説明

オブジェクト配信範囲設定装置及びオブジェクト配信範囲設定方法

【課題】AR技術において、移動端末にオブジェクトを適切に表示させるために、配信されるべきオブジェクト情報を適切に配信することを可能とする。
【解決手段】オブジェクト管理装置1は、オブジェクトの配置位置及び地図情報に基づき、オブジェクトを視認可能な範囲を当該オブジェクトに関するオブジェクト情報の配信範囲としてオブジェクト情報毎に設定する配信範囲設定部14を備える。これにより、移動端末がオブジェクトを視認可能な場所に位置する場合に、当該オブジェクトのオブジェクト情報が当該移動端末に配信されることとなる。従って、移動端末にオブジェクトを適切に表示させるために、配信されるべきオブジェクト情報が適切に配信されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクト配信範囲設定装置及びオブジェクト配信範囲設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、AR(Augmented Reality:拡張現実)技術を用いたサービスが開発・提供されている。例えば、現実空間における移動端末の所在位置の周辺に配置されたオブジェクトがサーバから移動端末に提供され、移動端末に備えられたカメラにより取得した画像に種々の情報や画像を含むオブジェクトを重畳表示する技術が知られている。また、移動端末の現在位置から所定の範囲内の店舗に関するコンテンツを当該移動端末に提供する技術が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−48564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、移動端末とオブジェクトとの精密な位置関係は考慮されず、移動端末の位置から所定の距離以内に配置されたオブジェクトの情報が当該移動端末に配信されるので、移動端末の位置から視認不可能なオブジェクトに関する情報が移動端末に配信される場合がある。即ち、従来技術では、不要なオブジェクトの情報が移動端末に配信される場合があった。また、移動端末からの距離が遠い場合であっても、移動端末から視認可能な場所に配置されたオブジェクトの情報は、移動端末に配信されることが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、AR技術において、移動端末にオブジェクトを適切に表示させるために、配信されるべきオブジェクト情報を適切に配信することが可能となるオブジェクト配信範囲設定装置及びオブジェクト配信範囲設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のオブジェクト配信範囲設定装置は、移動端末の位置が配信範囲に該当する場合に移動端末に配信されるオブジェクト情報における配信範囲を設定するオブジェクト配信範囲設定装置であって、オブジェクトの配置位置に関する情報を含むオブジェクト情報を記憶しているオブジェクト情報記憶手段と、現実空間における、視線を遮る物である遮蔽物の位置及び形状に関する情報を含む地図情報を記憶している地図情報記憶手段と、オブジェクト情報記憶手段からオブジェクト情報を取得するオブジェクト情報取得手段と、地図情報記憶手段から地図情報を取得する地図情報取得手段と、オブジェクト情報取得手段により取得されたオブジェクト情報に示されるオブジェクトの配置位置、及び地図情報取得手段により取得された地図情報に基づき、オブジェクトを視認可能な範囲を配信範囲としてオブジェクト情報毎に設定する配信範囲設定手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明のオブジェクト配信範囲設定方法は、移動端末の位置が配信範囲に該当する場合に移動端末に配信されるオブジェクト情報の配信範囲を設定するオブジェクト配信範囲設定装置におけるオブジェクト配信範囲設定方法であって、オブジェクトの配置位置に関する情報を含むオブジェクト情報を記憶しているオブジェクト情報記憶手段からオブジェクト情報を取得するオブジェクト情報取得ステップと、現実空間における、視線を遮る物である遮蔽物の位置及び形状に関する情報を含む地図情報を記憶している地図情報記憶手段から地図情報を取得する地図情報取得ステップと、オブジェクト情報取得ステップにおいて取得されたオブジェクト情報に示されるオブジェクトの配置位置、及び地図情報取得ステップにおいて取得された地図情報に基づき、オブジェクトを視認可能な範囲を配信範囲としてオブジェクト情報毎に設定する配信範囲設定ステップとを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のオブジェクト配信範囲設定装置及びオブジェクト配信範囲設定方法によれば、オブジェクトの配置位置及び地図情報に基づき、オブジェクトを視認可能な範囲が当該オブジェクトに関するオブジェクト情報の配信範囲としてオブジェクト情報毎に設定される。これにより、移動端末がオブジェクトを視認可能な場所に位置する場合に、当該オブジェクトのオブジェクト情報が当該移動端末に配信されることとなる。従って、移動端末にオブジェクトを適切に表示させるために、配信されるべきオブジェクト情報が適切に配信されることとなる。
