によって汚れが解消した場合は○、水量調整を行っても汚れが解消しない場合は×とした。結果を表2に示す。
印刷機 :オフセット輪転印刷機
版材 :PS版
用紙 :新聞用紙
印刷速度:10.0m/s
【0049】
【表2】

【0050】
表2の結果から明らかなように、本発明のオフセット印刷用インキは、界面活性剤を使用することで版パイリングを発生させず、さらに、シリカを使用することで汚れの発生をより抑制できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤、バインダー樹脂、ギルソナイト樹脂、植物油類、石油系溶剤および非イオン系界面活性剤を含有するオフセット印刷用インキにおいて、
非イオン系界面活性剤が、
下記一般式(1)で示されるポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸で、
非イオン系界面活性剤のHLB値が、8〜14であり、
かつ
全インキ中に0.05〜3.0重量%
含有することを特徴とするオフセット印刷用インキ。
一般式(1)

【化1】

(式中、n1、n2、n3、n4、n5およびn6は、それぞれ、独立に、10〜40の整数を示す。さらに、X1、X2、X3、X4、X5およびX6は、それぞれ、独立に、COR1、COR2、COR3、COR4およびHから選ばれる1種類であり、X1、X2、X3、X4、X5およびX6のうちすくなくとも、2つは、Hである。R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数が、4〜20である炭化水素基を示す。)
【請求項2】
一般式(1)において、R1、R2、R3およびR4が、C1733であることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷用インキ。
【請求項3】
前記オフセット印刷用インキに、さらに、平均粒子径2〜15μmであり、かつ、比表面積50〜300m/gである粉末状シリカを、全インキ中に0.3〜5.0重量%含有させることを特徴とするオフセット印刷用インキ。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載のオフセット印刷用インキで印刷してなる印刷物。


【公開番号】特開2011−190300(P2011−190300A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55251(P2010−55251)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】