オリタバンシンの投与によってクロストリジウム・ディフィシレを抑制する方法
グリコペプチド抗生物質、例えばオリタバンシンは、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型およびクロストリジウム・ディフィシレ胞子の両方に対する顕著な活性を示す。ヒトを含む動物におけるクロストリジウム・ディフィシレ感染症および疾患の、処置、予防処置、および予防策のための方法が記載される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)感染症は、際だった健康管理上の問題である。それは入院中の高齢者にとっては病的状態の主な原因であり、またほぼ例外なく抗菌療法に関係している。クロストリジウム・ディフィシレ感染症(CDI)は、重症度が軽症の抗生物質関連下痢/大腸炎から生命に危険のある偽膜性大腸炎までに及ぶと考えられている(Borriello, S. P. 1998. J Antimicrob Chemother. 41 (Suppl. C), 13-19)。CDIの治療戦略は、過去20年間にわたりほとんど変わっていない:経口メトロニダゾール(250〜500mgTIDまたはQID)あるいはバンコマイシン(125mgQID)が、CDIの処置に最も一般的に用いられている(Wilcox, M. H. 1998. J Antimicrob Chemother. 41 (Suppl. C), 41-46;ウエブサイト postgradmed.com/issues/2002/11_02/ joyce3.htmも参照せよ)。
【0002】
クロストリジウム・ディフィシレは、胞子形成を行うことで、極度の熱、放射線、化学攻撃、乾燥、及び時間に強い細菌胞子を形成する(Aronson, A.I, Fitz-James, P. 1976. Bacteriol Rev. 40, 360-402)。クロストリジウム・ディフィシレ胞子は、院内環境で残存することが知られており、該生物の伝播に役割を果たすと思われる。さらに、クロストリジウム・ディフィシレ胞子は抗菌療法(メトロニダゾール(MET)およびバンコマイシン(VAN)治療を含む)に対して抵抗性を持ち、初期症状発現を処置するための抗生物質の使用を停止した後にCDIが再発する一因となり得る(Walters, B. A. 1983. Gut. 24, 206-212)。しかし、クロストリジウム・ディフィシレ胞子に対する抗菌活性を評価した研究はほとんどなく、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の殺菌または発芽阻害のために使用することが可能な治療法が強く求められている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書中に開示されるように、NDISACC−(4−(4−クロロフェニル)ベンジル)A82846BおよびLY333328としても公知でありかつ本明細書中に記載される、グリコペプチド抗生物質オリタバンシンが、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型とクロストリジウム・ディフィシレ胞子との両方に対して顕著な活性を示すことが明らかにされた。本明細書中に記述された実験の結果は、オリタバンシン(またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物)等のグリコペプチド抗生物質がヒトを含む動物でのクロストリジウム・ディフィシレによって引き起こされた疾患の処置、予防処置、および(または)予防策において有効であることを示している。
クロストリジウム・ディフィシレの増殖の抑制
本発明は、インビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、および/またはエクスビボ(ex vivo)でクロストリジウム・ディフィシレ・バクテリアの増殖を抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ・バクテリアの増殖を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とクロストリジウム・ディフィシレとを接触させることを含む方法に概ね関する。クロストリジウム・ディフィシレは、栄養増殖細胞(vegetative cell)、胞子(spore)、または両方の混合物であってもよい。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0004】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長 をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長 を抑制する抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0005】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0006】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長(outgrowth)をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制する抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0007】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の栄養増殖型の増殖をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の栄養増殖型を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0008】
本発明は、クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、インビトロ、インビボ、または両方で、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型(vegetative form)と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質をおよび医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置
本発明は一般に、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することで、該被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法に関する。好ましくは、クロストリジウム・ディフィシレは、栄養増殖細胞、胞子、または両方の混合物の形態である。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与である。
【0009】
本発明はまた、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、該処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与が静脈内投与または経口投与による。
【0010】
本発明はさらに、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0011】
本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置によってクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制処置する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0012】
さらに、本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置がクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型の増殖を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0013】
さらに、本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、該処置がクロストリジウム・ディフィシレの胞子形成を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防
本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を予防する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染の危険性がある被検体にクロストリジウム・ディフィシレ感染症を予防するために十分な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含む方法に概ね関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、もしくはその医薬的に許容し得る塩、水和物、またはそれらの溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置
本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置を提供する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置を達成するために十分な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含む方法に概ね関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくはこれらの溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0014】
本発明は、グリコペプチド抗生物質、好ましくはオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくはこれらの溶媒和物の、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置、および(または)予防策における薬物療法のための使用を含む。
【0015】
本発明はさらに、グリコペプチド抗生物質の、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置、および/または予防策のための薬物を製造するための使用を含む。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくはこれらの溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0016】
本発明は、適当な包装容器に、本発明の医薬組成物もしくはグリコペプチド抗生物質、並びに、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置および/もしくは予防策におけるそれの使用のための指示書を含有するキットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】MIC測定用の螺旋勾配評価項目分析を模式的に示す図である。
【図2】螺旋勾配評価項目分析によるクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖培養(V)および胞子(SP)の相乗平均(±SE)オリタバンシン(ORI)MICを示す。
【図3】インビボ濃度のメトロニダゾール(MET)、バンコマイシン(VAN)、ORI、脱イオン水(C)、またはTween80(P−80)に、1分または30分にわたってさらしたクロストリジウム・ディフィシレ胞子の回復率(%)(±範囲)を示す。
【図4】位相差顕微鏡下のクロストリジウム・ディフィシレの(a)位相差で明るい(phase bright)胞子、(b)位相差で暗い(phase dark)胞子、(c)伸長する胞子、(d)栄養増殖細胞を示す(100倍拡大)。
【図5】10mg/Lオリタバンシン(ORI)対無抗生物質(C)にさらしたクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の位相差で明るい(phase bright)(PV)胞子、位相差で暗い(phase dark)(PD)胞子、および栄養増殖細胞(V)の回復率(±範囲)を示す。
【図6】かなり短い時間(1分、薄灰色)または30分(30分、暗灰色)にわたってメトロニダゾール(MET)、バンコマイシン(VAN)、またはオリタバンシン(ORI)にさらしたクロストリジウム・ディフィシレ胞子の回復率と、水のみ(C)または水およびTween80(P80)にさらした対照の回復率とを示す。3種類の株のクロストリジウム・ディフィシレ胞子を試験した(PCRリボタイプ001、106、および027)。反応溶液添加後に、希釈剤を胚状体に添加した。
【図7】かなり短い時間(1分、薄灰色)または30分(30分、暗灰色)にわたってメトロニダゾール(MET)、バンコマイシン(VAN)、またはオリタバンシン(ORI)にさらしたクロストリジウム・ディフィシレ胞子の回復率と、水のみ(C)または水およびTween80(P80)にさらした対照の回復率とを示す。3種類の株のクロストリジウム・ディフィシレ胞子を試験した(PCRリボタイプ001、106、および027)。反応溶液添加前に、希釈剤を胚状体に添加した。
【図8A】(a)オリタバンシンおよび(b)バンコマイシン腸モデルの容器3内で培養可能な固有の腸ミクロフロラの平均(+SE)生菌数(log10cfu/mL)を示す。縦線は、各々の実験期間の最終日を示す。水平方向の破線は、細菌培養のための検出限界を示す。
【図8B】(a)オリタバンシンおよび(b)バンコマイシン腸モデルの容器3内で培養可能な固有の腸ミクロフロラの平均(+SE)生菌数(log10cfu/mL)を示す。縦線は、各々の実験期間の最終日を示す。水平方向の破線は、細菌培養のための検出限界を示す。
【図9A】腸モデルの容器3での(a)オリタバンシン(ORI)および(b)バンコマイシンにおける平均(+SE)クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の総計数(log10cfu/mL)、胞子計数(log10cfu/mL)、細胞毒素タイター(RU)、および抗菌剤濃度(mg/L)を示す。水平方向の破線は、細菌培養のための検出限界を示す。
【図9B】腸モデルの容器3での(a)オリタバンシン(ORI)および(b)バンコマイシンにおける平均(+SE)クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の総計数(log10cfu/mL)、胞子計数(log10cfu/mL)、細胞毒素タイター(RU)、および抗菌剤濃度(mg/L)を示す。水平方向の破線は、細菌培養のための検出限界を示す。
【図10】CDIのハムスターモデルにおいてバンコマイシンと比較したオリタバンシンの複数回投与計画の有効性の決定に関する結果を示すグラフである。ハムスター(n=10/群)に対して、オリタバンシンまたはバンコマイシンを異なる濃度の投与計画で静脈注射による処置を施した。合計1、2、または3回分の抗生物質を、2日後に5日間静脈注射した。
【数1】
L(クリンダマイシン(100mg/kg、皮下)の注射);
CD(強行経口投与によるクロストリジウム・ディフィシレ感染症);Tx(抗生物質の注射);
ORI、オリタバンシン;Vanco、バンコマイシン。
【図11A】CDIのハムスターモデルの妥当性検証を示す。
【図11B】CDIのハムスターモデルにおいてVAと比較して、HPCDに処方したORIの有効性を示す。
【図11C】CDIのハムスターモデルにおいてVAと比較して、PGE400に処方したORIの有効性を示す。
【図11D】ハムスター盲腸含有物内のCD総生菌数(TC)および胞子数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
クロストリジウム・ディフィシレの増殖の抑制
本発明は、一般に、インビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、および/またはエクスビボ(ex vivo)で細菌のクロストリジウム・ディフィシレ(C. difficile)の増殖を抑制する方法に関し、該方法はクロストリジウム・ディフィシレ・バクテリアの増殖を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とクロストリジウム・ディフィシレとを接触させることを含む。クロストリジウム・ディフィシレは、栄養増殖細胞(vegetative cell)、胞子(spore)、または両方の混合物の形態であってもよい。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0019】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長(outgrowth)をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長を抑制する抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0020】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽(germination)をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0021】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長(outgrowth)をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制する抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0022】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での増殖をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0023】
本発明は、クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成(sporulation)をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、インビトロ、インビボ、あるいは両方で、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置
本発明は一般に、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することで、該被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症状を処置する方法に関する。好ましくは、クロストリジウム・ディフィシレは、栄養増殖細胞、胞子、あるいは両方の混合物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0024】
本発明はまた、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、該処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0025】
本発明はさらに、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0026】
本発明はまた、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、該処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0027】
さらに、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置がクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での増殖を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0028】
さらに、本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、該処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子形成を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防策
本発明は、一般に、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を予防する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の危険性がある被検体にクロストリジウム・ディフィシレ感染症を防ぐのに十分な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含む方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置
本発明は一般に、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置を提供する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することで、該被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0029】
本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置、および/または予防策における薬物療法として使用するために、グリコペプチド抗生物質、好ましくはオリタバンシン、医薬的に許容し得る塩、水和物、あるいはそれの溶媒和物を含む。
【0030】
本発明は、さらに被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置、および(または)予防策のための薬物の製造にグリコペプチド抗生物質を使用することを含む。
【0031】
好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0032】
本発明は、適当な包装容器に、本発明の医薬組成物もしくはグリコペプチド抗生物質と、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置および(または)予防策におけるそれの使用のための指示書とを含む。
【0033】
本発明のグリコペプチド抗生物質として、式Iのグリコペプチド抗生物質、および該グリコペプチド抗生物質の医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、または混合物が挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
式中、R1は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、および−Ra−Y−Rb−(Z)xの1つ;またはR1は、−Ra−Rb−(Z)x、−Ra−Y−Rb−(Z)x、Rf、−C(O)Rf、または−C(O)−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された糖類基;
R2は、水素または−Ra−Rb−(Z)x、−Ra−Y−Rb−(Z)x、Rf、−C(O)Rf、もしくは−C(O)−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された糖類基;
R3は、−ORc、−NRcRc、−O−Ra−Y−Rb−(Z)x、−NRc−Ra−Y−Rb−(Z)x、−NRcRe、または−O−Re;
R4は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−Ra−Y−Rb−(Z)x、−C(O)Rd、および−Ra−Y−Rb−(Z)x、Rf、もしくは−C(O)−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された糖類基からなる群から選択されるもの、あるいはR4およびR5は、それらが結合する原子とともに結合し、−NRc−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された複素環を形成するもの;
R5は、水素、ハロ、−CH(Rc)−NRcRc、−CH(Rc)−NRcRe、−CH(Rc)−NRc−Ra−Y−Rb−(Z)x、−CH(Rc)−Rx、および−CH(Rc)−NRc−Ra−C(O)−Rxからなる群から選択されるもの;
R6は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−Ra−Y−Rb−(Z)x、−C(O)Rd、および−Ra−Y−Rb−(Z)x、Rf、−C(O)Rf、もしくは−C(O)−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された糖類基からなる群から選択されるもの;あるいはR5およびR6は、それらが結合する原子とともに結合し、−NRc−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された複素環を形成するもの;
R7は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−Ra−Y−Rb−(Z)x、および−C(O)Rdからなる群から選択されるもの;
R8は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、および−Ra−Y−Rb−(Z)xからなる群から選択されるもの;
R9は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環からなる群から選択されるもの;
R10は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環からなる群から選択されるもの、あるいはR8およびR10は結合して−AR1−O−AR2−するもので、AR1およびAR2は、それぞれ独立して、アリーレンまたはヘテロアリーレンであり;
R11は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環からなる群から選択されるもの、あるいは、R10およびR11は、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともに結合し、複素環を形成するもの;
R12は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、−C(O)Rd、−C(NH)Rd、−C(O)NRcRc、−C(O)ORd、−C(NH)NRcRc、および−Ra−Y−Rb−(Z)xからなる群から選択され、ならびに―C(O)−RbY−Rb−x(Z)、またはR11およびR12は、それらが結合する窒素原子とともに結合し、複素環を形成するもの;
R13は、水素または−OR14からなる群から選択されるもの;
R14は、水素、―C(O)Rd、および糖類基から選択されるもの;
Raは、それぞれ独立して、アルキレン、置換アルキレン、アルケニレン、置換アルケニレン、アルキニレン、および置換アルキニレンからなる群から選択されるもの;
Rbは、それぞれ独立して、共有結合、アリーレン、アルキレン、置換アルキレン、アルケニレン、置換アルケニレン、アルキニレン、および置換アルキニレンからなる群から選択されるもの;
Rcは、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、および−C(O)Rdからなる群から選択されるもの;
Rdは、それぞれ独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環からなる群から選択されるもの;
Reは、各々が糖類基;
Rfは、それぞれ独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環からなる群から選択されるもの;
Rxは、N結合アミノ糖類またはN結合複素環式化合物;
Xは、それぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素から選択されるもの;
Yは、それぞれ独立して、−CH2−、酸素、硫黄、−S−S−、−NRc、−S(O)、−SO2、−NRcC(O)−、−OSO2−、−OC(O)、−N(Rc)SO2−、−C(O)NRc−、−C(O)O、−SO2NRc−、−SO2O−、−P(O)(ORc)O−、−P(O)(ORc)NRc−、−OP(O)(ORc)O−、−OP(O)(ORc)NRc−、−OC(O)O−、−NRcC(O)O−、−NRcC(O)NRc−、−OC(O)NRc−、−C(O)−、および−N(Rc)SO2NRc−;
Zは、水素、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、複素環、または糖類である。
xは1または2であり、
また
【0036】
【化2】
【0037】
は
【0038】
【化3】
【0039】
から選択される。
【0040】
特に、式Iのグリコペプチド抗生物質は、テイコプラニン、ダルババンシン、およびテラバンシンを含む。
【0041】
本発明のグリコペプチド抗生物質は、式IIのグリコペプチド抗生物質、および該グリコペプチド抗生物質の医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、または混合物が挙げられる。
【0042】
【化4】
【0043】
式中、XおよびYは、それぞれ独立して、水素または塩素;
Rは、水素、4−エピ−バンコサミニル、アクチノサミニル、リストサミニル、または式−Ra−R7a(式中、Raは、4−エピ−バンコサミニル、アクチノサミニル、もしくはリストサミニルであり、以下に定義するRaがRaのアミノ基に結合している)の基;
R1は、水素またはマンノース;
R2は、―NH2、―NHCH3、−N(CH3)2、―NHR7bあるいは−N(CH3)R7bであり、式中R7bは以下に定義されるもの;
R3は、−CH2CH(CH3)2、[p−OH,m−Cl]フェニル、p−ラムノシルオキシフェニル、p−(ラムノシルガラクトシルオキシ)−フェニル、[p−ガラクトース−ガラクトース]フェニル、p−(メトキシラムノシルオキシ)フェニル、またはp−メトキシ−ラムノシルオキシフェニル;
R4は、−CH2(CO)NH2、ベンジル、[p−OH]フェニル、または[p−OH、mCl]フェニル;
R5は水素、またはマンノース;
R6は、4−エピ−バンコサミニル、L−アコサミニル、L−リストサミニル、またはL−アクチノサミニル;
R7は、以下に定義されるように、R6のアミノ基に結合しており、および
R7、R7a、およびR7は、それぞれ独立して、水素、(C2−C16)アルケニル、(C2−C12)アルキニル、(C1−C12アルキル)−R8、(C1−C12アルキル)−ハロ、(C2−C6アルケニル)−R8、(C2−C6アルキニル)−R8、(C1−C12アルキル)−O−R8、ただし、R7、R7a、およびR7bがすべて水素となることはなく、またR8は以下の(a)ないし(f)からなる群から選択されるもので、
a)それぞれ独立して、未置換または以下のものからなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換された多環アリール:
(i)水酸基、
(ii)ハロ、
(iii)窒素、
(iv)(C1−C6)アルキル、
(v)(C2−C6)アルケニル、
(vi)(C2−C6)アルキニル、
(vii)(C1−C6)アルコキシ、
(viii)ハロ−(C1−C6)アルキル、
(ix)ハロ−(C1−C6)アルコキシ、
(x)カルボ−(C1−C6)アルコキシ、
(xi)カルボベンジルオキシ、
(xii)(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシル、ハロ、またはニトロで置換されたカルボベンジルオキシ、
(xiii)式−S(O)n’−R9の基、式中、n’は0〜2およびR9は(C1−C6)アルキル、フェニル、または(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシル、ハロ、またはニトロで置換されたフェニル、および
(xiv)式−C(O)N(R10)2の基、式中、各々のR10はそれぞれ独立して、水素、(C1−C6)−アルキル、(C1−C6)−アルコキシ、フェニル、または(C1−C6)ア−ルキル、(C1−C6)−アルコキシ、ハロ、もしくは窒素で置換されたフェニル;(b)それぞれ独立して、未置換または以下のものからなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換された多環アリール:
(i)ハロ、
(ii)(C1−C6)アルキル、
(iii)(C1−C6)アルコキシ、
(iv)(C1−C6)アルキル、
(v)ハロ−(C1−C6)アルコキシ、
(vi)フェニル基、
(vii)チオフェニル、
(viii)ハロ、(C−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C1−C6)アルコキシ、または窒素によって置換されたフェニル、
(ix)カルボ−(C1−C6)アルコキシ、
(x)カルボベンジルオキシ、
(xi)(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、ハロ、または窒素で置換されたカルボベンジルオキシ、
(xii)上に定義された式−S(O)n’−R9の基、
(xiii)上に定義された式−C(O)N(R10)2の基、
および
(xiv)チエニル;
(c)以下の式の基:
【0044】
【化5】
【0045】
式中、
A1は、−OC(A2)2−C(A2)2−O−、−O−C(A2)2−O−、−C(A2)2−O−、または−C(A2)2−C(A2)2−C(A2)2−C(A2)2−、および
各A2置換基は、それぞれ独立して、水素、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、および(C4−C10)シクロアルキルから選択されるもの:
(d)以下の式の基:
【0046】
【化6】
【0047】
式中
pは1ないし5;およびR11は、それぞれ独立して以下の群から選択されるもの:
(i)水素、
(ii)ニトロ、
(iii)水酸基、
(iv)ハロ、
(v)(C1−C8)アルキル、
(vi)(C1−C8)アルコキシ、
(vii)(C9−C12)アルキル、
(viii)(C2−C9)アルキニル、
(ix)(C9−C12)アルコキシ、
(x)(C1−C3)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ(C1−C3)アルコキシ、または(C1−C4)アルキルチオによって置換された(C1−C3)アルコキシ、
(xi)(C2−C5)アルケニルオキシ、
(xii)(C2−C13)アルキルオキシ、
(xiii)ハロ−(C1−C6)アルキル、
(xiv)ハロ−(C1−C6)アルコキシ、
(xv)(C2−C6)アルキルチオ、
(xvi)(C2−C10)アルアノイルオキシ、
(xvii)カルボキシ−(C2−C4)アルケニル、
(xviii)(C1−C3)アルキルスルホニルオキシ、
(xix)カルボキシ−(C1−C3)アルキル、
(xx)N−[ジ(C1−C3)−アルキルアミノ−(C1−C3)アルコキシ、
(xxi)シアノ−(C1−C6)アルコキシ、および
(xxii)ジフェニル−(C1−C6)アルキル、
ただし
R11が(C1−C8)アルキル、(C1−C8)アルコキシ、またはハロである場合、pは2以上でなければならず、または
R7が(C1−C3アルキル)−R8である場合、R11は水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C8)アルコキシ、またはハロでないもの;
(e)以下の式の基:
【0048】
【化7】
【0049】
式中、qは0ないし4;
R12は、それぞれ独立して、以下のものからなる群から選択されるもの:
(i)ハロ、
(ii)ニトロ、
(iii)(C1−C6)アルキル、
(iv)(C1−C6)アルコキシ、
(v)ハロ−(C1−C6)アルキル、
(vi)ハロ−(C1−C6)アルコキシ、
(vii)ヒドロキシ、および
(vii)(C1−C6)チオアルキル、rは1〜5であり;
ただし
qとrとの合計は5以下であること;
Zは次のものからなる基から選ばれる:
(i)単結合、
(ii)未置換またはヒドロキシ、(C1−C6)アルキル、または(C1−C6)アルコキシによって置換された二価の(C1−C6)アルキル、
(iii)二価の(C2−C6)アルケニル、
(iv)二価の(C2−C6)アルキニル、および
