説明

オフセット紙用のコーティング組成物及びそれを塗布した紙

本明細書は、少なくとも片面にトップコーティング層を有する、例えばTAPPI 75°光沢度が35%未満の、又は高光沢特性を有するオフセット印刷用塗工紙を開示し、このトップコーティング層が、顔料成分100乾燥重量部(この中に、1以上の中度から強度のH供与体で処理し、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理した結果、表面及び内部構造改質を持つ微粒子重質炭酸カルシウムを5〜40乾燥重量部の範囲で含む)、バインダ成分を2〜20バインダ乾燥重量部、及び(通常の)添加剤を0〜8乾燥重量部の範囲で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
少なくとも片面に、印刷されるトップコーティング層を有する、マット、絹目/中間光沢又は光沢のある/高光沢な、オフセット印刷用塗工紙。
【背景技術】
【0002】
枚葉給紙オフセット印刷の分野では、できるだけ素早く、印刷したての用紙をさらに再印刷及び加工できることが望ましいが、同時に、所望の印刷光沢及び所望の解像度を得られるように、用紙の表面内及び表面上に印刷インクをなおも定着させられることが望ましい。この状況において、一方で、物理的なインクの乾燥プロセスが関連し、これは、例えば、細孔から粗い孔までの緩やかな(gradual)系又は微細孔の特別な系による、受像コーティングへのインクビヒクルの実際の吸収と関係する。他方、いわゆるインクの化学的な乾燥があり、これは、インク受容層の表面内及び表面上でのインクの固化と関係し、通常、インクの架橋可能な成分の酸化架橋(酸素が関与)によって起こる。この化学的乾燥プロセスは、一方で、赤外線放射によってアシストすることもできるが、架橋プロセスを触媒的にサポートする特定の化学物質をインクに加えることによって促進してもよい。インクの塗布後最初の時点での物理的乾燥が効率的であればあるほど、後の化学的乾燥がより迅速且つより効率的に起こる。
【0003】
最近では、一般的に、再印刷及び加工までの時間は数時間の範囲であり(標準的な印刷レイアウトの再印刷までの標準値は約1〜2時間、標準的な印刷レイアウトの加工までの標準値は約12〜14時間、マット紙はこれらの点で光沢のある紙より厳しい(critical))、現在のインク及び/又は紙技術の深刻な不利点となっている。というのも、これにより、全印刷工程のスピードが落ち、中間保管が必要となるからである。今日、例えば、印刷工程後、電子ビーム硬化又は紫外線放射を使用すれば、時間の短縮は可能であるが、どちらの使用にも、特別なインクと特別な装置が必要となり、印刷工程及びその後に、コスト高を招き、さらなる問題を生じる。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には、この点における改良が記載されている。これら2つの開示の好ましい実施形態では、特定の非晶質シリカ顔料、つまり高(ナノ)微細内部孔を有するシリカゲルを用いて、オフセット印刷にとって非常に有利な素早いインクセット特性及び化学的乾燥特性を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO−A−2007/006794
【特許文献2】WO−A−2007/006796
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、少なくとも片面にトップコーティング層を有するオフセット印刷用の改良されたコーティング及び/又は塗工紙を提供することであり、この紙は、マット、中間光沢又は高光沢であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、マットグレードの場合、TAPPI 75°(Tappi 480,75°、DIN EN ISO 8254-T1+2-03(75°))光沢度が35%未満、中間光沢グレードの場合、TAPPI 75°光沢度が35〜70%の範囲、及び光沢グレードの場合、TAPPI 75°光沢度が少なくとも70%である、オフセット印刷用塗工紙を提供することによって達成され、前記塗工紙は、少なくとも片面にトップコーティング層を有し、前記トップコーティング層が、
−顔料成分100乾燥重量部(この中に、1以上の中度から強度のオキソニウムイオン(H)供与体、及び場合によりガス状の二酸化炭素で処理した結果、ナノサイズの表面及び内部(細孔)構造改質を持つ微粒子重質炭酸カルシウムを5〜40乾燥重量部だけ(only)含み、ナノサイズの表面及び内部細孔構造とは、好ましくは、5〜100nmの範囲、好ましくは30〜70nmの範囲の平均細孔径を有し、最も好ましくは狭い細孔径分布を有する、内部及び/又は表面細孔を含むことを意味する)、
−バインダ成分を2〜20乾燥重量部、好ましくは5〜12乾燥重量部、及び
−(通常の)添加剤を0〜8乾燥重量部の範囲で含む。
【0008】
好ましくは、マットコート紙の場合、TAPPI 75°光沢度は、35%未満、好ましくは25%未満である。高光沢コート紙の場合、好ましくは、Tappi 75°光沢度は、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%又は85%でさえある。
【0009】
具体的には、例えばUS6,666,953に開示(けれども必ずしもガス状の二酸化炭素での関連する処理をしない)の、及び、例えば、好ましくはHydrocarb V70 R240 MEタイプの、商品名Hydrocarb V70でスイスのOmyaから入手可能な、提案する(ナノサイズの)表面と内部(細孔)構造改質を持つ微粒子重質炭酸カルシウムを用いると、一方で、たとえ顔料成分の唯一の構成要素でなくとも、高速から超高速なインクセット特性を提供できることがわかった。実際に、意外にも、この顔料の顔料成分のうち高々40乾燥重量部もあれば十分なことがわかった。具体的には、シリカゲルが顔料成分中に存在する場合に得られるインクセット特性と同様の、全体的にみて(overall)非常に速いインクセット特性を得ることが可能であることがわかった。つまり、同等でなくとも同様の、全体的にみて非常に速いインクセット特性を保ちながらも、完全な埋め合わせでなくとも少なくとも部分的に置き換えるために、又は、コーティング中のシリカゲル又は一般的な非晶質シリカ顔料を置き換えるために、提案する特定の顔料を使用することができる。これは主要な成果である。というのも、シリカゲルはコーティング工程での取り扱いが困難であり(例えば、シリカゲル水性顔料スラリー及び調製コーティングの低固体の問題や粉末形成の問題)、例えばコーティング組成物の付加的な成分による、補正されなければならない調製コーティングの副作用を多くもたらすだけでなく、それに加えて、シリカゲル顔料が通常比較的高価であるため、置き換えは費用の点において非常に魅力的な利点を提供するからである。
【0010】
