説明

オレフィン類の重合抑制方法

【課題】 本発明は、オレフィン類の製造工程、精製工程において、長期間に亘ってオレフィン類の重合を抑制し、当該重合物の該工程での付着による汚れの発生を防止することによって、該工程の運転効率を高め、長期間の連続安定運転を円滑かつ容易にするオレフィン類の重合抑制方法を提供することを目的としている。

【解決手段】 オレフィン類の製造工程、精製工程において、(A)ピペリジン−1−オキシル化合物と、(B)p−フェニレンジアミン化合物と同時に用いるオレフィン類の重合抑制方法。好適には(A)と(B)を重量比で99:1〜1:99の割合で用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィン類の製造工程、精製工程の汚れ抑制方法に関し、さらに詳しくは、オレフィン類製造工程あるいは精製工程でのオレフィン類の重合を抑制し、当該重合物の該工程での付着による汚れの発生を防止することにより、該工程の運転効率を高め、長期連続運転を円滑かつ容易にする汚れ防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン類の製造、精製工程において、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、アセチレン、ブテン、ブタジエン、ペンテン、イソプレン、ペンタジエン、シクロペンタジエン等のジエン類、スチレン、インデン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン等のビニル化合物類)が、熱、微量の酸素あるいは過酸化物、金属イオンなどの種々の要因で重合し、この重合物が当該工程内の装置類に付着して、汚れが発生する。これらの汚れが蓄積すると、装置内での熱の移動が阻害されるだけでなく、プロセス流体の流れも悪くなり、装置の運転効率の悪化をまねく。その結果、通常の運転が困難になり、緊急に運転を停止し、汚れや重合物を除去せざるを得なくなる等、操業上、重大な支障を来たす。
【0003】
このような汚れに対して、種々の重合抑制方法や汚れ抑制方法が提案されて来た。例えば、ジアルキルヒドロキシルアミン存在下のイソプレン含有炭化水素の蒸留方法(例えば、特許文献1参照)、ピペリジン−1−オキシルに代表されるようなオキシラジカル(−O・)を有する環状アミノ誘導体を用いるビニル化合物の重合禁止剤(例えば、特許文献2参照)、アルキルフェノール化合物とN、N’−ジサリチリデン−1、2−プロパンジアミンの反応物を用いた石油精製コンプレッサーの汚れ防止方法(例えば特許文献3参照)、アルキルフェノール化合物とコハク酸−ポリアミン反応物およびN、N’−ジサリチリデン−1、2−プロパンジアミンを用いた石油精製分解ガスコンプレッサーでの汚れ防止方法(例えば特許文献4参照)、スチレン−マレイン酸エステル共重合体及び/又はコハク酸エステルとN、N’−ジサリチリデン−1、2−プロパンジアミンを含有する汚れ防止剤(例えば特許文献5参照)、ピペリジニル−1−オキシル化合物等を添加して塔底液の着き垢(汚れ)を抑制する方法(例えば、特許文献6参照)、ニトロソフェノール系化合物を用いたエチレン製造装置蒸留塔汚れ抑制剤(例えば、特許文献7参照)、ピペリジン−1−オキシル類とN、N−ジ置換ヒドロキシルアミン類を組合せたオレフィン類製造工程・精製工程の汚れを抑制する方法(例えば、特許文献8参照)等がある。しかし、いずれも十分満足する効果を得るには至っていない。
【0004】
【特許文献1】特開昭50−112304号公報
【特許文献2】特公昭51−15001号公報
【特許文献3】米国特許第3442791号明細書
【特許文献4】特開昭60−54327号公報
【特許文献5】特開昭64−51491号公報
【特許文献6】特公平4−26639号公報
【特許文献7】特開平5−156233号公報
【特許文献8】特許第3187345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、オレフィン類の製造工程、精製工程において、長期間に亘ってオレフィン類の重合を抑制し、当該重合物の該工程での付着による汚れの発生を防止することによって、該工程の運転効率を高め、長期間の連続安定運転を円滑かつ容易にするオレフィン類の重合抑制方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、オレフィン類の製造工程、精製工程における汚れ防止方法について鋭意研究を行った結果、特定のピペリジン−1−オキシル化合物と特定のp−フエニレンジアミン化合物の組み合わせてが、オレフィン類の重合抑制に効果的であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本請求項1に係わる発明は、オレフィン類の製造工程、精製工程において、(A)一般式(1)(式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基であり、Xは水素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸または炭素数1〜3のアミド基である。)及び一般式(2)(式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基である。)で表されるピペリジン−1−オキシル化合物と、(B)一般式(2)(式中、R、R10、R11、R12の少なくとも1つが水素原子であり、他が水素原子、炭素数1〜20の直鎖又は環を含んでいてもよい分岐のアルキル基、フェニル基、ナフチル基である。)で表されるp−フェニレンジアミン化合物を同時に用いることを特徴とするオレフィン類の重合抑制方法である。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