(v)式−(C(R14)2)s−R15−または−R15−(C(R14)2)s−の基、式中、sは0〜6;式中、各R14置換基は、それぞれ独立して、水素、(C1−C6)−アルキル、または(C4−C10)シクロアルキル;
また、R15は、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−SO2−O−、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)O−、−NH−、−N(C1−C6アルキル)−、および−C(O)NH−、−NHC(O)−、N=Nから選択されるもの;
R13は、それぞれ独立して、以下のものからなる群から選択されるもの:
(i)(C4−C10)複素環、
(ii)ヘテロアリール、
(iii)未置換または(C1−C6)アルキルによって置換された(C4−C10)シクロアルキル、および
(iv)未置換または1ないし5の置換基によって置換されたフェニルであり、該置換基は、それぞれ独立して、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、(C1−C10)アルコキシ、ハロ−(C1−C3)アルコキシ、ハロ−(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルコキシフェニル、フェニル、フェニル−(C1−C3)アルキル、(C1−C6)アルコキシフェニル、フェニル−(C2−C3)アルキニル、および(C1−C6)アルキルフェニルから選択されるもの;
(f)それぞれ独立して、未置換または以下のものからなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換される(C4−C10)シクロアルキル:
(i)(C1−C6)アルキル、
(ii)(C1−C6)アルコキシル、
(iii)(C2−C6)アルケニル、
(iv)(C2−C6)アルキニル、
(v)(C4−C10)シクロアルキル、
(vi)フェニル、
(vii)フェニルチオ、
(viii)ニトロ、ハロ、(C1−C6)アルカノイルオキシ、またはカルボシクロアルコキシによって置換されたフェニル、および
(ix)式−Z−R13(式中、ZおよびR13は上に定義される通り)によって表される基;ならびに
(g)以下の式の基:
【0050】
【化8】
【0051】
式中、A3およびA4は、それぞれ独立して、以下のものから選択されるもの:
(i)結合、
(ii)−O−、
(iii)−S(O)t−(式中tは0〜2)、
(iv)−C(R17)2−、式中、各R17置換基は、それぞれ独立して、水素、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)ヒドロキシ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシから選択されるもの、または両R17置換基がともに0、
(v)−N(R18)2−、式中、各R18置換基は、それぞれ独立して、水素;(C1−C6)アルキル;(C2−C6)アルケニル;(C2−C6)アルキニル;(C4−C10)シクロアルキル;フェニル基;ニトロ、ハロ、(C1−C6)アルカノイルオキシによって置換されたフェニル基;または両R18置換基はともに(C4−C10)シクロアルキル;
R16は、上に定義したR12またはR13;
およびuは0〜4である。
【0052】
本発明のグリコペプチド抗生物質は、米国特許第5,840,684号に記載されたものの各々を包含するものであり、該明細書は参照によりその全体を本明細書中に援用される。
【0053】
オリタバンシン(N−(4−(4−クロロフェニル)ベンジル)A82846BおよびLY333328ともいう)は、以下の式IIIを有する。すなわち、
【0054】
【化9】
【0055】
本明細書中に列挙されたアルキル置換基は、置換または非置換、直鎖、分岐鎖の特定の長さを有する炭化水素を示す。用語「アルケニル」とは、置換または非置換、直鎖、分岐鎖を有し、本明細書中に特定の長さを有するアルケニル鎖のことをいう。用語「アルキニル」とは、置換または非置換、直鎖、分岐鎖を有し、本明細書中に特定の長さを有するアルキニル鎖のことをいう。
【0056】
本明細書中に列挙されたアルコキシ基の置換基は、酸素架橋によって結合した特定の長さのアルキル鎖のことをいう。用語「アルケノキシ」とは、酸素原子に結合した特定の長さのアルケニル鎖のことをいう。
【0057】
用語「多環アリール(multicyclic aryl)」とは、安定した飽和または不飽和、置換または非置換の9ないし10員有機融合二環式環(organic fused bicyclic ring);安定した飽和または不飽和、置換または非置換の12ないし14員有機融合三環式環(organic fused tricyclic ring);あるいは安定した飽和または不飽和、置換または非置換の14ないし16員有機融合四環式環(organic fused tetracyclic ring)のことをいう。二環式環は、0ないし4つの置換基を持つものであってもよく、三環式環は0ないし6つの置換基を持もつもであってもよく、さらに四環式環は0ないし8つの置換基を持つものであってもよい。典型的な多環式のアリールとして、フルオレニル、ナフチル、アントラニル、フェナントラニル、ビフェニレン、およびピレニルが挙げられる。
【0058】
用語「ヘテロアリール」は、S、O、およびNから選択されるヘテロ原子を有する安定した飽和または不飽和、置換または非置換の4ないし7員の有機単環;S、O、およびNから選択される1ないし2つのヘテロ原子を有する安定した飽和または不飽和、置換または非置換の9ないし10員の有機融合二環式環;あるいはS、O、およびNから選択されるヘテロ原子を有する安定した飽和または不飽和、置換または非置換の12ないし14員の有機融合三環式環を表す。これらの環の窒素および硫黄原子は任意に酸化され、また窒素ヘテロ原子は任意に四級化される。単環式環には0ないし5つの置換基を有するものであってもよい。二環式環は0ないし7つの置換基を有するものであってもよい。また、三環式環は0ないし9つの置換基を有するものであってもよい。典型的なヘテロアリールとして、キノリル、ピペリジル、チエニル、ピペロニル、オキサフルオレニル、ピリジル、およびベンゾチエニル、およびその他のものが挙げられる。
【0059】
用語「(C4−C10)シクロアルキル」は、非置換、またはアルキニルおよびフェニル等の置換基によって置換することが可能な4ないし10個の炭素原子を有する置換基、例えばシクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、およびシクロへプチルを包含する。この用語もまた、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニル等のC5ないしC10シクロアルケニル基を包含する。用語「((C4−C10))シクロアルキル」は、さらにビシクロペンチル、ビシクロヘキシル、ビシクロヘプチル、およびアダマンチル等の二環式および三環式シクロアルキルを包含する。
【0060】
用語「アルカノイルオキシ」は、酸素架橋を介して結合したアルカノイル基を表す。これらの置換基は、特定の長さの置換または非置換、直鎖または分岐鎖であってもよい。用語「シアノ−(C1−C6)アルコキシ」は、シアノ部分が結合している1ないし6個の炭素原子を有する飽和または不飽和、直鎖または分岐のアルコキシル鎖を表す。
【0061】
用語「二価(C1−C6)アルキル」は、1ないし6つの炭素原子を有する非置換または置換、直鎖または分岐の二価アルキル鎖を表す。典型的な二価(C1−C6)アルキル基として、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、sec−ブチレン、t−ブチレン、ペンチレン、ネオペンチレン、およびヘキシレンが挙げられる。そのような二価の(C1−C6)アルキル基を、アルキル、アルコキシ、およびヒドロキシ等の置換基で置換してもよい。
【0062】
用語「二価(C2−C6)アルケニル」は、2ないし6個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルケニル鎖を表す。典型的な二価の(C2−C6)アルケニルとして、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、およびその他のものが挙げられる。
【0063】
用語「二価の(C2−C6)アルキニル」は、2ないし6個の炭素原子を有する直鎖または分岐の二価アルキニル鎖を表わす。典型的な二価の(C2−C6)アルキニル、エチニルエン、1つのプロピニルエン、2つのプロピニルエン、1つのブチニルエン、2つのブチニルエンおよびその他同種のものを含んでいる。
【0064】
用語「ハロ」はクロロ、フルオロ、ブローモあるいはヨードを表わす。
【0065】
用語「ハロ−(C1−C6)アルキル」は、各炭素に結合した0ないし3個のハロゲン原子を有する1ないし6個の炭素原子を持つ直鎖または分岐のアルキル鎖を表わす。
【0066】
典型的なハロ−アルキル基(C1−C6)として、クロロメチル、2−ブロモエチル、1−クロロイソプロピル、3−フルオロプロピル、2,3−ジブロモブチル、3−クロロイソブチル、ヨード−t−ブチル、トリフルオロメチル、およびその他のものが挙げられる。
【0067】
用語「ハロ―(C1−C6)アルコキシル基」は、各炭素に結合した0ないし3個のハロゲン原子を有する1ないし6個の炭素原子を持つアルコキシル基に直鎖または分岐鎖を表わす。
【0068】
典型的なハロ−アルコキシ基(C1−C6)として、クロロメトキシ、2−ブロモエトキシ、1−クロロイソプロポキシ、3−フルオロプロポキシ、2,3−ジブロモブトキシ、3−クロロイソブトキシ、ヨード−t−ブトキシ、トリフルオロメトキシ、およびその他のものが挙げられる。
【0069】
用語「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」は、2ないし10環員を有する飽和基を包含し、複素環が、酸素、硫黄、および窒素から選択されたヘテロ原子を含むもので、例としてピペラジニル、モルホリノ、ピペルジル、メチルピペルジル、アゼチジニル、およびアジリジニルが挙げられる。
【0070】
オリタバンシン等の本発明のグリコペプチド抗生物質は、それ自体で使用することが可能であり、あるいは医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、またはそれらの混合物の形態で用いられてもよい。用語「医薬的に許容し得る塩(pharmaceutically acceptable salt)」とは、無機および有機酸に由来した無毒な酸付加塩のことをいう。
【0071】
酸付加塩を形成するために一般に使用される酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸、およびp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、およびその他の有機酸である。塩基付加塩として、アンモニウムあるいはアルカリもしくはアルカリ土類金属水酸化物等の無機塩類、炭酸塩、重炭酸塩、およびその他のものに由来する塩基付加塩が挙げられる。したがって、この発明の塩類を調製する際に有用なそのような塩類として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、およびその他のものが挙げられる。カリウムおよびナプタラムの形態が特に好ましい。
【0072】
認識しておくべきことは、この発明の任意の塩の一部を形成する特定の対イオンは、全体として塩が薬理学的に(pharmacologically)許容されるものであり、または対イオンが全体として塩に対して好ましくない性質に貢献するものでない限り、重大な性質ではないということである。
【0073】
オリタバンシンおよび類似体を含むグリコペプチド抗生物質の調製のための手段は、例えば米国特許第5,840,684号(その全体を参照により本明細書に援用する)で見出すことが可能である。
【0074】
オリタバンシンを含む本発明のグリコペプチド抗生物質を、プロドラッグの形態で使用することも可能であり、該プロトドラッグとして、国際特許出願PCT/US2008/057841(その全体を本明細書に援用)に開示されているような少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)部分を有するグリコペプチド抗生物質等が挙げられる。グリコペプチドに結合したポリ(エチレングリコール)基の存在は、水性溶媒中でのグリコペプチド抗生物質のより高い可溶性と関連する。水性溶媒中でグリコペプチド抗生物質のより高い濃度を達成することで、処方が改善され、注射量、輸液量、または投与量が少なくなる。さらに、ポリ(エチレン)グリコールの存在は、抗生物質、注射、輸液、または投与の過程で構成物質のマスキングを可能にする。これら二つのファクターの組み合わせと、ポリ(エチレングリコール)に関連した毒性がないこととによって、グリコペプチド抗生物質の投与の過程で観察される副作用を減少させることが可能になる。好ましい実施形態では、そのようなプロドラッグのポリ(エチレングリコール)は、平均分子量が900g.mol−1以上である。
【0075】
本明細書中に用いられるように、「被検体(subject)」とは、ヒト、類人猿、馬、雌牛、羊、ヤギ、犬、および猫を含む哺乳類あるいは鳥類種等の動物のことをいう。被検体として、クロストリジウム・ディフィシレ感染症を有するもの、クロストリジウム・ディフィシレ感染症を発症するリスクのあるもの、クロストリジウム・ディフィシレ感染症を発症するリスクが一般の人々よりも高いものが考えられる。クロストリジウム・ディフィシレ感染症のリスクが高い被検体の例として、抗微生物治療によって正常な腸内細菌叢が阻害される細菌感染症の治療を受ける患者、免疫機能障害(例えば免疫グロブリン欠損症、脾臓機能不全、脾摘、HIV感染症、白血球機能、異常ヘモグロビン症)を持つ患者、高齢者(Loo et al., 2005. NEJM 353:2442)、ある悪性腫瘍(例えば、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、リンパ腫)を有する患者、職業上のリスクが高い人々(例えば、消防、水道、衛生、警察、医療、および研究所職員、病院職員等の公共サービス従事者)、閉鎖集団の人々(例えば、刑務所、軍隊、養護施設)、ならびに細菌感染症に対するそれらの感受性を増強する免疫欠乏を有する他の人々が挙げられる。
【0076】
本発明の方法は、インビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、またはエクスビボ(ex vivo)で実施される方法を含む。インビトロの方法の例として、限定されるものではないが、細胞培養等の実験室設定(laboratory setting)内で行われる方法、研究所もしくは病院の機器および器具等の不活性体、カンタートップおよびベンチトップ等の表面等で実施される方法が挙げられる。エクスビボの方法の例として、限定されるものではないが、手等のヒトの体表面上で実施される方法が挙げられる。
【0077】
本発明の方法は、1種類以上のグリコペプチド抗生物質が用いられる方法と、1以上のグリコペプチド抗生物質を含む医薬組成物が用いられる方法との両方が含まれる。本発明の医薬組成物は、1種類以上のグリコペプチド抗生物質と、担体、希釈剤、および賦形剤の1種類以上とを含む。適当な担体、希釈剤、および賦形剤は、当業者に周知であり、塩類、緩衝食塩水、デキストロース(例えば、5%デキストロース水溶液)、水、グリセロール、エタノール、プロピレングリコール、ポリソルベート−80(Tween80(商標))、ポリ(エチレン)グリコール300および400(PEG300および400)、PEG化ヒマシ油(例えばクレモホール(Cremophor)EL)、ポリキサマー407および188、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体(HPCD((2−ヒドロキシプロピル)−シクロデキストリンを含む)、および(2−ヒドロキシエチル)−シクロデキストリン(例えば米国特許出願公報20060194717を参照せよ)、親水性および疎水性担体、ならびにそれらの組成物が挙げられる。疎水性担体として、例えば、脂肪乳剤、脂質、PEGリン脂質、ポリマーマトリクス、生体適合性ポリマー、リポスフェア、小胞、粒子状物質、およびリポソームが挙げられる。用語は、具体的には細胞培養培地を除外する。
【0078】
製剤に含まれる賦形剤は、例えば薬物の性質および投与方法に依存して、異なる目的を有する。一般に使用される賦形剤の例として、制限無しに、安定化剤、可溶化剤および界面活性剤、バッファ、酸化防止剤および保存剤、張度作用薬、充填剤、平滑剤、乳化剤、懸濁剤または粘性剤、不活性希釈剤、増量剤、崩壊剤、結着剤、湿潤剤、平滑剤、抗菌剤、キレート剤、甘味料、芳香剤、香味料、着色剤、投与助剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0079】
組成物は、一般的な担体および賦形剤を含むものであってもよく、例えばコーンスターチまたはゼラチン、ラクトース、スクロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、第二リン酸カルシウム、塩化ナトリウム、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、および澱粉グリコール酸ナトリウムである。
【0080】
使用される特定の担体、希釈剤、または賦形剤は、有効成分が適用されている手段および目的に依存する。
【0081】
医薬的に許容し得る賦形剤には、組成物に対して血液との適合性を与える等張化剤も含まれる。等張化剤は、注射可能な製剤において特に望ましい。
【0082】
本発明の医薬組成物およびグリコペプチド抗生物質を、例えば経口、舌下、鼻腔内、眼内、直腸、経皮、粘膜、局所、または非経口投与用に製剤化してもよい。非経口投与形態として、制限なしに、内皮、皮下(s.c.、s.q.、sub-Q、Hypo)、筋肉内(i.m.)、静脈(i.v.)、腹膜内(i.p.)、動脈内、髄内、心臓内、関節腔内(関節)、滑液包内(滑液域)、脳内、髄腔内、およびクモ膜下(髄液)が挙げられる。そのような投与を実施するために、非経口的注射または薬剤注入製剤に役立つ既知の装置はいずれも用いることができる。
【0083】
非経口投与のための製剤を、水溶性または非水溶性の等張無菌注射溶液、懸濁剤、または脂肪乳剤の形態とすることができる。注射に使用される非経口的形態は、容易な注入可能性(syringability)が存在する程度まで流動性であるべきである。これらの溶液または懸濁剤を、無菌の濃縮液体、粉体、または顆粒から調製することができる。
【0084】
非経口製剤で使用される賦形剤として、限定されるものではないが、安定化剤(例えば、炭水化物、アミノ酸およびポリソルベート、例えば5%デキストロース)、可溶化剤(例えばセトリミド、ナトリウム・ドクセート、グリセロールオノオレート、(ポリビニルピロリドン)(PVP)、およびポリエチレングリコール(PEG))、界面活性剤(例えばポリソルベート、トコフェロールPEG琥珀酸エステル、ポロキサマー、およびクレモホア(Cremophor)(登録商標)、バッファ(例えば酢酸塩、シトラート、リン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、琥珀酸エステル、アミノ酸、およびその他のもの)、酸化防止剤および防腐剤(例えばBHA、BHT、ゲンチシン酸、ビタミンE、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、および亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、チオグリセロール、チオグリコール酸塩等の含硫黄剤)、等張剤(生理的適合性を調整するために)、懸濁剤、または粘性剤(抗菌剤)(例えばチメロサール、)、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、およびクロロブタノール)、キレート剤、および投与助剤(例えば局所麻酔剤、抗炎症薬、抗凝固薬剤、延長のための血管収縮剤および組織透過性を増加させる薬剤)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
疎水性の担体を使用している非経口的製剤として、例えば、脂質、リポスフェア、小胞、粒子、およびリポソームを含んでいる脂肪乳剤および製剤が挙げられる。脂肪乳剤には、上記の賦形剤に加えて、脂質および水の相、乳化剤(例えばリン脂質、ポロキサマー、ポリソルベートと(ポリオキシエチレン)ヒマシ油)等の添加物、および浸透剤(例えば塩化ナトリウム、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、およびブドウ糖)が含まれる。リポソームには、天然または誘導されたリン脂質および任意の安定化剤、例えばコレステロールが含まれる。
【0086】
別の実施形態では、グリコペプチド抗生物質の非経口単位剤形は、適当な担体内、気密密閉されたアンプル内、または事前に充填された無菌の注射器内に入ったグリコペプチド抗生物質のすぐに使用できる溶液である。適当な担体は、上記の賦形剤のいずれかを含む。あるいは、本発明のグリコペプチド抗生物質の単位投薬量を、送達時に適当な医薬として許容し得る担体(例えば滅菌水)に含まれる即席的な再構成のための濃縮された液体、粉状または粒状とすることができる。前述の賦形剤に加えて、粉体の形態には、任意に増量剤(例えばマンニトール、グリシン、ラクトース、蔗糖、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチル澱粉、フィコールとゼラチン)、凍結保護剤、および溶解保護剤が含まれる。
【0087】
静脈(IV)使用では、本発明の医薬組成物の滅菌製剤と可溶化剤または界面活性剤を含む任意の一つ以上の添加物とを、一般的に用いられる静脈内補液のいずれかに溶解または懸濁し、輸液によって投与することができる。静脈内補液として、制限なしに、生理的塩類溶液、食塩加リン酸緩衝液、5%のブドウ糖液、またはリンゲル(登録商標)液が挙げられる。
【0088】
筋肉内製剤では、本発明の医薬組成物の滅菌製剤を、注射用水(WFI)、生理的塩類溶液、または5%デキストロース液等の医薬用希釈剤に溶解して投与することができる。医薬組成物の適切な不溶性の形態を、水性塩基または医薬的に許容し得る油ベース(例えばオレイン酸エチル等の長鎖脂肪酸のエステル)の懸濁液として調製して投与することが可能である。
【0089】
経口使用に関しては、経口医薬組成物を、医薬組成物の治療有効量を含む単位投薬量の形態で作ることが可能である。錠剤およびカプセルのような固形剤は、特に有用である。徐放または経腸的被覆製剤もまた考え出すことが可能である。小児科および老人科を対照にした用途に関しては、懸濁液、シロップ剤、および咀嚼錠が特に適している。経口投与に関しては、医薬組成物は、錠剤、カプセル、懸濁剤または液体シロップ剤、あるいはエリキシル、ウェハー、およびその他の形態になっている一般の経口投与に関しては、限定されるものではないが、賦形剤または添加物として、不活性希釈剤、充填材、崩壊剤、結着剤、湿潤剤、平滑剤、甘味剤、香料、着色剤、および防腐剤が挙げられる。
【0090】
治療的な目的のために、錠剤およびカプセルは、グリコペプチド抗生物質に加えて、例えば、以下のような従来の担体を含むことができる。すなわち、不活性希釈剤(例えば、ナトリウムおよび炭酸カルシウム、ナトリウムおよびリン酸カルシウム、およびラクトース)、結着剤(例えば、アラビアゴム、澱粉、ゼラチン、蔗糖、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ソルビトール、トラガカントメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびエチルセルロース)、充填材(例えばリン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシ澱粉、ソルビトール、または蔗糖)、湿潤剤、平滑剤(例えば、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、ワックス、油、およびコロイドシリカ、シリコン流体またはタルク)、崩壊剤(例えばジャガイモ澱粉、コーンスターチ、およびアルギン酸)、調味料(例えばハッカ、ウインターグリーン油、果物調味料、サクランボ、ブドウ、バブルガム、およびその他のもの)、ならびに着色剤である。担体として、胃腸管での吸収を延ばすモノステアリン酸グリセリンまたはグリセリルジステアリン酸等のコーティング賦形剤を挙げることが可能である。
【0091】
特定経口製剤では、本発明のグリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質、ゼラチン、酸化鉄、ポリエチレングリコール、二酸化チタンおよび1つ以上の他の非活性成分を含むカプセルの形態であってもよい。カプセル中の適当な量のグリコペプチド抗生物質は、約10ないし約3000mgまでの範囲であってもよく、好ましい量として、100,125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1500mgのグリコペプチド抗生物質が挙げられる。経口製剤はまた、ポリエチレングリコール(PEG)を含むものであってもよく該PEGは、約PEG200ないし約PEG8000、好ましくは約PEG400ないし約PEG6000である。
【0092】
経口液状製剤(一般に、水性または油性溶液、懸濁液、エマルジョン、またはエリキシルの形状)は、従来の添加物(懸濁化剤、乳化剤、非水溶薬剤、防腐剤、着色剤、および香料)が挙げられる、液状製剤用の添加物の例として、アカシア、扁桃油、エチルアルコール、椰子油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、水素添加された食用脂、レシチン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、メチルまたはp‐ヒドロキシ安息香酸プロピル(プロピレングリコール、ソルビトール、あるいはソルビン酸)が挙げられる。
【0093】
局所使用のために、本発明の医薬組成物を皮膚または鼻咽喉の粘液膜に適用される適切な形状で調製することも可能であり、クリーム、軟膏、点鼻液、液体スプレーまたは吸入抗原、トローチ剤、または咽喉塗布剤の形態をとることができる。そのような局所用の製剤は、さらにジメチルスルホキシド(DMSO)等の化合物を含むことができ、それによって有効成分の表面浸透を促進する。眼または耳への適用を目的として、医薬組成物は疎水性または親水性ベースで、軟膏、クリーム、ローション剤、塗布剤、または粉剤として処方される液体または半流動体の形状で提供することができる。直腸内適用のために、医薬組成物は、従来の担体、例えばカカオ脂、ワックスまたは他のグリセリドと混合される坐薬の形で投与されることができる。
【0094】
本発明の方法で使用される好ましい静脈内(IV)製剤では、オリタバンシンの投与量は、好ましくは約100mgから2000mgの間であり、好ましくは約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、450、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500mgまたはそれ以上であり、IV輸液により、約60、90、120分以上にわたって、6、12、18、または24時間毎に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日、またはそれ以上の日数をかけて、投与する。この実施形態では、オリタバンシンを注射用蒸留水(WFI)に再調製してもよい。さらに、この実施形態では、オリタバンシンを5%デキストロース水(D5W)に希釈して、全量を少なくとも250mlにしてもよい。好ましくは、結果として得られる濃度は、200mgの服用量では0.8mg/ml、250mgの服用量では1.0mg/ml、および300mgの服用量では1.2mg/mlである。
【0095】
本発明の方法で使用される好ましい経口製剤では、投与されるオリタバンシンの経口投与量は、被検体の体重1kgあたり約0.5ないし約100mgであり、該被検体に対して、経口製剤を、より好ましくは体重1kgあたり約5ないし約30mg、例えば約5、10、15、20、25、および30mg投与する。経口投与による処置の過程は、1回服用または複数回服用であってもよい。複数回服用を経口投与によっておこなう場合、投与を一日に1回、2回、3回、またはそれ以上の回数行ってもよい。経口処置の過程は、1日以上にわたるものであってもよく、例えば2、3、4、5、6、7、8、9あるいは10日以上であってもよい。一実施形態では、オリタバンシンを10%ヒドロキシプロピル・ベータ−シクロデキストリンに処方することが可能である。さらなる実施形態では、オリタバンシンは85%ポリエチレングリコール400(PEG400)含有の滅菌水に処方してもよい。経口製剤は、被検体に飲ませる液体の形態、オリタバンシン製剤を含むカプセルの形態、あるいは経口製剤の投与のための当業者に公知の他の手段であってもよい。
【0096】
本発明の方法の各々は、追加の抗菌剤をグリコペプチド抗生物質とともに含ませることで、または医薬組成物に含有されたかたちで含ませることによって、実施することも可能である。そのような抗菌剤は、各々の方法で使用し得る1種類以上のグリコペプチド抗生物質に追加される。付加的な抗菌物質として、リファマイシン、スルホンアミド、ベータラクタム、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、アミノ配糖体、マクロライド、ストレプトグラミン、キノロン、フルオロキノロン、オキサゾリジノンエステル、およびリポペプチドが挙げられる。特に、テトラサイクリン、テトラサイクリン誘導抗菌剤、グリシルグリシン、グリシルグリシン誘導抗菌剤、ミノサイクリン、ミノサイクリン誘導抗菌剤、オキサゾリジノン抗菌剤、アミノグリコシド抗菌剤、キノロン抗菌剤、バンコマイシン、バンコマイシン誘導抗菌剤、テイコプラニン、テイコプラニン誘導抗菌剤、エレモマイシン、エレモマイシン誘導抗菌剤、クロロエレモマイシン、クロロエレモマイシン誘導抗菌剤、およびダプトマイシン誘導抗菌剤が好ましい。
【0097】
用語「投与、服用(量)、回分(dose)」、「単位服用、投与(量)(unit dose)」、「単位投与量(unit dosage)」、または「有効量(effective dose)」は、所望の治療効果を生ずるために所定量の活性成分を含む物理的に不連続な単位をいう。これらの用語は、本明細書中に開示された方法に述べられた目的を達成するのに十分な治療上効果的な量と同義である。
【0098】
本発明のグリコペプチド抗生物質の治療上有効な量、および本明細書中に開示された方法に述べられたゴールを達的するのに十分な量は、被検体の健康状態、被検体の症状の重症度、薬剤を投与するために使用される製剤および手段、ならびに実施される方法に依存して、常に変動する。所定の被検体に対する特定の服用量は、主治医の判断によって通常設定される。しかしながら、オリタバンシンを含む本発明の治療上効果的でかつ、または十分な量のグリコペプチド抗生物質は、製剤形態にかかわらず、通常、約0.5mg/kg体重ないし100mg/kg体重、好ましくは1ないし50mg/kg、より好ましくは5ないし30mg/kg、好ましくは1ないし50mg/kg、より好ましくは5ないし30mg/kgである。等しく好ましい実施形態では、単回の投薬または低頻度の投薬に用いられる治療上有効な量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35mg/kg体重である。いくつかの状況では、0.5kg/kg体重未満または100mg/kg体重を上回る服用量が効果的であると思われる。
【0099】
適当な投与頻度は、投与が処置、予防処置または予防策向けかどうかによって異なってもよい。クロストリジウム・ディフィシレに感染した被検体、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置、または予防策のための服用量の投与頻度として4、3、2、または1回の投与を、毎日、一日毎、三日毎、四日毎、五日毎、六日毎、七日毎、八日毎、九日毎、十日後、二週間毎、毎月、隔月が挙げられる。本発明のいくつかの方法および実施形態では、1回の服用または低頻度の服用(例えば、2、3、4、5、または6回の服用)は、本明細書中にクレームされた方法の一定の目的を達成するのに十分である。他の実施形態では、処置の過程は、多くの日数にわたる多くの服用回数からなる投与、例えば、毎日、4、3、2、または1回の服用を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14あるいは15以上日行うことを必要とするものであってもよい。
【0100】
投与の手段によって、投与量を全て一度で投与することが可能であり、例えばカプセル状の経口製剤等によって全てを一度に投与すること、あるいは静脈内投与等によりゆっくりと時間をかけて投与することが可能である。投与をより遅く行うための手段に対しては、投与期間を分オーダー、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または120分以上とすることができ、あるいは一定の時間、例えば約0.5 1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5時間以上とすることができる。
【0101】
本明細書中に用いられるように、用語「抑制する(inhibit)」、「抑制(の、している)(inhibiting)」および「抑制(inhibition」)は、それらの通常かつ慣習的な意味を有しており、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での成長の抑制、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での機能の抑制、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での増殖の抑制、クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成の抑制、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長の抑制、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽の抑制、およびクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長の抑制の1つ以上が含まれる。そのような抑制は、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質が投与されていない被検体と比較して、特定の活性が約1%ないし約100%抑制されることである。好ましくは、抑制は、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質が投与されていない被検体と比較して、特定の活性が約100%、99%、98%、97%、96%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、または1%の抑制されることである。本明細書中に用いられるように、「胞子(spore)」は従来通りに用いられている用語「胞子(spore)」および「内生胞子(endospore)」の両方を指す。
【0102】
本明細書中で用いられるように、用語「処置(の、している)(treating)」および「処置(treatment」)は、それらの通常かつ慣習的な意味を有しており、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ感染症の症状の改善、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ感染症の症状の再発の阻害または改善、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の症状である血行静止の重症度および/頻度の減少、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での増殖の減少または抑制、クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成の抑制、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長の抑制、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽の抑制、ならびに被検体のクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長の抑制の1つ以上が含まれる。