【0009】
また、本発明のオブジェクト配信範囲設定装置は、配信範囲設定手段は、地図情報に基づき定義される現実空間において、オブジェクトの配置位置を端点として、予め設定された所定の長さを有する複数の線分を仮想的に生成し、線分がオブジェクトの配置位置から所定の長さ以内の位置において遮蔽物と交わる場合には、線分と当該遮蔽物との交点を補正点として設定し、線分が遮蔽物と交わらない場合には、線分の他端点を補正点として設定し、複数の線分毎に設定された複数の補正点間を結ぶ線に囲まれる領域を配信範囲として設定することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、オブジェクトの配置位置を端点とする所定の長さの線分が設定され、当該線分と遮蔽物との交点又は当該線分の他端点が、配信範囲の外縁を設定するための補正点として設定され、複数の補正点間を結ぶ線に囲まれる領域が配信範囲として設定される。ここで、線分の延在方向は、移動端末からオブジェクトを視認する際の視線方向に相当する。また、線分の長さは、オブジェクトを視認可能な限界距離に相当する。これにより、オブジェクトを視認可能な範囲が補正点により適切に定義される。さらに、オブジェクトを視認可能な範囲が配信範囲として設定されるので、配信されるべきオブジェクト情報が適切に移動端末に配信されることとなる。
【0011】
また、本発明のオブジェクト配信範囲設定装置では、地図情報記憶手段は、遮蔽物が透過物である場合には、当該遮蔽物に透過属性を対応付けて記憶しており、配信範囲設定手段は、線分が遮蔽物と交わる場合であっても、当該遮蔽物に透過属性が対応付けられている場合には、当該遮蔽物が存在しないものとして補正点の設定を実施することを特徴とする。
【0012】
遮蔽物が視線上に存在しても、当該遮蔽物が透過物である場合には、移動端末からみて当該遮蔽物の陰となる位置に存在する物を視認可能である。本発明の構成によれば、遮蔽物に透過属性が付与されている場合に、当該遮蔽物が存在しないものとして補正点が設定されるので、移動端末が遮蔽物を通してオブジェクトを視認可能である場合に、当該移動端末の位置がオブジェクト情報の配信範囲に含まれるように設定されることとなる。従って、移動端末に配信されるべきオブジェクト情報が適切に配信されることとなる。
【0013】
また、本発明のオブジェクト配信範囲設定装置では、地図情報記憶手段は、2次元で表された地図情報を記憶しており、配信範囲設定手段は、2次元の地図上におけるオブジェクトの配置位置を端点として、オブジェクトの配置位置の周囲360°にわたり所定の角度間隔で複数の線分を生成することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、オブジェクトの周囲360°にわたって所定の角度間隔で生成された線分ごとに複数の補正点が設定されるので、設定された複数の補正点により、オブジェクト情報の適切な配信範囲が定義することが可能となる。
【0015】
また、本発明のオブジェクト配信範囲設定装置では、地図情報記憶手段は、3次元で表された地図情報を記憶しており、配信範囲設定手段は、オブジェクトの配置位置を中心とし、線分の所定の長さを半径とする球面を仮想的に設定し、球面上の全てにわたり所定間隔で他端点が位置するように、複数の線分を生成することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、オブジェクトの配置位置を中心として設定された球面上に、オブジェクトの配置位置を端点とする複数の線分の他端点が配置され、かかる線分ごとに補正点が設定される。この補正点に基づき、オブジェクトの配信範囲が設定されるので、3次元で表された地図情報上に、オブジェクトを視認可能な範囲が、オブジェクト情報の配信範囲として適切に設定されることとなる。
【発明の効果】
【0017】
