説明

オフセット印刷用塗工新聞用紙

【課題】コールドセット型高速輪転機印刷において、白色度、印刷後不透明度が良好で、かつ、紙粉・パイリング、セットオフの問題の起こらないオフセット印刷用塗工新聞用紙を提供する。
【解決手段】
填料が内添された原紙上に、顔料と接着剤を含む表面処理剤を塗工、乾燥してなるオフセット印刷用塗工新聞用紙であって、填料の主成分が吸油量40〜80cc/100gの填料であり、顔料の主成分がアスペクト比5〜20の平板状顔料であり、顔料の塗工量が片面当り0.1〜1.0g/m(好ましくは0.1〜0.7g/m)とされ灰分が5〜15%とされているオフセット印刷用塗工新聞用紙。さらに、填料が軽質炭酸カルシウム、平板状顔料がカオリンであることが好ましく、顔料として、平板状顔料とともに、吸油量80cc/100g以上の吸油性顔料が配合されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、白色度と印刷後不透明度が高く、オフセット輪転機で紙粉・パイリング、セットオフの問題の起こらないオフセット印刷用塗工新聞用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のオフセット印刷用新聞用紙は、カラー印刷が多用されており、カラー印刷の見栄えは原紙の白色度が高いほど良くなることから、一般のオフセット印刷用新聞用紙の白色度のアップが要求されている。また、オフセット印刷用新聞用紙には軽量化(低坪量化)が求められている。低坪量の紙は表面の印刷が裏面から見える裏抜けが生じやすく、比較的多量のインクが付与されるカラー印刷では裏抜けが生じやすい。したがって、低坪量であっても高い印刷後不透明度が要求される。
【0003】
オフセット印刷用新聞用紙の白色度を向上させる方法としては、原料のパルプの漂白を進める方法と、白色度の高い填料を添加する方法がある。パルプの漂白を進めて白色度を上げると不透明度が低下することになるので、填料を内添する方法が採用されている。填料を内添すると白色度を上げるとともに不透明度を上げることができる。
【0004】
オフセット印刷用新聞用紙に通常使用される填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、二酸化チタン、炭酸カルシウムなどそれぞれの特性により使用されている。
例えば、二酸化チタンは光散乱係数が非常に高いので、不透明度を向上させるには有効であるが、高価であり、オフセット印刷用新聞用紙では多用されていない。タルク、カオリンは安価であるが、吸油性は高くないので、印刷後不透明度を向上させる効果はそれほど高くない。そこで、特に吸油性の高いホワイトカーボンが比較的少量の添加量で印刷後不透明度向上の効果が高く、多く使用されている。また、炭酸カルシウムは白色度が高く、入手が容易なことから多く使用されている。しかし、これらの内添薬品は、添加量が多くなると、パルプ繊維同士の結合を阻害するので、紙の強度が低下し、紙粉・パイリングの問題が起こりやすくなる。
【0005】
そこで、各種顔料を接着剤とともに原紙表面に塗工する方法が提案されている。具体的には、次のような技術が提案されている。
(1)針状顔料を含みかつ平均吸油量が65cc/100g以上の顔料を含有する塗工層を設けたことを特徴とする、コールドセット型新聞輪転印刷機用の新聞印刷用紙。(特許文献1)
(2)原紙の動的濡れ値が−0.32〜0.20gであり、塗被組成物の顔料として、(a)カオリンを10〜90質量%、(b)不定形で平均粒子径が0.5μm以上の顔料を10〜90質量%含有し、更に、高圧ガーレー透気度試験機による塗被新聞用紙の透気度が300秒/10cc以下であることを特徴とする塗被新聞用紙の製造方法。(特許文献2)
(3)顔料と接着剤と表面サイズ剤とを含有する表面処理剤を塗工してなる印刷用新聞用紙であって、前記顔料の50質量%以上が軽質炭酸カルシウムであり、前記接着剤の主成分が澱粉であり、前記炭酸カルシウムの乾燥塗工量が片面当り0.3〜3.0g/mであるオフセット印刷用新聞用紙。(特許文献3)
【0006】
【特許文献1】特許第2504819号公報
【特許文献2】特許第2823941号公報
【特許文献3】特開2006−169706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1と特許文献2に記載の発明は、塗工層に含まれる顔料によりインクを吸収することを意図したものであり、比較的塗工量が多いので、インクセットが遅くなり、セットオフが懸念される。特許文献3に記載の発明によっても、未だ満足できる白色度と印刷後不透明度が得られていない。