処置は、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質が投与されていない被検体と比較して約1%ないし約100%で、改善、阻害、縮小、減少、または抑制することを意味する。好ましくは、改善、阻害、縮小、減少、または抑制することは、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質が投与されていない被検体と比較して、約100%、99%、98%、97%、96%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、または1%の改善、阻害、縮小、減少、または抑制がなされることである。
【0103】
本明細書中に用いられるように、用語「予防(の、する)(preventing」)および「予防、予防策(prevention)」は、それらの通常かつ慣習的な意味を有しており、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレのコロニー形成の予防、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ母集団の成長増加の予防、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長、発芽、または伸長の予防、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレの胞子形成の予防、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレによって引き起こされる疾患の予防、ならびに被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレによって引き起こされる疾患の症状の予防の1つ以上が含まれる。本明細書中に用いられるように、予防策は、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質の投与後に、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、または50日以上持続する。
【0104】
本明細書中に用いられるように、「予防処置(prohylaxis)」は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレによる増殖性感染または進行性感染の発生を抑制することを含み、予防処置は、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質の投与後に、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、または50日以上持続する。クロストリジウム・ディフィシレ感染症による増殖性感染または進行性感染の発生の抑制は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の重症度が、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質が投与されていない被検体と比較して、約1%ないし約100%減少することを意味している。好ましくは、重症度の減少は、重症度が約100%、99%、98%、97%、96%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、または1%減少することである。感染症の重症度は被験体の中にあるクロストリジウム・ディフィシレの量、クロストリジウム・ディフィシレにおいて検出することができる延時間、被検体、または他の要因中のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の症状の重症度にもとづくと考えられる。
【0105】
本明細書中で用いられるように、用語「隔週(の)(bi-weekly)」は、13〜15日毎の頻度のことをいい、また「毎月(の)」は28〜31日毎の頻度のことをいい、用語「隔月(の)(bi-monthly)」は、58〜62日毎の頻度に言及している。
【0106】
本明細書中に用いられるように、用語「接触(している、させる)(contacting)」は、細菌細胞と本発明のグリコペプチド抗生物質の分子とを、該グリコペプチド構成物質が細菌細胞に対して影響を及ぼし得るほどに、十分に近接させることを、おおまかに言及している。グリコペプチド抗生物質を細菌細胞の位置に輸送することが可能であり、またはグリコペプチド抗生物質を、細菌細胞が接触へと移動または接触させられる位置に置かれることが可能である。当業者は、用語「接触(している、させる)(contacting)」ことが、物理的な相互作用を必要としない相互作用と同様に、グリコペプチド抗生物質と細菌細胞との間の物理的な相互作用を含んでいることを、理解するだろう。本明細書中に用いられるようにとクロストリジウム・ディフィシレはすべてのクロストリジウム・ディフィシレ株、種および亜種を指す。
【0107】
本明細書中に用いられるように、クロストリジウム・ディフィシレ(C.difficile)とは、すべてのクロストリジウム・ディフィシレ株、種、および亜種のことをいう。PCRリボタイピング(PCR ribotyping)を、異なるクロストリジウム・ディフィシレ株、種、および亜種の識別に用いることが可能である。この発明の範囲内に包含されるクロストリジウム・ディフィシレ株として、例としてのみ、クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ001、106および027が挙げられる。
実施例
実施例1
これらの研究では、クロストリジウム・ディフィシレ胞子に対する、メトロニダゾール(MET)、バンコマイシン(VAN)、およびオリタバンシン(ORI)の活性を3通りの実験的方法、すなわち螺旋勾配評価項目分析、寒天をベースとする培養、および位相差顕微鏡法を用いて評価した。
クロストリジウム・ディフィシレ胞子調製
クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ001、106および027を、コロンビア(Columbia)血液寒天培地上に接種を播種し、嫌気的条件下(30℃)で10日間培養した。増殖成長したものを滅菌食塩水に回収し、等量の100%エタノールで1時間にわたりアルコールショック処理した。アルコールショック済みの胞子懸濁液をボルテックスにより混合し、室温で5分間超音波処理した。クロストリジウム・ディフィシレ・位相差で明るい(phase bright)(発芽しなかった)胞子を、50%(v/v燐酸塩緩衝食塩水中)ウログラフイン(Urografin)370(シェーリング(Schering)、ドイツ))に積層して密度勾配遠心分離(4000rpm、15分)をおこなうことで、位相差で暗い(phase dark)(発芽した)胞子および細胞残屑から分離した。密度勾配遠心分離ステップを2回おこなった。精製された胞子のペレットを滅菌食塩水に再懸濁した(1枚のコロンビア血液寒天培地プレートあたり1mL回収)。位相差で明るい(phase bright)胞子、位相差で暗い(phase dark)胞子、および栄養増殖細胞の割合を、位相差顕微鏡法(100倍拡大)を用いて記録した。
螺旋勾配評価項目分析
抗菌剤原液を、脱イオン水(メトロニダゾール、バンコマイシン)±0.002%ポリソルベート−80(オリタバンシン)で調製した。スパイラルプレーター(WASP2、ドン・ホイットリー・サイエンティフィック(Don Whitley Scientific)、英国)を用いて、事前に乾燥(37℃、20分)させたブラジール(Brazier)の寒天(pH7)の表面に、抗生物質の対数勾配を適用した。表面に適用された抗菌剤を有する寒天を室温で1時間放置し、抗菌剤を寒天に吸着させた。クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖培養および胞子(〜107cfu/mL)を、滅菌綿球を用いて寒天表面(図1)に播種し、嫌気的条件下(37℃、24時間)で培養した。D値を測定(mmで)し、MIC(Paton, J. H. 1990. Int J Exp Clin ChemotheR9, 31-38)に変換した。
【0108】
クロストリジウム・ディフィシレ胞子に対するORI MICは栄養増殖細胞に対するものよりも5〜13倍低かった(図2)。METおよびVAN MICは、クロストリジウム・ディフィシレ栄養増殖細胞および胞子(データ示さず)に関しては、実質的に異ならなかった。
寒天培養
クロストリジウム・ディフィシレ胞子(〜300cfu)の標準接種材料を、3重に1分間および30分間にわたってメトロニダゾール(9.3mg/L)、バンコマイシン(350mg/L)、またはオリタバンシン(350mg/L)にさらした。抗菌剤・胞子溶液を混合し、滅菌脱イオン水で希釈し(サブMICに)酢酸セルロースフィルター(CAF、0.45μm)上で濾過し、洗浄した。CAFを、ブラジール寒天(pH7)+5mg/Lリゾチーム上に移し、その後嫌気的条件下(38℃、48時間)で培養し、クロストリジウム・ディフィシレ胞子率(対照群と比較)を測定した。オリタバンシンによる処理の後、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の再生はみられなかった(図3)。クロストリジウム・ディフィシレ胞子およびCAFへのオリタバンシンの結合は、確認できなかった(データ示さず)。
位相差顕微鏡法
クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子(〜107cfu/mL)の標準接種材料を、0.1、1、または10mg/L0.1、1あるいは10mg/Lのメトロニダゾール、バンコマイシン、またはオリタバンシンを取り込んだブラジールのブロス培地(pH7)30mlに懸濁した。クロストリジウム・ディフィシレ胞子もまた、10mg/Lの抗菌剤で2時間処理し、滅菌PBSで3回洗浄し、ブラジールのブロス培地(pH7)に再懸濁して培養した。試料を、2、4、6、24、32および48時間で取り出した。スライドを位相差顕微鏡法下で観察し、位相差で明るい(phase bright)胞子、位相差で暗い(phase dark)胞子、および栄養増殖細胞の割合を記録した(図4)。
【0109】
統計分析を、逆正弦変換を用いて割合データを変換し、ウィルコクソンの符号付順位検定を用いて分析することで、おこなった。P<0.05は、統計的に有意であると考えた。上掲MIC濃度の全ての抗菌剤がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑えたが、その発芽は抑えられなかった。事前にオリタバンシン処理したクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長は、対照よりもかなり低く(P=0.058)、またMETあるいはVAN処理した胞子よりも有意に低かった(P<0.05)。
コメント
栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレと胞子とに対するオリタバンシンMICの差の大きさをマークして再現可能であった(MICの測定を6回おこなった)。そのような現象が以前に報告されたとは考えられない。インビボ(in vitro)で、このことは、オリタバンシン濃度がクロストリジウム・ディフィシレ胞子伸長に対して準抑制的になる前に、腸ミクロフロラ(クロストリジウム・ディフィシレに対して抑制性である)のより大きな回復を潜在的に可能にすることでCDIに対する既存の抗菌療法に優る利点をオリタバンシンに与えることができた。
【0110】
位相差顕微鏡法を用いた胞子発芽/伸長実験によって、上掲MICレベルで評価した全ての抗菌剤が、クロストリジウム・ディフィシレ胞子伸長を抑制したが、発芽自体は抑制することが示された。おもしろいことに、事前に10mg/Lオリタバンシン処理したクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子の伸長は、徹底的に洗浄したにもかかわらず、著しく阻害された。この減少は、メトロニダゾールまたはバンコマイシンによる前処理を受けた胞子では観察されなかった。ペプチド抗菌剤ナイシンが枯草菌とスポロゲネス菌の胞子伸長に抑制することは、既に実証されている(Chan et al. 1996. Appl Environ Microbiol. 62, 2966-2969; Rayman et al. 1981. Appl Environ Microbiol. 41, 375-380)。オリタバンシンは、機能的にナイシン等の脂質II結合抗菌剤と関係がある。また、最近の研究は、薬物がペプチドグリカンの重合に関与するトランスグリコシラーゼ酵素をさらに抑制すると思われることを示している(Wang et al. 2007. 47th ICAAC Chicago. Poster C1-1474)。伸長クロストリジウム・ディフィシレ胞子に対する抑制活性のメカニズムはいぜんとして解明されていないが、胞子に対するオリタバンシンの直接的な結合の結果である可能性が考えられる。
実施例2
遺伝子型で区別可能なクロストリジウム・ディフィシレ株に対するオリタバンシン(ORI)の活性をメトロニダゾール(MET)およびバンコマイシン(VAN)のものと比較した追加の研究を、寒天取り込みおよびブロス微少希釈方法を用いて、実施した。
材料および方法
菌株
33の遺伝子型で区別可能な(PCRリボタイピングによって)分離株をリーズ一般診療所(Leeds General Infirmary)(Leeds, UK)の株ライブラリーから選択した。伝染性クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ001、106および027の代表的な分離物は、パネルに含まれていた。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC29213、エンテロコッカス−フェカーリス(Enterococcus faecalis)ATCC29212およびバクテロイデスフラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC25285の対照分離株を、全てのMIC測定に含ませることで、手順の精度を保証した。
MIC測定
寒天とり込みMICをフリーマン(Freeman)とウィルコックス(Wilcox)の方法(J Antimicrob Chemother 2001; 47: 244-6)に基づいて決定した。すなわち、細菌を、嫌気性のキャビネット(Don Whitley Scientific, Shipley)に置かれたシェドラー(Schaedler)嫌気性ブロス(Oxoid, Basingstoke,UK)で、37℃、24時間、培養した。メトロニダゾールおよびバンコマイシン(Sigma-Aldrich Co., Poole, UK)の原液を脱イオン水に調製した。オリタバンシンを0.002%P80に調製した。抗菌剤溶液をすべて、0.22μmシリンジフィルターによる濾過によって滅菌した。オリタバンシンの濾過は1280mg/Lでおこなった。なぜなら、より低い濃度での濾過は飽和可能な結合に起因する薬物の著しい比例的損失をもたらすからである。抗菌物質(0.03−16mg/L)の倍加希釈を取り込むウイルキンソンチャルグレン寒天培地(Oxoid)を、0.002%P80の存在または非存在および2%溶解馬血液(EE & OLabs, Bonneybridge, UK)の存在または非存在で、調製した。全ての培地および希釈剤を嫌気性のキャビネット内で一晩、前還元した。細菌培養を滅菌食塩水で希釈し、マルチポイントイノキュレーターを用いて寒天取り込み寒天プレートの表面上に播種した(〜104cfu)。寒天とり込みプレートを、48時間、嫌気的条件下で培養した。MIC終点を、明白な増殖(かすかに見られる増殖または単一のコロニーを無視して)が見られない抗菌剤の最低濃度として読み取った。
【0111】
ブロス大量希釈MICを、ジョスミー−ゾマー(Jousimies-Somer)らの方法に従って決定した(Introduction to anaerobic bacteriology. In: Wadsworth-KTL Anaerobic Bacteriology Manual, 6th edn. Belmont, California: Star Publishing Company, 2002; 1-22)。すなわち、ダブルストレングス抗菌剤原液を、ヘミン(5mg/L、Sigma)、NaHCO3(1mg/L、Sigma)、およびビタミンK1(10μL/L、Sigma)を添加したブルセラブロス(シグマ)に調製した。オリタバンシンMIC用のブロス全てが0.002%P80を含んだ(Arhin et al., Abstracts of the Seventeenth European Congress of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, Munich, Germany, 2007. Abstract P-827, p. 102. Eur. Soc. Clin. Micro. Infect. Dis., Basel, Switzerland)。細菌株を最初にシェドラー(Schaedler)嫌気性ブロスで一晩培養し、続いて滅菌前還元添加ブルセラプロセスで1:200(〜3x105cfu/mL)に希釈した。抗菌剤原液を1:2に希釈した後、各株接種材料の添加をおこなった。ブロスを、37℃、48時間、嫌気的条件下で培養した。MIC終点を、対照と比較して増殖が観察されない抗菌剤の最低濃度として読み取った。すべての抗菌剤について、MICを二重反復測定した。
結果
オリタバンシン活性の評価を、寒天とり込みおよびブロス大量希釈法の両方を用いて、33の遺伝子型で区別可能なクロストリジウム・ディフィシレ分離株に対して、おこなった。この研究で用いられるクロストリジウム・ディフィシレ株のパネルは、PCRリボタイプ027の代表的な分離株、すなわち欧州、カナダ、および米国のCDIの最近の流行病に関連した株を含んでいた(Kuijper et al., Curr Opin Infect Dis 2007; 20: 376-83)。遺伝子型によって別個のクロストリジウム・ディフィシレのMICを表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
メトロニダゾール寒天とり込み相乗平均MICは、オリタバンシンMICよりも2ないし5倍低く、バンコマイシンMICよりも2ないし3倍低かった。オリタバンシンとバンコマイシンは、すべての寒天条件に関してクロストリジウム・ディフィシレに対して同様の活性であった。0.002%P80および2%に溶解馬血液を添加したウイルキンソンチャルグレン寒天培地は、クロストリジウム・ディフィシレまたは対照微生物のオリタバンシン(あるいはバンコマイシンおよびメトロニダゾール)MICに対して、著しい影響は及ぼさなかった。さらに、溶解馬血液を含むP80または溶解馬血液を含まないP80のとり込みは、非抗菌剤含有(対照)寒天上でクロストリジウム・ディフィシレまたは対照微生物の増殖に対して、影響を及ぼさなかった。ブロス大量希釈MICは、オリタバンシンに関しては寒天とり込みMICよりも2ないし4倍低くかったが、メトロニダゾールまたはバンコマイシンでは低くなかった。オリタバンシン・ブロス大量希釈相乗平均MICは、それぞれメトロニダゾールおよびバンコマイシンに関するものよりも、それぞれ2倍および5倍低かった。個々のクロストリジウム・ディフィシレ株のブロス大量希釈MICを比較する時、試験した分離株の76%(25/33)がバンコマイシンに対してよりもオリタバンシン(≧2倍希釈)に対して、感受性が高かった。
【0114】
アーヒン(Arhin)ら(Antimicrob Agents Chemother 2008; 52: 1597-603)の最近の報告によれば、オリタバンシンは、P80あるいは2%の溶解馬血液がない状態でのブロス微量希釈感受性分析試験プレート中で溶液から急速に失われた。先の研究では、ブロス微量希釈方法を用いて、P80または溶解馬血液の取り込みにより、ぶどう状球菌および腸球菌のオリタバンシンMICが著しく減少する可能性があることを示唆されている(しかし臨床連鎖球菌分離株ではない)(Antimicrob Agents Chemother 2008; 52: 1597-603; Arhin et al., Abstracts of the Seventeenth European Congress of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, Munich, Germany, 2007. Abstract P-827, p. 102. Eur. Soc. Clin. Micro. Infect. Dis., Basel, Switzerland)。著者らは、臨床連鎖球菌分離株を評価するために用いられる培地中の溶解血液の存在が表面に対するオリタバンシンの結合を無効にする可能性があることを主張した。従って、P80のとり込みによるオリタバンシンMICの減少がさらに促進されるようなことはなかった。さらに、寒天とり込み方法でP80の含有物は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、エンテロコッカスフェカリス(E.faecalis)あるいはエンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)のオリタバンシンMICを減少させない。本研究は、寒天とり込みを用いるオリタバンシン、バンコマイシン、およびメトロニダゾールMICに対するP80および溶解馬血液の影響を評価した。寒天とり込み方法のP80+溶解馬血液の存在は、実質的にオリタバンシンMICを減少せないことから、通性嫌気性菌による従来の寒天ベースのMIC研究が反映され、方法間のMICのばらつきが強調された。さらに、本研究でのP80+溶解馬血液のとり込みは、バンコマイシン(あるいはメトロニダゾール)MICに影響せず、このことはP80または溶解馬血液がある状態でこれらの抗菌物質のMICの変化を実証しなかった先行のインビボ(in vitro)感受性試験も反映する(Blosser et al., Abstracts of the 103rd Meeting of the American Society for Microbiology, Washington, DC, 2003. Abstract C-70. American Society for Microbiology, Washington, DC, USA)。
【0115】
大きなプレートによる生物学的検定を用いて、インビトロ(in vitro)での3段階ケモスタットヒト腸モデルから回収した試料に対しておこなわれたオリタバンシン濃度の分析では、寒天内での薬剤の拡散が遅いことが示されていることから、事前のインキュベーションによる拡散ステップでは、ゾーン直径を大きくすることが求められる。グリコペプチドはポリマー表面に結合する(Wilcox et al., J Antimicrob Chemother 1994; 33: 431-41)。これは、抗菌剤およびポリマーの両方の表面電荷によって影響を受ける特性である。例えば、標本血管表面へのテイコプラニンの結合はバンコマイシンよりも平均して4倍大きかった。ポリマー表面をヒト体液で処理しておくと、テイコプラニンの結合が著しく減少する。オリタバンシンは、中性pHで正電荷を1つまたは2つ有する半合成リポグリコペプチドである。したがって、寒天とオリタバンシンとの複合体を形成することは、抗生物質の物理化学的性質により、クロストリジウム・ディフィシレおよび他の最近でのMICの上昇(ブロス大量希釈によって測定されたものと比較して)を説明すると考えられる。実際、寒天表面への抗菌剤ペプチドの吸着は、既に報告されている(Boman et al., FEBS Lett 1989; 259: 103-6)。本研究は、寒天とり込みMICでのP80と溶解馬血液との全置換を含んでおり、2つの添加物のどちらもオリタバンシン感受性の評価に対して著しい影響を及ぼすものではないことを示した。微量および大量希釈MICと比較したオリタバンシン寒天取り込みMICの上昇が他の機関で観察されている。しかし、しかし、この現象の背後にある決定的なメカニズムはいぜんとして説明されていない(Blosser et al., Abstracts of the 103rd Meeting of the American Society for Microbiology, Washington, DC, 2003. Abstract C-70. American Society for Microbiology, Washington, DC, USA)。
実施例3−クロストリジウム・ディフィシレ胞子の生存度に対する抗生物質処理の相対的な影響
異なる実験的方法を用いることによって、オリタバンシンは、CDIに対する既存の治療用抗菌剤よりも大きな程度で、休眠中のクロストリジウム・ディフィシレ胞子から栄養増殖細胞への遷移を中断させることが明らかにされた。
【0116】
実験は、これらの抗生物質にさらされたクロストリジウム・ディフィシレ胞子の生存度に対するメトロニダゾール、バンコマイシンおよびオリタバンシンの個々の影響を決定するために行なわれたものである。一般に、実験は、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と抗生物質とを混合し、溶液の濾過を酢酸セルロースフィルターを介しておこなうことで胞子を回収し、胞子が取り込まれたフィルターを栄養寒天に当てて、選択された期間の後にフィルター上に残る胞子の数を測定することによって、実施した。
【0117】
先行の実験は、抗菌物質が洗浄にもかかわらず酢酸セルロースフィルターに結合し得るかもしれないことを示唆した。したがって、残留抗菌剤は、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の回復を抑える可能性がある。したがって、最初の実験は、濾過および洗浄に先立って抗菌剤含んでいる胞子懸濁液の希釈を含むものとした。反応体積を、すべての抗菌剤/対照溶液について、1mLとした。濾過に先立って抗菌剤濃度を準MICレベルに減少させるために、バンコマイシンおよびオリタバンシンを1:250に希釈し、メトロニダゾールを1:50に希釈した。
実施例3A
対照(脱イオン水+/−Tween−80)および試験(抗菌剤含有)溶液1mLに対して、クロストリジウム・ディフィシレ胞子(3株、すなわちPCRリボタイプ001、106、および027)10μLを播種した。胞子懸濁液(時間=1分あるいは30分)を濾過胚状体に移し、適当な容量の希釈剤(滅菌脱イオン水+/−Tween−80)を添加して、上記した希釈比を達成した。試料を酢酸セルロースフィルターで濾過し、適当な希釈剤50mLで洗った。フィルターを、5mg/Lリゾチームおよび2%溶解馬血液を含むプラジールCCEY寒天に、無菌で移した。この手順を二重反復して終えた。培地を嫌気的条件下で37℃、48時間培養し、クロストリジウム・ディフィシレのコロニー数を記録した。
【0118】
結果を図6に示す。クロストリジウム・ディフィシレ胞子回復の本質的な差は、任意の所定の対照/処置に関して、1分と30分との間で観察されなかった。Tween−80(P80)の存在はクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復に影響しなかった。メトロニダゾール処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、1分および30分の両方とも対照の90〜110%であった。バンコマイシン(VAN)処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、1分および30分の両方とも対照の25〜60%であった。オリタバンシン(ORI)処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、1分および30分の両方とも0%であった。
【0119】
これらの結果から次のことが示唆された。すなわち、(1)グリコペプチド抗菌剤は抗クロストリジウム・ディフィシレ活性を有しないこと、および(または)濾過に先立った溶液の希釈および濾過後の胞子試料の洗浄にかかわらず、残留抗菌剤はクロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽および(または)伸長に対して抑制的であった酢酸セルロースフィルターに存在したことである。
実施例3B
希釈剤の添加に先立ってあるいはその添加の過程で、酢酸セルロースフィルターにグリコペプチド抗菌剤が結合する可能性があるかを評価するために、実験手順を修正した。
【0120】
最初に、希釈剤を濾過胚状体に添加した。次に、1ml反応物を適当な希釈剤(反応物形成後1分および30分)に添加し、酢酸セルロースフィルターで濾過した。フィルターを適当な希釈50mLで洗った。次に、フィルターを、5mg/Lリゾチームおよび2%溶解馬血液を含むプラジールCCEY寒天に、無菌で移した。この手順を二重反復して終えた。培地を嫌気的条件下で37℃、48時間培養し、クロストリジウム・ディフィシレのコロニー数を記録した。
【0121】
結果を図7に示す。クロストリジウム・ディフィシレ胞子回復の本質的な差は、任意の所定の対照/処置に関して、1分と30分との間で観察されなかった。Tween−80(P80)の存在はクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復に影響しなかった。メトロニダゾール処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、対照の95〜110%であった。バンコマイシン(VAN)処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、対照の70〜80%に増加した。オリタバンシン(ORI)処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、1分および30分の両方とも0%であった。
【0122】
これらの結果から次のことが示唆された。すなわち、1)実験2Bの設計は、バンコマイシン含有溶液からのクロストリジウム・ディフィシレ胞子の回復を助けたが、オリタバンシン含有溶液からの回復には影響しなかったこと、2)したがって、オリタバンシンは抗胞子活性を有するか、または残留抗菌剤が実験手順の改良にもかかわらずフィルター内に残ったことである。
実施例3C
対照は、実験2Bに続くバンコマイシンおよびオリタバンシン用に追加した。
【0123】
1ml溶液(クロストリジウム・ディフィシレ胞子含有せず)を実施例2Bに従って処理し、フィルターをブラジールCCEY寒天上に置いた。フィルター上には、2x20μLの、
a) 栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレ(PCRリボタイプ001の一晩培養物)、
b)クロストリジウム・ディフィシレ胞子、(PCRリボタイプ001)、または
c) ¥黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)NCTC6571(Oxford株(一晩培養物)を播種した。増殖/非増殖を嫌気的条件下での培養後に記録した。
【0124】
結果は、バンコマイシンが濾過されたフィルター上で全ての微生物が増殖したことを示した。黄色ブドウ球菌NCTC6571は、オリタバンシンがろ過されたフィルター上で増殖した(この株に対するMICは、寒天取り込み方法論によって〜4mg/Lである)。栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレの大幅な減少数はバンコマイシン処理したフィルター上での増殖と比較して、オリタバンシン処理したフィルター上で回復された(1枚のプレート上の1cfu)。クロストリジウム・ディフィシレ胞子はバンコマイシン処理したフィルター上での良好な増殖にもかかわらず、オリタバンシン処理したフィルターからは回復不可能であった。
【0125】
したがって、これらの結果は、上に概説された予防処置にかかわらず、抑制レベルのオリタバンシンが酢酸セルロースフィルターに残存することを示唆した。胞子回復と比較して栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレ培養物からの増殖量がかなり少ないことは、クロストリジウム・ディフィシレのこれらの形態を抑制することが可能なオリタバンシン濃度に違いがあることを示唆していると思われる。
実施例3D
上記の実験(酢酸セルロースフィルター中の薬物の存在に加えて)からオリタバンシンに処理されたクロストリジウム・ディフィシレ胞子を回復することの失敗を説明可能なこととして、オリタバンシンがクロストリジウム・ディフィシレ胞子に結合し、直接、胞子を破損することができると思われること、また胞子発芽および(または)伸長を抑制することが考えられることである。抗菌の胞子の結合を評価するために単純な実験をおこなった。
【0126】
2種類の溶液を調製した。すなわち、
(1)クロストリジウム・ディフィシレ胞子、(PCRリボタイプ001、対照)、および
(2)350mg/Lのオリタバンシン(希釈剤:Tween−80 H2O)に懸濁されたクロストリジウム・ディフィシレ胞子。
【0127】
オクスフォード黄色ブドウ球菌(Oxford S. aureus)の菌叢を新鮮血寒天に播種した。1つの複製では、クロストリジウム・ディフィシレ胞子を遠心(16000g、5min)し、上清を取り除き、さらに沈渣を500μLのTween−80−H2Oに再懸濁した。10μLの再懸濁された胞子懸濁を表面黄色ブドウ球菌菌叢上に播種した。
【0128】
別の複製では、この手順を用いてクロストリジウム・ディフィシレ胞子懸濁を合計10回洗い、黄色ブドウ球菌菌叢の表面に播種した。
【0129】
両方の複製では、寒天を嫌気的に37℃で一晩培養し、次に抑制域の有無を記録した。
【0130】
Tween−80は、オクスフォード黄色ブドウ球菌(Oxford S. aureus)の増殖に対して抑制的ではなかった。クロストリジウム・ディフィシレ胞子(対照)はオクスフォード黄色ブドウ球菌の増殖に対して抑制的ではなかった。オリタバンシン処理したクロストリジウム・ディフィシレ胞子(対照)は、0、1、2、4、5、6、9、および10回の洗浄後に、オクスフォード黄色ブドウ球菌の増殖に対して抑制的であった。したがって、胞子懸濁の洗浄では、抗菌効果は取り除かれなかった。これらの結果は、オリタバンシンが直接クロストリジウム・ディフィシレ胞子に結合するかもしれないことを示唆した。
実施例4−オリタバンシン対ヒト腸モデルにおけるクリンダマイシン誘導クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027感染症に対する処置としてのオリタバンシンとバンコマイシンとの比較
インビトロ(in vitro)ヒト腸モデルを用いて、伝染性クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027によって引き起こされたクリンドマイシン誘導CDIの処置に関して、オリタバンシンの有効性とバンコマイシンの有効性とを比較した。
材料および方法
クロストリジウム・ディフィシレ株
クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の単一分離株を検討した。この分離株は、2005年にメイン・メディカル・センター(Maine Medical Centre (Portland, USA))でCDIの蔓延中に回収された臨床株であった。この株は、ロブオーエン(Rob Owens)博士のご厚意により提供されたものであり、嫌気性生物レファレンス研究所(Anaerobe Reference Laboratory (Cardiff, Wales, UK))においてジョンブラジール(Jon Brazier)博士によりリボタイピングされた。
3段階ケモスタットヒト腸モデル
腸モデルは、近位結腸の低pH、炭水化物過剰条件下と、遠位結腸の炭水化物結合、非酸性条件下とで、腸のミクロフロラに関する研究を可能にするように設計されたものである(Macfarlane et al., Microb Ecol 1998; 35: 180-7)。腸モデル容器内の微生物学的および物理化学的測定は、頓死犠牲体の腸の内容物に対して検討されている(Macfarlane et al., Microb Ecol 1998; 35: 180-7)。各腸モデルは、3つの発酵容器からなり、該発酵溶液は、制御された速度(D=0.015h−1)で増殖培養液が最上部で供給される堰カスケード方式で接続されている。容器に無酸素窒素をスパージして嫌気生活を確実にし、ウオータージャケットシステム(37℃)を介して加熱し、さらに0.5MHCl/NaOHを送達する発酵槽制御ユニット(Biosolo 3, Brighton Systems, UK)を用いて特定のpHに保った。容器(280mL)をpH5.5および高基質有効性で操作することで近位腸内に条件を反映させ、一方容器2および3(300mL)を低基質有効性、pH6.2および6.8で各々操作することで遠位腸内に条件を反映させた。腸モデルは糞便の泥漿〜10%(w/v)により準備し、微生物母集団に対して14日、平衡させさた。