AR技術において、移動端末にオブジェクトを適切に表示させるために、配信されるべきオブジェクト情報を適切に配信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】オブジェクト管理装置を含むシステムの装置構成を示す図である。
【図2】オブジェクト管理装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】オブジェクト管理装置のハードブロック図である。
【図4】オブジェクト情報記憶部の構成及び記憶されているデータの例を示す図である。
【図5】補正配信範囲記憶部の構成及び記憶されているデータの例を示す図である。
【図6】オブジェクト配信範囲設定方法の処理内容を示すフローチャートである。
【図7】オブジェクト情報の配信範囲設定の例を示す図である。
【図8】第2実施形態におけるオブジェクト配信範囲設定方法の処理内容を示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態におけるオブジェクト情報の配信範囲設定の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るオブジェクト配信範囲設定装置及びオブジェクト配信範囲設定方法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るオブジェクト管理装置を含むシステムの装置構成を示すブロック図である。図1に示すように、本システムは、オブジェクト管理装置1(オブイジェクト配信範囲設定装置)及び移動端末2を含み、オブジェクト管理装置1と移動端末2とは、所定のネットワーク3により通信可能である。移動端末2は、例えば、移動体通信網を介した通信が可能な携帯端末である。この場合には、所定のネットワーク3は、移動体通信網を構成するネットワークである。なお、移動端末2及びネットワーク3は、上記した例により構成されるものには限られず、移動端末2は、例えば、IP通信可能な端末装置であってもよい。
【0021】
図2は、本実施形態に係るオブジェクト管理装置1の機能的構成を示すブロック図である。本実施形態のオブジェクト管理装置1は、例えば、現実空間又は仮想空間に配置されたオブジェクトに関するオブジェクト情報を管理する装置であって、移動端末2から送信された位置情報に基づきオブジェクト情報を抽出し、抽出されたオブジェクト情報を当該移動端末2に送信する。本実施形態のオブジェクト管理装置1は、移動端末2の位置が配信範囲に該当する場合に移動端末2に配信されるオブジェクト情報における当該配信範囲を設定する。なお、オブジェクト情報を取得した移動端末2は、カメラ等の撮像装置により取得した現実空間の画像に種々の情報や画像を含むオブジェクトを重畳表示する。
【0022】
図2に示すように、オブジェクト管理装置1は、機能的には、オブジェクト配信範囲設定部1A及びオブジェクト配信部1Bを備える。オブジェクト管理装置1は、オブジェクト配信範囲設定部1Aに含まれる各機能部により、本発明のオブジェクト配信範囲設定装置を構成することができる。従って、オブジェクト配信範囲設定部1A及びオブジェクト配信部1Bはそれぞれ、互いに通信可能な別の装置に備えられることとしてもよい。
【0023】
オブジェクト配信範囲設定部1Aは、地図DB10(地図情報記憶手段)、地図情報取得部11(地図情報取得手段)、オブジェクト情報記憶部12(オブジェクト情報記憶手段)、オブジェクト情報取得部13(オブジェクト情報取得手段)、配信範囲設定部14(配信範囲設定手段)及び補正配信範囲記憶部15(配信範囲設定手段)を備える。
【0024】
また、オブジェクト配信部1Bは、配信要求受信部16、オブジェクト情報抽出部17及びオブジェクト情報送信部18を備える。
【0025】
図3は、オブジェクト管理装置1のハードウエア構成図である。オブジェクト管理装置1は、物理的には、図3に示すように、CPU101、主記憶装置であるRAM102及びROM103、データ送受信デバイスである通信モジュール104、ハードディスク、フラッシュメモリ等の補助記憶装置105、入力デバイスであるキーボード等の入力装置106、ディスプレイ等の出力装置107などを含むコンピュータシステムとして構成されている。図2に示した各機能は、図3に示すCPU101、RAM102等のハードウエア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール104、入力装置106、出力装置107を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置105におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。再び、図2を参照し、オブジェクト管理装置1の各機能部について詳細に説明する。