本発明の第1の実施形態によると、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムが、顔料成分中に10〜30乾燥重量部、好ましくは20〜30乾燥重量部の範囲で含まれる。例えば、顔料成分の25%は、ほぼ理想的な速いオフセット印刷特性を示すのに十分であることがわかった。
【0011】
別の好ましい実施形態は、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムが、約1.5〜2.5μmの範囲のメジアン粒径を有することを特徴とする。また、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムが、0.01〜0.1μmの範囲、好ましくは0.03〜0.08μmの範囲、最も好ましくは約0.05μmの平均内部細孔径を有すると有利である。実際に、速い吸収速度のための高い推進力を提供するための、全体のインクビヒクル輸送に効果的な約0.1〜1μmの平均細孔又は空隙径を持つ顔料マトリックス全体に、互いにつながった内部粒子細孔又は空隙のパラレルな系を補完する、約0.05μmというこの特定の範囲は、典型的なオフセット印刷インクによくマッチしていて、非常に有利な印刷特性につながるように見える。具体的には、上記Hydrocarb V70、及び場合により以下に詳述するPCC顔料によって提供される対応するマトリックスを含む細孔システムは、よくマッチしているように思われ、50nmの推進力細孔は、10〜30nm細孔という典型的な径範囲を有するシリカゲルの場合と同様に、効果的であると思われる。いかなる理論にも拘束されず(Without being bound to any theory)、マトリックスを加えた(又はマトリックスと混合した)Hydrocarb V70タイプの顔料の場合、相対的に大きい細孔のパラレルなトラフィックシステムが、いくらかより効果的でさえあるように見える。
【0012】
さらに、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムは、好ましくは、30〜80m/gの範囲、好ましくは50〜70m/gの範囲の表面積を有する。さらに、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムは、有利には、粒子の73〜83%が2μmより小さく、粒子の35〜44%が1μmより小さいような粒度分布を有することができる。
【0013】
表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムが、好ましくはいわゆるroseタイプであれば、最終のマットな、中間光沢の又は高光沢のオフセット紙の速いインクセット特性にとって理想的で非常に良好な空隙率が得られる。このことは、クラスター化されたナノサイズのプレートレット構造を有し、内部ナノサイズ細孔を有するこの顔料の個々の粒子が、通常丸く、ほぼ球形であることを意味し、これらは、US2006/0162884の添付書類4に開示されているものと、同一でなくとも似ている。また、他のHydrocarb V70形状も可能であり、例えば、以下の文献に記載の、いわゆる卵、ゴルフボール、脳(brain)及びベルーガ/キャビア型であることも可能である。
Achieving Rapid Absorption and Extensive Liquid Uptake Capacity in Porous Structures by Decoupling Capillarity and Permeability: Nanoporous Modified Calcium Carbonate, in Transport in Porous Media vol. 63, nr. 2, pp. 239-259, May 2006; 又は、
Achieving Rapid Absorption and Extensive Liquid Uptake Capacity in Porous Structures by Decoupling Capillarity and Permeability: Nanoporous Modified Calcium Carbonate, in Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, Vol. 236, Issues 1-3, pp. 91-102, April 1, 2004.
【0014】
提案するコーティングのさらなる好ましい実施形態は、顔料成分が、非晶質シリカゲル又は沈降シリカを、15乾燥重量部未満、好ましくは10乾燥重量部未満、最も好ましくは5乾燥重量部以下含むことを特徴とする。上述のように、本発明の予期しない発見の1つは、例えばWO2007/006794及びWO2007/006796に開示されたコーティング組成物の非常に有益な利点を、マットな、中間光沢の及び高光沢の紙に対し、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された提案する微粒子重質炭酸カルシウムによって、全部でなくとも少なくとも部分的にシリカを置き換えることにより得られるが、通常、置き換えられるシリカの量は、好ましくは凡そ2〜3、又は4倍の範囲の量の、先に提案の特別に処理した微粒子重質炭酸カルシウムで補わなければならないということである。つまり、例えば、コーティング中のシリカゲル10部のうち5を置き換えるためには、提案する特別に処理した微粒子重質炭酸カルシウム顔料を10〜20部導入することが有益であると分かり、この10部のシリカゲル全部を置き換えるには、例えば、提案する特別に処理した微粒子重質炭酸カルシウム顔料を25部導入することができる(もちろん、顔料成分内の他の顔料を対応する分だけ差し引いて)。
【0015】
本発明のさらなる好ましい実施形態は、顔料成分が、さらなる微粒子炭酸塩及び/又はカオリン及び/又は滑石及び/又は石こう及び/又はサチンホワイト及び/又は水酸化アルミニウム(ATH)及び/又は二酸化チタン及び/又は硫酸バリウム及び/又はプラスチック顔料及び/又はこのような用途で通常公知の他の無機又は合成顔料、又はこれらの混合物を含むことを特徴とする。好ましくは、滑石顔料は、顔料成分の0〜15乾燥重量部、好ましくは3〜10乾燥重量部を成す。さらに好ましくは、さらなる微粒子炭酸塩は、表面及び内部構造改質のない標準の重質炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウムであり、カルサイト(例えば偏三角面体、菱面体、角柱、板状)及び/又はアラゴナイト(例えば分かれた又は束になった針)及び/又はバテライト(例えばスフェルライト又は球形)のような任意の公知の特定の結晶変態であるが、好ましくは針状であって、及び/又はこのような顔料の混合物であり、好ましくはアラゴナイト型である。
【0016】