腸モデルの調製
5人の健常初老歩ランティア(>65歳)から糞便試料を回収し、ただちに嫌気状態で研究所に運んだ(GasPak, Oxoid, Basingstoke, UK)。便がクロストリジウム・ディフィシレ培養陰性であることを、以前に報告されたように、5mg/Lライソザイム(Sigma-Aldrich,UK)を取り込んだブラジール(Brazier)CCY上で、を確認した(Sigma-Aldrich, UK) as reported previously (Baines et al., J Antimicrob Chemother 2005; 55: 974-82; Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2003; 52: 96-102)。クロストリジウム・ディフィシレ陰性糞便をプールし、滅菌前還元リン酸緩衝食塩水中に粗濾過したスラリー(〜10%w/v)を調製した。腸モデルの容器を約3分の2の容量に充填し、細胞増殖培養液ポンプを起動した。
腸ミクロフロラおよびクロストリジウム・ディフィシレの列挙
固有の腸微生物相の培養可能な主成分とクロストリジウム・ディフィシレとを、既に報告されたように、選択的および非選択的寒天上で生菌計数(〜log10cfu/mL)によって、計数した(Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2005; 56: 717-25)。計数した細菌群は、全通性嫌気性菌、条件的嫌気ラクトース発酵菌、全嫌気性菌、ビフィズス菌、バクテロイデスフラジリス(Bacteroides fragilis)群、全クロストリジウム属、乳酸桿菌、腸球菌、全クロストリジウム・ディフィシレ、およびクロストリジウム・ディフィシレ胞子である。クロストリジウム・ディフィシレ細胞毒素生産量を、以前に記述されるベロ細胞毒性分析を用いて定量した(Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2003; 52: 96-102)。細胞毒素タイターをlog10の相対的単位(RU)で表した。クロストリジウム・ディフィシレ総菌数、胞子数、および細胞毒素タイターのみを腸モデルの容器1で計数した。
腸モデル実験計画法
CIDの治療介入を評価するための腸モデルの使用は、以前に説明されている(Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2007; 60: 83-91; Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2005; 56: 717-25)。すなわち、糞便スラリーを有する各腸モデルの播種につづいて、さらなる介入を13日間(期間A)実施しなかった。期間Aの過程で、細菌母集団を2日ごとに計数した。次に(14日目)、各腸モデルの容器1に対して、〜107cfuクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子からなる一接種材料(Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2003; 52: 96-102)を接種し、さらなる介入は7日間(期間Bおこなわなかった)。この時点から進んで、バクテリアの母集団を毎日で計数した。クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子からなる別の一接種材料を、各々の腸モデル(21日目)に容器1に植え付け、さらに33.9mg/Lクリンダマイシン(Pfizer, USA)を1日4回7日間(期間C)にわたって加えた。この点滴投与計画は、腸モデル内のクリンダマイシンレベルを、600mg単回服用量のインビボ(in vivo)で観察されるレベルにほぼ等しかった(Brown et al., Ann Intern Med 1976; 84: 168-70)。クリンダマイシン滴下の停止に続いて、高レベル細胞毒素生産(≧4RU)が少なくとも2日連続して観察されるまで、それ以上の介入をおこなわなかった(期間D)。バンコマイシン(単一実験、125mg/Lを一日4回)、およびオリタバンシン(単一実験、125mg/Lを一日2回)の滴下を、各実験において39日目に開始し、7日間(期間E)にわたった。バンコマイシン(Sigma-Aldrich)は蒸留水の中で調製された。また、オリタバンシン(Targanta治療法、ケンブリッジ、アメリカ)は、0.002%(蒸留水中のv/v)のポリソルベート−80(Sigma-Aldrich)および両方の抗菌剤溶液の中で調製された、腸モデルの中への滴下に先立って濾過(0.22μm)によって殺菌された。バンコマイシン(Sigma-Aldrich)を蒸留水に調製し、オリタバンシン(Targanta Therapeutics, Cambridge, USA)を0.002%(v/v蒸留水中)ポリソルベート−80(Sigma-Aldrich)に調製し、さらに両方の抗菌剤溶液を腸モデルに滴下する前に滅菌濾過(0.22μm)した。バンコマイシン滴下投与計画は、ヒトでの治療の標準的過程の後のインビボ(in vivo)で観察された抗生物質濃度を反映する抗生物質濃度を達成することを目標とした(Young et al., Gastroenterology 1985; 89: 1038-45)。オリタバンシン用の抗菌の滴下投与計画は、緩衝培地中での薬物の溶解限度を考慮に入れた。治療上の抗菌滴下を停止した後に、さらに15日間(期間F)にわたって細菌母集団および細胞毒素タイターを追跡した。
活性抗生物質濃度の生物検定
クリンダマイシンの濃度は、本研究では測定されなかった。バンコマイシンおよびオリタバンシンの濃度を、インハウス・ラージプレート生物検定を用いて、測定した。すなわち、各腸モデルの全ての容器から得た試料(1mL)を遠心(16,000g)し、生物検定に先だって−20℃に保存した。1Mパラアミノ安息香酸が添加された100mLのマラー−ヒントン(Muller-Hinton)寒天(Oxoid,UK)をオートクレーブで滅菌し、50℃まで冷やし、指標生物である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC29213を1mL(0.5Mのマクファーランド標準の濁度に等し濁度で)接種した。溶けた寒天を、245mm2ペトリ皿(Fisher Scientific, Loughborough,UK)に滅菌状態で移して設定した。阻止帯径を、蒸留水または滅菌pH調整済(5.5、6.2、6.8)腸モデル液体で希釈した希釈したキャリブレーターによる違いについて、評価した。異なる希釈剤での阻止帯径に明らかな差がないことから、0.002%ポリソルベート−80含有の脱イオン水を全てのオリタパンシン・キャリブレーターに用いた。バンコマイシンキャリブレーターを、滅菌脱イオン水に調製した。腸モデルからの試料を濾過滅菌(0.22μm)した。No.5コルクボーラーを用いて寒天から25ウェル(9mm直径)を取り除いた。バンコマイシンキャリブレーター(1〜512mg/L)、オリタバンシンキャリブレーター(1〜128mg/L)、または腸モデル由来の試料の各々2倍希釈の20mLを、三重反復で各ウェルに無作為に割り当てた。低濃度での濾過によって飽和可能な表面結合に起因する薬物の著しい比例的な損失をもたらすことから、オリタバンシンを1280mg/Lで濾過した。寒天プレートを5時間にわたって冷蔵(4℃)することで、抗菌拡散を可能にする一方で細菌の増殖を最小限にした。その後、生物検定プレートを好気的条件下で、37℃で48時間培養した。阻止帯径の測定を、0.01mmまで正確なカリパスを用いて行った。また、検定線は抗菌剤のlog2濃度に対して2乗された直径をプロットすることで得た。未知の抗菌の濃度を各プレートの検定線から読み取り、逆log2関数を用いて、有効濃度へ変換した。平均抗菌濃度(mg/L)を3つの複製から平均化した。オリタバンシンおよびバンコマイシンの生物検定に対する検出限界は、各々2および8mg/Lであった。
結果
容器2と容器3との間における固有の腸細菌およびクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の生菌数の実験間のばらつきは、かなり低い。したがって、容器3で得られる結果だけを示す。腸モデルの容器2と容器3との間での観察結果の有意義な違いは、必要に応じて強調される。オリタバンシン(図8a)実験とバンコマイシン(図8b)実験の両方で、固有の腸ミクロフロラの生菌数は期間A全体を通じて安定であった。クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子(14日目、期間B)の滴下によって、実質的に一方の実験における腸ミクロフロラの任意の計数された構成成分の生菌数が影響されることはなかった。
腸ミクロフロラに対するクリンダマイシン処理の影響
クリンダマイシン(期間C)の滴下は、ビフィズス菌(〜6log10cfu/mL)の個体数の著しい誘発した。それは、両方の実験(図8aおよびb)の期間Cの終わりまでに検出限界以下(〜2log10cfu/mL)であった。バクテロイデス(Bacteroides)および乳酸菌(Lactobacilli)の生菌数は、両方の実験において、〜1ないし2log10cfu/mLまで減少し、一方腸球菌の生菌数は〜2log10cfu/mLまで上昇した。クリンダマイシン滴下(期間D)の停止の後で、ビフィズス菌(bifidobacterial)母集団は、オリタバンシンおよびバンコマイシンの滴下前に検出限界を下回っていた。固有の腸部生物相の他の全ての構成成分は、それらの定常(期間A)濃度まで回復、または該濃度を上回った。
腸ミクロフロラに対するオリタバンシンおよびバンコマイシン滴下の影響
オリタバンシン(期間E)の滴下後、固有の腸ミクロフロラ上の小さな有害作用を計数した。バクテロイデスおよび腸内球菌の母集団はオリタバンシン滴下によって悪影響を及ぼされた数少ない細胞群であり、それぞれ〜1および2log10cful/mLまで減少した(図8a)。バンコマイシン滴下に続くバクテロイデスおよび腸内球菌の母集団の下落は、それぞれ〜6および1log10cfu/mLであった(図8b)。ビフィジス菌母集団は、両方の実験において、期間Eの間は検出限界以下のままであった。オリタバンシン滴下(期間F)の停止に続いて、すべての細菌母集団が定常状態(期間A)濃度に回復したが、例外としてビフィズス菌は検出限界以下のままであった(図8a)。バンコマイシン滴下の停止に続いて、すべての固有の腸細菌母集団は定常状態(期間A)濃度に回復したが、例外として、ビフィズス菌は〜2log10cfu/mLより低かった(図8b)。クロストリジウム・ディフィシレはいずれの実験でも定常状態(期間A)中に回復されなかった。クリンダマイシン滴下(期間B)がない状態で、クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027は、両方の実験(図9aおよびb)において腸モデル(容器1および2のデータは不図示)のすべての容器で、胞子のままであった。容器3ではクロストリジウム・ディフィシレ数が〜1log10cfu/mLまで減少し、両方の実験において期間Bの間は類似の速度であり、さらに細胞毒の発生は検出されなかった。
クロストリジウム・ディフィシレに対するクリンダマイシン処理の影響
クロストリジウム・ディフィシレはオリタバンシンおよびバンコマイシン実験(図9aおよびb)の両方におけるクリンダマイシン滴下(期間C)中、胞子として残った。さらに、細胞毒素生産はこの期間に検出されなかった。クリンダマイシン滴下(期間D)の停止に続いて、クロストリジウム・ディフィシレは胞子として残った。このことは、オリタバンシン実験(図9a)中のクリンダマイシン滴下の停止後5日間の検出限界にあった。バンコマイシン実験中の同様の期間では、クロストリジウム・ディフィシレ胞子数は期間Dの最初の2日の間減少し、その後、クロストリジウム・ディフィシレ胞子数が〜1log10cfu/mL増加した(図9b)。クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽は、オリタバンシンおよびバンコマイシンの実験中、クリンダマイシン滴下の停止の6および7日後にそれぞれ検出された。栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレ番号は両方の実験において、〜6log10cfu/mLのピーク生菌数まで急激に増加した。細胞毒素生産は、両方の実験において、35日目に検出され、両実験で最大タイターが5RUに達した。治療抗菌物質の滴下を、両方の実験において39日目に開始した。クロストリジウム・ディフィシレ胞子発芽、増殖および高レベル細胞毒素生産は、期間D(データ不図示)中にオリタバンシン実験またはバンコマイシン実験のいずれにおいても腸モデルの容器1では観察されなかった。
クロストリジウム・ディフィシレに対するオリタバンシン滴下の影響
オリタバシンの滴下が開始された場合、クロストリジウム・ディフィシレの総数は胞子数(6log10cfu/mL)よりも多い〜2log10cfu/mLであった(期間E、図9a)。オリタバンシン滴下の2日目で、クロストリジウム・ディフィシレ総数と胞子数の両方が〜2log10cfu/mLまで減少し、1日後の検出限界(〜1.22log10cful/mL)以下であり、期間Eの残りまでそのままであった。細胞毒素タイターはオリタバンシン滴下(期間E)中に3RUまで減少した。オリタバンシン濃度は、血管1、2、および3で128、109、および52mg/Lで、それぞれピークに達した。すなわち、バンコマイシン腸モデルにおいて達成された濃度よりも8倍低かった。腸モデルからの培養試料において明らかにされたオリタバンシンの濃度が、濃度が<1280mg/Lであったことから濾過後の潜在的損失により、実際以下に表示さる可能性がある。
検定線R2値はすべて>0.95であった。
クロストリジウム・ディフィシレに対するバンコマイシン滴下の影響
クロストリジウム・ディフィシレバンコマイシンの総計数は、バンコマイシン滴下の1日後に、〜1.5log10cfu/mLまで減少した(時期E、図9b)。クロストリジウム・ディフィシレ胞子計数はバンコマイシン滴下に影響されなかった。また、クロストリジウム・ディフィシレは、期間Eの残りまで主に胞子のままであった。細胞毒素タイターはバンコマイシン滴下中に3RUまで減少した。バンコマイシン濃度は、腸モデルの容器1、2、および3で、それぞれ957、800、および423mg/Lでピークに達した。検定線R2値はすべて>0.99であった。
オリタバンシン滴下の停止後の現象
クロストリジウム・ディフィシレは、実験(期間F(図9a))の残りで、検出限界で散発的に分離された。オリタバンシン持ち込みを最小化する目的で活性炭(20〜40g/L)処理することに加えて、培養試料の遠心分離よび洗浄はクロストリジウム・ディフィシレの回復を増強することはなかった(データ不図示)。細胞毒素タイターは傾き続け、10日以内に検出限界以下となった。オリタバンシン濃度はオリタバンシン滴下の停止の11日後に検出限界以下となった。
バンコマイシン滴下の停止後の現象
クロストリジウム・ディフィシレは、容器2(データ示さず)および3でのバンコマイシン滴下の停止の後に、それぞれ12および13日まで、胞子として残存した(期間F、図9b)。その後、発芽、増殖、および高レベル細胞毒素生産が再び起こるのが観察された。クロストリジウム・ディフィシレの総計数は〜6log10cfu/mLであり、また細胞毒素タイターは実験の終了までに5RUであった。
【0131】
これらの結果は、オリタバンシンおよびバンコマイシンの両方が栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレを抑制するのに効果的だったことを示している。バンコマイシン滴下は、クロストリジウム・ディフィシレ胞子だけがバンコマイシン滴下開始の1日後に腸モデルの容器に残存した栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレの抑制を促進した。クロストリジウム・ディフィシレ胞子は、クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の栄養増殖型のMICよりも>500倍高いバンコマイシン濃度の存在に影響されなかった(O'Connor et al., J Antimicrob Chemother 2008; doi:10.1093/jac/dkn276)。バンコマイシンの糞便の中で観察された濃度でクロストリジウム・ディフィシレ胞子に対する抑制活性を誘発することの失敗は、以前に報告されており、この研究で示されたデータを支持している(Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2005; 56: 717-25; Levett, J Antimicrob Chemother 1991; 27:55-62; Walters et al., Gut 1983; 24: 206-12)。さらに、期間Fの過程で腸モデルの容器2および3で検出される限界よりも低いバンコマイシン濃度の減少の後に、クロストリジウム・ディフィシレ胞子発芽、増殖、および高レベル細胞毒素生産のさらなる発現が観察された。
【0132】
オリタバンシンは、ピーク抗菌濃度がバンコマイシンよりも〜8倍低いにもかかわらず、急速にクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型および胞子型の数を減らした。オリタバンシンのこれらの活性成分濃度は、寒天とり込みおよびブロス大量希釈法によって測定された際に、それぞれクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027のMICよりも25倍および200倍高かった(O'Connor et al., J Antimicrob Chemother 2008; doi:10.1093/jac/dkn276)。洗浄および活性炭吸着により培養試料から活性成分オリタバンシンを取り除く努力にもかかわらず、検出限界で散発的に分離された個体コロニー以外にクロストリジウム・ディフィシレを回復することができなかった。したがって、バンコマイシンと比較して、クロストリジウム・ディフィシレ胞子に対するオリタバンシンの影響の著しい違いが本研究で観察された。実際、オリタバンシン(10mg/L)によって処理されたクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子の伸長の抑制は、薬物を洗浄によって取り除いた後も持続することが、最近観察された。この効果は、メトロニダゾールまたはバンコマイシン処理した胞子に関しては観察されなかった。試験した抗菌物質は、上掲−MIC濃度で胞子発芽に対する抑制活性をいっさい示さなかった。したがって、オリタバンシンは、クロストリジウム・ディフィシレ胞子伸長に対抗する活性を有する。オリタバンシン滴下に続く期間Fの間の本研究で、バンコマイシンとの直接接触状態で、抗菌濃度が検出限界を下回った後でも、クロストリジウム・ディフィシレ胞子発芽、増殖、および高レベル細胞毒素生産の再発は観察されなかった。
【0133】
オリタバンシンが表面に結合することが既に示されている(0.002%ポリソルベート−80によって無効にされる効果(Arhin et al., Antimicrob Agents Chemother 2008; 52:1597-603)。ポリソルベート−80は、腸モデル増殖培地(0.2%のv/v)に取り込まれた。したがって、結果として生じ、かつ生物検定検出限界を下回る継続的な抗菌活性を有する腸モデル内の表面への結合は、本研究の期間Fの大部分にわたってクロストリジウム・ディフィシレ胞子の単離が失敗することのありそうもない説明である。クロストリジウム・ディフィシレ細胞毒素タイターの減少はオリタバンシン実験およびバンコマイシン実験の両方における期間E(3RU)に類似したが、細胞毒素タイターがオリタバンシン実験中で検出不可能なレベルまで減少するのにより長く(5日)かかった。
【0134】
結論として、オリタバンシンおよびバンコマイシンの両方は、腸モデルから有効に栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレを除去したが、オリタバンシンのみが胞子に対して潜在的活性を示した。クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子の再発は、バンコマイシンの検出限界以下に抗生剤濃度が減少すると観察された。しかし、この現象はオリタバンシンに関しては観察されなかった。これらの治験が示唆することは、オリタバンシンが、反胞子活性の点から、バンコマイシンを上回る治療上の利点を有すると思われることである。
実施例5−CDIのハムスターモデルでのオリタバンシン静脈内投与の有効性の評価
方法
菌株
全ての実験で、クロストリジウム・ディフィシレATCC43255を用いた。
この株は、もともとは腹部の創傷から分離されたもので、毒素A+/B+およびバイナリ毒素陰性である。クロストリジウム・ディフィシレ胞子を、胞子形成を促進するために、7日間、37℃で、血液寒天培地プレート上でクロストリジウム・ディフィシレ細胞を酸素欠如状態で培養することにより、感染用に調製した。クロストリジウム・ディフィシレのコロニーを、燐酸塩緩衝食塩水(PBS)中で再懸濁し、1時間にわたって等量の100%エタノールと混合した。胞子を遠心分離機にかけ、PBSで再懸濁し、等分化し、さらに−20℃で冷凍した。ハムスターに経口接種するために、胞子をPBSで希釈した。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症(CDI)のハムスターモデル
研究はすべて、動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の承認を得たプロトコルに従って、行われた。オスのシリアンゴールデンハムスター(65〜80g:Harlan, Indianapolis, IN)を感染1日前(−1日目)に、クリンダマイシン(100mg/kg)の皮下投与1回分の量で前処置した。その1日後(0日目)、105のクロストリジウム・ディフィシレ胞子を動物に経口経管栄養によって経口感染させた。
抗生治療
感染後1日目に監視し、ビヒクル、バンコマイシン(50mg/kg)、または10%ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(HPCD)(50mg/kg)に処方したオリタバンシンのいずれかを、ハムスター(n=10/群)に対して静脈内(舌下)投与した。オリタバンシンの合計1、2、または3回分の服用量を1日目、3日目、および5日目に、各々注射した。比較群では、ハムスターに対して、1日目、3日目、および4日目に投与した合計3回分の投与量を投与した。実験終了点まで疾患の何らかの兆候について動物の観察を行い、生存を記録した。
結果
−1日目にクリンダマイシンでプライミングすることで、ハムスター(n=10/群)でCDIを誘導し、その後、24時間後(0日目)にクロストリジウム・ディフィシレで感染させた。感染したハムスターは1日目に最初の服用を受け、最高5日間にわたって2日ごとに処置を繰り返した;処置していない群を対照として用いた。
【0135】
臨床的症状によって評価されるように、未処理の動物すべてがCDIを発症し、5日目に死亡または瀕死の状態で安楽死させた(図10)。50mg/kgバンコマイシンの静脈投与3回(隔日(q2d))は、未処置の動物と比較して、生存を8日間延長させた(図10)。しかし、バンコマイシン処置動物の70%が、3日目および5日目の第2回の注射および第3回の注射の間で、死亡した。その結果、5日目では生存比率が未処置の動物に対して0%であり、バンコマイシン処置の動物に対しては、30%であった。それとは対照的に、オリタバンシンを一度に50mg/kg、5日にわたって隔日(q2d)で2回または3回投与された動物は、未処理の動物を基準にした生存比率の増加を示し、未処理の動物よりも4、5、および7日間、それぞれ生存が延びた(図10)。この治験は、オリタバンシンの容量依存的な有効性を示した。オリタバンシンを2回分投与された動物は、バンコマイシンにより等量の服用量および服用計画(2xq2d)を投与された動物よりも5日間長く生存した(図10)。
実施例6−CDIのハムスターモデルにおけるオリタバンシンの経口投与の有効性の評価
方法
菌株
クロストリジウム・ディフィシレ(CD)ATCC43255をすべての実験で用いた。CDレ胞子を、胞子形成を促進するために、7日間、37℃で、血液寒天培地プレート上でCD細胞を酸素欠如状態で培養することにより、感染用に調製した。CDのコロニーを、燐酸塩緩衝食塩水(PBS)中で再懸濁し、1時間にわたって等量の100%エタノールと混合した。胞子を遠心分離機にかけ、PBSで再懸濁し、等分化し、さらに−20℃で冷凍した。ハムスターに経口接種するために、胞子をPBSで希釈した。
CD感染症(CDI)のハムスターモデル
研究はすべて、動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の承認を得たプロトコルに従って、行われた。オスのシリアンゴールデンハムスター(65〜80g:Harlan, Indianapolis, IN)を感染1日前(−1日目)に、クリンダマイシン(CL)(100mg/kg)の皮下投与1回分の量で前処置した。その1日後(0日目)、105のCD胞子を動物に経口経管栄養によって経口感染させた。
抗生治療
(1)感染後(PI)1日目に監視し、ビヒクル、バンコマイシン(VA)(50mg/kg/日)、または10%ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(HPCD)(10、50、または100mg/kg/日)に処方したオリタバンシンのいずれかを、5日間経管栄養によって、ハムスター(n=10/群)に投与した。
【0136】
(2)ポリエチレングリコール400(PEG400)に処方されたORIを、2日目にハムスター(n=5/群)に対して4日間経口投与した。
実験終了点(20日目)まで疾患の何らかの兆候について動物の観察を行い、生存を記録した。
盲腸含有物中のCDの検出
CD細胞および毒素の検出は、実験および臨床の終了点で動物の盲腸の含有物中で検出された。CD毒素(毒素Aおよび毒素B)の存在を、製造元によって記述されたようにしてCD TOX A/B IITMキット(Techlab)を用いることによって、検出した。毒素Aの検出限界は≧0.8ng/mL、毒素Bの検出限界は≧2.5ng/mLであった。生細胞(TC)(栄養増殖および胞子形態)の合計は、2%オキシラーゼ(Oxyrase Inc.)含有PBSで10倍まで、連続的に盲腸の含有物を連続的に希釈することで、計数した。盲腸の含有量希釈を卵黄なしにブラジールCCEYライソザイム寒天(Lab160)上にプレーティングした。CD胞子を、等量の純エタノールで盲腸試料を処置することによって、計数した。検出限界(LOD)は、TCおよび胞子に関して、各々1.47および1.77log10CFU/g盲腸含有物であった。
統計分析
データの分析を、グラフパッド・プリズム(バージョン5.00)(GraphPad Prism(version 5.00))を用いて、カプラン−マイアー(Kaplan-Meier)および対数ランク・ウィルコクソン(Wilcoxon)検定生存率分析によって、おこなった。統計的有意差を示すために、p値を0.05(p<0.05)未満とした。
結果
CL単独で処置した後に図11Aのグラフに示すように、ハムスターの50%のみが20日目まで生存し、全ての死亡は静脈投与後(PI)6日目と8日目との間に生じた。CD胞子にCLプライムド・ハムスターを暴露することで、静脈投与後(PI)4日目で生存率が0%であった。
【0137】
図11Bのグラフに示すように、ORIの有効性は用量依存的であった。5日にわたって毎日1回10、50、および100mg/kgで注射したORI(HPCDで処方)は、未処置の動物よりも9、13、および17日間を上回る生存の延長をもたらした(各群について、p<0.0001)。100mg/kgのORIは、静脈投与後(PI)12日目で、VAに対して優れた有効性を示した。ORI100mg/kgで処置したハムスターの平均生存時間は17日間であり、VAで処置したハムスターでは12日間であった(p<0.0001)。死亡したハムスター全ての盲腸含有物はCD毒素AおよびBに対して陽性であった。
【0138】
図11Cに示すグラフは、VA50mg/kgを1日1回またはORI100mg/kg1日1回、5日間の1日目または2日目に開始した経口処置の結果を示す。ORIで処置した動物全てが生存し、それらの動物のいずれもPI20日目まで疾患の症状は何ら示さなかった。高レベルの毒素AおよびBが、未処置およびVA処置動物の盲腸含有物に検出された。一方、毒素AおよびBは、PI20日目にPRIによる処置を受けた動物の盲腸含有物では検出されなかった。
【0139】
図11Dに示すように、PI20日目で、CD栄養増殖細胞および胞子細胞は、PEG400に処方されたORIによって処置されたハムスターの全てで、盲腸の含有物中で検出できなかった。LOD(検出限界)は、TCおよび胞子に関して、各々1.37および1.77log10CFU/g盲腸含有物であった。
* * * *
この出願の発明を一般的および特定の実施形態の両方で上記に説明した。本発明は、好ましい実施形態として考えられるものを上記したが、当業者に知られている種々の代案は総括的な開示内で選択することができる。本発明は、請求の範囲に記述したことを除いて、限定されるものではない。
【0140】
本明細書中に援用される全ての文献、出版物、特許、書籍、マニュアル、論説、論文、要約、ポスター、および他の材料を、参照により明らかに本明細書中に取り込まれる。
【背景技術】
【0001】
クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)感染症は、際だった健康管理上の問題である。それは入院中の高齢者にとっては病的状態の主な原因であり、またほぼ例外なく抗菌療法に関係している。クロストリジウム・ディフィシレ感染症(CDI)は、重症度が軽症の抗生物質関連下痢/大腸炎から生命に危険のある偽膜性大腸炎までに及ぶと考えられている(Borriello, S. P. 1998. J Antimicrob Chemother. 41 (Suppl. C), 13-19)。CDIの治療戦略は、過去20年間にわたりほとんど変わっていない:経口メトロニダゾール(250〜500mgTIDまたはQID)あるいはバンコマイシン(125mgQID)が、CDIの処置に最も一般的に用いられている(Wilcox, M. H. 1998. J Antimicrob Chemother. 41 (Suppl. C), 41-46;ウエブサイト postgradmed.com/issues/2002/11_02/ joyce3.htmも参照せよ)。
【0002】
クロストリジウム・ディフィシレは、胞子形成を行うことで、極度の熱、放射線、化学攻撃、乾燥、及び時間に強い細菌胞子を形成する(Aronson, A.I, Fitz-James, P. 1976. Bacteriol Rev. 40, 360-402)。クロストリジウム・ディフィシレ胞子は、院内環境で残存することが知られており、該生物の伝播に役割を果たすと思われる。さらに、クロストリジウム・ディフィシレ胞子は抗菌療法(メトロニダゾール(MET)およびバンコマイシン(VAN)治療を含む)に対して抵抗性を持ち、初期症状発現を処置するための抗生物質の使用を停止した後にCDIが再発する一因となり得る(Walters, B. A. 1983. Gut. 24, 206-212)。しかし、クロストリジウム・ディフィシレ胞子に対する抗菌活性を評価した研究はほとんどなく、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の殺菌または発芽阻害のために使用することが可能な治療法が強く求められている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書中に開示されるように、NDISACC−(4−(4−クロロフェニル)ベンジル)A82846BおよびLY333328としても公知でありかつ本明細書中に記載される、グリコペプチド抗生物質オリタバンシンが、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型とクロストリジウム・ディフィシレ胞子との両方に対して顕著な活性を示すことが明らかにされた。本明細書中に記述された実験の結果は、オリタバンシン(またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物)等のグリコペプチド抗生物質がヒトを含む動物でのクロストリジウム・ディフィシレによって引き起こされた疾患の処置、予防処置、および(または)予防策において有効であることを示している。
クロストリジウム・ディフィシレの増殖の抑制
本発明は、インビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、および/またはエクスビボ(ex vivo)でクロストリジウム・ディフィシレ・バクテリアの増殖を抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ・バクテリアの増殖を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とクロストリジウム・ディフィシレとを接触させることを含む方法に概ね関する。クロストリジウム・ディフィシレは、栄養増殖細胞(vegetative cell)、胞子(spore)、または両方の混合物であってもよい。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0004】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長 をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長 を抑制する抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0005】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0006】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長(outgrowth)をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制する抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0007】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の栄養増殖型の増殖をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の栄養増殖型を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0008】
本発明は、クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、インビトロ、インビボ、または両方で、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型(vegetative form)と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質をおよび医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置
本発明は一般に、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することで、該被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法に関する。好ましくは、クロストリジウム・ディフィシレは、栄養増殖細胞、胞子、または両方の混合物の形態である。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与である。
【0009】
本発明はまた、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、該処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与が静脈内投与または経口投与による。
【0010】
本発明はさらに、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0011】
本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置によってクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制処置する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0012】