【0026】
地図DB10は、地図情報を記憶している記憶手段である。地図情報は、現実空間における地形、道路形状、構造物の位置及び形状等のデータを含む。また、地図情報は、現実空間における、視線を遮る物である遮蔽物の位置及び形状に関する情報を含む。遮蔽物は、例えば、現実空間に配置された構造物が例示される。
【0027】
地図情報取得部11は、地図DB10から地図情報を取得する部分である。地図情報取得部11は、取得した地図情報を配信範囲設定部14に送出する。
【0028】
オブジェクト情報記憶部12は、オブジェクトに関する情報であるオブジェクト情報を記憶している記憶手段である。オブジェクト情報は、少なくともオブジェクトの配置位置を示す位置情報を含む。図4は、オブジェクト情報記憶部12の構成及び記憶されているデータの例を示す図である。
【0029】
図4に示すように、オブジェクト情報記憶部12は、オブジェクトを識別するIDごとに、名称、位置情報、配信距離及び表示範囲を対応付けて記憶している。名称Nは、当該オブジェクトの名称を示す。位置情報は、オブジェクトの現実空間における配置位置を示す情報であり、例えば、経度X、緯度Y及び高度Zにより示される。配信距離rは、当該オブジェクトが配信される範囲を円(又は球面)で定義するための半径を示す情報である。オブジェクトの配信範囲は、当該オブジェクトの配置位置を中心とする円または球面に囲まれる領域に定義することができる。表示範囲Rは、補正配信範囲記憶部15に記憶されている補正配信範囲に関する情報に対するリンク情報である。補正配信範囲記憶部15では、表示範囲Rに示されるリンク情報ごとに、補正配信範囲が定義・記憶されている。なお、オブジェクト情報は、図4に示した情報の他、例えば、当該オブジェクトを移動端末2において表示させる際の画像データを含むこととしてもよい。
【0030】
オブジェクト情報取得部13は、オブジェクト情報記憶部12からオブジェクト情報を取得する部分である。
【0031】
配信範囲設定部14は、オブジェクト情報取得部13により取得されたオブジェクト情報に示されるオブジェクトの配置位置、及び地図情報取得部11により取得された地図情報に基づき、オブジェクトを視認可能な範囲を配信範囲としてオブジェクト情報毎に設定する部分である。具体的には、配信範囲設定部14は、地図情報に基づき定義される現実空間において、オブジェクトの配置位置を端点として、予め設定された所定の長さを有する複数の線分を仮想的に生成し、線分がオブジェクトの配置位置から所定の長さ以内の位置において遮蔽物と交わる場合には、線分と当該遮蔽物との交点を補正点として設定し、線分が遮蔽物と交わらない場合には、線分の他端点を補正点として設定し、複数の線分毎に設定された複数の補正点間を結ぶ線に囲まれる領域を、当該オブジェクトの配信範囲として設定する。オブジェクトの配信範囲の設定処理の詳細は、図6及び図7を参照して後述する。
【0032】
補正配信範囲記憶部15は、配信範囲設定部14により設定された、オブジェクトの配信範囲を記憶する部分である。図5は、補正配信範囲記憶部15の構成及び記憶されているデータの例を示す図である。図5に示すように、補正配信範囲記憶部15は、オブジェクト情報記憶部12のオブジェクト情報から参照されるリンク情報としての表示範囲Rごとに、補正配信範囲を記憶している。補正配信範囲は、配信範囲設定部14により設定された複数の補正点(X,Y,Z)の集合として記憶されている。なお、図5に示す例では、補正点は、3次元空間における座標として定義されているが、補正点及び配信範囲が2次元の地図情報上において定義される場合には、Z座標の値を含まないこととしてもよいし、Z座標の値が「0」であることとしてもよい。また、補正配信範囲記憶部15に記憶されている情報は、オブジェクト情報記憶部12に記憶されることとして、オブジェクト管理装置1が補正配信範囲記憶部15を備えないこととしてもよい。
【0033】
配信要求受信部16は、移動端末2からのオブジェクトの配信要求を受信する部分である。配信要求には、移動端末2の現在位置を示す現在位置情報が含まれている。配信要求受信部16は、移動端末2の現在位置情報をオブジェクト情報抽出部17に送出する。
【0034】