請求項2に係る発明は、請求項1記載のオレフィン類の重合抑制方法であり、(A)ピペリジン−1−オキシル化合物が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシルから選ばれる1種以上であることを特徴としている。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載のオレフィン類の重合抑制方法であり、(B)p−フェニレンジアミン化合物がN−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(sec−ブチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンから選ばれる1種以上であることを特徴としている。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか記載のオレフィン類の重合抑制方法であり、(A)成分と(B)成分を重量比99:1〜1:99で添加することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法により、オレフィン類の製造工程、精製工程において、十分なオレフィン類の重合抑制効果が得られ、当該工程における重合物による汚れの発生および付着が抑制防止される。その結果、工程内の装置中でのプロセスの流れおよび熱伝導が良好に維持され、長期連続運転が可能となり、安全操業や製品の収率向上、さらには製品品質の向上も達成できるなどの経済的効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、オレフィン類の製造工程、精製工程において、製造あるいは精製されたオレフィン類が重合し、当該重合物が当該工程内の設備および装置に付着して生じた汚れに対して、特定のピペリジン−1−オキシル化合物と特定のp−フェニレンジアミン化合物を同時に用いることによって、製造あるいは精製されたオレフィン類の重合を抑制し、重合物の該工程での付着による汚れの発生を防止することによって、該工程の運転効率を高め、長期間の連続安定運転を円滑かつ容易にするオレフィン類の重合抑制方法である。
【0015】
本発明において対象となる工程は、オレフィン類の製造工程、精製工程、貯蔵・保管する貯蔵工程、該オレフィン類を含む工程液と接する付随装置類および付帯設備類、さらにこれらを含む循環系や回収系も包含する。具体的には、エチレン製造工程における脱メタン塔、脱エタン塔、エチレン精留塔、脱プロパン塔、プロピレン精留塔、脱ブタン塔、脱ペンタン塔、BTX塔、リラン塔、その他ブタジエン製造工程、イソプレン製造工程などの工程があり、さらに反応後の反応物排出ラインや回収循環ライン、精製工程における精製塔へのオレフィン類のフィード配管や予熱ラインおよび冷却ラインさらに循環ライン、貯蔵工程における保管タンクや貯蔵タンク、移送タンクおよび輸送タンクさらにその移送ラインなどがある。
【0016】
本発明におけるオレフィン類は、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等のジエン類、およびスチレン、炭素数1〜10のアルキル基を持つアルキルスチレン、α位に炭素数1〜10のフェニル基あるいはアルキル基を持つα−アルキルスチレン、β位に炭素数1〜10のフェニル基あるいはアルキル基を持つβ−アルキルスチレンなどの重合性ビニル基を持ったスチレン誘導体である。具体的には、スチレン、メチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、エチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、プロピルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、ブチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、オクチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、ノニルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、デシルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、α−メチルスチレン(2−フェニルプロペン)(シス体、トランス体、およびその混合物)、1−フェニルプロペン(シス体、トランス体、およびその混合物)、2−フェニル−2−ブテン(シス体、トランス体、およびその混合物)、スチルベン(シス体、トランス体、およびその混合物)、インデン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物である。
【0017】
本発明における(A)ピペリジン−1−オキシル化合物(以下「(A)成分」とする)は、一般式(1)および一般式(2)で表される安定なフリーラジカルを有する4−置換−2,2,6,6−アルキルピペリジン−1−オキシル化合物である。式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基であり、Xは水素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸または炭素数1〜3のアミド基である。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基があり、炭素数1〜3のアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基があり、炭素数1〜3のカルボン酸基としては蟻酸基、酢酸基、プロピオン酸基があり、炭素数1〜3のアミド基としては蟻酸アミド基、酢酸アミド基、プロピオン酸アミド基がある。また、一般式(2)において、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基である。
【0018】
