説明

オリーブ薬膳酒の製造方法

【課題】美味しくかつ優れた生理活性を奏するオリーブ薬膳酒の製造方法を提供すること。
【解決手段】搾油されたオリーブ果実、所望により該搾油されたオリーブ果実に加えてオリーブの枝及び/又は葉を、アルコール度数20ないし30の蒸留酒100質量部に対して5質量部ないし10質量部浸漬することを特徴とするオリーブ薬膳酒の製造方法。さらに前記オリーブ薬膳酒の製造において、桂皮、冬中夏草、レモングラス、グァバ、人参、レモンバーム、タイソウ、クコの実、竜眼肉及びラカンカからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料を前記蒸留酒に浸漬することを特徴とするオリーブ薬膳酒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美味しくかつ優れた生理活性を奏するオリーブ薬膳酒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリーブは、地中海沿岸を原産地とするモクセイ科の植物で、古くから食用及び搾油用として栽培されている植物である。オリーブ果実は、通常10月頃から大きくなって淡緑色となり、紫紅色の斑点を帯びてくるとグリーンピクルスへの加工に適した時期となる。その後、11月頃には全体が紫黒色を帯びた所謂ライブオリーブスとなり塩漬け加工に適したものとなる。12月頃の熟したオリーブ果実は15ないし30%程度の油分を含み、この時期のオリーブ果実からオリーブ油が搾油される。搾油されたオリーブ油は、食用の他に、化粧品、薬品又は石けんなどの原料として用いられる。また、果樹の生育や結実を均一にし樹全体に日光が当たるように、一般に2月ないし3月の間に剪定が行われる。オリーブはその年に出た芽に花が咲くので、剪定の際、枝の刈り込みや先端部分だけを切り取る剪定を行ってしまうと、花も咲かず結実もしないので、間引き又は切り返し剪定が行われる。
このように、搾油した後にはほとんどの油分が取り除かれたオリーブ果実の粕が残り、また剪定後には大量の切断された枝や葉が出る。そして従来は、それら、搾油後のオリーブ果実や剪定後のオリーブの枝や葉の一部は肥料として用いられるが、その量が多いことから使い切れず、その残りの大部分は焼却又は埋めるなどして処分されていた。
また、果実を酒類に浸漬する果実酒の製造方法として、既にアセロラ果実を漬け込むことにより得られる天然のビタミンCを含む果実酒及びその製造方法が知られている(特許文献1参照)。該文献には、日本酒又は焼酎をベースにして、これにレモン果実の50倍のビタミンCを有するアセロラの果実を漬け込むことによって大量の天然ビタミンCを強化した果実酒を製造する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平9−275966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
オリーブ果実は糖分が少ないことから、酵母が糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する、すなわち醸造によって作られる醸造酒の材料としては不向きであり、またオリーブ果実は油分が多く、醸造酒や蒸留酒に漬け込むと、オリーブ果実に含まれる油分も抽出されてしまうため、お酒を作るには不向きな材料であった。ゆえに、オリーブを原料にしたお酒は全くこれまで作られてこなかった。一方、オリーブ果実には抗酸化作用のあるポリフェノールが含まれており、オリーブの葉及び枝にはポリフェノールの一種であるオレウロペインが含まれている。オレウロペインは、抗酸化作用、細菌、寄生虫、カビ菌などの病原性微生物やウィルスを弱体化させる効果や血糖値を下げる効果など様々な効果があることが最近の研究で解明されている。しかしながら、これらオリーブに含まれる有効成分は苦味をもたらすものであり、オリーブの配合割合が多いとその苦味が強くなり、飲用には適さない味となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、所定のアルコール度数を有する蒸留酒に搾油されたオリーブ果実、さらに所望によりオリーブの葉及び/又は枝を所定の割合で浸漬することによって、オリーブ特有の青臭さや苦味のない美味しくかつオリーブ油を含まずオリーブ由来の有効成分、薬効成分を含む優れた生理活性を奏するオリーブ薬膳酒の製造方法を提供することである