オブジェクト情報抽出部17は、移動端末2に送信するためのオブジェクト情報をオブジェクト情報記憶部12から抽出する部分である。具体的には、オブジェクト情報抽出部17は、オブジェクト情報記憶部12においてオブジェクトごとに記憶されている表示範囲Rに基づき、補正配信範囲記憶部15において当該表示範囲Rに対応付けて記憶されている補正配信範囲を取得する。そして、オブジェクト情報抽出部17は、取得した補正配信範囲に、移動端末2の現在位置が含まれる場合に、当該オブジェクトのオブジェクト情報を配信対象として抽出する。オブジェクト情報抽出部17は、抽出されたオブジェクト情報をオブジェクト情報送信部18に送出する。
【0035】
オブジェクト情報送信部18は、オブジェクト情報抽出部17により抽出されたオブジェクト情報を移動端末2に送信する部分である。
【0036】
続いて、図6及び図7を参照して、本実施形態のオブジェクト配信範囲設定方法におけるオブジェクト管理装置1の動作について説明する。図6は、オブジェクト管理装置1において実施される処理内容を示すフローチャートである。また、図7は、オブジェクト情報の配信範囲設定の例を示す図である。なお、図7では、2次元で表された地図情報を扱っている。
【0037】
まず、ステップS1の処理に先立ち、オブジェクト情報取得部13及び地図情報取得部11はそれぞれ、オブジェクト情報及び地図情報を取得する(オブジェクト情報取得ステップ、地図情報取得ステップ)。続いて、配信範囲設定部14は、地図情報に基づき、道路及び遮蔽物(構造物)等を含む現実空間の構成を設定し、オブジェクト情報に示されるオブジェクトを、当該オブジェクトの位置情報に基づき現実空間にマッピングする(S1)。図7に示す例では、オブジェクトOは、構造物Sの道路側端部に位置している。
【0038】
次に、配信範囲設定部14は、オブジェクト情報から配信距離rを取得する(S2)。続いて、配信範囲設定部14は、配信距離rに基づき配信範囲円Cを設定する(図7参照)(S3)。配信範囲円Cは、遮蔽物が全く存在しないと仮定した場合における当該オブジェクト情報の配信範囲を示すこととなる。本実施形態では、配信範囲設定部14は、遮蔽物の存在に従って配信範囲円Cにより示される配信範囲を補正し、補正結果を当該オブジェクト情報の配信範囲として設定する。
【0039】
次に、配信範囲設定部14は、配信範囲の補正のための初期の補正処理方向を設定する(S4)。図7では、補正処理方向は、図示右方向に設定されている。続いて、配信範囲設定部14は、オブジェクトの配置位置を端点として補正処理方向に延びる長さrの線分Lを生成する(S5)。ここで、線分Lの他端点は、配信範囲円Cの円周上に位置することとなる。
【0040】
次に、配信範囲設定部14は、線分L上に遮蔽物Sがあるか否かを判定する(S6)。線分L上に遮蔽物Sがあると判定された場合には、処理手順はステップS7に進められる。一方、線分L上に遮蔽物Sがあると判定されなかった場合には、処理手順はステップS8に進められる。図7に示す例では、線分L上に遮蔽物Sが存在しないので、処理手順は、ステップS8に進められる。また、ステップS5〜S10の処理が繰り返された後のステップS5において、線分Lが生成された場合には、線分L上に遮蔽物Sが存在するので、処理手順はステップS7に進められる。
【0041】
ステップS7において、配信範囲設定部14は、線分Lと遮蔽物Sとの交点を配信補正点(補正点)として設定する(S7)。図7に示す例では、線分L上と遮蔽物Sの交点に、配信補正点Pが設定されている。
【0042】
一方、ステップS8において、配信範囲設定部14は、線分Lと配信範囲円Cとの交点を配信補正点(補正点)として設定する(S8)。図7に示す例では、線分L上と配信範囲円Cの交点に、配信補正点Pが設定されている。即ち、この場合には、配信範囲設定部14は、線分Lの他端点を配信補正点Pとして設定する。
【0043】
現実空間を2次元の平面として表した地図上においてオブジェクトOの配信範囲を設定する場合には、配信範囲設定部14は、2次元の地図上におけるオブジェクトOの配置位置を端点として、オブジェクトの配置位置の周囲360°にわたり所定の角度間隔Dで複数の線分Lを生成し、生成された線分Lごとに配信補正点Pを設定する。従って、ステップS9において、配信範囲設定部14は、2次元平面上における全方向に対する補正処理を実施したか否かを判定する(S9)。全方向に対する補正処理を実施したと判定された場合には、処理手順はステップS11に進められる。一方、全方向に対する補正処理を実施したと判定されなかった場合には、処理手順はステップS10に進められる。
【0044】