具体的には2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラエチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−プロポキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルバモイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等が挙げられなどである。好ましくは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルがあげられ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。
【0019】
本発明における(B)p−フェニレンジアミン化合物(以下「(B)成分」とする)は一般式(3)で表され、2つのアミノ基のいずれかに、少なくとも1個の水素原子が結合しているN,N’―置換ジアミン化合物である。式中、R、R10、R11、R12の少なくとも1つが水素原子であり、他が水素原子、炭素数1〜20の直鎖又は環を含んでもよい分岐のアルキル基、フェニル基、ナフチル基である。炭素数1〜20の直鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基などがある。炭素数1〜20の環を含んでもよい分岐のアルキル基としては、イソプロピル基、シクロプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソアミル基、シクロヘキシル基、2エチルヘキシル基、2エチルシクロヘキシル基、などがある。
【0020】
具体的には、N、N’−ジメチル−p−フェニレンジアミン、N、N’−ジエチル−p−フェニレンジアミン、N、N’−ジプロピル−p−フェニレンジアミン、N、N’−ジ(sec−ブチル)−p−フェニレンジアミン、N、N’−ジ(tert−ブチル)−p−フェニレンジアミン、N、N’−ジデシル−p−フェニレンジアミン、N−メチル−N’−プロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−ジメチル−N’−メチル−p−フェニレンジアミン、N、N−ジメチル−N’−メチル−p−フェニレンジアミン、N、N−ジ(sec−ブチル)−N’−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N、N−ジメチル−N’−メチル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N−メチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどがある。中でも好ましくは、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(sec−ブチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンである。これらの1種あるいは2種以上が用いられる。
【0021】
(B)成分のp−フェニレンジアミン化合物において、2つのアミノ基に結合する4つの水素原子が全て置換されたp−フェニレンジアミン化合物では、本発明の効果を得ることはできない。
【0022】
オレフィン類の製造工程および精製工程において、(A)成分および(B)成分は、それぞれ単独で用いても重合抑制効果を持っているが、本発明は(A)成分および(B)成分を組み合わせて同時に用いることにより相乗効果を発揮して、それぞれ単独で用いた場合よりも予想し得ない、優れた効果を発揮することを特徴としている。(A)成分および(B)成分の相乗効果のメカニズムは明らかでないが、(A)成分の重合禁止作用と、(B)成分の過酸化物消失作用が組み合わされて、相乗的により大きな効果を生み出したものである。
【0023】
本発明において、(A)成分および(B)成分を同時に組み合わせて用いることにより本発明の効果が得られるが、通常、その使用割合は重量比として99:1〜1:99、好ましくは90:10〜10:90、さらに好ましくは80:20〜20:80である。(A)成分の添加量は、通常、対象とするオレフィン類に対し0.1〜1、000ppm、好ましくは0.5〜500ppm、さらに好ましくは、1〜100ppmである。また、(B)成分の添加量は、通常、対象とするオレフィン類に対し0.1〜1,000ppm、好ましくは0.5〜500ppm、さらに好ましくは1〜100ppmである。この添加量は、対象とするオレフィン類の重合抑制効果を発揮する上で適当な範囲として見出されたものであり、この範囲より小さいと効果が充分に発揮されない場合があり、また、この範囲より多いと、効果は充分に発揮されるが、添加量に見合うだけの重合抑制効果の向上が得られず、経済的見地から好ましくない場合がある。
【0024】
本発明において、(A)成分および(B)成分の添加場所は、通常、工程内で重合汚れが問題となる箇所の上流部に添加する。また、通常、これらの工程は一連の連続した工程からなるもので、重合汚れの問題が発生する最初の工程に添加しておけば、後段の蒸留塔の塔底に逐次流れ、後段の工程においても汚れ防止として作用する。特にエチレン製造工程のように蒸留を繰り返す工程では、その後段に行くに従って、汚れの発生に大きく影響するジエン類や芳香族ビニル化合物の濃度が高まり、同時に本発明の(A)成分および(B)成分も濃縮されて、高い濃度となるので汚れ防止効果も増大するので好都合である。
【0025】
本発明における(A)成分および(B)成分の添加方法は、特に限定されるものではないが、各々単独に有機溶剤に溶解して両者を別々に工程中に加える方法、あるいは両者を同一の有機溶剤に混合溶解して加える方法があり、いずれを用いても良い。用いられる溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンのような炭化水素系溶剤、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、γ−ブチロラクトン、ジオキサン、メチルエチルケトンのような含酸素溶剤、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、水などがあげられ、これらの溶剤の1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。(A)成分および(B)成分を溶解して用いる場合、その濃度は特に限定されないが、通常、取扱性を考慮して0.1〜50重量%の溶液として用いられる。