例えば、顔料成分が、さらなる微粒子の、好ましくは沈降炭酸カルシウム(同様の粒径分布と、好ましくは内部粒子空隙率特性をも持つものであれば、PCCだけでなく、カオリン又はプラスチック顔料及び/又は滑石及び/又は石こう及び/又はサチンホワイト及び/又は水酸化アルミニウム(ATH)及び/又は二酸化チタン及び/又は硫酸バリウム及び/又はプラスチック顔料及び/又はこのような用途で公知の他の無機又は合成顔料、又はこれらの混合物も可能である)顔料を、30〜70乾燥重量部、好ましくは40〜60乾燥重量部の割合で含む場合、コーティング組成物内のシリカゲル顔料を全部又は実質的に全部置き換えることが可能である。好ましくは、このさらなる微粒子は、粒子の85〜95%が1μmより小さく、粒子の65〜75%が0.5μmより小さく、及び粒子の25〜35%が0.2μmより小さいような粒度分布を有する。従って、好ましくは、さらなる微粒子沈降炭酸カルシウム顔料は特にスティープな粒度分布を有し、最終的なコーティングに最適な速いインクセット特性及び最適な表面光沢特性をもたせるために、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムにとって有益な、ほぼ0.1〜1μm(全体のインクビヒクル輸送を促進するために効果的)の平均直径を有する互いにつながった粒子内細孔又は空隙のパラレルな系を有する理想的な骨格又はマトリックスを提供する。この目的のために、好ましくは、さらなる微粒子顔料は、0.2〜0.5μmの範囲のメジアン粒径(d50)を有し、好ましくは、スティープな粒度分布と好ましくは針状の粒子形態を有する沈降炭酸カルシウム顔料である。
【0017】
さらなる好ましい実施形態は、さらなる微粒子顔料が、実質的に、顔料粒子内に内部細孔を持たず、実質的に無孔であることを特徴とする。しかしながら、さらなる微粒子顔料は、その粒径の範囲、つまり好ましくは約0.1〜1μmの細孔径を有する内部粒子細孔/空隙の系を効率よく構築し、及び/又は、さらなる微粒子顔料が、8〜20m/gの範囲、好ましくは略10〜15m/gの範囲の表面積(BET)を有する。
【0018】
好ましい実施形態によると、本発明の紙は、顔料成分が、10〜40乾燥重量部、好ましくは15〜30乾燥重量部の割合でさらなる微粒子沈降炭酸カルシウム顔料を1つ又は混合して含み、このさらなる微粒子沈降炭酸カルシウム顔料は、粒子の70〜95%が1.6μmより小さく、粒子の60〜80%が1.0μmより小さく、及び粒子の10〜25%が0.4μmより小さいような粒度分布を有し、好ましくはこのさらなる微粒子顔料が、20〜80m/gの範囲、より好ましくは30〜50m/gの範囲の表面積を有することを特徴とする。このような紙の顔料成分は、好ましくは、具体的に、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウム10〜30乾燥重量部、好ましくは15〜25乾燥重量部、微粒子沈降炭酸カルシウムの1つ又は混合物10〜30、好ましくは15〜25乾燥重量部、好ましくは少なくとも粒子の90%が2μmより小さいような粒度分布を有する、さらなる微粒子重質炭酸カルシウム顔料の1つ又は混合物30〜50、好ましくは40〜50乾燥重量部、及び好ましくはアミノシラン・カップリング剤で表面処理した及び/又は含浸させた滑石からなる滑石顔料0〜15、好ましくは3〜12乾燥重量から実質的に成る。
【0019】
塗工紙が、その顔料成分が、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウム20〜30乾燥重量部、好ましくは針状の形態を有する微粒子沈降炭酸カルシウム40〜60乾燥重量部、好ましくは少なくとも粒子の90%が2μmより小さいような粒度分布を有する、さらなる異なる微粒子の、例えば重質炭酸カルシウム顔料10〜30乾燥重量部、及び滑石顔料0〜15、好ましくは3〜10乾燥重量から成ることを特徴とする場合、いっそうさらなる改良をもたらすことができる。
【0020】
特に、最終コーティングのインクスカフ(ink scuff)を減らすことに関して、使用する滑石を、例えば、Talc de Luzenac(フランス)の製品Mistrobond C又はR10C等の有機シラン成分で、表面処理する及び/又は含浸させると有利である。コーティング/含浸/表面処理のためのオルガノシラン及び/又はオルガノシラノール成分は、好ましくは、アミノアルキル系オルガノシラン及び/又はオルガノシラノールである。
【0021】
特に良好な非常に速いインクセット効果は、トップコーティングだけでなく、トップコーティングに直接隣接した、前記トップコーティングの下の中間コーティングにも、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された提案する微粒子重質炭酸カルシウムを含む場合に得ることができる。従って、本発明のさらなる実施形態によると、前記トップコーティング層の下に中間コーティング層があり、この中間コーティング層が顔料成分100乾燥重量部(この中に、先行するクレームのいずれかに記載の、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムを、5〜40乾燥重量部の範囲で含む)、バインダ成分及び任意に(標準的な)添加剤を含む。好ましくは、中間コーティング層の顔料成分の残りは、炭酸カルシウム、カオリン、滑石、石こう、サチンホワイト、水酸化アルミニウム(ATH)、二酸化チタン、硫酸バリウム、プラスチック顔料、又はこのような用途で公知の他の無機又は合成顔料、又はこれらの混合物から選択される、少なくとも1つのさらなる及び異なる微粒子顔料を含み、又は、好ましくはそれらから成り、好ましくはさらなる及び異なる微粒子顔料が、粒子の少なくとも60%、好ましくは粒子の少なくとも85又は90%が2μmより小さいような粒度分布を有する炭酸カルシウム顔料、又はその2種又は数種の混合物である。通常、中間コーティングは、8〜13g/m、好ましく10〜12g/mの範囲の坪量で塗布され、トップコーティングは、8〜13g/m、好ましく10〜12g/mの範囲の坪量で塗布される。
【0022】
好ましくは、本発明の紙は、オフセットパウダーを用いず又はその量を減らして、及び/又は印刷後の照射乾燥なしで、及び/又はオーバープリントワニスを用いず又はその量を減らして、オフセット印刷工程で印刷することができる。さらに、本発明の紙は、魅力的な印刷イメージ、良好な折り特性及び低いインクスカフを示す。
【0023】
上記のより具体的なコーティング組成物の提案は、好ましくは、上に定義したような光沢を有するマットコート紙用に調整及び適合されている。光沢をより高い値、つまりサテンや高光沢度までシフトさせたい場合には、上記提案物を、通常の顔料成分に(つまり、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された具体的に提案する微粒子重質炭酸カルシウムを補完する顔料成分に)、光沢を与える又は高めるために業界で公知の顔料を付加することにより適合させることができる。