ステップS10において、配信範囲設定部14は、補正処理方向を示す角度を所定の角度Dだけインクリメントする(S10)。そして、処理手順はステップS5に戻り、線分Ln+1が生成され、線分Ln+1に対する補正点Pn+1が設定される。図7に示す例では、ステップS5〜S10の処理の繰り返しにより、複数の線分L〜L11が生成され、さらに複数の配信補正点P〜P11が設定されている。
【0045】
ステップS11において、配信範囲設定部14は、複数の配信補正点P間を結ぶ線に囲まれる領域を配信範囲として設定する(S11)。図7では、複数の配信補正点P〜P11間を結んだ領域Aが、オブジェクトOに関するオブジェクト情報の配信範囲として設定される。続くステップS12では、配信範囲設定部14は、配信範囲の領域Aの適正化処理を実施する(S12)。適正化処理は、例えば、領域Aの形状において、所定角度未満の鋭角部分を平滑化する処理等である。なお、ステップS12における適正化処理は、実施されないこととしてもよい。そして、配信範囲設定部14は、ステップS12に至る処理において生成された配信範囲を、当該オブジェクト情報に対応付けて、補正配信範囲記憶部15に記憶させる(S13)。配信範囲は、図5に示したように、配信範囲を定義可能な配信補正点Pの集合として記憶される。こうして、本実施形態の処理を終了する。なお、本実施形態におけるステップS1〜S13の処理内容は、本発明における配信範囲設定ステップの一例を構成する。
【0046】
なお、図7では、現実空間を2次元の平面として表した地図上においてオブジェクトOの配信範囲を設定する例を示したが、地図DB10が3次元で表された地図情報を記憶しており、オブジェクト情報記憶部12がオブジェクトの配置位置を3次元空間における位置情報として有している場合には、オブジェクト情報の配信範囲を3次元空間において設定することが可能である。
【0047】
この場合には、図6のフローチャートにおけるステップS3において、配信範囲設定部14は、配信範囲円Cではなく、オブジェクトの配置位置を中心とし、半径を配信距離rとする、配信範囲を示す球面を仮想的に設定する。そして、ステップS5において、配信範囲設定部14は、オブジェクトOの配置位置を端点として、当該球面上に他端点が位置する線分を生成する。
【0048】
ステップS5〜S10の処理の繰り返しにより、配信範囲設定部14は、オブジェクトOの配置位置を端点として、3次元空間における全方位にわたり所定の角度間隔で複数の線分を生成する。換言すると、配信範囲設定部14は、ステップS3において生成された球面上の全てにわたり所定間隔で他端点が位置するように、複数の線分を生成することとなる。
【0049】
そして、配信範囲設定部14は、生成された線分ごとに配信補正点を設定する。以上の処理により、配信範囲設定部14は、3次元で定義された地図情報上におけるオブジェクト情報の配信範囲を3次元の領域として設定することが可能である。
【0050】
以上説明した第1実施形態のオブジェクト管理装置1及びオブジェクト配信範囲設定方法では、配信範囲設定部14により、オブジェクトの配置位置及び地図情報に基づき、オブジェクトを視認可能な範囲が当該オブジェクトに関するオブジェクト情報の配信範囲としてオブジェクト情報毎に設定される。これにより、移動端末2がオブジェクトを視認可能な場所に位置する場合に、当該オブジェクトのオブジェクト情報が当該移動端末2に配信されることとなる。従って、移動端末2にオブジェクトを適切に表示させるために、配信されるべきオブジェクト情報が適切に配信されることとなる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、図8及び図9を参照して、第2実施形態におけるオブジェクト管理装置1の動作について説明する。図8は、オブジェクト管理装置1において実施される処理内容を示すフローチャートである。また、図9は、第2実施形態におけるオブジェクト情報の配信範囲設定の例を示す図である。
【0052】
第2実施形態では、地図DB10に記憶されている地図情報における遮蔽物が透過物である場合には、当該遮蔽物に対して透過属性が対応付けて記憶されている。なお、視線が当該構造物に遮られている場合であっても、視線の基準位置から見て当該構造物の陰となる領域を、当該構造物を通して視認可能であるような場合に、当該構造物を透過物として定義する。第2実施形態では、遮蔽物における透過属性の有無が考慮された、オブジェクト情報の配信範囲の設定が実施される。図8及び図9を参照して、オブジェクト情報の配信範囲の設定処理を具体的に説明する。なお、図9における遮蔽物S24には透過属性が付与されているものとする。
【0053】
図8のフローチャートにおけるステップS21〜S26の処理内容はそれぞれ、図6のフローチャートにおけるステップS1〜S6の処理内容と同様である。