さらに、本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置がクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型の増殖を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0013】
さらに、本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、該処置がクロストリジウム・ディフィシレの胞子形成を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防
本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を予防する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染の危険性がある被検体にクロストリジウム・ディフィシレ感染症を予防するために十分な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含む方法に概ね関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、もしくはその医薬的に許容し得る塩、水和物、またはそれらの溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置
本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置を提供する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置を達成するために十分な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含む方法に概ね関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくはこれらの溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0014】
本発明は、グリコペプチド抗生物質、好ましくはオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくはこれらの溶媒和物の、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置、および(または)予防策における薬物療法のための使用を含む。
【0015】
本発明はさらに、グリコペプチド抗生物質の、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置、および/または予防策のための薬物を製造するための使用を含む。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくはこれらの溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0016】
本発明は、適当な包装容器に、本発明の医薬組成物もしくはグリコペプチド抗生物質、並びに、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置および/もしくは予防策におけるそれの使用のための指示書を含有するキットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】MIC測定用の螺旋勾配評価項目分析を模式的に示す図である。
【図2】螺旋勾配評価項目分析によるクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖培養(V)および胞子(SP)の相乗平均(±SE)オリタバンシン(ORI)MICを示す。
【図3】インビボ濃度のメトロニダゾール(MET)、バンコマイシン(VAN)、ORI、脱イオン水(C)、またはTween80(P−80)に、1分または30分にわたってさらしたクロストリジウム・ディフィシレ胞子の回復率(%)(±範囲)を示す。
【図4】位相差顕微鏡下のクロストリジウム・ディフィシレの(a)位相差で明るい(phase bright)胞子、(b)位相差で暗い(phase dark)胞子、(c)伸長する胞子、(d)栄養増殖細胞を示す(100倍拡大)。
【図5】10mg/Lオリタバンシン(ORI)対無抗生物質(C)にさらしたクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の位相差で明るい(phase bright)(PV)胞子、位相差で暗い(phase dark)(PD)胞子、および栄養増殖細胞(V)の回復率(±範囲)を示す。
【図6】かなり短い時間(1分、薄灰色)または30分(30分、暗灰色)にわたってメトロニダゾール(MET)、バンコマイシン(VAN)、またはオリタバンシン(ORI)にさらしたクロストリジウム・ディフィシレ胞子の回復率と、水のみ(C)または水およびTween80(P80)にさらした対照の回復率とを示す。3種類の株のクロストリジウム・ディフィシレ胞子を試験した(PCRリボタイプ001、106、および027)。反応溶液添加後に、希釈剤を胚状体に添加した。
【図7】かなり短い時間(1分、薄灰色)または30分(30分、暗灰色)にわたってメトロニダゾール(MET)、バンコマイシン(VAN)、またはオリタバンシン(ORI)にさらしたクロストリジウム・ディフィシレ胞子の回復率と、水のみ(C)または水およびTween80(P80)にさらした対照の回復率とを示す。3種類の株のクロストリジウム・ディフィシレ胞子を試験した(PCRリボタイプ001、106、および027)。反応溶液添加前に、希釈剤を胚状体に添加した。
【図8A】(a)オリタバンシンおよび(b)バンコマイシン腸モデルの容器3内で培養可能な固有の腸ミクロフロラの平均(+SE)生菌数(log10cfu/mL)を示す。縦線は、各々の実験期間の最終日を示す。水平方向の破線は、細菌培養のための検出限界を示す。
【図8B】(a)オリタバンシンおよび(b)バンコマイシン腸モデルの容器3内で培養可能な固有の腸ミクロフロラの平均(+SE)生菌数(log10cfu/mL)を示す。縦線は、各々の実験期間の最終日を示す。水平方向の破線は、細菌培養のための検出限界を示す。
【図9A】腸モデルの容器3での(a)オリタバンシン(ORI)および(b)バンコマイシンにおける平均(+SE)クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の総計数(log10cfu/mL)、胞子計数(log10cfu/mL)、細胞毒素タイター(RU)、および抗菌剤濃度(mg/L)を示す。水平方向の破線は、細菌培養のための検出限界を示す。
【図9B】腸モデルの容器3での(a)オリタバンシン(ORI)および(b)バンコマイシンにおける平均(+SE)クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の総計数(log10cfu/mL)、胞子計数(log10cfu/mL)、細胞毒素タイター(RU)、および抗菌剤濃度(mg/L)を示す。水平方向の破線は、細菌培養のための検出限界を示す。
【図10】CDIのハムスターモデルにおいてバンコマイシンと比較したオリタバンシンの複数回投与計画の有効性の決定に関する結果を示すグラフである。ハムスター(n=10/群)に対して、オリタバンシンまたはバンコマイシンを異なる濃度の投与計画で静脈注射による処置を施した。合計1、2、または3回分の抗生物質を、2日後に5日間静脈注射した。
【数1】
L(クリンダマイシン(100mg/kg、皮下)の注射);
CD(強行経口投与によるクロストリジウム・ディフィシレ感染症);Tx(抗生物質の注射);
ORI、オリタバンシン;Vanco、バンコマイシン。
【図11A】CDIのハムスターモデルの妥当性検証を示す。
【図11B】CDIのハムスターモデルにおいてVAと比較して、HPCDに処方したORIの有効性を示す。
【図11C】CDIのハムスターモデルにおいてVAと比較して、PGE400に処方したORIの有効性を示す。
【図11D】ハムスター盲腸含有物内のCD総生菌数(TC)および胞子数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
クロストリジウム・ディフィシレの増殖の抑制
本発明は、一般に、インビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、および/またはエクスビボ(ex vivo)で細菌のクロストリジウム・ディフィシレ(C. difficile)の増殖を抑制する方法に関し、該方法はクロストリジウム・ディフィシレ・バクテリアの増殖を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とクロストリジウム・ディフィシレとを接触させることを含む。クロストリジウム・ディフィシレは、栄養増殖細胞(vegetative cell)、胞子(spore)、または両方の混合物の形態であってもよい。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0019】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長(outgrowth)をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長を抑制する抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0020】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽(germination)をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0021】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長(outgrowth)をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制する抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0022】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での増殖をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0023】
本発明は、クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成(sporulation)をインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、または両方のいずれかで抑制する方法であって、インビトロ、インビボ、あるいは両方で、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させることを含む方法に関する。グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置
本発明は一般に、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することで、該被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症状を処置する方法に関する。好ましくは、クロストリジウム・ディフィシレは、栄養増殖細胞、胞子、あるいは両方の混合物の形態であってもよい。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0024】
本発明はまた、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、該処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0025】
本発明はさらに、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0026】
本発明はまた、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、該処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0027】
さらに、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置がクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での増殖を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0028】
さらに、本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、該処置がクロストリジウム・ディフィシレ胞子形成を抑制する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防策
本発明は、一般に、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を予防する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の危険性がある被検体にクロストリジウム・ディフィシレ感染症を防ぐのに十分な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含む方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置
本発明は一般に、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置を提供する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することで、該被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法に関する。好ましくは、グリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与される。好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、投与は静脈内投与または経口投与による。
【0029】
本発明は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置、および/または予防策における薬物療法として使用するために、グリコペプチド抗生物質、好ましくはオリタバンシン、医薬的に許容し得る塩、水和物、あるいはそれの溶媒和物を含む。
【0030】
本発明は、さらに被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置、および(または)予防策のための薬物の製造にグリコペプチド抗生物質を使用することを含む。
【0031】
好ましくは、グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である。
【0032】
本発明は、適当な包装容器に、本発明の医薬組成物もしくはグリコペプチド抗生物質と、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置および(または)予防策におけるそれの使用のための指示書とを含む。
【0033】
本発明のグリコペプチド抗生物質として、式Iのグリコペプチド抗生物質、および該グリコペプチド抗生物質の医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、または混合物が挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
式中、R1は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、および−Ra−Y−Rb−(Z)xの1つ;またはR1は、−Ra−Rb−(Z)x、−Ra−Y−Rb−(Z)x、Rf、−C(O)Rf、または−C(O)−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された糖類基;
R2は、水素または−Ra−Rb−(Z)x、−Ra−Y−Rb−(Z)x、Rf、−C(O)Rf、もしくは−C(O)−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された糖類基;
R3は、−ORc、−NRcRc、−O−Ra−Y−Rb−(Z)x、−NRc−Ra−Y−Rb−(Z)x、−NRcRe、または−O−Re;
R4は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−Ra−Y−Rb−(Z)x、−C(O)Rd、および−Ra−Y−Rb−(Z)x、Rf、もしくは−C(O)−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された糖類基からなる群から選択されるもの、あるいはR4およびR5は、それらが結合する原子とともに結合し、−NRc−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された複素環を形成するもの;
R5は、水素、ハロ、−CH(Rc)−NRcRc、−CH(Rc)−NRcRe、−CH(Rc)−NRc−Ra−Y−Rb−(Z)x、−CH(Rc)−Rx、および−CH(Rc)−NRc−Ra−C(O)−Rxからなる群から選択されるもの;
R6は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−Ra−Y−Rb−(Z)x、−C(O)Rd、および−Ra−Y−Rb−(Z)x、Rf、−C(O)Rf、もしくは−C(O)−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された糖類基からなる群から選択されるもの;あるいはR5およびR6は、それらが結合する原子とともに結合し、−NRc−Ra−Y−Rb−(Z)xによって任意に置換された複素環を形成するもの;
R7は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−Ra−Y−Rb−(Z)x、および−C(O)Rdからなる群から選択されるもの;
R8は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、および−Ra−Y−Rb−(Z)xからなる群から選択されるもの;
R9は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環からなる群から選択されるもの;
R10は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環からなる群から選択されるもの、あるいはR8およびR10は結合して−AR1−O−AR2−するもので、AR1およびAR2は、それぞれ独立して、アリーレンまたはヘテロアリーレンであり;
R11は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環からなる群から選択されるもの、あるいは、R10およびR11は、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともに結合し、複素環を形成するもの;
R12は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、−C(O)Rd、−C(NH)Rd、−C(O)NRcRc、−C(O)ORd、−C(NH)NRcRc、および−Ra−Y−Rb−(Z)xからなる群から選択され、ならびに―C(O)−RbY−Rb−x(Z)、またはR11およびR12は、それらが結合する窒素原子とともに結合し、複素環を形成するもの;
R13は、水素または−OR14からなる群から選択されるもの;
R14は、水素、―C(O)Rd、および糖類基から選択されるもの;
Raは、それぞれ独立して、アルキレン、置換アルキレン、アルケニレン、置換アルケニレン、アルキニレン、および置換アルキニレンからなる群から選択されるもの;
Rbは、それぞれ独立して、共有結合、アリーレン、アルキレン、置換アルキレン、アルケニレン、置換アルケニレン、アルキニレン、および置換アルキニレンからなる群から選択されるもの;
Rcは、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、および−C(O)Rdからなる群から選択されるもの;
Rdは、それぞれ独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環からなる群から選択されるもの;
Reは、各々が糖類基;
Rfは、それぞれ独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環からなる群から選択されるもの;
Rxは、N結合アミノ糖類またはN結合複素環式化合物;
Xは、それぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素から選択されるもの;
Yは、それぞれ独立して、−CH2−、酸素、硫黄、−S−S−、−NRc、−S(O)、−SO2、−NRcC(O)−、−OSO2−、−OC(O)、−N(Rc)SO2−、−C(O)NRc−、−C(O)O、−SO2NRc−、−SO2O−、−P(O)(ORc)O−、−P(O)(ORc)NRc−、−OP(O)(ORc)O−、−OP(O)(ORc)NRc−、−OC(O)O−、−NRcC(O)O−、−NRcC(O)NRc−、−OC(O)NRc−、−C(O)−、および−N(Rc)SO2NRc−;
Zは、水素、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、複素環、または糖類である。
xは1または2であり、
また
【0036】
【化2】
【0037】
は
【0038】
【化3】
【0039】
から選択される。
【0040】
特に、式Iのグリコペプチド抗生物質は、テイコプラニン、ダルババンシン、およびテラバンシンを含む。
【0041】
本発明のグリコペプチド抗生物質は、式IIのグリコペプチド抗生物質、および該グリコペプチド抗生物質の医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、または混合物が挙げられる。
【0042】
【化4】
【0043】
式中、XおよびYは、それぞれ独立して、水素または塩素;
Rは、水素、4−エピ−バンコサミニル、アクチノサミニル、リストサミニル、または式−Ra−R7a(式中、Raは、4−エピ−バンコサミニル、アクチノサミニル、もしくはリストサミニルであり、以下に定義するRaがRaのアミノ基に結合している)の基;
R1は、水素またはマンノース;
R2は、―NH2、―NHCH3、−N(CH3)2、―NHR7bあるいは−N(CH3)R7bであり、式中R7bは以下に定義されるもの;
R3は、−CH2CH(CH3)2、[p−OH,m−Cl]フェニル、p−ラムノシルオキシフェニル、p−(ラムノシルガラクトシルオキシ)−フェニル、[p−ガラクトース−ガラクトース]フェニル、p−(メトキシラムノシルオキシ)フェニル、またはp−メトキシ−ラムノシルオキシフェニル;
R4は、−CH2(CO)NH2、ベンジル、[p−OH]フェニル、または[p−OH、mCl]フェニル;
R5は水素、またはマンノース;
R6は、4−エピ−バンコサミニル、L−アコサミニル、L−リストサミニル、またはL−アクチノサミニル;
R7は、以下に定義されるように、R6のアミノ基に結合しており、および
R7、R7a、およびR7は、それぞれ独立して、水素、(C2−C16)アルケニル、(C2−C12)アルキニル、(C1−C12アルキル)−R8、(C1−C12アルキル)−ハロ、(C2−C6アルケニル)−R8、(C2−C6アルキニル)−R8、(C1−C12アルキル)−O−R8、ただし、R7、R7a、およびR7bがすべて水素となることはなく、またR8は以下の(a)ないし(f)からなる群から選択されるもので、
a)それぞれ独立して、未置換または以下のものからなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換された多環アリール:
(i)水酸基、
(ii)ハロ、
(iii)窒素、
(iv)(C1−C6)アルキル、
(v)(C2−C6)アルケニル、
(vi)(C2−C6)アルキニル、
(vii)(C1−C6)アルコキシ、
(viii)ハロ−(C1−C6)アルキル、
(ix)ハロ−(C1−C6)アルコキシ、
(x)カルボ−(C1−C6)アルコキシ、
(xi)カルボベンジルオキシ、
(xii)(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシル、ハロ、またはニトロで置換されたカルボベンジルオキシ、
(xiii)式−S(O)n’−R9の基、式中、n’は0〜2およびR9は(C1−C6)アルキル、フェニル、または(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシル、ハロ、またはニトロで置換されたフェニル、および
(xiv)式−C(O)N(R10)2の基、式中、各々のR10はそれぞれ独立して、水素、(C1−C6)−アルキル、(C1−C6)−アルコキシ、フェニル、または(C1−C6)ア−ルキル、(C1−C6)−アルコキシ、ハロ、もしくは窒素で置換されたフェニル;(b)それぞれ独立して、未置換または以下のものからなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換された多環アリール:
(i)ハロ、
(ii)(C1−C6)アルキル、
(iii)(C1−C6)アルコキシ、
(iv)(C1−C6)アルキル、
(v)ハロ−(C1−C6)アルコキシ、
(vi)フェニル基、
(vii)チオフェニル、
(viii)ハロ、(C−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C1−C6)アルコキシ、または窒素によって置換されたフェニル、
(ix)カルボ−(C1−C6)アルコキシ、
(x)カルボベンジルオキシ、
(xi)(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、ハロ、または窒素で置換されたカルボベンジルオキシ、
(xii)上に定義された式−S(O)n’−R9の基、
(xiii)上に定義された式−C(O)N(R10)2の基、
および
(xiv)チエニル;
(c)以下の式の基:
【0044】
【化5】
【0045】
式中、
A1は、−OC(A2)2−C(A2)2−O−、−O−C(A2)2−O−、−C(A2)2−O−、または−C(A2)2−C(A2)2−C(A2)2−C(A2)2−、および
各A2置換基は、それぞれ独立して、水素、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、および(C4−C10)シクロアルキルから選択されるもの:
(d)以下の式の基:
【0046】
【化6】
【0047】
式中
pは1ないし5;およびR11は、それぞれ独立して以下の群から選択されるもの:
(i)水素、
(ii)ニトロ、
(iii)水酸基、
(iv)ハロ、
(v)(C1−C8)アルキル、
(vi)(C1−C8)アルコキシ、
(vii)(C9−C12)アルキル、
(viii)(C2−C9)アルキニル、
(ix)(C9−C12)アルコキシ、
(x)(C1−C3)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ(C1−C3)アルコキシ、または(C1−C4)アルキルチオによって置換された(C1−C3)アルコキシ、
(xi)(C2−C5)アルケニルオキシ、
(xii)(C2−C13)アルキルオキシ、
(xiii)ハロ−(C1−C6)アルキル、
(xiv)ハロ−(C1−C6)アルコキシ、
(xv)(C2−C6)アルキルチオ、
(xvi)(C2−C10)アルアノイルオキシ、
(xvii)カルボキシ−(C2−C4)アルケニル、
(xviii)(C1−C3)アルキルスルホニルオキシ、
(xix)カルボキシ−(C1−C3)アルキル、
(xx)N−[ジ(C1−C3)−アルキルアミノ−(C1−C3)アルコキシ、
(xxi)シアノ−(C1−C6)アルコキシ、および
(xxii)ジフェニル−(C1−C6)アルキル、
ただし
R11が(C1−C8)アルキル、(C1−C8)アルコキシ、またはハロである場合、pは2以上でなければならず、または
R7が(C1−C3アルキル)−R8である場合、R11は水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C8)アルコキシ、またはハロでないもの;
(e)以下の式の基:
【0048】
【化7】
【0049】
式中、qは0ないし4;
R12は、それぞれ独立して、以下のものからなる群から選択されるもの:
(i)ハロ、
(ii)ニトロ、
(iii)(C1−C6)アルキル、
(iv)(C1−C6)アルコキシ、
(v)ハロ−(C1−C6)アルキル、
(vi)ハロ−(C1−C6)アルコキシ、
(vii)ヒドロキシ、および
(vii)(C1−C6)チオアルキル、rは1〜5であり;
ただし
qとrとの合計は5以下であること;
Zは次のものからなる基から選ばれる:
(i)単結合、
(ii)未置換またはヒドロキシ、(C1−C6)アルキル、または(C1−C6)アルコキシによって置換された二価の(C1−C6)アルキル、
(iii)二価の(C2−C6)アルケニル、
(iv)二価の(C2−C6)アルキニル、および
(v)式−(C(R14)2)s−R15−または−R15−(C(R14)2)s−の基、式中、sは0〜6;式中、各R14置換基は、それぞれ独立して、水素、(C1−C6)−アルキル、または(C4−C10)シクロアルキル;
また、R15は、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−SO2−O−、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)O−、−NH−、−N(C1−C6アルキル)−、および−C(O)NH−、−NHC(O)−、N=Nから選択されるもの;
R13は、それぞれ独立して、以下のものからなる群から選択されるもの:
(i)(C4−C10)複素環、
(ii)ヘテロアリール、
(iii)未置換または(C1−C6)アルキルによって置換された(C4−C10)シクロアルキル、および
(iv)未置換または1ないし5の置換基によって置換されたフェニルであり、該置換基は、それぞれ独立して、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、(C1−C10)アルコキシ、ハロ−(C1−C3)アルコキシ、ハロ−(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルコキシフェニル、フェニル、フェニル−(C1−C3)アルキル、(C1−C6)アルコキシフェニル、フェニル−(C2−C3)アルキニル、および(C1−C6)アルキルフェニルから選択されるもの;
(f)それぞれ独立して、未置換または以下のものからなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換される(C4−C10)シクロアルキル:
(i)(C1−C6)アルキル、
(ii)(C1−C6)アルコキシル、
(iii)(C2−C6)アルケニル、
(iv)(C2−C6)アルキニル、
(v)(C4−C10)シクロアルキル、
(vi)フェニル、
(vii)フェニルチオ、
(viii)ニトロ、ハロ、(C1−C6)アルカノイルオキシ、またはカルボシクロアルコキシによって置換されたフェニル、および
(ix)式−Z−R13(式中、ZおよびR13は上に定義される通り)によって表される基;ならびに
(g)以下の式の基:
【0050】
【化8】
【0051】
式中、A3およびA4は、それぞれ独立して、以下のものから選択されるもの:
(i)結合、
(ii)−O−、
(iii)−S(O)t−(式中tは0〜2)、
(iv)−C(R17)2−、式中、各R17置換基は、それぞれ独立して、水素、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)ヒドロキシ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシから選択されるもの、または両R17置換基がともに0、
(v)−N(R18)2−、式中、各R18置換基は、それぞれ独立して、水素;(C1−C6)アルキル;(C2−C6)アルケニル;(C2−C6)アルキニル;(C4−C10)シクロアルキル;フェニル基;ニトロ、ハロ、(C1−C6)アルカノイルオキシによって置換されたフェニル基;または両R18置換基はともに(C4−C10)シクロアルキル;
R16は、上に定義したR12またはR13;
およびuは0〜4である。
【0052】
本発明のグリコペプチド抗生物質は、米国特許第5,840,684号に記載されたものの各々を包含するものであり、該明細書は参照によりその全体を本明細書中に援用される。
【0053】
オリタバンシン(N−(4−(4−クロロフェニル)ベンジル)A82846BおよびLY333328ともいう)は、以下の式IIIを有する。すなわち、
【0054】
【化9】
【0055】
本明細書中に列挙されたアルキル置換基は、置換または非置換、直鎖、分岐鎖の特定の長さを有する炭化水素を示す。用語「アルケニル」とは、置換または非置換、直鎖、分岐鎖を有し、本明細書中に特定の長さを有するアルケニル鎖のことをいう。用語「アルキニル」とは、置換または非置換、直鎖、分岐鎖を有し、本明細書中に特定の長さを有するアルキニル鎖のことをいう。
【0056】
本明細書中に列挙されたアルコキシ基の置換基は、酸素架橋によって結合した特定の長さのアルキル鎖のことをいう。用語「アルケノキシ」とは、酸素原子に結合した特定の長さのアルケニル鎖のことをいう。
【0057】
用語「多環アリール(multicyclic aryl)」とは、安定した飽和または不飽和、置換または非置換の9ないし10員有機融合二環式環(organic fused bicyclic ring);安定した飽和または不飽和、置換または非置換の12ないし14員有機融合三環式環(organic fused tricyclic ring);あるいは安定した飽和または不飽和、置換または非置換の14ないし16員有機融合四環式環(organic fused tetracyclic ring)のことをいう。二環式環は、0ないし4つの置換基を持つものであってもよく、三環式環は0ないし6つの置換基を持もつもであってもよく、さらに四環式環は0ないし8つの置換基を持つものであってもよい。典型的な多環式のアリールとして、フルオレニル、ナフチル、アントラニル、フェナントラニル、ビフェニレン、およびピレニルが挙げられる。
【0058】
用語「ヘテロアリール」は、S、O、およびNから選択されるヘテロ原子を有する安定した飽和または不飽和、置換または非置換の4ないし7員の有機単環;S、O、およびNから選択される1ないし2つのヘテロ原子を有する安定した飽和または不飽和、置換または非置換の9ないし10員の有機融合二環式環;あるいはS、O、およびNから選択されるヘテロ原子を有する安定した飽和または不飽和、置換または非置換の12ないし14員の有機融合三環式環を表す。これらの環の窒素および硫黄原子は任意に酸化され、また窒素ヘテロ原子は任意に四級化される。単環式環には0ないし5つの置換基を有するものであってもよい。二環式環は0ないし7つの置換基を有するものであってもよい。また、三環式環は0ないし9つの置換基を有するものであってもよい。典型的なヘテロアリールとして、キノリル、ピペリジル、チエニル、ピペロニル、オキサフルオレニル、ピリジル、およびベンゾチエニル、およびその他のものが挙げられる。
【0059】
用語「(C4−C10)シクロアルキル」は、非置換、またはアルキニルおよびフェニル等の置換基によって置換することが可能な4ないし10個の炭素原子を有する置換基、例えばシクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、およびシクロへプチルを包含する。この用語もまた、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニル等のC5ないしC10シクロアルケニル基を包含する。用語「((C4−C10))シクロアルキル」は、さらにビシクロペンチル、ビシクロヘキシル、ビシクロヘプチル、およびアダマンチル等の二環式および三環式シクロアルキルを包含する。
【0060】
用語「アルカノイルオキシ」は、酸素架橋を介して結合したアルカノイル基を表す。これらの置換基は、特定の長さの置換または非置換、直鎖または分岐鎖であってもよい。用語「シアノ−(C1−C6)アルコキシ」は、シアノ部分が結合している1ないし6個の炭素原子を有する飽和または不飽和、直鎖または分岐のアルコキシル鎖を表す。
【0061】