本発明は、下記(1)ないし(4)の構成からなるものである。
(1)搾油されたオリーブ果実を蒸留酒に浸漬することによって得られるオリーブ薬膳酒の製造方法であって、
該搾油されたオリーブ果実を、アルコール度数20ないし30の蒸留酒100質量部に対して5質量部ないし10質量部浸漬することを特徴とするオリーブ薬膳酒の製造方法。
(2)前記搾油されたオリーブ果実に加えてオリーブの枝及び/又は葉を蒸留酒に浸漬することによって得られるオリーブ薬膳酒の製造方法であって、
該オリーブの枝及び/又は葉を、アルコール度数20ないし30の蒸留酒100質量部に対してそれぞれ2質量部ないし10質量部浸漬することを特徴とする前記(1)記載のオリーブ薬膳酒の製造方法。
(3)さらに桂皮、冬中夏草、レモングラス、グァバ、人参、レモンバーム、タイソウ、クコの実、竜眼肉及びラカンカからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料を前記蒸留酒に浸漬することを特徴とする前記(1)記載のオリーブ薬膳酒の製造方法。
(4)前記浸漬を所要時間続けた後、固液分離をすることを特徴とする前記(1)記載のオリーブ薬膳酒の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、オリーブに含まれていた有効成分、特にオレウロペイン等のポリフェノールを抽出により含有するものとなることにより、抗酸化作用、細菌、寄生虫、カビ菌などの病原性微生物やウィルスを弱体化させる効果や血糖値を下げる効果など様々な効果が得られるオリーブ薬膳酒を提供することができる。また、特定のアルコール度数を有する蒸留酒に特定の割合で上記搾油されたオリーブ果実、所望により葉及び/又は枝を浸漬することによって、飲用に適した美味しいオリーブ薬膳酒を提供することができる。
さらに、係るオリーブ薬膳酒に、所望により他の原料を組み合わせることによって、オリーブ果実粕、葉及び枝に含まれる有効成分由来の効果に加えて、更なる効果、例えば他の原料による薬効、あるいはオリーブ成分と他の原料との組合せによる相乗的な作用効果を付加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明を図面を参照しながらより詳細に説明する。図1は、本発明のオリーブ薬膳酒の製造方法の一態様を図示する流れ図である。
オリーブには様々な品種があり、例えばミッション(Mission)、マンザニロ(Manzanillo)、ネバディロ・ブランコ(Nevadilo Blanco)、
ピクアル(Picual)、オヒブランカ(Hojiblanca)、アルベキナ(Arbequina)、コルニカブラ(Cornicabra)、マンザニリャ(Manzanilla)、ゴルダル(Gordal)、フラントイオ(Frantoio)、モロイオロ(Moraiolo)、レッチーノ(Leccino)、コラティーナ(Coratina)、アスコラーナ・テレナ(Ascolana Terena)、ルッカ(Luc
ca)等が知られており、これらの品種ではそれぞれ果実の平均重量および含油率が異なり、また適した用途も果実加工用種、油用種、兼用種等と異なっている。なかでも、ミッション種はアメリカのカリフォルニア州で発見されたスペイン系品種であり、果実の平均重量は2.5ないし3.0g、含油率は10ないし19%であって、比較的強い果実臭を有する。本発明のオリーブ薬膳酒に用いられる品種としては芳香性の点及びポリフェノール含有量の点でミッションが好ましいが、特に限定されるわけではなく本発明のオリーブ薬膳酒は何れの品種のオリーブからも製造できる。