【0054】
ステップS26において、線分L上に遮蔽物Sがあると判定された場合には、処理手順はステップS27に進められる。一方、線分L上に遮蔽物Sがあると判定されなかった場合には、処理手順はステップS30に進められる。
【0055】
続くステップS27において、配信範囲設定部14は、線分L上に遮蔽物Sに透過属性が付与されているか否かを判定する(S27)。線分L上に遮蔽物Sに透過属性が付与されていると判定された場合には、処理手順はステップS28に進められる。一方、線分L上に遮蔽物Sに透過属性が付与されていると判定されなかった場合には、処理手順はステップS29に進められる。図9に示す例では、ステップS25〜S30の処理が繰り返された後のステップS25において線分L29が生成された場合には、線分L29上の遮蔽物S24に透過属性が付与されているので、処理手順は、ステップS28に進められる。
【0056】
ステップS28において、配信範囲設定部14は、ステップS26において判定した遮蔽物とは異なる他の遮蔽物が線分L上に存在するか否かを判定する(S28)。他の遮蔽物が線分L上に存在すると判定された場合には、処理手順はステップS27に戻り、当該他の遮蔽物に関する透過属性の有無が判定される。一方、他の遮蔽物が線分L上に存在すると判定されなかった場合には、処理手順はステップS30に進められる。
【0057】
ステップS29,S30の処理内容はそれぞれ、図6のフローチャートにおけるステップS7,S8の処理内容と同様である。図9に示すように、線分L29上に遮蔽物S24が存在する場合であっても、遮蔽物S24には透過属性が付与されているので、配信範囲設定部14は、線分L29上と配信範囲円Cの交点に、配信補正点P29を設定する。即ち、この場合には、配信範囲設定部14は、線分L29の他端点を配信補正点P29として設定する。
【0058】
ステップS31〜S35の処理内容はそれぞれ、図6のフローチャートにおけるステップS9〜S13の処理内容と同様である。なお、ステップS33において、配信範囲設定部14は、複数の配信補正点P21〜P31間を結んだ領域Aを、オブジェクトOに関するオブジェクト情報の配信範囲として設定する。
【0059】
以上説明したように、ステップS27において遮蔽物に透過属性が付与されていると判定された場合には、線分上に遮蔽物がある場合であっても、当該遮蔽物が存在しないものとして、配信補正点の設定処理(S30)、及び他の遮蔽物の有無の判定処理(S28)が実施される。これにより、移動端末2が遮蔽物を通してオブジェクトを視認可能である場合に、当該移動端末2の位置がオブジェクト情報の配信範囲に含まれるように設定されることとなる。従って、移動端末2に配信されるべきオブジェクト情報が適切に配信されることとなる。
【0060】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0061】
例えば、オブジェクト情報抽出部17により抽出されたオブジェクト情報がオブジェクト情報送信部18により移動端末2に送信されるときに、補正配信範囲記憶部15に記憶されている当該オブジェクトの配信範囲に関する情報も併せて送信されることとしてもよい。この場合には、移動端末2は、オブジェクトの配信範囲に関する情報を、現実空間の画像に当該オブジェクトを表示させるか否かの判定に用いることができる。より具体的には、移動端末2は、配信されたオブジェクト情報及び配信範囲に関する情報を一定期間保持する。そして、移動端末2が当該オブジェクトを視認不可能な位置に移動した後に、再び当該オブジェクトの配信範囲内に移動した場合に、移動端末2は、当該オブジェクトを表示させる判断をすることができる。これにより、移動端末2におけるオブジェクトの表示の高速化を図ることが可能となる。また、オブジェクトの配信範囲に関する情報は、オブジェクトとの距離及び遮蔽物の存在に基づき当該オブジェクトの視認の可能性が考慮されて設定された情報であるので、移動端末2は、当該オブジェクトを表示するか否かの判定を実施するに際して、当該オブジェクトの視認可能性の判断が不要となる。
【符号の説明】
【0062】
1…オブジェクト管理装置、1A…オブジェクト配信範囲設定部、1B…オブジェクト配信部、2…移動端末、10…地図DB、11…地図情報取得部、12…オブジェクト情報記憶部、13…オブジェクト情報取得部、14…配信範囲設定部、15…補正配信範囲記憶部、16…配信要求受信部、17…オブジェクト情報抽出部、18…オブジェクト情報送信部、A,A…配信範囲、C…配信範囲円、L…線分、O…オブジェクト、P…配信補正点、S…遮蔽物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末の位置が配信範囲に該当する場合に前記移動端末に配信されるオブジェクト情報における前記配信範囲を設定するオブジェクト配信範囲設定装置であって、