用語「二価(C1−C6)アルキル」は、1ないし6つの炭素原子を有する非置換または置換、直鎖または分岐の二価アルキル鎖を表す。典型的な二価(C1−C6)アルキル基として、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、sec−ブチレン、t−ブチレン、ペンチレン、ネオペンチレン、およびヘキシレンが挙げられる。そのような二価の(C1−C6)アルキル基を、アルキル、アルコキシ、およびヒドロキシ等の置換基で置換してもよい。
【0062】
用語「二価(C2−C6)アルケニル」は、2ないし6個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルケニル鎖を表す。典型的な二価の(C2−C6)アルケニルとして、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、およびその他のものが挙げられる。
【0063】
用語「二価の(C2−C6)アルキニル」は、2ないし6個の炭素原子を有する直鎖または分岐の二価アルキニル鎖を表わす。典型的な二価の(C2−C6)アルキニル、エチニルエン、1つのプロピニルエン、2つのプロピニルエン、1つのブチニルエン、2つのブチニルエンおよびその他同種のものを含んでいる。
【0064】
用語「ハロ」はクロロ、フルオロ、ブローモあるいはヨードを表わす。
【0065】
用語「ハロ−(C1−C6)アルキル」は、各炭素に結合した0ないし3個のハロゲン原子を有する1ないし6個の炭素原子を持つ直鎖または分岐のアルキル鎖を表わす。
【0066】
典型的なハロ−アルキル基(C1−C6)として、クロロメチル、2−ブロモエチル、1−クロロイソプロピル、3−フルオロプロピル、2,3−ジブロモブチル、3−クロロイソブチル、ヨード−t−ブチル、トリフルオロメチル、およびその他のものが挙げられる。
【0067】
用語「ハロ―(C1−C6)アルコキシル基」は、各炭素に結合した0ないし3個のハロゲン原子を有する1ないし6個の炭素原子を持つアルコキシル基に直鎖または分岐鎖を表わす。
【0068】
典型的なハロ−アルコキシ基(C1−C6)として、クロロメトキシ、2−ブロモエトキシ、1−クロロイソプロポキシ、3−フルオロプロポキシ、2,3−ジブロモブトキシ、3−クロロイソブトキシ、ヨード−t−ブトキシ、トリフルオロメトキシ、およびその他のものが挙げられる。
【0069】
用語「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」は、2ないし10環員を有する飽和基を包含し、複素環が、酸素、硫黄、および窒素から選択されたヘテロ原子を含むもので、例としてピペラジニル、モルホリノ、ピペルジル、メチルピペルジル、アゼチジニル、およびアジリジニルが挙げられる。
【0070】
オリタバンシン等の本発明のグリコペプチド抗生物質は、それ自体で使用することが可能であり、あるいは医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、またはそれらの混合物の形態で用いられてもよい。用語「医薬的に許容し得る塩(pharmaceutically acceptable salt)」とは、無機および有機酸に由来した無毒な酸付加塩のことをいう。
【0071】
酸付加塩を形成するために一般に使用される酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸、およびp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、およびその他の有機酸である。塩基付加塩として、アンモニウムあるいはアルカリもしくはアルカリ土類金属水酸化物等の無機塩類、炭酸塩、重炭酸塩、およびその他のものに由来する塩基付加塩が挙げられる。したがって、この発明の塩類を調製する際に有用なそのような塩類として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、およびその他のものが挙げられる。カリウムおよびナプタラムの形態が特に好ましい。
【0072】
認識しておくべきことは、この発明の任意の塩の一部を形成する特定の対イオンは、全体として塩が薬理学的に(pharmacologically)許容されるものであり、または対イオンが全体として塩に対して好ましくない性質に貢献するものでない限り、重大な性質ではないということである。
【0073】
オリタバンシンおよび類似体を含むグリコペプチド抗生物質の調製のための手段は、例えば米国特許第5,840,684号(その全体を参照により本明細書に援用する)で見出すことが可能である。
【0074】
オリタバンシンを含む本発明のグリコペプチド抗生物質を、プロドラッグの形態で使用することも可能であり、該プロトドラッグとして、国際特許出願PCT/US2008/057841(その全体を本明細書に援用)に開示されているような少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)部分を有するグリコペプチド抗生物質等が挙げられる。グリコペプチドに結合したポリ(エチレングリコール)基の存在は、水性溶媒中でのグリコペプチド抗生物質のより高い可溶性と関連する。水性溶媒中でグリコペプチド抗生物質のより高い濃度を達成することで、処方が改善され、注射量、輸液量、または投与量が少なくなる。さらに、ポリ(エチレン)グリコールの存在は、抗生物質、注射、輸液、または投与の過程で構成物質のマスキングを可能にする。これら二つのファクターの組み合わせと、ポリ(エチレングリコール)に関連した毒性がないこととによって、グリコペプチド抗生物質の投与の過程で観察される副作用を減少させることが可能になる。好ましい実施形態では、そのようなプロドラッグのポリ(エチレングリコール)は、平均分子量が900g.mol−1以上である。
【0075】
本明細書中に用いられるように、「被検体(subject)」とは、ヒト、類人猿、馬、雌牛、羊、ヤギ、犬、および猫を含む哺乳類あるいは鳥類種等の動物のことをいう。被検体として、クロストリジウム・ディフィシレ感染症を有するもの、クロストリジウム・ディフィシレ感染症を発症するリスクのあるもの、クロストリジウム・ディフィシレ感染症を発症するリスクが一般の人々よりも高いものが考えられる。クロストリジウム・ディフィシレ感染症のリスクが高い被検体の例として、抗微生物治療によって正常な腸内細菌叢が阻害される細菌感染症の治療を受ける患者、免疫機能障害(例えば免疫グロブリン欠損症、脾臓機能不全、脾摘、HIV感染症、白血球機能、異常ヘモグロビン症)を持つ患者、高齢者(Loo et al., 2005. NEJM 353:2442)、ある悪性腫瘍(例えば、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、リンパ腫)を有する患者、職業上のリスクが高い人々(例えば、消防、水道、衛生、警察、医療、および研究所職員、病院職員等の公共サービス従事者)、閉鎖集団の人々(例えば、刑務所、軍隊、養護施設)、ならびに細菌感染症に対するそれらの感受性を増強する免疫欠乏を有する他の人々が挙げられる。
【0076】
本発明の方法は、インビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、またはエクスビボ(ex vivo)で実施される方法を含む。インビトロの方法の例として、限定されるものではないが、細胞培養等の実験室設定(laboratory setting)内で行われる方法、研究所もしくは病院の機器および器具等の不活性体、カンタートップおよびベンチトップ等の表面等で実施される方法が挙げられる。エクスビボの方法の例として、限定されるものではないが、手等のヒトの体表面上で実施される方法が挙げられる。
【0077】
本発明の方法は、1種類以上のグリコペプチド抗生物質が用いられる方法と、1以上のグリコペプチド抗生物質を含む医薬組成物が用いられる方法との両方が含まれる。本発明の医薬組成物は、1種類以上のグリコペプチド抗生物質と、担体、希釈剤、および賦形剤の1種類以上とを含む。適当な担体、希釈剤、および賦形剤は、当業者に周知であり、塩類、緩衝食塩水、デキストロース(例えば、5%デキストロース水溶液)、水、グリセロール、エタノール、プロピレングリコール、ポリソルベート−80(Tween80(商標))、ポリ(エチレン)グリコール300および400(PEG300および400)、PEG化ヒマシ油(例えばクレモホール(Cremophor)EL)、ポリキサマー407および188、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体(HPCD((2−ヒドロキシプロピル)−シクロデキストリンを含む)、および(2−ヒドロキシエチル)−シクロデキストリン(例えば米国特許出願公報20060194717を参照せよ)、親水性および疎水性担体、ならびにそれらの組成物が挙げられる。疎水性担体として、例えば、脂肪乳剤、脂質、PEGリン脂質、ポリマーマトリクス、生体適合性ポリマー、リポスフェア、小胞、粒子状物質、およびリポソームが挙げられる。用語は、具体的には細胞培養培地を除外する。
【0078】
製剤に含まれる賦形剤は、例えば薬物の性質および投与方法に依存して、異なる目的を有する。一般に使用される賦形剤の例として、制限無しに、安定化剤、可溶化剤および界面活性剤、バッファ、酸化防止剤および保存剤、張度作用薬、充填剤、平滑剤、乳化剤、懸濁剤または粘性剤、不活性希釈剤、増量剤、崩壊剤、結着剤、湿潤剤、平滑剤、抗菌剤、キレート剤、甘味料、芳香剤、香味料、着色剤、投与助剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0079】
組成物は、一般的な担体および賦形剤を含むものであってもよく、例えばコーンスターチまたはゼラチン、ラクトース、スクロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、第二リン酸カルシウム、塩化ナトリウム、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、および澱粉グリコール酸ナトリウムである。
【0080】
使用される特定の担体、希釈剤、または賦形剤は、有効成分が適用されている手段および目的に依存する。
【0081】
医薬的に許容し得る賦形剤には、組成物に対して血液との適合性を与える等張化剤も含まれる。等張化剤は、注射可能な製剤において特に望ましい。
【0082】
本発明の医薬組成物およびグリコペプチド抗生物質を、例えば経口、舌下、鼻腔内、眼内、直腸、経皮、粘膜、局所、または非経口投与用に製剤化してもよい。非経口投与形態として、制限なしに、内皮、皮下(s.c.、s.q.、sub-Q、Hypo)、筋肉内(i.m.)、静脈(i.v.)、腹膜内(i.p.)、動脈内、髄内、心臓内、関節腔内(関節)、滑液包内(滑液域)、脳内、髄腔内、およびクモ膜下(髄液)が挙げられる。そのような投与を実施するために、非経口的注射または薬剤注入製剤に役立つ既知の装置はいずれも用いることができる。
【0083】
非経口投与のための製剤を、水溶性または非水溶性の等張無菌注射溶液、懸濁剤、または脂肪乳剤の形態とすることができる。注射に使用される非経口的形態は、容易な注入可能性(syringability)が存在する程度まで流動性であるべきである。これらの溶液または懸濁剤を、無菌の濃縮液体、粉体、または顆粒から調製することができる。
【0084】
非経口製剤で使用される賦形剤として、限定されるものではないが、安定化剤(例えば、炭水化物、アミノ酸およびポリソルベート、例えば5%デキストロース)、可溶化剤(例えばセトリミド、ナトリウム・ドクセート、グリセロールオノオレート、(ポリビニルピロリドン)(PVP)、およびポリエチレングリコール(PEG))、界面活性剤(例えばポリソルベート、トコフェロールPEG琥珀酸エステル、ポロキサマー、およびクレモホア(Cremophor)(登録商標)、バッファ(例えば酢酸塩、シトラート、リン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、琥珀酸エステル、アミノ酸、およびその他のもの)、酸化防止剤および防腐剤(例えばBHA、BHT、ゲンチシン酸、ビタミンE、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、および亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、チオグリセロール、チオグリコール酸塩等の含硫黄剤)、等張剤(生理的適合性を調整するために)、懸濁剤、または粘性剤(抗菌剤)(例えばチメロサール、)、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、およびクロロブタノール)、キレート剤、および投与助剤(例えば局所麻酔剤、抗炎症薬、抗凝固薬剤、延長のための血管収縮剤および組織透過性を増加させる薬剤)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
疎水性の担体を使用している非経口的製剤として、例えば、脂質、リポスフェア、小胞、粒子、およびリポソームを含んでいる脂肪乳剤および製剤が挙げられる。脂肪乳剤には、上記の賦形剤に加えて、脂質および水の相、乳化剤(例えばリン脂質、ポロキサマー、ポリソルベートと(ポリオキシエチレン)ヒマシ油)等の添加物、および浸透剤(例えば塩化ナトリウム、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、およびブドウ糖)が含まれる。リポソームには、天然または誘導されたリン脂質および任意の安定化剤、例えばコレステロールが含まれる。
【0086】
別の実施形態では、グリコペプチド抗生物質の非経口単位剤形は、適当な担体内、気密密閉されたアンプル内、または事前に充填された無菌の注射器内に入ったグリコペプチド抗生物質のすぐに使用できる溶液である。適当な担体は、上記の賦形剤のいずれかを含む。あるいは、本発明のグリコペプチド抗生物質の単位投薬量を、送達時に適当な医薬として許容し得る担体(例えば滅菌水)に含まれる即席的な再構成のための濃縮された液体、粉状または粒状とすることができる。前述の賦形剤に加えて、粉体の形態には、任意に増量剤(例えばマンニトール、グリシン、ラクトース、蔗糖、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチル澱粉、フィコールとゼラチン)、凍結保護剤、および溶解保護剤が含まれる。
【0087】
静脈(IV)使用では、本発明の医薬組成物の滅菌製剤と可溶化剤または界面活性剤を含む任意の一つ以上の添加物とを、一般的に用いられる静脈内補液のいずれかに溶解または懸濁し、輸液によって投与することができる。静脈内補液として、制限なしに、生理的塩類溶液、食塩加リン酸緩衝液、5%のブドウ糖液、またはリンゲル(登録商標)液が挙げられる。
【0088】
筋肉内製剤では、本発明の医薬組成物の滅菌製剤を、注射用水(WFI)、生理的塩類溶液、または5%デキストロース液等の医薬用希釈剤に溶解して投与することができる。医薬組成物の適切な不溶性の形態を、水性塩基または医薬的に許容し得る油ベース(例えばオレイン酸エチル等の長鎖脂肪酸のエステル)の懸濁液として調製して投与することが可能である。
【0089】
経口使用に関しては、経口医薬組成物を、医薬組成物の治療有効量を含む単位投薬量の形態で作ることが可能である。錠剤およびカプセルのような固形剤は、特に有用である。徐放または経腸的被覆製剤もまた考え出すことが可能である。小児科および老人科を対照にした用途に関しては、懸濁液、シロップ剤、および咀嚼錠が特に適している。経口投与に関しては、医薬組成物は、錠剤、カプセル、懸濁剤または液体シロップ剤、あるいはエリキシル、ウェハー、およびその他の形態になっている一般の経口投与に関しては、限定されるものではないが、賦形剤または添加物として、不活性希釈剤、充填材、崩壊剤、結着剤、湿潤剤、平滑剤、甘味剤、香料、着色剤、および防腐剤が挙げられる。
【0090】
治療的な目的のために、錠剤およびカプセルは、グリコペプチド抗生物質に加えて、例えば、以下のような従来の担体を含むことができる。すなわち、不活性希釈剤(例えば、ナトリウムおよび炭酸カルシウム、ナトリウムおよびリン酸カルシウム、およびラクトース)、結着剤(例えば、アラビアゴム、澱粉、ゼラチン、蔗糖、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ソルビトール、トラガカントメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびエチルセルロース)、充填材(例えばリン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシ澱粉、ソルビトール、または蔗糖)、湿潤剤、平滑剤(例えば、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、ワックス、油、およびコロイドシリカ、シリコン流体またはタルク)、崩壊剤(例えばジャガイモ澱粉、コーンスターチ、およびアルギン酸)、調味料(例えばハッカ、ウインターグリーン油、果物調味料、サクランボ、ブドウ、バブルガム、およびその他のもの)、ならびに着色剤である。担体として、胃腸管での吸収を延ばすモノステアリン酸グリセリンまたはグリセリルジステアリン酸等のコーティング賦形剤を挙げることが可能である。
【0091】
特定経口製剤では、本発明のグリコペプチド抗生物質は、グリコペプチド抗生物質、ゼラチン、酸化鉄、ポリエチレングリコール、二酸化チタンおよび1つ以上の他の非活性成分を含むカプセルの形態であってもよい。カプセル中の適当な量のグリコペプチド抗生物質は、約10ないし約3000mgまでの範囲であってもよく、好ましい量として、100,125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1500mgのグリコペプチド抗生物質が挙げられる。経口製剤はまた、ポリエチレングリコール(PEG)を含むものであってもよく該PEGは、約PEG200ないし約PEG8000、好ましくは約PEG400ないし約PEG6000である。
【0092】
経口液状製剤(一般に、水性または油性溶液、懸濁液、エマルジョン、またはエリキシルの形状)は、従来の添加物(懸濁化剤、乳化剤、非水溶薬剤、防腐剤、着色剤、および香料)が挙げられる、液状製剤用の添加物の例として、アカシア、扁桃油、エチルアルコール、椰子油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、水素添加された食用脂、レシチン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、メチルまたはp‐ヒドロキシ安息香酸プロピル(プロピレングリコール、ソルビトール、あるいはソルビン酸)が挙げられる。
【0093】
局所使用のために、本発明の医薬組成物を皮膚または鼻咽喉の粘液膜に適用される適切な形状で調製することも可能であり、クリーム、軟膏、点鼻液、液体スプレーまたは吸入抗原、トローチ剤、または咽喉塗布剤の形態をとることができる。そのような局所用の製剤は、さらにジメチルスルホキシド(DMSO)等の化合物を含むことができ、それによって有効成分の表面浸透を促進する。眼または耳への適用を目的として、医薬組成物は疎水性または親水性ベースで、軟膏、クリーム、ローション剤、塗布剤、または粉剤として処方される液体または半流動体の形状で提供することができる。直腸内適用のために、医薬組成物は、従来の担体、例えばカカオ脂、ワックスまたは他のグリセリドと混合される坐薬の形で投与されることができる。
【0094】
本発明の方法で使用される好ましい静脈内(IV)製剤では、オリタバンシンの投与量は、好ましくは約100mgから2000mgの間であり、好ましくは約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、450、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500mgまたはそれ以上であり、IV輸液により、約60、90、120分以上にわたって、6、12、18、または24時間毎に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日、またはそれ以上の日数をかけて、投与する。この実施形態では、オリタバンシンを注射用蒸留水(WFI)に再調製してもよい。さらに、この実施形態では、オリタバンシンを5%デキストロース水(D5W)に希釈して、全量を少なくとも250mlにしてもよい。好ましくは、結果として得られる濃度は、200mgの服用量では0.8mg/ml、250mgの服用量では1.0mg/ml、および300mgの服用量では1.2mg/mlである。
【0095】
本発明の方法で使用される好ましい経口製剤では、投与されるオリタバンシンの経口投与量は、被検体の体重1kgあたり約0.5ないし約100mgであり、該被検体に対して、経口製剤を、より好ましくは体重1kgあたり約5ないし約30mg、例えば約5、10、15、20、25、および30mg投与する。経口投与による処置の過程は、1回服用または複数回服用であってもよい。複数回服用を経口投与によっておこなう場合、投与を一日に1回、2回、3回、またはそれ以上の回数行ってもよい。経口処置の過程は、1日以上にわたるものであってもよく、例えば2、3、4、5、6、7、8、9あるいは10日以上であってもよい。一実施形態では、オリタバンシンを10%ヒドロキシプロピル・ベータ−シクロデキストリンに処方することが可能である。さらなる実施形態では、オリタバンシンは85%ポリエチレングリコール400(PEG400)含有の滅菌水に処方してもよい。経口製剤は、被検体に飲ませる液体の形態、オリタバンシン製剤を含むカプセルの形態、あるいは経口製剤の投与のための当業者に公知の他の手段であってもよい。
【0096】
本発明の方法の各々は、追加の抗菌剤をグリコペプチド抗生物質とともに含ませることで、または医薬組成物に含有されたかたちで含ませることによって、実施することも可能である。そのような抗菌剤は、各々の方法で使用し得る1種類以上のグリコペプチド抗生物質に追加される。付加的な抗菌物質として、リファマイシン、スルホンアミド、ベータラクタム、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、アミノ配糖体、マクロライド、ストレプトグラミン、キノロン、フルオロキノロン、オキサゾリジノンエステル、およびリポペプチドが挙げられる。特に、テトラサイクリン、テトラサイクリン誘導抗菌剤、グリシルグリシン、グリシルグリシン誘導抗菌剤、ミノサイクリン、ミノサイクリン誘導抗菌剤、オキサゾリジノン抗菌剤、アミノグリコシド抗菌剤、キノロン抗菌剤、バンコマイシン、バンコマイシン誘導抗菌剤、テイコプラニン、テイコプラニン誘導抗菌剤、エレモマイシン、エレモマイシン誘導抗菌剤、クロロエレモマイシン、クロロエレモマイシン誘導抗菌剤、およびダプトマイシン誘導抗菌剤が好ましい。
【0097】
用語「投与、服用(量)、回分(dose)」、「単位服用、投与(量)(unit dose)」、「単位投与量(unit dosage)」、または「有効量(effective dose)」は、所望の治療効果を生ずるために所定量の活性成分を含む物理的に不連続な単位をいう。これらの用語は、本明細書中に開示された方法に述べられた目的を達成するのに十分な治療上効果的な量と同義である。
【0098】
本発明のグリコペプチド抗生物質の治療上有効な量、および本明細書中に開示された方法に述べられたゴールを達的するのに十分な量は、被検体の健康状態、被検体の症状の重症度、薬剤を投与するために使用される製剤および手段、ならびに実施される方法に依存して、常に変動する。所定の被検体に対する特定の服用量は、主治医の判断によって通常設定される。しかしながら、オリタバンシンを含む本発明の治療上効果的でかつ、または十分な量のグリコペプチド抗生物質は、製剤形態にかかわらず、通常、約0.5mg/kg体重ないし100mg/kg体重、好ましくは1ないし50mg/kg、より好ましくは5ないし30mg/kg、好ましくは1ないし50mg/kg、より好ましくは5ないし30mg/kgである。等しく好ましい実施形態では、単回の投薬または低頻度の投薬に用いられる治療上有効な量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35mg/kg体重である。いくつかの状況では、0.5kg/kg体重未満または100mg/kg体重を上回る服用量が効果的であると思われる。
【0099】
適当な投与頻度は、投与が処置、予防処置または予防策向けかどうかによって異なってもよい。クロストリジウム・ディフィシレに感染した被検体、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の処置、予防処置、または予防策のための服用量の投与頻度として4、3、2、または1回の投与を、毎日、一日毎、三日毎、四日毎、五日毎、六日毎、七日毎、八日毎、九日毎、十日後、二週間毎、毎月、隔月が挙げられる。本発明のいくつかの方法および実施形態では、1回の服用または低頻度の服用(例えば、2、3、4、5、または6回の服用)は、本明細書中にクレームされた方法の一定の目的を達成するのに十分である。他の実施形態では、処置の過程は、多くの日数にわたる多くの服用回数からなる投与、例えば、毎日、4、3、2、または1回の服用を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14あるいは15以上日行うことを必要とするものであってもよい。
【0100】
投与の手段によって、投与量を全て一度で投与することが可能であり、例えばカプセル状の経口製剤等によって全てを一度に投与すること、あるいは静脈内投与等によりゆっくりと時間をかけて投与することが可能である。投与をより遅く行うための手段に対しては、投与期間を分オーダー、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または120分以上とすることができ、あるいは一定の時間、例えば約0.5 1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5時間以上とすることができる。
【0101】
本明細書中に用いられるように、用語「抑制する(inhibit)」、「抑制(の、している)(inhibiting)」および「抑制(inhibition」)は、それらの通常かつ慣習的な意味を有しており、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での成長の抑制、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での機能の抑制、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での増殖の抑制、クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成の抑制、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長の抑制、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽の抑制、およびクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長の抑制の1つ以上が含まれる。そのような抑制は、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質が投与されていない被検体と比較して、特定の活性が約1%ないし約100%抑制されることである。好ましくは、抑制は、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質が投与されていない被検体と比較して、特定の活性が約100%、99%、98%、97%、96%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、または1%の抑制されることである。本明細書中に用いられるように、「胞子(spore)」は従来通りに用いられている用語「胞子(spore)」および「内生胞子(endospore)」の両方を指す。
【0102】
本明細書中で用いられるように、用語「処置(の、している)(treating)」および「処置(treatment」)は、それらの通常かつ慣習的な意味を有しており、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ感染症の症状の改善、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ感染症の症状の再発の阻害または改善、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の症状である血行静止の重症度および/頻度の減少、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型での増殖の減少または抑制、クロストリジウム・ディフィシレ胞子形成の抑制、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長の抑制、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽の抑制、ならびに被検体のクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長の抑制の1つ以上が含まれる。
処置は、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質が投与されていない被検体と比較して約1%ないし約100%で、改善、阻害、縮小、減少、または抑制することを意味する。好ましくは、改善、阻害、縮小、減少、または抑制することは、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質が投与されていない被検体と比較して、約100%、99%、98%、97%、96%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、または1%の改善、阻害、縮小、減少、または抑制がなされることである。
【0103】
本明細書中に用いられるように、用語「予防(の、する)(preventing」)および「予防、予防策(prevention)」は、それらの通常かつ慣習的な意味を有しており、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレのコロニー形成の予防、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ母集団の成長増加の予防、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレ胞子の成長、発芽、または伸長の予防、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレの胞子形成の予防、被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレによって引き起こされる疾患の予防、ならびに被検体におけるクロストリジウム・ディフィシレによって引き起こされる疾患の症状の予防の1つ以上が含まれる。本明細書中に用いられるように、予防策は、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質の投与後に、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、または50日以上持続する。
【0104】
本明細書中に用いられるように、「予防処置(prohylaxis)」は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレによる増殖性感染または進行性感染の発生を抑制することを含み、予防処置は、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質の投与後に、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、または50日以上持続する。クロストリジウム・ディフィシレ感染症による増殖性感染または進行性感染の発生の抑制は、被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の重症度が、本発明の医薬組成物またはグリコペプチド抗生物質が投与されていない被検体と比較して、約1%ないし約100%減少することを意味している。好ましくは、重症度の減少は、重症度が約100%、99%、98%、97%、96%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、または1%減少することである。感染症の重症度は被験体の中にあるクロストリジウム・ディフィシレの量、クロストリジウム・ディフィシレにおいて検出することができる延時間、被検体、または他の要因中のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の症状の重症度にもとづくと考えられる。
【0105】
本明細書中で用いられるように、用語「隔週(の)(bi-weekly)」は、13〜15日毎の頻度のことをいい、また「毎月(の)」は28〜31日毎の頻度のことをいい、用語「隔月(の)(bi-monthly)」は、58〜62日毎の頻度に言及している。
【0106】
本明細書中に用いられるように、用語「接触(している、させる)(contacting)」は、細菌細胞と本発明のグリコペプチド抗生物質の分子とを、該グリコペプチド構成物質が細菌細胞に対して影響を及ぼし得るほどに、十分に近接させることを、おおまかに言及している。グリコペプチド抗生物質を細菌細胞の位置に輸送することが可能であり、またはグリコペプチド抗生物質を、細菌細胞が接触へと移動または接触させられる位置に置かれることが可能である。当業者は、用語「接触(している、させる)(contacting)」ことが、物理的な相互作用を必要としない相互作用と同様に、グリコペプチド抗生物質と細菌細胞との間の物理的な相互作用を含んでいることを、理解するだろう。本明細書中に用いられるようにとクロストリジウム・ディフィシレはすべてのクロストリジウム・ディフィシレ株、種および亜種を指す。
【0107】
本明細書中に用いられるように、クロストリジウム・ディフィシレ(C.difficile)とは、すべてのクロストリジウム・ディフィシレ株、種、および亜種のことをいう。PCRリボタイピング(PCR ribotyping)を、異なるクロストリジウム・ディフィシレ株、種、および亜種の識別に用いることが可能である。この発明の範囲内に包含されるクロストリジウム・ディフィシレ株として、例としてのみ、クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ001、106および027が挙げられる。
実施例
実施例1
これらの研究では、クロストリジウム・ディフィシレ胞子に対する、メトロニダゾール(MET)、バンコマイシン(VAN)、およびオリタバンシン(ORI)の活性を3通りの実験的方法、すなわち螺旋勾配評価項目分析、寒天をベースとする培養、および位相差顕微鏡法を用いて評価した。
クロストリジウム・ディフィシレ胞子調製
クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ001、106および027を、コロンビア(Columbia)血液寒天培地上に接種を播種し、嫌気的条件下(30℃)で10日間培養した。増殖成長したものを滅菌食塩水に回収し、等量の100%エタノールで1時間にわたりアルコールショック処理した。アルコールショック済みの胞子懸濁液をボルテックスにより混合し、室温で5分間超音波処理した。クロストリジウム・ディフィシレ・位相差で明るい(phase bright)(発芽しなかった)胞子を、50%(v/v燐酸塩緩衝食塩水中)ウログラフイン(Urografin)370(シェーリング(Schering)、ドイツ))に積層して密度勾配遠心分離(4000rpm、15分)をおこなうことで、位相差で暗い(phase dark)(発芽した)胞子および細胞残屑から分離した。密度勾配遠心分離ステップを2回おこなった。精製された胞子のペレットを滅菌食塩水に再懸濁した(1枚のコロンビア血液寒天培地プレートあたり1mL回収)。位相差で明るい(phase bright)胞子、位相差で暗い(phase dark)胞子、および栄養増殖細胞の割合を、位相差顕微鏡法(100倍拡大)を用いて記録した。
螺旋勾配評価項目分析
抗菌剤原液を、脱イオン水(メトロニダゾール、バンコマイシン)±0.002%ポリソルベート−80(オリタバンシン)で調製した。スパイラルプレーター(WASP2、ドン・ホイットリー・サイエンティフィック(Don Whitley Scientific)、英国)を用いて、事前に乾燥(37℃、20分)させたブラジール(Brazier)の寒天(pH7)の表面に、抗生物質の対数勾配を適用した。表面に適用された抗菌剤を有する寒天を室温で1時間放置し、抗菌剤を寒天に吸着させた。クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖培養および胞子(〜107cfu/mL)を、滅菌綿球を用いて寒天表面(図1)に播種し、嫌気的条件下(37℃、24時間)で培養した。D値を測定(mmで)し、MIC(Paton, J. H. 1990. Int J Exp Clin ChemotheR9, 31-38)に変換した。