以上のような状況から、浸透乾燥性インクを使用するコールドセット型高速輪転機印刷において、白色度、印刷後不透明度が高く、かつ、紙粉・パイリング、セットオフの問題の起こらないオフセット印刷用新聞用紙が強く要望されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は以下の発明によって達成される。
(1)填料が内添された原紙上に、顔料と接着剤を含む表面処理剤を塗工、乾燥してなるオフセット印刷用塗工新聞用紙であって、
填料の主成分が吸油量40〜80cc/100gの填料であり、顔料の主成分がアスペクト比5〜20の平板状顔料であり、顔料の塗工量が片面当り0.1〜1.0g/mとされ灰分が5〜15%とされていることを特徴とするオフセット印刷用塗工新聞用紙。
(2)平板状顔料がカオリンであることを特徴とする(1)に記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
(3)填料が軽質炭酸カルシウムであることを特徴とする(1)または(2)に記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
(4)顔料として、平板状顔料とともに、吸油量80cc/100g以上の吸油性顔料が配合されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
(5)吸油性顔料が焼成カオリンおよび/またはホワイトカーボンであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、コールドオフセット型輪転機を用いた高精細印刷や高彩色印刷といった高品位多色カラー印刷において、白色度と印刷後不透明度が高く、かつ、紙粉・パイリング、セットオフの問題の起こらないオフセット印刷用塗工新聞用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者等はオフセット新聞輪転機において、使用される用紙の填料と顔料の特性がインクの吸収や印刷適性に与える影響について鋭意検討した。その結果、高精細印刷などの高品位印刷において、その性能が十分に発揮されるためには、填料の吸油量、顔料のアスペクト比、塗工量と灰分を特定することで、白色度と印刷後不透明度の印刷品質と、紙粉・パイリング、セットオフの印刷作業性を両立させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明にかかるオフセット印刷用塗工新聞用紙の原紙は、以下の如くして得られる。まず、原料パルプとして化学パルプ(針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプなど)、機械パルプ(グラウンドウッドパルプ、リファイナーグラウンドウッドパルプ、プレッシャーライズドグラウンドウッドパルプ、サーモメカニカルパルプなど)、古紙パルプ(新聞古紙脱墨パルプ、上質古紙脱墨パルプなど)の1種以上が適宜混合されて、紙料の調成が行なわれる。資源の有効利用の点から古紙パルプは50%以上配合することが好ましい。次いで、紙料中に填料が添加され、さらに必要に応じて、紙力増強剤、歩留り向上剤、強化ロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸などの内添サイズ剤、耐水化剤、染料などの一般に公知公用の抄紙用薬品が添加されて、従来から慣用されている抄紙機により抄紙して原紙が製造される。
【0012】
本発明では原紙に、JISK5101−13−2:2004に基づく煮あまに油による吸油量が40〜80cc/100gの填料を主体に内添し、白色度の向上とインクの裏抜けを防止している。填料の吸油量が40cc/100gより低いと、原紙層のインク吸収能力が低いので裏抜けを起こしやすい。また、本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙は、後述する特定の顔料を特定の塗工量で塗工しているので、原紙層へのインク浸透が抑えられており、吸油量が80cc/100gより高い填料を使用する必要がない。一般的にこれより吸油量の高い填料は吸油量の低い填料よりも高価であり、この点からも本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙は有利となる。