オブジェクトの配置位置に関する情報を含む前記オブジェクト情報を記憶しているオブジェクト情報記憶手段と、
現実空間における、視線を遮る物である遮蔽物の位置及び形状に関する情報を含む地図情報を記憶している地図情報記憶手段と、
前記オブジェクト情報記憶手段から前記オブジェクト情報を取得するオブジェクト情報取得手段と、
前記地図情報記憶手段から前記地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記オブジェクト情報取得手段により取得された前記オブジェクト情報に示されるオブジェクトの配置位置、及び前記地図情報取得手段により取得された前記地図情報に基づき、前記オブジェクトを視認可能な範囲を前記配信範囲として前記オブジェクト情報毎に設定する配信範囲設定手段と
を備えることを特徴とするオブジェクト配信範囲設定装置。
【請求項2】
前記配信範囲設定手段は、
前記地図情報に基づき定義される現実空間において、前記オブジェクトの配置位置を端点として、予め設定された所定の長さを有する複数の線分を仮想的に生成し、前記線分が前記オブジェクトの配置位置から前記所定の長さ以内の位置において前記遮蔽物と交わる場合には、前記線分と当該遮蔽物との交点を補正点として設定し、前記線分が前記遮蔽物と交わらない場合には、前記線分の他端点を補正点として設定し、前記複数の線分毎に設定された前記複数の補正点間を結ぶ線に囲まれる領域を前記配信範囲として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のオブジェクト配信範囲設定装置。
【請求項3】
前記地図情報記憶手段は、前記遮蔽物が透過物である場合には、当該遮蔽物に透過属性を対応付けて記憶しており、
前記配信範囲設定手段は、前記線分が前記遮蔽物と交わる場合であっても、当該遮蔽物に前記透過属性が対応付けられている場合には、当該遮蔽物が存在しないものとして前記補正点の設定を実施する
ことを特徴とする請求項2に記載のオブジェクト配信範囲設定装置。
【請求項4】
前記地図情報記憶手段は、2次元で表された地図情報を記憶しており、
前記配信範囲設定手段は、前記2次元の地図上における前記オブジェクトの配置位置を端点として、前記オブジェクトの配置位置の周囲360°にわたり所定の角度間隔で複数の前記線分を生成する
ことを特徴とする請求項2または3に記載のオブジェクト配信範囲設定装置。
【請求項5】
前記地図情報記憶手段は、3次元で表された地図情報を記憶しており、
前記配信範囲設定手段は、
前記オブジェクトの配置位置を中心とし、前記線分の所定の長さを半径とする球面を仮想的に設定し、前記球面上の全てにわたり所定間隔で前記他端点が位置するように、複数の前記線分を生成する
ことを特徴とする請求項2または3に記載のオブジェクト配信範囲設定装置。
【請求項6】
移動端末の位置が配信範囲に該当する場合に前記移動端末に配信されるオブジェクト情報の前記配信範囲を設定するオブジェクト配信範囲設定装置におけるオブジェクト配信範囲設定方法であって、
オブジェクトの配置位置に関する情報を含む前記オブジェクト情報を記憶しているオブジェクト情報記憶手段から前記オブジェクト情報を取得するオブジェクト情報取得ステップと、
現実空間における、視線を遮る物である遮蔽物の位置及び形状に関する情報を含む地図情報を記憶している地図情報記憶手段から前記地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
前記オブジェクト情報取得ステップにおいて取得された前記オブジェクト情報に示されるオブジェクトの配置位置、及び前記地図情報取得ステップにおいて取得された前記地図情報に基づき、前記オブジェクトを視認可能な範囲を前記配信範囲として前記オブジェクト情報毎に設定する配信範囲設定ステップと
を有することを特徴とするオブジェクト配信範囲設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−244398(P2011−244398A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117341(P2010−117341)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】