【0024】
この目的のための1つの可能性は、中空又は中実のプラスチック顔料又はそのような顔料の混合物を比較的高い割合、通常5〜50、好ましくは5〜20乾燥重量部の範囲で含むことである。中実又は中空の粒子ポリマー顔料は、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−クロロエチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、アセタール、ポリフェニレンサルファイド、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレンラテックス、ポリアクリルアミド、及びこれらの合金(alloys)、ブレンド、混合物及び誘導体からなる群から選択できる。粒子ポリマー顔料は、修飾ポリスチレンラテックスであってもよい。それは、また、スチレン−マレイン酸共重合体ラテックス(SMA)及び/又はスチレン−マレイミド共重合体ラテックス(SMI)をベースとすることもでき、好ましくは、ほとんど、約200℃の範囲のガラス転移温度を持つスチレン−マレイミド共重合体ラテックス(SMI)だけをベースとすることができる。粒子の90%以上が0.5μmより小さいような粒度分布を有する、好ましくは粒子の90%が0.05〜0.3μm、特に0.1〜0.2μmの大きさを持つような粒度分布を有するポリマー顔料、又は空胞化したポリマー顔料の場合は約0.6μmのメジアン粒径を有するものを使用することができる。
【0025】
これにかえて、又はこれに加えて、コーティング組成物中のPCC(好ましくは上記定義したような特性を有する)の相対的割合を、80乾燥重量部の値まで、好ましくは20〜70乾燥重量部になるように増やすことによって、光沢を高めることが可能である。
【0026】
また、(上記可能性に加えて、又はそれらの代わりとして)例えばOMYAから入手可能で、以下実験セクションで説明する例えばHC 95又はSetacarb HG等の微粒子重質炭酸カルシウムのような(メジアン粒径が0.5μmをはるかに下回る)微粒子顔料を、通常比較的高い割合で含むことによって、光沢を高めることもできる。これらの微粒子顔料は、PCCについての上記の割合で存在することができる。
【0027】
好ましくは、高光沢グレードの場合、顔料成分は、実質的に粗顔料ではなく、通常1μmを超えるメジアン粒径を有する顔料ではないことを意味する。
【0028】
マット紙では、通常、最終紙はカレンダー処理されないか又はごくわずかしかカレンダー処理されない。中間光沢では、最終紙は好ましくはカレンダー処理され、高光沢では、紙は好ましくは、50〜200N/mmの範囲のニップライン圧、最も好ましくは50℃を超える高カレンダー処理温度で、数個のニップを用いて強力にカレンダー処理される。
【0029】
既に上で要点を述べたように、本印刷シートは、オフセット印刷用に作られる。従って、インクジェット紙とは対照的に、本印刷シートは、具体的には、枚葉給紙又はロールオフセット印刷で使用されるような通常のインキを吸い取るために作られており、インクジェット印刷で使用されるような、本印刷シートでの受入がそれほど魅力的ではない印刷インキのためのものではない。市販のオフセット印刷インクは、通常、全表面エネルギーが約20〜28mN/m(平均約24mN/m)、全表面エネルギーの分散部分が9〜20mN/m(平均約14mN/m)の範囲にあることを特徴とする。表面エネルギーの値は、0.1秒、Fibrodat 1100, Fibro Systems, Swedenで測定した。他方、市販のインクジェット印刷インキは、全表面エネルギーが(より高く)約28〜31mN/m(平均約31mN/m)、全表面エネルギーの分散部分が28〜31mN/m(平均約30mN/m)の範囲にあるため、全エネルギーの極性部分が非常に低い(平均約1mN/m)ことを特徴とする。従って、他の好ましい実施形態によると、受像コーティング層の全表面エネルギーは、オフセットインクの表面エネルギー特性にマッチしているため、表面エネルギーが、例えば、30mN/m以下、好ましくは28mN/m以下である。これは、全表面エネルギー値が少なくとも40mN/m、最大約60mN/mである典型的なインクジェット紙とは対照的である。さらに好ましくは、受像コーティング層の全表面エネルギーの分散部分が18mN/m以下、好ましくは15mN/m以下である。また、これは、分散部分が通常20mN/mを軽く超え、60mN/mさえもあるインクジェット紙の値とは全く対照的である。
【0030】
既に上で述べたように、コーティング組成物はバインダ成分を含む。バインダ成分は、顔料成分100部に対し、例えば7〜12乾燥重量部を成す。30部までのより高いバインダ含有量は、例えばシリカゲル又は沈降シリカを、シリカ成分として大量に使用する場合には有益である。バインダは、通常、単独のバインダタイプ、又は、異なるもしくは同種のバインダの混合物となるように選んでも良い。このようなバインダは、例えば、ラテックス、特にスチレン−ブタジエン、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル、スチレン−アクリル、特にスチレン−n−ブチルアクリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリルラテックス、アクリレートビニルアセテート共重合体、澱粉、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ソイ(soy)、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及び共重合体、及びこれらの混合物からなる群から選択することができ、好ましくは、アニオン性コロイド分散製品として提供される。特に好ましくは、例えば、ブチルアクリレート、スチレン及び必要であればアクリロニトリルをベースとするアクリル酸エステル共重合体をベースとするラテックスである。BASF(ドイツ)から入手可能なAcronal又はBasonalタイプ、又はPolymerLatex(ドイツ)から入手可能な他のLitexタイプのバインダが可能である。
【0031】
バインダに加えて、添加剤があってよく、通常コーティング組成物中に、例えば、当業者に公知の、消泡剤、着色剤、光沢剤、分散剤、増粘剤、保水剤、防腐剤、架橋剤、潤滑剤及びpH調整剤等、又はこれらの混合物から選択される添加剤があってもよい。
【0032】
受像コーティングは、基材の両面に設けてもよく、各面又は片面だけで、5〜15g/mの範囲の塗工量で塗布してもよい。フルコート紙は、80〜400g/mの範囲の重量であってよい。好ましくは、基材は上質紙基材である。
【0033】