また本発明のオリーブ薬膳酒の原料となるオリーブ果実は、オリーブ果実からオリーブ油を搾油した後のオリーブ果実が用いられる。該オリーブ果実は、10ないし30%程度の油分を含むオリーブ果実からオリーブ油を搾油した後の、油分が1ないし5%程度にまで減少したオリーブ果実を使用することが好ましい。油分を5%よりも多く含むオリーブ果実を用いることは、アルコールに浸漬することによって油分も抽出されてしまうため好ましくない。
さらに、上記搾油されたオリーブ果実に加えて、オリーブの葉及び枝を用いてもよい。オリーブの葉の形状は、そのまま又は適宜所望の大きさ、例えば2、3cm程度の大きさに切断したものを用いることができる。オリーブの茎は、好ましくは2ないし3cmの長さに切断したものが用いられ、又は有効成分を効率よく抽出するためにその切断した茎に切り込みを入れたものを用いてもよい。
また、本発明で使用される搾油されたオリーブ果実、オリーブの葉及び枝は、乾燥又は冷凍されたものを用いることもできる。それら本発明のオリーブ薬膳酒の原料となるオリーブの果実、葉及び枝を乾燥又は冷凍することで、それら原料の保存が可能となりいつでも本発明のオリーブ薬膳酒を製造することができる。
【0007】
本発明では、オリーブ果実粕又はその他の原料の有効成分を抽出するための抽出溶媒として、蒸留酒又は醸造酒を使用することが好ましい。蒸留酒としては、例えば甲類焼酎、ウォッカが好ましく、ナツメヤシを原料とした焼酎を用いてもよい。好ましい醸造酒としては、日本酒である。本発明に用いられる蒸留酒のアルコール度数は、20ないし30が好ましい。
本発明で使用される原料として、オリーブ果実粕、オリーブの枝及び葉に加えて桂皮、冬中夏草、レモングラス、グァバ、人参、レモンバーム、タイソウ、クコの実、竜眼肉及びラカンカなど体に良いと言われている有効成分を含む種々の原料を単独で又は適宜組み合わせて使用することができる。
【0008】
また、抽出溶媒(蒸留酒)とオリーブ果実粕の配合割合は、蒸留酒100質量部に対してオリーブ果実粕5質量部ないし10質量部が好ましい。さらにオリーブの枝及び葉を加える場合、蒸留酒100質量部に対して2質量部ないし10質量部のオリーブの枝及び葉をそれぞれ加えることが好ましい。オリーブの果実粕、枝及び葉が上記で定める下限値を下回ると、オリーブから抽出されるオリーブ由来の有効成分の含有量が十分ではなくなるため、満足な効果が得られにくくなる。その一方で、それら上限値を超えると、オリーブ特有の苦味あるいは青臭さが強くなり、さらに多量になると飲用するには適さない味となる。
【0009】
上記原料と抽出溶媒を密閉容器に仕込んだ後、常温で1ヶ月ないし12ヶ月間漬け込む。漬け込んだ後、容器を密閉し、陽の当たらない場所で貯蔵する。所要の浸漬期間終了後、有効成分が抽出されたオリーブ果実粕を含む原料の固形分と抽出液を濾過により分離する。
こうして固形分を分離した後、得られた濾液を殺菌する。殺菌は通常の加熱殺菌で行うことができ、例えば60ないし70℃で15分間ないし1時間程度保持する低温殺菌が好ましい。100℃を超える温度を採用する高温殺菌は、オリーブ果実粕等の原料から抽出された有効成分の分解を引き起こす可能性があるため殺菌時間を短くして行う必要がある。
次いで、所望により水を加えてアルコール度数を調整する。例えば、アルコール度数6ないし10の飲み易い度数に調整することが好ましい。
また、こうして製造される本発明のオリーブ薬膳酒を製品として出荷する場合は、貯蔵タンクから瓶等に充填され、その後、さらに火入れすることにより殺菌処理が行われる。その殺菌処理の条件は、前述の低温殺菌と同様な条件で行うことが好ましい。
【0010】
本発明のオリーブ薬膳酒による優れた効果は、例えば、オリーブ果実粕、葉及び枝に含まれるポリフェノール、特にオリーブの葉に含まれるオレウロペインというポリフェノールの一種に起因するものである。オレウロペインは、抗酸化作用、血糖値降下作用、抗菌作用、抗ウィルス作用、血管拡張による降圧作用などを有する。
【実施例】
【0011】
次に、本発明に係るオリーブ薬膳酒の製造方法につき、その実施形態を例示して以下詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