本発明で使用する吸油量が40〜80cc/100gの填料としては、カオリン、軽質炭酸カルシウム、亜鉛華などが挙げられる。なかでも軽質炭酸カルシウムは白色度が高いことに加え、各種の粒子形状や吸油量などの特性を有するものが使用できるので好ましく、結晶形態はカルサイト、アラゴナイト、粒子形状については針状、柱状、紡錘状、立方体状、ロゼッタ型などが使用できる。
【0013】
本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙は、JISP8251:2003に基づき、燃焼温度525℃で測定した灰分が5〜15%とされている。灰分が5%より低いと白色度と印刷後不透明度が不足する。灰分が15%を超えると、パルプ分が少なくなるので強度が低くなり、高速印刷で紙粉、パイリングなどのトラブルを起こしやすくなる。すなわち、本発明ではこのような灰分の範囲とすることで、オフセット印刷用塗工新聞用紙に必要な白色度と印刷後不透明度、及び、紙粉・パイリングなどの印刷作業性を両立させることができる。
【0014】
本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙では、前述した原紙に顔料と接着剤を含む表面処理剤を塗工する。この際、顔料の主成分がアスペクト比5〜20の平板状顔料であり、顔料の塗工量が片面当り0.1〜1.0g/m(好ましくは0.1〜0.7g/m)とする。平板状顔料のアスペクト比が5より小さいと、インクの原紙層への浸透が大きくなり、原紙層に多くのインクが浸透して印刷後不透明度が不足する。アスペクト比が20より大きいとインクの浸透を阻害するので、セットオフの問題を起こす。この理由は、平板状顔料が紙層表面に対して平行に配列するため、インクは平板状顔料を迂回しながら紙へ浸透することになり、浸透距離が長くなってインクの原紙層への浸透が抑えられると考えられる。ただし、アスペクト比が20より大きいと、浸透を阻害する効果が高くなり、セットオフの問題を起こすことになる。したがって、印刷後不透明度が高く、紙粉・パイリング、セットオフの問題の起こらないオフセット印刷用塗工新聞用紙を得ることができる。
【0015】
本発明で使用するアスペクト比が5〜20の平板状顔料としては、フィロ珪酸塩鉱物が挙げられる。フィロ珪酸塩鉱物は、SiO四面体が面状に結合している層状型珪酸塩鉱物であり、カオリン−蛇紋石群(カオリン、ハロイ石、蛇紋石、白石綿など)、スメクタイト群(モンモリロン石、ヘクトライト)、パイロフィライト−タルク群(葉蝋石、タルク)、雲母群(白雲母、黒雲母、鱗雲母など)、緑泥石群(クリノクロア石など)、蛭石群(苦土蛭石)などに分類されている。本発明では、このなかで、カオリンを使用するのが白色度が高いので好ましい。
【0016】
さらに、顔料として前述したアスペクト比5〜20の平板状顔料とともに、吸油量が80cc/100g以上の吸油性顔料が配合されることが好ましい。吸油性顔料としては、焼成カオリン、ホワイトカーボン、軽質炭酸カルシウム、尿素ホルマリン樹脂などが挙げられる。なかでも、焼成カオリン、ホワイトカーボンは吸油量の高いものが容易に入手できるので好ましい。この吸油性顔料により、塗工層のインク吸収能が高くなり、インクが過度に原紙層に浸透することがないので、印刷後不透明度の高いオフセット印刷用塗工新聞用紙が得られる。吸油量が80cc/100gより小さい顔料を配合しても塗工層のインク吸収能を高める効果が不十分である。
【0017】
前述した効果を発揮させるための顔料の塗工量は片面あたり0.1〜1.0g/m(好ましくは0.1〜0.7g/m)とする必要がある。このような範囲では、顔料は原紙表面に完全な被膜を形成することなく、散在している。紙面に印刷されたインクは、原紙表面に塗工した顔料によって吸収されるが、一部は顔料に吸収されず、原紙層に浸透したインクは吸油性のある填料に吸収させることにより紙に定着する。顔料の塗工量が片面あたり0.1g/mより少ないと、顔料によるインクの吸収とインクを迂回させる能力が不足し、インクが過度に原紙層に浸透することによって、印刷後不透明度が不足する。顔料の塗工量が片面あたり1.0g/mより多いと、原紙表面に顔料の被膜を形成するのでインクの浸透が少なくなり、インク乾燥性が悪くなる不具合を生じる。このように、填料と顔料の特性と、顔料の塗工量を組み合わせることで、本発明の効果が発揮される。すなわち、原紙表面に塗工した顔料によってインクの一部を吸収させると共に、顔料に吸収されずに原紙層に浸透したインクが原紙層に含まれる吸油性の填料に吸収されることにより、インクが定着し、インクが過度に原紙層に浸透することがないので、印刷後不透明度の高いオフセット印刷用塗工新聞用紙が得られることになる。使用する填料と顔料のその他の物性については特に限定はないが、白色度が高く光散乱係数が高いものが好ましい。