既に上で説明したように、加工及び再印刷のための時間は、大幅に軽減されなければならない。従って、他の好ましい実施形態によると、本印刷シートは、30分未満以内、好ましくは15分未満以内に再印刷可能であり、1時間未満以内、好ましくは0.5時間未満以内に加工可能であることを特徴とする。本明細書において、再印刷可能とは、印刷されたシートを、ブロッキング、マーキング、スミアリング等の不利益な副作用なしに、反対面に印刷するための2回目の印刷工程に送り込むことが可能であることを意味する。本明細書において、加工可能であるとは、製紙業で周知の加工段階に入る(undergo)ことができることを意味する(加工には、印刷シートの回転、シャフリング、折り、筋つけ、切断、穴開け、製本及び包装等が含まれる)。
【0034】
本発明は、さらに、上に説明したような印刷シートの製造方法に関する。本方法は、1以上の中度から強度のオキソニウムイオン(H)供与体、及び場合によりガス状の二酸化炭素での処理の結果、ナノサイズの表面及び内部(細孔)構造改質を持つ微粒子重質炭酸カルシウムを上記量含むコーティング組成物を、非コートの、プレコートの、又はコートした紙基材上、好ましくは上質紙ベースに、カーテンコーター、ブレードコーター、ロールコーター、スプレーコーター、エアーナイフ、キャストコーティングを用いて、又はメタリングサイズプレスにより塗布することを特徴とする。その紙の得ようとする光沢により、塗工紙をカレンダー処理してもよい。可能なカレンダー処理条件は、以下の通りである:200〜2000m/分の範囲の速度、50〜500N/mmの範囲のニップ負荷、室温を超える、好ましくは60℃を超える、さらにより好ましくは70〜95℃の範囲の温度で、1〜15のニップを使用する。
【0035】
さらに、本発明は、上で定義した印刷シートの、枚葉給紙又はロールオフセットプリント工程での使用に関する。このような工程では、好ましくは、再印刷及び/又は加工が、1時間未満以内、好ましくは0.5時間未満以内に起こり、さらに上で概説したように、オフセットパウダー及び/又はオーバープリントワニスがいらない、又は必要性が低い。
【0036】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項で概説される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は塗工印刷シートの概略断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
添付の図には、本発明の好ましい実施例を示す。
図面(本発明の目下の好ましい実施形態を説明するためであって、それを制限するためのものではない)を参照すると、図1は、塗工印刷シートの概略図を示す。塗工印刷シート4は、両面を層で塗工されており、これらの層が受像コーティングを構成する。この特定の場合においては、塗工印刷シートの最も外側のコーティングを形成するトップコーティング3が設けられている。このトップ層3の下に、第2の層2が設けられている。時には、この第2の又は中間コート層の下に、さらなる第3の層があり、これは、適当なコーティングであってもサイジング層であってもよい。
【0039】
通常、この種の塗工印刷シートは、80〜400g/mの範囲、好ましくは100〜250g/mの範囲の坪量(base weight)を有する。例えば、トップ層は、3〜25g/mの範囲、好ましくは4〜15g/mの範囲、最も好ましくは約6〜12g/mの総乾燥塗工量を有する。第2の層は、同じ範囲又はそれ未満の総乾燥塗工量を有することができる。片面のみ、又は図1のように両面に、受像コーティングを設けてもよい。
【0040】
この明細書の主要な目的は、迅速な物理的インクセット及び迅速な化学的インク乾燥性能のためのマットな塗工印刷シート(中間及び高光沢なものも)を提供することであり、好ましくはインクスカフがなく、パウダーレス印刷が可能で、魅力的で興味を引く印刷イメージを有する、標準インキと組み合わせた枚葉給紙オフセット又はロールオフセット紙用の、理想的な高速加工用途に適した(例えば、折り及び切断時のブロッキング又はマーキングなしの)塗工印刷シートを提供することである。
【0041】
分析試験及び方法(短時間インクセット、多色インクセット、化学的インク乾燥、インキスカフ/乾燥インク摩擦等の結果についてこの実験セクションで述べる)、切断及び折り等の加工試験に関しては、特に、ここで用いられる同じ方法が詳細に述べられている文献WO−A−2007/006794及びWO−A−2007/006796を参照する。
【0042】
実験、第1部:
表1は、用意した異なるマット試験紙を示す。8枚の異なる紙を、表1に挙げた組成物を用いた中間(M)及びトップ(D)コーティングの塗布のため、試験コーターを用いて作成した。コーティング組成物を、65〜69%の固形分に調整した。コーティングは、中間コーティング組成物が特に与えられていない場合には、以下の第2セクション(表2)でより詳細に概説されるM12refとして与えられた第2シリーズの実験に具体的に記載されたものと同一の中間コート層を有するとし、標準的なプレコート上質紙に塗布される。refと示された実験は、比較目的のための本発明外の参照コーティングである。全ての紙は、25〜40%の範囲のTAPPI 75°光沢度及び約135g/mの坪量を有する。中間コーティングは、約12g/mの坪量で塗布し、トップコーティングは約12g/mの坪量で塗布した。
【0043】
【表1】

第1の、試験紙の組成物及び結果:
Mは中間コート層の組成物を示し、Dはトップコート層の組成物を示す。同じ数字は同じ実験紙を示し、中間コートが与えられてない場合、M12refとして表2に示される中間コートを使用した。
【0044】
成分:
HC 90: 例えばOMYA(スイス)から入手可能な重質炭酸カルシウム顔料「HYDROCARB HC 90 GU」は、0.7〜0.8μmの範囲のメジアン粒径を有し、粒度分布は、粒子の約90%が2μmより小さく、粒子の約66%が1μmより小さい。
HC 60: 例えばOMYA(スイス)から入手可能な重質炭酸カルシウム顔料「HYDROCARB HC 60 GU」は、1〜2μmの範囲のメジアン粒径を有し、粒度分布は、粒子の約60%が2μmより小さく、粒子の約37%が1μmより小さい。
SC HG: 例えばOMYA(スイス)から入手可能な重質炭酸カルシウム顔料「SETACARB HG GU」は、0.4〜0.6μmの範囲のメジアン粒径を有し、粒度分布は、粒子の約98%が2μmより小さく、粒子の約90%が1μmより小さい。
HC V70 R240: 1以上の中度から強度のオキソニウムイオン(H)供与体で処理し、及び場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理した結果、特別な表面及び内部構造改質を持つ微粒子重質炭酸カルシウムは、約2μmのメジアン径、及び約40m/gの比表面積(BET)及び0.05μmの平均内部細孔径を有するいわゆるローズタイプであり、商品名Hydrocarb V70 R240でOMYA(スイス)から入手可能である。