【0108】
クロストリジウム・ディフィシレ胞子に対するORI MICは栄養増殖細胞に対するものよりも5〜13倍低かった(図2)。METおよびVAN MICは、クロストリジウム・ディフィシレ栄養増殖細胞および胞子(データ示さず)に関しては、実質的に異ならなかった。
寒天培養
クロストリジウム・ディフィシレ胞子(〜300cfu)の標準接種材料を、3重に1分間および30分間にわたってメトロニダゾール(9.3mg/L)、バンコマイシン(350mg/L)、またはオリタバンシン(350mg/L)にさらした。抗菌剤・胞子溶液を混合し、滅菌脱イオン水で希釈し(サブMICに)酢酸セルロースフィルター(CAF、0.45μm)上で濾過し、洗浄した。CAFを、ブラジール寒天(pH7)+5mg/Lリゾチーム上に移し、その後嫌気的条件下(38℃、48時間)で培養し、クロストリジウム・ディフィシレ胞子率(対照群と比較)を測定した。オリタバンシンによる処理の後、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の再生はみられなかった(図3)。クロストリジウム・ディフィシレ胞子およびCAFへのオリタバンシンの結合は、確認できなかった(データ示さず)。
位相差顕微鏡法
クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子(〜107cfu/mL)の標準接種材料を、0.1、1、または10mg/L0.1、1あるいは10mg/Lのメトロニダゾール、バンコマイシン、またはオリタバンシンを取り込んだブラジールのブロス培地(pH7)30mlに懸濁した。クロストリジウム・ディフィシレ胞子もまた、10mg/Lの抗菌剤で2時間処理し、滅菌PBSで3回洗浄し、ブラジールのブロス培地(pH7)に再懸濁して培養した。試料を、2、4、6、24、32および48時間で取り出した。スライドを位相差顕微鏡法下で観察し、位相差で明るい(phase bright)胞子、位相差で暗い(phase dark)胞子、および栄養増殖細胞の割合を記録した(図4)。
【0109】
統計分析を、逆正弦変換を用いて割合データを変換し、ウィルコクソンの符号付順位検定を用いて分析することで、おこなった。P<0.05は、統計的に有意であると考えた。上掲MIC濃度の全ての抗菌剤がクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑えたが、その発芽は抑えられなかった。事前にオリタバンシン処理したクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長は、対照よりもかなり低く(P=0.058)、またMETあるいはVAN処理した胞子よりも有意に低かった(P<0.05)。
コメント
栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレと胞子とに対するオリタバンシンMICの差の大きさをマークして再現可能であった(MICの測定を6回おこなった)。そのような現象が以前に報告されたとは考えられない。インビボ(in vitro)で、このことは、オリタバンシン濃度がクロストリジウム・ディフィシレ胞子伸長に対して準抑制的になる前に、腸ミクロフロラ(クロストリジウム・ディフィシレに対して抑制性である)のより大きな回復を潜在的に可能にすることでCDIに対する既存の抗菌療法に優る利点をオリタバンシンに与えることができた。
【0110】
位相差顕微鏡法を用いた胞子発芽/伸長実験によって、上掲MICレベルで評価した全ての抗菌剤が、クロストリジウム・ディフィシレ胞子伸長を抑制したが、発芽自体は抑制することが示された。おもしろいことに、事前に10mg/Lオリタバンシン処理したクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子の伸長は、徹底的に洗浄したにもかかわらず、著しく阻害された。この減少は、メトロニダゾールまたはバンコマイシンによる前処理を受けた胞子では観察されなかった。ペプチド抗菌剤ナイシンが枯草菌とスポロゲネス菌の胞子伸長に抑制することは、既に実証されている(Chan et al. 1996. Appl Environ Microbiol. 62, 2966-2969; Rayman et al. 1981. Appl Environ Microbiol. 41, 375-380)。オリタバンシンは、機能的にナイシン等の脂質II結合抗菌剤と関係がある。また、最近の研究は、薬物がペプチドグリカンの重合に関与するトランスグリコシラーゼ酵素をさらに抑制すると思われることを示している(Wang et al. 2007. 47th ICAAC Chicago. Poster C1-1474)。伸長クロストリジウム・ディフィシレ胞子に対する抑制活性のメカニズムはいぜんとして解明されていないが、胞子に対するオリタバンシンの直接的な結合の結果である可能性が考えられる。
実施例2
遺伝子型で区別可能なクロストリジウム・ディフィシレ株に対するオリタバンシン(ORI)の活性をメトロニダゾール(MET)およびバンコマイシン(VAN)のものと比較した追加の研究を、寒天取り込みおよびブロス微少希釈方法を用いて、実施した。
材料および方法
菌株
33の遺伝子型で区別可能な(PCRリボタイピングによって)分離株をリーズ一般診療所(Leeds General Infirmary)(Leeds, UK)の株ライブラリーから選択した。伝染性クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ001、106および027の代表的な分離物は、パネルに含まれていた。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC29213、エンテロコッカス−フェカーリス(Enterococcus faecalis)ATCC29212およびバクテロイデスフラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC25285の対照分離株を、全てのMIC測定に含ませることで、手順の精度を保証した。
MIC測定
寒天とり込みMICをフリーマン(Freeman)とウィルコックス(Wilcox)の方法(J Antimicrob Chemother 2001; 47: 244-6)に基づいて決定した。すなわち、細菌を、嫌気性のキャビネット(Don Whitley Scientific, Shipley)に置かれたシェドラー(Schaedler)嫌気性ブロス(Oxoid, Basingstoke,UK)で、37℃、24時間、培養した。メトロニダゾールおよびバンコマイシン(Sigma-Aldrich Co., Poole, UK)の原液を脱イオン水に調製した。オリタバンシンを0.002%P80に調製した。抗菌剤溶液をすべて、0.22μmシリンジフィルターによる濾過によって滅菌した。オリタバンシンの濾過は1280mg/Lでおこなった。なぜなら、より低い濃度での濾過は飽和可能な結合に起因する薬物の著しい比例的損失をもたらすからである。抗菌物質(0.03−16mg/L)の倍加希釈を取り込むウイルキンソンチャルグレン寒天培地(Oxoid)を、0.002%P80の存在または非存在および2%溶解馬血液(EE & OLabs, Bonneybridge, UK)の存在または非存在で、調製した。全ての培地および希釈剤を嫌気性のキャビネット内で一晩、前還元した。細菌培養を滅菌食塩水で希釈し、マルチポイントイノキュレーターを用いて寒天取り込み寒天プレートの表面上に播種した(〜104cfu)。寒天とり込みプレートを、48時間、嫌気的条件下で培養した。MIC終点を、明白な増殖(かすかに見られる増殖または単一のコロニーを無視して)が見られない抗菌剤の最低濃度として読み取った。
【0111】
ブロス大量希釈MICを、ジョスミー−ゾマー(Jousimies-Somer)らの方法に従って決定した(Introduction to anaerobic bacteriology. In: Wadsworth-KTL Anaerobic Bacteriology Manual, 6th edn. Belmont, California: Star Publishing Company, 2002; 1-22)。すなわち、ダブルストレングス抗菌剤原液を、ヘミン(5mg/L、Sigma)、NaHCO3(1mg/L、Sigma)、およびビタミンK1(10μL/L、Sigma)を添加したブルセラブロス(シグマ)に調製した。オリタバンシンMIC用のブロス全てが0.002%P80を含んだ(Arhin et al., Abstracts of the Seventeenth European Congress of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, Munich, Germany, 2007. Abstract P-827, p. 102. Eur. Soc. Clin. Micro. Infect. Dis., Basel, Switzerland)。細菌株を最初にシェドラー(Schaedler)嫌気性ブロスで一晩培養し、続いて滅菌前還元添加ブルセラプロセスで1:200(〜3x105cfu/mL)に希釈した。抗菌剤原液を1:2に希釈した後、各株接種材料の添加をおこなった。ブロスを、37℃、48時間、嫌気的条件下で培養した。MIC終点を、対照と比較して増殖が観察されない抗菌剤の最低濃度として読み取った。すべての抗菌剤について、MICを二重反復測定した。
結果
オリタバンシン活性の評価を、寒天とり込みおよびブロス大量希釈法の両方を用いて、33の遺伝子型で区別可能なクロストリジウム・ディフィシレ分離株に対して、おこなった。この研究で用いられるクロストリジウム・ディフィシレ株のパネルは、PCRリボタイプ027の代表的な分離株、すなわち欧州、カナダ、および米国のCDIの最近の流行病に関連した株を含んでいた(Kuijper et al., Curr Opin Infect Dis 2007; 20: 376-83)。遺伝子型によって別個のクロストリジウム・ディフィシレのMICを表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
メトロニダゾール寒天とり込み相乗平均MICは、オリタバンシンMICよりも2ないし5倍低く、バンコマイシンMICよりも2ないし3倍低かった。オリタバンシンとバンコマイシンは、すべての寒天条件に関してクロストリジウム・ディフィシレに対して同様の活性であった。0.002%P80および2%に溶解馬血液を添加したウイルキンソンチャルグレン寒天培地は、クロストリジウム・ディフィシレまたは対照微生物のオリタバンシン(あるいはバンコマイシンおよびメトロニダゾール)MICに対して、著しい影響は及ぼさなかった。さらに、溶解馬血液を含むP80または溶解馬血液を含まないP80のとり込みは、非抗菌剤含有(対照)寒天上でクロストリジウム・ディフィシレまたは対照微生物の増殖に対して、影響を及ぼさなかった。ブロス大量希釈MICは、オリタバンシンに関しては寒天とり込みMICよりも2ないし4倍低くかったが、メトロニダゾールまたはバンコマイシンでは低くなかった。オリタバンシン・ブロス大量希釈相乗平均MICは、それぞれメトロニダゾールおよびバンコマイシンに関するものよりも、それぞれ2倍および5倍低かった。個々のクロストリジウム・ディフィシレ株のブロス大量希釈MICを比較する時、試験した分離株の76%(25/33)がバンコマイシンに対してよりもオリタバンシン(≧2倍希釈)に対して、感受性が高かった。
【0114】
アーヒン(Arhin)ら(Antimicrob Agents Chemother 2008; 52: 1597-603)の最近の報告によれば、オリタバンシンは、P80あるいは2%の溶解馬血液がない状態でのブロス微量希釈感受性分析試験プレート中で溶液から急速に失われた。先の研究では、ブロス微量希釈方法を用いて、P80または溶解馬血液の取り込みにより、ぶどう状球菌および腸球菌のオリタバンシンMICが著しく減少する可能性があることを示唆されている(しかし臨床連鎖球菌分離株ではない)(Antimicrob Agents Chemother 2008; 52: 1597-603; Arhin et al., Abstracts of the Seventeenth European Congress of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, Munich, Germany, 2007. Abstract P-827, p. 102. Eur. Soc. Clin. Micro. Infect. Dis., Basel, Switzerland)。著者らは、臨床連鎖球菌分離株を評価するために用いられる培地中の溶解血液の存在が表面に対するオリタバンシンの結合を無効にする可能性があることを主張した。従って、P80のとり込みによるオリタバンシンMICの減少がさらに促進されるようなことはなかった。さらに、寒天とり込み方法でP80の含有物は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、エンテロコッカスフェカリス(E.faecalis)あるいはエンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)のオリタバンシンMICを減少させない。本研究は、寒天とり込みを用いるオリタバンシン、バンコマイシン、およびメトロニダゾールMICに対するP80および溶解馬血液の影響を評価した。寒天とり込み方法のP80+溶解馬血液の存在は、実質的にオリタバンシンMICを減少せないことから、通性嫌気性菌による従来の寒天ベースのMIC研究が反映され、方法間のMICのばらつきが強調された。さらに、本研究でのP80+溶解馬血液のとり込みは、バンコマイシン(あるいはメトロニダゾール)MICに影響せず、このことはP80または溶解馬血液がある状態でこれらの抗菌物質のMICの変化を実証しなかった先行のインビボ(in vitro)感受性試験も反映する(Blosser et al., Abstracts of the 103rd Meeting of the American Society for Microbiology, Washington, DC, 2003. Abstract C-70. American Society for Microbiology, Washington, DC, USA)。
【0115】
大きなプレートによる生物学的検定を用いて、インビトロ(in vitro)での3段階ケモスタットヒト腸モデルから回収した試料に対しておこなわれたオリタバンシン濃度の分析では、寒天内での薬剤の拡散が遅いことが示されていることから、事前のインキュベーションによる拡散ステップでは、ゾーン直径を大きくすることが求められる。グリコペプチドはポリマー表面に結合する(Wilcox et al., J Antimicrob Chemother 1994; 33: 431-41)。これは、抗菌剤およびポリマーの両方の表面電荷によって影響を受ける特性である。例えば、標本血管表面へのテイコプラニンの結合はバンコマイシンよりも平均して4倍大きかった。ポリマー表面をヒト体液で処理しておくと、テイコプラニンの結合が著しく減少する。オリタバンシンは、中性pHで正電荷を1つまたは2つ有する半合成リポグリコペプチドである。したがって、寒天とオリタバンシンとの複合体を形成することは、抗生物質の物理化学的性質により、クロストリジウム・ディフィシレおよび他の最近でのMICの上昇(ブロス大量希釈によって測定されたものと比較して)を説明すると考えられる。実際、寒天表面への抗菌剤ペプチドの吸着は、既に報告されている(Boman et al., FEBS Lett 1989; 259: 103-6)。本研究は、寒天とり込みMICでのP80と溶解馬血液との全置換を含んでおり、2つの添加物のどちらもオリタバンシン感受性の評価に対して著しい影響を及ぼすものではないことを示した。微量および大量希釈MICと比較したオリタバンシン寒天取り込みMICの上昇が他の機関で観察されている。しかし、しかし、この現象の背後にある決定的なメカニズムはいぜんとして説明されていない(Blosser et al., Abstracts of the 103rd Meeting of the American Society for Microbiology, Washington, DC, 2003. Abstract C-70. American Society for Microbiology, Washington, DC, USA)。
実施例3−クロストリジウム・ディフィシレ胞子の生存度に対する抗生物質処理の相対的な影響
異なる実験的方法を用いることによって、オリタバンシンは、CDIに対する既存の治療用抗菌剤よりも大きな程度で、休眠中のクロストリジウム・ディフィシレ胞子から栄養増殖細胞への遷移を中断させることが明らかにされた。
【0116】
実験は、これらの抗生物質にさらされたクロストリジウム・ディフィシレ胞子の生存度に対するメトロニダゾール、バンコマイシンおよびオリタバンシンの個々の影響を決定するために行なわれたものである。一般に、実験は、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と抗生物質とを混合し、溶液の濾過を酢酸セルロースフィルターを介しておこなうことで胞子を回収し、胞子が取り込まれたフィルターを栄養寒天に当てて、選択された期間の後にフィルター上に残る胞子の数を測定することによって、実施した。
【0117】
先行の実験は、抗菌物質が洗浄にもかかわらず酢酸セルロースフィルターに結合し得るかもしれないことを示唆した。したがって、残留抗菌剤は、クロストリジウム・ディフィシレ胞子の回復を抑える可能性がある。したがって、最初の実験は、濾過および洗浄に先立って抗菌剤含んでいる胞子懸濁液の希釈を含むものとした。反応体積を、すべての抗菌剤/対照溶液について、1mLとした。濾過に先立って抗菌剤濃度を準MICレベルに減少させるために、バンコマイシンおよびオリタバンシンを1:250に希釈し、メトロニダゾールを1:50に希釈した。
実施例3A
対照(脱イオン水+/−Tween−80)および試験(抗菌剤含有)溶液1mLに対して、クロストリジウム・ディフィシレ胞子(3株、すなわちPCRリボタイプ001、106、および027)10μLを播種した。胞子懸濁液(時間=1分あるいは30分)を濾過胚状体に移し、適当な容量の希釈剤(滅菌脱イオン水+/−Tween−80)を添加して、上記した希釈比を達成した。試料を酢酸セルロースフィルターで濾過し、適当な希釈剤50mLで洗った。フィルターを、5mg/Lリゾチームおよび2%溶解馬血液を含むプラジールCCEY寒天に、無菌で移した。この手順を二重反復して終えた。培地を嫌気的条件下で37℃、48時間培養し、クロストリジウム・ディフィシレのコロニー数を記録した。
【0118】
結果を図6に示す。クロストリジウム・ディフィシレ胞子回復の本質的な差は、任意の所定の対照/処置に関して、1分と30分との間で観察されなかった。Tween−80(P80)の存在はクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復に影響しなかった。メトロニダゾール処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、1分および30分の両方とも対照の90〜110%であった。バンコマイシン(VAN)処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、1分および30分の両方とも対照の25〜60%であった。オリタバンシン(ORI)処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、1分および30分の両方とも0%であった。
【0119】
これらの結果から次のことが示唆された。すなわち、(1)グリコペプチド抗菌剤は抗クロストリジウム・ディフィシレ活性を有しないこと、および(または)濾過に先立った溶液の希釈および濾過後の胞子試料の洗浄にかかわらず、残留抗菌剤はクロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽および(または)伸長に対して抑制的であった酢酸セルロースフィルターに存在したことである。
実施例3B
希釈剤の添加に先立ってあるいはその添加の過程で、酢酸セルロースフィルターにグリコペプチド抗菌剤が結合する可能性があるかを評価するために、実験手順を修正した。
【0120】
最初に、希釈剤を濾過胚状体に添加した。次に、1ml反応物を適当な希釈剤(反応物形成後1分および30分)に添加し、酢酸セルロースフィルターで濾過した。フィルターを適当な希釈50mLで洗った。次に、フィルターを、5mg/Lリゾチームおよび2%溶解馬血液を含むプラジールCCEY寒天に、無菌で移した。この手順を二重反復して終えた。培地を嫌気的条件下で37℃、48時間培養し、クロストリジウム・ディフィシレのコロニー数を記録した。
【0121】
結果を図7に示す。クロストリジウム・ディフィシレ胞子回復の本質的な差は、任意の所定の対照/処置に関して、1分と30分との間で観察されなかった。Tween−80(P80)の存在はクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復に影響しなかった。メトロニダゾール処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、対照の95〜110%であった。バンコマイシン(VAN)処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、対照の70〜80%に増加した。オリタバンシン(ORI)処理後のクロストリジウム・ディフィシレ胞子回復は、1分および30分の両方とも0%であった。
【0122】
これらの結果から次のことが示唆された。すなわち、1)実験2Bの設計は、バンコマイシン含有溶液からのクロストリジウム・ディフィシレ胞子の回復を助けたが、オリタバンシン含有溶液からの回復には影響しなかったこと、2)したがって、オリタバンシンは抗胞子活性を有するか、または残留抗菌剤が実験手順の改良にもかかわらずフィルター内に残ったことである。
実施例3C
対照は、実験2Bに続くバンコマイシンおよびオリタバンシン用に追加した。
【0123】
1ml溶液(クロストリジウム・ディフィシレ胞子含有せず)を実施例2Bに従って処理し、フィルターをブラジールCCEY寒天上に置いた。フィルター上には、2x20μLの、
a) 栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレ(PCRリボタイプ001の一晩培養物)、
b)クロストリジウム・ディフィシレ胞子、(PCRリボタイプ001)、または
c) ¥黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)NCTC6571(Oxford株(一晩培養物)を播種した。増殖/非増殖を嫌気的条件下での培養後に記録した。
【0124】
結果は、バンコマイシンが濾過されたフィルター上で全ての微生物が増殖したことを示した。黄色ブドウ球菌NCTC6571は、オリタバンシンがろ過されたフィルター上で増殖した(この株に対するMICは、寒天取り込み方法論によって〜4mg/Lである)。栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレの大幅な減少数はバンコマイシン処理したフィルター上での増殖と比較して、オリタバンシン処理したフィルター上で回復された(1枚のプレート上の1cfu)。クロストリジウム・ディフィシレ胞子はバンコマイシン処理したフィルター上での良好な増殖にもかかわらず、オリタバンシン処理したフィルターからは回復不可能であった。
【0125】
したがって、これらの結果は、上に概説された予防処置にかかわらず、抑制レベルのオリタバンシンが酢酸セルロースフィルターに残存することを示唆した。胞子回復と比較して栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレ培養物からの増殖量がかなり少ないことは、クロストリジウム・ディフィシレのこれらの形態を抑制することが可能なオリタバンシン濃度に違いがあることを示唆していると思われる。
実施例3D
上記の実験(酢酸セルロースフィルター中の薬物の存在に加えて)からオリタバンシンに処理されたクロストリジウム・ディフィシレ胞子を回復することの失敗を説明可能なこととして、オリタバンシンがクロストリジウム・ディフィシレ胞子に結合し、直接、胞子を破損することができると思われること、また胞子発芽および(または)伸長を抑制することが考えられることである。抗菌の胞子の結合を評価するために単純な実験をおこなった。
【0126】
2種類の溶液を調製した。すなわち、
(1)クロストリジウム・ディフィシレ胞子、(PCRリボタイプ001、対照)、および
(2)350mg/Lのオリタバンシン(希釈剤:Tween−80 H2O)に懸濁されたクロストリジウム・ディフィシレ胞子。
【0127】
オクスフォード黄色ブドウ球菌(Oxford S. aureus)の菌叢を新鮮血寒天に播種した。1つの複製では、クロストリジウム・ディフィシレ胞子を遠心(16000g、5min)し、上清を取り除き、さらに沈渣を500μLのTween−80−H2Oに再懸濁した。10μLの再懸濁された胞子懸濁を表面黄色ブドウ球菌菌叢上に播種した。
【0128】
別の複製では、この手順を用いてクロストリジウム・ディフィシレ胞子懸濁を合計10回洗い、黄色ブドウ球菌菌叢の表面に播種した。
【0129】
両方の複製では、寒天を嫌気的に37℃で一晩培養し、次に抑制域の有無を記録した。
【0130】
Tween−80は、オクスフォード黄色ブドウ球菌(Oxford S. aureus)の増殖に対して抑制的ではなかった。クロストリジウム・ディフィシレ胞子(対照)はオクスフォード黄色ブドウ球菌の増殖に対して抑制的ではなかった。オリタバンシン処理したクロストリジウム・ディフィシレ胞子(対照)は、0、1、2、4、5、6、9、および10回の洗浄後に、オクスフォード黄色ブドウ球菌の増殖に対して抑制的であった。したがって、胞子懸濁の洗浄では、抗菌効果は取り除かれなかった。これらの結果は、オリタバンシンが直接クロストリジウム・ディフィシレ胞子に結合するかもしれないことを示唆した。
実施例4−オリタバンシン対ヒト腸モデルにおけるクリンダマイシン誘導クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027感染症に対する処置としてのオリタバンシンとバンコマイシンとの比較
インビトロ(in vitro)ヒト腸モデルを用いて、伝染性クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027によって引き起こされたクリンドマイシン誘導CDIの処置に関して、オリタバンシンの有効性とバンコマイシンの有効性とを比較した。
材料および方法
クロストリジウム・ディフィシレ株
クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の単一分離株を検討した。この分離株は、2005年にメイン・メディカル・センター(Maine Medical Centre (Portland, USA))でCDIの蔓延中に回収された臨床株であった。この株は、ロブオーエン(Rob Owens)博士のご厚意により提供されたものであり、嫌気性生物レファレンス研究所(Anaerobe Reference Laboratory (Cardiff, Wales, UK))においてジョンブラジール(Jon Brazier)博士によりリボタイピングされた。
3段階ケモスタットヒト腸モデル
腸モデルは、近位結腸の低pH、炭水化物過剰条件下と、遠位結腸の炭水化物結合、非酸性条件下とで、腸のミクロフロラに関する研究を可能にするように設計されたものである(Macfarlane et al., Microb Ecol 1998; 35: 180-7)。腸モデル容器内の微生物学的および物理化学的測定は、頓死犠牲体の腸の内容物に対して検討されている(Macfarlane et al., Microb Ecol 1998; 35: 180-7)。各腸モデルは、3つの発酵容器からなり、該発酵溶液は、制御された速度(D=0.015h−1)で増殖培養液が最上部で供給される堰カスケード方式で接続されている。容器に無酸素窒素をスパージして嫌気生活を確実にし、ウオータージャケットシステム(37℃)を介して加熱し、さらに0.5MHCl/NaOHを送達する発酵槽制御ユニット(Biosolo 3, Brighton Systems, UK)を用いて特定のpHに保った。容器(280mL)をpH5.5および高基質有効性で操作することで近位腸内に条件を反映させ、一方容器2および3(300mL)を低基質有効性、pH6.2および6.8で各々操作することで遠位腸内に条件を反映させた。腸モデルは糞便の泥漿〜10%(w/v)により準備し、微生物母集団に対して14日、平衡させさた。
腸モデルの調製
5人の健常初老歩ランティア(>65歳)から糞便試料を回収し、ただちに嫌気状態で研究所に運んだ(GasPak, Oxoid, Basingstoke, UK)。便がクロストリジウム・ディフィシレ培養陰性であることを、以前に報告されたように、5mg/Lライソザイム(Sigma-Aldrich,UK)を取り込んだブラジール(Brazier)CCY上で、を確認した(Sigma-Aldrich, UK) as reported previously (Baines et al., J Antimicrob Chemother 2005; 55: 974-82; Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2003; 52: 96-102)。クロストリジウム・ディフィシレ陰性糞便をプールし、滅菌前還元リン酸緩衝食塩水中に粗濾過したスラリー(〜10%w/v)を調製した。腸モデルの容器を約3分の2の容量に充填し、細胞増殖培養液ポンプを起動した。
腸ミクロフロラおよびクロストリジウム・ディフィシレの列挙
固有の腸微生物相の培養可能な主成分とクロストリジウム・ディフィシレとを、既に報告されたように、選択的および非選択的寒天上で生菌計数(〜log10cfu/mL)によって、計数した(Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2005; 56: 717-25)。計数した細菌群は、全通性嫌気性菌、条件的嫌気ラクトース発酵菌、全嫌気性菌、ビフィズス菌、バクテロイデスフラジリス(Bacteroides fragilis)群、全クロストリジウム属、乳酸桿菌、腸球菌、全クロストリジウム・ディフィシレ、およびクロストリジウム・ディフィシレ胞子である。クロストリジウム・ディフィシレ細胞毒素生産量を、以前に記述されるベロ細胞毒性分析を用いて定量した(Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2003; 52: 96-102)。細胞毒素タイターをlog10の相対的単位(RU)で表した。クロストリジウム・ディフィシレ総菌数、胞子数、および細胞毒素タイターのみを腸モデルの容器1で計数した。
腸モデル実験計画法
CIDの治療介入を評価するための腸モデルの使用は、以前に説明されている(Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2007; 60: 83-91; Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2005; 56: 717-25)。すなわち、糞便スラリーを有する各腸モデルの播種につづいて、さらなる介入を13日間(期間A)実施しなかった。期間Aの過程で、細菌母集団を2日ごとに計数した。次に(14日目)、各腸モデルの容器1に対して、〜107cfuクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子からなる一接種材料(Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2003; 52: 96-102)を接種し、さらなる介入は7日間(期間Bおこなわなかった)。この時点から進んで、バクテリアの母集団を毎日で計数した。クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子からなる別の一接種材料を、各々の腸モデル(21日目)に容器1に植え付け、さらに33.9mg/Lクリンダマイシン(Pfizer, USA)を1日4回7日間(期間C)にわたって加えた。この点滴投与計画は、腸モデル内のクリンダマイシンレベルを、600mg単回服用量のインビボ(in vivo)で観察されるレベルにほぼ等しかった(Brown et al., Ann Intern Med 1976; 84: 168-70)。クリンダマイシン滴下の停止に続いて、高レベル細胞毒素生産(≧4RU)が少なくとも2日連続して観察されるまで、それ以上の介入をおこなわなかった(期間D)。バンコマイシン(単一実験、125mg/Lを一日4回)、およびオリタバンシン(単一実験、125mg/Lを一日2回)の滴下を、各実験において39日目に開始し、7日間(期間E)にわたった。バンコマイシン(Sigma-Aldrich)は蒸留水の中で調製された。また、オリタバンシン(Targanta治療法、ケンブリッジ、アメリカ)は、0.002%(蒸留水中のv/v)のポリソルベート−80(Sigma-Aldrich)および両方の抗菌剤溶液の中で調製された、腸モデルの中への滴下に先立って濾過(0.22μm)によって殺菌された。バンコマイシン(Sigma-Aldrich)を蒸留水に調製し、オリタバンシン(Targanta Therapeutics, Cambridge, USA)を0.002%(v/v蒸留水中)ポリソルベート−80(Sigma-Aldrich)に調製し、さらに両方の抗菌剤溶液を腸モデルに滴下する前に滅菌濾過(0.22μm)した。バンコマイシン滴下投与計画は、ヒトでの治療の標準的過程の後のインビボ(in vivo)で観察された抗生物質濃度を反映する抗生物質濃度を達成することを目標とした(Young et al., Gastroenterology 1985; 89: 1038-45)。オリタバンシン用の抗菌の滴下投与計画は、緩衝培地中での薬物の溶解限度を考慮に入れた。治療上の抗菌滴下を停止した後に、さらに15日間(期間F)にわたって細菌母集団および細胞毒素タイターを追跡した。
活性抗生物質濃度の生物検定
クリンダマイシンの濃度は、本研究では測定されなかった。バンコマイシンおよびオリタバンシンの濃度を、インハウス・ラージプレート生物検定を用いて、測定した。すなわち、各腸モデルの全ての容器から得た試料(1mL)を遠心(16,000g)し、生物検定に先だって−20℃に保存した。1Mパラアミノ安息香酸が添加された100mLのマラー−ヒントン(Muller-Hinton)寒天(Oxoid,UK)をオートクレーブで滅菌し、50℃まで冷やし、指標生物である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC29213を1mL(0.5Mのマクファーランド標準の濁度に等し濁度で)接種した。溶けた寒天を、245mm2ペトリ皿(Fisher Scientific, Loughborough,UK)に滅菌状態で移して設定した。阻止帯径を、蒸留水または滅菌pH調整済(5.5、6.2、6.8)腸モデル液体で希釈した希釈したキャリブレーターによる違いについて、評価した。異なる希釈剤での阻止帯径に明らかな差がないことから、0.002%ポリソルベート−80含有の脱イオン水を全てのオリタパンシン・キャリブレーターに用いた。バンコマイシンキャリブレーターを、滅菌脱イオン水に調製した。腸モデルからの試料を濾過滅菌(0.22μm)した。No.5コルクボーラーを用いて寒天から25ウェル(9mm直径)を取り除いた。バンコマイシンキャリブレーター(1〜512mg/L)、オリタバンシンキャリブレーター(1〜128mg/L)、または腸モデル由来の試料の各々2倍希釈の20mLを、三重反復で各ウェルに無作為に割り当てた。低濃度での濾過によって飽和可能な表面結合に起因する薬物の著しい比例的な損失をもたらすことから、オリタバンシンを1280mg/Lで濾過した。寒天プレートを5時間にわたって冷蔵(4℃)することで、抗菌拡散を可能にする一方で細菌の増殖を最小限にした。その後、生物検定プレートを好気的条件下で、37℃で48時間培養した。阻止帯径の測定を、0.01mmまで正確なカリパスを用いて行った。また、検定線は抗菌剤のlog2濃度に対して2乗された直径をプロットすることで得た。未知の抗菌の濃度を各プレートの検定線から読み取り、逆log2関数を用いて、有効濃度へ変換した。平均抗菌濃度(mg/L)を3つの複製から平均化した。オリタバンシンおよびバンコマイシンの生物検定に対する検出限界は、各々2および8mg/Lであった。