【0018】
本発明では表面処理剤に前記顔料とともに、接着剤を顔料の接着能を向上させ、パイリングなどの表面強度に纏わるトラブルを回避するために配合する。表面強度と印刷後不透明度の両者を高めるための接着剤としては、澱粉類を含むことが必要である。これらの接着剤は顔料との相溶性が良好で、塗工時に凝集などを起こし難いため、特に好ましく用いられる。
【0019】
澱粉類は、親水性成分である繊維との接着能力が高く、塗工量が少ない場合において紙表面から脱落し易い微細繊維なども強力に接着するため好ましい。前記澱粉類としては、酵素変性澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、疎水化澱粉などが例示される。なお、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどの水溶性セルロース化合物、ポリビニルアルコール化合物やポリアクリルアミド類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類やラテックス類などの通常の塗工紙用接着剤を一種類以上併用しても良い。
【0020】
本発明においては、良好な塗工適性と印刷作業性を提供する上で、接着剤の配合比を顔料100質量部に対する接着剤の比率が乾燥質量で200質量部未満、好ましくは30質量部以上、200質量部未満とする。接着剤の配合比が規定量より低いとパイリングなどに代表される表面強度に纏わるトラブルが起こるおそれがあり、規定量より高いと印刷後不透明度を悪化させたり、セットオフが生じやすくなる。
【0021】
表面処理剤をオフセット印刷用紙原紙へ塗工するための装置としては、特に限定されるものではないが、例えばツーロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーターなどのロールコーター、トレーリング、フレキシブル、ロールアプリケーション、ファウンテンアプリケーション、ショートドゥエルなどのベベルタイプやベントタイプのブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、グラビアコーターなどの公知公用の装置が適宜使用される。なお、表面処理剤組成物を塗工後の湿潤塗工層を乾燥する方法としては、例えば、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥などの各種方式が採用できる。
【0022】
本発明のコールドオフセット用新聞印刷用紙の製造に関しては、塗工層を形成後に、各種キャレンダー装置にて平滑化処理が施されているが、かかるキャレンダー装置としては、スーパーキャレンダー、ソフトキャレンダー、グロスキャレンダー、コンパクトキャレンダー、マットスーパーキャレンダー、マットキャレンダーなどの一般に使用されているキャレンダー装置が適宜使用される。キャレンダー仕上げ条件としては、剛性ロールの温度、キャレンダー圧力、ニップ数、ロール速度、キャレンダー前水分などが要求される品質に応じて適宜選択される。キャレンダー装置の材質は、剛性ロールでは、金属もしくは、その表面に硬質クロムメッキなどで鏡面処理したロールである。また弾性ロールはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリレート樹脂などの樹脂ロール、コットン、ナイロン、アラミド樹脂などを成形したロールが適宜使用される。なお、キャレンダーによる仕上げ後の塗工紙の調湿、加湿のための水塗り装置、静電加湿装置、蒸気加湿装置などを適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0023】
本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙は、JISP8148:2001「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準じて測定した白色度が55%以上、好ましくは57%以上、さらに好ましくは60%以上となるようにする。白色度は高いほうが印刷発色コントラストを得られるためカラー印刷では特に高いほうがよい。またJAPAN TAPPI No.45:2000に準じて測定した印刷後不透明度を90%以上にする。これも高ければ高いほうがよい。印刷後不透明度が低いと両面に印刷を行う塗工新聞用紙の場合には裏面の印刷品質を低下させるため好ましくない。そのほか、この原紙の物性は浸透乾燥性インクをコールドセット型高速輪転機で印刷できるに足るものである必要がある。また、引裂強さ、伸び、サイズ度等も、一般のオフセット印刷用新聞用紙並みの物性を有するものであればよい。このようにして、本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙が得られる。