Miragloss 90: BASF(ドイツ)から入手可能な微粒子カオリン顔料で、92パーセントのSedigraph粒径が1μm未満である。
Syloid: Grace Davidson(ドイツ)から、Syloid 72又はSyloid 244又はSyloid C803の商品名で入手可能な非晶質シリカゲルで、全細孔容積約1.1〜2.0ml/g、マイクロメートルでのメジアン粒径約3.1〜6μm、表面積(BET)300〜390m/gでアニオン表面電荷をもつ。
Mistrobond: Talc de Luzenac(フランス)から、商品名Mistrobond C又はほぼ同等のMistrobond R10Cで入手可能な、表面処理済み微結晶滑石で、メジアン粒径約2.9μm、約95%の粒子が11μmより小さいような粒度分布を有し、約11m/gの表面積(BET)をもつ。98%を超える滑石を含み(残りは例えば緑泥石0.5%、ドロマイト1%)、モース硬度が1である。前記表面処理は、第1級のアミノ−アルキル官能基を含む有機官能性シラン成分(いわゆるカップリング剤)を含む。
PCC: 好ましくは針状粒子構造の、微粒無孔沈降炭酸カルシウムであり、スティープな粒度分布(Sedigraph 5100)を有する。つまり、約85〜95%が1μmより小さく、約65〜75%が0.5μmより小さく、約25〜35%が0.2μmより小さい。メジアン粒径は0.2〜0.5μmである。現在入手可能なものとしては、例えば、Specialty Minerals Inc.(米国)の商品名Opacarb A40等である。
Acronal: スチレン及びアクリル酸エステルをベースとした共重合体の水分散液であるバインダで、BASF(ドイツ)から入手可能である。
Basonal: モノマーの、アクリロニトリル、ブタジエン、アクリル酸ブチル及びスチレンをベースとした、マルチモノマー概念(multi−monomer concept)によるバインダであり、BASF(ドイツ)から入手可能である。
添加剤: 必要に応じ、複数の添加剤が加えられる。特に、当業者に公知の、ポリビニルアルコール(PVAL)、分散剤、光沢剤、増粘剤、消泡剤等である。
【0045】
例えば、トップコーティング(D3及びD4)が変わらない、2つの実験3及び4のインクセット特性を比較すると、実験4のような相対的により微細な炭酸カルシウム顔料(HC60の代わりにHC90)を中間コーティングに使用する場合、実験3に比べ極めて速い短時間及び多色インクセット特性を示すため、これらのインクセット特性は改善可能なことがわかる。
【0046】
実験4及び実験5(参照)間のインクセット特性を比較すると、中間コーティング及びトップコーティングに特定の顔料HC V70 R240が同時に存在することにより、シリカゲルを2倍の量で含む参照に比べて、極めて速い短時間及び多色インクセット特性等の性能向上さえも可能であることがわかる。
【0047】
共に同程度の短時間及び多色インクセット値を有する、参照実験5及び実験8の間のインクセット特性の比較により、明らかに、実際、トップコーティングに存在するHC V70 R240がトップコーティングの顔料成分中のシリカゲルに効果的に置き換われることを実証している。実験9及び11と実験5のさらなる比較は、参照に比べて著しく改善された短時間及び多色インクセット特性さえ示し、提案するマット紙では、トップコーティング中のHC V70 R240が、短時間及び多色インクセット特性に対し非常に有益な特性を与えることがわかる。
【0048】
実験、第2部:
表2は、用意したさらなる試験紙を示す。5枚の異なるマット紙を、表2に挙げた組成物を用いた中間(M)及びトップ(D)コーティングの塗布のため、試験コーターを用いて作った。コーティング組成物を、65〜68%の固形分に調整した。コーティングを、標準的なプレコート上質紙に塗布した。refと示された実験は、比較目的のための、本発明外の参照コーティングである。全ての紙は、20〜30%の範囲のTAPPI 75°光沢度及び約135g/mの坪量を有する。中間コーティングは、約12g/mの坪量で塗布され、トップコーティングは約12g/mの坪量で塗布された。
【0049】
【表2】

第2の、試験紙の組成物及び結果:
Mは中間コート層の組成物を示し、Dはトップコート層の組成物を示す。同じ数字は同じ実験紙を示す。
【0050】
中間及びトップコーティング両方の10部のHC V70 R240をベースに(based on)、トップコーティングにシリカを5部有するもの(concept)(実験18)と参照実験12とを比べると、概して、短時間及び多色インクセットとインクスカフが、ほぼ同等の速いレベルにあることがわかる。従って、実際に、HC V70 R240は、トップコーティング中に組み込まれたシリカ顔料を部分的に置き換えることが効果的に可能であり、トップコーティングだけでなく、中間コーティング中にもHC V70 R240を組み込むことが好ましいことがわかった。
【0051】
実際に、実験18及び19との比較は、中間コーティングにHC V70 R240を有しない実験19は実験18より明らかに劣っていることを示し、中間コーティング中のHC V70 R240の存在が、最終紙を全般的に速い短時間及び多色インクセット特性にするのに重要であることを示す。
【0052】
シリカをさらに一層置き換えること(concept)(実験14、顔料成分中のシリカの含有量は極めて小さい)は、参照実験12とインクセット特性を比較すると、ほぼ同等の速い短時間及び多色インクセット特性を示す。
【0053】
加えて、HC V70 R240にとって望ましいマトリックスを提供する、特別な、好ましくは針状の沈降炭酸カルシウム(PCC)を含んで、全くシリカを含まないこと(実験15)は、参照実験12と比較して、多色インクセット値が向上し、同等の短時間インクセットを示す。トップコーティング中に表面処理したMistrobond R10Cをも5〜7部組み込んだ両実験12及び15のインクスカフは、魅力的なほどに低い。
【0054】
表2の紙の、商業印刷及び加工試験では、参照紙M12/D12に比べ、特に紙M15/D15は(とはいえ表2の他の紙でも)、一般的な印刷適性特性の領域(例えば、魅力ある印刷イメージ、良好な表面、良好なソリッド及びスクリーン均一性、低いバックトラップモットル及び二色モットル)において完全に同等の特性に近く、低いインクスカフ(表面処理した滑石の存在のため)、優れた加工性(例えば、ブロッキング試験及び折り試験時のマーキングがない)、パウダーレス印刷できること、Fogra試験による速い短時間及び多色インクセット挙動及び速い化学インク乾燥挙動において同等近い性能を示す。
【0055】
実験、第3部:
上述のコーティング配合では、マット紙に対し上に規定した範囲の光沢度を有する紙となり、TAPPI 75°光沢度は20〜30%の範囲にある。このさらなる実験セクションでは、コーティングをより高い光沢、つまりTAPPI 75°光沢度が明細書の導入部で定義した中間光沢、又は高光沢でさえあるように調整される。従って、それに応じて、表3には、中間コート層(M)及びトップコート層(D)用の3つのさらなるコーティング組成物を挙げた。50〜200N/mmのライン圧で7〜11ニップを用いてのカレンダー処理を、50〜90℃の温度で行った。
【0056】
【表3】

第3の、光沢のあるグレードの試験紙の組成物及び結果:
Mは中間コート層の組成物を示し、Dはトップコート層の組成物を示す。同じ数字は同じ実験紙を示す。
【0057】
第3シリーズ用のさらなる成分:
HC 95: 例えばOMYA(スイス)から入手可能な重質炭酸カルシウム顔料「HYDROCARB HC 95 GU」は、約0.4μmの範囲にメジアン粒径を持ち、粒度分布は、粒子の約95%が2μmより小さく、粒子の約78%が1μmより小さい分布である。
プラスチック顔料: Rohm und Haas(ドイツ)から入手可能な顔料Ropaque BC−643を使用した。これは、粒径0.6μm、空隙容量43%のスチレンアクリル酸ポリマー顔料である。代わりに、The Dow Chemical Companyから入手可能なDPP 3710を使用することもできる。これは、微細固体粒子ポリマー(修飾ポリスチレンラテックス)であり、pH5.5で48%水中エマルジョン、ブルックフィールド粘度(スピンドル2)100mPa未満として市販されている。メジアン粒径は0.14μmである。
【0058】
表3に挙げた紙は、より高い光沢度を有し、紙20は75%の範囲にTappi 75°光沢度を有し、紙21ではついに(at last)85%の範囲に光沢度を持ち、紙22は70%の範囲に光沢度を有する。セクション1及び2で上に挙げたようなインクセット、加工性等のような他の特性に関しては、前のセクションと同じく、実質的に魅力的であるままである。最後の紙を除いて、Tappi 75°光沢を、微粒子顔料及び/又はプラスチック顔料の割合を高めることにより、適応させることができるのがわかる。
【0059】
実験、第4部:
このさらなる第4の実験セクションでは、コーティングをさらに印刷特性の向上に適応させた。従って、それに応じて、表4には、中間コート層用のコーティング組成物をさらに1つ(M36、中間層として両方のトップコート層に用いた)、及び、トップコート層用にさらに2つ(D40、D41)を挙げた。50〜200N/mmのライン圧で7〜11ニップを用いてのカレンダー処理を、50〜90℃の温度で行った。紙は135g/m、両面をコートした。
【0060】
【表4】

第4の試験紙、マットグレードの組成物及び結果:
Mは中間コート層の組成物を示し、Dはトップコート層の組成物を示す。同じ数字は同じ実験紙を示す。
【0061】
第4シリーズ用のさらなる成分:
PCC Precarb 720: 例えばSchaefer Kalk GmbH & Co KG(ドイツ)から入手可能な沈降炭酸カルシウム顔料「PRECARB 720」は、約0.5μmの範囲にメジアン粒径を持ち、粒度分布は、粒子の約84%が1.54μmより小さく、粒子の約50%が0.49μmより小さく、粒子の約16%が0.31μmより小さいような分布である。言い換えれば、約75%が1μmより小さい。
【0062】
表4に挙げたマット紙は、15〜25%Tappi 75°光沢の範囲に、光沢度を持つ。印刷光沢は、50〜60%Tappi 75°光沢の範囲であり、両用紙とも、表5に集約したように、速いセットオフを示す。用紙は、ピッキングを示さず、インク耐摩擦性(ink rub resistance)は高く(ウェットインクラブ、ホワイトガス試験及びインク耐摩擦性)、ブロッキングもなく、多色インクセットも速い(表5参照)。
【0063】
【表5】

第4セクションの紙の印刷特性。両用紙は表4の同じ中間層M36を有する。
【0064】
セクション1及び2で上に挙げたような、加工可能性等の他の特性に関しては、前のセクションと同じく、実質的に魅力的であるままである。用紙は、赤外線乾燥又は印刷パウダーを使用せずに印刷できた。ここで、コーティング組成物は、実際に速い乾燥特性に寄与するシリカゲル(Syloid)を少量だけ含んでもよい(D41)が、シリカゲルなしでも(D40)、良好な印刷特性をより魅力的な費用で得ることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面にトップコーティング層を有するオフセット印刷用塗工紙において、前記トップコーティング層が、
顔料成分100乾燥重量部(この中に、1以上の中度から強度のオキソニウムイオン(H)供与体で処理した結果、表面及び内部構造改質を持ち、場合により(eventually)ガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムを5〜40乾燥重量部だけ(only)含む)、
バインダ成分を2〜20乾燥重量部、及び
添加剤を0〜8乾燥重量部の範囲で含む塗工紙。
【請求項2】
前記表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムが、5〜100nmの範囲、好ましくは30〜70nmの範囲の平均細孔径を有し、最も好ましくは狭い細孔径分布を有する、内部及び/又は表面細孔を持つナノサイズの表面及び内部細孔構造を持つ、請求項1に記載の塗工紙。
【請求項3】
前記表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムが、前記顔料成分中に、10〜30乾燥重量部、好ましくは20〜30乾燥重量部の範囲で含まれる、請求項1又は2に記載の塗工紙。
【請求項4】
前記表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムが、1.5〜2.5μmの範囲のメジアン粒径を有し、及び/又は、前記表面及び内部構造改質を持つ微粒子重質炭酸カルシウムが、0.04〜0.06μmの範囲、好ましくは約0.05μmのメジアン細孔径と、狭い細孔径分布を持ち、及び/又は、前記表面及び内部構造改質を持つ微粒子重質炭酸カルシウムが30〜80m/gの範囲、好ましくは50〜70m/gの範囲の表面積を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項5】
前記表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムが、粒子の73〜83%が2μmより小さく、粒子の35〜44%が1μmより小さいような粒度分布を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項6】
前記表面及び内部構造改質を持つ微粒子重質炭酸カルシウムが、いわゆるroseタイプである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項7】