【0026】
本発明において、(A)成分および(B)成分以外に本発明の目的を損なわない範囲で公知の重合防止剤、酸化防止剤、分散剤、金属不活性化剤などを添加使用することに何ら制限を加えるものではない。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0028】
(ピペリジン−1−オキシル化合物)
・TEMPO:2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル
・H−TEMPO:2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル
・O−TEMPO:2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソピペリジン−1−オキシル
・M−TEMPO:2,2,6,6−テトラメチル−4−メトキシピペリジン−1−オキシル
【0029】
(p−フェニレンジアミン化合物)
・PPPA:N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン
・BPA:N,N’−ジ(sec−ブチル)−p−フェニレンジアミン
・PPA:N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン
・NPA:N,N’−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン
・PBPA:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
【0030】
〔重合抑制試験〕
エチレン製造装置からの脱プロパン塔の塔底液(過酸化物含量100ppm)を試料として、塔底液に含まれるオレフィン類を対象とした重合抑制試験を行った。ステンレス製の100ml容量のオートクレーブに、予め試料に対して所定量となる1%濃度ピペリジン−1−オキシル化合物のキシレン溶液と1%濃度p−フェニレンジアミン化合物のキシレン溶液を入れ、オートクレーブを密閉した。オートクレーブ内を窒素ガスによる充填と減圧パージを3回繰り返して、オートクレーブ内の酸素を除いた後、試料20gを封入した。オートクレーブを110℃にて5時間加熱し、その後、オートクレーブを急冷した。オートクレーブの内容物をビーカーに取り出して9倍容量のメタノールを加え、重合物を析出させた。析出した重合物を1μmメンブランフィルター(メタノールで洗浄後、105℃にて2時間乾燥処理)で吸引ろ過してろ別し、得られた重合物をメタノールで3回洗浄し、105℃にて2時間乾燥して重量を測定した。次式にて、得られた重合物量から重合抑制率(%)を求め、その結果を表1に示した。
重合抑制率(%)=〔(Y−X)/Y〕×100
X:ピペリジン−1−オキシル化合物とp−フェニレンジアミン化合物を添加したときの重合物量(mg)
Y:ピペリジン−1−オキシル化合物とp−フェニレンジアミン化合物を添加しないときの重合物量(mg)
【0031】
【表1】

本発明のオレフィン類の重合抑制方法は、ピペリジン−1−オキシル化合物、p−フェニレンジアミン化合物の単独使用に比べて、予想し得ない程の優れた重合抑制効果を示すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン類の製造工程、精製工程において、(A)一般式(1)(式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基であり、Xは水素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸または炭素数1〜3のアミド基である。)及び一般式(2)(式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基である。)で表されるピペリジン−1−オキシル化合物と、(B)一般式(2)(式中、R、R10、R11、R12の少なくとも1つが水素原子であり、他が水素原子、炭素数1〜20の直鎖又は環を含んでいてもよい分岐のアルキル基、フェニル基、ナフチル基である。)で表されるp−フェニレンジアミン化合物を同時に用いることを特徴とするオレフィン類の重合抑制方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【請求項2】
(A)ピペリジン−1−オキシル化合物が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシルから選ばれる1種以上である請求項1記載のオレフィン類の重合抑制方法。
【請求項3】
(B)p−フェニレンジアミン化合物が、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(sec−ブチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンから選ばれる1種以上である請求項1又は2記載のオレフィン類の重合抑制方法。
【請求項4】
(A)成分と(B)成分を重量比99:1〜1:99で添加する請求項1ないし3のいずれか記載のオレフィン類の重合抑制方法。

【公開番号】特開2006−199736(P2006−199736A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10173(P2005−10173)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【Fターム(参考)】