【実施例】
【0024】
次に実施例と比較例により、本発明の効果を説明する。なお、特に断りのない限り、%は固形分質量%を、部は固形分質量部を表す。
(実施例1)
新聞古紙脱墨パルプ70質量部とサーモメカニカルパルプ30質量部をパルプ原料として使用し、中性ロジンサイズ剤をパルプ原料100%に対し、0.3%添加し、硫酸バンドでpHを6.5に調整し、填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(吸油量40cc/100g)を添加してギャップフォーマー型抄紙機で抄紙し、顔料にカオリン(アスペクト比11)と焼成カオリン(吸油量95cc/100g)を使用した下記表面処理剤を、ゲートロールコーターで原紙両面に塗工して坪量43.0g/mのオフセット印刷用塗工新聞用紙を製造した。なお、顔料塗工後の灰分が8.0%となるように填料の添加量を調整した。
(表面処理剤)
カオリン(アスペクト比11、吸油量45cc/100g)90部、焼成カオリン(吸油量95cc/100g)10部、顔料:酸化澱粉=100:150(固形分質量比)、固形分濃度15%、顔料塗工量片面0.7g/m
【0025】
(実施例2)
填料としてロゼッタ型軽質炭酸カルシウム(吸油量75cc/100g)を使用し、灰分を5.0%とした以外は、実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を製造した。
(実施例3)
填料としてロゼッタ型軽質炭酸カルシウム(吸油量75cc/100g)を使用し、灰分を15.0%とし、下記表面処理剤を塗工した以外は、実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を製造した。
(表面処理剤)
カオリン(アスペクト比15、吸油量40cc/100g)50部、焼成カオリン(吸油量95cc/100g)50部、顔料:酸化澱粉=100:120(固形分質量比)、固形分濃度15%、顔料塗工量片面0.7g/m
(実施例4)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(吸油量40cc/100g)を使用し、灰分を10%とし、下記表面処理剤を塗工した以外は、実施例3と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を製造した。
(表面処理剤)
カオリン(アスペクト比15、吸油量40cc/100g)70部、ホワイトカーボン(吸油量180cc/100g)30部、顔料:酸化澱粉=100:120(固形分質量比)、固形分濃度16%、顔料塗工量片面1.0g/m
(実施例5)
顔料に柱状軽質炭酸カルシウム(アスペクト比5、吸油量50cc/100g)を使用し、表面処理剤の固形分濃度を3%、顔料塗工量を片面0.1g/mとした以外は、実施例4と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を製造した。
【0026】
実施例1〜5により得られたオフセット印刷用塗工新聞用紙の白色度、印刷後不透明度、印刷評価を表1に示す。
【0027】
(比較例1)
下記表面処理剤を塗工した以外は、実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を製造した。
(表面処理剤)
タルク(アスペクト比3、吸油量30cc/100g)100部、顔料:酸化澱粉=100:150(固形分質量比)、固形分濃度15%、顔料塗工量片面0.7g/m
(比較例2)
下記表面処理剤を塗工した以外は、実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を製造した。
(表面処理剤)
カオリン(アスペクト比25、吸油量35cc/100g)90部、焼成カオリン(吸油量95cc/100g)10部、顔料:酸化澱粉=100:150(固形分質量比)、固形分濃度15%、顔料塗工量片面0.7g/m
(比較例3)
表面処理剤の固形分濃度を2%、顔料塗工量を片面0.05g/mとした以外は、実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を製造した。