前記顔料成分が、非晶質シリカゲル又は沈降シリカを、15乾燥重量部未満、好ましくは10乾燥重量部未満、最も好ましくは5乾燥重量部以下含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項8】
前記顔料成分が、さらなる微粒子炭酸塩及び/又はカオリン及び/又は滑石及び/又はプラスチック顔料又はこれらの混合物を含み、前記滑石顔料が、前記顔料成分の0〜15乾燥重量部、好ましくは3〜10乾燥重量部を成し、さらなる微粒子炭酸塩が、表面及び内部構造改質のない重質炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウムである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項9】
前記顔料成分が、10〜40乾燥重量部、好ましくは15〜30乾燥重量部の割合でさらなる微粒子沈降炭酸カルシウム顔料を1種又はその混合物を含み、このさらなる微粒子沈降炭酸カルシウム顔料が、粒子の70〜95%が1.6μmより小さく、粒子の60〜80%が1.0μmより小さく、及び粒子の10〜25%が0.4μmより小さいような粒度分布を有し、好ましくはこのさらなる微粒子が、20〜80m/gの範囲、より好ましくは30〜50m/gの範囲の表面積を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項10】
顔料成分が、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムの1種又は混合物10〜30乾燥重量部、好ましくは15〜25乾燥重量部と、前記微粒子沈降炭酸カルシウムの1種又は混合物10〜30、好ましくは15〜25乾燥重量部と、好ましくは少なくとも粒子の90%が2μmより小さいような粒度分布を有する、さらなる微粒子重質炭酸カルシウム顔料の1種又は混合物30〜50、好ましくは40〜50乾燥重量部と、及び、好ましくはアミノシラン・カップリング剤で表面処理した及び/又は含浸させた滑石からなる滑石顔料の1種又は混合物0〜15、好ましくは3〜12乾燥重量から成る、請求項9に記載の塗工紙。
【請求項11】
前記顔料成分が、さらなる微粒子の、好ましくは沈降炭酸カルシウム顔料を、30〜80乾燥重量部、好ましくは40〜60乾燥重量部の割合で含み、好ましくはこのさらなる微粒子顔料が、粒子の85〜95%が1μmより小さく、粒子の65〜75%が0.5μmより小さく、及び粒子の35〜45%が0.2μmより小さいような粒度分布を有し、好ましくは前記沈降炭酸カルシウムが、約0.1〜1μmの平均細孔又は空隙径を有する全顔料マトリックス中に、互いにつながった粒子内細孔又は空隙を提供する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項12】
前記顔料成分が、さらなる微粒子炭酸塩及び/又はカオリン及び/又は滑石及び/又は石こう及び/又は二酸化チタン及び/又は硫酸バリウム及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はサチンホワイト及び/又はプラスチック顔料及び/又はこれらの混合物を含み、前記さらなる微粒子顔料が、実質的に顔料粒子内に内部細孔を持たず、好ましくは前記さらなる微粒子顔料が、好ましくは針型形態のアラゴナイトであり、より好ましくは前記さらなる微粒子顔料が8〜20m/gの範囲、好ましくは約10〜15m/gの範囲の表面積(BET)を有する、請求項1〜11に記載の塗工紙。
【請求項13】
前記さらなる微粒子顔料は、0.2〜0.5μmの範囲のメジアン粒径を有し、好ましくは沈降炭酸カルシウム、プラスチック顔料及び/又はカオリン顔料である、請求項7〜12のいずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項14】
顔料成分が、前記表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウム20〜30乾燥重量部と、前記微粒子沈降炭酸カルシウム40〜60乾燥重量部と、好ましくは粒子の90%が2μmより小さいような粒度分布を有する、さらなる異なる微粒子炭酸カルシウム顔料10〜30乾燥重量部と、及び好ましくはアミノシラン・カップリング剤で表面処理した及び/又は含浸させた滑石からなる滑石顔料0〜15、好ましくは3〜10乾燥重量から成る、請求項1〜13のいずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項15】
前記トップコーティング層の下に中間コーティング層があり、この中間コーティング層が顔料成分100乾燥重量部(この中に、請求項1〜14のいずれかで定義した、表面及び内部構造改質を持ち、場合によりガス状の二酸化炭素でさらに処理された微粒子重質炭酸カルシウムを5〜40、好ましくは10〜20乾燥重量部の範囲で含む)、バインダ成分及び場合により添加剤を含み、好ましくは、前記中間コーティング層の顔料成分の残りは、炭酸カルシウム、カオリン、滑石、石こう、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、サチンホワイト、二酸化チタン、プラスチック顔料及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つのさらなる及び異なる微粒子顔料を含み、又は、好ましくはそれらから成り、好ましくは前記さらなる及び異なる微粒子顔料が、粒子の少なくとも60%、好ましくは粒子の少なくとも85又は90%が2μmより小さいような粒度分布を有する炭酸カルシウム顔料、又はその混合物である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項16】
好ましくはオフセットパウダーの量を減らして又はオフセットパウダーを用いない、及び/又は印刷後の照射乾燥なしの、及び/又はオーバープリントワニスの量を減らして又はオーバープリントワニスを用いない、オフセット印刷工程での請求項1〜15のいずれか1項に記載の紙の使用。


【図1】
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【公表番号】特表2011−500987(P2011−500987A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530303(P2010−530303)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008563
【国際公開番号】WO2009/052960
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(505115005)エスエーピーピーアイ ネザーランズ サーヴィシーズ ビー.ヴイ (9)
【Fターム(参考)】