結果
容器2と容器3との間における固有の腸細菌およびクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の生菌数の実験間のばらつきは、かなり低い。したがって、容器3で得られる結果だけを示す。腸モデルの容器2と容器3との間での観察結果の有意義な違いは、必要に応じて強調される。オリタバンシン(図8a)実験とバンコマイシン(図8b)実験の両方で、固有の腸ミクロフロラの生菌数は期間A全体を通じて安定であった。クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子(14日目、期間B)の滴下によって、実質的に一方の実験における腸ミクロフロラの任意の計数された構成成分の生菌数が影響されることはなかった。
腸ミクロフロラに対するクリンダマイシン処理の影響
クリンダマイシン(期間C)の滴下は、ビフィズス菌(〜6log10cfu/mL)の個体数の著しい誘発した。それは、両方の実験(図8aおよびb)の期間Cの終わりまでに検出限界以下(〜2log10cfu/mL)であった。バクテロイデス(Bacteroides)および乳酸菌(Lactobacilli)の生菌数は、両方の実験において、〜1ないし2log10cfu/mLまで減少し、一方腸球菌の生菌数は〜2log10cfu/mLまで上昇した。クリンダマイシン滴下(期間D)の停止の後で、ビフィズス菌(bifidobacterial)母集団は、オリタバンシンおよびバンコマイシンの滴下前に検出限界を下回っていた。固有の腸部生物相の他の全ての構成成分は、それらの定常(期間A)濃度まで回復、または該濃度を上回った。
腸ミクロフロラに対するオリタバンシンおよびバンコマイシン滴下の影響
オリタバンシン(期間E)の滴下後、固有の腸ミクロフロラ上の小さな有害作用を計数した。バクテロイデスおよび腸内球菌の母集団はオリタバンシン滴下によって悪影響を及ぼされた数少ない細胞群であり、それぞれ〜1および2log10cful/mLまで減少した(図8a)。バンコマイシン滴下に続くバクテロイデスおよび腸内球菌の母集団の下落は、それぞれ〜6および1log10cfu/mLであった(図8b)。ビフィジス菌母集団は、両方の実験において、期間Eの間は検出限界以下のままであった。オリタバンシン滴下(期間F)の停止に続いて、すべての細菌母集団が定常状態(期間A)濃度に回復したが、例外としてビフィズス菌は検出限界以下のままであった(図8a)。バンコマイシン滴下の停止に続いて、すべての固有の腸細菌母集団は定常状態(期間A)濃度に回復したが、例外として、ビフィズス菌は〜2log10cfu/mLより低かった(図8b)。クロストリジウム・ディフィシレはいずれの実験でも定常状態(期間A)中に回復されなかった。クリンダマイシン滴下(期間B)がない状態で、クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027は、両方の実験(図9aおよびb)において腸モデル(容器1および2のデータは不図示)のすべての容器で、胞子のままであった。容器3ではクロストリジウム・ディフィシレ数が〜1log10cfu/mLまで減少し、両方の実験において期間Bの間は類似の速度であり、さらに細胞毒の発生は検出されなかった。
クロストリジウム・ディフィシレに対するクリンダマイシン処理の影響
クロストリジウム・ディフィシレはオリタバンシンおよびバンコマイシン実験(図9aおよびb)の両方におけるクリンダマイシン滴下(期間C)中、胞子として残った。さらに、細胞毒素生産はこの期間に検出されなかった。クリンダマイシン滴下(期間D)の停止に続いて、クロストリジウム・ディフィシレは胞子として残った。このことは、オリタバンシン実験(図9a)中のクリンダマイシン滴下の停止後5日間の検出限界にあった。バンコマイシン実験中の同様の期間では、クロストリジウム・ディフィシレ胞子数は期間Dの最初の2日の間減少し、その後、クロストリジウム・ディフィシレ胞子数が〜1log10cfu/mL増加した(図9b)。クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽は、オリタバンシンおよびバンコマイシンの実験中、クリンダマイシン滴下の停止の6および7日後にそれぞれ検出された。栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレ番号は両方の実験において、〜6log10cfu/mLのピーク生菌数まで急激に増加した。細胞毒素生産は、両方の実験において、35日目に検出され、両実験で最大タイターが5RUに達した。治療抗菌物質の滴下を、両方の実験において39日目に開始した。クロストリジウム・ディフィシレ胞子発芽、増殖および高レベル細胞毒素生産は、期間D(データ不図示)中にオリタバンシン実験またはバンコマイシン実験のいずれにおいても腸モデルの容器1では観察されなかった。
クロストリジウム・ディフィシレに対するオリタバンシン滴下の影響
オリタバシンの滴下が開始された場合、クロストリジウム・ディフィシレの総数は胞子数(6log10cfu/mL)よりも多い〜2log10cfu/mLであった(期間E、図9a)。オリタバンシン滴下の2日目で、クロストリジウム・ディフィシレ総数と胞子数の両方が〜2log10cfu/mLまで減少し、1日後の検出限界(〜1.22log10cful/mL)以下であり、期間Eの残りまでそのままであった。細胞毒素タイターはオリタバンシン滴下(期間E)中に3RUまで減少した。オリタバンシン濃度は、血管1、2、および3で128、109、および52mg/Lで、それぞれピークに達した。すなわち、バンコマイシン腸モデルにおいて達成された濃度よりも8倍低かった。腸モデルからの培養試料において明らかにされたオリタバンシンの濃度が、濃度が<1280mg/Lであったことから濾過後の潜在的損失により、実際以下に表示さる可能性がある。
検定線R2値はすべて>0.95であった。
クロストリジウム・ディフィシレに対するバンコマイシン滴下の影響
クロストリジウム・ディフィシレバンコマイシンの総計数は、バンコマイシン滴下の1日後に、〜1.5log10cfu/mLまで減少した(時期E、図9b)。クロストリジウム・ディフィシレ胞子計数はバンコマイシン滴下に影響されなかった。また、クロストリジウム・ディフィシレは、期間Eの残りまで主に胞子のままであった。細胞毒素タイターはバンコマイシン滴下中に3RUまで減少した。バンコマイシン濃度は、腸モデルの容器1、2、および3で、それぞれ957、800、および423mg/Lでピークに達した。検定線R2値はすべて>0.99であった。
オリタバンシン滴下の停止後の現象
クロストリジウム・ディフィシレは、実験(期間F(図9a))の残りで、検出限界で散発的に分離された。オリタバンシン持ち込みを最小化する目的で活性炭(20〜40g/L)処理することに加えて、培養試料の遠心分離よび洗浄はクロストリジウム・ディフィシレの回復を増強することはなかった(データ不図示)。細胞毒素タイターは傾き続け、10日以内に検出限界以下となった。オリタバンシン濃度はオリタバンシン滴下の停止の11日後に検出限界以下となった。
バンコマイシン滴下の停止後の現象
クロストリジウム・ディフィシレは、容器2(データ示さず)および3でのバンコマイシン滴下の停止の後に、それぞれ12および13日まで、胞子として残存した(期間F、図9b)。その後、発芽、増殖、および高レベル細胞毒素生産が再び起こるのが観察された。クロストリジウム・ディフィシレの総計数は〜6log10cfu/mLであり、また細胞毒素タイターは実験の終了までに5RUであった。
【0131】
これらの結果は、オリタバンシンおよびバンコマイシンの両方が栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレを抑制するのに効果的だったことを示している。バンコマイシン滴下は、クロストリジウム・ディフィシレ胞子だけがバンコマイシン滴下開始の1日後に腸モデルの容器に残存した栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレの抑制を促進した。クロストリジウム・ディフィシレ胞子は、クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027の栄養増殖型のMICよりも>500倍高いバンコマイシン濃度の存在に影響されなかった(O'Connor et al., J Antimicrob Chemother 2008; doi:10.1093/jac/dkn276)。バンコマイシンの糞便の中で観察された濃度でクロストリジウム・ディフィシレ胞子に対する抑制活性を誘発することの失敗は、以前に報告されており、この研究で示されたデータを支持している(Freeman et al., J Antimicrob Chemother 2005; 56: 717-25; Levett, J Antimicrob Chemother 1991; 27:55-62; Walters et al., Gut 1983; 24: 206-12)。さらに、期間Fの過程で腸モデルの容器2および3で検出される限界よりも低いバンコマイシン濃度の減少の後に、クロストリジウム・ディフィシレ胞子発芽、増殖、および高レベル細胞毒素生産のさらなる発現が観察された。
【0132】
オリタバンシンは、ピーク抗菌濃度がバンコマイシンよりも〜8倍低いにもかかわらず、急速にクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型および胞子型の数を減らした。オリタバンシンのこれらの活性成分濃度は、寒天とり込みおよびブロス大量希釈法によって測定された際に、それぞれクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027のMICよりも25倍および200倍高かった(O'Connor et al., J Antimicrob Chemother 2008; doi:10.1093/jac/dkn276)。洗浄および活性炭吸着により培養試料から活性成分オリタバンシンを取り除く努力にもかかわらず、検出限界で散発的に分離された個体コロニー以外にクロストリジウム・ディフィシレを回復することができなかった。したがって、バンコマイシンと比較して、クロストリジウム・ディフィシレ胞子に対するオリタバンシンの影響の著しい違いが本研究で観察された。実際、オリタバンシン(10mg/L)によって処理されたクロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子の伸長の抑制は、薬物を洗浄によって取り除いた後も持続することが、最近観察された。この効果は、メトロニダゾールまたはバンコマイシン処理した胞子に関しては観察されなかった。試験した抗菌物質は、上掲−MIC濃度で胞子発芽に対する抑制活性をいっさい示さなかった。したがって、オリタバンシンは、クロストリジウム・ディフィシレ胞子伸長に対抗する活性を有する。オリタバンシン滴下に続く期間Fの間の本研究で、バンコマイシンとの直接接触状態で、抗菌濃度が検出限界を下回った後でも、クロストリジウム・ディフィシレ胞子発芽、増殖、および高レベル細胞毒素生産の再発は観察されなかった。
【0133】
オリタバンシンが表面に結合することが既に示されている(0.002%ポリソルベート−80によって無効にされる効果(Arhin et al., Antimicrob Agents Chemother 2008; 52:1597-603)。ポリソルベート−80は、腸モデル増殖培地(0.2%のv/v)に取り込まれた。したがって、結果として生じ、かつ生物検定検出限界を下回る継続的な抗菌活性を有する腸モデル内の表面への結合は、本研究の期間Fの大部分にわたってクロストリジウム・ディフィシレ胞子の単離が失敗することのありそうもない説明である。クロストリジウム・ディフィシレ細胞毒素タイターの減少はオリタバンシン実験およびバンコマイシン実験の両方における期間E(3RU)に類似したが、細胞毒素タイターがオリタバンシン実験中で検出不可能なレベルまで減少するのにより長く(5日)かかった。
【0134】
結論として、オリタバンシンおよびバンコマイシンの両方は、腸モデルから有効に栄養増殖クロストリジウム・ディフィシレを除去したが、オリタバンシンのみが胞子に対して潜在的活性を示した。クロストリジウム・ディフィシレPCRリボタイプ027胞子の再発は、バンコマイシンの検出限界以下に抗生剤濃度が減少すると観察された。しかし、この現象はオリタバンシンに関しては観察されなかった。これらの治験が示唆することは、オリタバンシンが、反胞子活性の点から、バンコマイシンを上回る治療上の利点を有すると思われることである。
実施例5−CDIのハムスターモデルでのオリタバンシン静脈内投与の有効性の評価
方法
菌株
全ての実験で、クロストリジウム・ディフィシレATCC43255を用いた。
この株は、もともとは腹部の創傷から分離されたもので、毒素A+/B+およびバイナリ毒素陰性である。クロストリジウム・ディフィシレ胞子を、胞子形成を促進するために、7日間、37℃で、血液寒天培地プレート上でクロストリジウム・ディフィシレ細胞を酸素欠如状態で培養することにより、感染用に調製した。クロストリジウム・ディフィシレのコロニーを、燐酸塩緩衝食塩水(PBS)中で再懸濁し、1時間にわたって等量の100%エタノールと混合した。胞子を遠心分離機にかけ、PBSで再懸濁し、等分化し、さらに−20℃で冷凍した。ハムスターに経口接種するために、胞子をPBSで希釈した。
クロストリジウム・ディフィシレ感染症(CDI)のハムスターモデル
研究はすべて、動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の承認を得たプロトコルに従って、行われた。オスのシリアンゴールデンハムスター(65〜80g:Harlan, Indianapolis, IN)を感染1日前(−1日目)に、クリンダマイシン(100mg/kg)の皮下投与1回分の量で前処置した。その1日後(0日目)、105のクロストリジウム・ディフィシレ胞子を動物に経口経管栄養によって経口感染させた。
抗生治療
感染後1日目に監視し、ビヒクル、バンコマイシン(50mg/kg)、または10%ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(HPCD)(50mg/kg)に処方したオリタバンシンのいずれかを、ハムスター(n=10/群)に対して静脈内(舌下)投与した。オリタバンシンの合計1、2、または3回分の服用量を1日目、3日目、および5日目に、各々注射した。比較群では、ハムスターに対して、1日目、3日目、および4日目に投与した合計3回分の投与量を投与した。実験終了点まで疾患の何らかの兆候について動物の観察を行い、生存を記録した。
結果
−1日目にクリンダマイシンでプライミングすることで、ハムスター(n=10/群)でCDIを誘導し、その後、24時間後(0日目)にクロストリジウム・ディフィシレで感染させた。感染したハムスターは1日目に最初の服用を受け、最高5日間にわたって2日ごとに処置を繰り返した;処置していない群を対照として用いた。
【0135】
臨床的症状によって評価されるように、未処理の動物すべてがCDIを発症し、5日目に死亡または瀕死の状態で安楽死させた(図10)。50mg/kgバンコマイシンの静脈投与3回(隔日(q2d))は、未処置の動物と比較して、生存を8日間延長させた(図10)。しかし、バンコマイシン処置動物の70%が、3日目および5日目の第2回の注射および第3回の注射の間で、死亡した。その結果、5日目では生存比率が未処置の動物に対して0%であり、バンコマイシン処置の動物に対しては、30%であった。それとは対照的に、オリタバンシンを一度に50mg/kg、5日にわたって隔日(q2d)で2回または3回投与された動物は、未処理の動物を基準にした生存比率の増加を示し、未処理の動物よりも4、5、および7日間、それぞれ生存が延びた(図10)。この治験は、オリタバンシンの容量依存的な有効性を示した。オリタバンシンを2回分投与された動物は、バンコマイシンにより等量の服用量および服用計画(2xq2d)を投与された動物よりも5日間長く生存した(図10)。
実施例6−CDIのハムスターモデルにおけるオリタバンシンの経口投与の有効性の評価
方法
菌株
クロストリジウム・ディフィシレ(CD)ATCC43255をすべての実験で用いた。CDレ胞子を、胞子形成を促進するために、7日間、37℃で、血液寒天培地プレート上でCD細胞を酸素欠如状態で培養することにより、感染用に調製した。CDのコロニーを、燐酸塩緩衝食塩水(PBS)中で再懸濁し、1時間にわたって等量の100%エタノールと混合した。胞子を遠心分離機にかけ、PBSで再懸濁し、等分化し、さらに−20℃で冷凍した。ハムスターに経口接種するために、胞子をPBSで希釈した。
CD感染症(CDI)のハムスターモデル
研究はすべて、動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の承認を得たプロトコルに従って、行われた。オスのシリアンゴールデンハムスター(65〜80g:Harlan, Indianapolis, IN)を感染1日前(−1日目)に、クリンダマイシン(CL)(100mg/kg)の皮下投与1回分の量で前処置した。その1日後(0日目)、105のCD胞子を動物に経口経管栄養によって経口感染させた。
抗生治療
(1)感染後(PI)1日目に監視し、ビヒクル、バンコマイシン(VA)(50mg/kg/日)、または10%ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(HPCD)(10、50、または100mg/kg/日)に処方したオリタバンシンのいずれかを、5日間経管栄養によって、ハムスター(n=10/群)に投与した。
【0136】
(2)ポリエチレングリコール400(PEG400)に処方されたORIを、2日目にハムスター(n=5/群)に対して4日間経口投与した。
実験終了点(20日目)まで疾患の何らかの兆候について動物の観察を行い、生存を記録した。
盲腸含有物中のCDの検出
CD細胞および毒素の検出は、実験および臨床の終了点で動物の盲腸の含有物中で検出された。CD毒素(毒素Aおよび毒素B)の存在を、製造元によって記述されたようにしてCD TOX A/B IITMキット(Techlab)を用いることによって、検出した。毒素Aの検出限界は≧0.8ng/mL、毒素Bの検出限界は≧2.5ng/mLであった。生細胞(TC)(栄養増殖および胞子形態)の合計は、2%オキシラーゼ(Oxyrase Inc.)含有PBSで10倍まで、連続的に盲腸の含有物を連続的に希釈することで、計数した。盲腸の含有量希釈を卵黄なしにブラジールCCEYライソザイム寒天(Lab160)上にプレーティングした。CD胞子を、等量の純エタノールで盲腸試料を処置することによって、計数した。検出限界(LOD)は、TCおよび胞子に関して、各々1.47および1.77log10CFU/g盲腸含有物であった。
統計分析
データの分析を、グラフパッド・プリズム(バージョン5.00)(GraphPad Prism(version 5.00))を用いて、カプラン−マイアー(Kaplan-Meier)および対数ランク・ウィルコクソン(Wilcoxon)検定生存率分析によって、おこなった。統計的有意差を示すために、p値を0.05(p<0.05)未満とした。
結果
CL単独で処置した後に図11Aのグラフに示すように、ハムスターの50%のみが20日目まで生存し、全ての死亡は静脈投与後(PI)6日目と8日目との間に生じた。CD胞子にCLプライムド・ハムスターを暴露することで、静脈投与後(PI)4日目で生存率が0%であった。
【0137】
図11Bのグラフに示すように、ORIの有効性は用量依存的であった。5日にわたって毎日1回10、50、および100mg/kgで注射したORI(HPCDで処方)は、未処置の動物よりも9、13、および17日間を上回る生存の延長をもたらした(各群について、p<0.0001)。100mg/kgのORIは、静脈投与後(PI)12日目で、VAに対して優れた有効性を示した。ORI100mg/kgで処置したハムスターの平均生存時間は17日間であり、VAで処置したハムスターでは12日間であった(p<0.0001)。死亡したハムスター全ての盲腸含有物はCD毒素AおよびBに対して陽性であった。
【0138】
図11Cに示すグラフは、VA50mg/kgを1日1回またはORI100mg/kg1日1回、5日間の1日目または2日目に開始した経口処置の結果を示す。ORIで処置した動物全てが生存し、それらの動物のいずれもPI20日目まで疾患の症状は何ら示さなかった。高レベルの毒素AおよびBが、未処置およびVA処置動物の盲腸含有物に検出された。一方、毒素AおよびBは、PI20日目にPRIによる処置を受けた動物の盲腸含有物では検出されなかった。
【0139】
図11Dに示すように、PI20日目で、CD栄養増殖細胞および胞子細胞は、PEG400に処方されたORIによって処置されたハムスターの全てで、盲腸の含有物中で検出できなかった。LOD(検出限界)は、TCおよび胞子に関して、各々1.37および1.77log10CFU/g盲腸含有物であった。
* * * *
この出願の発明を一般的および特定の実施形態の両方で上記に説明した。本発明は、好ましい実施形態として考えられるものを上記したが、当業者に知られている種々の代案は総括的な開示内で選択することができる。本発明は、請求の範囲に記述したことを除いて、限定されるものではない。
【0140】
本明細書中に援用される全ての文献、出版物、特許、書籍、マニュアル、論説、論文、要約、ポスター、および他の材料を、参照により明らかに本明細書中に取り込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロストリジウム・ディフィシレの増殖を抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレと該クロストリジウム・ディフィシレの増殖を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させ、それによってクロストリジウム・ディフィシレの増殖を抑制することを含む、方法。
【請求項2】
クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させ、それによってクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制することを含む、方法。
【請求項3】
クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型の増殖を抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型と該クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型の増殖を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させ、それによってクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型の増殖を抑制することを含む、方法。
【請求項4】
クロストリジウム・ディフィシレの胞子形成を抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型と該クロストリジウム・ディフィシレの胞子形成を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させ、それによってクロストリジウム・ディフィシレの胞子形成を抑制することを含む、方法。
【請求項5】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することで、該被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する、方法。
【請求項6】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置によってクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制し、それによって被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する、方法。
【請求項7】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置によってクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型の増殖を抑制し、それによって被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する、方法。
【請求項8】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置によってクロストリジウム・ディフィシレの胞子形成を抑制し、それによって被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する、方法。
【請求項9】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を予防する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の危険性がある被検体にクロストリジウム・ディフィシレ感染症を防ぐために十分な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、それによって被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を予防することを含む、方法。
【請求項10】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置を提供する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置を達成するために十分な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、それによって被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防措置を提供することを含む、方法。
【請求項11】
請求項1、5、9、または10のいずれか一項に記載の方法であって、クロストリジウム・ディフィシレがクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型、クロストリジウム・ディフィシレ胞子、またはそれら両方の混合物である、方法。
【請求項12】
請求項5ないし10のいずれか一項に記載の方法であって、前記投与が静脈内投与または経口投与による、方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の方法であって、前記グリコペプチド抗生物質が式Iにより定義される化合物、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である、方法。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載の方法であって、前記グリコペプチド抗生物質が式IIにより定義される化合物、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である、方法
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか一項に記載の方法であって、前記グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である、方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか一項に記載の方法であって、前記グリコペプチド抗生物質がグリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態である、方法。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか一項に記載の方法であって、前記クロストリジウム・ディフィシレをインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、またはエクスビボ(ex vivo)で接触させる、方法。
【請求項1】
クロストリジウム・ディフィシレの増殖を抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレと該クロストリジウム・ディフィシレの増殖を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させ、それによってクロストリジウム・ディフィシレの増殖を抑制することを含む、方法。
【請求項2】
クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ胞子と該クロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させ、それによってクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制することを含む、方法。
【請求項3】
クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型の増殖を抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型と該クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型の増殖を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させ、それによってクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型の増殖を抑制することを含む、方法。
【請求項4】
クロストリジウム・ディフィシレの胞子形成を抑制する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型と該クロストリジウム・ディフィシレの胞子形成を抑制するために十分な量のグリコペプチド抗生物質とを接触させ、それによってクロストリジウム・ディフィシレの胞子形成を抑制することを含む、方法。
【請求項5】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することで、該被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する、方法。
【請求項6】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置によってクロストリジウム・ディフィシレ胞子の伸長を抑制し、それによって被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する、方法。
【請求項7】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置によってクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型の増殖を抑制し、それによって被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する、方法。
【請求項8】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、治療上有効な量のグリコペプチド抗生物質を投与することを含み、前記処置によってクロストリジウム・ディフィシレの胞子形成を抑制し、それによって被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を処置する、方法。
【請求項9】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を予防する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の危険性がある被検体にクロストリジウム・ディフィシレ感染症を防ぐために十分な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、それによって被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症を予防することを含む、方法。
【請求項10】
被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置を提供する方法であって、クロストリジウム・ディフィシレ感染した被検体に対して、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防処置を達成するために十分な量のグリコペプチド抗生物質を投与し、それによって被検体のクロストリジウム・ディフィシレ感染症の予防措置を提供することを含む、方法。
【請求項11】
請求項1、5、9、または10のいずれか一項に記載の方法であって、クロストリジウム・ディフィシレがクロストリジウム・ディフィシレの栄養増殖型、クロストリジウム・ディフィシレ胞子、またはそれら両方の混合物である、方法。
【請求項12】
請求項5ないし10のいずれか一項に記載の方法であって、前記投与が静脈内投与または経口投与による、方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の方法であって、前記グリコペプチド抗生物質が式Iにより定義される化合物、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である、方法。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載の方法であって、前記グリコペプチド抗生物質が式IIにより定義される化合物、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である、方法
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか一項に記載の方法であって、前記グリコペプチド抗生物質がオリタバンシン、またはその医薬的に許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物、あるいはそれらの混合物である、方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか一項に記載の方法であって、前記グリコペプチド抗生物質がグリコペプチド抗生物質および医薬的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物の形態である、方法。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか一項に記載の方法であって、前記クロストリジウム・ディフィシレをインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、またはエクスビボ(ex vivo)で接触させる、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【公表番号】特表2010−539179(P2010−539179A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524973(P2010−524973)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/075949
【国際公開番号】WO2009/036121
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510065148)ターガンタ セラピューティクス コーポレイション (3)
【出願人】(505020215)ユニヴァーシティ・オブ・リーズ (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF LEEDS
【住所又は居所原語表記】Leeds LS2 9JT, United Kingdom
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/075949
【国際公開番号】WO2009/036121
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510065148)ターガンタ セラピューティクス コーポレイション (3)
【出願人】(505020215)ユニヴァーシティ・オブ・リーズ (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF LEEDS
【住所又は居所原語表記】Leeds LS2 9JT, United Kingdom
【Fターム(参考)】
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