(比較例4)
表面処理剤の固形分濃度を17%、顔料塗工量を片面1.1g/mとした以外は、実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を製造した。
(比較例5)
填料として不定形重質炭酸カルシウム(吸油量25cc/100g)を使用した以外は、実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を製造した。
【0028】
比較例1〜5により得られたオフセット印刷用塗工新聞用紙の白色度、印刷後不透明度、印刷評価を表2に示す。なお、各評価は以下の方法により行った。
(灰分)JISP8251:2003に基づく、燃焼温度525℃での灰分を測定した。
(白色度)JISP8148:2001に準じて測定した。
(印刷後不透明度)JAPAN TAPPI No.45:2000に準じて測定した。
(印刷評価)
パイリングは、RI試験機でタック値13のインキを使用して印刷を行い、ブランケットに残ったインキをコート紙に転写して白抜け部分を、◎優れる、○良い、×悪い の3段階で評価した。セットオフは、RI試験機でインキ(NEW KING ECO墨/東洋インキ製造株式会社製)を1g使用して印刷を行い、印刷面と白紙を重ね合わせて再度RI試験機でニップし、白紙に転写したインキの濃度を、◎低濃度であり問題なし、○中濃度であるが実用上問題なし、×濃度が高く実機でセットオフ発生頻度が高い の3段階で評価した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
本発明の実施例1〜5では、白色度、印刷後不透明度が高く、パイリング、セットオフの印刷評価も良好となっている。
比較例1は実施例1と比較すると、顔料のアスペクト比が3と実施例1の11に対して低いので、印刷後不透明度が89.5%と実施例1の91.5%に対し低くなっている。
比較例2は実施例1と比較すると、顔料のアスペクト比が25と実施例1の11に対して高いので、印刷後不透明度は高いが、セットオフの評価が悪くなっている。
比較例3は、顔料の塗工量が0.05g/mと少ないので、白色度、印刷後不透明度ともに低くなっている。
比較例4は、顔料の塗工量が1.1g/mと多いので、セットオフの評価が悪くなっている。
比較例5は実施例1と比較すると、填料の吸油量が20cc/100gと実施例1の40cc/100gより低いので、印刷後不透明度が89.5%と実施例1の91.5%より低くなっており、インクの原紙層への浸透が大きいことが原因と考えられる。
【0032】
以上に示したように本発明によれば、白色度と印刷後不透明度が高く、パイリング、セットオフの印刷評価の良好なオフセット印刷用塗工新聞用紙を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
填料が内添された原紙上に、顔料と接着剤を含む表面処理剤を塗工、乾燥してなるオフセット印刷用塗工新聞用紙であって、
填料の主成分が吸油量40〜80cc/100gの填料であり、顔料の主成分がアスペクト比5〜20の平板状顔料であり、顔料の塗工量が片面当り0.1〜1.0g/mとされ灰分が5〜15%とされていることを特徴とするオフセット印刷用塗工新聞用紙。
【請求項2】
平板状顔料がカオリンであることを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
【請求項3】
填料が軽質炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
【請求項4】
顔料として、平板状顔料とともに、吸油量80cc/100g以上の吸油性顔料が配合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
【請求項5】
吸油性顔料が焼成カオリンおよび/またはホワイトカーボンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。

【公開番号】特開2009−155788(P2009−155788A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341971(P2007−341971)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(304040072)丸住製紙株式会社 (51)
【Fターム(参考)】