オリーブ薬膳酒の製造
以下のようにして、オリーブ薬膳酒を製造した。
実施例1
仕込み:搾油されたオリーブ果実粕100g、オリーブ葉20g、オリーブ枝20g、レモングラス5g、レモンバーム5g、ラカンカ5g、冬中夏草10g、人参20g、竜眼肉20g、桂皮5g、グァバ10g、クコの実20g及びタイソウ20gと、アルコール度数25の甲類焼酎1.8Lを密閉抽出容器に仕込んだ。
浸漬:室温で6ヶ月間浸漬した。
濾過:浸漬終了後、固形分と抽出液を濾過により分離した。
火入れ(殺菌):得られた濾液を約65℃に加熱し、30分間加熱殺菌した。
割水:殺菌後の濾液に水を加えてアルコール度数を8に調整した。
上記の手順により、オリーブ薬膳酒を得た。
実施例2
仕込みにおいてオリーブの葉及び枝が除かれた表1に示す原料を用いた以外は、実施例1と同様な方法により薬膳酒を作った。
【表1】

【0012】
30代から60代の日ごろ何らかの健康に対する悩み、例えば首や肩の凝り、手足の冷え、慢性疲労などを感じている女性30人を対象とし、試験を行った。試験は、実施例1及び2の薬膳酒を、それぞれ10人ずつ、計30人の被験者に毎日就寝の30分前に70mL、1ヶ月間飲み続けてもらい行った。
オリーブ果実粕、葉及び枝並びに他の原料を浸漬することによって得られた実施例1の薬膳酒を飲用した被験者においては、腰痛、首や肩の凝り、手足の冷え、肌が荒れるなど、該被験者が実施例1の薬膳酒を引用する前に感じていた症状が改善した。また、オリーブの葉及び枝は含まずオリーブ果実粕とその他の原料を浸漬することによって得られた実施例2の薬膳酒を飲用した被験者においても、実施例1ほどではないがそれら症状の改善がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明によれば、これまで廃棄処分されてきたオリーブ果実粕、葉及び枝を有効に利用することができるとともに、美味しくかつ優れた生理活性を奏するオリーブ薬膳酒を製造
することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明のオリーブ薬膳酒の製造方法を図示する流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾油されたオリーブ果実を蒸留酒に浸漬することによって得られるオリーブ薬膳酒の製造方法であって、
該搾油されたオリーブ果実を、アルコール度数20ないし30の蒸留酒100質量部に対して5質量部ないし10質量部浸漬することを特徴とするオリーブ薬膳酒の製造方法。
【請求項2】
前記搾油されたオリーブ果実に加えてオリーブの枝及び/又は葉を蒸留酒に浸漬することによって得られるオリーブ薬膳酒の製造方法であって、
該オリーブの枝及び/又は葉を、アルコール度数20ないし30の蒸留酒100質量部に対してそれぞれ2質量部ないし10質量部浸漬することを特徴とする請求項1記載のオリーブ薬膳酒の製造方法。
【請求項3】
さらに桂皮、冬中夏草、レモングラス、グァバ、人参、レモンバーム、タイソウ、クコの実、竜眼肉及びラカンカからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料を前記蒸留酒に浸漬することを特徴とする請求項1記載のオリーブ薬膳酒の製造方法。
【請求項4】
前記浸漬を所要時間続けた後、固液分離をすることを特徴とする請求項1記載のオリーブ薬膳酒の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2009−148200(P2009−148200A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329088(P2007−329088)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(502106462)小豆島ヘルシーランド株式会社 (4)
【Fターム(参考)】